勇者「魔王を倒してから、あれから二十年!」【1】
勇者「魔王を倒してから、あれから二十年!」【2】
の続き
406 : 以下、名... - 2015/12/25 23:17:20 zkpmxVPQ 224/422――用語集そのいち――
・魔王戦役
現代より二十年程前に勃発した、魔界より魔王率いる魔王軍が人間界へと侵攻をしかけてきたために起こった大戦争のこと。
開始五年目に勇者一行が四天王と魔王の首を取り人類側の勝利で終結した。開始四年目までは(勇者一行が表舞台に出てくるまでは)魔王軍勝利目前というギリギリの状況だった。
・勇者戦役
死んだはずの四天王および魔王が再び決起し、そのトップには封印されていた筈の勇者が立ち、人類に侵攻をかけてきたことにより起こる大戦のこと。開始二ヶ月目で現在進行中。
二十年前の悪夢がよりタチが悪くなって再臨した。
・旧・魔王軍
魔王が魔界全土から戦える魔物を弱いのから強いのから掻き集めて結成された軍。魔王、四天王の他四天王直属の部隊長などが方方に散らばって指揮を取っていた。
魔王戦役終結後は、ある者は討ち取られ、ある者は魔界に逃げ帰っていった。
・新生・魔王軍
魔界に逃げ帰った者は連れ帰り、戦死した者は元気玉の要領で世界中からかき集めた魔力に物を言わせて復活させ、キレイそっくり勇者の手により再生された魔王軍。
魔王に変わり勇者がトップに立つ。
407 : 以下、名... - 2015/12/25 23:19:18 zkpmxVPQ 225/422――用語集そのに――
・神族
女神やそれに親しい者達のこと。主に天界在住
・人類
人間のこと。古い呼び名は、亜神族。主に人間界在住。
・亜人類
人間以外の種族のこと。古い呼び名は、魔族。主に魔界在住。
・天界
女神などの神族が住む世界。極々一部、魔・人間界で偉業をなした者が住むこともあるらしい。
かつての勇者曰く、楽園。現在の勇者曰く、くそったれ。魔王曰く、楽観主義者の楽園。
・人間界
ヒューマンに代表される人類が最も多く、エルフやドワーフなどの亜人類などが少数住む世界。
魔王曰く、一年の間で暑かったり寒かったり肌寒かったり暖かったり冗談のようだな。
四天王曰く、マジありえねぇ……魔界から持ってきた服が一年の四分の三近く使えねぇとか……。
・魔界
エルフ、ドワーフ、獣人、魔人などの亜人類が最も数が多く、ヒューマンも極々少数住む世界。
勇者曰く、常夏のリゾートスポットですか!? 世界一個丸々!? 嘘でしょ!?
408 : 以下、名... - 2015/12/25 23:21:08 zkpmxVPQ 226/422――用語集そのさん――
・魔王城
今も昔も魔王軍の本拠地。
白い砂浜、ぽつぽつと立つヤシの木、青い海に見渡すかぎり海平線。常夏のリゾートビーチみたいな気候と広々とした島に、ずでんと立つ巨大なお城。
巨大なマグマの湖の中央にそびえ立つ陸の孤島であり、常に暗雲立ち込め、雷鳴鳴り響く……
ような城に魔王や一部の魔物はしたかったのだが四天王含む大勢の魔物に拒否されて仕方なく、魔王が四天王達の要望(住み慣れた気候と土地に住みたい)を聞き、わざわざ島から造った。
・アノオー国
ドッカ村、アッチ村、ソッチ村などの幾つもの村々、およびソギャン街やアギャン街などの大きな街が三つか四つ、首都アノーで構成される、大きな王国。
比較的温暖な気候に恵まれており、フルーツ産業が盛ん。女神信仰が主信教であり、女神信仰の聖地といえばここ。勇者パーティは全員がここ出身である。
ちなみに勇者は首都アノー生まれの都会っ子。魔法使いも同じく。僧侶と戦士はソギャン街出身。
・女神の加護
女神が選んだ人間に貸し出している力の特典パックのようなもの。
ランクがあり、仮にそれらをPlatinumパック、GOLDパック、Silverパック、Bronzeパック、Standardパックとあったとして在庫はそれぞれ一つずつ。
S・B・SパックはP・Gパックの劣化バージョン。P・Gパックは現勇者が独占してしまっているため、次世代の勇者が生まれたとしても、加護のレベルが劣ることになる。
・勇者の加護
自分が所有している加護のうち幾つかを劣化コピーとして他者に付与することができる。S・B・Sパックを勝手にバラまいているようなもの。
とはいえP・Gパックの全てをコピーすることは出来ないので次世代勇者が次から次へと生まれるようなことは今のところは無い。
・腕っ節ランキング
世界中の生き物を強さの順で表したランキング。
とはいえ戦闘とは作戦や武器の違い、相性の良し悪しにより結果が変わることもあるので目安程度としての指標。
409 : 以下、名... - 2015/12/25 23:23:07 zkpmxVPQ 227/422――登場人物そのいち――
『勇者』
新生・魔王軍総帥。かつての救世の英雄。
英雄過ぎて鬱陶しがった王と仲間から裏切られボコされ、悪者になりましたと風説流され風説信じた民からもボコられ、封印かまされていた。
封印していることをすっかり忘れた民がうっかり封印の扉を開いてしまったことにより二十年の歳月を経て世に出てきた。二十年の間に色々思うところあったようでかなり壊れてる。
救ったのに救ってくれなかった世界はもう要らない、と壊れたままに心機一転、自分以外の生物皆殺しにしちゃおう大作戦を実行し始める。
最初は一人で計画を進めていたが長年一人だったために寂しくなってきたので、賑やかしに魔王軍を再生させた。
賑やかしが済んだら始末するつもりだったが、その魔王軍の皆が優しくしてくれるもんだから情が移っちゃって始末するの中止。
総帥の座まで譲ってもらっちゃって生物撲滅計画あらため魔族のための世界征服に計画をシフトしていく。
たった一人でも時間さえかければ人間・魔・天界の生物を撲滅成し得るだけの力を持つ出鱈目生物。
パサパサ真っ白ウェーブヘアーとマリモ的レイプ目の、腕っ節ランキング堂々のナンバー1。
『裏声さん』
合いの手担当。綺麗なハイトーンボイス。
意外とハスキーボイスな勇者は裏声さんを安定させるのに大分苦労した歴史があるらしい。勇者が他の人間と接触しているときは基本出番がない。
『軍団さん』
そりゃもう軍団相当の多大な合いの手担当。作者のうっかりミスより爆誕。
台詞は少ないが彼等が合いの手を打つ時大地が震える、声がデカすぎて。あと英語で喋る。勇者が他の人間と接触しているときは基本出番がない。
410 : 以下、名... - 2015/12/25 23:24:06 zkpmxVPQ 228/422――登場人物そのに――
『村娘』
ドッカ村の村娘。十四歳八ヶ月七日目の処女。ドッカ村の虐殺事件の唯一の生き残り。現在は傭兵五人衆に保護されているが心神喪失状態。
彼女は絶対に殺さないように、と、新生・魔王軍には写真かってぐらいの精巧な似顔絵と共に通達がなされている。
『傭兵五人衆』
ドッカ村に滞在していた傭兵ギルドの五人組。村娘を安全な場所まで保護・それまでの護衛役とするため虐殺から免れた。
最初こそ脅されて嫌々であったが、次第に情が湧いてきたようで、護送のあとも村娘の世話を甲斐甲斐しく焼いている。
411 : 以下、名... - 2015/12/25 23:27:11 zkpmxVPQ 229/422――登場人物そのさん――
『戦士』
アノオー国剣聖。二十年前の大戦の英雄パーティの一人にして、二十年前の勇者を嵌めるのに一役買った、元仲間。
