勇者「僕は元気にやってます!」
勇者「牢獄の中でなーっ!」
勇者「おはようございます!」
勇者「はい、おはようございます勇者様(裏声)」
勇者「微かに聞こえる雨音からして本日のお天気はやや小振りの雨日和ですね!」
勇者「お腹の減り具合からして大体今は午前十一時頃といったところですかね!」
勇者「不摂生はいけませんよ勇者様(裏声)」
勇者「そうですね気を付けます! 旅をしていた頃は日が出るより早く起きて日が沈む前に寝ていたのにすっかり今や」
勇者「嘘はいけませんよ勇者様」
勇者「はいスミマセンでした! 日が沈む頃に魔法使いとギシアンしはじめて日が出る所に精魂尽き果てる生活してました!」
勇者「おかげで旅のペースが遅れるの何のって! ハハハ!」
勇者「ヒャッホウ!」
勇者「ひゃっほう(裏声)」
元スレ
勇者「魔王を倒してから、あれから二十年!」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1429558119/
勇者「魔法使い。戦士。僧侶。元気でやってますかね!」
勇者「元気に決まっていますよ。なんてったって貴方を売っていい生活を手に入れたようですから(裏声)」
勇者「それもそうですね! 羨ましい! 僕も召使一杯抱えて大きなお屋敷に住んでみたかったなぁ!」
勇者「あなたにはあなたの城があるじゃないですか勇者様(裏声)」
勇者「そう! ここが僕の城! 今日も点検はじめ!」
勇者「ベッド!」
勇者「ありません(裏声)」
勇者「南の窓!」
勇者「西にも東にも北にもありません(裏声)」
勇者「トイレ!」
勇者「部屋の隅っこがトイレといえばトイレですね(裏声)」
勇者「ご飯とかお手紙とか食べるための机!」
勇者「ご飯やお手紙を入れる搬出口ごとありません(裏声)」
勇者「面会に来てくれる人に会いに行く為に必須ぅ! 扉!」
勇者「ここに入れられたときに塗り固められました(裏声)」
勇者「広さ!」
勇者「二十畳ほど(裏声)」
勇者「明かり!」
勇者「完全なる暗闇です(裏声)」
勇者「ヒャッホウ!」
勇者「ひゃっほう(裏声)」
勇者「皆もビックリするでしょうね!」
勇者「何がって?」
勇者「そりゃあ」
勇者「明かりもない、窓もない、食事もない、空気もそのうちなくなる、いや実際牢獄生活三日目で無くなりましたし」
勇者「そんな中でまだ生きている僕のことですよぅ!」
勇者「皆、僕のこと忘れてるかもしれませんけどね!」
勇者「いや! いやいや! でも、戦士に僧侶に魔法使いは僕のこと忘れられない筈ですよ!」
勇者「僕のことをこんな死刑台ならぬ死刑箱に押し込んだのは他ならぬ彼等彼女らですよ!」
勇者「大暴れしましたね(裏声)」
勇者「大暴れしました!」
勇者「戦士は右腕と左足をたたっ斬ってやりましたね(裏声)」
勇者「スカッとしました!」
勇者「僧侶はどうしましたっけ(裏声)」
勇者「声帯を潰して顔面を焼きました!」
勇者「あれではもう神を称えることはできません、やりましたね(裏声)」
勇者「やりました!」
勇者「魔法使いは?(裏声)」
勇者「僕懇親の呪いをかけましたが遅効性だったためどうなっているかわかりませんが!」
勇者「勇者様懇親の呪いです。他二人より酷くはなってもよくはなりません(裏声)」
勇者「ヒャッホウ!」
勇者「ひゃっほう(裏声)」
8 : 以下、名... - 2015/04/21 04:42:05 yE6jxwRI 8/422パパっとチョチョッと書いたせいで後先何にも考えてない。
続きはそのうち。
勇者「でもビックリしましたよね!」
勇者「驚きましたよね(裏声)」
勇者「何と言っても!」
勇者「何と言っても?」
勇者「まさか僕があの三人に負けるとは!」
勇者「それも驚きましたが(裏声)」
勇者「まさか僕をあの三人が裏切るとは!」
勇者「それもやっぱり驚きましたが(裏声)」
勇者「魔王倒して帰ってきたら逆賊扱いときたもんで!」
勇者「それがやはり一番?(裏声)」
勇者「驚きました!」
勇者「ヒャッホウ!」
勇者「ひゃっほう(裏声)」
勇者「正直ね! 予感はありましたよ!」
勇者「旅するとモンスターに出くわすじゃないですか! 倒すじゃないですか!」
勇者「最初はスライムからでしたね!」
勇者「体当たりが意外と強力でした(裏声)」
勇者「そう! 体当たり! あのぶよんぶよんボディ、力の伝達力っていうんですかアレ半端無くて!」
勇者「でもアレちょっと気持ちいいんですよね!」
勇者「痛いことには痛いのですが(裏声)」
勇者「あのぶよんぶよんホディがすごい勢いで身体にぶつかってぶにゅんっていうかぐにゅんっていうか!」
勇者「痛いには違いないですが(裏声)」
勇者「大きなおっぱいで頬っぺたしばかれたり大きなお尻が顔に乗っかってくるような趣きがありますよね!」
