男(“天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず”)
男(この一文には、続きがある。)
“天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず
と言われているけれども
世界を見渡すと
賢い人、愚かな人、貧乏な人、金持ちの人、身分の高い者、低い者とある。
その違いは、何だろう?”
男(……答えは、明白だ)
元スレ
男「自殺に、勇気などいらないよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1332382362/
人は誰しも生まれつきは平等であった。
それが成長してゆくにつれ、人と人との差異、優劣が、顕著になってゆく。
何故か。
福沢諭吉は言った。
“賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるに由ってできるものなのだ。
ただ学問を勤めて物事をよく知るものは貴人となり、富人となり、
無学なるものは貧人となり下人になるのだ。”
男(……愚人、下人。)
男(俺も、どこかで、見下していた。ずっと、見下してきた)
男(学ぼうとすればいくらでも学ぶことのできる時代に、俺たちは生まれたんだから。)
男(俺たちはきっと幸せだ。)
男(…………諭吉さんに言わせれば。)
バタン
母「あら、どこ行ってたの?」
男「…………本屋」
母「そう。もうすぐ夕飯だからね」
男「……」
ガチャ
妹「あ、お兄ちゃんおかえりー!お母さん、私ちょっと本屋さん行って来るね」
母「あら!試験近いんでしょう?いいわよ、お母さんが代わりに行ったげるわ」
妹「ううん、いいよ。気分転換になるし。いってきまーす」
母「夕飯までには帰るのよー」
男「……」
バタン
母「偉いわね、妹」
男「あぁ」
母「……あんたも、たまには――」
男「じゃ俺部屋に戻ってるから」
バタン
母「…………」
自室に戻るなり、ベッドに倒れこむ。
目を瞑り、体を沈める。
そして日課のように、半年ほど前の会話を回想する。
医師『睡眠障害っていっても色々あってね』
医師『男くんの場合は“内科・精神科的睡眠障害”、それと断定は出来ないが“睡眠相後退症候群”、これに当てはまると思う』
医師『“内科・精神的”――この部分についてだけど』
医師『前にも言ったけど……
勉強へのプレッシャー、家族――特に両親の不和、それらが幼少の頃より積み重なったためのストレス……
原因はこんなところだろうね。
これらの問題は、不登校に繋がることがとても多いんだ。
逆に言うと、不登校の子どもの半数以上は、これらの事例に当てはまっている。』
男『それで……今の俺の状態は……その、病名とかは』
医師『うーん、難しいことを言うね。
精神的な問題にはっきりとした病名をつけるのは難しいんだけど……
まぁ“うつ病”それに“不安障害”が掛け合わされたもの。
そんなところですね。』
男『そうですか……』
医師『最近、調子はどうですか?』
男『最近……は、なんだか、勉強が頭に入ってこなくて……教科書とか開いても、ちょっと、座って居るのが辛くて』
医師『……うん。今の君はたぶん、まだ勉強できる段階ではないと思う』
男『えっ』
医師『今までのストレスで、物事を集中して考える、暗記する、そういった思考回路が壊れてしまっている。
これはいったん壊れると、そうすぐに元通りにはならない』
男『……どうしたら、また、ちゃんと勉強出来るようになりますか』
医師『うーん、難しいんだ、こればっかりはね……しっかり休んで、気持ちを落ち着けて、徐々に治していくしか……』
男『徐々に……。具体的には、どこくらい……?』
医師『数ヶ月で治る人も居れば、何年かかっても難しい人もいる。
まぁ君の場合、治すのが難しいってことは無いと思うけど』
男『……』
医師『でも君は良くやっているよ。
家庭環境が良くない家に育つと、自然と兄弟の仲も悪くなってくるものなんだ。
でも、妹さんとはうまくやってるんでしょ?』
男『ええ、まぁ』
