1 : 矢橋P - 25/09/07 00:28:59 sf5J 1/79このSSはアイマスBBSという掲示板で行われた【アイマスSS祭2025】に投稿した作品です
そろそろ投稿して一ヶ月経つのでこちらにも投稿します
かの有名な、自分が人生で一番尊敬している作家から影響を受けた作品です
元スレ
【ミリマスSS】悪魔「勝負しましょう」
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1757172539/
765プロ劇場事務所
P「今日も今日とて残業と……」カタカタ
時計<モウ22時ダヨ
P「日付が変わるまでまだ時間あるな。もうひとふんばりするか」
???「どうも、こんばんは」
P「…………」
P「うわっ、誰だお前!」
P(スーツを着こなした老紳士?不法侵入者にしては似つかわしくない格好だが……)
???「おや、お騒ぎにならないのですね。」
P「こんな深夜の残業中に騒ぎ立てる元気は無い。あと怪奇現象なら見慣れているんでな」
???「それはけっこうでございます。あなた様なら話がわかりそうで何より……」
P「別にお前のことを犯罪者じゃないと判断したわけじゃない」
???「それは当然でしょうね。では警察に通報される前に私の自己紹介をさせていただきたいと思います。諸々の処置はその後でも遅くないかと」
P「内容によっては即つまみ出すぞ」
悪魔「私、悪魔と呼ばれている者です」
P「悪魔……ね」
P(こいつ……根拠を一つも口にしていないのに妙に説得力があるな。これが悪魔の力か)
P「それは比喩や表現じゃないんだな」
悪魔「正真正銘の悪魔でございます。お呼びする際も単に悪魔と呼んでいただければけっこうですね」
P「直球すぎないか?せめて何かあるだろう、サタンだとかマモンだとか」
悪魔「我々は名前などあまり気にしないのですよ。悪魔という名前も人間達が我々をそう呼ぶのから引用させてもらっているわけでして」
P「しかしそのなりじゃ悪魔らしさも欠片もない。悪魔ならそれらしい格好をしているもんじゃないのか」
悪魔「それはもう時代遅れなのです。その気になれば出来ますとも、角を生やしたり羽根を伸ばしたりとか。ですが最近の人間ときたら驚いて逃げ出すか逆にわざとらしいと笑い飛ばすかでして」
P「それもそうだろうな」
悪魔「このような人の世にあって、あなた様は理解力のあるお方だ」
P「……それで悪魔がこんな夜更けまで仕事している社畜に何の用だ」
悪魔「私と勝負しませんか?」
P「断る」
悪魔「即答ですか。これは手厳しい」
P「……と思ったが勝負の内容を聞くだけ聞いてやる。断るかどうかは内容次第だ」
悪魔「ほう……。理解力があるだけではなくあなた様は相当変わっていらっしゃる」
P「くだらない世辞はいい。勝負の内容を言ってみろ」
悪魔「なに、簡単です。あなた様のどんな願いでも三回叶え差し上げましょう」
悪魔「そしてあなた様が三回叶え終わった後”幸せ”になっていればあなた様の勝ち、そうでなければ私の勝ちです」
P「どうか願いでも叶えるか。素敵な話だが代償もそれなりにあるんだろ。それと負けたペナルティは?」
悪魔「代償などございません。あなた様が勝った場合は叶った三つの願いがそのまま報酬です。ただし負けた場合は叶った三つの願いが白紙になり初めから無かったことになります。せっかく叶えた願いがパーになってしまうわけですね」
P「…………」
悪魔「おっと忘れてました。加えてあなた様に傷を付けさせてもらいます」
P「傷?」
悪魔「そんな大層な傷ではございません。ほらこんな感じに」
悪魔が腕を捲ると左腕の手首の甲に稲妻みたいな白い傷……というより痕みたいなものが浮かび上がった
悪魔「この位置ならば傷があっても目立たないでしょうし腕時計でもすれば隠れる位置です。当然痛みなどはありません」
P「そんな意味の無い傷をなぜ付けるんだ。マーキングってやつか?」
悪魔「それに近い感じでございましょう。いわば印にございます。これはあなた様が私との勝負に負けたという証。あなた様にもメリットだってごさいます。他の悪魔に対しても目印になる」