勇者「僕思いましたね!」
勇者「スライムに殺されてる人ってアレが癖になっちゃったんだと!」
勇者「これを『スライムって実は女体風味の法則』と名付けましょう!」
勇者「まんまですね(裏声)」
勇者「まんまです!」
勇者「違うわ! 何の話でしたっけ!?」
勇者「モンスターって強い(裏声)」
勇者「そうでしたその話でした!」
勇者「さすがモンスター(裏声)」
勇者「モンスターという名前は飾りじゃありませんでした!」
勇者「最下級ですらアレでしたからね!」
勇者「スライムより強い魔物なんて山程! それより強い魔物も山程! それよりもさらに強い魔物も山程!」
勇者「お先真っ暗でしたよホント!」
勇者「でも倒すじゃないですか! 愛とか友情とか地道なレベル上げで!」
勇者「生き死にかかった旅ですから緊張感も勃起も半端なくて(裏声)」
勇者「そうそう生き物って死に瀕すると子孫残そうとして勃起ファイヤーってホントで!」
勇者「魔法使いと毎夜燃え上がっても(裏声)」
勇者「仕方ない!」
勇者「戦士と僧侶も隣の部屋で燃え上がっても!」
勇者「仕方ない(裏声)」
勇者「ヒャッホウ!」
勇者「ひゃっほう(裏声)」
勇者「ま! ま! ま!」
勇者「倒すじゃないですか!」
勇者「斬ったり潰したり捻ったりして!」
勇者「焼いたり溺れさせたり毒に侵したりして!」
勇者「いーっぱい!」
勇者「屍量産兵じゃないですか!」
勇者「屍山血河ですね(裏声)」
勇者「レベルアップしますよ! もうドンドン! ドンドコ!」
勇者「わかるんですよね!」
勇者「あ、やべぇ、人間止めてる強さになってるわコレ」
勇者「て!」
勇者「そりゃそうですよ!」
勇者「村とか街どころの話じゃないですよ!」
勇者「街とか大陸とか支配しちゃえる奴等相手にね!」
勇者「真正面から斬った張ったできるレベルまで鍛え上げられちゃうと嫌でも気付きますよ!」
勇者「実際侵攻してきた軍勢と真正面から戦ったからこそ出来る気付きです!」
勇者「正直ビックリしましたよこれ!」
勇者「あ、勝てちゃったよコレ」
勇者「て!」
勇者「街の兵隊さんとかもう動く的かっつーぐらい役立たずでしたからね!」
勇者「ゴミのように蹴散らされてましたね(裏声)」
勇者「あの時は死を覚悟しましたよ!」
勇者「でもやってみたらビックリ!」
勇者「僕ら四人で勝っちゃったよこれ」
勇者「て!」
勇者「ハッハッハ!」
勇者「はっはっは(裏声)」
勇者「ざっと僕たち一人あたり!」
勇者「一軍団相当の戦力でした!」
勇者「一軍団相当とは大きく出ましたね(軍団)」
勇者「だってだって! あの時攻めてきた彼等! 数万から居たんですよ!」
勇者「一軍団相当とは謙虚な物言いでしたね(裏声)」
勇者「でしょでしょ!? 人間換算してませんからね!」
勇者「したらエラいことですよ謙虚な僕そんな事出来ません!」
勇者「ご謙遜の使い所が解っていらっしゃいます流石勇者様(裏声)」
勇者「ンフフゥ!」
勇者「んふふぅ(裏声)」
勇者「ま! ま! ま!」
勇者「そんなもんですからね!」
勇者「魔物一個軍団級の戦力が四人ときてます!」
勇者「人間換算するとどえらい戦力が四人も居ますね(裏声)」
勇者「しかもまだまだ!」
勇者「強くなァァァァッ! ッルゥ!!」
勇者「あ、コレ為政者に嫌われるフラグだわ」
勇者「とか! 予感しましたよ!」
勇者「最悪の形で予感が当たりましたね(裏声)」
勇者「いやホントあんな形は無いですよホント!」
勇者「強くなって!」
勇者「腕っ節的な意味で(裏声)」
勇者「長持ちするようになって!」
勇者「持久力的な意味で(裏声)」
勇者「あ、夜の生活的な意味も含んでますよ!」
勇者「魔王城に突撃して(裏声)」
勇者「四天王とかいうの粉々にして!」
勇者「魔王も粉々にして(裏声)」
勇者「意気揚々と凱旋しました! これからはきっと幸せな生活が待ってるぞぅ、フォウ!」
勇者「しかし待っていたのは危険な奴等と判断され、汚名着せられ石もて追われる末路かな(裏声)」
勇者「ちょっと語感いいですね!」
勇者「恐縮です(裏声)」
勇者「僕てっきり最悪でも国外追放だとか思ってましたもの!」
勇者「良くて将軍職とかに付けて飼い殺しとか期待してましたもの!」
勇者「しかも老獪な事に(裏声)」
勇者「そう老害な事に!」
勇者「老獪です勇者様(裏声)」
勇者「ローカイなことに!」
勇者「はい(裏声)」
王様「勇者を差し出すのならばお前達三人は無罪放免としよう」
王様「戦士、僧侶、魔法使い、お前達三人は勇者と違って、元はと言えば我が城の優秀な人材達である」
王様「ソイツだけならともかく、そも、こうやって謂れのない罪を着せるのも心が痛……痛い……?」
勇者「えーとここらへんからちょっと記憶曖昧なんですけれど!」
勇者「何か長ったらしくてわざっとらしくてお涙頂戴みたいな苦労話とかそこらへん話してたような!」
