――――第四の世界
パッ
勇者「ふがっ!!」
バッシャーーン!!
勇者「ガボボボボ!!」ブクブク
勇者「プハァ!!」
ザバァ
勇者「ハァ……ハァ……死ぬわ!!」ピキッ
勇者「てか水!?川か……?」ポタポタ
???「誰だ!?」チャキッ
勇者「わわっ!!」
???「人間か……!!」ゴオッ!!
勇者「え!?ぇえっと……」
???「強欲で醜く穢らわしい……人間め……!!」ビキッ
※関連記事:長老「今日は何番目の勇者様のお話をしようかのぅ?」
【1】
【2】
【3】
【4】(完結)
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長老「今日は何番目の勇者様のお話をしようかのぅ?」
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勇者「ちょ……!!」
ヒュッ!!
バキィッ!!
勇者「が……!!」
???「ハァッ!!」ビュバッ!!
勇者「こ……のぉ!!」
ガキーン!!
勇者(誰だか知らないけどこのまま黙って殺されてたまるか……!!)
勇者「痛い目みても知らないからな!?」
???「フンッ、笑わせてくれる」
勇者「はっ!!てやぁ!!」ビュン!!ヒユッ!!
???「……ほぅ……人間にしては少しはやるではないか……」サッ スッ
勇者「!?」
???「でやぁ!!」ビュンッ!!
勇者「くっ!!」ガッ!!
???「甘い!!」サッ!!
ガッ!!
勇者「!? 足ばらっ……!?」グラッ
ドサッ
???「終わりだな……フンッ!!」
ビュン!!
サッ
勇者『イオラ』!!
カッ!!
???「むぅ!?」
ザッ!!
勇者「危ないとこだった……」ハァハァ
???「咄嗟にイオラを放ってこちらの体勢を崩すとは……なかなか面白い」
勇者(……コイツ……強い!!それもかなり!!)
???「だが……これで終わりにしよう」
勇者「!?」
ゴゴゴゴゴッ!!
???『ジゴスパー…』
ホビット「ピサロ様!!」
ピサロ「……どうした、長老ではないか……見ての通り私は今忙しい。用があるなら後にしてくれないか」
ホビット「誠に恐縮ながら申し上げます」
ホビット「私はこのロザリーヒルで長老を務める身。例え貴方様であっても村でいざこざを起こすことを許すことはできません……なにとぞこの場は剣を納めて下さいませんか?」
ホビット「この通りです……」深々
ピサロ「…………」
勇者「……?」
ピサロ「……フンッ、いいだろう。どうせ私は進化の秘法の力で全ての人間を滅ぼすのだ、今ここで一人殺すも殺さないも同じこと」キィン
ホビット「ありがとうございます」
ピサロ「……それにロザリーの墓の前で薄汚い血を流すわけにはいかないからな……」ボソッ
ホビット「……ピサロ様……」
ピサロ「私は魔界に行き進化の秘法を使う……おそらく人間への憎悪に燃える今の私が進化の秘法を使えば破壊と殺戮のみを求める化け物と化すだろう」
ピサロ「ここでロザリーと過ごした日々も化け物となった私は忘れてしまうだろうな……」
ピサロ「そうなる前に言っておきたい」
ピサロ「長老、今まで世話になった」
ホビット「ピサロ様……私めには勿体なきお言葉です」
ピサロ「ロザリーが愛したこの村を頼む……」
ホビット「……はっ」
ピサロ「……とは言えこの私自身がここを焼け野原にしてしまうかもしれんがな」苦笑
ホビット「……ピサロ様、今からでも遅くはありません。もう一度……」
ピサロ「……それはできん。もう……引き下がることはできんのだよ……」
ホビット「…………」
ピサロ「では、達者でな」フッ
ホビット「…………」
勇者(…………ピサロ……どっかで聞いた名前なんだけど…………あ!!)
勇者(そうだ!!四番目の勇者の世界の魔王だ!!)
勇者(……でもアイツが魔王……本当に悪の親玉なのか……?)
勇者(たしかにアイツからはものすごい憎しみと怒りを感じたけど……どこか寂しげで悲しげな……そんな眼をしてたな……)
勇者「……っくしょん!!」
ホビット「人間の方ですな?どうしてこのような場所に……?」
勇者「え?えーと……」
ホビット「まぁずぶ濡れのまま立ち話もなんでしょう。私の家へ案内しましょう」
――――ロザリーヒル・長老の家
ホビット「さぁ、私の畑でとれたカボチャのスープです。良かったら召し上がって下さい。温まりますぞ」
勇者「あ、ありがとう」ズズー
勇者「んーー!!んまい!!」プハァ
ホビット「それは良かった。おかわりもありますからお好きなだけ召し上がって下され」ニコッ
勇者「ありがとう♪」
勇者「なぁ、ホビットのじいちゃん。質問してもいいかな?その……答えたくないことなら答えなくていいんだけど……」
ホビット「なんですかな?」
勇者「……ピサロはどうして人間をあんなに憎んでるんだ?しかもただ憎んでるだけじゃない……どこか悲しげに……」
ホビット「ふむ……今や話しても構わないでしょうな……少し長くなりますがお付き合い下さい」
ホビット「あるところに一人のエルフの娘がおりました。その娘は世にも珍しい『ルビーの涙』を流すエルフでした」
ホビット「強欲な人間達が毎日のようにその娘を傷めつけ涙を流させようとしていました」
ホビット「そんなある日、人間達にいじめられていたその娘を魔族の総司令官であったピサロ様が助けたのです」
ホビット「名もないそのエルフにピサロ様は『ロザリー』と名を与えました……ここ、『ロザリーヒル』からとったと聞いています」
ホビット「ピサロ様は人間達からロザリー様をお守りするため、この村の塔に彼女をお隠しになられました……たまに二人で過ごす時間は静かで幸せそうでした」
勇者「……」
ホビット「魔族のトップとして地上を支配する……つまり人間と闘おうとしていたピサロ様でしたが……ロザリー様は違いました」
勇者「……?」
ホビット「人間に傷つけられ、酷な仕打ちを受けても、ロザリー様は全ての人間が悪でないとわかっていたのです」
ホビット「ピサロ様の地上支配を止めたい、ピサロ様に人間は悪い者ばかりではないとわかってほしい……ロザリー様はそう願っていました」
ホビット「そんなある日事件が起きます……欲に眼の眩んだ愚かな人間達が……ロザリー様の居場所を突き止め……ロザリー様をさらい……そして……」
ホビット「殺してしまったのです」
勇者「……!!」
ホビット「ロザリー様の元に駆けつけたピサロ様でしたが時既に遅くロザリー様は還らぬ人となりました……」
ホビット「人間の醜さ、欲深さ、傲慢さを改めて思い知ったピサロ様は憎しみに燃えました……そして人間を滅ぼすことを決めたのです」
勇者「……」
ホビット「しかしピサロ様は心のどこかで『人間を滅ぼしたところでロザリーは生き返らない』『人間を滅ぼすことをロザリーは望んでいない』とお思いなのでしょうな」
ホビット「勇者殿がピサロ様を『悲しげ』と感じたのはそのためでしょう……」
勇者「……悲しい話だな……ピサロは人間の悪いところしか見ることができなかったんだな……」
ホビット「えぇ……」
ゴゴゴゴゴッ!!
グラグラグラ!!
勇者「じ、地震!?」
ホビット「……!!」
勇者「どうした!?」
ホビット「私にはわかります……地の奥深く……そこで禍々しい何かが生まれたのです……」
ホビット「おそらくピサロ様がその身を怪物へと変えたのでしょう」
勇者「……ピサロ……」グッ
ホビット「……ところで勇者様はどうしてこの村に?」
勇者「………………あーー!!そうだった!!そうだよ、この世界のことも心配だけど俺にもやらなきゃならないことがあるんだ!!」
ホビット「はぁ……」
勇者「ホビットのじいちゃん、えーと……緑の髪でスライムピアスをつけて盾と剣持った男を知らないか!?」
ホビット「えぇと……ん?あの者ですかな?」
ホビット「村の道具屋にいる……」
勇者「!?」
――――ロザリーヒル・道具屋
マーニャ「高いー!!もうちょっとまけなさいよ!!」
道具屋「そう言ってもわしも生活がかかっておってのぅ……」アセアセ
ミネア「姉さん!!お爺さん困ってるじゃない!!」
アリーナ「うーん、でもわたし達が貧乏なのはたしかだもんね~」
???「やれやれ、『遂にピサロとの最終決戦だー』とか言って装備を調えに天空城からここに来たはいいけど金欠はどうしようもないな~」苦笑
マーニャ「まったく、マスタードラゴンもあたし達に世界を救え、って言うなら金銭的援助ぐらいしてくれないのかしら!?」
ミネア「……そのお金が姉さんの手によってカジノで消えることになるのは目に見えてますけどね」
マーニャ「」グサッ
アリーナ「ん?誰か走ってくるよ?」
???「?」
ダダダッ!!
勇者「やっぱりそうだ!!間違いない!!」ハァハァ
勇者「4番目の勇……わっ!!」
ガッ!!
???「!? あぶなっ……!!」
ドンガラガッシャーン!!
勇者・???「」ピヨピヨ
アリーナ「……???」
マーニャ「ほほぅ、白昼堂々フォーを押し倒すなんて相当なガチホモね……」ニマニマ
ミネア「なんですぐそういう発想になるのかしら……」ハァ
――――ロザリーヒル郊外
フォー「……ってことらしい」
マーニャ「ふ~ん、ただのガチホモじゃないんだ~」
勇者「ホモじゃねぇよ!!」
マーニャ「あら、そうなの?じゃあ……あたしとイイコトする?」ズイ
勇者「え!?ぇえっと……////」モジモジ
ミネア「姉さん!!」
マーニャ「冗談よ、冗談」ケラケラ
ブライ「しかし……老いぼれの固い頭には今一つ信じられませんわい」
フォー「ん~、俺のこと信じると思ってさ、な?」
ブライ「まぁフォー殿がそう仰るなら……」
クリフト「私はこの者の修行に付き合うなんて反対です!!ピサロは進化の秘法で怪物となり世界を滅ぼそうとしているのですよ!?それにこのような得体の知れない者、姫様に何か危害を加えるかもしれませんし……」
アリーナ「あら、いいじゃない♪この人色んな勇者に修行つけてもらってきたんでしょ?わたしも手合わせしてみたいし」
クリフト「そ、そうですね!!私達の旅にも何かいつもと違う刺激があるのは良いことですね!!」
フォー・ライアン・ブライ・トルネコ(……情けない奴……)ガクッ
ライアン「……コホン、悪人かどうかなど眼を見ればわかります。こんな澄んだ瞳の悪人はいないでござるよ」
フォー「えーと……じゃあ自己紹介でもしようか」
フォー「俺はフォー。世間じゃ『天空の血を引きし者』とか『勇者』とか呼ばれてるけど……まぁこのパーティのリーダーだ。フォーって呼んでくれればいい、よろしくな」
ライアン「我輩はバトランド王宮騎士団のライアンと申す。今は世界を救うべくフォー殿にお供している身でござる。短い間でござろうがよろしくお願いいたす」
ペコ
勇者「あ、こちらこそよろしくな」
アリーナ「わたしはサントハイムの王女、アリーナって言うの。魔物の手で消されてしまったサントハイムのみんなを助け出すためにフォー達と旅をしてるわ、武者修行もできて一石二鳥ね♪」
勇者「……え?王女様が武者修行?」
アリーナ「そうよ、変?わたしは世界一強くなるのが夢なの」パァ
ブライ「やれやれ、だから『サントハイムのおてんば姫』などと呼ばれるんですぞ」ハァ
アリーナ「むっ」
ブライ「わしはブライ、姫様のお目付け役であると共にサントハイムの王宮魔法使いです、よろしく頼みますぞ」
クリフト「私はクリフトと言います、アリーナ姫にお供して世界を巡っております。王宮神官ですから回復呪文とザキは得意です!!」
フォー(ザキ厨が……)ハァ
トルネコ「私は武器商人のトルネコです。世界一の武器商人を目指してフォーさん達と旅をしています。あ、ちなみに私には美人な嫁がいましてね、ネネって言うんですが……」デヘヘ
マーニャ「はいはい、その話はまた今度ね」
マーニャ「あたしはマーニャ。情熱の街モンバーバラで踊り子のトップだったスーパーアイドルよんっ」ピンッ
ミネア「私はミネア……モンバーバラでは占い師として生計を立てていました。よろしくお願いします」
勇者「えーと、こっちがマーニャでこっちがミネア?よく似てるなぁ……」
マーニャ「そりゃ双子だからね~」
ミネア「下品な方がマーニャ、上品な方がミネアです」
マーニャ「ちょっと!!そりゃないんじゃない!?」
フォー「ハハハッ、こりゃいいや。これで俺達のことは大体わかったか?」
勇者「うん!でも……すごい大所帯だな、戦闘の時は8人で闘うのか?」
フォー「いや、流石にそんな大人数じゃ俺も指示が出せないからね、戦闘は四人で残りの四人は馬車の中で待機さ」
勇者「へぇ~、だから馬車があるのか」
フォー「あ、紹介が遅れたな、コイツはパトリシア。俺達の大事な仲間だ」
パトリシア「ヒヒーン!!」
勇者「よろしくな、パトリシア」
パトリシア「ブルルル……」
フォー「さて……俺のところでの修行は……」
ブライ「フォー殿」
フォー「ん?」
ブライ「先程クリフトも申しましたが世界に脅威が迫っているのも事実。のんびり寄り道などしてはいられないかと……」
フォー「あぁ、そうだな……じゃあ勇者にも魔界攻略を手伝ってもらおう!!」
勇者「魔界攻略!?」
フォー「ピサロがいるのは魔界の奥深く、でも俺達はまだ魔界に辿り着いてすらいない。この先魔物達の罠も待ち受けているだろうし仲間は多い方が良いだろ?」
アリーナ「勇者と一緒に闘えるの!?楽しみ♪」
ライアン「しかしそれでは我々の旅に勇者殿が加勢するだけで勇者殿の修行が疎かになるのでは……?」
フォー「それなら心配いらないと思うな、多分魔界にいる魔物達はピサロの側近達……つまり手練れだろう。勇者もそういった強敵とは闘ったことがないみたいだしいい実践経験になる」
フォー「……とは言えそれじゃ前の世界での修行とほとんど同じだから……うーん、そうだなぁ……」
フォー「ここらで勉強でもするか」
勇者「うえ!?」ゲェ
フォー「戦闘で頭を使うってのも大事なことなんだぞ、俺は仲間達に指示を出したりしてるからさ戦闘や魔物の知識に関してはそれなりにあるつもりだしそれを伝授しよう」
勇者「いや、でもさ、強けりゃそんなの……」アセアセ
フォー「甘いなぁ……じゃあ簡単な問題を出そう」
フォー「HPが200の魔物が二匹現れたとしよう。君は『一匹に200のダメージを与える攻撃』と『二匹に100のダメージを与える攻撃』が使える。君ならどう攻撃する?」
勇者「え……そんなの二回攻撃しなきゃならないんだからどっちでも同じじゃないか」
マーニャ「あたしは二匹に100を2回かな、一気に倒せた方が気持ちいいじゃん?♪」
アリーナ「わたしは一匹ずつ倒すな、やっぱり闘いは一対一じゃなくっちゃ!!」
ライアン「我輩もそうでござるな」
トルネコ「私はどっちでも同じような気が……」
クリフト「私もそう思います」
ブライ「やれやれ、情けないのぅクリフト」ハァ
クリフト「え!?」
ブライ「一匹に200を二回が正解じゃ」
ミネア「ですよね、フォーさん」
フォー「あぁ、その通りだ」
勇者・マーニャ「えー、なんでー?」
フォー「まず一匹に200を二回で闘うとしよう。一回目の攻撃で一匹の魔物を倒せる。そして残った魔物が君に攻撃してくるだろう。それを防ぐか避けるかして残りの魔物に攻撃して倒す……君は一回魔物から攻撃を受けることになる」
フォー「じゃあ二匹に100を二回で攻撃するとどうなるか。一回目の君の攻撃で二匹はダメージを受ける。そして二匹は君に攻撃を仕掛ける。その後君はまた二匹に攻撃をして倒す……君は二回魔物から攻撃を受けることになる」
勇者「あ……」
フォー「そう、同じ二回の攻撃で二匹の魔物を倒すように思えるけど実際はこっちが攻撃を受ける回数が違ってくるんだ」
フォー「実際の戦闘ではこんな風に計算通りにはいかないやりとりがあるワケなんだけど……戦闘で頭を使うことの大切さもわかっただろ?」
勇者「うん!!」
フォー「それに『この魔物は攻撃が効きにくいから呪文で倒した方が良い』、『この魔物にはこの呪文が効く』とか魔物にも特性があるからね。なんでもかんでもザキを使えばいいってもんじゃない」チラッ
クリフト「……」グサッ
フォー「だから俺は戦闘・魔物の知識を教えていこうと思う。と言っても勉強だけじゃ参っちゃいそうだから闘いを通して俺の仲間達に戦闘の修行をつけてもらうといい」
フォー「剣術……格闘……呪文に目利き……みんなそれぞれの分野のエキスパート達だ、きっと君の力になってくれるハズだ」
勇者「わかった!!」
アリーナ「わたし一度弟子ってとってみたかったの~、なんだかかっこいいじゃない?」パァ
ライアン「バトランドで培われた我輩の騎士道精神、しっかり勇者殿にお伝えするでござる!!」
勇者「みんなよろしくな!!」
マーニャ「攻撃呪文はブライ爺さん……回復呪文はクリフトにミネア……あーあ、あたし教えることないじゃ~ん」
マーニャ「……ねぇ、勇者、あたしがオトナのお勉強教えてあげよっか?」ニヒッ
勇者「ぇ?えっと……その……////」テレテレ
ミネア「姉さんは攻撃呪文の指導役です!!」グィ
マーニャ「痛い痛い!!冗談だってば、もぅ!!」
――――第四の世界・二日目・魔界へと続く道
ガラガラガラ
パトリシア「ヒヒーン」カポカポ
フォー「鳥系や空を飛ぶ魔物にはバギ系の呪文が有効だな、と言うのもバギ系は風を起こす呪文だから上手く気流を乱してやれば空を飛ぶ魔物はバランスがとれなくなって隙が出来る。バギ系呪文に耐性のある魔物でもこうして隙を作ることができるな。植物系の魔物の魔物は大抵が炎系の呪文が効きやすい……メラ系とかギラ系だな、でも希に植物系でも耐性のある奴が……って聞いてるか?」
勇者「……」
フォー「……」
勇者「……zZzZ」ポクポク
フォー「……」
ゴッ!!
勇者「いだぁっ!!」
フォー「なぁーに寝てんだ!!」
勇者「あぅ……ごめんごめん」ポリポリ
フォー「ったく、昨日も寝てただろ?」
勇者「うーん……なんか長くて難しい話って聞いてて眠くなっちゃって」ハハ
勇者「アリーナ達は外で魔物と闘う役なんだろ?俺も戦闘に参加したいよー」ブー
フォー「その戦闘をより効率的にするために俺が今こうして君に魔物の知識を教えているんだろ?」
勇者「う……はーい」
アリーナ「フォー!!洞窟抜けたみたいだよー!!」
フォー「お、そうか。待ってろ、今行く」ヒョイ
勇者「ここが魔界か~」
クリフト「紫の雲に濁った空気、血の様に赤い海……」
トルネコ「薄気味悪いところですね……」
フォー「ライアンとブライはどうした?」
マーニャ「なんでも敵の居城の斥候とか言ってさっき……」
ミネア「あ、帰ってきたみたいですね」
ライアン「……ダメでござるな」
フォー「?」
ブライ「あの城には強力な結界が張られていまして簡単には浸入できないようです」
フォー「……結界を解く術はあるのか?」
ブライ「あの手の結界はそれを形成するために幾つかの"柱"の様なものが必要です……私の見立てですが城の四方の四ヶ所の祠や塔がその役割を担っているかと……」
ミネア「……その場所、強い魔力を感じます……」
フォー「ピサロのしもべがそれを守っていると考えるのが妥当……か」フム
フォー「まぁなんにせよ今すぐ突入は無理だ、体勢を整えるためにもここらにキャンプでも作ろうか」
フォー「勇者はライアンに剣の稽古でもつけてもらえ、ずっと馬車の中で退屈だっただろ?」
勇者「うん、わかった!!」
――――魔界・フォー一行のキャンプ付近
勇者「せいっ!!」
ビュッ
ライアン「なんの!!」
ガキーン!!
キィン!!
カガキィン!!
キィン!!
マーニャ「へぇ、案外やるもんじゃない」
ミネア「えぇ、一ヶ月前は一般人とはとても思えませんね」
マーニャ「アンタも少しは力つけたらぁ?」
クリフト「わ、私ですか!?」
クリフト「しかし私は神官でして肉弾戦は苦手で……それに……」
クリフト「私にはザキがありますから!!」キッパリ
マーニャ(……言い切った)
ミネア(……むしろ清々しさすら感じる)
勇者「だりゃああ!!」
ライアン「むぅん!!」
ガッキーーーン!!
ヒュンヒュンヒュン
ザクッ
勇者「かー、負けちまったか……」
ライアン「むぅ……勇者殿はかなり腕が立ちますなぁ、まさかここまで本気を出すことになるとはこのライアン思ってもいませんでした」
勇者「そ、そうかな……?」テレッ
アリーナ「……」キラキラ
勇者「……?」チャッ
アリーナ「勇者ぁ!!次はわたしとやろう!!」
勇者「……え?別にいいけど……その……女の子とは闘いづらいと言うか……」
アリーナ「えー、何それ!!失礼しちゃうな!!」プンプン
ライアン「勇者殿……」ボソッ
勇者「?」
ライアン「本気でかかった方が良いでござるよ」ボソッ
勇者「??」
アリーナ「じゃあ行くよー!!」
ビュッ!!