勇者を嵌めた時手痛いしっぺ返しを食らい、片腕と片足をぶった斬られた。この傷は大戦時の名誉の負傷ということになっている。
自分の力量に絶対の自信をもっており、事実世界でも十指に入る強さだが、その為慢心がちで相手の強さを見極める目はかなり曇り気味。
それが災いして勇者に挑んで返り討ち、想像を絶する痛みの肉体改造を受けて心が圧し折れ、精神は弄られてないのに新生・魔王軍に寝返る。
元々あんまり国王連中にも信用されてなかったのか、人間爆弾の魔法を身体に仕込まれていた。爆弾が発動して爆発四散して死亡。
人類では二番目に強かった男。腕っ節ランキング6位。
『僧侶』
アノオー国聖女。二十年前の大戦の英雄パーティの一人にして以下略。戦士の伴侶。
勇者を嵌めた時手痛いしっぺ返しを食らい、喉を潰され顔を焼かれた。この傷は大戦時の以下略。
勇者以外では唯一女神と対話したり直接加護をもらうことが出来た信仰者であった。
人類滅ぼせイケイケ魔王軍のトップ二人に挑み、勇者はなんとか無力化したものの、魔王を無力化する努力を怠ったため黒焦げにされる。
魔王城に連れて行かれて治療されたあとは改造された。どうなったかは本編で。
『魔法使い』
アノオー国賢者。二十年前の以下略。
勇者を嵌めた時手痛いしっぺ返しを食らい、懇親の呪いを受けた。この傷以下略。現在詳細不明。
『国王&大臣』
勇者出生の地アノオー国の国王と大臣たち。二十年前の勇者を嵌めた主因のローガイ。
勇者対策を色々持っているようだが……
412 : 以下、名... - 2015/12/25 23:28:06 zkpmxVPQ 230/422――登場人物そのよん――
『女神』
人間界の守護者。普段は天界に住んでいる。
世界平和のため、人間界の平和のため、という目的があるのならばいかな手段をも許容するし、必要ならば自分に献身を尽くした勇者でさえ見捨てることも厭わない。
そのくせ口から出るのは清廉潔白っぽい言葉、慈悲深い言葉だからタチが悪い。尚更タチが悪いのは、これは演技でなく、正真正銘本心から出ている言葉ということ。
勇者抹殺に失敗し、魔王に黒焦げにされた。魔王城に連れて行かれて治療された。まだ一応生きてる。
人間界に居る時は浮いてる。物理的にも、人間界の理からも浮いているため、この状態なら腕っ節ランキング4位。地上に降り立つと一人前の人間の兵士以下。
『魔神』
魔界の守護者。魔界の人気のないところに魔王に一軒家を立ててもらってそこに住んでいる。
朝はお家でお布団で朝寝して、昼は草原で日向ぼっこしながら昼寝して、夜はお家でコタツに潜って夜寝してる、魔界の神様。基本的に寝てるので出番はない。
睡眠に睡眠を重ね千年単位で鈍りに鈍ったその身体でも腕っ節ランキング10位。
413 : 以下、名... - 2015/12/25 23:32:06 zkpmxVPQ 231/422――登場人物そのご――
『魔王』
新生・魔王軍のナンバー2。旧・魔王軍総帥。腕っ節ランキング2位。
勇者と互角近くで殴り合える肉体スペックにくわえ、街の一つや二つぐらいなら魔法一発で片付けられる大魔力と大魔法を操れて……
さらにさらに物理100%魔法80%カットのマント作ったりオリハルコンで鎧作ったりする魔道具作成の天才。かなりのチートスペック。
異種族の命には灰ほどの重みも感じず、配下の命も目的を達するための道具という見方が強い、目的のためなら手段を選ばず、必要なら非道な手段もいくらでも使う。
と、一見冷酷な性格をしており事実そういう節はチラホラあるが、人間相手に一度は降伏勧告をしたり、自らに服従するか自分よりも強いなら人間でも大事に扱い、
必要な時を弁えているので非道な手段オンリーでなく、道具は壊れる瞬間迄大事にするタイプということで魔族には甘かったりするなど、なんのかんの隙のある性格。
相当な時間を生きているせいか最新の、とくにここ最近の若者のセンスに付いていく、若いノリ、というやつが自分には足りていないと思っていてそれが昨今の悩み。
若者のセンスといっても、接する若者が勇者と土の四天王だが。勇者は普通に絡み難いし、土の四天王はちょっとズレてるし、彼らに付いていけなくても誰も責めやしないのだが……。
『土の四天王』
新生・魔王軍のナンバー3。旧・魔王軍幹部。
ずば抜けた生物改造技術でもって数々の生物兵器を生み出し、大戦時も現在も数々のバリエーション豊かな創作物で人類を苦しめる。
技術の高さゆえの性格か、性格がそうだから技術が高いのか、ともかくちょっとマッドサイエンティスト。見込みがある生物をすぐ改造したがる困ったさん。
ムチムチボインの褐色銀髪目の下にクマある美人。魔人。勇者のことは大戦時から相当気に入っており、現在ではあんなことやこんなことまで含めて色々ご奉仕真っ最中である。
四天王の中では直接的な戦闘能力は一番下である。が、それでも流石に四天王、純粋な戦闘能力だけでも腕っ節ランキング9位にランクイン。
414 : 以下、名... - 2015/12/25 23:33:11 zkpmxVPQ 232/422――登場人物そのろく――
『火の四天王』
新生・魔王軍幹部。旧・魔王軍幹部。
勇者や魔王と真っ向きって殴り合える、おそらく世界唯一の男。件の二人が居なければ此奴が魔王やっててもおかしくないぐらいの腕っ節の強さを持つ。
炎の称号を冠しているため、それに合わせて炎で燃え盛る身体を持つ魔人の姿を取ってくれているが本体はフツーの魔人。イメージを大切にするタイプ。
腕っ節ランキング3位。出番があるかは未定。
『水の四天王』
新生・魔王軍幹部。旧・魔王軍幹部。
炎の四天王と違ってガチで水で出来た魔人である。治癒能力に長ける、その他には幻術の扱いも上手。一応女性。
腕っ節ランキング5位。出番があるかは未定。
『風の四天王』
新生・魔王軍幹部。旧・魔王軍幹部。
炎の四天王と違ってガチで風で出来た魔人である。速度に長ける。短距離だけなら勇者より早いと専らの噂。
腕っ節ランキング7位。出番があるかは未定。
おまけコーナー
魔王「フッ、勇者よ、貴様に付き従う者としては些か申し訳無いのだが、貴様よりも我のほうがこのスレッドにおけるマスコットキャラクターの座に相応しいのではないか?」
勇者「なんですか、行き成り、藪から棒に。というかどこでマスコットキャラクターなんて言葉、覚えてきたんですか」
魔王「街興しで少しな。名産品を主軸にして外部にアピールしていくのは良い案だが、それだけではやはり昨今の若者の心は動かぬ、そこで提案されたのが古来よりあるおまけ商法――」
勇者「わかりました、わかりましたんでもう結構です。魔界でも街興しあるとか、貴方がそれに関わってるとか、良く分かりましたんで」
魔王「うむ、それで、マスコットキャラクターの件だが。見よ! 登場してからというもの登りに登った読者からのこの人気よ!」
魔王「貴様の軍に入りたいという者は居らなんだが、我が軍に入隊したいというどころか我の盾にまでなりたいという者まで居るほどだ、ククク、勝ったな」
勇者「あー。はいー。そうっすねー」
魔王「なんだその気の抜けた返事は」
勇者「いやー。そのー。なんていうかー。元々僕はマスコットじゃないですし。裏声さんがそっち系っていうか」マァボクトイエバボクナンデスケドモ
魔王「……裏声さん……?」シンキャラカ?