勇者「ところで!」
勇者「似てた!?」
勇者「はい流石勇者様。物真似スキルも超一流(裏声)」
勇者「ヒャッホウ!」
勇者「ひゃっほう(裏声)」
勇者「そんでまぁ!」
勇者「コロッとあんなクッソみたいなハナシと、莫大な報酬で寝返っちゃったんですよね!」
勇者「あの三人!」
勇者「正直負けるつもりなかったんですけど舐めてましたね!」
勇者「油断大敵(裏声)」
勇者「スミマセン! 肝に命じております! いいや! 骨に染み込ませております!」
勇者「一度の失敗で肝どころか骨身に反省を染みこませるとは流石は勇者様(裏声)」
勇者「一般人には出来ない度量の深さです(裏声)」
勇者「あんもうハズカシィ!」
勇者「ウフフ!」
勇者「うふふ(裏声)」
勇者「ウフフフフ!」
勇者「フゥー……」
勇者「……フゥ?」
勇者「……フォゥッ!?」
勇者「……」
勇者「フォォォォォォォウ!!?」
勇者「……」
勇者「ゴホン。ん、んん。んー。マイテスマイテス」
勇者「オーケー」
勇者「つかぬことをお伺い致しますが」
勇者「そこ(扉)、いつから開いてました?」
村娘「……」オロオロ
勇者「……」
村娘「……」オドオド
勇者「……」
村娘「……」オブオブ
勇者「こわがらずに。さぁ、大きく息を吸って。吐いて。さん、はい」
勇者「扉いつから開いてました?」
村娘「……王様の……物真似……あたりから」
勇者「マジかよ死にてぇ」
勇者「スゴイことですよ貴女」
勇者「これはもうとてつもなくスゴいことですよ貴女」
勇者「僕が死にたいなんて思ったの」
勇者「スライムの体当たりを受けて以来ですよ」
村娘「……えっと……」
勇者「いやね、途中からね、何かちょっと眩しいなーみたいな」
勇者「新鮮な空気入ってきてるーみたいな」
勇者「僕が自分で作ってる以外の空気入ってきてるーみたいな」
勇者「なんかオカしいなと思ったらまさかギャラリーが居るとは」
勇者「ところで貴女」
村娘「え、と、あ、いえ、はい」
勇者「どちら様」
村娘「……ど、ドッカ村の村娘、です」
勇者「これはご丁寧に。ドッカ村の村娘様」
勇者「どっかの村ですかね知りませんけど」
勇者「あぁ」
勇者「勇者です」
村娘「し、知って、ます……」
勇者「クサくないです?」
村娘「い、いえ……」
勇者「老けて見えます?」
村娘「いえ……」
勇者「ですよね。アイドルはうんこもオシッコもしません。女神の使徒たる勇者もしません」
村娘「はぁ……」
勇者「ですよね。アイドルは老けません以下略でお願いします」
村娘「は、はい」
勇者「ま。ま。ま」
勇者「兎にも角にも助けられてしまいましたね、感謝」
村娘「いえ、その、どういたし、まして、それで、あの」
勇者「まったくここときたら貴女のような歳若い人間にも壊せるような造りをしておいて」
村娘「あの……」
勇者「僕ではどうにも出来ないように造られてますからね」
村娘「あの……っ」
勇者「僕をここに留まらせておく。ただ一点それだけにのみ特化した魔法とか誰得?」
勇者「あ、二十年前の世界得か」
勇者「もう機能してませんけど。扉開いただけで解除されちゃうとか特化しすぎでしょ耐久性考えて欲しいですよね」
勇者「耐久性考慮されたら僕出れなくなりますけど」
村娘「あの! 勇者様!」
勇者「はい」
勇者「あ、テンション低いのは気にしないで下さい。死にてぇブルー継続中なだけなんで」
勇者「ひゃっほう……」
勇者「こう、なんというか、一発芸の練習風景を他人に見られた時の切ない気持ちというか……」
勇者「あの日あの子に告白したけど好きな人居るからって断られたセピアな気持ちというか……」
勇者「ひゃっほう……」
勇者「ま。ま。ま」
勇者「して、僕に何かご用でございましょうか、ご主人様」
村娘「は、はい、勇者様にご助力を、え、え、ご、ご主人様っ?」
勇者「僕の力が必要ということですか。承りました、なんなりと、ご主人様」
村娘「え……な、なん……」
勇者「僕今ランプの魔人みたいじゃないですか」
勇者「経緯はさておいてね。こんなところに封印された巨大な力、それがひょんなとからポポンと出て来て」
勇者「何にしても助けられましたからね。借りは返す主義です」
勇者「一度助けられたので一度だけ付き合いますよ」
勇者「そういったワケですので、どうぞ、何なりとお申し付け下さいませ、ご主人様」
村娘「……は、はぁ、いえ、はい。それでは、お、お話させて頂きます。そ、村長曰く」
勇者「カット」
村娘「えっ?」
勇者「ドッカ村は只今絶賛収穫期」
勇者「それも収穫されるのはフルーツということでどうにもその甘い香りをゴブリン共に嗅ぎ付けられたらしく絶賛襲撃され中」
勇者「しかも結構凄い数。村で雇っていた傭兵も数に押されて為す術なし。フルーツだけなら兎も角女子供も攫われる」
