勇者「魔王を倒してから、あれから二十年!」【1】
の続き
176 : 以下、名... - 2015/05/30 21:10:22 cttYuro6 100/422登場人物そのいち。
『勇者』
二十年前、世界を手中に収めんと侵攻してきた魔王軍を討ち果たした英雄たちの一人でありそのリーダー。
しかしその大戦中多くの瘴気に触れ、魔王の悪のカリスマに触れ、正気を失いつつあった為大戦以後は自ら望んで封印された……
ということになっているが実際は世界を救ったという影響力や凄まじい武力を疎ましく思った勇者出生の地アノオー国の国王、
およびその王に金銀財宝や酒池肉林の日々を約束されて目が眩んだ仲間達やその他多くに裏切られて投獄されていた。
二十年後、裏切った面子の一部がうっかりとそのことを忘れて出してしまい、セカンドライフがはじまる。
二十年の獄中生活の間で色々意識の変化が起こったらしく、変化は外見にまで及び白髪レイプ目に、ついでにハスキーボイスになった。おソバ大好き。
現在ソギャン街まで侵攻中。
『裏声さん』
合いの手担当。綺麗なハイトーンボイス。
意外とハスキーボイスな勇者は裏声さんを安定させるのに大分苦労した歴史があるらしい。勇者が他の人間と接触しているときは基本出番がない。
『軍団さん』
そりゃもう軍団相当の多大な合いの手担当。
台詞は少ないが彼等が合いの手を打つ時大地が震える、声がデカすぎて。あと英語で喋る。勇者が他の人間と接触しているときは基本出番がない。
177 : 以下、名... - 2015/05/30 21:11:32 cttYuro6 101/422登場人物そのに
『村娘』
ドッカ村出身の十四歳と七ヶ月と三日目の処女。
勇者を助けたため勇者に助けられた、ドッカ村最後の生き残り。現在は傭兵衆に護衛されて傭兵ギルドに一時身を寄せたようだ。
『傭兵衆』
ドッカ村がゴブリン討伐のために呼び寄せた傭兵集団の取り纏め役の五人組。
村娘に護衛が必要とのことで生かされている。村娘に暴行を加えるのではと一部で心配の声があがっていたが、何もしていない。
アッチ、ソッチ、ドッチ、ドッカ村の村人衆
ゾンビ兵勇者エディションにされて勇者の手駒として働かされている。
一度だけの蘇生機能付き、数人集まれば分厚い防壁をペロンと剥けるほど強力な自爆機能も搭載。
178 : 以下、名... - 2015/05/30 21:12:52 cttYuro6 102/422登場人物そのさん
『戦士』
勇者がレイプ目になった原因その一。勇者の手により右腕と左足をたたっ斬られているため、義腕義足。周りには魔王大戦で失ったと言ってある。
二十年前の推定戦力は(かなり控えめに言って)魔物一軍団相当だったが今は多少衰えている。
二十年後、魔王大戦の功績を買われ、また、自身たっての希望もあり国内の兵士たちに剣術や兵法の指導に力を入れている、アノオー国の〝剣聖〟
五体不満足でありながら常軌を逸したと謳われる剣の腕と、どんなに要領の悪い兵士にも諦めず罵らず付きっきりで指導してくれる性根の正しい性格で人気者。
鍛錬は欠かしていないようで多少の衰えはありハンデがあっても未だムキムキマッチョメンのおじさん。甘いもの大好き。
現在、勇者復活の一報を受け、かつ、たまたま近くにいたためソギャン街へと駆け付けて防衛戦の指揮を採ることに。
『僧侶』
原因その二。練り物大好き。
『魔法使い』
原因その三。粉物大好き。
『王様』
原因その四。フルーツ大好き。
『四天王と魔王』
かつて世界を脅かした者達。その役は現在勇者に取られた。死体は魔王城に封印されている。魔王はおソバ大好き。四天王はおうどん大好き。
戦士「……勇者……」
警備隊長「……お久しぶりです勇者様」
勇者「はいはいお久しぶりです警備隊長、二十年ぶりですね、老けましたねぇ、戦士も」
勇者「というか僕のこと覚えてんですね警備隊長。戦士達は兎も角あの頃の人間がよく覚えて、まぁ、ソギャン街は結構長く滞在してましたけど」
戦士「……」
警備隊長「……あなたに受けたご恩を考えれば当然のことです」
勇者「い、いや、お気になさらず」
勇者「今ちょっと、つい、本気でイラッとしちゃって言葉が詰まりましたが。関係のない貴方は無残に殺したりしませんからね~。約束します~」
勇者「ドッカ村のゾンビ兵以外は綺麗なもんでしょう? なるべく苦しまないよう一撃で仕留めてますからね」
勇者「ドッカ村のゾンビ兵はあっちこっち継ぎ接ぎだらけですけどこれは仕方ないでしょう」
勇者「パーツが足りなくて他の人間から移植したりSAN値チェック必須な外見の方居ますけども、ああほらあれ、全身の皮膚無いの、あれは村長なんですけどね」
勇者「僕の腹の虫が収まりませんでしたから仕方ないでしょう」
勇者「まぁ、それはさておいて」サッサッ
勇者「戦(や)りましょうか?」ハイオキマシター
戦士「やはり、そうだろうな」
警備隊長「……考えなおしていただくわけには」
勇者「いきませんねえ。あと、問答には付き合いませんよ?」
勇者「付き合ってると、ほら、色々言われそうです」
勇者「僕みたいな聖人君子がどうしてこんなんなっちゃったか、とか」
勇者「二十年前お助けできなかったことを今でも悔やんでます、とか」
勇者「次はあなたが世界を滅ぼす気ですか、とか。魔王はもう居ないのをいいことに魔王として君臨する気ですか、とか。闇に進まず戻ってこい、とか」
勇者「どうしてもっていうなら言ってもいいですけど付き合いませんからね。いいんですよ、事情なんて知らなくても。知らないまま、死ねばいいです」
勇者「寧ろそちらの方が自然じゃありませんか? 人間なんて死ぬとき死ぬ理由を悟れることなんてそうそうありません」
勇者「たいていは事情も知らず知らないままに死んじゃいます、病気だ災害だなんだってのはソレを見てた人間がそう言うだけで」
勇者「……」
勇者「う~ん、どうもいけませんね」
勇者「自分以外の人間と喋るのは久しぶりでなんだかんだやっぱり嬉しいんですかね、ご主人様のときもそうでしたが喋りすぎで」
勇者「喋りすぎついでに言っておきますが、馬鹿なことをしましたよ」
勇者「馬鹿正直に平原でゾンビ兵と戦り合ってりゃあいいものを……」
勇者「こんなコトされたら僕が剣を抜かざるを得ないじゃないですか」
勇者「戦士はいいですよ、別に。元からこの剣でお相手しようと思っていましたからね、ゾンビ兵じゃとてもじゃないけど無理だ」
勇者「けれど何も他の人間までこの剣で相手させるなんて、んもう、兵士にとっちゃ最上級の屈辱じゃないですかね、こういうの」
勇者「襲ってくる相手に、為す術もなく、藁のように刈り取られるだなんて――」
警備隊長「……ゾンビ兵が満足に動けぬ今、脅威として残るのは貴方お一人です」
警備隊長「貴方のお力が尋常でないのは存じておるがこの人数を相手に藁のように刈り取る、とは、些か誇張が過ぎるのではありませぬか」
勇者「……」
勇者「戦って死なせてあげたいじゃないですか、仮にも兵士なんだから。ゾンビ兵となら戦って死ねたのに、戦士さんときたら」
勇者「相変わらず鬼畜なんだからぁ~。僕これでも貴方みたいな人以外は苦しませずに死なせてあげようと思ってるんですよ」
勇者「何もそんなプライドずったぼろにされるような苦しい死に方させることないのにね」
戦士「たしかに、お前の相手はこの場にいる者の中では私以外に務まらぬだろうさ」
戦士「たしかに、お前の力量を鑑みてみればこの場にいる者など私以外稲穂のようなものだ」
警備隊長「……」
戦士「しかし、勇者。それはあくまで、すべて、仮定の話だよ」
勇者「ほう」
戦士「お前が彼等の命を刈り取ることなど出来ない、私が居るからだ」
勇者「ふむ」
戦士「そして私はお前に殺されることなど無い。あれから今に至るまでの二十年間、鍛錬を欠かしたことはない」
勇者「おじさんになっちゃってもすっごいムキムキですよね貴方。〝剣聖〟なんていう大層な称号まで貰っちゃって実はちょっと感心してます」
戦士「二十年間鍛錬をし続けてきた私と、二十年もの間幽閉されていたお前では、しかしそれでもお前は特別だ、戦いにこそなるだろうが、勝ちはないと思え」
戦士「お前を私が今度こそ討ち倒し、術者の居なくなった哀れなゾンビ共を根切りにして、この馬鹿げた戦争ごっこは終わりにするつもりだ」
勇者「幽閉されていた、とか、他人事みたいに。いや、他人事ですけどよく言うますねーこの子ってば」
勇者「まぁ、公衆の面前ではとても言えませんよね、まぁまぁ、いいですいいです、まぁまぁまぁ、好きなだけ戯言をのたまえばいいですよ」
勇者「それでは、いざ」
勇者が、ボロ布のような囚人服に巻いたポロキレのような布のベルトに差してある剣を抜く。
かつて手に携えた聖剣でもなければ大戦期の冒険中に手に入れた魔剣でも無く、なんの変哲もない数打ちの剣。
ゾンビ兵を調達しているときに回った村々の、小さな小さな武器屋から持って来たのだろう。
対して。
戦士が抜くソレは大戦期後半より今の今まで持ち堪えてきた、四天王の一人に止めをくれてやったこともある、魔王の片腕を落としてやったこともある、彼のために用意された彼のためだけの豪剣にして世界一とも言われる鍛冶師渾身の一作であった。
勇者の身体は、二十年もの間幽閉されていたにしては骨張ることもない、いや、それどころか非常に血色もよく均整の取れた肢体である。