勇者「それにしても僧侶との戦闘もとりあえず一段落。残るは魔法使いと、あのローガイ共」
魔王「僧侶がどうなったか、女神がどうなるかは、そのうち本編でお見せするとしよう」
勇者「ローガイ共も結構頑張って新生・魔王軍対策を練っているみたいですが、どうなるんでしょうねー」
魔王「風の魔王が作成した腕っ節ランキングにおいてはその上位の殆どを独占している我々ではあるが、油断は禁物だ。あれはあくまで目安に過ぎん」
勇者「策一つで引っ繰り返ることもないわけではありません、事実僕は魔王があの場に居なかったらちょっと危なかったかもしれませんが、しかし目安でも圧倒的な戦力差」
魔王「うむ、上位独占状態の我々からすれば有効な番付ではある。お前一人を策で止めたとしても我がおる、四天王も居る、十位圏内には居ないが百位圏内の魔物も居らんでもない」
勇者「数こそパゥワァ。しかもその数、質も良し」
魔王「勝ったな。と、いっても、過言ではないが。魔王戦役とか呼ばれているあの戦で我はそう言って敗北したからな、敗北させた本人はここに居るが、しかしそれでも油断出来ぬ」
魔王「人間界を制服したあとは、天界にも侵攻してやろうか、とも、思っておるしな。兵の無駄な損耗は出来る限り避けるにこしたことはない」
勇者「人間界を魔界としたあとは天界もそうするおつもりと。人間界と違って未知の領域ですしねぇ、そうそう、そういえばですよ、女神様ね」
魔王「大層評判が悪いな、非常に愉快である」
勇者「愉快である!」
勇者「あ、僕、ホントはこういうこと言っちゃいけないんですけどここ本編とは関係ないしぃ~」
魔王「魔王軍総帥でもあることだしな。我は別に本編でもなんでも好きなように言わせて貰うが」
魔王「無能の謗りを受けても仕方なかろうよ。特に、我が人間を操って勇者をどうのこうのというくだりはな……」
勇者「視聴者=サンにも途中で突っ込み受けてましたけども。あのあたりもうちょっと長~く突っ込むつもりだったんですけどね?」
魔王「他の突っ込みが思ったより長々となってしまってな、あんまりに長々~っとなるのも流石にくどいかと思い、言わなんだが」
勇者「視聴者=サンが入れてくれた突っ込みの通りですよね、ホント。じゃあアンタがなんとかしてくれよ、って話ですよねぇ~」
魔王「奴には流石に魅了の魔法は通じんからな。よしんば他の人間が我に操られたとして、我に操られることのない女神が勇者を見捨てたというのだから尚更悪い」
勇者「マジ無能」
魔王「仕事しろ、仕事。仕事している面して仕事をしないというのはな、まあ、最初から仕事する気がないうちの魔神みたいなのも居るが……」
勇者「年中無休でスリープモードと聞いたときは流石に笑いましたよ。しかも貴方に家建てさせたんですって?」
魔王「ああ。最初はな、あちらから接触して来たのだ、こう、なんだ、我にも加護の一つや予言の一つはくれるのかと思ったのだが……」
勇者「くれるどころか、くれと。しかも、快適に寝れるための場所を」
魔王「我が耳疑ったぞ。何度聞き直しても、答えは変わらなんだので、最終的には諦めたが……」
勇者「というか貴方、家作らされたり、城を島ごと作らされたり、物造りの才かなり使われてますよね。使ってもいますけども」
魔王「どうしてこうなった……」
勇者「……人がいいの見抜かれちゃってんじゃないですかね」
魔王「そんなつもりはないのだが……」
勇者「いやぁ……」
魔王「……なんだ、その、いやぁは。何か物凄く物言いたげだが」
勇者「べつにぃ?」
魔王「」タッ
勇者「」タッ
勇者「……」
勇者「……」キョロキョロ
勇者「ふぅ。あぁ、怖かった! 優しいとか言うと照れ隠しで怒るのは良いんですけどね、可愛いもんですよ!」
勇者「怒って魔法ぶっ放して来るから可愛くない! というか、恐いです! 何とか逃げ切りましたよ……ふぅ」
勇者「そういえば、ですね!」
勇者「どうしてこうなった! と、いえば! いや、どうしてそうなってるかは自業自得のせいで解ってますが!」
勇者「初期から今までずぅっと誤字っちゃってるせいで! 渾身の呪いのはずが! 懇親の呪いとして認識されちゃったんですよ!」
勇者「やらかしてしまいましたね勇者様(裏声)」
勇者「やらかしちまいましたよ! 初期から『懇親じゃなくて渾身な』って視聴者=サンに言われてたのにぃ~!」
勇者「こうなってしまっては最早、魔法使いにかけたのは渾身の呪いではなく、懇親の呪いということにしなければいけません(裏声)」
勇者「なりませんね! 別にいいんですけどね、そっちのほうが面白そう! 良いネタをありがとうございます!」
勇者「ありがとうございます(裏声)」
勇者「折角なので予想していただいた内容から、懇親の呪いのネタを採用させていただこうかと思います(裏声)」
勇者「渾身の呪いのネタばらしは次のおまけコーナーがありましたらその時にでも!」
勇者「さぁ! それでは短いながらこれにてオマケコーナーはお終い! 司会は私本『勇者「魔王を倒してから、あれから二十年!』のアイドル勇者と!」
勇者「撒いてしまったので此処には居ませんが、魔王と。ちょっぴり出演、久々に登場の裏声の私でお送りいたしました(裏声)」
勇者「これからも不定期かつスローペースの更新となりますが!」
勇者「どうか見捨てずに、生暖かく、それなりの期待と、それなりの期待の無さと共に見て頂ければ幸いです(裏声)」
勇者「ではこれにて! アデュー! ヒャッホウ!」
勇者「あでゅ。ひゃっほう(裏声)」
―― おまけコーナー おわり ――
―― 僧侶・女神捕縛からニ週間後 魔王城 ――
勇者「漸く意識がハッキリしてきました」
勇者「幻術そのものは割とすぐに水さんが解除してくれたらしいんですけど。幻術掛けられてから一時間も経ってないうちに」
勇者「さすがの手際ですよね、僧侶ですら敵にしておくのが勿体無いと嘆いてた世界一の幻術使いの腕はやはりたいしたものですよ」
水の四天王「うふふ、お褒めに預かり光栄ですわ」
水の四天王「けれど、世界最強のお二方を前にして世界一と言われてしまうと、照れくさくもありますが恐れ多いというところも……」
魔王「何を遠慮することがある。我も勇者も総合戦力でもって貴様とぶつかりあえば貴様は当然負ける、というのは、違いないがな」
勇者「僕も魔王も幻術という一分野だけに絞るならば水さんの足元にも及びません、というのも、違いないですね」
水の四天王「い、いえ、その、でも、えっと……」モジモジウゴウゴタプンタプン
魔王「ふはは、照れるな、照れるな」
勇者「蠢いとる、蠢いとる。可愛い」
勇者「ただ、現実では一時間でも、幻術の内容が内容でしょ」
勇者「魔王戦役の祝勝パーティから塔を出る直前までの二十年を五~六回は見ちゃってたもんで体感時間がえらいことに」
勇者「しかも、ほら、いやね、出来れば仔細には思い出したくないような出来事であるわけでして。現実ではもう終わったことだと、幻だと、解っちゃいたんですけど」
勇者「幻だって解ってても、そのうちワケわかんなくなっちゃいましてね。解除されても、目の前にきちんと現実がやってきても、ワケがわかんないまま、と……」
水の四天王「トラウマ誘発系の幻術ではありがちな後遺症ですわね」
水の四天王「トラウマ誘発系は掛けた直後から解除したあとしばらくまで効果が見込めて戦には大変に便利」
魔王「心神喪失状態から意識が回復するまで勇者ですらこれ程時間が掛かったからな」
魔王「超高難易度の魔法なだけはある、厄介だな。しかし、回復して何よりだ」
水の四天王「ええ、本当に。けれどこう言っては失礼ですが……」
水の四天王「茫然自失な無防備そのものな勇者様のお世話が出来たことだけはワタクシ僧侶に感謝しなくては。良い経験でしたわ」
勇者「お、お手数お掛けしました……」
勇者「ではそろそろ働きましょうかね。土さんの治療はどうなってます?」
魔王「我がやっておいた。完治させておいたぞ、あの後直ぐにな。今は僧侶の改造をやっているはずだ」