勇者「今はなんとか持ち堪えているものの後何度持ちこたえられるかわからない」
勇者「傭兵ギルドにお達ししても中々増援がこない。王国軍に話を付けるにしたって何日かかるやら」
勇者「ということで」
勇者「昔々というほどでもないけど一昔前に、村の外れ、かな~り外れに在るとされるとある場所に封印されている、らしい」
勇者「勇者という輩が居るということを思い出した村長が一か八かで貴女を派遣した」
勇者「貴女は貴女で来てみたら、何か人の気配するな、と、思って入り口壊した」
勇者「したら僕が居た。王様の物真似しながら」
勇者「死にてぇ」
勇者「こんなところでいかがでしょうか、ご主人様」
村娘「……」
勇者「ご主人様?」
村娘「……」
勇者「……」
村娘「……ハッ。あ、す、すみません、合ってます……っ。でも、ど、どうして」
勇者「僕のことを誰だと思って探しにきたんですか、僕は勇者ですよ、不可能などあんまりない、よって、小娘一人の心を読むこと造作もなし」
勇者「流石に二十年間こんなところに居たので二十年前よりかは幾分衰えて不可能が増えたかもしれませんが」
勇者「しかし、そうねぇ、村長がねぇ」
勇者「どう見たって十四、と、七ヶ月と、三日ですか、の、ご主人様」
村娘「(合ってる……)」
勇者「なら兎も角。村長がねぇ」
村娘「村長が、な、何か……?」
勇者「……僕がなんでこんなところに居るのか知らない歳じゃないでしょうに、ねぇ?」
村娘「ねぇ、と、言われましても……た、確かに村長は、その、もう、六十ほどですが……」
勇者「そうですか。前にご尊顔を拝見したときの村長ですね、やっぱり」
勇者「思い出した。そうですか、ドッカ村、そうですかぁ」
勇者「いいでしょう。さぁ、行きましょう、ドッカ村」
勇者「皆殺しにしましょうね」
勇者「……」
勇者「ひゃっほう!」
72 : 以下、名... - 2015/05/15 21:21:39 9fgQof0k 38/422勇者
二十年前から歳を取っていなくて、二十年間飲まず食わずでも平気で、空気がなくても自己生産して生きていられる、二十年前の推定戦力(曰くかなり控えめに言って)魔物一軍団相当のおしっことウンコしない生き物。
外見は二十歳未満の青年。過去のあれこれのせいでまっちろな髪とレイプ目。粗末な麻布の服を着ている。
裏声さん
合いの手担当。これからしばらく出番が無い。
軍団さん
そりゃもう軍団相当の多大な合いの手担当。これからしばらく出番が無い。というか今後出番があるのか分からない。
村娘
ドッカ村出身の十四歳と七ヶ月と三日目の処女。良く言えば素朴な、悪く言えばちょっと野暮ったい顔付き。
73 : 以下、名... - 2015/05/15 21:22:18 9fgQof0k 39/422
戦士
勇者がレイプ目になった原因その一。勇者の手により右腕と左足をたたっ斬られている。二十年前の推定戦力は(かなり控えめに言って)魔物一軍団相当。男性。
僧侶
原因その二。声帯を潰されて顔面を焼かれている。二十年前の推定戦力以下略。女性。戦士とは毎晩燃え上がっていた。
魔法使い
原因その三。勇者渾身の呪いを受けたが現状どうなっているか不明。二十年前の以下略。女性。勇者とは旅の最中毎晩燃え上がる仲だった。
王様
原因その四。勇者の生まれ故郷やその一帯の国を治めている老害。
四天王と魔王、ついでに魔王軍
二十年前に、世界征服に乗り出した方々。夢と希望ごと命を粉砕された。
――勇者と村娘が出会ってから、半日後――
勇者「はい! はいはいはいはい! やってきましたドッカ村!」
勇者「僕一人だけなら二十秒とちょっとですがご主人様も居るのでゆっくり来ました! ドッカ村!」
勇者「ゴメンナサイちょっと調子こきましたね! 今の僕じゃ二十秒じゃ行けないかもしれませんドッカ村!」
勇者「どうしたのご主人様ったら元気無いよ!? ご主人様ったら元気出して行きましょ! さぁ第一村人発見!」
勇者「こんにちわぁぁぁぁぁ! 勇者デェェェェェェェス!」
第一村人「え!? あ、こ、こんにちわ。こんばんわだけど。村娘? 帰ってきたのか? こちらの方は?」
村娘「ご、ご本人のご申告通りの、そ、村長様が言ってらした、勇者様、です……」
第一村人「本当なのか? 本当にあのへんてこな塔に住んでるっていう?」
第一村人「村長様のお言葉とはいえ眉唾もんだと……いやそれにとても……なんというかその……勇者には見えないような」
大勢の村人「なんだなんだ、こんな時に騒がしい……」「誰だアレ?」「物狂いか何かか?」「老人かと思ったよ、なんだいあの髪」
「村娘が帰ってきてるぞ」「ってことはアレが村長の言ってた……」「いやンな馬鹿な」「いやしかし、いつか見た勇者様に似とるな……」
勇者「何かモブいっぱい出て来た!」
村娘「も、もぶ?」