勇者「な、はやっ……!!」
【勇者の咄嗟の突きをかわしざまに合わせたアリーナの右フックは】
【正確に勇者の顎の先端を捕え】
【勇者の脳を頭骨内壁に、あたかもピンポンゲームの如く繰り返し振動激突させて典型的な脳震盪の症状をつくり出した】
【既に意識を分断された勇者の下顎へダメ押しの左アッパー】
【崩れ落ちる体勢を利用した左背足による廻し蹴りは】
【勇者を更なる遠い世界に連れ去り――】
【全てを終わらせた!!! 】
【その間、実に2秒!!! 】
【これが、エンドール武術大会で優勝を収めたアリーナの、ベストコンディションの姿である】
勇者「」ドサッ
アリーナ「あら、呆気ないわね」
ライアン「むぅ……だから言ったのに……」
マーニャ(って言うか今のナレーションで元ネタ分かった奴はソッコー病院行くべきね)
アリーナ「おーい、勇者ぁ」ペチペチ
勇者「」
アリーナ「勇者ってばぁ」ペチペチ
勇者「……はっ!!」ガバッ
アリーナ「あ、起きた!!」
勇者「俺は……そうか……アリーナにやられて……」
勇者「……ってアリーナ強すぎじゃないか!?」
アリーナ「そうかなぁ?」シュビビッ
トルネコ「アリーナさんは呪文も使えませんしあまり強力な武具も装備できないのでフォーさんが入手した力の種や素早さの種、守りの種を全てアリーナさんに差し上げたんです」
勇者「!?」
アリーナ「なんだか種に頼ったみたいで嫌だからさ、ちゃーんと自分でも修行してるよ?」ヒュババッ
勇者(……見えない……)タラッ
アリーナ「さぁ!!2回戦行くぞー!!」
勇者「ちょっ、待っ!!」
【アリーナ腰を深く落とし真っ直ぐに相手を突いた!!】
ドゴォッ!!
勇者「がっ……!!」
【アリーナは爆裂拳を放った!!】
勇者「がぼぼぼぼっ!!」
【アリーナの飛び膝蹴り!!】
勇者「ぐっはぁぁ……!!」
ドサッ
勇者「」ピクピク
アリーナ「あれ~?またおしまい?」
アリーナ「クリフト~、ベホマお願ーい!!」
クリフト「はっ!!只今!!」ドヒュン
マーニャ「……実際アリーナがあたし達の中で一番強いんじゃない……?」
ミネア「えぇ……もしかしたらフォーさんより強いかも知れませんね……」
アリーナ「さぁ、3回戦だ!!」
勇者「助けてぇぇーー!!」
クリフト「あぁ……羨ましい……」ハァ
マーニャ「ダメだコイツ……はやくなんとかしないと」
――――第四の世界・三日目・魔界
ライバーンロード「グワアゥ!!」バサバサ
フォー「勇者!!そっち行ったぞ!!」
ガーディアン「ふんっ!!」
ガキーン!!
フォー「せいっ!!」ビュッ
ズバッ!!
勇者「えぇっと……空を飛ぶ魔物は……」
勇者『バギマ』!!
ビュオオオッ!!
ライバーンロード「!?」グラッ
勇者「今だ!!」
ズバッ!!
ライバーンロード「ギャオー……!!」
ズズーン
ミネア「お二人とも、回復致します」
勇者「いや、かすり傷ぐらいしかしてないし構わないよ」
フォー「俺が教えたことちゃんと覚えてたみたいだな」ニッ
勇者「当たり前だろ♪」
フォー「半分以上寝てたクセによく言うよ」
勇者「う……それを言われるとつらいな」ポリポリ
マーニャ「……で、パーティーはこの四人でいいの?」
フォー「あぁ、準備はいいか?」
勇者「おう!!」
――――結界の祠
アンドレアルA「ギャオオ!!」
ゴウゥゥ!!
フォー「ミネア!!」
ミネア「えぇ、わかってます!!」
ミネア『フバーハ』!!
フワッ
シュウウゥ!!
マーニャ「っつう!!フバーハあっても熱いわね!!」
勇者「フォー、ドラゴンの魔物は!?」
フォー「ドラゴン系の魔物は鱗が堅く皮膚が厚い上に体力もある。近接攻撃じゃ苦戦するだろう、だが火炎の息を吐くドラゴンは内臓器官に高熱の火炎袋を持っているから……」
アンドレアルC「ガウッ!!」
ビュン!!
フォー「……っと!!」サッ
アンドレアルB「ガルル!!」
シャッ!!
勇者「わっ!!」
ガキーン!!
勇者「解説はいいから早く!!」
フォー「つまり氷系の呪文に弱い!!」
フォー「ミネアはサポート、マーニャはそっちの一匹を!!時間を稼ぐだけで構わない!!」
アンドレアルA「グルル……」
マーニャ「りょーかいっ!!」
アンドレアルC「ギャオー!!」
フォー「コイツを片づけたらそっちに行く!!」
勇者「へっ、じゃあコイツは俺に任せな!!」
アンドレアルB「ギャース!!」
フォー「OK、行くぞ!!」
――――
勇者『ヒャダイン』!!
ビュオオオッ!!
アンドレアル「ガウッ!!」ググッ
勇者「マーニャ!!フォー!!今だ!!」
マーニャ「さぁ、ぶちかますわよ~♪」
マーニャ『イオナズン』!!
カッ!!
ドドーーーン!!
フォー「これで……」ダッ
フォー「トドメッ!!」
ズバンッ!!
アンドレアルA「ギャアアァァア!!」
ドシーン!!
アンドレアルA「……ピサ……ロサマ……ニ、コウウン……ヲ……」ガクッ
アンドレアルA「」
勇者「ふぃー、どうにか片づいたな」
フォー「ミネア、どうだ?」
ミネア「……はい、結界が弱まったのを確かに感じます」
マーニャ「お疲れお疲れー♪」
フォー「勇者、いい闘いぶりだった。正直敵の強者相手にここまでやれるとは思ってなかったよ」
勇者「へへっ、ありがとう♪でもここまでやれたのはフォーの的確な指示のお陰だな」
勇者「俺だけじゃなくてマーニャやミネアにもその状況での適切な指示を出してたもんな」
ミネア「えぇ、フォーさんが私達のリーダーたる所以です」
勇者「俺勉強は大ッ嫌いだけどフォーのそういう戦闘の知識、改めて知りたいと思ったよ」
フォー「そうか、じゃあビシバシいくからな?」
勇者「うん!!」
フォー「次寝たらゲンコツじゃなくてギガデインな」
勇者「ぇえ!?そ、そりゃひどいよ!!」アセ
――――第四の世界・四日目・夜
フォー「……で、ルーラの応用でトベルーラって呪文があるんだ。まぁこれは正式な呪文じゃないから契約とかは必要なくてルーラで飛ぶ要領で体を宙に浮かせる感じでできる。これをうまく使えば飛んでる敵とも互角に戦える。そこらへんは呪文担当のブライかマーニャに教えてもらえ」
勇者「へー、呪文にも応用とかあるのか~」
フォー「あぁ、でもまずはその呪文を完璧に使いこなせないと話にならないからな、呪文の応用は少しずつ練習していけばいいさ」
勇者「はーい」
アリーナ「フォー!!、勇者ぁー!!、ご飯できたよー!!」
フォー「ん、そうか。じゃあ今日の授業はここまでだな」
勇者「ふー、よっしゃ!!お腹ペコペコだよ~」
アリーナ「早くこないとわたしが全部食べちゃうからね♪」
勇者「だあぁ!!させるかぁ!!」
ブライ「ホッホッ、若いですなぁ」
――――魔界・フォー一行のキャンプ
トルネコ「ぐがぁ……!!すぴー……!!」ギリギリ
ミネア「うぅ……相変わらずトルネコさんのいびきはうるさいわ……ピサロを倒したら無事に快適な睡眠を得られるかしら?」ドヨーン
ライアン「ぐぅ……ぐぅ……」
ブライ「スー……スー……」
アリーナ「……さぁ、ピサロ!!かかってらっしゃい!!……むにゃむにゃ」
ボカッ
クリフト「姫様……!!もっといたぶって下さい!!……ぐーぐー」
マーニャ「すぴー……すぴー……」
ミネア「皆さんもよくこんな状況で寝れますね……」
ミネア「……あれ?フォーさんと勇者さんがいない……?」
――――魔界・森
勇者「機械や金属の魔物は……」フッフッ
勇者「えっと……」フッフッ
勇者「そうだ!電撃か関節部分への攻撃だ!!」フッフッ
勇者「ゴースト系の魔物は物理攻撃が効きにくいから……」フッフッ
フォー「よっ」
勇者「わぁ!!」
フォー「筋トレしながら今日の勉強の復習か……遅くまでお疲れ様、ほら冷えた水」ポイッ
勇者「……ったく、おどかすなよ……あ、ありがとう」パシッ
フォー「……なぁ、勇者?」
勇者「……ん?」ングング
フォー「勇者は『勇者の伝承』とやらで俺のこと知ってるんだよな?」
勇者「うん」
フォー「俺の……俺の村が魔族の手で全滅したこともか?」
勇者「……うん、知ってる……まぁそんなに詳しい状況まではわかんないけどな」
フォー「そうか……勇者、同じ境遇の君に聞きたい」
フォー「君は魔族を憎んでいるか?」
勇者「……!!」
フォー「正直に答えてくれないか?ありのままの気持ちを」
勇者「俺は……」
フォー「……」
勇者「俺は……多分魔族を憎んでいると思う」グッ
勇者「俺のじいちゃんを、友達を、村の人達を……一人残らず殺して……村のをメチャクチャにした魔族を許せない」ワナワナ
勇者「力を欲する理由も『世界を救う』なんて大層な理由はホントは建前で……復讐の気持ちがないと言ったら嘘になる」ギリッ
フォー「…………」
勇者「……なんかごめん……幻滅した?」
勇者「『お前なんか勇者にふさわしくない!!』とか思ってんだろ?」ハハッ
フォー「……いや、逆さ」
フォー「君が憎しみを胸に……自分の心を綺麗事で偽らない……そんな『勇者』で良かったと思った」
勇者「……?」
フォー「『勇者』なんてさ、世界の救世主みたいに思われてるけど……所詮はただの人間なんだよな」
フォー「面倒なことはやりたくないし、痛いことは嫌だし、時には人を憎んだり妬んだりもする……」
フォー「君が自分の中の憎しみを認めてるってことは……それはつまり自分をありのまま、完璧でなんかないただ一人の人間と自覚してるってことだ」
フォー「だからそんな君が『勇者』で良かった、って言ったんだ」
勇者「…………」
勇者「フォーも……」
勇者「フォーも……魔族を憎んでいるのか?」
フォー「うん……いや、憎んで"いた"ってのが正しいかな」
勇者「過去形……?」
フォー「勇者、敵の親玉……ピサロの哀しい話についても君は知ってるか?」
勇者「え?あ、あぁ……ロザリーヒルの長老のホビットからだいたいのことは聞いた」
フォー「そうか……じゃあピサロも人間を憎んでいるってことはわかるよな?」
勇者「うん……」
フォー「きっと俺がピサロの立場でも……人間を憎んでしまったと思う。ピサロが俺の立場でも……魔族を憎んでしまったと思う」
フォー「俺……ピサロの話を全部知った時……アイツがすごく可哀想になった……」
フォー「俺の村を滅ぼした張本人なのに……世界を壊そうとする巨悪なのに……憎いハズなのに……可哀想で仕方がなかった……」
勇者「……」
フォー「だけど……いや、だからこそ、かな。俺は闘うことを決意した」
フォー「ピサロへの憎しみからじゃなく……ピサロのことを悲しみと憎悪から解放してやりたくて……」
フォー「俺も憎しみにとらわれていたからこそ……ピサロを憎しみから解き放ってやりたいんだ」
フォー「自分の心の中にある憎しみを、怒りを、憤りを……確かに認めた上で、世界を救うため……ピサロを救うため……そのために俺は闘うんだ」グッ
フォー「死んでいった父さんも母さんもシンシアも村のみんなも……憎しみのためにピサロと闘えとは言わないと思う」
フォー「穢れを知らない人間の言う綺麗事なんてなんの価値もない。自分の中の暗く黒い感情をしっかりと見つめて、考え、そして掲げる綺麗事にこそ意味があると思う」
フォー「……だから俺はあえて綺麗事を言うよ」
フォー「人々の希望のために闘う……人々を悲しみから解き放つために闘う……それが『勇者』の使命だって」
勇者「……」
フォー「長々と話して悪かったな、俺と同じ境遇の君にどうしても話を聞いておきたくて、話をしておきたくて」
勇者「うん……ありがとう」
勇者「俺も迷って悩んで……穢れを知った心で綺麗事を見つけてみるよ」
フォー「……うん」
フォー「さて……と、ボチボチキャンプに戻って寝るとしようぜ」
――――草むら
ミネア「……フォーさん……」
ライアン「むぅ……流石フォー殿でござるな」ヨヨッ
マーニャ「ホントホント、偽善者にもホドがあるわよね~」
アリーナ「でもそこがフォーの良いところだよ!!」
ブライ「左様、あのやさしさ、正義の心こそがフォー殿の勇者たる所以でしょう」
クリフト「くぅ……私涙が……」ウゥ
ミネア「……って皆さんいたんですか!?」ギョッ
マーニャ「うん、なんだか面白そうだなぁって思って」ニヒッ
ライアン「決戦前にこうしてフォー殿のお気持ちを知ることができて良かったでござる」ウンウン
アリーナ「何があってもあたし達はフォーについていこうね、あたし達の信頼するリーダーにさっ♪」ニコッ
ミネア「えぇ……あれ?ところでトルネコさんは?」
マーニャ「あのオッサンはいびきかいて寝てるよ」
――――第四の世界・八日目・魔界・結界の祠
ライアン「むぅん!!!!!!」
ギガデーモン「はぁあ!!!!!!」
ガッ!!
ブワァッ
フォー「ブライ!!勇者にバイキルトを!!」
ブライ「はっ」
ブライ『バイキルト』!!
勇者(デカい棍棒振り回す巨体……典型的な力自慢タイプか……)ダッ
フォー「勇者、わかってるな?」
勇者「あぁ!!」
フォー「足元から!!」
勇者「切り崩す!!」
ズバズバン!!
ギガデーモン「がっ!?」
勇者『ライデイン』!!
フォー『ギガデイン』!!
ズガーーーーン!!
バリバリバリバリ!!
ギガデーモン「ぐあぁぁ!!」
フォー「ブライ!!たたみかけろ!!」
ブライ「えぇ!!」
ブライ『マヒャド』!!
ビュウウゥゥゥ!!
ガキーン!!
ギガデーモン「ぐっ……!!」
ライアン「もらったでござる!!」ブンッ
ズバアァン!!
ギガデーモン「……ぐふぅっ……」
ズズーン……
フォー「俺の教えたことがだいぶ身についてるみたいだな、勇者」
ブライ「見事な連携でしたな」
勇者「へへっ、伊達に寝る度にゲンコツで起こされてねぇっての」エヘン
フォー「そこは威張れるとこじゃないっての」ハァ
ギガデーモン「……ゼェ……ヒュゥ……」
ライアン「む、こやつまだ息があったか」チャキ
フォー「だが虫の息だ、トドメを刺すこともないだろう」
ギガデーモン「ぐ……うぅ……ピサロ様に栄光を……」
ブライ「……ピサロめはよほど部下から信頼されておるのですな、敵ながらそのカリスマ性には感嘆します」
フォー「……あぁ、そうだな……」
フォー「……ここの結界の柱は壊れた、行こうか……」
ギガデーモン「ピサ……ロ様に……栄光……を」
――――第四の世界・九日目
勇者「…………」
クリフト「そうです、私の魔力の波長に回復呪文を同調させて……」
勇者『ベホマ』!!
パアァ
クリフト「うん、上出来です」ニコッ
ミネア「えぇ」ニコッ
勇者「よっしゃ!!」ガッツ
勇者「ありがとう、クリフトとミネアのおかげで回復呪文に関しては随分と上達したよ♪」
ミネア「いえ、勇者さんの努力の賜物です」
クリフト「そうですね、勇者さんは才能がありますよ」
勇者「いやいやぁ」テレッ
ミネア「あ、そうだ。せっかくですから勇者さんのこと占って差し上げましょうか?」
勇者「え?ホント!?」
クリフト「ミネアさんの占いは怖いくらいに当たりますよ~」笑
勇者「なんだか楽しみだな」
ミネア「えぇ、う~ん……タロットより水晶占いの方がいいかしら」
ミネア「ではいきますよ?」
勇者「う、うん」
ミネア「…………」
ボワァ…
ミネア「これは……蛇?」
勇者・クリフト「蛇?」
ミネア「……蛇の隣に……鉱石?金属の欠片でしょうか?……それが三つと……青い宝石が1つ……」
勇者「???」
ミネア「蛇がそれらを食べて……龍になりました……」
ミネア「占いによるとその龍が勇者さんに大きな力を与えてくれるみたいですが……」
勇者「なんだかよくわかんないな~」
クリフト「私にもさっぱり」
フッ
ミネア「う~ん、そうですね……。占いは人の道を指し示すものです、この占いで見えたことがいつか勇者さんのお役に立つかもしれません」
勇者「そうだな、サンキューミネア。覚えとくよ♪」
アリーナ「あ、勇者見っけ!!」
勇者「アリーナ!!」ビクッ
アリーナ「ちょうどクリフトとミネアの回復呪文講座は終わったみたいね」
クリフト「はい」
アリーナ「じゃあ暇でしょ?わたしと組手しましょ♪」
勇者「え、えーと……この後はブライとマーニャの攻撃魔法講座があるから……その……」アセアセ
アリーナ「えーーーつまんなーい」
トルネコ「あれ?ブライさんとマーニャさんはフォーさんと一緒に最後の結界の柱付近の散策に行ったんじゃ……?」
勇者「ばっ!!」
勇者(空気読めよオッサンーーー!!)
アリーナ「じゃあ大丈夫だね」ニコッ
アリーナ「いくよーー!!」
勇者「ちょ、待っ」
アリーナ「わたしのこの手が真っ赤に燃える!!」
アリーナ「勝利を掴めと轟き叫ぶゥ!!」
カアアァァァ!!
勇者「ア、アリーナさん!?拳が光っちゃってますよ!?」
アリーナ「流派、サントハイム不敗最終奥義!!!!」
アリーナ『石破天驚拳』!!!!!!
カッ!!
ズアオッ!!
勇者「ぎゃーーー!!」
勇者「」ピクピク
アリーナ「あちゃー、これ手加減難しいのよね~」
アリーナ「クリフトー」
クリフト「はっ、只今!!」
クリフト『ベホマ』!!
パアァ
勇者「ハッ!?」ガバッ
アリーナ「さぁ!!第73回戦だよ!!……あれ74回戦?まぁいいや、次いっくよー!!」
フォー「ただい……って、アイツら何してんだ?」
マーニャ「さぁ?」
勇者「勘弁してくれぇー!!」ダダダッ
アリーナ「コラー!!師匠から逃げるんじゃなーい!!」ダダダッ
ミネア「勇者さん……不憫です」
――――第四の世界・十日目・結界の塔
フォー「これが最後の結界の柱だな」
アリーナ「でもなんでここだけ塔なんだろうね?他は小さな祠だったのに……」
クリフト「ここの魔物は別格、ということじゃないでしょうか?」
勇者「心して進もうぜ」グッ
――――結界の塔・最上階
???「今までお世話になりました」
エビルプリースト「ふははは、なに、気にすることではない。勇者一行が来るまでの良い暇潰しになったわ」
???「私も"デス"ピサロをこの目で見て進化の秘法の凄まじさを実感致しました」
エビルプリースト「真の完成まであと少し……その時こそが私が新たな魔王となるのだ!!……む?」
???「いかがなさいました?」
エビルプリースト「ようやく来おったか……」ククク
???「勇者達がですか?」
エビルプリースト「うむ」
???「そうですか……そろそろ時間ですし勇者達と事を構えるのは好ましくありません。私は失礼させていただきます」
エビルプリースト「そうか、達者でな」
???「はい、エビルプリースト様も……」フッ
エビルプリースト「……行ったか」
エビルプリースト(奴の秘めたる強大な魔力……私でさえ恐気がした……まさかあのような者がいようとはな……)
ザッ!!
フォー「お前が最後の結界の柱か」チャッ
エビルプリースト「"最後"……それは相対的な順序によるもので私達結界の柱に順番などないが……まぁいい。いかにも、私が最後の柱、エビルプリーストだ。よくぞここまでたどり着いたな」
アリーナ「……コイツ……できるね」サッ
勇者「先に言っとくけどコイツにはザキは効かないからな?」チャッ
クリフト「わ、わかってますよ」サッ
エビルプリースト「……? 見慣れない小僧がいるな」
エビルプリースト「……なるほど、貴様が部下から報告のあった勇者達の新たな仲間か」
勇者「まぁそんなところだな」
エビルプリースト「フフフ……このような者達に手を貸したりしなければ楽に余生を過ごすことができたものを……自ら絶望の中で生き絶えることを望むとは……とんだ愚か者よ」ククク
勇者「まったく……なんで悪人ってのは話が長いかな……」
アリーナ「まったくね」
クリフト「えぇ、教会のお偉い様の話よりつまらないです」
フォー「神官がそんなこと言っていいのかよ」ククッ
勇者「さて、じゃあ……」
フォー「いくぞっ!!」ドンッ
――――
フォー『ギガデイン』!!
ズガーン!!
バリバリバリ
エビルプリースト「ぐぅ……」ヨロッ
アリーナ「そこぉ!!」シュビ
エビルプリースト「なめるなぁ!!」
ガッ
アリーナ「な!?しまった掴まれ……」
エビルプリースト「この至近距離なら爆死確実だな」ニッ
エビルプリースト『イオナ…』
勇者「せやぁ!!」
ゴッ!!
エビルプリースト「ぬ!?」
勇者「アリーナ!!今のうちに!!」
アリーナ「うん!!」ググッ
バッ
クルクルクル
スタッ
クリフト『ベホマ』!!