魔王「改造はその後直ぐに始めていたのだが改造完了の報告は来ておらんな。彼奴にしては珍しく仕事が遅いが……」
勇者「え。ど、どうやって? 完全回復呪文なんて使えないでしょ、あなた」
魔王「初期回復呪文しか使えんでも、そこはほれ、魔力に物を言わせてな」
魔王「言わせすぎて祖父がどこぞの川岸で手を振っておるのが見えたが……」
勇者「無茶しないで下さいよ。貴方に何かあったとき回復させるのにどれぐらい手間掛かると……」
魔王「魔力不足で死ぬ者は居らん」
勇者「わかんないじゃないですかー」
水の四天王「フフフ。そちらもお世話させて頂きましたわ」
水の四天王「勇者様と魔王様のお二人を看病出来るなんてこれだけでワタクシ蘇った甲斐が御座いました」
魔王「うむ、世話になった。褒美は後々取らす」
勇者「僕からも何かあとでお礼の品を」
水の四天王「えっ。あ、いえ、わ、ワタクシはもうこの経験だけで。そんな、これだけでもご褒美でしたのにお礼とかされると立つ瀬と言いますか……っ」
魔王「また蠢き出したな。水で出来ておるせいか少し揺れるだけで身体全体が波打つので見ていて面白い」
勇者「この人、見た目も雰囲気も有閑マダムって感じなのに、中身は褒められ慣れてない女の子ですよね」
魔王「ぎゃっぷもえ、というやつか?」
勇者「ギャップ萌え、というやつです」
水の四天王「ぎ、ぎゃっぷもえ? いえ、ですからね、そんな、お礼なんて」
魔王「渡すとしてだ」
勇者「渡すとしてですね」
魔王「土のところに行ってくるといい、奴も貴様のことを大層心配しておったからな。ああ、改造の様子もついでに見てきてくれ」
勇者「了解しました。それではまた後で、魔王、水さん」
水の四天王「ぅぅぅ……ま、またあとで……」
勇者「というわけで」
勇者「土さんの研究室にやってきたわけですが。相変わらず色々なナマニクが転がってて血腥いです。あと薬品臭い」
勇者「そんなところで特に新鮮な血液が目一杯滴ってるベッドの側で、ドヤ顔してる土さんと、猿轡噛まされて涙目で縛られてる女神様と……」
勇者「……僧侶? ですかね? また随分、若返っちゃってますけども。顔も綺麗さっぱり修復されちゃってお肌もツルツルになっちゃってまぁ……」
土の四天王「あ、勇者=サマ。回復しタようで何よリでスよ」
土の四天王「お世話が出来ズに申し訳ありまセンでシタ。私も綺麗に回復しテもらエまして、そノ、勇者サマも心配しテたんでスけど、そノー……」
勇者「お構い無く。戦士につづいて、僧侶ですからね、土さんにとってはたまらないものもあるでしょうから。で、僧侶なんですが……」
土の四天王「はイ、はい! 見て下さイ! 力作ですよコレェ!」
勇者「僧侶ですよねコレ」
僧侶「……」
土の四天王「はイ! 勇者=サマが僧侶=サンのオ顔台無しにしたと聞いた時は酷く残念でシた。手に入ったラ是非修理してアゲようと思っテテ!」
勇者「修理したと。元々はすごく美人さんでしたからねぇ、台無しにしちゃったのは悪かったかなーなんて思ってました。嘘ですけど」
土の四天王「HAHAHA! ナイスジョーク! 勇者=サマに断りなくヤッちャッてスミマセンでしたが、どうかご勘弁ヲ」
勇者「ヤッちゃったもんは仕方ないですし此れは此れで良いですよ、僧侶の顔まで嫌いとは言いませんし」
勇者「しかし見事に修理しきりましたね。どうやったんです?」
土の四天王「大変でシタよー。若いころの写真なイし黒焦げだッたシ、想像で補わなキャいけなカッたシ」
土の四天王「鎧に入れる前の戦士=サンにしタことはあらカタしまシタ。皮膚とってー。肉はいでー。骨もいでー。骨も肉も皮膚も全部新しイのに取ッ替えテ」
土の四天王「戦士=サンは最初ッかラ長生きサセるつもリも飾るツモりもなかッたんで強化素材をしこたま入れちャいましたケド」
土の四天王「僧侶=サンは少しなり長生きしテもらって動いてるトコ長く見せテもらいたいし死んだあとも飾りタイシ」
土の四天王「僧侶=サンに合うようなパーツ見繕ったンでスけどね。これが大変で大変で……」
土の四天王「全部で四万人ぐらイの人間腑分けして使ッたかナ?」
勇者「四万人? それはまた随分豪勢に行きましたね。選別にも力入れて……」
勇者「……あの。いざってときに、いや、万が一の時のためにですけどね、魔神様にお力添え願うときのためにね」
勇者「生贄用の素材として、そこそこ顔立ちのいい人間、体力がありそうな人間なんかを保管した倉庫あったじゃないですか、倉庫の中身が確かそれぐらい……」
土の四天王「あっ」
勇者「あっ。じゃないですよ!?」
土の四天王「あ、えっと。えーッと。て、てへぺろ?」
勇者「可愛いけど許しませんよ!? 僕が結構苦労して! 結構苦労して選別して取っといたんですよ!?」
土の四天王「えット。そノ。あノ。えー……そ、そウだ、あのホラあれ! トップがないブラとクロッチのないパンティー!」
勇者「乳首丸出しのブラとアソコ丸出しのショーツがなんだっつーんですか!? ていうか行き成り何の話!?」
土の四天王「アレほら私流石に恥ずカシクて着れなカッたケド! 今度勇者=サマの寝室行くとき着てきますカラッ」
勇者「……えっ」
土の四天王「ほ、ホラ、アレで、一度シたいって。私恥ずかしイから無理だって言ッタ……けど、そ、その、着てきまスカラ」
土の四天王「……あ、待ッテ、ヤダ、想像したダケでもう、ち、ちょット、顔赤くないっスか私ー!? は、裸は兎も角アレは……ほ、他の案で……」
勇者「その案採用でチャラにします」
土の四天王「……他の案を……」
勇者「 採 用 で 」
土の四天王「……はィ……」ヤッチマッタ・・・
勇者「それはそれとして。まあ、生け贄素材はまた改めて調達するとして。僧侶の改造も分かりましたけど。僧侶なんでこんな大人しいんです?」
土の四天王「はぃ……あ、はい、麻酔無しの施術は戦士=サンの屈強な身体あッテのもノですから」
土の四天王「僧侶=サンにソレやッたら回復魔法かけテテも死んじャいまスでしょ」
土の四天王「麻酔は掛けたンでスけど。意識はそのママにしトいたンですヨ」
土の四天王「僧侶=サンたらそれスラ耐えレなかッたみたイデ」
勇者「あー。肉体的ショックじゃなくて精神的ショックで逝きましたか。精神が」
土の四天王「軟な構造しテまスよネ。っと、思いまシタけど、私もこンなこトされたら逝っチャウかモ」
勇者「女性にはキツいかな?」
勇者「女神様も綺麗さっぱり、黒焦げにされたそうですけれど、回復してますけど。何でこんなに震えて……」
勇者「あ。見学会させました? この調子だと結構見せられたみたいな感じですけど」
土の四天王「一から十までありったケ」
勇者「納得」
土の四天王「これカラ女神様にも同じ目に遭ッテ貰いまスって脅し文句付きデ」
勇者「あらヒドい」
土の四天王「あ、でも、女神様は魔王様に一応要望も聞いトカなイと。改造却下さレたら……テキトーにゴーモンでもしテ遊びまスか」
土の四天王「女神様の肉体なンて、勇者=サマとかお仲間の皆様方の身体弄ル並に手が届きマセンでしタから。楽しませて貰イたイでス」
勇者「いいですね。間違えた。そんなヒドイ」
勇者「しかしまあ、さぞ悲鳴と苦鳴に脅かされた二週間だったでしょう女神様。すみませんねー、うちの土さんがこんな事してー」
勇者「うちの土さんこれからもこんな事しますけど。僕は女神様にこんなこたぁしませんよ! 改造だなんてとんでもない!」
勇者「そんなヒドいことはねぇ、だって僕。女神様の第一使徒でありますからね!」
土の四天王「っぷ。ぷはっ。ッあハハハハは! この状況でそれ言います!? ッアハハははは!? 止めないのにッ。ハハッ、はヒッ、い、息、苦しッ、ひはハハは!」
勇者「僕はやりませんよ。僕はぁ。ッハハハ」
勇者「ひゃっほう!」
土の四天王「ひゃっほーゥ!」
―― 僧侶、女神捕縛かに二週間と一日目。魔王城、土の四天王の研究所 ――
勇者「……」