着ているもののせいでその筋肉が如何に発達しているかも見て取れるが、そして、何故かあの頃と殆ど変わらぬ容姿であるがしかし、細い。
戦士の身体は、二十年の歳月があるせいか流石に大戦期よりは多少体格が小さくなったものの、それは誤差の範囲内。
分厚い衣類と鎧越しでもわかるほど、これでもかと言わんばかりに人体に肉を詰め込みバランスを取らせればこうなるという極限の修練が見て取れる肉体。
現代まで積み重ねてきた修練の差と、単純に物の良し悪しという装備の差は、歴然である。
――傍目には、だが。
戦士「!」
警備隊長「――」
近づくために踏み込んで、斬るために振る。
剣術がどうというより、武器を振る上で基本である。その基本動作を勇者が行ったことを認識出来たのは戦士、唯一人であったが。戦士でさえ、反応は出来なかった。
一太刀目は、足払い。
戦士の、人間というよりは野生動物染みた太い足を、鋼鉄が仕込まれた義足を、溶けたバターを削ぐように切り払った。
返す太刀は逆袈裟である。
これによって警備隊長の胴体もまた紙切れのように裂き、続く、三の太刀四の太刀と続く、続く続く、風よりも尚疾く――……
警備隊長が絶命するまでに、戦士の足から血が吹き上がる前に、彼等の周りを取り囲む親衛隊達も全て、斬り殺されたと覚える間もなく、切断された。
勇者「……」
勇者「プフゥ」
勇者「良い汗かきました」
勇者「お水が欲しいところですが、大丈夫。僕、水分不足には慣れてます。にしても、まぁ」
勇者「わざわざこんなところまで来るのに一ヶ月近く掛かるとか本気で思ってたんですかね」
時間にしておおよそ五分後。
勇者が爽やかな笑顔を浮かべ、額に浮かぶ汗を拭いながら一息つく頃には、彼の他には戦士以外そこに生きているものは居なかった。
勇者「ゾンビ兵の作成に時間が掛かった?」
勇者「ノンノン」
勇者「一作目は三日もかかりましたがコツは掴めましたからもう半日もあれば街一つぐらいは軽く」
勇者「ゾンビ兵を連れているから道行に時間が掛かる?」
勇者「ノンノン」
勇者「無理して走らせればこんな整備された街道一週間で走破出来ます。壊れたら直せばいいのです、自動修復機能こそありませんが、作者ここに居るんですから」
勇者「僕の力が衰えた?」
勇者「ハーフノン、ハーフイエス」
勇者「僕はたしかに衰えましたが、ならば力を取り戻せばよいだけの話」
勇者「ただ幸いにもこの身体はあの頃の儘、あの大戦を戦い抜いたあの時の儘、今もこうしてここにある」
勇者「身体は問題ないなら技量の問題ですが、一度は覚えた自転車の乗り方を二十年乗ってないからって忘れる人は居やしませんから」
勇者「覚束なくはなりますがね。それを確りさせるだけなのでたいした時間は掛かりやしませんよ。一週間ちょっとぐらいだったかな」
勇者「ここで問題」ザクッ
戦士「ぐぁ……!」ブシュッ
勇者「問題っつってんですから答える努力しましょうね~戦士~」
勇者「何そっちのけで止血作業して転送魔法使おうとしてんです」
勇者「足ぶった斬られるのは二回目ですからさすがに慣れてるところは褒めますけどね。太腿を穴だらけにされたくなかったら無視しなーいのっと」ズボッ
勇者「ああ、そうだそうだ、忘れてた。ゾンビ兵共、邪魔者は居なくなったんで食事してらっしゃい」ユビパッチン
ゾンビ兵「あ゛ー……」ゾロゾロ
戦士「な!? ま、まて、止めろ! この街にどれだけの人間が居ると……!?」
勇者「はーい、いってらっしゃい。いいですかー。生きたまま食べちゃ駄目ですよー。殺してから食べなさいねー」
ゾンビ兵「あ゛い゛ー……」
戦士「勇者! 止めさせろ! こ、答える! 問題でも何でも答えるから!」
勇者「はい? 出血多量でただでさえ回転悪い頭が余計悪くなってません?」
勇者「別に貴方が答える答えないに関わらず最初からこうしますって」
勇者「戦争ごっこだって言ってたじゃないですか、ご自分で。負けたら滅ぼされる、ごっこにありがちな安っぽい結末で実に申し訳ない、ハッハッハ」
勇者「何話してたんでしたっけ?」
勇者「ああそうそう!」
勇者「ここで問題!」
勇者「僕は今まで何してってあの戦士さん。そんな顔で睨まないで問題に答えないとって話進まないでしょーが!」ザクッ
戦士「ぐぅぅぅっ!」
勇者「わかってます!? 何のかんの人と話せて嬉しいって! 言ってるじゃないですか! 貴方相手でも結構嬉しいんですよ! 話させて下さいよ!?」ザクザクザクザクザクッ!
戦士「ぐ、ぎ、ぎぃぃぃ、っぁ!」
勇者「僕あんまり回復魔法得意じゃないし! あんまり刺してると死にそうだし! 加減して刺すの結構難しいんですよ! 軟弱な人間相手だと尚更ね!」ザクゥッ
戦士「ぎぃぃぃぁぁぁあああああ!?」
勇者「あ、ごめんなさい、狙い違えて金的刺しちゃった」
勇者「そ~れ回復魔法~」パァァァ
戦士「っは! は……!」シュゥゥゥ
勇者「まったく手の掛かる人ですねぇ」ナオシタラー
勇者「もういいです、戦士の馬~鹿~」スカサズサスーザクー
勇者「他の人と話すからもういいです。それに答えの一部これから呼びますし。ええと、そうですねぇ、最後に何か言うことはと……」
戦士「ぐっくぅ! ……ふぅ……フゥ……最後……フ、フフ……殺すということか……?」
勇者「二十年っていうのは本当に、本当に本当に怖いですよね。いやあ、覚えててもらったのはいいことなんですけれどもね」
勇者「思い出が美化されすぎじゃないですか、戦士」
勇者「一人じゃ四天王一人も殺せない男が」
勇者「裏切る筈がないとのほほ~んと油断してた馬鹿一人を、三人掛かりで不意打ちしてようやっと動きを封じるのが精一杯だったうちの一人が」
勇者「よくもまあ、たった一人で立ち向かおうと思ったものですよ。圧倒したみたいな感じで記憶書き換えてません?」
戦士「……くっ」
勇者「正直、いやまあ、嬉しいは嬉しいんですよ、これからも恙無く戦争ごっこ出来ますけどね。ただなんていうか警戒してた僕が馬鹿みたいだな~って」
勇者「僕が警戒してたのはあの時より強くなってる可能性のある貴方達三人であって、こうなったら、もう、ねぇ?」
勇者「……わざわざ彼等蘇らせる必要無かったかな」
戦士「……彼、等、だと? ど、どういう、ことだ」
勇者「ああ、いいですいいです、直ぐに紹介しますから。で、貴方の処遇ですが殺しますけど楽には死ねませんよ?」
勇者「とりあえず~」
勇者「改造しましょう!」
勇者「手駒にしちゃいましょう!」
勇者「僧侶あたりにはかなり効くんじゃないですかね!? 今もまだ続いてるんでしょ~!? 貴方達!」
勇者「今も戦士の右耳についてるイヤリングからこっちのこと伺ってますもんね!? 遠視ですか! 此処に来てないってことは間に合わなかったのかな!?」
勇者「それとも戦士みたいにチョコラテ並の甘い脳みそになってて! 戦士一人で十分だと思ったかな!?」
戦士「な!? い、いつ、いつから気付いて……」
勇者「ハハハハハハ! どっちでもいいですけど! 僧侶! ちゃ~んと見てなさいね!」
勇者「では貴方を改造します! 貴方ほど強い人間を改造するのは僕一人では手に余るのでお越しいただいたのはこちら!」ハイ、ココデテンソウジンッ
勇者「大戦期においてゾンビ兵を作って作って造りまくった、ちょっと認めるのは癪ですけど、流石に僕とは年季の違う人体改造のエキスパ~ト!」
勇者「元魔王軍!」
勇者「の大将軍!」
勇者「ていうか幹部の!」
勇者「土の四天王!」ジャジャーン
土の四天王「うぃーす! おぃーす! ひっそしぶりデッス戦士=サン!」センスフルイッスネ、デモ、ジャジャーン
戦士「んなぁぁぁっ!?」
戦士「つ、つ、つ……!?」
勇者「ハハハハハハハハッ!」
勇者「半端に強いってのは悲しいことですね! 麻酔なしでヤッちゃいますけど痛みじゃ死ねませんよ! 出血多量で何度か死にそうになると思いますけど! そのための回復魔法!」
勇者「僧侶! きちんと! 最後まで! 最後の最後の最後まで! 愛する人がグチャグチャにかき混ぜられるところ見てて下さいね!」
勇者「ハハハハハハァッ!」
勇者「ヒャッホウ!」
勇者「ひゃっほう(裏声)」
勇者「Exciting!!!!(軍団)」
凄惨。この一言に尽きる。
凄惨という一言はこのときのために用意されたのではと錯覚するほどに。
戦士の『麻酔なしの改造風景』は惨たらしいものだった。
※グロ注意
先ず、右腕と左足に残っている肉を肩口と股関節から切断された。
それが終われば皮を剥ぐ、人間の表面にあるべきそれを欠片残さずべりべりと鶏肉の皮を剥ぐように素手で。剥ぎ残しはメスなどの小さな刃物でぱりぱりと。
胸を開き白く太い胸骨や肋骨を取り外し、そのかわりに黒く太い黒曜石のようなもので造られた新しい骨を嵌め込む。
そこから下の内蔵は全て取り払われて、そのかわりにぶよぶよとした紫色のスライムのようなものを流し込むとそのスライムが内蔵の形を模した。
同じような要領で彼持ち前の骨という骨は脊髄と頭蓋骨を残し肉が割かれては全て、勇者・土の四天王ペアが用意した骨へと再置換して縫合されていく。
失われた手足には、ミスリル銀ゴーレムの腕と足が人間大の大きさにまで縮められたようなものが溶接される。
※グロ終了
逐一、勇者と土の四天王が、こうするためにこんなことするんだよ、と、解説を入れてくるがおおよその人間には解説は意味を成さない。