パアァァァ
アリーナ「ありがと、クリフト」
クリフト「いえ……しかしコイツ」ハァハァ
フォー「あぁ……強い!!」
エビルプリースト「流石魔界の帝王を倒しここまで来た伝説の勇者とその仲間達といったところか」ハァハァ
エビルプリースト「まさかここまでできるとは思わなかったぞ……」ハァハァ
エビルプリースト「だが貴様達はここで死ぬのだ、私が新たな魔界の王になる前の最後の雑務といったところか……」
勇者「『新たな魔界の王』?……どういうことだよ?」
エビルプリースト「フフフ……簡単なことだよ、魔界の王はその身を破壊の化身へと変えた……理性を失ったあの化物では魔族達を統率することはもはや不可能」
エビルプリースト「そうなれば新たな魔族の指導者が必要となるであろう……?」
フォー「お前にその役が務まるとは思えないけどな」
エビルプリースト「なに?」
フォー「ピサロは他の魔物や魔族達から絶大な信頼を受けている……もはや崇拝に近い」
フォー「そのカリスマ性がお前にはない、と言っているんだ」
エビルプリースト「フフフ……」
エビルプリースト「フハハハハハハハッ!!」
勇者「……何が可笑しいんだよ?自分の器の小ささを馬鹿にされたのががそんなに面白いのか?」
エビルプリースト「いや、失敬。あまりに"ピサロ"と奴を盲信する者達が哀れだったものでな」ククク
フォー「"ピサロ"……?」
エビルプリースト「私が魔族の王となることは以前から決まっていたことなのだよ」ククク
エビルプリースト「ピサロは言わば私が王の座に就くための踏み台だ」
エビルプリースト「魔族の王として他の魔族達を率い、そして悲劇の王として人間を憎み魔獣となる……その後釜に私はおさまる……」
エビルプリースト「"全て私の計画通り"というワケだ!!」
勇者「!?」
フォー「まさか……!!」
エビルプリースト「そう、貴様の想像通りだよ」ニタァ
エビルプリースト「ロザリーの隠れ家を人間に告げ、ロザリーを人間共に殺害させたのはこの私だ!!」
勇者・アリーナ・クリフト「!!」
エビルプリースト「まぁ人間共にはちょいと強力な催眠をかけて欲の感情を強くしておいたがな」ククク
エビルプリースト「あぁ、なんと可哀想なピサロとロザリー!!」ヨヨッ
エビルプリースト「だが私は君達の尊い犠牲を無駄にはしないよ……ククク……フフフフフ……フハハハハハハハッ!!」ゲラゲラ
フォー「許せない……」ビキッ
フォー「ピサロは……アイツはきっとロザリーと二人で静かに暮らしていければそれで幸せだったハズなのに……」グググッ
フォー「その心を憎しみに染めて……己の野望のために利用しただなんて……!!」
フォー・勇者・アリーナ・クリフト「絶ッ対に許せない!!!!」
勇者「だあぁ!!」ドンッ!!
ヒュッ!!
ズバァン!!
エビルプリースト「な!?どこにこんな力が」ヨロッ
勇者「せい!!てやぁ!!はぁ!!」
ズバッズババッ!!
エビルプリースト「ぐぅ……このぉ!!」
エビルプリースト『メラゾーマ』!!
ゴオオォォォ!!
勇者「ぐっ!!」
アリーナ「だぁ!!」
ドゴォッ!!
エビルプリースト「がふっ!!」
エビルプリースト「消し飛べ娘ぇ!!」
エビルプリースト『イオナズン』!!
カッ!!
ドゴーーーン!!
エビルプリースト「ハァ……ハァ……盾も持たない小娘がイオナズンを食らえばただでは済むまい……」
モクモク……
クリフト「えぇ、盾も持たない小娘でしたらね」ドン!!
エビルプリースト「!?」
クリフト「盾を持った男が全力でガードすればなんとか……」ヨロッ
エビルプリースト「まさか爆発の寸前に……」
ザッ!!
アリーナ「ナイス、クリフト!!」
エビルプリースト「!?」
アリーナ『まわしげり』!!
ゴッ!!
アリーナ『爆裂拳ッ』!!
ガガガガッ!!
アリーナ『捨て身ィ』!!
ドッガァーーン!!
エビルプリースト「ぐっはぁ!!」ガフッ
勇者『バギクロス』!!
ビュォオオオ!!
ズババババッ!!
エビルプリースト「ぐあぁ……!!」
勇者・アリーナ「うぉおおお!!」
エビルプリースト「図に……乗るなぁ!!」
ガガッ!!
勇者「ぐっ……!!」
アリーナ「くっ!!」
エビルプリースト「ハァ……ハァ……このまま人思いに握り潰してくれるわ……!!」ギュウゥ!!
アリーナ「う……ぅう!!」ミシミシ
エビルプリースト「フハハハ!!!!」
勇者「……ぎ……もう……」ボソッ
エビルプリースト「んん?せっかくの死に際の最後の台詞だが弱々しくて聞きとれんな?もう一度言ってくれんか?」ニマニマ
勇者「時間稼ぎは……」
勇者「時間稼ぎはもういいか!?フォー!!!!」
フォー「あぁ!!待たせたな!!」ドン!!
エビルプリースト「!?」
エビルプリースト「な……なんだそのいかずちの剣は……!!」
フォー「この一太刀は……ピサロの怒りだああぁぁぁ!!」
エビルプリースト「やめ……」
フォー『ギガソードォォォ』!!!!!!
カッッッ!!!!!!
ズバァァァァン!!
エビルプリースト「……ば、馬鹿な……」
ブシャアアァァ!!
エビルプリースト「魔界の王たる私がこんな……もう少しで進化の秘宝が……」ガフッ
ドサァッ
エビルプリースト「」
勇者「終わった……な」ハァハァ
フォー「いや、まだ肝心な奴が残ってるさ……」キン
フォー「ピサロを憎しみから解放した時が本当の終わりだ……」
アリーナ「……ピサロ」
クリフト「…………神よ……哀れな魔族の王は破滅によってしか救われないのでしょうか……?」
――――
エビルプリースト「」
使い魔A「おい、エビルプリースト様死んじまったぞ!?」ヒソヒソ
エビルプリースト「」ピク
使い魔B「……いや、まだ息があるようだ!!急いで治療すればまだ間に合う!!」
使い魔A「こうしちゃいられない、早く運ぶぞ!!」
――――魔界・フォー一行のキャンプ
ライアン「……そんなことがあったのでござるか……」
ミネア「部下に踊らされて憎悪の塊となってしまったなんて……ピサロ……敵ながら憐れとしか言い様がありませんね……」
フォー「でも……アイツにどんな事情があるにせよ、人々を、世界を壊すことを許すワケにはいかない」
フォー「だから俺は闘うよ、ピサロのためにも」グッ
ブライ「フォー殿……」
勇者「フォーらしいな、やっぱりどこの世界でも『勇者』は『勇者』……だな」ニッ
キラキラキラ……
勇者「あ……」
フォー「勇者……?」
アリーナ「わー!!勇者光ってるよ!!どうしたの!?」
勇者「いや……その……お別れの時間なんだ」
アリーナ「……えっ?」
ライアン「!!……そうでござるか……」
勇者「みんな、今までありがとうな、短い間だったけどすごく楽しくてすごく充実した時間が過ごせたよ」
フォー「勇者……君がいてくれたおかげで魔界攻略が随分はかどったよ」
フォー「ありがとう」
勇者「いやいや、俺の修行のために裂いてくれた時間がなかったらもっと早く結界を破れただろ?」
勇者「お礼を言うなら俺の方だよ」
ライアン「勇者殿、『弱きを助け、悪しきを断つ』……バトランド騎士団の信条でござる。勇者殿に誇り高き騎士の精神が宿らんことを……」ペコッ
勇者「ライアン……剣だけじゃなくてアンタには騎士道精神、しっかり教えてもらったよ」
アリーナ「勇者、暇な時とか修行の合間とかに組み手してくれてありがとうね。結局私の99戦全勝だったけど……勇者はセンスあると思うよ、またやろうねっ」
勇者「アリーナ……うん、その時はぎゃふんと言わせてやるからな?」
勇者(ホントは御免こうむりたいけど……)ハハッ
ブライ「呪文は精神に大きく左右される。いつも冷静に、心を乱さないことを心がけなされよ」
勇者「ブライ爺さん……呪文の稽古つけてくれてありがとうな、バギクロスとベギラゴンが使えるようになったのはブライ爺さんのおかげだよ」
クリフト「勇者さんはお一人で魔族達と闘うのでしょうからご自分の魔力の波動のパターンをしっかり理解なさって下さいね」
勇者「クリフト……うん、回復呪文の指南役本当にありがとう。ベホマが使えるようになったのは本当に大きいよ」ニカッ
マーニャ「勇者……あの夜の激しいあなた……あたし忘れないわ」ウル
勇者「マーニャ……わけがわからないよ」
ミネア「姉さん……場の空気壊さないで下さい!!」ビシッ
マーニャ「ナハハ、いや~あたし昔から湿っぽいのは嫌いでさ~」
ミネア「……まったく……勇者さん、お身体にお気をつけて」ペコッ
勇者「うん……ミネアの占いがいつどこで役立つかわからないけど、胸に刻んでおくよ」
トルネコ「…………」
勇者「…………」
トルネコ「…………」
勇者「い、色々ありがとな!!トラネコ!!」
トルネコ「やっぱり私何もしてませんよね!?ねぇ!?むしろオチが私の仕事ですか!?なんで私っていつもこんな仕打ちなんですか!!??」ブワッ
勇者「トラネコ……」
トラネコ「いやトルネコですから!!……ってなんでトラネコ表記になってるんですか!?ちょっとーー!!」ブワワッ
キラキラキラ……
フォー「元気でな、勇者」
勇者「うん、色々と教えてくれてありがとな」
フォー「三歩歩いて忘れたんじゃ大ニワトリ以下だからな?ちゃんと反復して知識を定着させろよ?」
勇者「アハハ、そうだな」苦笑
勇者「あとさ……俺と同じ境遇のフォーと出会えて良かったよ」
フォー「そっか……うん、俺もだ」
キラキラキラ……
フォー「……で?」
勇者「ん?」
フォー「俺と同じ境遇のお前はどんな結論に達したんだ?どんな想いで闘うんだ?」
勇者「んっと……正直わからない」
勇者「俺は世界のことも、魔族のことも、てんでわかっちゃいないからさ……まだフォーみたいにしっかりとした意志はない……」
フォー「……」
勇者「だけど一つだけ分かったことがある」
フォー「……それは?」
勇者「恐怖し悲しみ絶望して涙を流す人々がいたら、その涙が流れないようにするのが俺の役目だ、ってこと」
フォー「フッ……それがわかれば上出来だな」ニッ
勇者「きっとフォーもそう思ってピサロと闘う決意をしたんだろ?」
フォー「……あぁ」
キラキラキラ……
勇者「憎しみのためじゃなく、復讐のためじゃなく、俺はそのことを胸に闘うよ」
フォー「じゃあ俺もそのために闘おう……ここに誓おう」
アリーナ・マーニャ「穢れた綺麗事に懸けてってね♪」
勇者「あれ?なんでその話を!?」
フォー「さてはお前ら……!!」
トルネコ「え?なんの話ですかな?」
一同「アハハハハハハハハ」
キラキラキラ……
フォー「じゃあな、勇者」
勇者「うん」
キラキラキラ……
勇者「じゃあな……」
キラキラキラ……
フッ……
アリーナ「はぁ~、行っちゃったね~」シミジミ
ライアン「あっという間でござったなぁ……」
フォー「……勇者には勇者のすべきことがあるように、俺達にもすべきことがある……準備ができたらピサロの城へ向かうとしようか」
トルネコ「いよいよ進化の秘宝を使ったピサロとの決戦ですね」ゴクッ
フォー「あぁ、二、三日中には世界の命運を賭けた戦いの火蓋が切られる……みんな覚悟はいいか?」
ミネア「……そのことですがフォーさん」
マーニャ「ちょっとあたし達で考えたことがあんのよね~」
ミネア「先程のピサロの真実を聞いて一層強く思ったのですが……」
フォー「……?」
ブライ「ピサロを倒すのではなく、何か別の方法で世界を救ってみようではありませんか」ニッ
ミネア「世界中を旅してきた私達ですが、まだまだ知らないような神秘や奇跡がこの世界には満ちているでしょう」
アリーナ「そーゆー奇跡を探しに行かない?勿論時間はあんまりないだろうけど、それでもやってみようよ!!」
ライアン「フォー殿もさっきご自分で『涙を流している人の涙を止めるのが自分の役目』と言ったでござろう?」
クリフト「きっとピサロの魂も泣いていると思うのです……だから……」
フォー「お前ら……」
アリーナ「……どうかな?私達みんなで話し合ったんだけど……ダメ……かな?」
フォー「ハハッ……ダメなもんか」
フォー「化物と化した魔族の王を人間風情が倒して世界を救うなんて奇跡を起こそうなんて馬鹿なこと考えてるのが俺達だ、だったら馬鹿は馬鹿らしくもっとすごい奇跡を狙ってみるのもいいだろう!!」ニカッ
ミネア「じゃあ……」
マーニャ「決まり……ねっ♪」
フォー「闘わずにピサロを救って世界を救う……その方法を探しに行こう!!」
一同「おーーー!!」
トルネコ(……そして私だけ仲間外れなんですね、わかります)シクシク
――――星の海
ルビス『おかえりなさい……勇者』
勇者「ただいま……今度の勇者には戦闘や魔物の知識を教えてもらったよ」
ルビス『……なんだか逞しくなっていきますね、勇者』
勇者「そ、そうかな?」
ルビス『えぇ……十日おきに貴方がここに帰ってくる度に私はそう思います』
勇者「はは、ありがと」
ルビス『さぁ、次の世界へいざなうまでお休みなさい……』
勇者「……うん、おやす……って、あ!!」
ルビス『どうかしましたか?』
勇者「ルビスお前!!毎回毎回あれはわざとなのか!?」
ルビス『ぇえっと……なにがでしょうか?』
勇者「とぼけんな!!違う世界に俺のこと飛ばす時だよ!!」
勇者「毎回毎回高いとこから落とされて地面に頭ぶつけるしさ、前回なんて下が川で死ぬかと思ったんだぞ!?」ムカッ
ルビス『そ、そうですか……しかし別次元への生命体の転送というものは高度な技術と膨大な魔力を要するものでして……』
勇者「知るか!!今度からそーっと転移させてくれよ!?」
ルビス『はぁ……善処します』シュン
勇者「あー、やっと言えた~」
勇者「これで心置きなく寝れるぜ、んじゃおやすみ~」
勇者「zZzZ」
――――第五の世界
パッ
勇者「おっ?」
フワッ
スー……
ストン
勇者「おー!なんだ、やればできるじゃないか♪」
勇者「うーん、清々しい朝だな~、絶好の勇者捜索日和だな♪」
???「ガオォ!!」
???「わー!!」
???「きゃー!!」
勇者「!? 悲鳴!?」ダッ
キラーパンサー「ガウゥ……」ジリジリ
???「うわーっ」
ガサッ
勇者「なっ!?」
勇者「子供達がキラーパンサーに襲われてる!?」
キラーパンサー「ガウガァ!!」バッ
勇者「危ない!!」ダンッ
???「!?」
サッ
キラーパンサー「ガゥ?」スカッ
スタッ
勇者「大丈夫だったかい?」ニコッ
???「あ、レックスお兄ちゃんずるいー!!」ブー
レックス「誤解だよタバサ!!ぼくは悪くないよ!!このお兄ちゃんがいきなり飛び出してきたのがいけないんだよ」ブー
勇者「え?俺ぇ?」
レックス「うん」
勇者「でも俺が来なかったらお前はキラーパンサーに食べられてたかもしれないんだぞ!?」
タバサ「ゲレゲレはそんなことしないです」
レックス「ぼくたち鬼ごっこしてただけだもん。ねー、ゲレゲレ」
キラーパンサー「クゥン……」
勇者「……は、はぁ?」
――――
勇者「へぇ~、ホントによくなついてるんだなぁ」
タバサ「はい♪」ナデナデ
ゲレゲレ「ゴロゴロ……」
レックス「ゲレゲレはお父さんが子供の頃からずっとお父さんと友達だったんだって」
勇者「へぇ……"地獄の殺し屋"なんて言われてるキラーパンサーがこんなに人になつくなんて聞いたことないや」
レックス「ゲレゲレだけじゃないよ、お父さんはたっくさんの魔物たちと友達なんだ♪」
勇者(モンスター使い……魔物を改心させることのできる存在か、もしかしてこの子達の父親って……)
ガサッ
???「お、いたいた」
レックス・タバサ「あ、お父さん!!」
???「レックス、タバサ、こんなところにいたのかい?……まったく、元気なのはいいけど元気すぎるというのも……?」
???「そちらの方は……?」
勇者「黒髪で紫のターバンに紫のマント!!五番目の勇者だ!!」
???「勇者?勇者は私ではなく……」
レックス「勇者は僕だよ!!」
勇者「え?あぁ、そうか、たしかにそうなんだけど……村の伝承じゃレックスのお父さんが勇者で……」
???・レックス・タバサ「???」
――――グランバニア・玉座の間
レックス「すごーい!!じゃあお兄ちゃんは色んな世界の色んな勇者に会う旅をしてるんだね!?」キラキラ
???「うん……そうだよね、勇者?」
勇者「あぁ」
レックス「かっこいー♪」キラキラ
タバサ「ロマンチックです」キラキラ
勇者「そ、そう?」フフン
???「さて、勇者の自己紹介は済んだことだしこっちの自己紹介でもしようかな」
???「私はファイブ。このグランバニアの王だ。今は魔界の王、ミルドラースを倒すために旅をしている」
勇者「よろしく、ファイブ」
ファイブ「この二人が私の双子の子供のレックスとタバサ」
レックス「よろしくね、お兄ちゃん」
タバサ「よろしくお願いします」ペコッ
勇者「うん、よろしくな」
ファイブ「こっちは私の妻の……グランバニア王妃ビアンカ」
ビアンカ「ただの宿屋の娘で王妃様ってガラじゃないんだけどね、よろしくね勇者君」ニコッ
勇者「よ、よろしくお願いします」
勇者(綺麗な人だなぁ……)ポワァー
ファイブ「……コホン」
勇者「!!」ドキッ
ファイブ「それと……グランバニアに代々仕える召し使いのサンチョ」
サンチョ「よろしくお願いします、勇者さん」
勇者「よろしく」
勇者(……なんかこの人トルネコに似てるな……)
サンチョ「どうかなさいました?」
勇者「あ、いや、なんでもない」
勇者(多分関係ないだろ)
勇者「……でもみんな俺が別の世界の人間だなんて信じられるの……?」
ビアンカ「たしかに正直言ってびっくりしたし信じられない気持ちもあるわ。でも……」
レックス「お兄ちゃんは嘘なんかついてないよ!!」
タバサ「勇者さんは優しい人だからきっと本当の事を言ってると思うの……」
ビアンカ「子供達もこう言ってるし私は信じるわ。それに勇者君そんな嘘をつくような子には見えないし」ニコ
サンチョ「そういうことですね」ニコ
勇者「……ありがとう」
ファイブ「さて、この世界での修行だが……魔物の心を理解できるようになろうか」
勇者「!?」
ビアンカ「え?でもファイブ……あなたが魔物を改心させることができるのはエルヘブンの民の血を色濃く受け継いだお母様の子供だからでしょ?」
ビアンカ「あなたの血を引くレックスやタバサでさえ魔物と仲良くなることはできても改心させることはできないし……」
ファイブ「うん、確かに魔物を改心させることができるのは母さんと僕ぐらいだろう」
ファイブ「けれど誰でも訓練すれば魔物の心を理解すること……つまり『魔物の動きを読む』ことはできるんようになれるんだよ」
ビアンカ「そうなの?」
ファイブ「あぁ、魔物の動きを目で追うんじゃなくて魔物が持つ魔力を感じとるんだ」
レックス「……?」
タバサ「それってわたしとお兄ちゃんが魔物さんとお話できることと関係あるの?」
ファイブ「あぁ、レックスとタバサは僕の子供達だから訓練なんてしなくてもなんとなくできてしまっているみたいだけどね」
勇者「へ~……なんだかすごそうだな」
ファイブ「第六感って言うのかな。極端な話この力を扱いこなすことができたら目を瞑ったって魔物と闘えるようになるよ」
勇者「ぉおー!!某有名バトル漫画の『気』みたいだな!!」
ファイブ「それは突っ込んじゃいけないところだ」苦笑
勇者「で!?何したらいいんだ!?」ワクワク
ファイブ「うん、じゃあまずは妖精の世界へ行こうか」
――――妖精の世界・妖精の村・ポワンの館
ベラ「はぁ~今日も良い天気ね~」
ベラ「だけど」
ベラ「つまんなーい」ゴロゴロ
ルナ「ハァ……行儀が悪いわよ、ベラ。ポワン様が見たらなんと言うか」
ルナ「それに世界がミルドラースの手に落ちようとしているのに不謹慎よ」
ベラ「だって~」ゴロゴロ
ルナ「……ん?あれは……」
ベラ「ん?」ヒョコ
ベラ「あ!!ファイブじゃない!!」
――――妖精の村・入口付近
勇者「ここってなんだかポカポカしてるなぁ~風も水も暖かいし」
ビアンカ「えぇ、素敵なところよね」
ファイブ「昔は雪と氷だらけでいつまでも春が来なかった時もあったんだよ?」
勇者「ここがか!?」
レックス「でも子供の頃のお父さんが妖精さん達の世界を救ってあげたんだよ♪」
勇者「へぇ~」
ベラ「ファイブー!!」タッタッタ
ファイブ「やぁ、ベラ」
タバサ「ベラさんっ」
ベラ「ようこそ、妖精の村へ……?」
勇者「妖精って初めて見るなぁ~、あんまり人間と変わらないんだな」ジー
ベラ「? 見ない顔ね」
ファイブ「うん、彼のことで来たんだ。ポワン様はいるかな?」
――――妖精の村・ポワンの館
ポワン「ようこそいらっしゃいましたファイブ」
ファイブ「お久しぶりです」ペコッ
ポワン「心の目であなたのことを見ていたので概ね事情は解っています。その者に魔力を知覚する術を習得させたいのですね?」
ファイブ「えぇ」
ポワン「勇者……私の目をよく見て下さい」
勇者「あ、はい」ジー
ポワン「……」ジー
勇者「……?」ジー
ポワン「なるほど、たしかに素質があるようですね」
ポワン「勇者がこの村に滞在することを許可しましょう……この妖精の村は人と魔物と妖精が互いに手をとりあって暮らすことを目指す村、貴方の滞在を歓迎しますよ」ニコリ
勇者「あ、ありがとうございます……」
勇者「でもさっぱり話が見えないんだけど……妖精の世界で過ごすとその魔力を知覚する術とやらが身につくのか?」
ファイブ「あぁ、妖精の世界は不思議な魔力で満たされていてね、ここで過ごしていれば自然と魔力知覚ができるようになる」
ファイブ「加えて君は素質がある。瞑想などの修行で常人より遥かに早く魔力知覚を習得することができるだろう」
ポワン「ファイブが魔物を改心させて仲間にできるのもエルヘブンの民の血だけでなく幼い頃にこの世界を訪れたことも関係しているのです」
勇者「へぇ~」
ファイブ「世界各地のモンスター爺さん達が魔物と心を通わせることができるのも、みんな子供の頃に私のように妖精の世界に来たことのある人達だかららしいよ」
レックス「えー!?そうだったんだ!!」
ビアンカ「あのお爺ちゃん達にそんな秘密がねぇ~」ヘェ
ファイブ「……と、言うワケで勇者には妖精の村で修行してもらうよ。修行については基本的に私が見ようと思うけれど、グランバニアで王としてやるべき仕事をしながらになるからいつもこちらにいることはできないな」
ビアンカ「じゃあ私はファイブのお手伝いね」
レックス「ねーねーお父さん、ぼくたちは?」
ファイブ「ん~、じゃあレックスとタバサは勇者の修行に付き合ってあげてくれないかな?」
レックス「やったー♪」
タバサ「わかりました」
勇者「よろしくな、二人とも♪」
――――魔界・エビルマウンテン最深部
ミルドラース「…………」
ミルドラース「……誰だ?」ギロリ
コツコツコツ……
???「気配を消して近づいてもお気付きになるとは……流石魔界の王と称されるミルドラース様、お見逸れ致しました」ペコリ
ミルドラース「ほぅ……私を魔界の王にして王の中の王、ミルドラースと知っていてここに来るか」
???「えぇ、生物の究極の力を求め進化の秘法の存在にたどり着き、神の怒りを買い魔界へと封ぜられし元人間の男……よく存じております」
ミルドラース「昔のことよ……今や私は神をも凌駕する力を手に入れた。マスタードラゴンへの復讐を遂げ地上を我が物とするのも時間の問題だ」グッ
???「誠にその通りでございますね」
ミルドラース「……して、そなたは何故私の元に来た?その内に秘めしどす黒い魔力……神の使者でないことはわかるが……私の首でも獲って新たな魔界の王にでもなりに来たか?」ニヤ
???「フフフ、それもまた一興ですね。しかし私は別の目的で貴方の元を訪れたのです……」
ミルドラース「……?」
???「貴方から進化の秘法の理を知るために」ニッ
――――第五の世界・二日目・妖精の村
レックス「はい、ゲレゲレご飯だよ」
ゲレゲレ「ゴロゴロ……」ガツガツ
タバサ「ロビンも油注してあげるね」
キラーマシン「アリガトウゴザイマス……」プシュー
勇者「…………」ゴシゴシ
ゴーレム「…………」
勇者「……………………」ゴシゴシ
ゴーレム「……………………」
勇者「……だぁ!!」バシィ
勇者「なんで修行が魔物の世話なんだよ!?」バンバン
ゴーレム「……イタイ……」
ベラ「ファイブも言ってたけど魔物の持つ魔力を知覚できるようになろうとしてるんだから良い魔物と心を通わせられなくてどうするの」
ベラ「とは言えファイブの仲間の魔物達は沢山いるから全部世話してたら結構ハードね……ファイブもなんだかんだスパルタなのかしら?……あ、世話が一段落したらファイブが瞑想に付き合うから早いとこ片付けなきゃね」
勇者「ぐぬぅ……!!」ゴシゴシ
ゴーレム「…………」
レックス「お兄ちゃん、ゴレムスの体洗い終わったら次はキングスにご飯あげてね」
勇者「わあーってるわ!!」ゴシゴシ!!