医師『とにかく、前回と同じ薬出しておきますね。様子を見ましょう。』
男『……はい』
医師『大丈夫、時間はかかっても必ず治るから。焦らずにね。』
男『……はい、ありがとうございました』
男(“様子を見ましょう”……)
男(そう言われ続けて、もう何ヶ月経つだろう)
男(いつまで様子見なんだよ、俺は)
男(いつになったら、前進するんだよ)
男(…………)
コンコン
母「夕飯できたから、食べちゃいなさい」
男「妹待ってなくていいの?」
母「何言ってんの、あんたの分だけよ。
別々に食べたほうが……あんたもその方が良いでしょ?」
男「……ん、そうだね」
母「……学校、もうどれくらい休んでるかしら」
男「……」モグモグ
母「半年くらいかな?でも最初の頃は途中登校してたし、
実質4ヵ月半くらいかしら」
男「……そうかもね」カシャカシャ
母「……勉強はどう?うまくやれてる?」
男(ドキッ)
母「あのね、あんたは昔から真面目で、頭が良かったし、T大学も夢じゃないと思ってる。
でもやっぱり、休んでる分、勉強しないことには……」
男「……分かってるよ」カシカシ
母「それにこのままじゃ卒業だってできな」
男「ごちそうさま」ガシャン
母「…………」
男「……部屋に戻るよ。もうじき妹も帰ってくるだろうし」
ガチャ
母「あのね男、これは、男のために言って」
男「勉強ならするよ。いや、してる。心配しなくていいから」
バタン
母「…………」
男(…………はぁ)
ギシッ バサ バサ
男(一応、机に向かって、教科書を広げてみたものの)
男(……やっぱりダメだ)
男(文章が全く頭に入ってこない)
男(日本語なのに……外国語を訳して噛み砕いている気分……)
男(これじゃ集中力が続くわけがない……ましてや問題を解くなんて……)
『しっかり休んで、気持ちを落ち着けて、徐々に治していくしか……』
男(…………)
男(ネットでもするか。しばらくパソコン触ってなかったし)
男(気分転換、気分転換)
ガチャ
妹「ただいまー」
母「あ、おかえり妹。早かったわね」
妹「うん。お兄ちゃんは?」
母「部屋にいるけど……どうして?」
妹「受験勉強の差し入れ買ってきたんだー」
母「気が効くわねぇ。今勉強中だからあんまり邪魔しないのよ」
男(やっべ)パタン バサバサバサ
コンコン
妹「お兄ちゃん、ちょっといい?」
男「あぁ」
ガチャ
妹「あ、ごめん、勉強中だった?」
男「いいよ別に……何?」
妹「受験勉強大変だと思って、ハイ、お夜食」
男「わざわざ、良いのに」
妹「そんな!だってT大目指すなんて尊敬するもん、私」
男「……センターまでまだあるし、受けると決まったわけじゃ」
妹「もう、お兄ちゃんの謙遜は小さい頃から聞き飽きてるよ。
はい、お兄ちゃんの好きなビターチョコと、無糖のコーヒー、鮭おにぎり……
あとはちょっとしたお菓子と、そしてコレ!」
男「?」
妹「眠眠打破と、メガシャキ!お兄ちゃんのお供でしょ?
私もたまに飲むけど、よく効くよねー。
睡魔は勉強の大敵だもんね!」
男「……ハハハ、そうだな」
妹「じゃ私、夕飯食べてくるね」
男「あぁ、ありがとう」
妹「ううん。がんばってねー!」
バタン
男(…………)
“この瞬間を頑張りたい人に!がんばるあなたにこの1本!!”
“負けられないその瞬間に!”
“仕事、勉強、ドライブに、 活 性 持 続 !”
男(……)カサカサ
“寝るまえ 1日1錠 マイスリー10mg グッドミン0.25mg
短期型睡眠導入剤 自然な入眠を誘い、中途覚醒を防ぐおくすりです”
男(…………はぁ)
ガラガラガラ
男(お。)
男(今日は星がよく見えるな)
空を仰ぐ。
しばらく星空に惚ける。
男(やること無いなぁ)
男(昔は空いた時間は勉強だけだったからなぁ)
男(友達とも……もうしばらく会ってないな)
男(休み始めた頃は連絡もあったけど、今ではすっかり無くなった)
男(時間のつぶし方が分からない。……って、贅沢な悩みだよな)
男(デスマーチ真っ最中の人に言ったら、本気で殺されそうだ)
男(だから世間じゃ、甘えなんて言われてるんだろうなぁ)
男(ハハ……)
男(……あ!)