土の四天王「……」
勇者「……」
土の四天王「……えット。勇者=サマ。い、今から、あノ、寝室行きます? 別に夜にシカ営んジャいけなイみたいナことありませんカラ」
勇者「土さんのボディラインまじたわわ。土さんの甲斐性マジたわわ。男心も僕心もガッチリ掴んで離さないって勢いに惚れますよホント」
土の四天王「ソ、それじャ行きまショ? こう、嫌なこトハぱーッとヤッて忘れちャイましョ! ネ!」
魔王「どうした、二人共。今日は随分と大人しいではないか? 基本が騒がしいか無茶やってるか何がしかの貴様等にしては珍しい」ギィ、ガチャ、スタスタ
魔王「勢いで殺そうとした我が言えたことではないが、対・天界戦ではこの女は役に立つであろうから殺させるワケにもいかぬ」
魔王「とはいえ、神族の構造とやらに興味がないワケでなし。命さえ失わない程度の配慮はしつつ」ジャマスルゾ
魔王「つまりいつも通りの無茶苦茶をしない程度に、遊ぶことを許したわけだが……」チャハナイノカ
魔王「……それでも少々心配になって見に来てみれば泡吹いて倒れている女神と落ち込んでいる勇者に土とはどういう状況なのか」チャヲダセ
勇者「ああ、いや、その、なんといいますかね。あ、お茶、僕の分も宜しくお願いします土さん」
土の四天王「はイただ今」
魔王「うむ」
魔王「……」
魔王「……なあ勇者。土の淹れる茶は美味いがな、お前からも何か言ってやってくれんか? いい加減ビーカーに淹れるのは止めろとな」ズズー
勇者「貴方が云十年言っても聞かないんですから僕が言ってもねぇ。たまにはいいじゃないですか、ビーカー茶、成は兎も角味は良いし」ズズー
土の四天王「湯呑み買うぐラいなラそのお金とスペースを他ノ器具に使いたいノです。あァ、そレででスね、いいタイミングというカなんトいうカ」
土の四天王「身体張ルのは吝かデはあリませンけレど、魔王様もちョッと聞いてッテ下さいヨ。愚痴仲間は多い方が宜しイ」
魔王「愚痴仲間にされるのか我は。まあよい、それで? 外傷らしい外傷もないように見受けられるが、この女神」
勇者「気絶してます」
魔王「見れば解る」
魔王「どんな傷を与えたのだ? 修復したにしても中々見事な治り具合だな? 新しい回復呪文でも会得したのか」
勇者「回復も何もまだなにもしてませんよ」
土の四天王「しテまセン」
魔王「……精神的な傷を与えたのか?」
勇者「精神的な傷といえば傷ですけどねぇ、ッハッハッハ……」
土の四天王「疑う気持ちハよく解りマスけレど、残念ながラ、本当に、まだナニもしテないのですネ、コレ」
勇者「魔王の許可も取り付けて、道具も一通り揃えて、さあはじめるぞって時ですよ。僧侶の改造シーン見せたのが余程ショックだったのか、どうなのか」
土の四天王「とりあエずメスで肌を切ってみテ神族っテ怪我したラどう治っテいくか見てミヨウ。ッテ、とこデ、泡吹いて卒倒しちャいまシタ」
魔王「え」
勇者「正直、僕、久々に悪い意味でガチでショックなんですけど」
土の四天王「私もショックか拍子抜けというカ。一応うちの神様ト同じ最高神の一人なンですケドこの人」
魔王「……長らく人間界を護ってきた女なのだがなあ、これは」
魔王「それが、まあ、全身を焼かれて気絶したならまだよいとして。人間の解体現場を見せられて衝撃を受けるのはまだ良いとして」
魔王「いよいよそれを受けて気を失うならまだしも、だ。受ける恐怖に屈して気を失ったとな。あまりに、あんまりに腑抜けた結果だな」
勇者「……もう少しばかり気骨があるところ見せてくれるのかなぁって思ってました。最近では人間爆弾とか昔は僕ポイしたり色々してるワケですし」
勇者「僕のこと戦いに送り出した張本人なワケですよ? こちとら戦いの中で何度、黒焦げになったり酸引っ被って溶けたり生きたまま食われたりして死んでると思ってんですか」
勇者「……」
勇者「僕は死んでも生き返れちゃいますから、女神様に同じ目に遭え、とは、いえませんけど」
勇者「なんというか、もうちょっと、覚悟決めてくれてるのかなってね。まだ買い被りが過ぎたかな?」
魔王「戦士でさえ戦いの中にあっては、まあアレはアレで甘い考えではあったがアレなりに死ぬ覚悟は決めていたというのにな」
魔王「よくもまあ、このザマで、殺される覚悟を決めていると言えたものだ。殺されない程度と目に見えている痛みでこれとは……」
土の四天王「まァ……こッチがちョッと、過度な期待しテたッテいう気もあるンですけレど。いやア、まサカ致す前に気絶すルとは……」
魔王「愚痴仲間がどうというのはよくわかった」
魔王「これを酒の肴に飲んでも構わん、時間を取ろう。土と共に寝所に連れ立っても構わん、時間は取らせる。その前にもう少し居ろ」
魔王「様子見がてら一つ話を持ってきたのでな。急な話ではないが、今のうちに耳に入れておけ」
勇者「良い話ですかね、悪い話ですかね」
魔王「さて、どちらかな」
魔王「遊び相手が増えたという意味では良いが、急なものであるし未知であるが故軍団の我等としては悪くもある。天界軍がな、動き出すやもしれん」
勇者「確かに良いような悪いような。思ったよりも早いといえばいいのか、思ったよりも遅いといえばいいのかも、ついでにわからなくなる話ですねぇ」
勇者「女神様がここに来てから、えーっと二週間? ぐらいですかね? あっちにとっちゃ世界一個守ってる力の持ち主、それなりの地位にいる人物が捕えられて二週間」
勇者「さあ取り返すぞと決めて動き出すには中々の腰の重さ。なんですけどねフツー。あそこは腰の重さにかけちゃ折り紙付きですよ」
勇者「魔王戦役のときもニ~三年様子見してたぐらいですから、そこを考えると中々の腰の軽さ、のような」ミウチヒイキナダケカモー
魔王「その辺りはどうでも良いわ。兎角、軍としては、奴等を相手にする準備はまだ出来ておらん」
魔王「人間界を征服したあとでゆっくりと天界を攻め落とす準備を始めるつもりであったからな」
土の四天王「今、人間界征服に使ッテる兵ッテ、新生・魔王軍の約半分でスから残り半分もあレばどうとデモ対応出来ますけレど。警戒は大事ですネ」
魔王「そういうことだ、万が一ということもある」
魔王「我等の知らぬ戦術で、我等の知らぬ魔法で、我等の常識を超える何かで半分消し飛ばされんとも限らん」
勇者「それは流石に警戒しすぎだと思うんですけど。僕が討ち取ってからというもの、妙に疑り深くなっちゃって……」
魔王「元々そういう気があるのだ、放っておけ」
魔王「それにこちらは王手取る寸前でまさかの逆転負けで殺されておる身だ、分かれ」
土の四天王「いやア、ニ十年も前の話になルんでスねぇ。死んでたカラつい昨日の出来事にしカ思えなイんですけレド」
土の四天王「まァまァ、そレより何よリ。それなラそれデ、対人間界用でなクテ対天界用に兵を造って備蓄しトキましョウか?」
魔王「それが良い。魔神のための生け贄用にいくらか人間が備蓄してあったな?」
魔王「あの中から素体を選んでも構わん。生け贄用はまた勇者に頑張らせる、が、ほどほどにな。総て使うなよ?」
土の四天王「……はィ」
勇者「はい、それはもう」
魔王「土、何故赤くなる? 勇者は、なんというか、絶妙な顔だな、面倒臭そうな嬉しそうな……」
土の四天王「……いェ」
勇者「いえ、それはもう」
魔王「なんだというのだ。いや、待て、言わんで良い。聞いたところでろくでもないことに違いないから良いとして、仕事はしろ」
勇者「HAHAHA、イエスサ……」アレ
魔王「む?」ヒガシカ
土の四天王「ン」ホクトウデスヨ
勇者「……先走りですかね」マオウッテバー
魔王「で、あろうな」ウルセェ
土の四天王「天界軍がこンなに早ク行動デきるとハ思えマせんかラねェ」
勇者「数は、五、いや、えーっと、六人ですか」
魔王「中々強い気配だぞ。場合によっては魔王軍への編入を許可してもよい」
土の四天王「編入許可されタッて頷くトハ思えませンけれど。そろそろ到着なサれまスよ」