――――
勇者「…………」シーン
ファイブ「基本は呪文を使う時と同じだよ」
勇者「…………」
ファイブ「世界に満ちる魔力を感じとる様に、今度は人や動物、魔物達が持つ魔力を感じとるんだ」
勇者「…………」
ファイブ「……どう?」
勇者「……ふぅ、やっぱすぐにはわかんないや」
ファイブ「まぁそうだろうね」
勇者「人や動物、魔物の持つ魔力ってさ、回復呪文を使う時の魔力の波長のこと?」
ファイブ「?」
勇者「前に回復呪文を教えてくれた先生が『回復呪文を使う時は自分の魔力を相手の魔力の波長に同調させると効果が高い』って言っててさ」
ファイブ「!!」
勇者「回復する相手の魔力の波長を感じとる修行をしてたんだけど……」
ファイブ「それだよ!!」
勇者「っつてもまだ短い距離でしか魔力を感じることはできないんだけどな」ハハッ
ファイブ「でもその感覚をもっと広い範囲に拡げていけばいいんだ」
ファイブ「君の先生達は優秀な人達ばかりみたいだね」
勇者「へぇ~……」
勇者(ミネアとクリフトに感謝しなくちゃな♪)
――――二日目・妖精の村・夜
ビアンカ「は~い、ご飯できたわよ~」
勇者・レックス「いっただっきまーーす!!」ガバッ
ガツガツガツ
タバサ「二人ともそんなにがっつかなくても……」
勇者「うめぇーーー!!」
ビアンカ「ふふ、ありがとっ」
レックス「もはあはんはほっへほほーひはほーふはんはお(お母さんはとっても料理が上手なんだよ)」モゴモゴ
ファイブ「こら、レックス、口に物を入れたまま喋らない」
レックス「はーい」モグモグ
ビアンカ「調子はどうなの?」
勇者「ん~まずまずかな」
勇者「魔力の知覚ってやつ?前の世界で回復呪文の修行を受けてたのが役に立ったみたいでさ、大体半径3mぐらいまでならそこにいる生き物の"存在"を知覚できるようになったよ」
ビアンカ「へぇ~じゃあ順調なんじゃない?」
勇者「でも動きを読むなんてまだまだできないなぁ」ポリポリ
ファイブ「二日でここまでできるようになればたいしたものだよ」ニコ
ファイブ「瞑想で魔力知覚の範囲を拡げ、魔物の世話で心を通わせれば次第に動きも読めるようになるさ」
勇者「りょーかい」
レックス・タバサ「ごちそうさまでした!!」
ビアンカ「ほら、レックス口が汚れてるわよ」
レックス「へ?」
タバサ「お兄ちゃんだらしない……」
ビアンカ「まったくもう……誰に似たのかしら?」フキフキ
ファイブ「僕は君じゃないかなと思うけどな」フフッ
ビアンカ「そういうセリフは口のまわりについたご飯粒をとってから言って欲しいわね」クスッ
ファイブ「へ?」
一同「アハハハハハ」
勇者「親子で仲が良いんだなぁ」
ビアンカ「そうね、大切な家族ですもの」
タバサ「……わたしとレックスは生まれたばかりの頃にお父さんとお母さんと離れ離れになってずーっと会えない日が続いたんです」
タバサ「だからお父さんとお母さんと一緒にこうしていられる今がすごく幸せ……」
レックス「ぼくも!!」
ファイブ「それはお父さんもお母さんも一緒さ、ね?」
ビアンカ「そうよ」ニコッ ナデナデ
タバサ「えへへ~♪」
レックス「お兄ちゃんのお父さんとお母さんはどんな人たちだったの?」
勇者「え?う~ん……あんまり覚えてないんだ」
勇者「父さんも母さんも俺が小さい頃に病気で死んじゃってさ、物心ついた頃からずっとじいちゃんに育てられてたから……」
レックス「あ……ごめんなさい、聞いちゃいけないことだったね……」
勇者「気にすんな、父さんと母さんが死んだのはあんまり昔のことだから悲しくないし俺にはじいちゃんって家族がいたからな、村のみんなも優しかったしな」
タバサ「…………」
ビアンカ「さ、ご飯が済んだら早く寝なさい」
レックス「は~い」テクテク
ビアンカ「ちゃんと歯磨きするのよ」
タバサ「はいっ」テクテク
ファイブ「おやすみ、レックス、タバサ」
レックス「おやすみなさ~い」
勇者「おやすみ」
タバサ「おやすみなさい」
バタン
勇者「…………」
ファイブ「……どうかしたかい?」
勇者「……いや、なんつーか」
勇者「家族っていいもんだな~、って思ってさ」
勇者「俺の父さんと母さんが生きてたら……こうして一緒にご飯食べたりたまに喧嘩したり……でも笑いあって……そんな風に過ごせていたのかな……って」
ビアンカ「……」
勇者「……っと、らしくないな、何言ってんだろ俺」苦笑
ファイブ「……」
勇者「なぁファイブ……俺、村の伝承でファイブのことも少しは知ってるんだけど……」
ファイブ「うん……」
勇者「その……さ、生きることに絶望したりしなったりしなかったのか?」
勇者「お父さんを目の前で殺されて……子供の頃からずっと奴隷として扱われてきて……自由の身になって結婚して幸せな日々を過ごせると思ったら子供達の成長を見守ることもできずに夫婦で石にされて離れ離れ……」
勇者「石から元に戻ってやっとお母さんに会えたのにそのお母さんも目の前で殺されちゃうなんて…………俺だったら耐えられないよ」
ビアンカ「…………」
勇者「じいちゃんが勇者の伝承の話を聞かせてくれる度に、五番目の勇者の話……ファイブの話を聞くといつも不思議に思ってたんだ」
勇者「……どうしてそんなに強いんだ?」
ファイブ「…………」
ファイブ「……私は強くなんてないよ」
ファイブ「つらいことや悲しいことがある度に涙を流しては『どうして自分ばかりが』って人生を呪ってばかりさ」
ファイブ「……でもこうして今を……未来を目指して生きていられるのはきっと失ったものを数えずに得たものを、得られるものを数えようとしているからだと思う」
ファイブ「……私が奴隷として生きてきた十年……あそこでの生活は本当に酷いものだった」
ファイブ「毎日過酷な労働を強いられ、作業が遅れれば鞭を打たれ、看守の機嫌が悪いだけで殴られる……人間として扱われていなかった……死んだ方がマシだ、って何度も思ったよ」
勇者「…………」
ファイブ「でも私は生きることを諦めなかった」
ファイブ「母が生きているという父の最後の言葉を胸に、父の遺志を継ぎ母に会おうと、そのために生きていこうとね」
ファイブ「子供達と離れ離れになってビアンカと石にされた時もそうさ、今はビアンカや子供達に会えなくても……いつか、いつかこの石化の呪いが解けたら子供達に会えるんじゃないか、ビアンカに会えるんじゃないか……って」
勇者「…………」
ファイブ「母を亡くした時も……悲しくて虚しくてやりきれない思いだったけれど……私にはまだ家族がいる。ビアンカやレックスやタバサ……グランバニアのみんなが」
ファイブ「みんなのために、みんなとこれからの日々のために生きようと思った。だから今もこうして未来を目指して生きているんだと思う……」
ビアンカ「…………」
ファイブ「まぁ言い方を変えたらただのプラス思考でしかないんだろうけどね」ハハッ
勇者「……いや、そう思えるってやっぱりファイブは強い人なんだと思うよ」
勇者「……はぁー、やっぱ勇者達はみんなすごいな……俺もみんなみたいな素晴らしい勇者になりたいもんだ」
ビアンカ「勇者君ならきっとなれるわよ」
ファイブ「あぁ」
勇者「ありがとう」
勇者「さてと、んじゃ明日も早いし今日はボチボチ寝るわ、おやすみ~」
ファイブ「おやすみ」
ビアンカ「おやすみなさい」
バタン
ビアンカ「……ねぇファイブ?」
ファイブ「ん?」
ビアンカ「勇者君……なんだか淋しそう……」
ビアンカ「明るく振る舞ってはいるけど心のどこかでは孤独を感じているって言うか……」
ファイブ「僕もそう思うよ……」
ビアンカ「だからさ、私達が勇者君の家族になってあげない?」
ビアンカ「勇者君がこの世界にいる間だけでいいからさ、私達で勇者君の心を温めてあげましょうよ」
ファイブ「……でもすぐに別れの日が来る。その時はまた勇者は一人だ……それが現実だ」
ビアンカ「…………」
ファイブ「そうは言っても僕は君に賛成だよ。勇者がまた一人になっても僕達と過した時間はいつまでも勇者の心に刻まれる。温かな思い出としてね」ニコ
ビアンカ「ファイブ……」キュン
ビアンカ「……あなたは本当に優しい人ね……」
ファイブ「……え?////」ドキッ
ビアンカ「あなたのそういうところ……大好きよ……////」
ファイブ「…………僕も君を愛しているよ////」
ビアンカ「……ファイブ……////」ドキドキ
ファイブ「……ビアンカ……////」ドキドキ
ビアンカ「……////」
ファイブ「……////」
ガチャ
ファイブ・ビアンカ「!?」バッ
レックス「トイレ……」ムニャ
ファイブ「な、なんだ、レックスか」アセアセ
ビアンカ「早くおトイレ済ませて寝なさい」アセアセ
レックス「…………?」
――――第五の世界・四日目
アークデーモン「おーい、俺達の飯はまだかよ?」
勇者「ちょっと待ってろ!!こっちが終わったらすぐ持ってく!!」タッタッタ
アンクルホーン「あの人間、この仕事も大分板についてきたようだな」カッ
アークデーモン「あぁ、最初は頼りねぇとこもあるように見えたがなぁ」コッ
アンクルホーン「ファイブがモンスター爺さんの牧場から俺達魔物を全員妖精の世界に連れて来た時は何事かと思ったが……たまの気分転換は良いもんだな」カッ
アークデーモン「牧場は快適だけど狭っ苦しくていけねぇよなぁ」…コッ
アンクルホーン「……あい、チェックメイトと」カッ
アークデーモン「ぁあ!?」
アンクルホーン「今日の昼飯のスープは俺のもんだな」ゲラゲラ
アークデーモン「ふ、ふざけんな!!こんなハズじゃあ……テメェイカサマしやがったな!?」
アンクルホーン「してねぇよ阿呆!!」
アークデーモン「阿呆とはなんだ阿呆とは!!」
アンクルホーン「やんのか!?」
アークデーモン「上等!!」
アンクルホーン『バギクロ…』!!
アークデーモン『イオナズ…』!!
勇者「はいはい、そこまで!!」ガガッ
アークデーモン「んぁ!?」
アンクルホーン「むっ!?」
勇者「まったくアンクルもアクデンも喧嘩っ早いなぁ……」
アンクル「今回はコイツが悪いのだ!!」
アクデン「いや、コイツが俺が見てない隙にイカサマを……!!」
勇者「わーったわーった、えーっと……アンクルはスープの量二倍にしてやるから。アクデンにも普通にスープをやるから、これでいいだろ?」
アンクル「……うむ、俺はそれでいいぞ」
アクデン「けっ……わかったよ」
炎の戦士「くく……っ」
ブリザードマン「くくく……っ」
勇者「ファイアとブリザーは何笑ってんだよ?」
ファイア「別に~」クスクス
ブリザー「何でもないよ~」クスクス
タバサ「勇者さーん、次はレックスと一緒にシーザーをお風呂に入れるから手伝って下さ~い!!」
グレイトドラゴン「ガウゥ」
レックス「お兄ちゃん早くぅ!!」
勇者「オッケー、今行くー!」タッタッタ
アンクル「……アイツ俺達みんな名前を覚えたみたいだな」ガツガツ
アクデン「あぁ」ガツガツ
アンクル「……ま、何にせよ『わざと喧嘩してスープゲット作戦』成功だな」ニヤッ
アクデン「おぅよ」ニヤッ
ファイア・ブリザー「二人ともワルだな~」ケタケタ
アンクル「ほらよ、分け前だ♪」
アクデン「……っとと、すまねぇな♪」
――――
勇者「……ったく、シーザーはデケェなぁ、体洗うのも一苦労だ」ゴシゴシ
シーザー「ガウ……♪」
勇者「お?なんだ、ここが気持ち良いのか?」ゴシゴシ
シーザー「ガゥガァ♪」
勇者「そっかそっか」ゴシゴシ
タバサ「すごーい、勇者さんもう魔物とお話しできるようになったんですね♪」ゴシゴシ
勇者「え?そういえば……なんとなく魔物達の言いたいことが分かるようになったな」ゴシゴシ
レックス「それがお話しができるってことだよ♪」ゴシゴシ
勇者「おー、なんだかんだで俺も成長してるんだな!!」ゴシゴシ
勇者「そう言えばレックスやタバサって悪い魔物とも話せるのか?」
レックス「う~ん……改心した魔物さんとじゃないとお話しできないかな」
タバサ「でも悪い魔物さんってほとんどいないんですよ?」
勇者「そうなの?」
タバサ「たしかに凶暴な魔物さんもいますけど大抵の魔物さんは動物達と同じで自分の縄張りが荒らされたり命の危険を感じない限り人間を襲うことはないみたいです」
レックス「魔王の悪の波動に影響を受けて沢山の魔物が凶暴化してるんだって」
勇者「そうなんだ~……てっきり魔物はみんな悪い奴なんだと思ってたからなぁ……」
レックス「だからぼくが魔王を倒して人間だけじゃなくて魔物たちも助けてあげるんだ♪」
勇者「そっか……レックスは勇者だもんな」
勇者「……なぁレックス、お前自分が勇者であることを重荷に思ったことないか?」
レックス「?」
勇者「まだこんなに小さいのに……世界を救う伝説の勇者だなんて重責を背負って平気なのか?」
タバサ「…………」
レックス「う~ん……正直あんまり実感わかないんだよね」
勇者「そうなの?」
レックス「うん、お前は伝説の勇者だ、って言われてもぼくはぼくだし」
レックス「ぼくとタバサはお父さんやお母さん、おばあちゃんに会いたくて旅をしてきただけだしね」
レックス「……でも」
勇者「でも?」
レックス「おばあちゃんが死んじゃったとき、ミルドラースが世界中の人達をぼくたちみたいに悲しい気持ちにさせるつもりなら、そんなの絶対許せないって思ったんだ」
レックス「だからそのための力をぼくが持っていて良かったって、伝説の勇者で良かったって思った」
勇者「…………」
タバサ「…………」
レックス「お父さんとお母さんとタバサと……みんなで力を合わせて世界を平和にするんだ♪」
勇者「なるほどな、こんなに小さくてもしっかりとした勇者なんだな」
タバサ「ふふっ」
レックス「へへっ」
シーザー「ガゥゥ……」
勇者「……っとごめん、すっかり手が止まってたな」ゴシゴシ
レックス「タバサ、そろそろ洗い終わるからお水の用意しようか」ゴシゴシ
タバサ「うん♪」ゴシゴシ
――――第五の世界・六日目・妖精の村
勇者「…………」シーン
ファイブ「…………」
勇者「わかった」パチッ
ファイブ「この地図で言うとどこだい?」パラッ
勇者「えーと……この山のてっぺんにゴレムスとシーザーがいて、この洞窟の中にベホマンとキングス、こっちのすごろく場にレックスとタバサ!!」
ファイブ「正解だ!!」
勇者「よっしゃぁ!!」
ビアンカ「六日で妖精の世界の全域を索敵できるようになんてすごいじゃない♪」
ファイブ「うん、たいしたものだ」
勇者「いやいや、それほどでも~」ニヘラ
ファイブ「じゃあそろそろ次の修行に移ろう」
勇者「ぉお!!」
ファイブ「ビアンカ」
ビアンカ「は~い」キュッ
勇者「? 目隠し……?」
ファイブ「初日に言っただろ?目隠ししても魔物と戦えるようになるって」
勇者「え、じゃまさか……」
ファイブ「その通りさ」ニヤッ
アクデン「まいどー」
アンクル「三河屋でーす」
ファイブ「目隠ししたままこの二匹と闘ってもらう」
勇者「マジかよ!?しかもよりにもよってこの二匹!?」
アクデン「手加減しなくていいんだよな?」
ファイブ「あぁ、存分にやってくれ」
勇者「え!?だって俺まだ全然動きとか読めないんだぜ!?」
ファイブ「『習うより慣れろ』って奴だね」
アンクル「では行くぞ!!」
勇者「ちょ……!!」
ファイブ「危なくなったら助けに入るから安心してくれ」
ビアンカ(ファイブってSっ気もあったのねぇ……)
アンクル「せいっ!!」ブンッ
ドゴッ!!
勇者「ぐぼはぁ!!」
ドサッ
勇者「」ピクピク
――――第五の世界・九日目・妖精の村付近の森
アンクル「でやっ!!」ブンッ
勇者「……よっ!!」サッ
アクデン「はっ!!」シャッ
勇者「……くっ!!」ガッ
レックス「すごーい、ホントに目隠ししたまま闘ってるよ」
アクデン「ふっ!!」ビュン
勇者「……っとお!」ヒョイ
アンクル(よし、ここで……)
勇者「!!」ピクッ
勇者『マホカンタ』!!
ピキィン!!
アンクル『マヒャド』!!
ビュォォオオオ!!
アンクル「……って、え?マホカンタ!?」
カアァァ!!
ビュォォオオオ!!
アンクル「ぎゃーー!!」
アクデン「がががが!!」
カチーーン
アクデン「テメェ何マホカンタかかってんのにマヒャド出してんだよ!?」ガミガミ
アンクル「うるせぇよ!!お前だって今イオナズン唱えようとしてただろうが」ガミガミ
ファイブ「よし、いいぞ」
勇者「……ふぅ」スルッ
レックス「すごいやお兄ちゃん!!」
タバサ「ホントです♪」
勇者「最初は魔力が動いてくることしかわかんなかったんだけどだんだん魔力の微細な動きとか流れまで感じとれるようになってな」ニカッ
ファイブ「あぁ、私もまさか十日かからずここまでできるようになるとは思ってなかった。もっとかかるものだと思っていたが……正直驚いているよ」
勇者「えー、自分でこの修行内容にしといて十日で完成させられると思ってなかったのかよ、無責任な奴だな~」ムー
ファイブ「この十日で基礎を教えてあとは他の世界で修行しつつ完成させてもらうつもりだったからね、君の筋の良さは嬉しい誤算だよ」
勇者「へへ♪」
ファイブ「勇者の魔力知覚はまだ私ほどではないが十分なレベルなのは確かだ……勇者は明日この世界を去るんだろ?」
勇者「うん、十日目の日没と同時に……」
レックス「淋しくなるなぁ……」
タバサ「せっかく仲良くなれたのに……」
ファイブ「……よし、じゃあ明日は城で勇者の送別会をしようじゃないか」
勇者「え!?」
タバサ「お別れパーティー!!」パァ
レックス「ごちそういっぱいだ♪」パァ
勇者「送別会か……なんか嬉しいな……」
ファイブ「明日の昼過ぎに始めようか、それまでちゃんと修行だからね?」
勇者「あぁ!!楽しみがあると俄然やる気も出るってもんさ!!」
レックス「ぼくも楽しみだよ♪」
タバサ「わたしも♪」
アンクル・アクデン「どうでもいいがとりあえず助けろ」ブルブル
――――第五の世界・十日目・妖精の村
勇者「ども」
ルナ「あら?修行はもうよろしいのですか?」
勇者「うん、ファイブ達が送別会を開いてくれるらしくて昼過ぎぐらいにはグランバニアに来てくれってファイブに言われてるからさ、そろそろポワン様に挨拶してこようかと」
ベラ「それにしても十日でよくここまで魔力知覚をモノにしたものね~」
勇者「ファイブに言わせりゃまだまだ荒いみたいだけどな」ナハハ
ベラ「ファイブは特別よ」
ポワン「おや、勇者ではありませんか」
勇者「あ、ポワン様」
勇者「短い間だったけどお世話になりました。ベラもルナも色々とありがとうな」
ルナ「いえ、お役に立てたのならそれで構いませんわ」
ベラ「あーぁ、また退屈な日々か~」
ポワン「ベラ」ジッ
ベラ「し、失礼しました」
ポワン「勇者、ここで学んだことが貴方の力になることを祈っています。私達妖精も貴方を応援していますよ」
勇者「ありがとうございます」
ポワン「では名残惜しいですが……」
ポワン「!!」
ベラ「!!」
ルナ「!!」
ベラ「何!?これ……!?すごく大きい魔力が……!!」
ルナ「ポワン様!!人間界です!!」
ポワン「分かっています、勇者!!急いで人間界に向かいなさい!!」
勇者「あ、あぁ!!」ダッ
――――人間界・グランバニア
ファイブ「これは……!!」
ビアンカ「どうしたのファイブ!?」
レックス「すごく大きな魔力がいきなり現れたんだ!!」
タバサ「お父さん、これって……」
ファイブ「うん、この尋常じゃない大きさの魔力、忘れるものか…………ブオーンだ!!」
ビアンカ「え!?でもブオーンって確かファイブ達が倒してまた封印されたんじゃ……」
ファイブ「そのハズだけど……」
ファイブ(あの壺の封印がこんなにすぐ解けるとは考えにくい……なら誰かが意図的に封印を解いたのか……!?)