勇者「都会用語でっす! 意味は『ごめんなさい、良い人なんだけれど……』ってかんじ!」
村娘「は、はぁ……」
第一村人「……」
勇者「いいじゃないですか! おきましょう! さておきましょう! 村長のところ行きましょう!」
勇者「……」
勇者「時の流れってこわ~い」
村娘「は、はい? な、なんですか、勇者様?」
第一村人「時の流れ?」
勇者「独り言でっす!」
勇者「二十年もあんなとこでビンテージ物になるまで暮らしてりゃ独り言も多くなるってもんでね!」
村娘「あ、ああ……」
第一村人「ビンテージ……」
勇者「で?」
村娘「え?」
勇者「いや。村長のお家どこかなって!」
村娘「あっ。す、すみません、こ、こちらになりますっ。村人さんまたあとでっ」
第一村人「あ、ああ。あとでな」
勇者「……」テクテク
村娘「……」トコトコ
勇者「恋仲?」テクテク
村娘「えっ?」トコトコ
勇者「いや、兄妹には見えませんし、ご近所付き合いってだけにしちゃお二人の目の熱さがちょっとね!」
村娘「え、そ、そそそそ、そんな、そんなこと、な、ないですよっ。目の熱さってなんですかっ」
勇者「お互いを見つめる視線が熱を帯びて――」
村娘「言わなくていいですっ」
勇者「聞かれたから答えたのに答えを遮られた! ご主人様意外とドS! 僕は意外とドM!」
勇者「相性いいですね!?」
村娘「え、えむ……えす……も、もうっ。か、からかわないでくださいっ」
勇者「ハッハッハ~そうですか~お互い幼馴染で? お互い好き合っていたけど? お互い中々言い出せなくて?」
村娘「えっ。ちょ。ちょっとっ」
勇者「言い出せなさすぎて、仕舞いにゃ村の人たちが~? 村娘さんがお嫁に行くって話でっち上げて~?」
村娘「あっ。やっ。やめてっ」
勇者「村人さん奮起させて~。村娘さんにプロボーズさせて~」
勇者「青春ですねぇ」ホッコリ
村娘「も、もうっ。勇者様っ。察しが良すぎて恐いですっ。というか、察しが良いってレベルですかこれっ」
村娘「もしかして、心が読めるって本当なんですかっ!?」
勇者「嘘ですよ!」
村娘「嘘なんですか!?」
勇者「はい!」
村娘「じ、じゃあ、どうして」
勇者「ひ、み、つっ」
村娘「勇者様!」
勇者「ゲヒャヒャヒャヒャ!」
村娘「笑い方が汚いですっ!」
勇者「ご主人様の元気がよくなってきたので僕大変嬉しいです! そしてここが!?」
村娘「村長様の家です!」
村娘「……あっ」
村娘「……そ、村長様。お話いただいた勇者様をお連れしました」ドアコンコン
勇者「この娘元気にさせようとするのマジ大変」ヤレヤレダゼ、ネェ、ウラゴエ=サン
――ドッカ村、村長の家――
勇者「やってまいりました、ドッカ村、村長のお宅ゥ!」
勇者「村長のお宅だけあって大変ご立派ですね!」
勇者「朝目が覚めれば朝日にお出迎えしたいただけるよう配置を考えられた窓に! 臭い対策もバッチリなおトイレ!」
勇者「お手紙かくための机どころかお手紙書くためのお部屋までありましたよ!? 書斎!? 書斎ですかねアレは!」
勇者「ていうかお部屋有り過ぎてビックリしたんですけど! 広いんですけど! 二世帯住宅なんですけれどぉう!?」
勇者「住んでる方々はこちら、村長夫妻、村長の娘夫婦、娘夫婦のお子さん二人にお手伝いさん! あとゴブリン騒動のために間借りしてる傭兵衆!」
勇者「こんにちわ!」
勇者「こんばんわ!」
勇者「そういえば外暗かったですね!」
村長「……」
村娘「……」
勇者「ハッハッハッ! ノリわるし!」
村長「村娘。彼はずっとこの調子で?」
村娘「は、はい、ずっとこの調子、い、いえ、静かな時もたまに」
勇者「なんでございましょう?! ひそひそ話!? 混ぜてー!」
村長「勇者殿」
勇者「ゴブリン退治の話ですか!?」
村長「は? いえ、まだ、何も申しておりませぬが……」
勇者「ゴブリン退治の話ですね!?」
村娘「そ、その、村長様。勇者様はゴブリン退治引き受けてくださると申しているようで……」
勇者「そのとーり!」
村娘「こ、事の成り行きは、ど、道中にお話、というか、その、なんともうしますか。ご理解なされたようで……」
勇者「そのとーりでございます!」
村長「では」
勇者「明日の朝行きますので!」
村長「……はい」
勇者「酒場あります!?」
村長「……はい。報酬などの話は後々にしたほうがよさそうですのう」
勇者「酒場行ってまいります!」
村長「……」
勇者「実は僕今までお酒って飲んだことなかったんですよね!」
勇者「昔の仲間はよく飲んでたんですけど!」
勇者「なので!」
勇者「酒場で夜明かしてから行きますよ!」
勇者「村娘さんと一緒に!」
村娘「へっ?」
勇者「あとそこの傭兵衆も付いて来なさいネ!」
傭兵衆「……うす」
勇者「では解散!」
村娘「ま、まって、まって下さ――」
勇者「ではおやすみなさいませ!」バビュンッ
村娘「勇者様ー!?」キエタッ!?