魔法学や瘴気の扱い方などなどの専門的な言葉が並んでいるせいもあるが、直視に堪えない光景というのもあるが、戦士の絶叫が常に木霊しているからだ。
身体強化魔法のうち生命力強化に重きをおいた魔法をかけられて、どれだけ出血しようと際限なく血液は製造され続け心臓は動き続ける。
痛みでショック死することもできない、狂うことがないようにと精神保護の魔法までかけられている、叫び続けて喉が潰れては律儀に回復魔法を掛けられる。
そうして身体の中を弄くり回されつづけ激痛に喘ぎつづける戦士に待っていたのは真っ赤な鎧。
勇者「戦士。戦士~? 聞こえていますね?」
戦士「……」
戦士「コロシテ……クレ……」
勇者「駄~目。聞こえているようなので話をしましょう、その鎧の中に居ると、まあ、まだ、痛いかもしれませんがそのうち痛くなくなります」
勇者「その鎧の中には少々特殊なスライムがどろりべ~ったりと注がれています、まぁ、ちょっと、気持ち悪いかもしれませんけど我慢ガマン」
勇者「ただその痛みが切れているのはスライムが満腹で大人しい時だけ出す分泌液のせいでして」
勇者「空腹になると分泌液は止まり腹を満たそうと貴方の血肉を喰らい始めます」
勇者「そのときの痛みはこの改造作業並です、当然、そう簡単には死ねないよう貴方の身体に細工しておきましたので」
勇者「死にたいならその時にしてください、なに、大体そのスライムが貴方を食べ尽くすまでわずか三日です」
勇者「ちなみにこの改造に掛かった時間は一時間。三日間空前絶後の痛みに悶えながら死ねますよ、ックク」
勇者「ッフフフ、ああいや、失敬失敬。そうなりたくないなら常にスライムを満腹にしておきなさい」
勇者「そいつは簡単。人間の血を注ぎこめばよろしい。ですので当然、魔物達に襲い掛かっても無駄ですし。僕には刃向かえません」
勇者「そのスライムにとって僕は親ですからね、親に逆らわない、いい子なんですよその子」
戦士「……」
勇者「まぁ、こんなかんじで。いかがでしたかね、ご観覧の僧侶。視線の数がなんとなく一人以上に感じるんですけど、誰か居ます、そこに?」
勇者「貴方の愛する彼はこのとおり、よくて戦力外。悪ければこちらの下僕です」
勇者「そして勿論、僕は敵ですし。このとおり、土の四天王も蘇生させましたよ」
土の四天王「敵の敵は味方っていいますシネ。勇者=サンが味方とかテンションマジバク上げ」
勇者「これから、風と、火と、水の四天王。そして最後には魔王をこの世に蘇らせます」
勇者「というか一応、もう、身体と魂はそれぞれ復元済みであとはそれ等を合体させるだけなんですが」
勇者「ちょっと魔王の説得に時間が掛かりそうでしてね。その他三人も主がそんな感じで今合体させると危なくて」
勇者「土さんは意外と簡単にっていうか、戦士の身体イジらせてあげるっていったら即仲間入りしてくれたんですけど」
土の四天王「約束守ってくれる勇者さんマジ勇者=さん! 抱いて! 挿れるなら今っすヨ! あんなイイ身体弄くり回せて今股びしょ濡れっスヨ!」
勇者「あ、ソレじゃ、後でちょっと……」
土の四天王「カマンッ!」
勇者「お世話になりま、いや違くて。えーとなんの話でしたっけ」
土の四天王「カマンッ!! あ、スンマセン、話の腰折っちゃっテ。エート台本どこデス? ここ? あ、ここっス」
勇者「台本とか言っちゃ駄目です、出したらダメです、緊張感が、ああいや、改造風景生中継したからまだ保ててます?」
勇者「ま、ま、ま」
勇者「兎も角、気を取り直して」
勇者「最悪、僕と土さんだけでの進行になりますし、もうぶっちゃけ、それで十分なんですけど世の中何があるか分かりません」
勇者「念には念を、って、やつですよ」
勇者「さぁて、貴女は、人類は、どうしますかね」
勇者「新しい勇者の出生でも待ってみますか、無駄だと知りつつ抗いますか、それとも、諦めますか?」
勇者「どうするか楽しみにしてますので是非お答えを聞かせて下さい、それでは、それまで、ごきげんよう」
勇者「ヒャッホウ」
土の四天王「ひゃっほーゥ! 蘇って良かッタ! いいコトだらケェェェェ!」
235 : 以下、名... - 2015/06/07 06:19:00 .mf5WA3g 138/4221時間とは手際いいな、さすがだ
てか台本まで用意してるなんてノリノリでお楽しみだなーw
勇者と土さんがよろしくやってるあいだに裏声さんはもらっていきますヒャッホウ!(乙)
237 : 以下、名... - 2015/06/07 12:28:45 APeepA6A 139/422乙ひゃっほう!
ところで、戦士にへばりついてるスライムに対して、一定間隔でわざと戦士が軽く自分を傷つけてスライムに血液を供給してたらどうなりますか?
一気にスライムに襲われるならいいんですが、大人しくなったら裏技完成しちゃうなって不安になりました。
あと、1日辺りの与える血液量と与える間隔を教えて下さい
――おまけコーナー
勇者「やってまいました突然唐突オマケコーナーのお時間!」ドンドンパフパフー
勇者「司会はこの僕勇者SSの中でも比較的珍しいと評判の! 終始目にハイライトがない系アイドル! 勇者と!」
勇者「勇者様が土の四天王とセッ○スしている間に>>235さんに身請けされそうな私がお送りいたします(裏声)」
勇者「さてこのコーナー何をするものかと言いますと!」
勇者「実は何も考えていないのですよね(裏声)」
勇者「Exactly!!!(軍団)」
勇者「実は何も考えておりません! 」
勇者「本編同様まったくもって行き当たりばったりです! 本編とかもうタイトル以降ホンット何も考えず! 考えないまま気が向くままに始めて早二月ときた!」
勇者「こんな自転車操業を二ヶ月も続けている本『魔王を倒してから、あれから二十年!』スレッドにご声援下さる皆々様に足を向けて寝られません(裏声)」
勇者「いつもいつもありきたりにありがとう、ありがとうと言い続けて芸がなく心苦しいですが私共一同からも御礼申し上げます(裏声)」
勇者「Thank you!!!(軍団)」
勇者「ノルマもこなしたし! さて! どうしましょうか!」
勇者「ノルマとか言わないで下さい勇者様(裏声)」
勇者「とりあえず>>237さんの質問にでも答えておきましょうか!」
勇者「とりあえずは余計ですがお答えさせて頂きます(裏声)」
勇者「戦士にへばりついてるスライムに対して、一定間隔でわざと戦士が軽く自分を傷つけてスライムに血液を供給してたらどうなりますか?」
勇者「とのことですがご安心下さい! 自分では自分の身体を弄れないよう義手が邪魔してくれますし暗示もかけてあります!」
勇者「それを許しちゃうと自殺しちゃうかもしれませんからね! 実際そんな勇気があるかどうかは別として!」
勇者「1日辺りの与える血液量と与える間隔を教えて下さい」
勇者「という質問も来ていましたがこれはずばり僕のさじ加減次第! 戦士にはスライムたんが自主的にお腹減ったり満腹になるみたいな言い方しましたけれど!」
勇者「分泌液出すのも齧るのもこっちでイジれます! 戦士が戦場に出ている間はずっと齧らせっぱなしにでもしとこうかと思ってます!」
勇者「次!」
勇者「土の四天王さんはおにゃのこなのか?」
勇者「土の四天王さんは女の子というには歳がいえなんでもございません! おにゃのこです!」
勇者「種族は知りませんが人間型のモンスターですね! 外見は大体僕より五か六ぐらいは上ですかね!」
勇者「褐色! 銀髪! ムチムチボイン! 目にクマ! そのせいで僕と目付きちょっと似てるんで僕的には好みのタイプ!」
勇者「大体お分かりかと思われますが改造マニアです。彼女の手にかかった人間は数知れず、ついでに、魔物も数知れず(裏声)」
勇者「敵味方問わず改造してしまう困った魔族さん!」
勇者「戦士さんのようなとても良い素体を手に入れた日には興奮のあまりお股が濡れちゃうホント困ったさん(裏声)」
勇者「これが役に立たないのなら兎も角! 結構有用なものを作るのがこれまた厄介なところでゾンビ兵などは代表例ですね!」
土の四天王「自分が軽いと仰っていた方がいらっシャいましたけれとちょっと違うのデース。魔族魔物の類は基本的に強い者こソ正義でシてー」
土の四天王「もシくは自分の欲求を最大限叶えてくれソうなお方についていく傾向があり」
土の四天王「我等の頂点たる魔王サマより強くて、しかも極上の検体、戦士=サンとか、を提供してくれる勇者=サンは自分的には超★優良物件」
土の四天王「ホイホイついていっちゃいまスし股も開こうってもんでス! 他の三人が魔族らシからず魔王サマに義理だてシスぎなだけなのデス」
勇者「とのことです! 僕的にはこんな美女とズッコンバッコンできれば正直どうでもいいんですけどね!」
勇者「譲れないところがある様子でしたのでご出演頂きました。ところで勇者様、どうでもいいとはぶっちゃけすぎです(裏声)」
勇者「すみませんでした!」
勇者「ところで話すことがなくなってきたので本おまけコーナーは今回ここまで!」
勇者「唐突に始まり唐突に終わるスカスカなコーナー、おまけコーナー、第二回目は未定です(裏声)」
勇者「少々また立て込んでいて本編の制作が遅れていますが! どういう形にせよ完結を目指し失踪はしない予定ですので!」
勇者「引き続きどうぞご愛読を宜しくお願い致します(裏声)」