悪魔「悪魔が勝負を行ったり契約するのは原則として生涯一度だけ。その印があれば他の悪魔はあなた様には近づきません」
悪魔「願いが白紙になることについても面倒ごとは起きません。周囲の記憶も消させてもらい本当に初めっから無かったことにさせてもらいますから」
P「ずいぶん手厚いな。俺の魂は取らないのか?」
悪魔「要らないですよそんなもの。私達悪魔が人間の魂など得たところで何になるというのですか」
P「そういうものか」
悪魔「それで、この勝負お受けしますか?強制はしませんよ」
P「……」
P「受けよう」
悪魔「ありがとうございます。やはりあなた様は特別な方だ」ペコリ
P「最近退屈だったんだ。たまにはこういうことも良いかなって思ってな」
悪魔「では最初の願い……に入る前に幾つか注意事項がございます」
悪魔「まず、どんな願いでもと言いましたが私達どもでも叶えれない願いもございます」
P「おいおい、どんな願いでもいいと言ったじゃないか。最初から詐欺か」
悪魔「まあまあ、事情をお聞きくださいませ」
悪魔「まず願いは持続しません。従って持続する願いは無理です」
悪魔「例えばどんな難病も一瞬で治して差し上げますが『今から一年間、風邪をひかないようにしてくれ』というのは無理ですね」
P「要するにその場で効力を発揮するものじゃないといけないのか」
悪魔「本当に物わかりが良いようでなにより」
悪魔「『今すぐじゃなくて半年後に……』というのも駄目です。今までの例ですと『一ヶ月に一回、その時のサラリーマンの平均給料の十倍の金額をポケットに入れてくれ』と頼んだ方が居ましたね。これも当然駄目です」
P「そいつ結構頭いいな」
悪魔「次に願いに関する願いも駄目です。願いの数を増やしたり願いの権利を他人に譲渡したりね」
P(チッ。願いの数を増やすのは駄目か)
悪魔「最後に私、悪魔に対しての願いも駄目です。私をしもべにするだとかね。それを許してしまうと勝負にならないですので」
P「まあそうだろうな」
悪魔「余談ですが『悪魔と結婚したい』と願った変人も過去には居ましたよ」
悪魔「だいたい以上ですかね。どうします?最初の願いを叶えるまでは引き返すことは出来ますが……」
P「いや、思ったよりは制約が少ないみたいだしこのまま続けさせてもらうさ」
悪魔「それでは最初の願いはいかがしましょう。まあ、直ぐに決めないでじっくり考えるのもよろしゅうございますが……」
P「いや、もう決まっている。金だ」
悪魔(何だこの男。ひどく冷静で手強い人間かと思ったが……)
悪魔(まずお金だと?浅慮にもほどがある)
P「どうしたそんなにニヤニヤして」
悪魔「いえ。私の今までに願いを叶えてきたデータによりますと最初に金銭関連の願いをいうパターンが70%以上でして」
P「つまり予想通りと」
悪魔「そういうことでございます。金額はいかがしましょうか」
P「それじゃ100兆円」
悪魔「!」ビクッ
P「……と言ってこの部屋に100兆円分の万札をいきなり出されて生き埋めにされても困るしな。10億円でいい」
悪魔(この男……)
悪魔「それでいかがしましょう?」
P「いかがしましょうとは?」
悪魔「願い通り”10億円の偽札”なら直ぐにでも用意出来ますが」
P「偽札に指定した覚えはないんだが」
悪魔(ふん。この男もやはり馬鹿だな)
悪魔「いやいやいや、P様。お札……いや『日本銀行券』と正式名称で申した方がよいでしょうね」
悪魔「日本銀行券にはそれぞれ記号番号が振ってあるのですよ。やれ特殊な用紙を用いて歴史上の偉人を書いて透かしを入れればお札になるわけではありません」
悪魔「そうして出来たお札に日本銀行が番号を与えて初めて日本銀行券という価値のあるものとなるのです」
悪魔「でなければ、いくら特殊な加工をしているとはいえあんな紙切れが一万円の価値など持つはずがないではないですか」
P「……日本銀行以外が割り振った以外の番号の万札を新しく創造したとして、それがどんなに精巧でも全て偽札。といって既存の番号のお札をコピーしても結局偽札。そういうことだな」
