1 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/09(金) 20:26:04 iWXixMfg 1/27

「……何言ってるんだ?」

従妹「兄さんにレモンをかけると初恋の味がするらしいです。友人に聞きました。」

「おい、やめろ。レモンをかけようとするな。」

従妹「初恋の味を知りたいです。」

「俺にレモンをかけても初恋の味はしない。」

従妹「嘘です。」

「嘘じゃない。」

従妹「……」


元スレ
従妹「兄さんにレモンをかけると初恋の味がするらしいです。」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1331292364/

5 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/09(金) 20:41:12 iWXixMfg 2/27

「……それよりもいつ来たんだ? 叔母さんの家からここまで結構遠いだろ。」

従妹「さっきです。兄さんにレモンをかける為に来ました。」

「……」

従妹「レモン、かけさせて下さい。」

「駄目だ。……歩いて来たのか? 叔母さんに連れて来てもらったのか?」

従妹「いえ、お母さんに内緒で歩いて来ました。」

「はぁ……危ないから駄目だろ? 迷子になったり、変な人に遭ったりしたら、どうするつもりだったんだ?」

従妹「兄さんが助けてくれます!」


6 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/09(金) 20:52:48 iWXixMfg 3/27

「……俺が昔従妹を助けられたのは、偶然。その時も言ったけど、危ないから遅い時間に出歩いちゃ駄目だ。」

従妹「でも、兄さんにレモン……」

「……」

従妹「……」

「……取り敢えず叔母さんに、従妹がこっちにいるって連絡するから待ってな。」

従妹「……はい。」

「うん。良い子。」

従妹「へへっ。」


7 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/09(金) 21:04:57 iWXixMfg 4/27

「……もしもし、兄です。夜遅くにすいません。」

叔母『あら、兄君? 久しぶりぃ~!』

「はい、お久しぶりです。」

叔母『今ねぇ~? ロールキャベツ、作ってるのぉ~!』

「そうなんですか。あの……」

叔母『あ、あぁ、お鍋がぁ~! 兄君、ちょっと待っててねぇ~!』

「……」

祖母『ふぅ、兄君? それで、何の用事ぃ~?』


8 : 祖母× 叔母○ - 2012/03/09(金) 21:13:58 iWXixMfg 5/27

「従妹が家に来てるんですけど、どうしましょう? 送って行きましょうか?」

叔母『あらぁ~? 従妹なら家にいるはずだけどぉ~?』

「……いえ、こっちにいますよ。」

叔母『従妹ぃ~? 従妹ぃ~?』

「……」

叔母『……』

「……送りますね?」

叔母『……お願いねぇ~』


10 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/09(金) 21:23:03 iWXixMfg 6/27

「……ふぅ。従妹、家に帰るよ。」

従妹「やだです。」

「どうして? 今日はロールキャベツらしいよ?」

従妹「えっ、本当? ……嘘です。騙されません。」

「嘘じゃないよ。今日は帰ろう? また今度遊んであげるから。」

従妹「……レモンお兄ちゃん。」

「……それは駄目。」

従妹「何でですか!」


11 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/09(金) 21:29:55 iWXixMfg 7/27

「レモンはから揚げにかけるの。お兄ちゃんには普通、かけない。」

従妹「普通じゃないからこそ、初恋の味が味わえる。 そう友人が言ってました。」

「一体その友人は何を求めているんだ……」

従妹「きんしんそーかんって言ってました。」

「えっ、ちょっと。えっ?」

従妹「……良いからかけさせて下さい!」

「いやいや、駄目だから。それよりもその友人について。」

従妹「……やだです。……今、ちょっと嫉妬してます。」


12 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/09(金) 21:35:26 iWXixMfg 8/27

「えっ、なんで嫉妬?」

従妹「……もう良いです。ふん。」

「えっ? えー?」

従妹「もう帰ります。」

「あ、あぁ、うん。送って行くよ。」

従妹「……お願いします。」

「……うん。」

従妹「……」


13 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/09(金) 21:47:35 iWXixMfg 9/27