勇者「それではこれにて!」
勇者「See you again!!!(軍団)」
勇者「そして!」
勇者「ここからは(裏声)」
勇者「ちょっとだけ本編のコーナー! はっじまーるよー!」
勇者「ヒャッホウ!」
勇者「ひゃっほう(裏声)」
勇者「Wonderful!!!(軍団)」
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――勇者と村娘が出会ってから、三ヶ月後。魔王城――
勇者「ちょっと戦士強くし過ぎたかもしれません!」
勇者「こっちに逆らわないような工夫に加えて色々と各種能力増強もやりましたが!」
勇者「まさか一直線に走っていって要塞正門から裏門までぶち抜くとか! 鎧の巨人かっつーの!」
勇者「僕もちょっと試してみたんですけどアレ鋼鉄化の呪文かけとかないとメチャクチャ痛いですね!」
土の四天王「いやメチャクチャ痛いで済む勇者=サンもどうかと思いまスよ。鋼鉄化の呪文もなシニ……」
土の四天王「戦士=サンなんかあの鎧着ててもアレやった直後負荷掛かり過ぎて瀕死になってたノニ、あの鎧常時鋼鉄の魔法掛かってる並の防御力なの二」
勇者「勇者に不可能はないッ! それにそのおかげで二つもの砦を一夜にして攻略出来たんですしオッケーオッケー!」
土の四天王「いやいヤ、その気にサえなれば九日ぐらいで世界征服出来るけド、それじゃつまらないからッテゆっくりやろうッテ」
土の四天王「言い出したの勇者=サンじゃないスか。何侵攻開始九日目で人類が誇る大要塞を一気に二つも攻略しちャッテんでスか」
勇者「だって! 戦士がスゴいことするから! 我慢できなくて! 出ちゃったんです!」
土の四天王「勇者=サンのスタートダッシュ(出撃)でうちの陣営がヤバイ」
土の四天王「勇者=サンが率いてたゾンビ兵の八割がスタートダッシュの衝撃で爆散したンでスけド」
勇者「直しゃいいんですよ! でもすみません! 次からはきちんと気をつけますんで!」
勇者「……」
勇者「うっ」
勇者「ふぅ」
勇者「落ち着きました」
土の四天王「?」
土の四天王「あっ」
土の四天王「気が付かなクて申し訳ありまセン、ムラムラしてまシタ? 今からデ良ければお口でジュポジュポしまスヨ」
勇者「えっ。あっ。いやっ、おおおお構いなく」
土の四天王「下のお口ノ方がお好ミでシタ? いいでスよ、下のお口デジュポジュポ。今から脱ギまスので……」
勇者「別にムラムラっとしてそういうこと言ってるわけじゃなくてですね! 冗談です! はい!」
勇者「……」
勇者「土の四天王さんって一度付いていこうって決めたらかなり尽くすタイプなんですよね」
勇者「魔族の特徴なのかもしれませんけど。他の四天王達その他大勢もなんのかんのそれこそ死ぬまで魔王に尽くしたわけですし」
勇者「ドギマギするわ」ウカツニシモネタイエマセンヨ、コレ
土の四天王「はイ?」
勇者「いえなんでも。あ、でも、やっぱりあとでちょっと……上のお口と下のお口で……えへへへ……」
土の四天王「はイ、だから、シテもいいッて言ッてるじャないでスか」
勇者「ま、ま、ま、しかしまぁ」
勇者「戦士ったら可哀想なぐらい必死ですねぇ」
土の四天王「正直ちョッとぐらい抵抗されるもンだと思ってたンで色々用意しテたンですけれどネェ」
勇者「地位や名誉のために僕を裏切る人間ですからね、自分の命を守るためならなんだってしますよ」
土の四天王「何が驚いたッテそれでスヨ。まッさか勇者=サン裏切ッてたトハ……」
勇者「一日に一度は四天王の何方かに言われます」
土の四天王「魔王様なンて最初キレちャッて戦士=サンの下半身吹ッ飛ばしちゃイましタからネ」
勇者「上半身ふっ飛ばされたら修理出来なくなるところだったので危なかったですね、肝冷えた」
勇者「魔王こういうのホント嫌いですよね。いやあ、しかし、この身の上話のおかげで魔王軍再結成が成し得たので結果オーライ……」
勇者「……そう思うと世界滅ぼすために世界救う旅してたことになるんですかね僕」
土の四天王「ハハハ、ウィット効きすぎテル人生ですネ」
勇者「壮大なマッチポンプですよね」
土の四天王「世界規模でネ」
勇者「世界征服終わったら何しましょうか」
土の四天王「魔王様は魔族の国ヲ地上に打ち立てる気でいまスけど、勇者=サンはなにかプランは?」
勇者「ないんですよねぇ。いやね、人間界を滅ぼしたあとは魔界にでも攻め込んでやろうかとは思ってたんですよ」
土の四天王「聞き捨てなラない台詞が飛び出してルンですけド。どうゾ、続けテ」
勇者「人類憎し世界憎し、皆皆滅んじゃえーってね」
勇者「けどねー気紛れでこうしたら人間嫌がるだろうなーと思って魔族復活させたワケじゃないですか」
土の四天王「簡単に言ッてまスけど普通復活サせようと思って復活サせラれるものじャアりまセんからネ。あァいャ、スみまセン、どうゾ」
勇者「利害が一致しているとは言え、復活までさせて、協力もしてもらってる魔族を、それじゃあ用が済んだら皆殺し!」
勇者「って、ねぇ、人としてどうよって感じですし」
土の四天王「ア、よウやく安心できル台詞ガきまシたヨ」
勇者「ええ、そういうわけですので、魔族は免除かなぁって」
土の四天王「安心シまシた」
勇者「なんなら、魔族の国造りを手伝ってもいいです、そのあと、そのあとか、どうしたものですかねぇ」
勇者「天界にでも行きますか」
土の四天王「行けるんですカ」
勇者「さぁ? 試してみないことには分かりませんけどね。行けたら女神には一言物申さなくてはいけません」
勇者「加護にはずいぶんと助けられていますから殺しゃしませんが文句の一つぐらいは言ってもいいでしょう」
土の四天王「言われてみるトですネ」
勇者「はい?」
土の四天王「勇者なんデスから勇者=サンは女神の加護ヲ使えて当たり前だと思ッてたンでスけれド」
勇者「ええ」
土の四天王「人類滅ぼそうとスるワ、私達魔族に協力なンてしちャうわッて色々やッてるのに女神の加護ッて有効なンですネ?」
勇者「ああ、そのことですか」
土の四天王「女神=サンは勇者=サンのやること何でもオッケーみたイナ感じでス? 人類が勇者=サンに滅ぼされるの自業自得でスし」
土の四天王「魔族は協力じャなくて隷属だからオッケー? 実際魔族の現状は勇者=サンの奴隷みたイなもンでスシ
土の四天王「過去には魔物使いの勇者も居たと聞イていまスよ」
勇者「なにそれ魔物使いの勇者とかこっちが初耳なんですけど」
勇者「あー、えー、そうですねぇ。魔族との協力云々のそれは別に明確に駄目って言われてるワケじゃないんですけれど」
勇者「グレーってかんじではありましたね、一度女神様についてその事お聞きしたことがあったんですよ、僕」
土の四天王「まともだッた頃に?」
勇者「まともだった頃に」
勇者「魔物だから、魔族だから等しく悪ってワケじゃないでしょう。善性の魔物や魔族が居たらどうしたらいいですか、と」
土の四天王「ほう、それで、女神様はナんとお答え二?」
勇者「障害となるもののみ排除しなさい、とだけ」
勇者「確りと答えては頂けませんでした。納得いかずに詰めたんですけど酷くお困りになられましてね、仕方ないので聞くの止めました」
勇者「なにかこう、天界のルール的なあれでそれがあるのかもしれませんね。あ、ただ、人類滅ぼすはドアウトです。スーパーブラック」
勇者「女神様のご加護めっちゃ離れようとしてます」
土の四天王「アレ? やッぱリ? でも勇者=サン、今も余裕で使えてまスよネ。使えてるよウで使えテないトカ?」
勇者「いや、簡単な話でして。離れようとしてる加護を僕が全力で僕の身体に抑え込んでるだけです」
勇者「抑え込むのに殆どの魔力を費やしているので今まともな魔法使えないんですよねぇ」
土の四天王「今明かされる衝撃的すギル事実なンですけレど!?」
土の四天王「アレ!? おかしいでスよ!? ゾンビ兵は兎も角とシて私達の復活には莫大な魔力要りまスよね!?」
勇者「要りますね」
土の四天王「でスよネ!? 一山いくらで復活さセられる程私達安くあリませんヨ!?」
土の四天王「待ッて待ッて、ウェイウェイウェイ……」
勇者「結構簡単ですよ、いや、方法は簡単ではありませんが発想は簡単でしたね」
勇者「自分の魔力が使えないなら人の魔力を使えばいいじゃない」
土の四天王「ウェイ」
勇者「所謂……元気玉ですよーこれー!」
土の四天王「ウェイ」
勇者「世界中の皆よおらに元気を分けてくれー! つって! 僕に自主的に協力してくれる生物なんて皆無ですけど!」
勇者「強制的にちょっと拝借させていただいております!」
土の四天王「ウェイ」
勇者「女神の加護はそれはもう便利でしてね! この世界で活動するにあたって大抵なんとか出来る技能が盛りだくさん!」
勇者「僕って結構いい声してません!?」
土の四天王「ウェ……あ、はい、まァ、いイ声だと思いマすヨ。ちょット面に合ッてまセンけどハスキーボイスで」
土の四天王「あレ? でも前お会いした時ハそんな声じャなかッたでスよね、でも私とシては今のほうがステキだと思いマスよ、好みでスし」
勇者「面にあってないは余計ですよ! あとこれは投獄された時に叫びすぎて喉が潰れては再生して叫んで潰して再生してたらこんな感じに」
勇者「……」
勇者「うん?」
勇者「え? 好み? こ、好みかぁ……えへへへ……。……そういえば魔王も結構バリトンボイスでしたね……おソバ好き同士ですしいい奴ですよ彼は……」