ファイブ「考えても仕方ない、このままじゃサラボナが危ない!!」
ビアンカ「大変、フローラさん達が!!」
ファイブ「みんな行くぞ!!」
タバサ「待ってお父さん!!」
ファイブ「!?」
タバサ「あっち……ずっと遠くにすごい数の魔力が……」
ファイブ「これは……ラインハットの方か!!」
ビアンカ「どうするの!?ファイブ!!」
ファイブ(くっ……二ヶ所を同時に攻めてくるとは……)
ファイブ「よし、僕とビアンカはサラボナへ向かう、レックスとタバサはラインハットを頼む!!」
ビアンカ「わかったわ!!」
レックス「うん!!」
タバサ「わかりました!!」
ファイブ「行くぞ!!」
ファイブ・タバサ『ルーラ』!!
――――サラボナ・見張りの塔
ブオーン「ブオーーーーン!!!!」
ルドマン「ま、まさかまた奴が暴れ出すとは……!!」
デボラ「ふーん、私の街に攻めてこようだなんていい度胸ね……」
フローラ「……私も闘います!!」
ルドマン「ならん!!あの化け物はとんでもなく強いんだ!!2人を危険にさらすワケにはいかん!!」
デボラ「じゃあ尻尾巻いて逃げろって言うの?私はごめんね」
フローラ「私も……私が育ったこのサラボナを魔物の好きなようにはさせたくありません!!」
ルドマン「だが……!!」
ビューーン
スタッ スタッ
ファイブ「ルドマンさん!!」タタッ
ビアンカ「フローラさん!!デボラさん!!」タタタッ
ルドマン「おお!!ファイブにビアンカ!!」
フローラ「ファイブさんっ!!」タタタッ
デボラ「私のしもべなんだからもっと早く来なさいよ、ファイブ」
ビアンカ「ファイブは私の夫です」キッパリ
フローラ「助けに来てくれたんですね」ギュッ
ファイブ「フ、フローラ!?えっと……」カァ
ビアンカ「……フローラさん?」ピクピク
フローラ「あ、ご、ごめんなさい!!つい!!」カァ
ファイブ「い、いや、いいんだ」カァ
ビアンカ「あなたも何顔赤くしてるのよ」グイ
ファイブ「いたたたっ!!」
ビアンカ「だいたいフローラさんもアンディさんがいるんだから……」
フローラ「……えっとアンディは仲の良い幼馴染みですけど……手のかかる弟みたいなものでファイブさんとは違うというか……その……」モジモジ
デボラ「ファイブ、グランバニアに一夫多妻制を導入する話はどうなったの?」
ファイブ「え?それは君が勝手に……」
ビアンカ「ちょっとファイブ!!そんな話聞いてないわよ!?」
ファイブ「いや、だから僕は……」
ギャーギャー
ルドマン「オホン!!……いいかね?」ジロッ
ファイブ・ビアンカ「す、すみませんでした」
ルドマン「見ての通り何故かブオーンが再び封印を破り出てきおった」
ルドマン「ファイブ達はわしが装備を整えて戻ってくるまで持ちこたえてくれ、頼んだぞ!!」ダッ
ファイブ「はい!!」
デボラ「ファイブ」
フローラ「私達も一緒に闘います!!」
ファイブ「しかし……」
ビアンカ「危ないわ!!」
フローラ「大丈夫、足でまといにはなりません……それに仲間は多い方が良いでしょう?」
デボラ「この私が一緒に闘ってあげるって言ってるのよ?拒否する理由なんてあるハズないわ」
ファイブ「…………わかった、ブオーン相手に私とビアンカ二人で闘うのはいくらなんでも分が悪い……頼りにさせてもらうよ」
フローラ「はいっ!!」
デボラ「当然ね、頼りになさい」
ドシーン!!
ビアンカ「……来るわよ!!」
ドシーン!!
ビアンカ「……な、なんて大きさなの」ゴクッ
ブオーン「ふわぁ……まさかこんなにすぐに出られるとは思わなかったわい。さて、今度こそルドルフの奴に……」
ファイブ「やぁ」
ブオーン「む……お前はこの前の……!!」
ファイブ「覚えていてくれたとは嬉しいね」
ブオーン「ぬぅ……いいだろう、まずは貴様を血祭りに上げてやる!!」
ファイブ「いくぞ、みんな!!!!」
――――ラインハット
タバサ『マヒャド』!!!!
ビュォォオオオ!!!!
ピキピキピキピキ!!!!
魔物の群「ぐわぁーー!!」
レックス「てぃ!!」ビュッ
ズバッ
ネクロマンサー「ぎゃあ!!」
レックス「せや!!」ビュッ
ズバッ
ホークブリザード「クェエ!?」
レックス「はぁっ!!」ビュッ
ザンッ!!
エビルマスター「ぎゃーーー!!」
スタッ
レックス「ふぅ……」
コリンズ「よくやったぞレックス!!」
ヘンリー「助けてもらっておいてなんだその態度は」
ゴンッ
コリンズ「いたた……」
マリア「レックス君、タバサちゃん、助けに来てくれてありがとうございます」
タバサ「いえ、間に合って良かったです」
レックス「魔物はそんなに強くはないけどこう数が多くちゃキリがないよ……」チャッ
タバサ「泣き言言わないの、お兄ちゃん」
タバサ『イオナズン』!!
カッ!!
ドッガーーーン!!
レックス「でもさぁ……」ブンッ
ズババッ!!
ガルバ「ぎゃっ!!」
ゴルバ「ぎぇえ!!」
タバサ「グランバニアで美味しいごちそうが待って…………」
レックス「どうしたの、タバサ?」
タバサ「あ、あ……」
レックス「?」
タバサ「グランバニアにまた禍々しい魔力が……」
レックス「……!!」
レックス「な、なんだこれ……こんな魔力今まで感じたことがないよ……!!」
タバサ「お兄ちゃんはラインハットのみんなをお願い!!わたしはグランバニアへ戻る!!」
レックス「無茶だタバサ!!あんなの一人じゃ勝てないよ!!」
タバサ「大丈夫、お父さんやお兄ちゃんが戻ってくるまでどうにか持ちこたえてみせる」
レックス「でも……」
タバサ「このままじゃグランバニアが危ないんだよ!?」
レックス「くっ……」
タバサ「お兄ちゃんルーラ使えないから天空のベル渡しておくね」スッ
レックス「……わかった、無理はしないで!!」
タバサ「うん、早く来てね……!!」
タバサ『ルーラ』!!!!
ビュンッ!!
ヘンリー「……おい、レックス、一人で大丈夫なのか!?いくら伝説の勇者でも……」
レックス「大丈夫です……だから少し離れていて下さい……」ゴオッ
ヘンリー「!!」ビクッ
ヘンリー「わ、わかった……」
魔物の群「ガアアァァァーーー!!!!!!」
レックス(待ってて、タバサ……すぐに行くから……!!)
レックス「フルパワーだ…………!!」バッ
レックス『ギガァデイィィーーーンッ』!!!!!!!!
ズガガアァァーーーーーーン!!!!!!!!
――――グランバニア
黄金の巨人「ハァッ!!」ブンッ
ドガッ!!
サンチョ「痛ぅ……!!」ヨロ
アクデン「大丈夫か、サンチョの旦那!?」
サンチョ「えぇ……なんとか」
スライムナイト『ベホマ』!!
パアァ
サンチョ「ありがとう、ピエール」
ピエール「なんの、お気になさらず」チャキッ
アンクル「しっかしなんなんだコイツは……見たこともない魔物だし恐ろしく強い!!」ジリッ
ゲレゲレ「グルルル……!!」
サンチョ「なんとしても坊っちゃん達が戻ってくるまで持ちこたえてるんです!!」
アンクル「あぁ!!」
アクデン「おうよ!!」
黄金の巨人「グランバニアヲ……ホロボス……」ドシンッ!!
グラグラグラ!!
アクデン「おわっ!?」
黄金の巨人「…………」ブンッ
アクデン「しまっ……!!」
ドガッ!!
アンクル「アクデン!!」
黄金の巨人「……」グアッ
ズシーン!!
アンクル「なんのぉ!!」ガッ
アンクル「うぉおおお!!」ビキビキ
アンクル「今だ!!」
ロビン「ピピッ……攻撃開始……!!」ビュン
ピエール「はあぁぁ!!」ビュババッ
シーザー「スゥ…………」
シーザー「ガァァァ!!!!」
ゴアァァァ!!!!
黄金の巨人「グ……」グラッ
サンチョ「行きますよゲレゲレ!!」
ゲレゲレ「ガウッ!!!!」ダダッ
サンチョ「はぁぁ!!」
黄金の巨人「…………」
黄金の巨人『バギクロス』!!
ビュォォオオオ!!!!
ズバズバズバズババ!!
サンチョ「ぐあっ!!」
ゲレゲレ「ギャウ!!」
ピエール「ぐ……!!」
アンクル「ぬぅ……!!」
シーザー「ガゥ……!!」
ロビン「ピピッ……」プシュー
サンチョ「くっ……」ハァハァ
ビュン
スタッ
タバサ「サンチョ!!みんな!!大丈夫!?」
サンチョ「タバサお嬢ちゃん!!」
タバサ「賢者の石!!」バッ
パアァァァァァ……!!
アクデン「ふぅ……ありがとうよ、大分楽になったぜ」
タバサ「あの巨人は……?」
サンチョ「わかりません……突然現れたかと思えばグランバニアを襲おうとして……」
ピエール「兵士達はグランバニア住民の避難を、拙者達グランバニアにいた魔物達とサンチョ殿は怪物の迎撃していたのです」
タバサ「……あの巨人すごく強いけど……お父さん達が来るまでなんとか持ちこたえなきゃ」
サンチョ「えぇ、グランバニアは私達が守りましょう!!」
――――サラボナ・見晴らしの塔
ビアンカ「ファイブ!!」
フローラ「デボラお姉さん!!」
ビアンカ・フローラ『バイキルト』!!
キュワワン!!
ファイブ「はあぁぁっ!!」ビュッ
バキィッ!!
ブオーン「がっ!?」
デボラ「はぁ!!」シャッシャッ
ズババッ
ブオーン「ぐっ……!!」ヨロッ
ファイブ「今だみんな!!」
ビアンカ「えぇ!!」
フローラ「はいっ!!」
デボラ「わかってるわ!!」
ファイブ『バギクロス』!!
ビアンカ『メラゾーマ』!!
フローラ『イオナズン』!!
デボラ『ベギラゴン』!!
カッッッ!!!!
ドッガアアァァーーーーーーーン!!!!!!
ブオーン「ぐああぁぁぁ!!」
ブオーン「ぐぅ……!!またも敗れるとは……こんな…………こんな馬鹿なぁ……!!!!」
カァァ!!
シュンッ!!
ファイブ「はぁ……はぁ……なんとか倒せたね」ハァハァ
デボラ「ふん……私が手伝ったんだから勝って当たり前よ……」ゼエゼエ
フローラ「お二人の力になれてなによりです」ハァハァ
ビアンカ「えぇ、ホントに助かったわ、ありがとう二人とも」ハァハァ
ファイブ「ラインハットの方はどうなって…………!?」
ビアンカ「?」
ファイブ「な、なんだこの魔力は……グランバニアが危ない!!」
ビアンカ「なんですって!?」
ファイブ「すぐにグランバニアに戻るよ、ビアンカ!!」
フローラ「待って下さい、それなら私達もお手伝いします」
デボラ「あんたに借りを作っとくのは嫌だからね」フンッ
――――グランバニア
タバサ「く……」ヨロッ
サンチョ「…………はぁ……はぁ」
ゲレゲレ「ガウゥ……」フラッ
アクデン「」
アンクル「」
ピエール「」
シーザー「」
ロビン「だめーじ限界ヲ突破……戦闘続行不可……」プシュー
黄金の巨人「…………」
タバサ「ダメージは与えられてるけど……こっちが受けるダメージの方が大きくて戦闘が長引くにつれてどんどん不利に……」ハァハァ
サンチョ「坊っちゃん達はまだですか……ぐっ」
黄金の巨人「…………」ブンッ
ドカアッ!!
タバサ「きゃっ!!」ドサッ
サンチョ「タバサ嬢ちゃん!!」
タバサ「ぐぅ……」ググッ
黄金の巨人「…………勇者ノ妹……コロス」グアッ!!
タバサ「ーーー!!」ギュッ
ドガァン!!
サンチョ「タバサ嬢ちゃーん!!」
タバサ「…………?」パチッ
勇者「危ないところだったな、タバサ」
タバサ「勇者さん!!」ヒシッ
サンチョ「よ、良かった……」
勇者『ベホマ』!!
パアァァ!!
勇者「あんな化け物相手によく頑張ったな」
勇者「後は俺に任せてくれ」
タバサ「え!?でも……!!」
勇者「大丈夫、なんのために修行してきたと思ってるんだ?」ニカッ
黄金の巨人「……謎ノ男……障害トナルナラ排除スルノミ……」
勇者「かかってきな」チャッ
黄金の巨人「…………」ブンッ
勇者(……わかる……コイツがどこにどう打ち込もうとしてるのかが!!)
勇者「…………」スッ
ドガアッ!!
黄金の巨人「…………!?」ブンッブンッ
勇者「止まって見えるな」サッスッ
タバサ「すごい……全部紙一重でかわしてる……」
勇者「でやぁ!!」ヒュバッ
ズバッ
黄金の巨人「…………」ギロッ
勇者「あちゃー、全然効いてないな……」
黄金の巨人「…………」グアッ
勇者「……っと」ヒョイ
ズズーン
勇者(となると……一点集中攻撃で体勢を崩す!!)
勇者「せい!!」
ザンッ!!
黄金の巨人「…………」ブンッブンッ
ドガアッ!!ドゴオッ!!
ヒュッ!!シャッ!!
勇者「はぁ!!てやぁ!!」
ザザンッ!!
黄金の巨人「チョコマカト……!!」ゴウッ!!
ドッガァアン!!
シャッ
勇者「くらえっ!!」
勇者『メラゾーマッ』!!!!
ゴオオオッッッ!!
黄金の巨人「……!?」グラッ
ドシーーーン!!
勇者「伊達に右足ばっかり狙ってたワケじゃねぇさ」ニッ
勇者「んでもって……」チラッ
勇者「今だ!!ビアンカ!!」バッ
ビアンカ「ナイス、勇者君!!」ドン!!
タバサ「お母さん!!」
ビアンカ「フローラさん、デボラさん」
フローラ「えぇ、いつでも構いません」
デボラ「いくわよ……!!」
ビアンカ・フローラ・デボラ『ベギラゴンッッッ』!!!!!!!!
ゴオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!!!
黄金の巨人「グ……グアァ…………!!」
バサッ!!
勇者「!?」
バサッ!!バサッ!!
ズズーン……!!
謎のドラゴン「ガアアァァ!!!!」
勇者「!? ド、ドラゴン!?」
謎のドラゴン「ガアァ!!」
ガブッ!!
黄金の巨人「グオォ……!!」
勇者「味方……なのか?」
タバサ「あれは……!!」
謎のドラゴン「グルルル……ガァアッ!!」
ブンッ!!
ドガァン!!
黄金の巨人「…………!!」
謎のドラゴン「グルルル……」
キラキラキラ……
シュン
ファイブ「……っと、もう時間切れか」
勇者「え!?ぇえ!?今のドラゴンってファイブだったの!?」
ファイブ「驚いたかい?このドラゴンの杖で少しの間ドラゴンに変身できるんだ」フフッ
黄金の巨人「……グゥ……」グググッ
黄金の巨人「…………グランバニア王……死ネェ」グアッ
ファイブ「……君の負けだよ」
キランッ!!
勇者「?」
ビューーー!!!!
レックス「だああぁぁぁぁーーーー!!!!!!」
黄金の巨人「……!!!!」
レックス「これで終わりだぁぁぁ!!!!」
ズバアァァァンッッ!!!!
黄金の巨人「……ガ……アァ……ガ……」ヨロヨロッ
ドズーーーン!!
スタッ!!
レックス「遅くなってごめん、タバサ」
タバサ「ぅうん、平気だよお兄ちゃん」ニコッ
レックス「ありがとう、マスタードラゴン」
マスタードラゴン「なに、皆が無事で何よりだ…さて、私は天空城に帰るとしよう……私の力を借りたい時はまたいつでも天空のベルを鳴らすが良い……」
マスタードラゴン「では去らばだ」
バサッバサッ
勇者「ふぇ~、喋るドラゴンか……」
ビアンカ「あのドラゴンがこの世界の神様なのよ?」
勇者「そうなの!?」
レックス「人間の時はおかしなおじさんだけどね~」
勇者「???」
勇者「ま、何はともあれこの怪物を倒せたワケだな♪」
サンチョ「城の被害も軽微で何よりです」
ファイブ「…………」
タバサ「どうしたのお父さん?」
ファイブ「……この怪物は一体なんなのだろうと思って。見たことのない怪物だし……」
黄金の巨人「」
カアァァァ!!