悪魔「その通り。打ち出の小槌から出てくる小判のようにはいかないのですよ」ニヤニヤ
P(この悪魔……やっぱりな)
悪魔「どこかの億万長者から無理やり引っ張ってくることは可能ですがね」
P「盗みに加担しろってか。そんなことは論外だ」
P「現金を出す方向は辞めにするとして宝石や金塊……も駄目だな。換金が面倒だ」
悪魔「そうでしょうね。50万~1000万ぐらいならさほどでしょうがそれ以上となると身分証明等の手続きも出てきますし」
悪魔「今までそんなものに縁が無かった人間が突然やれ宝石だのやれ金塊だのと持ち出したらどこからか盗んできた強盗扱いされるのがオチでしょう」
P「物ではなくデータならどうだ」
P「銀行口座に直接振込……も駄目か。送金の出所がはっきりしてないと問題になる」
悪魔「銀行も困るでしょう。出所不明の10億円が突然振り込まれていては」
悪魔「それに口座に入金すると税金が発生するのも問題ですねぇ。これは不動産にもいえることですが」
P「不便なもんだ。どんな願いでも叶えると言っても大したことないじゃないか」
悪魔「まあまあ、それではこうしましょう」
悪魔「この世界には紛失したお金というものがございます。火事で焼けたとか津波で流されたとかね」
悪魔「それを復元するのです。それならば偽札というわけではないですし、誰かが困るということもございません」
悪魔「それをうん何百億は無理ですが10億円ほどなら可能ですよ」
P「確かにそうだな。……慣れているのか?」
悪魔「ええ。金銭関連の願いを願う方は多いでございますからこのやりとりも手慣れたものですよ」
P「そうかい、それじゃそうしてくれ」
悪魔「それでは契約成立ということでよろしいでしょうね?」
P「ああ」
ジュツ!
P(これは……)
悪魔「それでは第一の願い、10億円です」
ドン! ドカドカドカ
悪魔「一億円分のアタッシュケース10個はサービスです」
ガチャ、バタン
ペラペラペラペラ
P「確かに全て本物のようだな」
悪魔「お望みとあれば自宅に転送しましょうか。会社にあっても困るでしょう?」
P「ああ、頼む。俺の寝室に置いてくれ」
ピュン
悪魔「それでは一週間後また会いに来ます。それまでその10億円でどうぞお楽しみください」
ボワン
P「消えたか。……まいったな」
そして翌日
とあるファミレス
未来「本当にいいんですかー!」キラキラ
P「ああ。好きなだけ頼んで食べていいぞ」
翼「やったーー!まず、ステーキに、パフェも頼んじゃお~~」
静香「でもいいんですか?プロデューサー」
志保「このファミリーレストラン、高級志望の値段が高いところですよね」
P「みんなこないだのライブ頑張っただろ。そのお礼みたいなもんだ」
P「支払いもカードだしな」
可奈「プロデューサーさんがそう言うなら~。美味しいものを食べてみんなハッピー。ファミレスでキャッシュレス~」
志保「可奈、あなたは食べ過ぎは駄目よ」
可奈「そんなー」
P「…………」
とある洋服屋
紗代子「好きなだけ買っていい……ですか」
P「ああ。ただあくまで仕事の一環だからな。今後に繋げてほしい」
P「アイドルが着るのはステージ衣装だけじゃないしな。何かの参考になってくれればいいよ」
エレナ「嬉しいヨ~ありがとネ、プロデューサー!」
恵美「ずいぶん羽振りがいいんじゃない~?何かあったの?」
P「特に何もないさ」
琴葉「ですけど、この店有名なところですしお値段も……あ」
琴葉「財布新しくしたんですね。良い財布です」
P「最近新しくしたんだ」
P(前の財布はそんなに万札入らない財布だったからな)
P(…………)
とあるホテルの最上階
このみ「こんなところでみんなと食事をしようだなんて、洒落てるわねプロデューサー」
莉緒「で~も。無理しないで安い居酒屋でも良かったんだぞ、プロデューサーくん」
P「それだと閉店まで飲み飲み明かしそうだから駄目です」
千鶴「まあプロデューサーも男性ですし、格好だってつけたくなりますわ。居酒屋ではそうもいきませんもの」