勇者「僕の境遇にあれだけぶち切れてくれたのも彼だけでしたからねぇ、あぁ、いや、違くて。いや、今の声も気に入ってますけどそうじゃなくてですね」
勇者「僕の声にはちょっとした力があります」
勇者「声質がいいとかの問題でなくて、生物相手に若干安らぎというか、なんとなく言うこと聞いてあげたいなーって気分にさせる魔力が含まれてます」
土の四天王「ほう。あレ? とすると私が勇者=サンの声好みなノもそのセイ?」
勇者「いや土さん元々低い系の声好きみたいだし、土さんぐらい力のある方だと『あーなんかいい感じの声だな』ぐらいにしか効かないんで」
土の四天王「効いテはいルンですネ、構いまセンけど」
勇者「ありがとうございます、まぁ、つまり、常にちょっとした魅了の魔法放ってるようなもんなんですよね。これオフにはできないけど強弱は付けれるんですよ」
勇者「これは、二十年振りにお外に出てきて鍛錬し直してる間にはじめて気付いたんですけど、最大レベルにまで跳ね上げると世界中に僕の声が届くみたいですね」
勇者「僕自身が強すぎるから最大までいくとこうなのか」
勇者「元々最大レベルまで引き上げるとこうなのかは知りませんけど」
土の四天王「アー。そレでちョッと魔力を世界中かラ掻き集めテ……」
勇者「そゆことです、一人一人、一体一体から取れる魔力なんて微々たるものですがね、あくまで言うこと聞いてあげたいなー程度の効力なんで多くは取れません」
勇者「が、それでも世界中の生物からほんの少しでも取り上げて集めれば莫大といっても過言ではない量ですよ」
勇者「取った人から気取られる心配もないようですしね、現に何度かやってみたけど気付いてる人いないっぽい」
勇者「元仲間達が全盛期だったらあるいは、ですけど、今ダルンダルンですしね、彼等」
勇者「衰えた仲間たち、この二十年ですっかり色々と忘れちゃった人類、対して全盛期の僕と魔王軍と、ついでに全盛期より強くした戦士」
土の四天王「勇者=サンのご意向でゆッくりヤッてまスけれド、二十年前のノウハウもあルしヤろうと思えばさッと片付く戦力差ですヨ~」
勇者「あの時は魔王軍も手探りだったからゆっくりとした侵攻となりゆっくりしている間に僕という勇者が出現し、彼等という仲間が出てきて、覆しましたが」
勇者「今回はどうなるんでしょうね、また、新たな勇者が生まれるのか、その彼あるいは彼女にはどれだけの力が有りどれだけの加護が与えられるのか」
土の四天王「わざわざ勇者=サンの身体から離れヨうとシていルのは、こンな不埒な輩には持たセテおけないとイウ規律なのカ」
勇者「換えが効かないから僕から引剥がして他の勇者に与えようとしている算段か、こちらだと思いますがね」
勇者「女神様はこの世界を司ってあられる方ですけれど、この世界に莫大な影響をポンポン与えられる程の力は無い。そもそも勇者自体、魔王がねぇ……」
土の四天王「その女神より強いから勇者を造らざるを得なかったワケですしね~」
勇者「見ものですよこれは」
土の四天王「イイ趣味してマスよ、勇者=サマ」
勇者「ハッハッハ」
土の四天王「フハハハー」
勇者「ひゃっほう!」
土の四天王「ひゃっほぉぉぉう!!」
――所変わって――
彼女は『聖女』と謳われていた。彼女は僧侶として人類の危機に立ち向かった。
勇者と共に魔王軍に立ち向かい魔王を討ち滅ぼした者たちの一人であった。勇者以外では女神の声を聞けるただ一人の人間だった。
魔王戦役の折には、顔を焼かれ喉を潰されて無残な傷跡を付けられてしまったが、
顔を隠して声は剣聖・戦士を通して、常に民の希望として在った。
飢える者には食糧を。傷付いた者たちには治療を。奴隷があれば彼等を平民として生きられる地位と仕事を与えた。
目についた不幸には片っ端から全力で当たってきたし、それこそが女神の使徒としての使命、それこそが女神が己に与えた言葉であると訴えた。
聖女として成り上がった経緯も、傷を与えられた原因も、虚偽であったが。やってきた功績は紛れも無く真実だ。
勇者を裏切って国王から聖女としての地位を得て、女神の言葉はあれ以降聞こえなくなってしまったが。弱気を助けてきた所業は真実だった。
女神「魔王でさえ私が及ぼせる力ではどうしようもできなかった。今の勇者も、やはり、そのようです、私が及ぼしうる力を大きく超えてしまっている」
女神「加護は回収できません」
僧侶「――」
女神「彼は私の言葉にも最早応えてくれることはありません。彼が私の言葉に応えてくれるのであれば、協力してくれるのであれば、あるいは」
女神「どうして協力などしてくれましょうか、私と貴女達は彼の目には等しく裏切り者として写っているというのに。そしてそれは、事実です」
女神「貴女達は地位に惹かれ、どこかで劣等感もあったからこそ彼を裏切り封印した」
女神「私もまた其れが人類の平和のためであるなら、彼が争いの火種になるのならば、そう思い封印を見過ごしました」
僧侶「――」
女神「私が勇者に与えられる加護とは、あの勇者に与えている加護」
女神「常に全盛期として在れる不老の肉体も、いかなる環境下でも生きられる強靭な肉体も、莫大な魔力のキャパシティも、死ねば蘇生される不死性も。他の全ても。
新たな勇者がそれを得られる可能性はないでしょう」
僧侶「――」
女神「そうです、僧侶よ。新たな勇者は生まれたとしてもあの勇者よりも大きく劣る」
女神「僧侶よ。どうしようも、ないのです」
二十年前のあの日以来から降りてきた僧侶への女神の声は、勇者の予想にぴたりと嵌った、人類側への絶望の一手であった。
――それからどーした――
王「……そうか。新たな勇者ではあの勇者には勝てぬか」
大臣「二十年前の悪夢はよりタチが悪くなっておりますな、しかしそれならば、王よ」
王「うむ、それならば別の手を講じるまで。二十年前はたまたま女神様がご助力下さった、いわば偶然」
王「此度は偶然には頼るまい、頼れまい、あの塔に押し込めておけば死んでくれるかと期待していたが」
大臣「死んでくれれば万々歳でしたが、死んでいないのならば、時間を稼げた、と、思うことに致しましょう」
王「我等も忘れていたかったなぁ、戦士達のようにな」
王「しかし、忘れていたにせよ、忘れていたかったにせよ、あの時用意したプランはまだここにある」
王「此れを元手に、あのときのノウハウを元手に一つずつ一つずつ、片付けていこうか。何、絶望を味わうのは二度目だしな、若干気楽でさえあるわ」
王「まずは、戦士からだな。戦士め、あの、大馬鹿者め」
王「都合のいいように忘れているならまだいいにして、都合よく記憶を改竄しているとは、恐れ入った」
王「勇者が居るなら、せめて僧侶と共に行けとあれだけ言い付けておいたというのに一人で行って返り討ちにあって寝返るとはな」
大臣「ええ、困ったものです、が、準備は整えております。何分『施術』したのが一昔前でございますので少々準備に手間取ってしまいましたが」
大臣「次にこちらに侵攻してきたときに発動させられます」
王「宜しい、それでは、そのときに。……あの、大馬鹿者め。大人しく従っていれば生き永らえたものの、大馬鹿の馬鹿者め」
王「魂の友とも言えるような勇者を裏切っておいて、我等が信用すると思っているのなら、大間違いだということを教えてやる」
――そして一、二週間後のこと――
勇者「あ~ビックリした」
勇者「戦士がいきなり爆発しました」
勇者「結構な爆発力でしたね、小さいとはいえ要塞が丸々一個と連れてきてた兵の七割ぐらい吹き飛んじゃいましたよ」
勇者「土の四天王さんも重傷ですし一緒に修理(なお)さないといけませんね、戦士は、もうダメかな。欠片しか残ってない」
勇者「爆心地にメッチャ近いっつーか戦士の横にいた僕と魔王もちょっと焦げちゃいました」
魔王「いや、驚いたなアレは」
勇者「ねー」
魔王「うむ」
勇者「まぁ、ちょっと焦げただけってのも驚きましたけど。相変わらず凄いですね、そのマント」
魔王「フ。伸縮自在、縦横無尽、物理魔法共に80%カットのこの魔王お手製のスーパーマントなればこその成果よな」
勇者「……魔王戦役の時はそれにどれだけ苦労させられたやら……あの当時はまさかこれに護られる日が来るとは思いませんでしたが」
魔王「フフフ。我もこのような日が来るとは思ってもみなかったが、ところで、苦労していたか、貴様? 何やら黒光りする手で剥ぎ取られた記憶しかないのだが」
勇者「コレの開発にどれだけの苦労と人件費が掛かったと思ってるんですか。しかもリスクが半端ないんですよコレ。攻撃外したら僕死んじゃう、人を呪わば穴二つとはよく言ったもので」
魔王「……呪殺的なものなのか? ……そちらの方面はむしろ我の得意分野なのだが。待て、そうなると呪法の腕は我以上なのか」
勇者「いやいや。そのムチャクチャな性能のマントを破るためだけに開発して破るだけの術式なんて貴方、開発しないでしょ」
勇者「貴方の発想を僕がその時上回っていた、結果として出来たのが呪法系の術式だった、というだけのハナシです」
魔王「ふーむ。なるほど、応用性の欠片もない術式など滑稽なものだが、事実我はそれで一つ切り札を失っているからな」
魔王「たまにはそういった狂気の沙汰染みたこともやってみても良いかもしれないな、まぁ、それは追々検討するとして」
勇者「ええ」