勇者「いや、僕は許可しませんよ。少数でもおらが大将助けてやんぜって突っ込んでくる心意気は買いますけど……」
天使「聞けい悪逆無道の――!!!」
炎の四天王「Atrocious Attack!!!」ドパンッ
勇者「来た、と、おもったら早速炎さんに一人ぶっ飛ばされた。というか消し飛ばされた」ナンデアノヒト、コンナタイオウハヤイノ
勇者「天使さんがた、結構な上空を結構な速度でかっ飛ばしてきたスペックは認めますよ」
勇者「取り囲まれて攻撃されるのを警戒して地上に降りないのも、上空に浮かんでいても魔法が飛んでこないか警戒しているのも、それなりに油断が無くて宜しい」
勇者「けど世の中、一蹴りで魔法より速く空まで飛び上がってきて、一殴りで爆発四散させるような腕っ節を持った男も居ますからね」マイノリティデスケド
勇者「殴られた天使さんもまあ綺麗に無くなっちゃって、亡くなっちゃって……別にあの人無名じゃないんだから。あんなん居るのによく突っ込んでこれますよね」
魔王「相変わらず炎を全身に纏って参上しているが。アレ、実は結構熱いらしいな」
土の四天王「風サンが風で出来テるみたいに、水サンが水で出来てルみたイに、炎で出来た魔人みたイに振る舞ッテらッしャるけど」
土の四天王「フツーに私と同じ人間型の魔人でスからネあの方。なンか、イメージが大事、ッテ仰ッテ」
勇者「聞いたときは驚きましたよ。僕はてっきり本当に風さんや水さんみたいにそういうので出来た魔人なのかと思ってたんですよ」
勇者「ノリがいいというか、なんというか。Atrocious Attackってあんた……あんな技、持ってないですよね。天使さんが悪逆無道がどうとか言うから……」
魔王「うむ、しかし、そんなことを言っている内にも炎の奴、多段空中飛びを駆使して残りの天使共を次から次へと吹き飛ばしているが」
魔王「しまったな、奴がやってしまっては奴等の正確な実力がよくわからんではないか」
土の四天王「あノ方と戦いニなる生物すラこの世界では希少なほうでスよね。しかモ生憎そういウ生物の多くは私達側に属しテいる」
土の四天王「勝てル生物だッテここに居らッしャいますし」
魔王「魔界に我さえ居らなければ、人間界に勇者さえいなければ、二界において最強の座はあやつのものだったろうな」
勇者「そういえば、天界はどうなんでしょうねぇ。女神様はあくまで人間界の守護者ですから、天界の守護者たる方を見たことはないんですけど」
勇者「ちょっとだけ、いやいや居たら居たで至極面倒臭いですが、僕よりも魔王よりも強いのが居たら酷く面倒臭いですが、ちょっとだけ楽しみなような」
魔王「まあ、わからんでもない。何のかんの我も戦役時は、勇者が目障りで仕方なかったが、勇者程の強者が居ると知っては多少心躍ったものだ」
土の四天王「男の子しテますねェ。女の子の私にハよくわからなイので、居ない事ヲ祈りまスよ」
炎の四天王「ッハッハー! 不意打ち御免! まあ何! 悪逆無道の徒であるゆえ卑怯な手の百や二百は覚悟せねばなるまいて!」
炎の四天王「それに少々、急ぎでな! これから水殿と――」
勇者「あ、終わったみたいですね。お疲れ様でーす!」
魔王「次は勝手に飛び出さぬよう釘を差しとかんと」
炎の四天王「おお、勇者殿! 魔王殿! 目障りな羽虫共を消しておいたぞー! ではこの炎の四天王これより水殿と『でぇと』故これにて失礼!!!」バヒュンッ
勇者「……ああ、何か妙に外に出てくるのが速いと思ったら、お出掛けするために外に出てきたところだったんですね」
魔王「よくよく見てみれば下の方に水が待っているな。ハハハ、炎の奴が大声で逢瀬がどうのと言うせいでまた悶ておるわ」
土の四天王「かわイイものデスよネ。私よりずッと大人ッポイのに中身がアレですもン」
魔王「しかし、先走りとはいえ、天使共を吹き飛ばしたのだ。天界軍の動きが多少なりと早まるやもしれん、我は風と対策でも練ってくるか」
勇者「僕は土さんは寝室に、と、思ったんですけど。やっぱりこういうの、夜のほうがいいですね、昼はもう少しお仕事しましょーか」
土の四天王「平気です、勇者=サマ? 平気でシたら、私も私デ、えー、そう、あのー。備蓄の兵力補充ヲ……あと下着の準備……」ボソッ
勇者「平気になりました、気晴らしに派手なもの見れましたし。……貯蔵庫の人間の補給しなきゃ……」ボソッ
勇者「僧侶を連れていきます。補充がてら、街落としがてら、彼女もこっちの手に堕ちたぞーって人間共にアピールしてきますよ」
勇者「ついでに、戦士が死んじゃったのもお伝えしてきちゃいましょーかね。剣聖も死んだ、聖女はこちらの手に堕ちた、いゃあ~」
勇者「どんな反応してくれるか楽しみですね! 街々の皆様方ねー!」
勇者「ひゃっほう!」
土の四天王「お土産話、楽しみニしテますネ。僧侶=サンを見た反応のトコ詳しくお願いしマス、さ、それじャア私も一仕事!」
土の四天王「ひゃっほーゥ!」
魔王「元気になったようで何よりだが、やはり我は駄目だ、その勢いには付いて行けん……」
魔王「……若返りの秘薬でも探すべきか……?」
―― 僧侶、女神捕縛から二週間と一日目。アノオー国、首都 ――
いくつもの村が、いくつもの街が、いくつもの砦が落とされた今アノオー国の首都は厳戒態勢。
王宮の内部から周辺まで、街中にも街を守護する壁と外にもずらりと重武装の兵が並び、襲撃に備えていた。
しかし……
勇者「しかし、まあ。なんというか、まあ。事此処に至ってもまだ対岸の火事ってノリですねぇ、僧侶?」スタスタ
僧侶「はい」スタスタ
勇者「思い返してみれば二十二年前のあの日も、旅立ちの日もこんな感じでしたっけ、ねえ僧侶?」
僧侶「はい」
勇者「兵隊さんは揃っちゃいるけど、そのうち向こうに攻め入ってる兵隊さんがカタつけてくれるだろー的な」
勇者「民草も、そのうちなんとかなるだろー的な感じで気が抜けてるというか何というか。いやはや中々の賑わい、活気、物資」
勇者「一応戦時下なんで普段ほどメッチャクチャに物溢れてるってぇわけじゃあございませんが、平和なもんで――」ドン
勇者「っとと」
子供「いてっ」ドサッ
勇者「あら、あららー。これは失礼、荷物が……」
子供「ぼ、僕の方こそごめんなさい。余所見してた……」
勇者「ボサッと突っ立ってた僕が悪い。拾うの手伝いますよ、ほら僧侶もつったってないで手伝いなさいよ」
僧侶「お買い物ですか、少年。お使いでしょうか、えらいですね」
勇者「あ、手伝う気ないですか……そうですか……」
子供「うん、そうだよ。お母さんに頼まれたの」
勇者「そうですかー」ヒョイヒョイ、ヒョヒョイノヒョイ、ハイオワリ
子供「今日はシチューなんだよ、ビーフシチュー! 大好きなんだー、って、はやいねお兄さん」
勇者「袋もこうして紐でギュッとして、はいこれで溢れない。え? ああ、道端に落ちてるもの拾うのは得意なんで。どうぞ」
子供「あ、ありがとう。かわった得意技なんだね」
勇者「落ちてるものを拾うときは落ちてるものの気持ちになるのです。転がったジャガイモやニンジンの気持ちになり、早く拾ってくれという声を聞けば、おのずと手は其処に!」
子供「そ、そうなんだ……ジャガイモやニンジンの声聞こえるんだ……」
勇者「嘘ですけど」
子供「嘘なの!?」
子供「もう! お兄さん!」
勇者「ハハハ、ごめんごめん。でも、余所見には気を付けなきゃ駄目ですよ? 当たったのが僕でよかったものの、兵隊さんにぶつかったらもっと痛いから」
子供「わかってるよ! 兵隊さんにめいわくかけないよ! まおーぐんってのと、ユーシャって悪いやつが居るから、兵隊さん忙しいもん」
勇者「忙しい、ええ、うん、そうですね。坊やも協力してくれてますし、きっとすぐまおーぐんもユーシャもやっつけてくれますよ」
子供「うん、戦いにはいけないけど、いきたいけどお母さんが駄目っていうから、兵隊さんには迷惑かけないようにするんだ」
勇者「いい子だ。それじゃあ、もうお帰り。今度は気をつけるんですよ?」