ファイブ「!?」
勇者「!?」
シュウゥゥ……
ゴールデンゴーレム「」
ファイブ「これは……!?」
レックス「怪物がゴールデンゴーレムになっちゃった……!!」
勇者「どういうこった……?」
ファイブ(…………ゴールデンゴーレムがさっきの化け物の正体だったということか……? 一体……)
――――魔界・エビルマウンテン最深部
ミルドラース「どうやら失敗に終わったようだな」
???「えぇ……二ヶ所を同時に攻めた上で本命を叩く……上手くいくと思ったのですが難しいものですね」
ミルドラース「なかなかの采配であったが結果が出せないのならば無意味だ」
???「その通り……しかし私としましては十分な成果を得られました」
ミルドラース「?」
???「『進化の秘法』……未完成の代物ですらただのゴールデンゴーレムをあのような怪物に変えるとは……本当に恐ろしいものですね」フフッ
???「ミルドラース様からご教授いただいた進化の秘法の知識を元に、私は更なる進化の追求を致します、ありがとうございました」
ミルドラース「ふっ、この私直々に魔道の深淵に触れられたことを存分に感謝することだな……」
???「では私はこれにて……偉大なる魔界の王ミルドラース様に魔の神のご加護があらんことを……」
フッ……
ミルドラース「………………奴ならば完成させることができるかもしれんな……真の進化の秘宝を……」
――――グランバニア・玉座の間
勇者「んまい!!」ガツガツ
レックス「うん!!」ガツガツ
ファイブ「盛大な宴とまではいかなくなってしまったがささやかながらの食事会だ、思いきり飲み食いしてくれ」
勇者「うん!!やっぱり一仕事終えた後の飯は最高だな!!」ガツガツ
宿屋のおばさん「そうかい、たーんと作ったからじゃんじゃん食べておくれよ」
勇者「あ、レックス!!それ俺が狙ってた肉!!」モグモグ
レックス「違うよ!!ぼくが最初に狙ってたんだよ!!」モグモグ
タバサ「この十日で二人とも本当に仲良くなったね」
ビアンカ「そうね、なんだか兄弟みたいね」フフッ
フローラ「本当ですね」フフッ
勇者「そういやファイブ、この人達は?」
デボラ「私に向かって『この人』とは……失礼な男ね」ムッ
ファイブ「サラボナの名士、ルドマンさんの娘のデボラとフローラだ」
フローラ「勇者さん……ですね?先ほどファイブさんからお話しは伺いましたわ」ニコッ
勇者「ども……」ドキッ
勇者(ビアンカに負けないぐらい綺麗な人だなぁ……)
レックス「昔お父さんはお母さんかフローラさんかデボラさん、誰と結婚するかで選ぶことになってお母さんを選んだんだって」
勇者「何!?こんな美女3人に言い寄られてたのか!?」
ファイブ「言い寄られていたワケじゃないのだけれど……」
勇者「うるさい!!似たようなもんだ!!」クワッ
勇者「くぅ~……いいなぁモテる男はさぁ……俺にもいい人できないかなぁ……」
ビアンカ「勇者君かっこいいしやさしいし彼女なんてすぐできるわよ」
フローラ「そうですね」
デボラ「そうね……しもべにだったらしてあげなくもないけど」
勇者「それは遠慮しておきます」アセ
ファイブ「ハハハ」
タバサ「…………」ジー
勇者「? どうしたタバサ?」
タバサ「な、なんでもないです///」カァ
勇者「?」
キラキラキラ……
勇者「ん……」
タバサ「え……?」
レックス「!? お兄ちゃんが光ってる!?」
フローラ「勇者さん、これは……?」
勇者「あー……うん、お別れの時間ってことだ」
ファイブ「そうか……」
レックス「そんな……せっかく仲良くなれたのに……」
タバサ「…………」
ビアンカ「勇者君にはやることがあるの……仕方ないわ」
勇者「みんな今までありがとうな」
キラキラキラ……
フローラ「勇者さん、過酷な闘いになると思いますが頑張って下さいね。私も勇者さんの勝利をお祈りしています」
デボラ「ま、せいぜい頑張るのね」
勇者「ありがとう二人とも」
ビアンカ「私はあんまり勇者君の修行の手伝いはできなかったけど……勇者君と一緒に過ごした時間はとても楽しかったわ」
ビアンカ「頑張ってね、勇者君」
勇者「うん、ありがとう……俺も楽しかった」
ファイブ「タバサとグランバニアを助けてくれてありがとう、勇者」
ファイブ「親として王として、礼を言わせてもらうよ」
勇者「礼を言うのは俺の方さ……すっごく役立つこと教えてくれて本当にありがとう。もっと修行してファイブにも負けないくらい魔力知覚を洗練するよ」
ファイブ「うん、君ならできるさ、勇者」
キラキラキラ……
レックス「…………」
タバサ「…………」
ビアンカ「ほら、あなた達も勇者君にお別れ言わないと……」
レックス「お兄ちゃーん!!」ヒシッ
タバサ「勇者さん!!」ヒシッ
レックス「お兄ちゃん!!また会えるよね!?もう会えないなんていやだよ!?」ウゥ
タバサ「わたしも……」グスッ
キラキラキラ……
勇者「…………それは…………」
ファイブ「きっとまた会えるさ」
ファイブ「それに長い間会えなくても私達はいつでも君と心で繋がっているよ」ニコッ
勇者「ファイブ……」
ビアンカ「そうよ……私達もう家族でしょ?」ニコッ
勇者「……そっか……そうだな」
レックス「う~……」ギュッ
タバサ「うぅ……」ギュッ
勇者「俺は一人じゃないんだな……」ナデナデ
レックス「へへ」グスッ
タバサ「……」グスッ
キラキラキラ……
レックス「お兄ちゃん!!ぼく立派な勇者になるよ!!そして魔王をやっつけて世界を救ってみせるよ!!」
勇者「あぁ!!楽しみにしてるぞ!!俺もレックスに負けないように頑張るな!!」
タバサ「…………ゆ、勇者さん……」
タバサ「わ、わたしが大きくなったら……その……」
勇者「?」
タバサ「わ、わたしのこと勇者さんのお嫁さんにして下さい!!!!」
勇者「え!?」
ファイブ「な!?」
タバサ「…………////」ギュッ
勇者「……そ、それは……」アセアセ
タバサ「ダメですか……?」
勇者「ダメじゃないけどなんと言うか……その……」
ファイブ「……」ポン
勇者「ファイブ……?」
ファイブ「……君が私の息子になるのは許せないがタバサのような良い娘を悲しませることも許さないよ?」
勇者「どうしたらいいんだよ!!」
一同「アハハハハハハ」
キラキラキラ……
ファイブ「……本当のお別れが近いみたいだね」
勇者「うん……」
キラキラキラ……
ファイブ「さっきも言ったが私達は家族だ。つらいことや悲しいことがあったとき私達との思い出が君の心の支えになれば、と思うよ」スッ
勇者「……うん、ありがとう」ガシッ
キラキラキラ……
勇者「本当にありがとう……」
キラキラキラ……
勇者「じゃあな……」
キラキラキラ……
フッ……
レックス「……お兄ちゃん行っちゃった……」グスッ
タバサ「勇者さん……」ウゥ
ビアンカ「お父さんが言ってたでしょ?勇者君は離れていても家族よ、私達とずっと繋がっているの」ナデナデ
レックス「うん……」グシッ
タバサ「はい……」ゴシゴシ
レックス「……でもタバサがお兄ちゃんと結婚したらお兄ちゃんがぼくの弟になるのか~……なんだか変な感じ」
ビアンカ「それを言うならファイブはたいして勇者君と歳も変わらないのに勇者君のお父さんね」クス
ファイブ「いや、そんなことは絶対認めない!!」グッ
フローラ「どうするタバサちゃん、お父さんは勇者さんとの結婚を認めてくれないみたいよ?」フフッ
タバサ「じゃあおじいちゃんとおばあちゃんみたいにカケオチします」
ファイブ「えぇ!?」
デボラ「あんたの負けね」フフッ
一同「アハハハハハハ」
――――星の海
勇者「ただいまーっと」
ルビス『お帰りなさい、勇者』
勇者「今回はすげー力を手に入れてきたからな、また一段と強くなってきたぜ」
ルビス『そうですか……早いものでこの修行の日々も折り返し地点ですものね』
勇者「え!?……あ、そっか、もう修行を始めてから五十日も経ったのか!!」
勇者「あっという間だなぁ……」
勇者「……そういえばあれ以来魔族の動きは?」
ルビス『……つい先日魔族は魔王軍なる軍隊を創り、遂に本格的に地上の侵攻を開始しました……』
勇者「……!!」
ルビス『各国が軍事同盟を結んで魔王軍に対抗していますが……平和に慣れすぎた人間達の軍隊では魔族や魔物達に勝てる筈もなく魔王軍の侵攻を遅らせるだけで精一杯といったところです……』
勇者「……くそ!!」
勇者「ルビス!!今から俺を元の世界に……!!」
ルビス『それはできません。貴方はたしかに強くなりましたがそれでもまだ魔王には勝てないでしょう』
ルビス『今は力をつけることだけを考えるのです』
勇者「……くっ!!」ギュッ
――――第六の世界
パッ
勇者「んっ」
スタッ
勇者「ふむ、ルビスも転送に慣れてきたのかな~……」
勇者(っつっても転送されるのもあと三回か……残り四十日でできるだけ強くならないと……)
バトルレックス「…………」ジー
勇者「ん?」
バトルレックス「…………」ジー
勇者「…………」
勇者「ぅわぁっ!!」バッ
勇者「ったく、誉めたとたんこれだ!!いきなり戦闘かよ……ってあれ?」
バトルレックス「…………」
勇者「なんだ、お前全然悪い魔物じゃないじゃん」
勇者「……俺は勇者、お前は?」
バトルレックス「……私……ドランゴ」
勇者「おー!!なんだ喋れるじゃないか♪」ナデナデ
ドランゴ「…………」
勇者(でもなんで悪意のないバトルレックスがこんなところに……?)フーム
???「……おい、アンタ。こんなところで何してるんだ?」
勇者「おわっ!!びっくりしたな~……」ドキッ
???「それは俺の台詞だ」
ドランゴ「ギルルン……旦那さん……」
勇者「あ、もしかしてこのバトルレックスの飼い主?」
???「まぁそんなようなもんだが……」
???「……ふ~ん」
勇者「?」
???「アンタ結構デキるみたいだな」ニヤッ
???「おーい、テリー!!ドランゴいたー?」ヒョコッ
テリー「あぁ、見つけたぜ」
???「いきなり走り出したからどうしたのかと思ったけど……ん?君は?」
勇者「!! その青髪!!六番目の勇者か!?」
???「……?」
――――ロンガデセオ郊外
ハッサン「へぇ~、色んな世界を旅して勇者に修行つけてもらってんのか」
バーバラ「おもしろそーう♪」
勇者「よく簡単に信じてくれたな」
???「俺達も現実の世界と夢の世界と狭間の世界……三つの世界を行き来して旅してるからね、たいして驚きはしないよ」
ハッサン「うんうん」
???「さて、勇者の紹介も終わったし俺達の紹介もしないとな」
???「俺はシックス。レイドックの王子だ。大魔王デスタムーアを倒すためにみんなと世界を旅している」
シックス「よろしくな」スッ
勇者「よろしく」ガシッ
ハッサン「俺はサンマリーノの大工の息子、ハッサンだ。旅の武闘家でもあるから体は鍛えてあるぜ!!」ムキッ
勇者「おぉー、俺が今まであった勇者とその仲間達の中でハッサンが一番マッチョだな」ペチペチ
ハッサン「何ぃ!?それはホントか!?」
勇者「え、う、うん」
ハッサン「そうかそうか~、まぁ俺の鍛え抜かれた筋肉の鎧はもはや芸術の域だからなぁ」ハッハッハ!!
勇者「……」
ミレーユ「私は夢占い師見習いのミレーユよ、よろしくね、勇者」ニコッ
勇者「よ、よろしくお願いいたします」ドキッ
勇者(うっわ、めっちゃくっちゃ美人じゃん!!)ドキドキ
バーバラ「なーに鼻の下伸ばしてんの」ジトー
勇者「の、伸ばしてねぇよ!!」
バーバラ「ふーん、まぁいいけど」クスッ
バーバラ「あたしは大魔法使いバーバレラの血を引く大魔法少女、バーバラよ。よろしくね」
勇者「……大魔法少女……」プッ
バーバラ「あー!!笑ったわね!!」
勇者「悪い悪い」ハハッ
シックス「バーバラの実力は本物だよ、その気になればここら一帯を消し飛ばせる」
勇者「……はぁ!?」
バーバラ「本当よ、でもその巨大な魔力を自分でもうまく制御できないからこうして修行してるの」
勇者「へぇ~……」
チャモロ「私はチャモロ。ゲントの神に使える者です、よろしくお願いします」
勇者「よろしく」
勇者(いかにも真面目そうな人だな……)
テリー「俺はテリー、最強の剣士を目指している。よろしく」
勇者「最強の剣士かー、すげーな」キラキラ
シックス「テリーは『青い稲妻』って異名を持つ凄腕の剣士でミレーユの弟なんだ」
勇者「そうなんだ……たしかにどことなく似てるような……」
シックス「それとコイツがスライムのルーキー、コイツがバトルレックスのドランゴだ」
ルーキー「ピキー!!」
ドランゴ「……ギルルン、勇者、よろしく」
勇者「うん、よろしくな♪」
ルーキー「ピキー!ピキキー!ピキ~~」
勇者「へぇ~……そっか、前はすごい爺さんのとこで世話になってたのか」
ハッサン「!?」
バーバラ「勇者ルーキーの言ってることわかるの!?」
勇者「うん、なんとなくだけどね。前の世界でそういう修行したから」
シックス「……と言うと君の職業は魔物マスターなのか?」
勇者「? 職業?」
チャモロ「シックスさん、勇者さんは今までダーマ神殿で転職をなさったことがないのでは?」
シックス「そうか……たしかにどの世界にも同じようにダーマ神殿があるワケじゃないだろうしな」
勇者「ダーマ神殿か……たしか第三の世界で近くに行ったことはあるけど職業がどうこうってのはわかんないなぁ」
勇者「職業ってどんなもんなの?農夫とか宿屋とか?」
ハッサン「馬鹿野郎んなワケねぇだろ、戦士とか武闘家とかそういう魔物と闘う職業だよ」エッヘン
シックス「何を偉そうに言ってるんだよ、ハッサンだって初めてダーマ神殿に行った時に似たようなこと言ってたじゃないか」
ハッサン「おっと、そうだったか?」ポリポリ
勇者「じゃあ俺って『勇者』なんじゃないの?」
ミレーユ「それはあなたの存在、使命が勇者なのであって職業が勇者というワケではないわ。職業を名乗るにはダーマの神の加護が必要なのよ」
バーバラ「ダーマの神様の加護を受けて職業に就いて修行を積めばその職業をどんどん極めていくことになるわ」
バーバラ「その過程で新しい呪文や特技を覚えていって最終的にはその職業を完全に極める。そうやって色んな職業を極めていけば新しい職業の道が開いてゆくのよ」
勇者「……??」
シックス「うーん……まぁこういうのは口で説明するより実際にダーマの加護を受けてみた方が早いだろう」
テリー「そうだな」
シックス「……と、その前に勇者」
勇者「?」
シックス「九人の勇者の伝承ってやつを詳しく聞かせて貰えないか?」
――――ダーマ神殿
勇者「おー!!ここがダーマ神殿か!!なんつーか神々しいな!!」
ミレーユ「あんまり大きな声出すと怒られるわよ?」フフッ
テリー「ここは神聖な場所だからな」
勇者「あ、ごめん」アハハ
シックス「勇者、こっちだ」
神官「ここはダーマの神殿。おのれ自身を見つめなおしこれからの行き方を考える神聖な場所じゃ」
神官「行き方を変えたいとお望みか?」
シックス「はい、この勇者が」
神官「どの職業になりたいのだ?」
勇者「…………」
神官「…………?」
勇者「…………シックス。俺って何になったらいいの?」
シックス「そっか!!じゃあ……まずは基礎の基礎として戦士にしよう」
勇者「戦士か~」
神官「それでは勇者よ、戦士の気持ちになって祈りなさい」
勇者「…………」
勇者(戦士……戦士か……スリーの仲間の戦士とかライアンのことだよな……あんな風になりたいって思えばいいのかな……)グッ
神官「おお、この世の全ての命を司る神よ!!勇者に新たな人生を歩ませたまえ!!」
パアァァ
勇者「……!!」
神官「これで勇者は戦士として生きてゆくことになった。生まれ変わったつもりで修行を積むが良い」
シックス「どう?」
勇者「……なんか不思議な感じだな!!こう……力がみなぎってくるって言うかさ!!」
シックス「だろ?」ニッ
勇者「……でもなんか呪文が上手く使えそうになさそうだな……あれ?」
シックス「それはそうだ、戦士は自分の肉体を武器にして闘う職業だからね」
シックス「戦士となった君自身もそういう闘い方に特化するようになる……習得する特技も近接攻撃中心になるよ」
勇者「ふーーん」ギュッ
ハッサン「シックスー!!勇者ぁー!!下の宿屋で飯食おうぜー!!」
ミレーユ「ハ、ハッサン、声が大きいわっ」
チャモロ「そうですよ、お静かに!!」シー
シックス「うん、今行くー」
勇者「んで修行って何すんの?」テクテク
シックス「魔物と闘うのが一番効率が良いね、魔物と闘う中でその職業での闘い方に磨きをかけていくんだ」テクテク
勇者「じゃあその職業を極めたら?」
シックス「そしたら次の職業に転職だ」
シックス「勇者が戦士を極めたとして次に武闘家になったら戦士としての闘い方を身につけた上で、今度は一から武闘家の闘い方を極める修行に入るワケだ」
勇者「なるほど、全部の職業を極めるとなると先は長そうだなぁ……」ウーン
シックス「はは、それは仕方ないよ」
ハッサン「遅ぇぞ二人とも、ほらさっさと飯にしようぜ!!」
バーバラ「まったく、ハッサンの頭の中って食べることと鍛えることと闘うことしかないんじゃないの?」
ハッサン「あと寝ることだな」
テリー「威張れたことかよ」
勇者「…………」ピクッ
テリー「どうした、勇者?」
勇者「な……なんだよこれ……」ガクガク
ミレーユ「……勇者?」
勇者「……ッ!!」ダダッ
シックス「おい、急にどうしたんだよ!?」
バァン!!
勇者「…………」
シックス「ここは……ダーマ神殿の謎の広間……」
ハッサン「ここって一体なんのためにあるのかよくわかんらないんだよな」
勇者「……この地下……」
ミレーユ「……?」
勇者「この地下深くにとんでもない化け物がいる……!!」
テリー「なんだと?」
勇者「巨悪とかそういうんじゃなくて……なんていうか……純粋な力の塊、破壊の化身って感じだ……」
シックス「破壊の化身……?」
ミレーユ「もしそんな存在がいるなら野放しにはできないわね……」
ハッサン「しかしよぅ、下に降りる階段どころか扉だってないぜ?」
バーバラ「何か仕掛けがあるとか?こう……壁が動いたり床が割れたり」
テリー「その仕掛けをどうやって起動させるんだ?」
バーバラ「それは…………わからないけど」
勇者「……シックス、さっきから気になってるんだけどこの台座の炎は一体?」
シックス「それが……さっぱりわからないんだ」
シックス「初めてこの広間に来た時にこの部屋のことを調べてはみたんだけど何もわからずじまいでさ、この炎がどうして灯っているのか分からなくて……それっきりだ」
ミレーユ「……前に来たときより炎の数が増えてるわね」
勇者「そうなの?」
テリー「俺はここに来るの初めてだぞ?俺が知るかよ……ハッサンどうなんだ?」
ハッサン「さぁ?さっぱり覚えてねぇや」
勇者・テリー「おい」ビシッ
シックス「たしかに言われてみれば……」
チャモロ「初めてここに来た時はたしか小さな炎が4、5個灯っていただけですが今はほぼ全ての炎が大きく燃え上がっていますね」
テリー「火が灯ってない台座はどうやらこの一つだけのようだな」コンコン
シックス「……どういう理屈かはわからないけどいつの間にか俺達……或いは他の誰かが火を灯す条件を満たしていた、って考えるのが妥当か」
ハッサン「う~ん……俺頭使うのは苦手だからなぁ……」ムムゥ
バーバラ「……16……17……全部で18か……」
バーバラ「……ねぇ、シックス?ダーマ神殿で転職できる職業って何があったかな?」
シックス「え?ん~……下級職が戦士、武闘家、魔法使い、僧侶、踊り子、盗賊、魔物マスター、商人、遊び人……上級職がバトルマスター、魔法戦士、パラディン、賢者、スーパースター、勇者、ドラゴン……じゃないか?」
テリー「……レンジャー忘れてるぞ」
バーバラ「17!!ねぇねぇ!!もしかしてこの台座の炎って今までに私たちが極めた職業に関係あるんじゃないかな!?」
ハッサン「どういうことだよ?」
バーバラ「だってさ、私達が極めた職業って人それぞれ違うけど合わせたら17種類でしょ?」
バーバラ「火が点いてる台座の数もピッタリ17種類じゃない!!」
バーバラ「ここは職業を司るダーマ神殿なんだし職業に関係することで火が灯るって考えたら納得いくと思わない?」
チャモロ「……たしかにそれなら初めてこの広間を訪れた時にはあまり灯っていなかった炎が今ではほとんど灯っているというのも頷けますが……」
シックス「でも台座は18個だよ?職業は全部で17個……数が合わないじゃないか」
バーバラ「ん~……それもそうね……」
ミレーユ「私達の知らない職業があるとしたら……?」
ミレーユ「あくまで私達が知っている職業が17個なだけで18番目の職業がある……だからこの台座も18個。そう考えると辻褄が会うんじゃないかしら?」
バーバラ「それだ!!」
シックス「なるほど……『職業は全部で17個』って誰かに言われたワケじゃないもんな、俺達が勝手にそう思い込んでただけか……」
チャモロ「では18番目の職業とは一体……?」
バーバラ「多分……悟りの書じゃない?『ドラゴンの悟り』があるみたいに『○○の悟り』があってさ、それが必要なんだよ!!どう!?」
チャモロ「うーん……証拠はないけど否定はできない、といったところですね」
シックス「でも他にアテがないのもたしかだ」
チャモロ「はい」
シックス「…………よし、これから冒険は二手に分かれよう」
シックス「一つは勇者の修行に付き合う班。もう一つは謎の悟りの書を探す班だ」
シックス「勇者と修行をする班は勇者と一緒に魔物と闘う」
シックス「悟りの書を探す班は世界各地をまわって悟りの書、もしくはその情報を探す」
シックス「これでいこうと思うけど……いいか?」
勇者「俺は勿論賛成だけど……」
バーバラ「私も賛成ーっ」
ハッサン「このパーティのリーダーはお前だ、俺も文句ないぜ」
ミレーユ「えぇ、シックスが決めたことなら従うまでよ」
チャモロ「私もです」
テリー「俺も異論はないな、宝探しなんて懐かしいしな」
――――第六の世界・二日目・グランマーズの館
グランマーズ「…………」
ギィ……
ミレーユ「ただいま、おばあちゃん」
グランマーズ「ほっほっほ、来る頃だと思っていたよ。お前達のことはなんでもお見通しだよ」ホッホッホ
テリー「相変わらず薄気味悪い婆さんだな」
グランマーズ「口には気をつけんかい」ブンッ
テリー「いてっ」ゴンッ
グランマーズ「……さて、探し物だね?」
チャモロ「えぇ、私達は今未知の悟りの書を探しています」
ミレーユ「おばあちゃんの力でそのありかをなんとか占えないかしら?」
グランマーズ「未知の悟りの書ねぇ……本当にそんなものがあるのならいいけど…………ちょっとお待ち」フッ
ボワ~…………
グランマーズ「…………」
ミレーユ「どう?」
グランマーズ「……これは……どこかの洞窟の中かね……?」
グランマーズ「…………」
フッ
グランマーズ「ダメだね、私でもそこまでしかわからないよ」
ミレーユ「でも占えたってことは存在するってことね!!」
チャモロ「洞窟の中というのが分かっただけでも捜索範囲はかなり絞り込めましたしね!!」
テリー「……ほら、分かったらさっさと行こうぜ。しらみ潰しに洞窟を探して回るぞ」カツカツ
ミレーユ「あ、待ちなさいテリー!!おばあちゃんありがとうね!!」タッタッタッ
チャモロ「お力添えありがとうございました」タッタッタッ
グランマーズ「ほっほっ、また困ったことがあったらいつでもおいで」
バタン……
猫「にゃあん……?」
グランマーズ「なぁに、淋しくなんてないよ、世界に平和を取り戻したらあの子達も帰ってくる」
グランマーズ「それにお前もいるしね」ナデナデ
猫「にゃあ♪」ゴロゴロ
――――天馬の塔
キラーマシン2「…………」ビュッ
ハッサン「ほっ」サッ
ハッサン『飛び膝蹴り!!』バッ
ドゲシッ!!
キラーマシン2「ガガ……ギ……」プシュー
デスジャッカルA「ガアァ!!」
デスジャッカルB「ガゥ!!」
バーバラ『ザラキッ』!!
デスジャッカルA「ガ……!?」
シュンッ
デスジャッカルB「ガ……!?」
シュンッ
レジェンドホーン「ヒヒーン!!」パカラッパカラッ
勇者「でや!!」
勇者『隼切り』!!
ヒュババッ!!
レジェンドホーン「!?」ヨロ
勇者「シックス!!」
シックス『岩石落とし』!!!!
ブンッ!!
ガンッ!!