――ドッカ村の外れ、ゴブリンの巣に向かう道中――
勇者「お酒ってホントこわい!」
勇者「お酒って初めて飲んだんですよね!」
勇者「お酒って意外に美味しいなーって!」
勇者「三杯目までの記憶はあるんですよ!」
勇者「気が付いたら朝でした!」
勇者「独特のやや冷えた空気!」
勇者「鶏や雀の鳴き声!」
勇者「差し込む陽光まあまあまったく二十年ぶりでね!」
勇者「血だるまになった傭兵たちまで一緒に付いてきたのがちょっと頂けませんけど」
勇者「朝から肺に目一杯の鉄錆臭とかいらなかったです」
勇者「後から聞いてみればまぁなんてこともなく!」
勇者「やっかみですってねー! 後からポッと出てきた得体の知れないヤツが自分の仕事掻っ攫うってんで! イラっときて! 喧嘩売っちゃったんですねー!」
勇者「後からポッと出てきた僕にテメェの仕事が掻っ攫われるのはテメェ等の本部が仕事遅いからだっつーんですよ! 喧嘩売られる覚えなんてありませんよ!」
勇者「大体実力差を考えて欲しいですよね! いくら衰えてるにしたってこちとら魔王とガチンコバトルした身ですよ! そういう意味では傭兵衆、君達は大変有能ですね!」
傭兵衆「……」
勇者「わざわざ村長のお宅に部屋用意されているだけあって他の連中よりほんのちょっとお利口さんです! 喧嘩しても勝てないのよく解ってますね!」
傭兵衆「……うす」
勇者「ご主人様」
村娘「……はい」
勇者「朝から大変よろしくないことをお目に入れて申し訳ない、まさか迎えに来て頂けるとは思ってもみず」
村娘「……いえ」
勇者「……」
村娘「……」チラチラ
傭兵衆「……」ムスッ
勇者「どうも、勇者です。僕なんにも悪くないのに僕のせいっぽい空気ただよってて気分ブルー色です」
勇者「テンションすごいさがる」
勇者「まるであの時のようです」
村娘「……」
村娘「……? あの時、ですか?」
勇者「はい。ご主人様も傭兵衆も、多分、村人さんも村民も、村長からしか、僕のことを聞かされていませんよね?」
勇者「僕は本当に勇者なんですよ」
勇者「二十年前に魔王軍を解体した面子の一人だったんですよ」
村娘「は、はぁ……」
傭兵衆「……」
勇者「村長からは、勇者っていう、強い人があのへんてこな塔に住んでるっていう話しか聞いていませんよね」
勇者「住んでたんじゃありません、幽閉されてたんです」
勇者「謀反人だ、反逆者だ、って、言われてね」
勇者「幽閉した塔を造ったのはドッカ村の人達なんですよねぇこれが」
村娘「……え?」
傭兵衆「?」
勇者「勿論あの塔にかけられていた魔法は別口ですよ、でもあの塔を建設したのはご主人様の村の人達です」
勇者「謀反人だ、反逆者だ、って、口々に言われてね。手の空いた人達なんか殴ったり蹴ったりしてきてね」
村娘「……え、えっ?」
勇者「実はこのゴブリン騒ぎ二十年ぶりなんですよね。二十年前にも一度こういうことがありました」
勇者「助けたのは僕たちだったんですよね」
村娘「あ、の」
村娘「(な、に……これ……勇者様がこの話をしはじめてから……息苦しい……っ?)」
勇者「村長が嘘を言っていたワケでも何かを隠していたワケでもないですよ、村民たちもそうですよ」
勇者「勇者っていう強い人がへんてこな塔に住んでる」
勇者「村長も村民も本気でそう思っていたんですよね」
勇者「僕達がドッカ村を救ったことも、僕が謀反人だって呼ばれた時に僕が動けなくなってるのをいいことにタコ殴りにしたことも」
勇者「全部忘れて都合よくそう思っていたんですよね」
村娘「ゆ、勇者、様。あ、の、冗談、ですよね? 勇者様、あ、あの、空気が悪いのは、べつに勇者様のせいで、なくて」
村娘「す、すねて、そういう事、言ってる、だけ……」
勇者「時の流れってホントこわい」
勇者「空気ってホントこわい」
勇者「二十年も経ってしまえばやった方はな~んにも覚えてないんですよね、された僕でさえドッカ村の名前聞くまでドッカ村のこと忘れてましたもの」
勇者「僕は悪くないと僕一人が言っても僕が間違ってるって他の十人が言えば、十人がそういう空気を作る」
勇者「ホントはね。直ぐにドッカ村を滅ぼそうと思ったんです」
勇者「でも出してくれた人、ご主人様ですね、僕を助けた人が僕に助けてくれっていうんですよ」
勇者「なので一度だけは助けることにしました」
勇者「そのあとに殺すつもりでした」
勇者「でもちょっと考えてみて思ったんですよね」
勇者「僕、人間が憎いですが。モンスターも憎いな、って」
勇者「ていうか、僕以外の生き物は全部憎いな、って」
勇者「世界を救ったのに世界は救ってくれませんでしたからねぇ、誰一つ、何一つとしてねぇ、ハッハッハッ。マジ笑える!」
勇者「だからですね」
勇者「憎いから殺すワケですよ、僕一個人の事情で、それ、依頼達成って言えるんですかね」
勇者「ゴブリン退治、言われようと言われまいとやってたんですよ。それ、ご助力下さいってのと併用しちゃいかんと思うんです」
勇者「だから、考えました」
勇者「恩返しは別の方法にしよう、と」
勇者「ご主人様」
村娘「……は……は……」
勇者「僕が何故貴女をこんなところに連れてきているかはもうお分かりですよね」
勇者「貴女だけは殺さないようにって村から引き離したんですよ。あぁ、傭兵衆」
傭兵衆「!」
勇者「身構えなくて結構ですよ、身構えたって無駄ですしね、いやいやしかしご主人様のような村娘が一人でこんなところに残されたら何かとコマリモノ」
勇者「そのための君達です、村は守れんでも小娘一人ぐらいはなんとかなるでしょ、そういうワケで、頑張んなさいね」
勇者「……」
勇者「そんなワケでぇ!」
勇者「ゴブリンは皆殺し!」
勇者「ドッカ村の人間も皆殺し!」
勇者「全速力で行きますよ! さあ! 何秒掛かるかな!?」
勇者「僕がどれだけ衰えてるかの確認も兼ねておりまーす!」
勇者「あぁ! 心配しなくてもドッカ村を滅ぼしたら次の街さらに次の国とこの世全部あの世に送って差し上げますのでドッカ村の人達寂しくないね!」
勇者「僕に下手に関わってる連中はちょっと惨たらしい死に様になりますけどね! 些細なもんです! 皆ゴールは同じ! いいコト言いましたね僕!?」
村娘「や……やめ……」
勇者「やめまっせん!」
勇者「それではまいりましょう! いきますよ! せーの!」
勇者「ヒャッホウ!」
勇者「ひゃっほう(裏声)」
勇者「Wonderful!!!!(軍団)」
――勇者と村娘が出会ってから、五日後――
――王都、王宮――
王様「やはり赤ぶどうはアッチ村、白ぶどうはソッチ村が一番かのう」