子供「うん、ばいばい、お兄さん。あ、でも、ねぇお兄さん」
勇者「はい?」
子供「カツラずれてる」
勇者「え゛」
子供「お兄さん、髪真っ白なんだね。お爺ちゃんみたい。だからカツラかぶってるの?」
勇者「……」イソイソ
勇者「……どうです?」
子供「なおった。白髪染めしたら?」
勇者「良い色が中々見つからないんですよ。黒だとなんかホントにお爺ちゃんになった気分だし、金色はなんかわざとらしいし……」
子供「? 髪、だいじにねー。白になったらハゲるっていうし」
勇者「い、いや、それは年齢的必然というか……老いたら皆そう、いやでもふさふさの人も……いやでも僕の母方のお爺ちゃんがハゲだしな……えー……き、気を付けます」
子供「気を付けてね! それじゃーねー!」タッタッタッ
勇者「……」
僧侶「……」
勇者「何か?」
僧侶「いえ」
勇者「この僧侶、もう少し愛想良い人格にしてもらったほうが良いかなぁ……いやそも、とりあえず載っけてみた人格だからか? 後で土さんに相談するとして」
勇者「カツラ一つで驚くぐらい気付かれませんね。カツラなくても気付かれなかったりして」
勇者「僕の手配書ちゃーんとあっちこっちに貼ってあるんですけどね。魔王も、四天王の面々も。僧侶にしたって、んー」
勇者「いやあ、若返っちゃいますけど。僕に焼かれてからというもの顔はずっと隠しっぱなしでしょ、あなた。ならその顔、目立つは目立つと思うんですけど」
僧侶「先程から男性の方中心に、あの人綺麗だな、とか、お前ナンパして来いよ、などの声はあります」
僧侶「振り向かれたりもしますが、まさかこんなところに聖女が居る、勇者が居るとは思わないでしょうから」
勇者「思い込みって怖いですねー」スタスタ
勇者「はい到着、街一番の活気がございます、ここは中央広場~。いやあ、あんな露天こんな露天あったりして目移りしちゃいますが」
勇者「用があるのはさらにこの広場のど真ん中にございます、この無駄にご立派な、あのローガイの国王の銅像。いやあ、何時見ても憎たらしい」
勇者「そしてここに取り出しまするは戦士の剣。人間界一の鍛冶師が精魂と心血を注ぎ込んだ、彼の最高傑作たる、その名もまんま『戦士の剣』~」
勇者「コイツを」
勇者「この銅像に」
勇者「僧侶ごと――」
老人「……そこなお人」
勇者「後で回収にきますからね~、僧侶。安心してぶっ刺され……。……はい?」
老人「……お止めになってはいただけませぬか」
勇者「今からが楽しいところなんですよ。それに夜までには帰らにゃいけませんので少し急ぎで、水差すのは止めていただけますか、ご老体」
勇者「というか、子供にぶつかったり、老人に見咎められたり、少し不調ですねー今の僕ー。流石の僕も……まあ、裏声さんよりも付き合い長かったですしね……」
勇者「しかし子供は子供なりに敏い、何かに引っかかるものでもあったのかもしれませんし。老人は老人でもただの老いぼれではないみたいですので、仕方ないかな?」
勇者「なんともまあ、偶然もあるもので、いやはやお久し振りです。魔法使いの先生。賢者殿?」
勇者「大賢者、魔法使いは元気にしてます? 全ー然足取りも姿も掴めないんですよ、あの女」
老人「……」
改め、賢者「……姿形も、心内も、変わり果てられましたな、勇者殿」
勇者「おかげさまで。あ、このカツラいりますか? 思ったより蒸すんですよね、これ。その禿頭におひとつプレゼント」
賢者「説得などというつもりはございません。戦士も、僧侶も、女神様でさえ、貴方のお心は救えなかった。私如きに何が出来ましょうか」
勇者「フフフ、話を聞いてくれませんね。ノリわるし」
勇者「まあ、よろしい。訂正させて頂きますが、戦士は説得のせの字も出ませんでした、お前を倒すのはこの俺だーつって勘違い特攻してきました」
勇者「僧侶と女神様は、主に女神様は、説得というか公開オ○ニーショーをぶちかましたあとに、殺しにかかってきましたよ。結構ヤバかったです」
勇者「まあ、二人は見ての通り。戦士は色々あって死にました、僧侶もこれから色々使ったあとに殺します、女神様は……えー。保留」
勇者「とりあえずこの二人はこうなったよって宣伝しに、此処に」
賢者「その宣伝とやら、黙って見ているわけにもいきますまい」
勇者「黙って見ていれば多少なり長生きできますよ」
賢者「死に際に一つしこりが増えますゆえ……」
賢者「後悔というしこりは、死に際を穏やかにはしてはくれませぬ。ただでさえこの老いぼれ、長く生きている分だけそんなものが沢山ございましてな」
勇者「ほほう」
賢者「どうせ悩まされるというならせめて少なく、穏やかにならないなら、ならないなりに少しでもしこりは減らして逝きたく存じ上げます」
勇者「ふむ。いや、話が早くて助かります」
勇者「戦士も僧侶も女神様も、貴方のその姿勢を見習わせたいですよ。ではお互い、説得は無理という線で、ささっとはじめましょうか」
賢者「ふふふ。出来れば……ふとした散歩でばったりと、ではなく。きちんと、それなりの布陣を以て、相対したかったところではございますが……」
勇者「世の中巧くいかないものですよ。僕でさえ巧くいかないことばかりです」
勇者「まあ、でも、悪いことばかりでもありませんか。正直ガッカリするもの見せられたけれど、爽快なものも見れたし」
勇者「ちょっと残った憂さ晴らしがてらのお仕事では、たまにはきちんと覚悟を決めた御仁に出会えた。久々に人間と会った気分ですよ」
勇者「賢者殿に敬意を評して……特別ですよ~? 僧侶と一緒に串刺しにしてあげましょう。死に様を飾って差し上げる」
カツラを取って捨て、白髪を陽の下に晒しながら、にっかりと笑顔を浮かべる勇者。
それに何を思うか、皺と髭とに覆われた老賢者の顔は変わらず、ただ細い目を大きく開き。
――。
ほんの数分後、買い物に来ていた主婦が。母のお使いにきていた子供が。ぶらりと散歩していた青年が、街を護っていた兵隊が、其々の悲鳴を上げる。
中央広場のど真ん中に設えられた国王の銅像に、その胸に突き刺さっているのは戦士の剣。
縫い付けられているのは年若い女性であった。見る者さえ見ればすぐにわかる、歳こそ不自然ではあるが、それはかつての聖女だった。
縫い付けられているのは年老いた男性であった。見る者さえ見ればすぐにわかる、かつての大戦の英雄の一人、魔法使いの師、その人だった。
アノオー国剣聖が、アノオー国聖女が、殺された。
そしていずれはアノオー国大賢者も同じ目に遭わせると知らしめるように賢者も殺され。
それをあろうことか厳戒態勢を取っていた筈の首都の、それも首都のど真ん中で行われた宣伝行為に、国は震えることになる。
勇者「爺さんも本望でしょう。男の子の夢的なものありますよね、英雄と共に死す、みたいな? たまにはいいことしますよね、僕も。ハッハッハ」スタスタ
勇者「それにしてもさて、さて、これでいい加減、現実を直視してくれるでしょうねぇ、アノオー国民諸君」
勇者「苦しめて殺すつもりはないんですけど。呆けたまま死なれるんじゃあこっちの気が晴れないんですよ」
勇者「しかし、ん~~~~……い~い悲鳴だ、中央から伝播して、伝播して、伝播して。残る全ての人々に届くと、いいですねぇ」
勇者「ヒャッホウ!」
勇者「ひゃっほう(裏声)」
勇者「Wonderful!!!!!(軍団)」
―― アノオー国、王宮 ――
国王「……」
大臣「……」
国王「……さすがに、応える」
大臣「……は。出国者、脱走兵こそおりませぬが、城内城下問わず不安に飲み込まれております」
国王「ふ。逃げてもどうにもならぬことぐらい誰でも分かる。首都にあっさりと入り込んで僧侶と賢者殿を串刺しにして見せられればのう」
国王「かつてはその数と暴威で逃げられぬと教えられたものだが。今度はよりあからさま手を打ってきた、やったのは勇者だったな」
大臣「目撃者の情報によると、おそらくは」
国王「で、あるか。まあ、それはよい」