「それで、その友人の事なんだけど……」

従妹「っ! 兄さん嫌い!!」

「あっ、従妹! 一人で行くなって!!」

「……いきなりどうしたんだ?」

「ん? あぁ、まさか。その友人に言うなって言われてたのかな?」

「……近親相姦だしな。」

「あれ? 別に近親相姦って犯罪じゃないし、放っておくべきなのかな……?」

「それよりも。まだその友人が近親相姦してるって決まってないし。」


14 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/09(金) 21:52:43 iWXixMfg 10/27

「うーん……」

「あっ、従妹。走るの疲れたか?」

従妹「……はぁ。……はぁ。別に疲れてないです。」

「ほら、おんぶしてあげるからおいで。」

従妹「!」

「……よし。良い子。」

従妹「♪」

「さっきはごめん。気が付かなくてさ。」


15 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/09(金) 21:58:24 iWXixMfg 11/27

従妹「全然良いですよっ! えへへっ!」

「もう怒ってないのか。」

従妹「分かれば良いんです。分かれば。」

「そっか。良かった良かった。」

従妹「……へへっ、兄さんの背中暖かいです。」

「もう春だけど、まだちょっと肌寒いからな。風邪に気をつけろよ?」

従妹「はい。……兄さん兄さん。」

「ん? どうした?」


16 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/09(金) 22:05:16 iWXixMfg 12/27

従妹「呼んでみただけですっ。えへへっ、兄さん兄さんっ♪」

「そんなにはしゃぐと危ないぞ。」

従妹「兄さん号! 全速力です!」

「全速力? しっかり掴まれよ?」

従妹「……わっ、怖い! 怖い! 兄さん速過ぎですっ! 怖いですっ! すとっぷっ!!」

「意地悪してみた。」

従妹「むー! もう! やだですよ!」

「ははっ、ごめんごめん。」


23 : ◆nnyANBV... - 2012/03/10(土) 10:09:59 xdqwTh1I 13/27

従妹「……あっ。」

「どうした? って、冷たっ!?」

従妹「ふふっ、はむ。」

「えっ、ちょっ。何で首食べてるの?」

従妹「はむはむ。」

「あばばばばばば。」

従妹「……酸っぱいです。これが初恋の味。」

「レモンかけたのか……」


24 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/10(土) 10:10:58 xdqwTh1I 14/27

従妹「レモンお兄ちゃん美味しかったです。」

「駄目だって言っただろ? 首がむずむずする……」

従妹「えへへっ。」

「まったく……」

従妹「……」

「うぅ、むずむずする。」

従妹「……お兄ちゃん。」

「ん?」


25 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/10(土) 10:14:32 xdqwTh1I 15/27

従妹「……私の事好きですか?」

「勿論。」

従妹「……」

「いきなりどうした?」

従妹「……可愛い妹、ですか?」

「あぁ、勿論。」

従妹「……」

「どうしたんだ? 元気ないぞ?」


26 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/10(土) 10:20:04 xdqwTh1I 16/27

従妹「いえ、何でもないです。」

「そっか。それなら良いけど。あっ、家、見えてきたぞ。」

従妹「えぇ、やだです。もっと兄さんと一緒にいたいです。」

「そう言われても……」

従妹「兄さんも家でご飯食べれば良いです。そして遊んでくれれば良いです。」

「……いや、今日はごめんな。また遊んでやるから。」

従妹「……」

「ほら、良い子だから。拗ねないで。」


28 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/10(土) 11:02:39 xdqwTh1I 17/27

従妹「ただいま。」

叔母「お帰りぃ~!」

従妹「今日、ロールキャベツなの?」

叔母「そうよぉ~! お母さん頑張って作ってるのぉ~!」

従妹「やった! 私、部屋にいるね、お母さん。」

叔母「できたら呼ぶわねぇ~」

従妹「うん。」

従妹「……」


29 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/10(土) 11:05:15 xdqwTh1I 18/27