レジェンドホーン「」ドサッ
勇者「いっちょ上がりぃ♪」
ハッサン「勇者、お前強いな!!」ガハハ
バーバラ「ホントね、それだけ強かったら私達の仲間も十分務まるよ♪」
勇者「ありがとう、でも魔王を倒すにはもっと強くならないと……」グッ
シックス「戦士としての闘いには慣れたか?」
勇者「あぁ!!もう大分な!!魔人斬りだってできるようになったぜ」
シックス「魔人斬りが出来るとなると戦士はもう極めたも同然だな」
シックス「一旦ダーマ神殿に戻って次の職業に転職するとしよう」
勇者「忙しいな」
シックス「当たり前だろ?時間は限られてるんだ、できるだけ沢山の職業を極めないとな」
勇者「おう!!」
――――第六の世界・四日目・天馬の塔付近の山地
キングイーター「ガオゥ……」
ドサッ
勇者「ふぅ……僧侶にも随分慣れてきたな……でも極めるにはもうちょっとかかるかな~」
シックス「戦士、武闘家、魔法使いときて今は僧侶を極めつつある……順調だね」
ハッサン「でもよ勇者、お前魔法使いや僧侶になる前からその職業で覚える呪文はほとんど使えてただろ?それなのに魔法使いや僧侶に転職する意味なんてあったのかよ?」
勇者「ん~、新しく使えるようになった呪文はさしてないけどなんて言うか呪文が洗練されたかな」
勇者「今まで使えてたメラミでも魔法使いを経験してからの方が威力も精度もずっと高くなったしさ」
勇者「一つの職業を極めるっていうのはすごく意味のあることなんだな、って思ったよ」
ハッサン「へぇ~……」
バーバラ「おーい!!ご飯の準備出来たよー!!」
勇者「お、待ってました♪」
ハッサン「俺も腹ペコだぜ~」
シックス「じゃあ今日の修行はここまでにしておこうか」
シックス「明日は朝イチで僧侶を極めてまた転職だからな」
勇者「オーキードーキー♪」
――――夜・シックス一行のキャンプ
勇者「すぴー……すぷー……」
シックス「すー……すー……」
ハッサン「ぐがぁ……!!ぐがぁ……!!」ゴロン
ドフッ!!
勇者「がっ!?」フゴッ
ハッサン「ぐー……ぐー……」
勇者「う~ん……なんだハッサンよ……ったくホント寝相悪ぃな……」ムゥ…
勇者「…………あれ?バーバラがいないや」??
――――天馬の塔付近の山地・月のよく見える丘
バーバラ「…………」
勇者「あ、いたいた」テクテク
バーバラ「勇者!?どうかしたの?」
勇者「俺の台詞だよ、いきなりキャンプからいなくなったりして」
バーバラ「あ、そっか……はは、ごめんね」
勇者「隣……良い?」
バーバラ「うん」
勇者「よいしょ……」
バーバラ「座る時『よいしょ』だなんてオヤジくさいよ~」フフッ
勇者「う、うるさいな~」
勇者「で、どうしたのさ、一人でこんなとこで」
バーバラ「うん……ちょっとね」
勇者「…………」
バーバラ「…………」
勇者「…………なんかいつもと逆だなぁ」
バーバラ「……?」
勇者「俺が落ち込んだりしてた時は他の世界の勇者達が俺のこと励ましたりしてくれてたんだ」
勇者「俺はいつも話を聞いてもらう側だったからさ、いつもと逆だなぁ、って」
バーバラ「……そっか」
バーバラ「ねぇ、勇者」
勇者「なに?」
バーバラ「勇者はその……他の世界の勇者とその仲間達と仲良くなったんでしょ?」
バーバラ「お別れしなくちゃならない、ってわかってるのに仲良くなるのつらくなかった?」
勇者「え?う~ん…………」
勇者「考えたこともなかったなぁ~」ポリポリ
バーバラ「へ?」
勇者「たしかにせっかく仲良くなっても別れてもう会えないとなるとそれは悲しいけど……」
勇者「アイツらと過ごした思い出はずっと俺の胸の中にあるからね」
バーバラ「…………」
勇者「俺のこと『仲間』って言ってくれた奴もいた、俺のこと『家族』って言ってくれた奴もいた」
勇者「一人ぼっちの俺にとってその言葉がどんなに嬉しかったか……」
勇者「別れてしまう悲しさよりも出会えた喜びの方がずっと大きいんだ」
勇者「だからそんなに悲しくはないかなぁ……」
勇者「……う~ん、なんか上手く言えないなぁ……他の勇者達ならもっとビシッとかっこいいこと言えるんだろうけどな」ナハハ
バーバラ「……ううん、そんなことないよ」ニコッ
勇者「そうか?……でもなんでそんな話を?」
バーバラ「……うん……勇者になら言ってもいいかな……他のみんなには内緒だよ?」
勇者「? あぁ」
バーバラ「あのね……私……」
バーバラ「大魔王を倒したら多分シックス達とお別れしないとならないの」
勇者「え!?」
バーバラ「夢の世界のことは知ってるよね?」
バーバラ「人々の夢が造り出した想いの世界……」
バーバラ「大魔王デスタムーアがその世界も手に入れようとして世界に歪みを作ってるから夢の世界が具現化されて、本来なら交わることのない現実の世界と夢の世界が行き来できるようになってるの」
バーバラ「シックス達は現実の世界の住人……だけど私は夢の世界の住人なの」
バーバラ「……デスタムーアを倒して世界が元通りになったら……私は元の世界に、夢の世界に帰らなくちゃならない」
バーバラ「夢の世界と現実の世界が交わることがなくなればもう二度とシックス達に会うこともできなくなっちゃう……だからデスタムーアを倒したらみんなとお別れ……」
勇者「そんな……」
勇者「どうにかできないのか?何か方法は……」
バーバラ「こればっかりは……多分無理ね……」
勇者「……あんまりだろそんなの……バーバラはずっと……長い間シックス達と旅してきたんだろ?それなのに……」
バーバラ「いいの、仕方ないよ……デスタムーアを倒して世界が平和になるならそれが一番だし……」
勇者「だけど……」
バーバラ「それに勇者の話聞いたら元気出たしね」フフッ
勇者「え?」
バーバラ「別れの悲しさより出会えた嬉しさの方がずっとずーっと大きいな、って。私も勇者と同じだな、って思って」
勇者「バーバラ……」
バーバラ「だからもう大丈夫だよ、話聞いてくれてありがとうね」
バーバラ「あ、それとこの話は誰にも言わないって約束破らないこと」
勇者「……」
バーバラ「返事は?」
勇者「あ、あぁ、わかった」
バーバラ「よろしい」ニコッ
バーバラ「さ、もうキャンプに戻って寝ましょ……よいしょっ」
勇者「……ん?なんだよ、立ち上がる時に『よいしょ』なんて言ってるようじゃバーバラもおばさんくさいじゃないか」ハハッ
バーバラ「あ!!……アハハ~、失敗失敗♪」ナハハ
――――第六の世界・五日目・夢の世界・アモール北の洞窟
テリー「ったく、ここまで散々洞窟を探したのに見つからないとなるとあの婆さんの占いが間違ってるんじゃないのか?」
ミレーユ「そんなことないわ、おばあちゃんに限って占いが外れるなんて……」
チャモロ「まだ全ての洞窟を探し終えたワケじゃありませんよ、それに洞窟のようなところ……例えばどこかの地下通路や井戸の中ということも考えられますし」
ドランゴ「私も一生懸命……探す」
テリー「悟りの書を見つける前にデスタムーアに世界が滅ぼされなきゃいいけどな……っと」
テリー『盗賊の鼻』
テリー「……」クンクン
ミレーユ「……どう?」
テリー「……!!」ピクッ
テリー「どうやらこの階にはまだ一個お宝があるらしいな」
チャモロ「今度こそ当たりだといいですね」
ミレーユ「まったくね、取り忘れた桧の棒とかは勘弁して欲しいわね」
テリー「アイテムならまだ辛うじて許せるが昨日宝箱がミミックだった時は本気でキレそうになったな」
ドランゴ「…………?」ドシンドシン
ドランゴ「…………」ジー
ドランゴ「ギルルルルルルーーン!!」
テリー「どうした!?ドランゴ!?」
ドランゴ「旦那さん……これ……」
テリー「これは……!?」
ミレーユ「……巻物……まさか!?」
テリー「『はぐれの悟り』…………ビンゴだな」ニッ
――――ダーマ神殿
バーバラ「……あれ?ミレーユ達じゃない?」
ハッサン「ホントだ」
テリー「ったく、やっと来たか」
ミレーユ「ここで待っていればそのうち転職に来るだろうと思って」
チャモロ「勇者さんの修行はどうですか?」
勇者「今踊り子を極めて転職に来たとこ。まったく闘ってばっかりで嫌になっちゃうよ」ハァ
シックス「泣き言言わない……そっちは?」
テリー「フッ……見ろ」サッ
シックス「!?」
ハッサン「ぉお!?まさか!?」
バーバラ「これが!?」
テリー「そうだ、『はぐれの悟り』だ!!」
シックス「すげー!!ホントにあったんだな!!」
バーバラ「ね!?ね!?あたしの言った通りだったしょ!?」
シックス「みんなお疲れ様」
ミレーユ「ふふっ、いいのよ」
ハッサン「う~ん……でも『はぐれ』ってなんだ?」
チャモロ「さっきそこの職業に詳しいシスターさんに聞いたら『はぐれメタル』の『はぐれ』じゃないかって」
シックス「はぐれメタルか……」
バーバラ「どんな特技が覚えられるんだろうね?」ワクワク
勇者「で、誰がこれ使うんだ?たしか一回しか使えないんだよな?」
シックス「そうだな……じゃ例のアレ、やるか……」ゴゴゴ…
バーバラ「……仕方ないね」ゴゴゴ…
テリー「……あぁ」ゴゴゴ…
勇者「……アレ?」
シックス「……そう、じゃんけん大会!!!!!!」ドーン
ミレーユ「ウチでは新しく手に入った装備とか貴重なアイテムなんかを使う人を公平にじゃんけんで決めるようにしてるのよ」
シックス「……さて、参加者は!?」
バーバラ「はーい」
ハッサン「俺もだ!!」
テリー「俺も!!」
ミレーユ「私は今回は遠慮しておくわ」
チャモロ「私も皆さんに譲ります」
シックス「勇者は!?」
勇者「俺は……いいや、他の職業極めなきゃなんないし元々この世界の人間じゃないしさ」
シックス「よし……じゃあ参加者は俺を含めて四人か」
バーバラ「最初はグーで初めて相手の手が開きかけてたらチョキを出せば負けない……」ブツブツ
テリー「ふん、バトルマスターを極めた俺の動体視力に勝てるとでも?」ニヤッ
ハッサン「あの技は二刀流じゃんけんに敗北しただろうが、もう時代遅れなんだよ」
シックス「やっぱり漢ならこれしかないだろ……」ガッグリッ
シックス「…………見えた!!!!」カッ
シックス・ハッサン・バーバラ・テリー「最初はグー!!じゃんけんぽん!!!!あいこでしょ!!!!しょっ!!!!しょっ!!!!」
ざわざわ……
ひそひそ……
ミレーユ・チャモロ(た、他人のフリ他人のフリ……)カァ
――――第六の世界・七日目・狭間の世界・嘆きの牢獄付近の平原
バーバラ「もー、いつまでたっても慣れないよー!!」ムー
テリー「フン、はぐれメタルになれたんだから文句言うなよ」
バーバラ「そんなこと言ったってさー、素早さと身の守りがすごく上がったのはいいけど体力はガタ落ちするし非力になるし強力な特技覚えられるワケじゃないしで全然いいことないよ!!」ムスッ
勇者「非力で脆弱で硬くて俊敏……はぐれメタルそのまんまだな」ククッ
ハッサン「まさか隠れ職業が外れ職業だったとはなぁ」ゲラゲラ
シックス「まだ強力な特技を習得できてないだけで極めていけばすごい特技を覚えられるかもしれないよ?」
バーバラ「実際今はそれに期待するしかないわね……」ハァ
チャモロ「勇者さんはどうですか?」
勇者「俺は順調だな、下級職は今やってる遊び人で最後だ♪」
シックス「そしたら次はいよいよ上級職だな」
勇者「おおー!!楽しみだなぁ♪」
ミレーユ(……どうしてシックスは下級職を全て極めさせてから上級職に就かせようとしているのかしら……?)
シックス「ん?どうしたかした?ミレーユ」
ミレーユ「えぇ……前から気になっていたのだけれど勇者ほどの素質があるのならバトルマスターや賢者を極めればすぐに『勇者』への転職の道が開けるんじゃないかしら?それをわざわざ下級職を全部極めさせるなんて……」
シックス「あぁ、そのことならちゃんと考えがあってのことだ、大丈夫だよ」
ミレーユ「あなたがそう言うのなら大丈夫なのでしょうけど……」
ハッサン「おいシックス、そういやお前最近ターニアちゃんとこ行ってねぇんじゃないか?」
シックス「そういやそうだな……」
勇者「ターニア?」
バーバラ「シックスの妹さんよ」
チャモロ「今日はライフコッドで休んではいかがですか?」
勇者「俺も会ってみたいなー♪」
シックス「う~ん……そうだな、じゃあそうするか」
――――夢の世界・ライフコッド
ギィ……
勇者「ごめんくださーい」
ターニア「はーい、今行きまーす」ペタペタ
シックス「よっ」
ターニア「あ!!お兄ちゃん!!お帰りなさい!!」
バーバラ「元気にしてたー?」
ミレーユ「久しぶりね」
ハッサン「ターニアちゃん、一人で寂しくなかったかかい?」
ターニア「もう、子供じゃないんだから大丈夫ですよ」ウフフ
勇者「へー、シックスにこんな可愛い妹がねぇ」
ターニア「そちらの方は……お兄ちゃんのお友達ね?お兄ちゃんがお世話になってます」ペコッ
勇者「いやー、お世話になってるのは俺の方だけどな」アハハ
シックス「今日は泊まっていくよ」
ターニア「本当!?嬉しい!!」
ターニア「……あ、でもみなさん全員が泊まるとなると窮屈ですね……」
ハッサン「なぁーに、野宿に比べりゃ天国だぜ」
バーバラ「それに近くに温泉もあるしねっ♪」
勇者「温泉!?」
――――ライフコッド付近の温泉
ハッサン「ふぃ~……いい湯だ……」ハァ…
チャモロ「久しぶりに来ましたがやはりいいものですね……」ハァ…
勇者「驚いたな、村の近くにこんな温泉があるなんて……」チャプ
シックス「だろ?村の人だけが知る秘湯でさ、みんなで整備したんだ」
勇者「この温泉を売りにすれば観光客も沢山来るだろうに」
シックス「この温泉は村のみんなだけで静かに使いたいんだってさ」
勇者「なるほどな~」
テリー「ま、そのおかげで静かに湯に浸かれていいけどな」チャプ
ハッサン「ぁあん?テリー、まさかお前このまま温泉に入って体温めて終わる気かよ?」
テリー「は?何言ってるんだ?」
ハッサン「聞こえないのか!?あの天使達の歌声が!?」
勇者「……?」
ウフフ……
キャッ……
テリー「ま、まさかお前……!!!!」
ハッサン「そこに山があるから登るのが登山家……そこに謎があるから旅に出るのが探検家……なら!!」
ハッサン「そこに女湯があるなら覗くのが漢だろ……?」ニッ
テリー「何良い顔で言ってんだよ!!ただの変態だろうが!!」
ハッサン「なんだ、お前は行かないのか?」
テリー「当たり前だろ!!姉さんも入ってるんだぞ!?」
シックス「あれ?来ないの?」
勇者「なんだよ……シラけるな~」
テリー「お前らもかよ!!!!」
シックス「おい、ハッサン、こんな漢の風上にも置けないキザ野郎は無視していこうぜ」
ハッサン「あぁ、まったくだな」ハァ
テリー「ふん……勝手にしろ」
勇者「とか言ってホントは見たいんだろ?」
テリー「は?んなワケないだろ!?」
勇者「まぁまぁ……何も言わずにさ、ミレーユやバーバラの裸体を想像してみろよ?」
テリー「…………」
シックス「……見てみたいとは思わないか?」ポン
テリー「きょ、興味ないッ!!」フンッ
ハッサン「これ以上は何を言っても無駄だ、俺達だけであのエデンへ向かおうぜ」
勇者「これがホントの『エデンの戦士達』か……」フッ
シックス「なにそれ?」
チャモロ(よくやるなぁ……)チャプチャプ
――――
勇者「…………で」
ハッサン「なんでお前もついてきてんの?」
テリー「お、俺はお前らから姉さんを守るためにだな!!」
シックス「自分に正直になれよテリー……」フッ
テリー「だから違うって!!」
ハッサン「む!?静かに!!」
勇者「……!!」
ハッサン「このすぐ先だ……」
シックス「……」ゴクッ
テリー「……」ゴクッ
ハッサン「……行くぞ!!」ダッ
シックス「おぅ!!」ダダッ
勇者「あぁ!!」ダッ
テリー「あ、ま、待てお前ら!!」ダッ
ハッサン「この湯けむりの先にエデンが……!!」バッ
デアゴ「ゴアァ……」
ハッサン「!?」
勇者「え!?何この怪物!?」
シックス「これは……大地の精霊デアゴ!!!!」
デアゴ「ガルルアァ!!!!」ババッ
ハッサン「うわ!!て、撤退だ!!」
シックス「逃げろ!!」
勇者「のわーー!!」
テリー「なんで俺まで!!!!」
――――女湯
ギャーギャー
バーバラ「? 外が騒がしいねー」
ミレーユ「ふふっ、『召喚』使っておいて良かったわね」
――――男湯
ハッサン「つつ……さっきは酷い目にあったぜ……」
テリー「まったくだ、俺までとばっちり食らったぜ……」チッ
チャモロ「よく懲りもせずに毎回挑戦しますねぇ」ハァ
ハッサン「別ルートならあるいは……」
テリー「また行くのかよ!?」
勇者「……そういやターニアも温泉?」
シックス「いや、ターニアは晩飯の準備をしてくれてる」
勇者「そっか、しかしいい娘だよな~、可愛いし気も利くしさ、シックスの妹には勿体ないくらいだよ」ハハッ
シックス「なんだよ、ひどいな~」苦笑
勇者「……ん?あれ?シックスが王子様ならターニアは王女様だろ?なんでこんな山奥に一人で住んでるんだ?」
シックス「……俺とターニアは血の繋がりがないからな……」
勇者「……え?」
シックス「勇者、ここは夢の世界だ……ここに住む人々は例外なく人々の想いが創り出した存在」
シックス「つまり夢の世界のターニアも現実世界のターニアが想い描いた夢。『お兄さんが欲しい』っていう夢が俺との出会いを生んだんだ」
シックス「現実世界のターニアは若くして両親を失った一人っ子……きっと淋しかったんだろうなぁ……」
勇者「…………」
シックス「……俺さ、ちょっと前まである事情で精神と肉体に引き裂かれていたんだ」
勇者「うん、知ってる。魔王ムドーの呪いだっけ?」
シックス「そうそう。詳しい理屈は俺にもよくわからないんだけどとりあえず精神だけの存在……記憶を無くした俺は夢の世界で……ターニアの兄として暮らしていた」
シックス「記憶を取り戻してからやっとわかったんだけど俺は小さい頃に妹を亡くしててな……きっと俺自身も無意識のうちに妹って存在を欲しがってたのかもしれないな」
シックス「……ま、肉体を取り戻して記憶が蘇って、ターニアが本当の妹じゃないってわかった今でも俺はターニアのこと本当の妹だと思ってるけどな」ニコッ
勇者「…………」
勇者(……デスタムーアを倒したらシックス達はバーバラだけじゃなくターニアとも別れなくちゃならないのか……)
勇者「あ、あのさ、シックス……」
バーバラ『……他のみんなには内緒だよ?』
勇者「……ッ」
シックス「ん?どした?」
勇者「うん……その……さ、えっと……」
勇者「……ターニアがお嫁に行っちゃったらどうする?」
シックス「はぁ?なんだよ、藪から棒に」ハハッ
勇者「すげー遠くにお嫁に行っちゃってさ、もう会えなくなったらどうする?」
シックス「うーん、そうだなぁ……」
シックス「ターニアが幸せならそれが一番だと思うけど……もし二度会えないとしても仕方ないかな、って思うな」
勇者「仕方ないって……それでいいのか?」
シックス「だってさ、ずっと一緒にいるなんて無理なことだぜ?」
シックス「人と人の付き合いには別れはつきものさ……人と人が出会った時からな」
シックス「だからいつか来る別れのときのために一生懸命思い出をつくるんだと思うんだ」
シックス「ホラ、えーと……なんて言ったかな……あ!!そうそう!!」
シックス「『一期一会』って奴だな」
シックス「出会った瞬間から別れのカウントダウンが始まる……だから運命のような偶然のような出会いを大切にしろってことじゃないか?」
シックス「懸けがえのないのない、大切な、温かな思い出を作るために……さ」チャプ…
シックス「まーでもターニアがどんなに遠くに嫁に行ったとしても世界中を旅してる俺達なら簡単に会えるだろうけどな」ハハッ
勇者「…………」
勇者「あーぁ、やっぱ敵わねぇな~」
シックス「?」
勇者「なんでもないよ、こっちの話」
勇者「さてと、のぼせそうだしもうあがるな」ザバッ
シックス「あぁ、俺ももうあがるよ」
シックス「………………」
シックス「……大丈夫……わかってるよ、勇者……」
━━━━第六の世界・九日目・狭間の世界・とある平原
バーバラ「……!!」
ハッサン「どうしたバーバラ?」
バーバラ「……極めたよ、はぐれメタル!!」
シックス「ついにか!!」
バーバラ「うんっ!!次の戦闘で見せてあげるよ」ニッ
勇者「言ってるそばからおいでなすったぜ」チャッ
ヘルクラッシャーA「キシャア!!」
ヘルクラッシャーB「カァ……!!」
ホロゴースト「……」
バーバラ「いっくよー!!」
バーバラ『ビッグバン』!!!!
グゴゴゴゴゴ……!!!!
カッ!!
ドッガアアァァーーーン!!