魔王「一応、念の為に聞いておくが、貴様と土の四天王の仕業ではあるまいな」
勇者「そうでーす、と、言いたいところですが、残念ながら違いますね」
魔王「そうと言われたらげ、激おこ? するところだぞ」
勇者「いや、あの、たしかに僕若いですけどもそれに合わせて無理に若者らしい言葉使わなくていいですからね」
勇者「それにしても、土さんと二人がかりで身体のあっちこっち弄くり回したってぇのに、起動するとはたいしたもんです」
勇者「爆発する直前に腰骨あたりが光ってましたね……あそこに隠されてたのか、いや、やるじゃないですか」
勇者「こんな芸当が出来るのは、魔法使いぐらいのもんかと思っていましたが。思ったより世界は広いんでしょうかね?」
魔王「……何のかんの、仲間を未だ信頼しているのではないか?」
勇者「……はいぃ~?」
魔王「そう不愉快そうな顔をするな、少し聞け。我等はこの世界どころか、魔界、天界迄含めて間違いなく最強の存在であることは間違いはない」
魔王「このマントがなくとも、流石に少し焦げるだけでは済まんだろうが、精々火傷を負うぐらいのものだ。あれぐらいでは四天王すら倒せん」
勇者「土さん重傷食らってますけど。まぁ、彼女はどっちかっていうと戦闘能力より改造能力で抜擢されてますから仕方ないですけど」
魔王「ようは、化け物であるわけだ。我等も、我等と戦って勝利した貴様等も。だが。そのせいでだ、仲間を特別視し過ぎているのではないか?」
魔王「裏切られた経緯もあろう、共に戦ってきた経緯もあろう、色々と複雑な感情についてカウンセリングしてケアしてやるつもりもないが多少の詮索は許せ」
魔王「仲間だけが我等と対抗しうる唯一のものだと認識してはいないか。認識から外してはいないか、お前達が現れる前から、人類は我等とそれなりには渡り合っていたのだぞ」
勇者「渡り合ってたって。褒め過ぎじゃないですか、ジリジリジリジリ、ジリープアー(徐々に不利)になっていただけで……あー……まぁ……」
勇者「たしかに、まぁ、持ち堪えてたところはありますし。直接戦闘は兎も角として、他で僕達より優秀な人も居ましたけどもー」
勇者「……うん? ああ、丁度良かった、詳しいところを聞きたかったのですよね。魔法使いがやったのか、他の誰がやったのか」
勇者「他の誰かってのは誰か。そういえば魔法使いの現状がどうなっているのか戦士に聞きそびれていたのですよ」
勇者「聞こう聞こうと思って、ほら、木っ端微塵になっちゃいましたからグッドタイミングでしたよ」
勇者「というわけで、詳しく聞いていいですかね?」
勇者「貴女様が、人道的にそうはしそうですけれど世界の理的なアレコレでそう出来るとは思えませんし」
勇者「貴女もあの王のために恋人の身体発破するなんていうクチではないでしょう、僕は裏切れても恋人の戦士をどうこうするってのは、まぁ、わかりませんけれど」
魔王「なんだ、藪から棒に」
勇者「違う違う、貴方じゃなくて、あそこ、ほら」
魔王「どこだ、西か?」
勇者「もうちょい東」
勇者「隠身の魔法はホント便利ですよね、現役時代は大層お世話になりました。魔王城突入の時にも役に立って、今だってほら、魔王まだ見えてません」
勇者「もうちょっと近くによってもらっていいですか~僧侶?」
勇者「それと、そちらもまた随分、お久しぶりにございます女神様」
魔王「……おお、見えたぞ。相変わらず見事な隠身であるな、いやしかし、当時より見えにくいのはどういうワケだ?」
魔王「ああ、いや、良い良い。そうか、女神の力を付与されているのか。腐っても女神の使徒よな、勇者程でないにせよ多少なりとも扱えるのか」
僧侶「……」
女神「……」
勇者「で?」
勇者「なんだか嬲り殺されに来たって感じの顔じゃあございませんし、女神様までお連れしてどういうつもりですかね」
勇者「土さんを戦闘不能にしたのは見事ですがぁ、残念、今日は敵情視察に見ての通り魔王が来てますからして」
勇者「絶望通り越して笑える状況ですよ、今、ねぇお二方?」
勇者「ひゃっほう」
魔王「……」
勇者「魔王も一緒に!?」
魔王「……ひゃーほー?」
勇者「……ごめんなさい、無茶を言いました。頑張ってもらっちゃってすみませんでした……」
魔王「……うむ」
女神「……」
僧侶「……」
魔王「……」
勇者「……」
勇者「まあ、気を取り直して、改めてご用件をお伺いいたしましょうか」
勇者「戦士の時も言いましたが、ああ、僧侶は見てましたよね、その後ショッキングな映像を生中継したので忘れちゃいました?」
勇者「説得には応じません、投降もしません、説得もしないし投降も受け付けません、皆纏めてゾンビ兵になるか、我が魔王軍の餌食となるか、自殺でもすればいいですよ」
勇者「楽に殺してあげられるよう努力はいたしますので出来る限り抵抗はしないように、まあ、一般の皆々様の話ですけれどね、当事者は別です、戦士も僧侶も魔法使いも」
勇者「王城の王も、重臣たちも、楽には死なせませんから覚悟だけはしておくようにお願いします。自殺? HAHAHA、蘇らせます、そんでヒドいことしたあとぶっ殺します」
女神「勇者」
勇者「はい?」
女神「お願いです、どうか、このようなことはもうお止め下さい。貴方の行いは、きっと、貴方さえも救わない。今なら――」
勇者「あれ、女神様、話聞いてました? 聞こえてないはずないですよね? 説得には応じないと言ったばかりですけど」
勇者「大体女神様ご本人も半分以上諦めてらっしゃるでしょう」
女神「私が貴方に掛けられる言葉がないということはわかっています。けれど、言わねばなりません、例えこの生命が尽きようと!」
女神「例え無残に殺されるだけであったとしても言わねばなりません。それが、あの時貴方を救えなかった責任のとり方です!」
勇者「救えなかったってなんですか、救えなかったって。救おうとしてたみたいなノリで通そうとされても困るんですけど」
勇者「救わなかった、って、素直に言ってくれればいいのに」
勇者「僕がこうなるのを放っておいたんですから、僕がこのまま何をしようと勝手のはずですよ、とはいえ、まあこんなんなっても現代の女神の第一の使徒」
勇者「一応聞きましょうか。あ、それと、誤解がないように言っておきますけど僕は貴女を殺しゃしませんし平手打ち一つしませんよー女神の使徒ですしー」
女神「……お慈悲に感謝致します、勇者」フワッ、ストッ
魔王「ほう! 我らと同じ大地に足をつけ翼を収めるのか! 滅多に見れるものではないな、勇者よ!」
勇者「僕、女神様と同じ目線で語るの困るんですけど、使徒として。ほら僧侶跪いてますし」
魔王「固いことを言うな。女神の使徒ではあるが魔王軍総帥でもあるのだから堂々としておけ。しかし、良く下りる気になったものだな、女神」
魔王「この世界に直に降り立つということは、まさしく我らと同じ世界に触れるということ、天界暮らしには今の世の空気はさぞ苦痛だろうに」
魔王「……まあ、下りてこないまま大上段からこれ以上物を言うなら我が吹き飛ばしてやったがな」
勇者「勘弁して下さいよ。貴方ぐらい力あると浮いたままの女神様でも殺しかねないんだからー」
勇者「止めなきゃいけない立場わかってくださいよーしょっぺぇー」
魔王「ハハハッ! よくそれで、女神の第一の使徒、とかなんとか名乗ったものだな勇者」
勇者「魔王軍総帥でもありますんで、あれ、というか総帥貴方ですよね」
勇者「……あぁ、使徒だから? 体面気にしてくれたんですね、魔王軍総帥なら跪かなくとも堂々と話したって問題無いだろう、と」
魔王「物の弾みで言ってしまっただけだ、我等は人間のように体面だとか義理などどうでもよいのだ」
勇者「魔王軍総帥は当然我だって言い直せばいいのに言い直さないし、まったく、アンタ方どんだけ僕の涙腺刺激すれば気が済むのか」
魔王「知るか、そんなもの、物の弾みだと言った、くどいぞ勇者」
勇者「まぁ~。お言葉に甘えますけどぉ~。勘弁して下さいよ、そのうち泣いちゃいますよ、そして涙で脱水症状起こして死にますよ」
女神「貴方は、その魔王にこの境遇に付け入れられているだけなのですよ勇者」
女神「その者は魔王、魔界に君臨するために、ありとあらゆる手段を画策してそう成った者、魔の権化。貴方はそんな者に惑わされているに過ぎません」
魔王「ほう」
勇者「はぁ」
女神「貴方の強大な力を己の側に引き入れさせれば勝利は確実となります」
勇者「でしょうねぇ」
魔王「そうだな」
女神「配下の命など己が目的を達成するための道具程度にしか見ない男です、それは」
魔王「間違いではないな」
勇者「間違いないですね」
女神「このままでは、貴方は、貴方は何れ、その男に使い殺されてしまう!」
勇者「マジですか」
魔王「初耳ですが」
女神「貴方ほどの者にそんな末路があってはいけない! 考えてもみてください! その男の非道さを貴方は何度も見てきたではありませんか!」
魔王「見せたな」
勇者「見ました」
魔王「人間の街や村を見つけ次第殺し尽くし破壊し尽くそうとした」
勇者「女子供、老若男女、有象無象の区別なく我の悪意は許しはしないわ的なノリでした」
魔王「たまたま捕えた人間を盾に括り付けて肉壁に使った」
勇者「超攻撃しにくかった。したけど」
魔王「しにくかったのか? 結構ためらいなく攻撃してきたように見えたので当時は驚いたものだ、そうか、あれで一応、躊躇してたのか」