窓から見下ろすと、中学校の頃の同級生2人が歩いていた。
同じ学ランを着て、忙しそうに家路を急いでいる。
男(アイツら、同じ高校に行ったんだ)
男(2人とも受験生だから、塾帰りかな?)
男(何話してんだろ……って、センター近いしやっぱ受験の話かな)
同級1「あ、そういやココ、男の家だ」
同級2「男?男ってあのT高受かった?」
同級1「そうそう」
男(ん?あれ、俺の話……?)
同級1「めっちゃ頭良かったよなぁ、男」
同級2「あぁ、確かに。凄ぇヤツだと思ってたけど」
同級1「? けど何だよ」
同級2「いや、でも今はなんか、不登校なんだろ?」
男(あ……)
同級1「マジ?なんでアイツが?」
同級2「さぁ。でもあんな頭良いヤツが学校行かなくなるんだから、イジメとかじゃね?」
同級1「ふーん……でもありうるなぁ。アイツちょっと真面目すぎるトコあったし」
同級2「勉強だけ出来てもね。今の時代コミュ力大事じゃん?学歴もだけどさ」
同級1「天は二物を与えずってヤツか」
同級2「中学ん時はあんなエリートもいんのかーと思ってたけどね。案外俺らの学年でアイツが一番悲惨なんじゃね」
男(……!)
同級2「俺らも落ちこぼれないようにしねーとなー」
同級1「就職氷河期とかいうし……先が見えねーよホント」
同級2「就職よりもまず受験だろ」
同級1「そうだけどさー、不安じゃん」
同級2「まぁなー……俺も将来は不安だよ」
男(…………)
男(“落ちこぼれ”…………)
男(ちゃんと高校行って、勉強してるアイツらでさえ、先が見えないような世の中なのに)
男(まして、俺は)
男(…………)
零れそうな星空が、とても味気なく見えた。
風が流れ込み、教科書がぱらぱらと揺れた。
男(俺は)
男(取り柄だった。勉強が。ずっと。)
男(コミニュケーションだって、上手くやってきたつもりだ。)
男(…………)
男(いつから……どうして、こんな風になったんだろう)
――ダンッ!
不意に、居間からテーブルを叩く音がした。
父親の怒気を帯びた苛立たしげな声が聞こえる。
いつの間にか、仕事から帰宅していたらしい。
思わず耳をすます。
父「いいか。今の時代、大学を出ても就職が厳しいことくらい、分かってるだろ」
父「ましてや高校中退だなんて」
母「まだ中退すると決まったわけじゃ……」
父「何を呑気なことを言ってるんだ!半年も欠席してるんだぞ。義務教育とは違うんだ」
母「で、でもあの子も精一杯やっているようだし……」
父「アイツのどこがどう精一杯なんだ。
俺たちの頃とは大違いだ。
全く、昔はもっと真面目だったのに……。
アイツはちょっと、育て方を間違えたかも知れん」
父「お前は世間の目を知らないかもしれないが、中卒より高校中退の方が質が悪く見られるんだよ」
母「……」
父「あいつは今どれくらい勉強している?」
母「え……家で見る限りだと……3時間くらいかしら……?」
父「…………はぁ、全く」
父「呆れて物も言えない……。あいつはT大志望だったろ?」
母「ええ、確かそうだと思うわよ」
父「だったらそんなもので足りるわけが無いと、あいつだってそのくらい分かるだろ?