王様「うむ」モシャ
王様「うむ」モシャモシャ
王様「美味い」
王様「ぶどう酒にするならばまた別に良いものがあるが生食となればやはりこの二つの村が良い」
王様「これからも良いものを造り良きものを頂きたいものよ」
王様「私は果物に目がなくてなぁ」
王様「おかげで果物作りにかけては国から予算を出しもするし」
王様「私自身が作業に加わることもある」
王様「良きもののためには苦労は惜しまぬし、それが高じてか果物の産地はあら方頭に入った」
王様「……して、大臣よ」
大臣「……はっ」
王様「……ドッカ村がなんと申した。あすこはマンゴーが良いな、うむ、またあれから絞った果汁で以て果実酒など一杯、と、思っとった矢先なのだぞ」
王様「そのドッカ村が集団失踪、とな?」
――勇者と村娘が出会ってから、五日後――
――どこかの村へ向かう街道の道中――
勇者「……」チラッ
勇者「ッィヒ、ッヒ、フッ、ブッフッハハハハハハハハハ!」
勇者「アァァァッハハハハハハハハハッ!」
勇者「ハハハハハッ、ハハッ、ハヒッ、ヒヒッヒハハハハ!」
勇者「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」
勇者「ハハハハハァァァ……ハァ……ァー……ッヒ、ヒヒィ」
勇者「ヒァー……ァァー……」
勇者「アー。腹いってぇー」
勇者「うん!」
勇者「やりましたね!」
勇者「やりましたね勇者様(裏声)」
勇者「疲れましたね!」
勇者「身体が鈍っている証拠ですよ、勇者様(裏声)」
勇者「ゴブリンえーと何匹でしたっけ!?」
勇者「184匹です(裏声)」
勇者「184匹!」
勇者「24秒ほど掛かりましたね(裏声)」
勇者「24秒!?」
勇者「掛かり過ぎ! 鈍り過ぎ!」
勇者「鍛え直さないといけませんねコレは! 万が一魔法使いたちがあれからさらに強くなってたら今の僕だと次こそ死んじゃうかもしれませんからね!」
勇者「頑張りましょう(裏声)」
勇者「頑張ります!」
勇者「しかしやってやりましたよ!」
勇者「しかしやってやりましたね勇者様(裏声)」
勇者「ドッカ村!」
勇者「皆殺し(裏声)」
勇者「何故だー何故私達がこんな目にーって!」
勇者「ずっとおっしゃられておりましたね、皆さん最後の最後まで(裏声)」
勇者「二十年前の僕の顔知ってる人が何人か居ましたからもしかしたら思い当たるかなーなんて思ってたんですけど!」
勇者「最後の最後まで誰も思い付かなかったようで(裏声)」
勇者「村長には特別コースなんてものまで用意してさしあげたというのに! ぷんすかですよ!」
勇者「ぷんすかですね勇者様。ゆっくり、ゆっくりと思い出す時間を作ってあげたというのに村長と来たら(裏声)」
勇者「村民を適当にバラしたあとに先ず娘夫妻を解体しましたよね!」
勇者「直ぐに死んでもらっては困りますから解体中も回復魔法を逐一かけてね(裏声)」
勇者「最後のほうはどっちが娘さんでどっちがお婿さんだか解んなくなっちゃって少し困りました! やりすぎた!」
勇者「お孫さんはまだ幼いですからお尻から頭まで突き刺して飾るだけに留めて(裏声)」
勇者「ちゃんと即死させてあげましたよ!」
勇者「村長思い出すどころかマジギレ!(笑)」
勇者「よくもやってくれたなーこの恨み忘れんぞー七代先まで祟ってやるぞーって!」
勇者「恨み節吐くにしても古臭いんですよね! 七代先まで祟るとか僕はじめて聞きましたよ! あんな古臭い言い回し!」
勇者「大体まぁ?!」チラッ
勇者「まぁ(裏声)」チラッ
勇者「ブハハハハ!」
勇者「やれるものならやってみるといいですよね!」
勇者「出来たら感心してしまいます(裏声)」
勇者「でもやっぱり慣れないことは大変でしたよ!」
勇者「魔王との大戦時代に散々見てきましたけどね! 見ているのと実際『造る』のは勝手が違うってもんで!」
勇者「一日がかりの大作業になりましたが滞り無く終われました、さすがは勇者様多芸多才であられる(裏声)」
勇者「あんもうハズカシイ!」
勇者「事実ですけれど面と向かって言われると照れちゃいますよ!」
勇者「しかし何にしても結構!」
勇者「大変結構でございます!」
勇者「覚えていようが忘れていようが構いやしません!」
勇者「どうせやることは変わりやしませんから(裏声)」
勇者「僕を二十年前あんな箱に叩き込んだ連中はとびきり惨たらしく!」
勇者「勇者様がそんな目に遭っているのに無関心だった世界は(裏声)」
勇者「むごたらしくは可哀想なので出来るかぎりサクッと始末します!」
勇者「さすがは勇者様(裏声)」
勇者「あれだけのことがあっても尚未だ慈悲の心があられるとは世界平和賞を受賞しても可笑しくありません(裏声)」
勇者「褒めても何も出ませんよ!」
勇者「ていうか受賞しましたし!」
勇者「二十年前に! 受け取れなかったけど! 世界を救ったんだから受賞確実でしたし! 受け取れなかったけど!」
勇者「おぉっと!?」
勇者「さぁ皆さん!」チラッ
勇者「次の村が見えてきましたよ! ん~!? 良い香りがしますね!」
勇者「ブドウですかね! ここら一帯はフルーツ産業盛んですからね!」
勇者「皆さんもかつてはフルーツ産業に従事した方も多いでしょうから良心が咎めるかもしれませんが!」
勇者「勇者様のために、行きましょう(裏声)」
勇者「僕のために行ってらっしゃーい!」
勇者「僕が僕のために造った」
勇者「――元ドッカ村の村人衆!」
ゾンビ兵「あ゛―……」
勇者「ハハハハハハハハハハハッッッ!」
勇者「ヒャッホウ!」
勇者「ひゃっほう(裏声)」
150 : 以下、名... - 2015/05/24 13:25:45 eygWWnLw 91/422補足。
ゾンビ兵とはゾンビを鎧やら剣やら武装させたもの、素材提供はドッカ村。
ドッカ村でほぼ唯一助かっている村娘が助かった理由はホントにただ単純に、勇者を塔から出してくれたから、その一点のみ。
もしそれがなかったら今頃村娘もゾンビ兵の仲間入り。傭兵衆はそのおこぼれに預かれて本当に運が良かったというわけですね。
村には二十年前に住んでなかった人や関わっていなかった人も少なからず居ます。村娘と同年齢の子や村娘彼氏など、そもそも生まれてなかった人も。
ただ関わっていた人が大勢居たため纏めてこのような悲惨なことに。
纏めなくても、とか、関係ない人を巻き込まなくとも、と、普通なら考えますが。そういう普通で理性的な判断・思考能力はもう勇者の中にないからね。
仕方無いね。
以上補足終わり!