魔王「で、さらにそういうことにも使えそうにない、盾に括り付けて移動している間に死にそうな人間は餌にした」
勇者「人喰い植物とかね、土の四天王さんの作品なので魔王関係ないです、ああアレ一応アイディアは貴方か」
魔王「デザインがダサいし古いしダサいし機能美・造形美敵にまったく美しくないと駄目だしを貰った……あれには落ち込んだな……」
勇者「あの人はあの人的機能美か造形美どっちか満たされていないと極端に辛口ですよね、けどダサい言い過ぎでしょ……ダサいけど」
魔王「……フ。……そうか……。……そうかぁ……ダサいかぁ……」
勇者「ごめんなさい」
魔王「良いのだ……」
女神「どうして王や貴方を裏切ろうとした仲間達の反逆心がその男の手によるものでないと言い切れるでしょうか!」
魔王「言い切れん、あの国の王には一度降伏を勧めた折に面通しはした、勇者の仲間達には決戦の折に長く触れ合っていた」
魔王「あの王は曲者の類ではあるが所詮は人間、人間一人の心を惑わすのはワケもない」
魔王「勇者の仲間とはいえ、人の臨界点だったとはいえ、所詮人間である、時間を掛ければ出来ぬことはない」
女神「証拠は有りません、その男も一見認めたように見えて、そう具体的な可能性を指し示すことであえて己の目的から意識を逸らされるための非道な話術!」
女神「目的を達成できるのならば義理や体面などはどうでもいいのです! 見なさい! 貴方や私達も騙されました、王ともあろう者がまさか、己の死を詐称して……」
女神「部下を見捨て、長き期間をおいて、再び貴方の目の前に現れているその悍ましき醜悪性がそこにある! 信用してよいものなのでしょうか!」
勇者「へぇ」
魔王「ほう」
女神「……ゆ、勇者?」
勇者「なんでしょう?」
女神「で、ですから、貴方は、そんな、魔王になぞ惑わされるべきでは、ないのです。ですから、どうか、こちらに」
勇者「そちらに戻ったら次は人間に使い殺されるじゃないですか。前科ありますよ」
女神「ですから、そんなことは、に、人間は、しません。貴方を……そのような目に遭わせたのは魔王、です」
勇者「操られているようには見えませんでしたし操られているからってやった事を帳消しには出来ませんよ?」
勇者「それに、そもそも、僕を見捨てたうちの悪性が自分たちの善性説いたって説得力ないんですよねぇ……」
女神「そ、それは、誤解なのです、いえ、いえ、たしかに誤解とは言えないかもしれませんが……」
女神「そ、それに。人間に敵対するということは、人間の貴方にとっては、苦痛であることでしょう」
女神「人間である貴方が人間を滅ぼし尽くしたとして一体その先に何があるというのですか」
女神「当事者達に復讐する権利はあります、それがたとえ、魔王の手による悪しき術のものであったとはいえ、確かに操られているとはいえやってはいけないことをしました」
女神「彼等に貴方を疎む気持ちあったからこそ操られてしまったことも否めません」
女神「それは致し方ありません! 言いたくはありません、しかし、彼等に復讐したとしても貴方に非はないと言ってもいい。私も、殺されても、仕方ないと思います」
女神「しかし無関係の者まで、未来ある者を、未来のために礎になってきた者まで、踏み付けていく権利などは貴方にもありません!」
女神「……ですから、どうか。どうか、私達だけで、終わりにしてください」
女神「もし許されるならば、もっと、勇者、貴方と話がしたい。もし望んでいただけるのならば、もっと、このことについて話しあわせて下さい」
女神「今言うべきことの、多くのところは、言えました。けれど、もっと、もっと、深く語り合えるところが、まだあるはずです。ですから、どうか」
女神「……今の言葉に、少しでも、感じるものがあってくださるなら、どうか。……私からは、以上です……」
勇者「ふむ」
魔王「む?」
勇者「ああ、どうぞ」
魔王「む、良いか?」
魔王「では、色々言いたいことはあるとしても、だ、まずは、そうだな、何処から話すべきか」
勇者「最初から」
魔王「良かろう」
魔王「まず、相違ない、我こそが魔王である。実行できうる限りの策と手段で以て、ふん、それが非道と呼ばれるならそれでも良いわ、それにて魔界に君臨した王である」
魔王「我は間違いなく強大であろう、その力を以てしても征服能うことなかった人間界を下す為、征服能うことのなかった要因にして最も大きな力を得て再び覇道を進む――」
魔王「……つもりだったのだが、今や我もまたこの勇者の覇道をなすための一因にしか過ぎぬがな。我が覇道は此奴の覇道がなしていく過程にあるのでお零れを貰う立場だよ」
魔王「何故か、と?」
魔王「逆に問いたい、何故そんな質問が出るというのだ」
魔王「我は魔物であり、魔物が跋扈する世界の王である。そして魔物とは強い者に従う。常識だ」
魔王「此奴のほうが我よりも強い。此奴が我に勝ち得たのは此奴の仲間のおかげかもしれぬが、一人とて、倒される時間が早いか遅いかだ」
勇者「でしょうねぇ。優秀でしたよ、優秀でしたし代わりは居ませんでしたが、居ないとどうにもならないレベルかといえば……ん~……」
勇者「あ、でも、最初の方は助けられちゃいましたし道中も少し楽させてもらったんで、居てもよかったです」
僧侶「……」
魔王「よって、我が勇者を使い殺すなどということはしない、いいや、出来ん。これは魔物の性だ」
魔王「よしんばそれを克服したとしてもまともに挑んでは返り討ち必至、不意打ちしようにもなぁ」
魔王「これだ」
勇者「はい?」
魔王「恐ろしい話ではあるが、此奴は今では常に臨戦態勢のままである。僧侶よ、女神よ、貴様らが余計なことをしてくれたおかげで隙を見せんわ」
勇者「いや、申し訳ないとは思ってるんですよ。こんなによくしてくれてるんだし気を緩めたいとは思うんですけど流石にちょっとトラウマでして」
僧侶「……」
魔王「致し方ない、我とて同じ目に遭えばそうなる」
魔王「でだ、配下として使えぬ男を使い殺してしまえとはこれいかに、ああ、使い殺すという単語もあまり好きではないな、いいや、はっきり言って不愉快だ」
魔王「配下を道具のように扱うといっていたな、そのあたりも言っておこう、何が悪い。配下とは手足と同義である、手足を目的のために使うことの何が悪い」
魔王「人間は包丁を使うときにいちいち手に話しかけて了解を取るのか? 包丁で手を傷つけたときにいちいち手に謝るのか。阿呆らしい」
魔王「しかしそれと、治療をしない、ハンドクリームを塗らない、火を扱うときに火傷対策をしない、寒くとも温めない、それとこれとでは話が別だろうよ」
魔王「そういうことをするのが使い殺すという事だ。我はそんなことはせん、手足を壊死させて何の得があるというのか、阿呆らしい」
勇者「道具を大切にする派ですもんね。ねえねえ見えます女神様に僧侶? あのマントちょっと継ぎ接ぎが見えるんですよ」
勇者「僕に破られたの集めて再利用してんですよ、あの人」
魔王「余計なこと言うな、我が貧乏性みたいであろうが。このマントはそう軽々しく一から作れるようなものでは無いのだ」
魔王「誘惑の件については、残念ながら、反論は出来ぬな。したのしてないのと言い続けても埒が明かん」
勇者「僕はしてないと思ってます」
魔王「勇者がこう言ってくれている。それで良い」
勇者「照れるんですけど。この人が女性だったら僕惚れちゃうんですけど」
魔王「なろうか?」
勇者「なれるの!?」
魔王「嘘だ」
勇者「期待させてくれてんじゃねぇですよこの魔王が!!」
魔王「フッフッフ」
魔王「第一なったとしても第二婦人になってしまうであろうが。土のことを考えろ、上司が上司のまま自分より後に据えられたらたまったものではないぞ」
勇者「あれ僕いつのまにか土さんと結婚することになってる。魔王軍総司令を譲ってもらったと思ったら縁談まで一緒についてきたでござる。ちょべりば」
魔王「ちょべ……? ……嫌か?」
勇者「ちょべりばなんてウソですよ! 嫌じゃないですよ! でももうちょっと、こう、いや、後で良いですそれは。続けて」
魔王「何処まで話したか? ああ、そうだ、我が己の死を偽証してどうのこうのと言っていたな。空いた口が塞がらんわ」
勇者「何をどうしたらあそこまで記憶改竄しちゃえるのか流石の僕もビックリ仰天ですよね」
勇者「Consternation!!!!!(軍団)」
女神「!?」
僧侶「!?」
魔王「うおぉっ!? お、お、驚かすな、勇者。お、お前、たまに凄まじくデカい声が出るな……」
勇者「ごめんなさい」
勇者「でも、ないわ。ないわー女神様……魔王の死体見てるじゃないですか。偽装でも幻術でもないですよ、というか魔王、幻術使えないし」
勇者「僧侶の姿消しすら見破れないレベルですよ、この前も僕は食事のときに姿消してこっそり魔王のかき揚げ蕎麦の掻き揚げ食べましたし」
魔王「ちょっと待て貴様あれいつの間に食べたんだろう我もいよいよ歳かなーとか本気で悩んだぞあれ貴様かおいあれおい」
勇者「魔王のワインも秘密のワインセラーから一本拝借しましたし」
魔王「おい待て何か一本足りないけど気の所為かと思ってたんだぞ」
勇者「他にも色々やりました」
魔王「あとで屋上に来い貴様」
勇者「土さんと一緒に色々やりました」
魔王「貴様と土あとで魔王城の屋上に来い、絶対に来るように」
勇者「あと、別に、苦痛でもなんでもないというか。寧ろ物凄く晴れやかな気持ちというか、なんというか、まあ、色々言いましたけれど」