風花「夜にいい雰囲気のレストランに連れていってもらって嬉しいです」
莉緒「あら、歌織ちゃんどうしたの?もじもじして」
歌織「あの……父が話していたんですけど、男性とこういうレストランと食事する場合って……その……」
風花「ええーっ!?」
P「そんなつもりは無いです!」
P「…………」
一週間後
悪魔「どうでしたか、10億円の使い心地は?」
P「まあまあだ」
悪魔「P様のことをこの一週間こっそり見てましたがアイドルに驕ったり買ってあげたりと他人のことばかり。自分が幸せになる気がおありですか?」
P「自分の大切なアイドル達だ。これくらい普通だろ」
悪魔「せめて少数人に絞るとかならともかく律儀に平等にアイドル全員にばらまくとは」
悪魔「一週間も時間をかけてよくやりますよ。担当アイドルといってもプロデュースが終わったら赤の他人だろうに。せめて一人に絞ってお金の力で気を惹きつつアプローチするというのならわかりますがね」
P「…………」
P「それにあれはお試しみたいなもんだしな」
悪魔「ほう」
P「自分のためにもちゃんとお金は使ったさ」
P「昨晩一人でキャバクラに行ってきた」
悪魔「ほうほう!P様もなかなかやりますねぇ」
悪魔「そうでしょう。あんなにかわいい女性に囲まれていながらこちらから手を出せない。なればしかるべきところで発散させるしかないでしょうね」
P「あの子達の見ているところで自分の為にぱーっと金をばらまくわけないだろ」
悪魔「なるほどなるほど。アイドル達に色々お金使ったのは、あくまでお試しだったわけですね」
悪魔(先に他人の為にお金を使っておけば罪悪感も減るというものですか)
悪魔「それでキャバクラの方はお楽しみでしたか」
P「クソもつまらなかったな」
悪魔「店が悪うございましたか?」
P「店やキャバクラの名誉の為にいうが店側に落ち度はない」
P「そもそもあの辺りで一番の店を選んだ。良い雰囲気、贅沢な酒、アイドルはまた違う美人なお姉さん達がお相手してくれて至れり尽くせりだ」
P「だがな、お金をばらまくほど『羽振りが良くて羨ましいですわ。どのような仕事をなさっているのですか?』って聞かれるんだよ」
P「そんなことを言われるたびに酔いも覚めた」
悪魔「アイドルのプロデューサーだと名乗ればいいじゃないですか。超有名プロダクションならばそれくらい稼いでいてもおかしくないですし」
P「言えるか。そんなお酒もある場で、ぽろっと『ーーーをプロデュースしている』なんて漏らしたらとんでもないことになる」
P「最近人気のアイドルのプロデューサーが大人の店に通ってました。とね」
悪魔「そういうものでしょうかね」
P「と言って宝くじで当てました。なんて言っても締まらないしな」
P「他人の金で酒を飲んでもクソもつまらないってわかったよ」
悪魔(くく……それはそうでしょう)
悪魔(お金をただ単にばらまくのが気持ちいいのではない。人生を成功した人間が『そういうふうにお金を使える自分自身の境涯』に酔うなら話は違うのですがね)
悪魔「それでは第一の願いは失敗ということですか。さっそく第二の願いに行きます?」
P「ああ。もう願いも考えてある」
悪魔「ほう」
P「お金じゃやっぱり幸せになんかなれないな。お金より愛だ」
悪魔「愛……ですか」ニヤニヤ
P「これも予想通りか」
悪魔「いえ、むしろ予想外ですね」
悪魔「昔は最初はお金と言って次に恋愛関係の願いを言うのが鉄板だったんですが最近はどうも変わりまして」
P「世の中愛が全てじゃないという人間が増えてきたってことか」
悪魔「時代でしょうね。愛と申されますとあなた様の担当しているアイドルの一人でも……」
P「アイドル達とは別に俺には思いの人がいてな」
悪魔「なんと!」
P「俺が高校生の頃に引っ越してから会ってない。その人に会いたいな」
悪魔「ほうほう、そうですか」
悪魔(これはこれは。面白くなってまいりましたねぇ)ニヤニヤ
悪魔「それでどうします?私の力なら色んなこと出来ますよ」
悪魔「その方を突然の事情でP様のお隣に引っ越して来た……ってシチュエーションでもよいのですよ?」