ヘルクラッシャーA「」プシュー
ヘルクラッシャーB「」プスプス
ホロゴースト「」 ピクピク
バーバラ「アハッ♪すごーい!!!!ねぇねぇ見て見て!!」
ハッサン「」プシュー
シックス「」プスプス
勇者「」ピクピク
バーバラ「……あ…………テへッ」
ハッサン「『テへッ』じゃねぇよ!!危うく死ぬとこだったんだぞ!?」ガバッ
バーバラ「ごめんごめん」ナハハ
勇者「つぅ……しかしすげぇ威力だな、イオナズンの比じゃないぞ」
バーバラ「うん、扱い方に気をつけないとね」
シックス「なんにせよこれで18種類の職業を極めたわけだ」
シックス「これがあの広間の謎を解く鍵になるといいんだが……勇者、魔法戦士はどうだい?」
勇者「うん、あとちょっとかな。前やった賢者もそうだったけど上級職は強いぶん極めるのが大変だな」
シックス「まぁな……よし、じゃあ勇者が魔法戦士を極めたらダーマ神殿に行くとしよう
――――ダーマ神殿
神官「これで勇者はバトルマスターとして生きてゆくことになった。生まれ変わったつもりで修行を積むが良い」
勇者「これがバトルマスターか……力が湧き出てくるみたいだ」ギュッ
ハッサン「いいよな、バトルマスター。俺も好きだぜ」
神官「他に職業を変えたい者はいるかな?」
シックス「じゃあ次は俺が」
ミレーユ「あら?シックスも?今の職業はまだ途中じゃなかったかしら……?」
シックス「あぁ、だけど勇者の言っていた破壊の化身とやらと闘うことになるとしたら万全の準備が必要だと思ってな、勿論みんなにも自分に一番合う職業になってもらうよ」
ミレーユ「なるほど」
バーバラ「なら私は賢者ね~」
勇者「やっぱりみんな合う職業合わない職業とがあるんだな」
チャモロ「えぇ、基本的には自分の長所を活かせる職業が最適ですね」
シックス「おーい、チャモロの番だぜ」
チャモロ「はい、只今」
――――ダーマ神殿・謎の広間
シックス「いよいよだな……」
バーバラ「あ、見て見て!!ちゃんと最後の台座にも炎がついてるよ!!」
勇者「ホントだ!!」
ハッサン「でもこの前とそれ以外は何も変わらないぜ?」
テリー「……いや、待て」
キィィン……
シックス「くっ……!?」
ミレーユ「これは……!?」
『数多の技を身につけし者よ……今こそ汝を迎えん!!!!』
ハッサン「だ、誰だ!?」
ゴゴゴゴゴ……!!
チャモロ「見て下さい!!あれ!!」
勇者「壁が開いて奥に部屋が……?」
ミレーユ「こんな仕掛けがあったなんて……」
シックス「行ってみよう!!」ダッ
テリー「あぁ!!」ダッ
バーバラ「ま、待ってよ!!」
――――ダーマ神殿・封印されし小部屋
テリー「……階段だな」
勇者「間違いない、この奥だ」ゴクッ
シックス「よし、行こうか……」カツカツ
ハッサン「……あれ?ここどっかで見たことないか?」
バーバラ「あれ?たしかに……」
チャモロ「ここは……アークボルトの近くの洞窟じゃないですか?」
シックス「懐かしいなー、ドランゴがいたところだな」
ミレーユ「……でもなんでこんなところに繋がってるのかしら……?」
テリー「おい、次の階段だ、降りるぞ」カツカツ
シックス「あ、あぁ」
バーバラ「……え?何ここ?全然違う造りの洞窟になっちゃったよ?」
シックス「ミレーユ……ここは!!」
ミレーユ「えぇ、グランマーズのおばあちゃんの家の近く……夢見の雫のある洞窟ね」
ハッサン「なんだってこんなとこに出てきちまったんだぁ?さっぱりワケがわからねぇぜ」ムゥ…
――――謎のダンジョン・中間層
バーバラ「ホントになんなのここ?フロア毎にまるで別のダンジョンだし……」
勇者「おまけに出てくる魔物はみんな強いしな」
テリー「ん?この先に何かあるみたいだぜ?」
ハッサン「ハハッ、こんだけおかしなとこだ。もしかしたら次は村でもあって人が住んでたりしてな」
ミレーユ「……もぅ、こんなところに人が住んでるワケないでしょ?」
テリー「今度は外に出…………あ?」
バーバラ「え?ぇえ?村?」
ハッサン「マ、マジかよ……ハ、ハハ、な?だから言ったろ?」ハハハ
チャモロ「解せませんね……こんなところに人が住んでいるのか?何故私達は地下へ地下へと進んでいたのに地上に出てきたのか?……ふ~む……」
シックス「ここ……ラ、ライフコッドだ!!」
ミレーユ「!!……たしかにライフコッドにそっくりね……」
ハッサン「どういうことだぁ……??」
テリー「おい見ろ、アレ」クイッ
スライム「ピキー」
腐った死体「…………」
シックス「魔物!?」チャッ
勇者「待った!!…………魔物達から悪意は感じない、多分悪い魔物じゃないと思う」
シックス「そうか……でもなんでライフコッドに魔物が……」
勇者「よっ、ここはライフコッドだろ?」
スライム「ピキー!!ここに旅人が来るなんて初めてのことだよ!!」
スライム「ここはデスコッド、魔物が暮らす村さ」
ハッサン「魔物が暮らす村ぁ?」
バーバラ「そんな村があるなんて……」
シックス「……考えても仕方ないさ、ここは安全そうだし今日はここで休んでいこう、みんな疲れてるだろうからな」
テリー「賛成だ、ついでにこの村を調べてみよう。何かわかるかもしれない」
――――第六の世界・十日目・デスコッド・民家の地下
バーバラ「ホントに魔物ばっかりの村だったね~」
チャモロ「道具屋でドラゴンの悟りが売っていたのには驚きました……」
ミレーユ「えぇ……他にも喋る猫、喋るカエルにエルフもいて……本当に不思議な場所ね」
ハッサン「……で、さらに奥に進む場所つったらこの井戸しかないワケだが……どうなんだ、勇者?」
勇者「……うん、間違いない……この先だ……」
ランプの魔王「ファファファ、その先へ進むのか?」
シックス「あぁ、そのつもりだけど……」
ランプの魔王「この先には大魔王デスタムーアすら凌ぐ悪魔が存在している。お前達人間が敵うワケがない」
ランプの魔王「死にたくなければおとなしく引き返すことだな、ファファファ」
ハッサン「なんだとぉ!?」ムッ
テリー「よせ、ハッサン」
勇者「……でもたしかにとんでもない魔力の持ち主だ……狭間の世界で感じた大魔王の魔力よりずっと強い……」ゴクッ
ミレーユ「……でも行くのでしょう?」
シックス「……あぁ、そんな奴がいるってのに放っておくことはできない……行こう!!」
バーバラ「うん!!」
ランプの魔王(…………命知らずの馬鹿者どもが……だが奴らならあるいは……)
――――謎のダンジョン・最深部
ハッサン「一体どこまで続くんだこの洞窟は!!」
バーバラ「ホントね~、嫌になっちゃう」
勇者「…………」ゴクッ
テリー「……近いのか?」
勇者「あぁ……多分すぐそこだ」
シックス「おー、階段だ!!これが最後の階段だといいけ…………」
シックス「!!」ゾワッ
ミレーユ「……!!」ビクッ
勇者「……!!」ブワッ
チャモロ「……!!」ゾクッ
ハッサン「へ、へへ……勇者みたいに魔物の気って奴はわかんねぇ俺でもわかるぜ……ここは…………ヤバイ!!」
バーバラ「……ここも……どこかで見たことある……しかもその時すごく嫌なことがあったような……」ワナワナ
テリー「扉だ」
ギイィ……
テリー「ここは……!?」
ハッサン「台座にカエルとトカゲの供え物だぁ?気味の悪いとこだぜ……」
ミレーユ「この場所……グレイス城じゃない?」
勇者「グレイス城?」
ハッサン「どこだっけそれ?」
チャモロ「オルゴーの鎧の祀ってあった城ですね……大魔王すら喰らう悪魔を召喚して滅んだと言う……」
シックス「…………じゃあまさか!!」
ゴゴゴゴゴゴ…………!!!!!!
テリー「…………ッ!!」チャキッ
???「ぶるあああああああああ!!!!!!」
ゴウッ!!
勇者「な、何だ!?」
???「私を呼び醒ます者は誰だ?」
???「私は破壊と殺戮の神ダークドレアムなり……」
シックス「ダーク……ドレアム……」ゴクッ
ダークドレアム「私は誰の命令も受けぬ……全てを無に返すのみ……!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
チャモロ「来ますよ!!」サッ
ダークドレアム「ぶるああああああ!!」
ダークドレアム『ギィガァデイン』!!!!
ズガガーーーン!!
バリバリバリ!!
ミレーユ「きゃっ!!」
テリー「くっ!!」
勇者「ギガデインを易々と使ってくるとは……!!」
バーバラ「みんな下がって!!」サッ
バーバラ『ビッグバン』!!!!!!
グゴゴゴゴ……!!
ダークドレアム「むっ!?」
カッ!!
ドッガアアァァァン!!!!
ダークドレアム「くっ……!!」ズザザザザー!!
バーバラ「な!?ビッグバンをくらってあの程度なの!?」
ダークドレアム「邪魔だぁ小娘ぇ!!」ギンッ
バーバラ「あっ……」フラッ
ドサッ
シックス「バーバラ!!」
チャモロ「大丈夫!!眠っているだけです!!」サッ
テリー「くそっ!!アイツの目を見るな!!」
勇者「んな無茶な!!」
ハッサン「くそったれぇ!!!!」
ハッサン「スゥーーー」ピタッ
ハッサン『輝く息』!!!!
ビュウウゥゥゥ!!!!
ダークドレアム「ぶるあああああああ!!!!」
ゴォオオォォォ!!!!
ジュワアアァァ!!
ハッサン「なっ!?『灼熱』で相殺しやがった!?」
ダークドレアム「はあっ!!」
シュバババッ!!!!
ハッサン「ぐおっ!?」ガハッ
シックス「一瞬でも気を抜いたらやられるぞ!!」
シックス「俺、勇者、ハッサン、テリーは攻撃、ミレーユとチャモロは回復、バーバラは攻撃兼サポートだ!!」
勇者「わかった!!」
テリー「へっ、相手にとって不足はねぇ!!」
ダークドレアム「ぶるあああああああああ!!!!!!!!」ゴオッ!!
――――
ダークドレアム『グゥラーンドクロスゥ』!!!!
キュワンッキュワンッ
カッ!!
テリー「ぐっ……!!」
ミレーユ「きゃあ……!!」
チャモロ『ベホマラ……』
ダークドレアム「遅ぉいッ!!」ビュッ
ドガンッ!!
チャモロ「が……はっ!!」
ダークドレアム「トドメだぁ!!」
ハッサン「させるかよ!!……らぁ!!」
【ハッサンは腰を深く落とし真っ直ぐに相手を突いた!!!!】
ダークドレアム「アッーーーーーーーーー!!!!」
ハッサン「へへっ」ニッ
ダークドレアム「……と、言うとでも思ったかぁ?」ニヤッ
ハッサン「なっ!?」
ダークドレアム『メラゾーマ』!!!!
ゴオォォォ!!!!
ハッサン「ぬわーーっっ!!」
バーバラ『バイキルト』!!
勇者「だあぁ!!」
勇者『諸刃斬り』!!!!!!
ズバァン!!
ダークドレアム「ぐぅ!?」ヨロッ
勇者「どうだ!!……っつ」ハァハァ
ダークドレアム『ぶるあああああああああああああああああ』!!!!!!!!!!
ゴオッッッッ!!!!!!
勇者「うわぁーーー!!」ドッ
バーバラ「きゃぁあーー!!」ドッ
ドサドサッ
ダークドレアム「さぁ……残るは貴様だけだぞ……」チャッ
シックス「…………あぁ、これで決着を着けよう」グッ
シックス「はぁあああああ!!!!」
バチバチ……バチバチバチバチ!!
キイィィィィィィン!!!!!!
ダークドレアム「ほぉう……『勇者』の秘剣ギガスラッシュか……」
ダークドレアム「良いだろう、ならば私は地獄のいかずちで応えようじゃあないか」
ゴゴゴゴゴゴッ!!
ビキビキ
ガラガラガラ
シックス「だりゃぁああああ!!!!」ドンッ
ダークドレアム「はぁっ!!」
ダークドレアム『ジゴスパー……!!』
ガシガシッ!!
ダークドレアム「なっ!?」
ハッサン「させねぇよ」ニッ
テリー「勝手に終わらせるんじゃねぇよ」ハァハァ
チャモロ「貴方の相手は私達全員ですよ?」ゼェゼェ
勇者「そういう……ことだ」ニヤッ
ダークドレアム「貴様らぁ、死に損ないの分際でぇ!!」
勇者「シックスーー!!今だぁーーー!!!!」ガフッ
シックス「ぅうおおおおおお!!!!!!」
シックス『ギガスラーーーッシュ』!!!!!!
ズッバァァァン!!!!!!
ダークドレアム「ぐっはぁぁぁ…………!!」
ブシャアァァァ!!!!!!
ダークドレアム「ば、馬鹿なぁ……」
シックス「ハァ……ハァ……!!」ゼェゼェ
ハッサン「どうやら……なんとか勝てたみたいだな……」ドサッ
勇者「……あぁ……」ドサッ
ダークドレアム「まさかこの私が破れるとは……」
ダークドレアム「しかし何者もこの私の息の根を止めることはできぬ……」
ダークドレアム「私は破壊と殺戮の神ダークドレアムなり」
ダークドレアム「私を滅ぼしたければもっともっと強くなることだな」
ダークドレアム「私との戦いにこんなに時間がかかっているようでは真に私を負かしたとは言えぬだろう」
ダークドレアム「私はいつでもここにいる。さらに腕を上げてここに来る日を待っているぞ」ニッ
シュウゥゥ……
フッ……
勇者「気配が消えた……」
バーバラ「ただ倒しただけじゃダメなの!?気が遠くなりそう……」
ハッサン「ケッ、負け惜しみほざきやがって……」
勇者「……でもアイツは本気じゃなかった……力をセーブして闘ってた……まるで俺達との闘いを楽むかのように」
テリー「手玉にとられたみたいで気に食わないな……」ギリッ
ミレーユ「全てを無に返す破壊と殺戮の神……恐ろしいけれど……でも私達が立ち向かわなきゃならないわね」
チャモロ「えぇ……」
シックス「まだまだ修行が足りないってことだな……さて、とりあえず地上に帰ろうか。みんなボロボロだもんな、ゆっくり休もう」ハハッ
――――現実世界・レイドック城
シックス「調子はどうだ、勇者?」
勇者「うん、お陰様でもう全快だよ。しっかし立派な城だな~、シックスがこのお城の王子様とはねぇ~」
ハッサン「だよな、なよっちくてそんな風には見えねぇよな~、俺なんて初めて会った時王子様だと知らずにどついちまったぐらいだ」
バーバラ「それは100%ハッサンが悪いと思うけどね」
ミレーユ「えぇ」
ハッサン「ちぇっ」
シックス「デスタムーアを倒して世界が平和になったらまた昔みたいに国政を学ばなくちゃなぁ……」
チャモロ「そうですね、大魔王を倒しても私達の人生はその先もずっと続いていくのですからね」
テリー「あぁ、そのためにもなんとしてもデスタムーアを倒さなけりゃな」
バーバラ「うん……そうだね」
キラキラキラ……
勇者「おっ?」
ハッサン「なんだぁ?勇者が急に光だしたぞ?」
バーバラ「勇者、もしかして……」
勇者「……うん、お別れだ」
シックス「勇者……」
キラキラキラ……
ハッサン「……勇者、ここでお別れだけどよ、その……ありがとな。お前と過した時間、楽しかったぜ」ヘヘ
勇者「うぅん、お礼を言うなら俺の方だよハッサン」
チャモロ「勇者さん……短い間でしたが一緒に過ごせて私も楽しかったです。ご武運をお祈りしてます」
ミレーユ「私も勇者を応援してるわ。一緒に闘えないのが残念だけれど……私達はいつでもあなたの味方よ」
勇者「うん……ありがとう、チャモロ、ミレーユ」
テリー「フン、お前の世界の魔王がどれだけ強いか知らないが敗けたら許さないからな」
勇者「ははっ、そりゃこっちの台詞だ、テリー達も敗けんなよ」ニッ
バーバラ「勇者……」
勇者「……バーバラ……その……」
バーバラ「あの日は話聞いてくれてありがとうね、あたしのことなら心配いらないよ」
勇者「…………」
バーバラ「あたしも勇者が悪い奴やっつけられるように応援してるから勇者もあたし達が早く世界を平和にできるように応援してね?」
勇者「……うん、わかった」
バーバラ「うん♪お互いがんばろ」ニコッ
キラキラキラ……
勇者「シックス、色々教えてくれてありがとうな。俺また強くなれたよ」
シックス「っつっても俺は何も教えてない気もするけどな、全てはお前の努力の成果だ」ニッ
勇者「ありがとう」ニッ
キラキラキラ……
勇者「シックス……短い付き合いだったけどさ、俺との出会いも……お前に大切な思い出を作れたかな……?」
シックス「ハッ、何馬鹿なこと言ってんだよ」
シックス「思い出の大切さは必ずしも時間に比例するワケじゃないんだぜ?」
シックス「みんなも言ってただろ?お前と過した時間は楽しかった、って。俺も同じに決まってるだろ」
シックス「懸けがえのない時間をありがとう、勇者。お前のことはずっと忘れないよ」
勇者「…………そっか、そうだな、俺もみんなのこと忘れないよ!!」ニカッ
キラキラキラ……
シックス「元気でな、勇者」
勇者「あぁ、シックスも」
キラキラキラ
勇者「じゃあな……」
キラキラキラ
フッ……
ハッサン「行っちまったかぁ~」
ミレーユ「勇者、明るくて元気だったものね……やっぱりいなくなるとちょっと淋しいわね」
チャモロ「そうですね~……」
バーバラ「うん……でも大丈夫だよ、あたし達が勇者のこと忘れなければ勇者はいつまでもあたし達の心の中で一緒」
バーバラ「勇者と過した大切な時間と一緒に……ね」
シックス「そうだな……それはバーバラも同じだよ」
バーバラ「……え?」
シックス「この先離ればなれになって会えなくなっても、俺達はバーバラと冒険した日々は絶対に忘れないよ」
バーバラ「え?え?シックス……もしかして知って……?」
ミレーユ「みんなわかってるわ、大魔王を倒して世界の歪みが正されてしまったら……夢の世界の住人であるバーバラは在るべき世界に帰って二度と私達に会えなくなるだろうってこと」
チャモロ「私達も馬鹿じゃないですからみんな薄々勘づいてたんです……ただそれを言葉にするのが怖くて言えなかっただけで……」
ハッサン「ったく水臭ぇよな、もし俺達が気づかなかったらさよならもなしに行っちまうつもりだったのかよ?」
バーバラ「……それは……」
テリー「俺は一人で旅していた時間が長いから仲間って奴はよくわからないが……それでも黙って別れるべきじゃないことぐらいわかる」
バーバラ「…………」
ミレーユ「みんなが自分のこと知ったら最後の闘いがやりづらくなるんじゃないかと思って言わなかったんでしょ……?」
バーバラ「……あ、あたし……みんなと離ればなれになるのが淋しくて……面と向かってさよならなんて言えなくて……」
バーバラ「でもみんなには世界を平和にするために全力で闘って欲しくて……どうしたらいいのかわからなくて……その…………」
シックス「大丈夫だよ」ギュッ
バーバラ「……シックス……」
シックス「さっき自分で言っただろ?……俺達は離れていてもずーっと一緒だよ……バーバラはいつまでも俺達の仲間だ」ギュゥ…
バーバラ「…………う……うぅ……」ブワッ
ハッサン「そーゆーことだぜ。だからお前が心配することなんてなんにもねぇんだよ」
ミレーユ「無事に大魔王を倒せたら笑顔でお別れしましょう」ニコッ
チャモロ「それが一番ですよ」
テリー「だな」
シックス「……な?」
バーバラ「…………ひっぐ……えぐっ……うん、うん!!」ギュッ
バーバラ「……ありがとうみんな……ありがとう……!!」ポロポロ
ハッサン「へへっ」
ミレーユ「うふふ」
テリー「こういう泣けるシーンも勇者の村には伝わっていたのかな…………ん?…………」ムゥ…
ハッサン「? 何難しい顔してんだオメェは?」
テリー「……すまない、少し引っかかることができたから考え事を」
ハッサン「ったく、感動のシーンだってのによ」
テリー「…………」
テリー(勇者の話によると……勇者の村は別世界の勇者達の伝承を語り継ぐ村だったらしい……)
テリー(だが……何故勇者の伝承を語り継ぐ村はその村だけだったんだ?)
テリー(複数の村で勇者の伝承を語り継ぐなり世間に広めるなりしておけば勇者の住んでいた村が魔族側に特定されることもなかった……)
テリー(『この村から勇者が生まれますよ』と言っているようなもんじゃないか)
テリー(勇者の伝承を1つの村でのみ語り継いでいたのにはやはり意味があるのか……?)
――――謎のダンジョン・最深部
ダークドレアム「ぐぅ……!!」ヨロッ
ダークドレアム「まさかこの私が敗れるとは……」
ダークドレアム「だが私との戦いにこんなに時間がかかっているようでは真に私を負かしたとは言えぬだろう」
???「ふむ……そうですか……やはりデスタムーア様の仰った通り貴方は力の権化とも言える存在、私などが真に勝てる相手ではなかったということですね」
ダークドレアム「……しかしよもや一人でこの私を打ち負かすとは……貴様何者だ……?」
――――星の海
勇者「ただいま、ルビス」
ルビス『おかえりなさい、今回は随分と闘いに明け暮れたようですね』
勇者「あぁ、もう毎日毎日魔物と闘ってばっかりで嫌になっちゃうっての」
勇者「まぁそのおかげでまた強くなれたけどな」グッ
勇者「そういやルビス、第六の世界にある『職業』ってわかる?」
ルビス『えぇ、それがどうかしましたか?』
勇者「なんか俺って他の人に比べると職業極めるの早いらしいんだよね~、シックス達も不思議がっててさ」
勇者「なんでかな?」
ルビス『それはおそらく貴方が『勇者』であるが故ですね……貴方が呪文を十日足らずで使えるようになったように、貴方は才能と素質の塊なのです』
ルビス『世界を救うため悪と対峙する選ばれし者……ならばそのための素質に恵まれていても不思議ではないでしょう?』
勇者「へぇ~……なんかご都合主義くさいな」ハハッ
ルビス『しかし慢心はいけませんよ。才能という花を咲かせるためには努力という水が必要不可欠なのですから……それに貴方がいくら素質に恵まれていても魔王に勝てるかどうかはわからないのですから……』
勇者「うん、わかってる。今回の修行でまだまだ俺は強くなれることが分かったからな、もっと修行してもっと強くなるよ」
ルビス『そうですか、それを聞いて安心しました。……さぁおやすみなさい勇者、また次の世界が貴方を待っています』