勇者「魔王が例え何であろうと例え何をしようと人間が僕を裏切ったのは変わりありません」
勇者「生死も運命も分かちあったはずの仲間は、地位と金に目が眩んで、僕を襲いましたし」
勇者「その他大勢は救ってやったのに救ってくれませんでした、世界平和の報酬は、憎まれたり蔑まれたりしながらの獄中生活でしたよ?」
勇者「僕じゃなきゃ死んでるような獄中生活でしたし、なんとまあ、二十年閉じ込められてる間にみぃ~~~~~んなそのこと忘れてたし」
勇者「滅ぼそうと思ったっていいじゃないですか、それにぃ~。未来がどうのこうのと仰られていますが、今この世界に生きている人間が、生きていられるのは、僕のおかげです」
勇者「魔王ったら当時から滅ぼし尽くすって言ってたじゃないですか、僕が居なかったら滅ぼし尽くされてましたよ?」
勇者「僕のおかげで人間は生きている。僕のおかげです、借りです。僕の気が変わったんで借りを若干の利子つけて返してもらうだけのこと。二十年も長生きできたんです、上等でしょ?」
勇者「そういうことです」
勇者「さて、それじゃ、下らないお話タイムも終わりましたし。とりあえず僧侶、死んどこかぁ。また爆発されちゃかなわんので適当に嬲ってから殺したげます、やったね!」
女神「……僧侶」
僧侶「……」
女神「勇者は、やはり、闇に落ちていました。わかっていたことですが……悲しい」
勇者「闇堕ちさせたのあなた方ですけどね」
勇者「さ、無駄話はこれで終わり。やりましょう、やりますよ、それでは魔王……は、ついてこれないのわかってますが、僕一人でもいきます」
勇者「ごほん」
勇者「ひゃっほう!」
魔王「こなくそ! 我もやれば出来る男だというこそを見せてやるぞ!」
勇者「さすが! せーの!」
魔王「ヒャッホー!!!!!」
勇者「声でかい!?」
魔王「どうだ!」
まともに戦ってはいけない相手、まともに戦ってしまえば出鱈目なまでの肉体スペックと技量で粉砕されてしまう相手。
最盛期の勇者とはそういう男であったということを僧侶と女神は思い出していた、戦士がああなったことで思い出させられていた。
最盛期の勇者とまともに肉弾戦をこなせるといえるのは炎の四天王ぐらいのもの、肉弾戦で互角近くで戦えるのは魔王ぐらいのもの。
彼等は元より戦士よりもさらに肉体性能が遥かに劣る僧侶と女神はそれだけに同じ轍は踏まない、踏めない。
――策は用意した。
魔王「さて、気合入れも終わったが、あちらも何か仕掛けてくるつもりだぞ勇者よ」
勇者「一緒に踏み潰しましょうか、魔王」
僧侶にとって幸いと言っても良い点が一つはあった。
勇者は、昔と今では見た目も有り様も大きく変わってしまっているが、昔も今も戦闘の基本に忠実だということだ。
そのうちの一つとして、相手の身体の動きそのものも見ているが、相手の目の動きを見て動きの始まりや狙い所を見極めるクセがある。
――そこだ。
勇者「では……」
僧侶「――」
戦士を斬ったときも戦士の目を勇者は見ていた。己の反応速度についていけない者の目も勇者はしっかりと見ている。
僧侶たる自分が戦士でも追い切れない動きを見ることはできないが、自分の目をあちらが見ていればそれでいい。
そういうつもりで、頭を上げた僧侶の目にはやはり、奇跡など起ころうはずもなく勇者の姿は見えていない。
魔王だけが、たった一歩の踏み込みで距離を潰し、引き抜いた剣を真横に振り被り、僧侶の両足を絶とうとしている勇者の動きが見えていた。
魔王「……ほう」
勇者「――」
僧侶「……」
女神「成功、しましたか」
魔王が、意外なものを見た、といった顔で眺める。
僧侶は、焼かれた顔を隠すための仮面で表情は伺えない。
女神は、成功したとは言うものの苦虫を噛み潰したような顔をしている。
勇者は、無表情のまま、ギリギリ僧侶の足に触れるか触れないかというところで剣を止め、動きを停止させていた。
魔王「お得意の幻の魔法。発動条件は、勇者が僧侶の目を見ること、か?」
魔王「貴様では勇者の動きを捉えて魔法を練り上げて放ち当てるのは至難であるからな、ならばあちらに条件を満たさせてやれば良いと」
魔王「しかしよくもまぁ、彼奴の魔法防御を突破したものだ。状態異常の類には極々類まれなる耐性があるのだが、ッフハ、そうか、前々から仕込んでいたのか」
魔王「それだけの魔力を溜め込んでおいて無事で済むまい、寿命を犠牲にしたのか、どれぐらいだ、いやしかし、勇者の動きが止まるとはなんの幻を見せている?」
女神「……二十年前の、彼の身に起きたことを、二十年間に、彼の身に起きたことを、何度も」
魔王「ッフ。フハハハハハ! 奴がトラウマとわざわざ言うぐらいのアレをか!」
魔王「勇者を止めるならばそれぐらいのドギツイのを叩き込まねばな!」
魔王「フハハハハハハハ! ハッハッハッハッ! ハッハッハ!」
魔王「よくもまあ、勇者にあの仕打ちをして清廉面をするのも笑えたが、こんなことを準備しておいてよく清廉潔白を謳ったものだ! 我らこそが善性と語ったものだ!」
魔王「ようやく貴様に親近感を覚えたぞ女神よ!」
魔王「ハッハッハッハッ、うむ、大変良い!」
魔王「ッフフフフ、ハハハ。いやぁ……次はなんだ、それだけては終わらぬな、うむ、この気配……?」
手を顔に当て、破顔一笑といった顔を手で隠し、肩を大きく揺らし胸を前後させて、たからかに笑う魔王。
余程嬉しかったのか楽しかったのか、あるいは怒りでも覚えているのかも分からぬ程犬歯を見せ、目端に涙まで浮かべていた。
周囲に発生した気配は、転送魔法陣である。一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、増える増える、転送魔法陣。
そこに現れるのは人間だ、鉄の鎧を纏い、鉄の兜を身につけた格好こそは兵士であるが手には剣一つ持っていない。
彼等の武器たるはそれではなかった、背中、腰骨よりやや上に転送陣とはまた別の魔法陣が輝いていた。
戦士が爆発直前に浮かび上がらせたものと同等のものであった。
魔王「こう来るか!」
魔王「――面白い」
女神「……許し給う、人の子よ」
魔王がまた顔を歪める。
女神が、身を斬られたかのような苦痛に顔を歪める。
――その場が爆炎に満たされた。
――。
――。
――。
おそらくは、この大陸に住まう者であるならばそれはどこからでも見えた。
生物の生存をどれだけ憎めばそれが起こり得るのか、検討もつかぬほどの、生き物の生存を許さぬという一念だけは、想像しうる……
轟々と登り立つ巨大な火柱。
魔王「しかし、なんだな、愉快ではあったが、喜劇であったが、余計なケチはつくものだ。……まったく。……褒めたと思えばこれだ」
爆炎の柱は、立ち上がるまで、ほんの僅か。立ち上がって、数秒。立ち上がったことそのものが無かったかのように、消え去った。
自慢のマントは膝から崩れ落ちた勇者に被せられていた。
自慢のマントの下には闇を凝り固めたように黒々とした鎧を纏っていた。
右手には、吹き上がった爆炎と同じ魔力を持った炎がその中で煌めき燃えていた。
左手には、爆発に巻き込まれないようにと転送陣にて逃げ出そうとしていたところをひっ捕まえて爆炎を喰らわせ黒焦げになった女神と僧侶を掴んだ――
魔王が満足感を漂わせながらも虚無感も匂わせた顔で立っていた。
女神「……」
僧侶「……っか。な……」
魔王「なんだ、さすがに潰れてはいても驚けば喋るものだな? 生きているのは褒めぬぞ。ギリギリで治癒しておるからな、我が。それは兎も角馬鹿は貴様等だ」
魔王「面白いとはいったが、わざわざ、律儀に、人間爆弾共が爆発するまで待ってやる道理はない」
魔王「人間爆弾共の爆発の威力はなるほどたいしたものだ、戦士一人であれだ、あれだけ数が居ればひょっとすると無防備な勇者は危なかったかもしれんな」
魔王「我も流石に間に合うか解らなかったので、久々に冷や汗を流した、良い余興であったよ。でだ、マントは勇者に被せたが爆発せんにこしたことはないから焼き払った」
魔王「貴様等との戦いに使わなかったから警戒していなかった、とでも、言いたいのかもしれないが、どれほど馬鹿だ貴様等」
魔王「あそこは我が居城ぞ。こんなもの放ったら我が居城が丸々消し飛ぶわ、見よ、これだけの破壊力だ。目に見える範囲全てを焼く我が火炎の魔法ぞ」
魔王「まったく、本当に、まったくだ。期待していたというのにまさか一発で片付いてしまうとは……てっきり他の手も用意してあるのかと……まったく……」
魔王「……そら、勇者、捕まえたぞ。さっさと僧侶の中に仕込まれた爆弾を、む。ないように見えるが我には解らんのでさっさと……ええい、まだ、戻ってきておらんのか」ガシッ
勇者「!」クェッ
魔王「水の四天王のところに連れて行ってさっさとコイツから治さねば……」ズルズル
勇者「」クェェェェ
魔王「勇者を元に戻したら、僧侶を早く直さんと我の治癒ではそのうち死んでしまう。今ので少し燃えてしまった配下を再生させぬとならし」
魔王「無論配下は出来る限り燃やさぬようにしたが……土もおるし……だがしかし如何せんこれはコントロールが難しくてな……やることは多いぞ!」ズルズル
勇者「」クェェェェェェェ
魔王「まったく! 世話のかかる奴だ!」
勇者「」オテスウオカケシマスゥゥゥゥゥ
続き
勇者「魔王を倒してから、あれから二十年!」【3】