P「いやそんなことはいい。その子の住所さえ知ることが出来れば充分だ」
悪魔「なるほど。あくまで決着は自分でつけたいわけですね」
悪魔(さて……と)
数日後
電車内
P「……」
悪魔「わざわざ会いに行くとはお堅いですねぇ」
P「お前もわざわざ着いてくるんだな」
悪魔「これはぜひとも見届けたいもので。P様の邪魔はいたしません」
悪魔「それにまだ使ってない第三の願い。これも場合によっては必要でしょう?」
P「……まあな」
悪魔「そのお持ちになっている袋は想いの人へのプレゼントですか。楽しみですねぇ」
P「…………」
そして
スタスタ
悪魔「こんな田舎だとは」
P「今まで行方を探っては居たんだが……通りで今までわからなかったわけだな」
P「さて、願いによって教えてもらった住所だとここら辺だが」
悪魔「住所だけでなく電話番号まで教えてあげたのですけどね」
P「ああ助かったよ。昨日連絡は取ってあるんだ」
P「突然だったから相手も驚いていたけど」
悪魔「ふふ、下準備はばっちりですか」
ザッ
P「この家だな」
悪魔「それでは私は一旦引っ込むとしましょう」
悪魔(それであの子は…………と。いやはや、健気ですねぇ)
<ピンポーン
悪魔(さてどんな展開になるのでしょうねぇ。あっさり振られて第三の願いに泣きつくというのも面白いですし、思いのほかうまくいってあの子が……ってシチュエーションでもいいですね)
悪魔(どっちに転んでも反応が楽しめるというもの)
ガチャ
先生「あらPちゃん!久しぶりねぇ」
悪魔「は」
悪魔(Pちゃん?)
P「お久しぶりです先生」
先生「いきなり電話かけてきた時には驚いたけど大きくなって……。とりあえず上がってちょうだい」
P「あの時はみんな驚きましたよ。自分が卒業間近で先生が突然学校から居なくなるだなんて」
先生「そのことについては申し訳ないと思っているわ。旦那とね、色々あって……」
悪魔(待て待て待て)
悪魔(旦那?これはどういうことだ?)
先生「Pくんから突然電話がかかってきた時は驚いたの。正直、今さら私がPくんに会うことなんて出来ないって思っていたし……」
先生「でも、これも最後の機会と思って」
P「そんなことないです。あの時先生に言った『プロデューサーになりたい』という夢を叶えることが出来ました。今日はそのことを報告したかったんです」
P「そして出来れば……同窓会で他のみんなにも会ってください。みんな先生に会いたがってます」
先生「Pくん……」
その後
先生「Pくん今日はありがとう」
P「また電話します」
バタン
悪魔「P様。これはどういう……」
P「別に、『想いの人』に会いたい。言った通りだが」
P「誰も恋人だとは言ってないだろ」
悪魔「こんな……」
P「あと、最後の願いの内容決まったよ」
P「結構遠くまで来てしまったから帰るのが面倒だ。あと少ししたら事務所まで送ってくれ」
悪魔「!!」
悪魔「それは勝負を放棄するということですね」
P「ああ。最初から勝負に勝つ気はなかったからな」
悪魔「……ならなぜ勝負を受けたのです?私をおちょくるつもりだったとでも」
P「その理由を言う前に」
P「居るんだろ? ”可奈”」
悪魔「!!」
ひょっこり
可奈「プロデューサーさん。私……」
P「いいんだ。最初に俺の為に願いを使ったんだろ?」ナデナデ
悪魔「気付いておられたんですか」
P「確証はなかったがな」
P「そもそも俺が今回の勝負を受けたのは、あの場で俺が勝負を断ればお前は次にアイドルに接触するだろうと思ったからだ」
P「だからそうなる前にあえて俺が先に受けようと思った」
P「その時はまさか”既にアイドルに接触していた後”だとは思ってはいなかったがな」
悪魔「ではいつから?」
P「最初に心に引っかかったのはお前が最初はあなた様と呼んでいたくせに、途中からP様呼びになった時だな。まだ名乗ってもいないのに」
P「だから誰かから俺のことを聞いたのだろうと思った」
悪魔「私としたことがなんという凡ミス!」
P「しかしそれだけならあらかじめ俺のことを下調べしてから接触したという可能性があるし、決め付けることは出来なかった」