――勇者と村娘が出会ってから、一月後――
勇者「睡眠や食糧の補給が要らず、死ぬことを恐れず、頭や心臓など急所を貫かれても術者の魔力があれば動き、当然命令には絶対服従(裏声)」
勇者「とっても便利! ゾンビへーい!」
勇者「しかし一番便利なのはこの一点!」
勇者「低コスト(裏声)」
勇者「そう! 死体とちょっとした技能とちょっとした魔力さえあればいいですから!」
勇者「魔王軍との大戦において彼等より面倒くさいものは四天王と魔王ぐらいでした!」
勇者「魔王軍のゾンビ兵はそれに付け加えて、術者の魔力がなくとも瘴気さえあれば自動修復する機能を備えていましたが(裏声)」
勇者「僕のゾンビ兵には自動修復機能がないんですよねぇ残念ながら!」
勇者「瘴気とか操れませんし! 操っちゃ駄目でしょ勇者なんだから!」
勇者「そ・の・か・わ・りぃ!」
勇者「魔王軍のゾンビ兵のような自動修復機能がないかわりに! 女神の加護が一つ『蘇生』機能を付けてみましたー!」
勇者「四肢をもぎ取られるなりしてにっちもさっちも行かなくなった場合に限り一度だけ! 五体満足で復活しますよ!」
勇者「僕や昔の仲間達は何度でも復活できましたが!」
勇者「これだけ大人数になると流石に効能薄いです!」
勇者「ゾンビ兵勇者エディションはこれだけではありませんよ! 自爆機能も搭載しております! 結構強力なやつを!」
勇者「……だからこうやって、何人か集めて、一箇所に集めて、ボンっとすれば、分厚~い外壁もあら簡単茹でたトマトみたくペロッといけます」
勇者「ごきげんよう? ソギャン街の皆々様」
勇者「お勤めご苦労、ソギャン街警備隊諸君」
勇者「アッチにコッチ、ドッチにドッカと色~んな村々+αを全~部ゾンビ兵にしちゃって驀進中の勇者で~っす」
勇者「流石に村四つも集団失踪なんて事件起こしてればどれだけ愚鈍な国の連中でも腰を上げますよねぇ」
勇者「腰を上げ調べてみたら集団失踪じゃなくてゾンビにされて兵隊代わりに使われてるんですからねぇ」
勇者「しかもソレやらかしてるのはな~んとこの僕」
勇者「かつて世界を救ったが魔王との戦い以後悪に心を蝕まれて正気を失いつつあった為、ため、えーと」
勇者「ああそうだ、自ら封印されることを望んだってことになっている勇者ときたもんだから驚きですよ」
勇者「ああ、途中で立ち寄った村で教えてもらったんですよ、これには僕は僕で驚かされましたけどね。まさかそんな風説を流されていたとは」
勇者「どうでもいいですけどね」
勇者「貴方達からしてみれば今の僕は完璧に悪に呑まれて正気を失ってるってことになるんでしょうねぇ」
勇者「どうでもいいですけどね、ホント」
勇者「兎にも角にも今貴方達が防衛線を敷いている相手はこの僕であるということが大事なところです」
勇者「ああ、そうだ、褒めなければいけませんよね?」
勇者「情報がいつこの街に届いたのかは知りませんが」
勇者「わざと中に入れて狭い場所に誘い込んで数で押し潰そう作戦、悪く無いですよ、というか、とてもいいですよ、短い時間でよく考えました」
勇者「精密な動作ができないから狭い場所での戦闘は避けたかったし、自爆もこれじゃ同士討ちすることのほうが多くなりそうだから使えません」
勇者「こっちはたかだか村4つ分と一人、そっちはこっちの五倍強、油断しそうなもんですけどね、油断せずに数の理をちゃんと活かそうとする」
勇者「ソレに付け加えて、まぁ、うん、虚を突いたと思ってたんですけどね。四方の門からじゃそうされると思って外壁ぶち抜いたっていうのに」
勇者「あっという間に取り囲まれちゃってこっちが虚を突かれてしまいました、ぶち抜かれそうな壁の薄い所最初から張ってたとはねぇ~……?」
勇者「貴方の入れ知恵かなぁ~?」
勇者「せ・ん・し、さ~ん」
勇者「……ヒャッホウ」
続き
勇者「魔王を倒してから、あれから二十年!」【2】