国王「死者がたった二人であったことを幸いに思うべきであろう。たった二人、と、数えるには大きな戦力であったが……」
国王「民草に被害は出ておらぬ。勇者が此方にちょっかいを掛けてくるであろうことは予想しておったろう」
大臣「は。奴は最後の最後にここを陥れるつもりでありましょう」
大臣「最後の最後にせよ多少なりと此方にも手を出してくる可能性はありました」
国王「『遊び』でな。その時に『少々やり過ぎて』、結果民の半分ぐらいは持っていかれやしないかと気が気でなかった」
大臣「……遊び程度で進入され、少々やり過ぎた程度で半壊させられてはたまったものではありませぬ」
国王「致し方あるまい。四天王さえ、魔王さえ屠れる怪物であることは解っておったことだ。人と見て推し量ってはいかん」
国王「進入されるのも、最悪半壊はしても、いやそうならなんだは実に僥倖であったが、それはよい」
国王「余が応えると言うたのはそうで無くな」
国王「……僧侶の事よ……」
大臣「……は……」
国王「……おおそうだ、彼女を診た宮廷魔術師達の容態はどうなっておる? 腑分けして事実をその目で確認した彼らの衝撃たるや、報告を聞いただけの余らのそれの比ではあるまい」
国王「何人も倒れたと聞きはしたが、それからどうした」
大臣「ご安心を。休養をとらせております」
国王「目一杯休ませてやるとよい」
国王「勇者が、彼奴が率いる魔王軍が、いよいよをもってここに攻めてきたときには働いて貰わねばならん。今は目一杯休ませておいてやれ」
国王「……」
大臣「……」
大臣「……我々も決して清廉潔白などとは言えませぬ」
国王「うむ。分かっておる。分かっておるさ。人を改造するなど許されぬことだよ」
国王「人爆弾など正気の沙汰でない。勇者をああしたのも我々だ。勇者のことを言えたものではないが」
国王「……しかし……あれは……あんまりではないか。たかが……人形作りのために……何人の人間を使った……」
国王「……僧侶も……おそらくは、戦士のように。意識があるまま……そうされたと、思うと。……いや、しかし」
国王「これまでだ。これまでにしよう。やらなければならぬことがある」
大臣「はい、国王陛下。我等は負けるわけにはいきません」
国王「当然。それに、光明見えぬ道ではない」
大臣「天界の方々との合同戦線ですな、驚きました。まさかあの方々が人間に直々に手を貸すと仰っていただけるとは」
大臣「これより二時間後、代表の大天使様がお越しになられます。陛下とはそこで会談を執り行っていただきたく」
国王「破談になることはないだろうが、さすがに緊張はする。しかし胃痛は治まった」
国王「天軍が味方に付けば今より状況は好転してくれるだろう。女神様をお助けせねばならぬ、それも我等だけでやるのでなければ気も楽だ」
大臣「勇者も愚かなことをしました。まさか天軍がこうも早く……」
国王「待て待て、そういうのもあとにしよう。その勇者に関して確か続きの報告があったな?」
大臣「失礼しました。はい、賢者殿を……その……害する直前に、ですが。雷のような光を纏っているのを見た者がおります」
国王「大天使殿にも報告せねばならんことだ。勇者は魔法を使うときに雷光を纏う。あれはたしか、魔法の扱いが不得手故どうしても力を注ぎ込みすぎて魔力が溢れているからであったな」
大臣「はい。普通ならば溢れた魔力など目には見えぬか、見えても煙のようにぼんやりとした紫色が見えるものですが、勇者はそれが雷のような光として出てくる特異体質でありますれば」
国王「奇怪な体質よな。しかしそれ以上に奇怪なのは、そうあるということは勇者はその時、自分の魔力で魔法を使ったということになる」
国王「女神様のお言葉によれば、加護を引き止めることに己の全ての魔力を割いていて己では魔法は使えないというはずだったのに、だ」
大臣「わからぬのは、他の方法で魔法を使えるというのに自力で魔法を使ったということ。それをわざわざ衆目の場で使った事、ですが」
国王「意図は解らん。罠やもしれんが、それがどのような罠になるかも分からん。唯重要なのは……」
大臣「勇者は今魔力を取り戻している。ということは、女神様の加護を持っていない、かもしれない」
国王「そうだ。これは、新たな勇者が生まれる好機である、かもしれん」
大臣「わからぬことばかりです。加護もないのに奴はまだ若いまま、力も全盛のままのようでありますし」
国王「もともと馬鹿げた魔力の持ち主。大賢者もそれによって不老長寿であるではないか。このあたりも大天使様と協議せねば、だが」
国王「我等が知りえていることも。我等が持っている策も、戦力も。全てを話そうじゃないか」
国王「天軍も女神様を助けねばならん、必死であろう。そこに付け込むようで気が引けるが、あちらにも全て、話してもらおう」
大臣「人間界、天界を守るためでありますれば……」
国王「うむ……」
国王「それと、大臣」
大臣「……は」
国王「大賢者を。魔法使いを、ここに来させよ」
―― アノオー国、国境 ――
勇者「今日この日ここに僕が居るのは、ご加護の力の賜物。女神様のお力の賜物であるのは疑いようもなく……」スタスタ
勇者「どれだけ感謝してもしきれぬ大恩。それを捨てるというのは多少、気が引けんでもありませんね」イマカエリミチデス
勇者「こう、ちょっと、一抹の寂しさが過ぎらないわけでもありません」カゼサンガムカエニキテクレルソウデス
勇者「でも、もう、要らない、あの女には愛想尽き果てました」
勇者「……。訂正します」
勇者「あんな醜態晒した女の力とかいつまで経っても離さないでいたら格好付かないんですよね」
勇者「しかしこれで僕も晴れて一介の一生命。もう不老長寿の力も無い、死んだら誰かが蘇生させてくれないと死にっぱなし、お腹減るし排泄しちゃいます」
勇者「あのチャームボイスは少し勿体無かったかな、ああ、あと、聖剣も聖なる鎧とかも使えませんね」
勇者「今何処にあるのかも知りませんし使いたくても探しようがないとも言いますね、勇者様(裏声)」
勇者「そ、そうですけどぉ~。べ、別に元々使いたくありませんしぃ~」
勇者「デザインちょっと好きだっただけみたいな!」
勇者「デザインはよかったですね(裏声)」
勇者「性能は兎も角ね!」
勇者「ぶっちゃけ古代の戦士の王が使ってたっていう剣の方が強かったです!」
勇者「天界人の鍛冶技術もたいしたことなかったですね、勇者様(裏声)」
勇者「ちょっと言い過ぎな気もしますが気のせいかと思われます!」
勇者「また古代の戦士の王の剣を取りに行きますか勇者様(裏声)」
勇者「取りに行きましょう!」
勇者「……どこにやりましたっけ、あの剣」
勇者「確か、当時、旅の途中で何処かの街に奉納してきたような、えーと。っあ、それと鎧も作らにゃいけません!」
勇者「魔王におねだりしてみてはいかがでしょうか、勇者様(裏声)」
勇者「おねだりしてみましょうか!」
勇者「何のかんのぶつくさ言いながら作ってくれそ……っと」
勇者「風さんがわざわざ迎えに来てくれたみたいです。向こ~~~のほうの空に風さんのワイバーンが見える」
勇者「本人はまだ見えません。というかあの方近くに居ても見難いんですよね」
勇者「風で出来てますからね(裏声)」
勇者「ね。それでは、帰りましょうか、我が家に。風さんにも火さんにも水さんにも土さんにも、魔王にも、魔力戻ったっていってビックリさせちゃいましょう」
勇者「きっとビックリしてくれますよ勇者様(裏声)」
勇者「反応が楽しみです、おーい、風さーん」
風の四天王「勇者殿~。迎えに上がりましたぞ~」
勇者「わざわざありがとうございます。いやあ、一人でも走って帰れるんですけど、やっぱ空の旅って気持ちいいですよね」
風の四天王「フホホ。お気に召して頂けたようで何よりですぞ。さ、どうぞどうぞ、お乗り下され」
勇者「ありがとうございます。ああ、行ってきましたよ、アノオー国首都。お土産話も色々あります、まずはね――……」
続き
勇者「魔王を倒してから、あれから二十年!」【4】