学校休んでる場合じゃないだろ!何を考えてるんだ男は」ダンッ
母「あなた、テーブルにあたらないで……ご近所に聞こえちゃうわ……」
父「……まぁ学校に行けないのは仕方ない。睡眠のリズムがおかしいとか、そういう病気なんだろ?」
母「ええ……あ、でも今は薬のおかげでぐっすり眠れているみたいよ」
父「まぁ受験生なら睡眠時間が足りないくらい当たり前なんだがな……」
父「ただ……とにかく、家にいて勉強しないのは怠惰以外の何ものでもない。
一度分からせたほうが良いかも知れないな……」
母「…………え、ええ、そうよね。あ、夕食、用意するわね……」
男(ふー……)
男(…………)
男(怒るのも……仕方無い……か)
傍から見ると怠けているようにしか見えない。
それは人に腹立たしさを与える。
理解など得られない。
これはそういう病気だ。
それはもう十分、身にしみて、痛いほど分かっている。
分かっている。
当然の反応だ。
分かっている。
男(……もう、寝よう)
男(えーと)カサカサ カチカチ
・マイスリー (睡眠導入剤)
・グッドミン ( 〃 )
・アナフラニール (抗うつ剤)
・レメロン ( 〃 )
・セパゾン (向精神薬)
・デパス ( 〃 )
男(水、水っと)ゴクゴク
男「ぷはー」
男「……」
(薬を飲んだ後だけだ、心が穏やかになるのは)
(心地良い眠気と、向精神薬特有の多幸感……)ボーッ
(今の俺には、これ以上の安らぎは無い)
(というか、俺にはこれしか無い)
(麻薬中毒と同じ、ただの薬漬け……)
(こんなの普通じゃない。それは分かってる)
(……きっと、同い年の人達は、今ごろ、色んな楽しい体験をしてるんだろう)
(青春……人生の春……希望……活力……夢……将来……友達)
(みんな、俺は失った。戻ってくるとも、思えない)
(俺は、何のために)
(…………考えるのは疲れる。寝よう)バサッ
シーン・・・
・
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ガバッ!
男「眠れない……」
男(……どうしてだ)
男(今日は通院も兼ねて散歩してきたし、本屋で少しだけ読書もした)
男(心身ともに、ある程度疲れはあるハズなのに)
男(ちゃんと薬も飲んだのに)
男(こんなの初めてだ……いつもなら嫌でも途中で意識が途切れる……)
男「何故……」
男(眠っていれば、何も考えずに済むのに)
男(…………)イライラ
時計は夜中の0時過ぎを指している。
まだ目が暗さに順応しきれていない。
薬の副作用で口が渇く。
脳が意識を飛ばすことを許さない。
男「……」イライライライラ
寝転んだまま上を睨む。
目の先は闇。
自然と眉間に力が入る。
思わず歯を食いしばる。
手に汗をかく。
突如、不安が爆発しそうな感覚に襲われた。
苛立つ。
辛い。
憎い。
情けない。
やるせない。
苦しい。
許せない。
何が?何を?誰に対して?何故?
終日ぼーっとしていた頭が突如フル稼動する。
頭に血が上る。
体温の上昇を感じる。
動悸の音が煩わしい。
突発的かつめまぐるしい感情の起伏に動揺する。
胸を激しく執拗に抉られる感覚。
何故俺がこんな気持ちになる?
何故俺がこんなにも苦しむ?
俺が何をした?誰を虐げ誰を傷つけた?
俺の今のこの生活は何の代償だ?
何故俺が。
何故俺が!
何故!
真夜中の静寂。
刺すような、冷たさ。
ふと、枕元の水が残ったガラスのコップが目に入る。
それには僅かなヒビがあった。
そのヒビになぜか目が釘付けになる。
ひび割れた、ガラス。
男「――」ド ク ン
頭に警告音が鳴り響く。
聞こえないふりをする。
自分が人前でコップを床に叩き付けるさまを想像する。
小気味良い破壊音。
無秩序に飛び散る破片。
ガラスが頭を割る。
破片が頬を切る。
誰かの悲鳴。
原形をとどめない、コップ。
男「…………」ドクン
男「」ドクン ドクン ドクン ドクン ドクン
と、不意に、静寂が破られた。
トン トン トン
足音だった。
妹が起きてきたらしい。
トイレだろうか。
男「…………」ドクン ドクン ドクン ドクン
コップを手に握り締め、妹がいるであろうトイレに向かった。
男は、これまでの人生において、並の人間関係を築いてきた。
大人数と共に過ごす時間もあった。
その中で、気の知れぬ人と接する機会も少なからずあった。
人を気遣うことはあっても、人を故意に傷つけるということは皆無と言ってよかった。
それ故に。
「悪意で以って人を傷つける」
その味は男にとって未知数であった。
その味は、悪感か?空虚か?
はたまた、快感か?悦楽か?
知ろうとも思わなかった。
――今この瞬間までは。
男「」ドクン ドクン ドクン ドクン ドクン
憎い。
許せない。
誰を?