従妹「お兄ちゃん……」

従妹「……」

従妹「あっ、宿題やらないと……」

従妹「……」

従妹「妹……」

従妹「妹、なんだよね……」

従妹「……」

従妹「ただの妹……」


30 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/10(土) 11:36:59 xdqwTh1I 19/27

「ただいま。」

「誰も帰ってきてないのか。」

「まっ、テレビでも見るか。」

『――地方、明日のお天気は曇りのち、雨。夕方頃から冷え込む為、寒さには十分気を付けて下さい。』

『次のニュースは、明日公開予定の映画。七面賽子の特集です。』

「あっ、これ原作の小説が面白いんだよな。」

「……」

「……何か、寂しいな。」


31 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/10(土) 13:07:40 xdqwTh1I 20/27

「……」

「っ!」

「で、電話か……びっくりした……」

「こんな時間に……誰……」

「……叔母さん?」

「はい、もしもし。兄です。」

叔母『あ、兄君~!? 従妹が家にいないのぉ~!』

「!」


32 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/10(土) 13:12:50 xdqwTh1I 21/27

叔母『ご飯ができたから呼びに行ったらぁ~!』

叔母『部屋にも居なくてぇ~!』

叔母『家中探したんだけど、いなくてぇ~!』

叔母『靴もなくなってるのぉ~!』

叔母『兄君~?』

叔母『兄く~ん?』

叔母『あらぁ~? お手洗いかしらぁ~?』

叔母『それよりも、従妹ちゃん~!』


33 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/10(土) 13:17:57 xdqwTh1I 22/27

「はぁ……はぁ……!」

「……どこだ、従妹!?」

「畜生……!」

「また昔みたいに公園にいるのか? はぁ……はぁ……」

「昔……」

「また昔みたいに殺されかけたらどうするつもりなんだ!」

『兄さんが助けてくれます!』

「……馬鹿。」


34 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/10(土) 13:23:56 xdqwTh1I 23/27

従妹「ここの公園は落ち着きます。」

従妹「特に、このブランコが。ゆらゆら。」

従妹「でも、兄さんが押してくれないと楽しくないです。」

従妹「兄さん……」

従妹「……」

従妹「お兄ちゃん……」

従妹「……?」

従妹「え、ぁ、っ!?」


35 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/10(土) 13:31:31 xdqwTh1I 24/27

「心配かけさせないでくれ……」

従妹「お、お兄ちゃん? なんでここがわかったんですか?」

「昔もお前、ここで泣いてたじゃないか……」

従妹「……お兄ちゃん、そんなに強く抱きしめられると苦しいですよ。」

「死亡フラグとか、昔の事だけで十分なんだよ……誰得だよ……」

従妹「意味がわからないですよ……」

「従妹は俺の大切な妹なんだ……心配かけさせないでくれ……」

従妹「……お兄ちゃん。」


36 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/10(土) 13:38:32 xdqwTh1I 25/27

友人「それでそれで!?」

従妹「その後兄さんに怒られて家に帰りましたよ。」

友人「それだけ……? なんだ、つまんね。」

従妹「つまんねって何ですか……」

友人「漫画みたいには行かないんだなぁ。でも、良いなぁ。私もお兄ちゃん欲しいなぁ。」

従妹「……あげませんよ?」

友人「……なんかむかつく。うりうり。」

従妹「うひゃぁっ! や、やめてくださいです!」


37 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/10(土) 13:43:09 xdqwTh1I 26/27

友人「……で? 初恋の味は分かったの?」

従妹「分かりましたよ。酸っぱかったです。」

友人「まぁ、レモンだもんね。」

従妹「でも、友ちゃんちょっと間違ってますしたよ。」

友人「えっ、何が?」

従妹「お兄ちゃんにレモンをかけると初恋の味がする、って言いましたよね?」

友人「う、うん。」

従妹「でも。」


38 : 以下、名無しが深夜... - 2012/03/10(土) 13:44:49 xdqwTh1I 27/27


従妹「レモン、……かけなくても。初恋の味、しましたよ?」

End


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