妹?
……違う。
妹が憎いのではない。
妹が許せないのではない。
そんなことは関係ない。
たまたま、妹がそこにいただけ。
たまたま、妹が背後の俺の存在に気づかなかっただけ。
たまたま、俺の手にガラスのコップが握られていただけ。
たまたま、感情の制御が効かなかっただけ。
俺じゃない。これは俺じゃない。いつもの俺じゃない。俺じゃない。誰も悪くない。俺は悪くない。
――――ガ シ ャ ン !
妹「お……お兄ちゃん……?」
妹「どうしたの……コップ、落としちゃって」
男「…………い、」
男「いや、手が滑って……。怪我、無かった?」
妹「私は大丈夫だよ。……お兄ちゃんこそ、大丈夫?」
男「あぁ、平気。ごめん、驚かせて」
妹「そう。なら、良かった……」
男(……)ドクン ドクン
妹「片付け、手伝う」ガシャ ガシャ
男「いや、いいよ。トイレに起きたんだろ?俺片付けるから、妹はもう寝てろ」ガシャ ガシャ
妹「……そう?じゃ、私部屋に戻るね。お兄ちゃんも、無理しないで早く寝なよ」
男「あぁ、ありがとう。おやすみ」
妹「おやすみ」
バタン
男「…………ふぅ」ガシャ ガシャ ガシャ
男(……)ドキドキ
(危なかった)
(何やってんだ、俺は)
(妹を傷つけるなんて……)
(そんなことしたら、俺は晴れてキチガイの仲間入りだ)
(これが、破壊衝動、ってやつか?)
(そんなものが、俺の中にあったなんて……)
(なんというか……ショック?背徳?罪悪感?)
(…………)
男(ごめん、妹)
男(俺は…………)
男(…………ごめんな)
――諭吉さん、あなたは言った。
人の貴賎の格差、それは学問をするか否かに因ると。
俺は、俺の最初の四半世紀を、学問をして過ごすものだと、信じて疑わなかった。
下の者には目もくれず、進んでゆくのだと。
貧人には、ならないのだと。
幼少の頃から、ずっと。
“進まざる者は必ず退き、
退かざる者は必ず進む”
けれど、気付いてしまった。
思い知らされてしまった。
俺には、その器は、無かった。
争い勝ち残る度量も、勤勉と探究を惜しまない精神力も、無かった。
俺の器は、高校生半ばで精魂も気力も尽き果てるほど、矮小なものだったのだ。
精神は、とうの昔に朽ち果てていた。
“活用なき学問は無学に等し”
俺は、人並み以下の、ダメ人間だったんだ。
男「…………はは」
男「あはは」ポロポロ
男「あははははっ」ポロポロポロポロポロ
男「コップ落としたときの、妹の、顔……」
男「脅えてたな……」
男「…………もう、いい」
男「俺は、もう」
男「もう、だめだ」
男「疲れた」
――――自殺をする勇気があるなら生きてみろ
そんな言葉を昔聞いた。
ならばそれに答えよう。
その言葉を、根本から否定してみせよう。
男「自殺に、勇気など要らないよ」
自殺に勇気が要るのなら、今の生活をわずかでも愛している出来る証拠だ。
何かひとつでも、手放したくないものが残っている証拠だ。
男(俺は、きっと)
男(存在して許されることはあっても、居なくて困るということはない)
男(そんな部類だ)
男(大丈夫、きっと誰も悲しまない)
男(……俺自身も。きっと)
男「さようなら」
・
・
・
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・
・
・
・
・
父「男の奴、今日はやけに起きるのが遅いじゃないか」
母「ええ。目覚ましも鳴りっぱなしだし、よっぽど疲れてるのかしら」
父「ふん。今日という今日は一喝してやらんとな。
全くいい身分だ、あの年で重役出勤か」
“単に学ぶ事を知らず無知であるのに、
自分に都合の良い事ばかりを言う事は恥知らずではないか。”
~完~
46 : VIPに... - 2012/03/22 16:18:56.27 2R8tP0cW0 37/37読んでくださった方、ありがとうございました。
支援してくださった方、SSを書くのは初めてだったので、凄く嬉しかったです。
ありがとうございました。