P「そこでお金を使うという名目でアイドル全員の反応を探ってみたが……」
P「それらしい反応をしたのは可奈だけだった」
可奈「そ、そうだったんですか……」
P「決定的になったのは俺がアイドル達にあれこれしたことは知ってるくせに俺が一人でキャバクラに行ったことは知らなかったことだ」
P「大方、アイドル達の時のことは可奈に接触して聞いたんだろ!」
ニヤリ
悪魔「ええ、そうです。今回は同行したのもあなた様の反応を直に見るためでして」
P「『俺が見知らぬ女性に会いに行くのを見守る可奈の反応』の間違いじゃないのか?」
悪魔「ご名答!いやはやその通りでして」
P「この悪魔め」
悪魔「ほら。あなた達人間は皆、私達をそうおっしゃるでしょう?」
可奈「プロデューサーさん、勝手なことしてごめんなさい」
P「いいさ。俺だって最後に欲が出て自分のために願いを使った」
P「可奈は俺のために願いを使ったんだろ?可奈の方が偉いよ」
P「だけど一つ言わせてくれ。『遺産は相続させることができるが、幸福は相続させることはできない』これはあのノーベル賞で有名なアルフレッド・ノーベルが言った言葉だ」
P「俺が可奈に幸福を与えることは出来ないし、可奈も俺に幸福を与えることは出来ないんだよ」
P「当然、こんな悪魔の願いなんかで人間が幸福になることも絶対ないんだ」
可奈「わかりました」グス
ヒュン!
可奈「ひえっ」
悪魔「水を差すようですが最後の願いの力です。お二人を事務所まで移動させてあげましたよ。もう終わらせたいのでね」
P「急だな。俺と可奈が綺麗に話しを収めているのをそんなに見たくないのか」
悪魔「ええ。そういうのは望んでいないのですよ」
悪魔「これで願いは全て使い切りました。P様と私との勝負は私の勝ちということで」
P「そうだな。出来レースみたいなもんだったが」
悪魔「約束通り敗者の証を付けさせてもらいます」
P「可奈にも付けるのか」
悪魔「契約上はそうなのですが……まあそちらのアイドルさんはやめておきますよ。私も”完全勝利”ではないのでね」
P「それはどういう……ッ!」ズキッ
可奈「プロデューサーさん!?」
悪魔「これで完了です。最後に……いややめておきましょう」
悪魔「ではさよなら。二度と会うことはないでしょう」
ボワン
可奈「消えちゃいましたね」
P「最後に何か言いかけていたが……」
高木社長「それで彼との勝負は君の勝ちだったのかね?」
悪魔「勝ちでも何でもないですよあんなの」
悪魔「私の願いで幸せになった人間は今まで存在しない。だから私の狙いはあんな決まり切ったことじゃあなかった」
悪魔「私はあの男が『自分の担当アイドルをトップアイドルにさせてくれ』って願うと思っていたんですがねぇ」ハーァ
高木社長「だが彼はそう言わなかった。この勝負、私の勝ちだ」
悪魔「完敗ですよ。わざわざアイドルにも近づいたというのにそのアイドルも『自分をトップアイドルにしてくれ』と願わなかった」
悪魔「あなたのアイドルとプロデューサー、欲が足りないですよ。そんなんでトップアイドルとやらになれるのですか」
高木社長「君も勉強が足りないね。トップアイドルとは願うことではない。自らで掴み取るものだよ」
高木社長「君も一度、我がシアター講演を見てみたらどうだね?」
悪魔「遠慮しますよ。私はリアルな人間の表情をみるのが好きなんです」
高木社長「偶像に興味はない……ね。そう思っているうちは君があの子達に負けるのも必然だ」
悪魔「はぁ。そんなものですかねぇ」
その後
財布にびっちり入ったお金も家にあったアタッシュケースもすっかり消えていた
今となっては悪魔とやらの姿もぼんやりとして、どんな姿や声だったかも思い出せない
可奈にいたってはもうほとんど覚えていないみたいだ
ふと、あのことはただの自分が勝手に想像した都合の良い夢だったのではないか。とも思う
だがそう思うたびに左腕に目をやるとそこに刻まれた傷跡が決して夢ではないことを教えてくれるのだった
-完-
79 : 矢橋P - 25/09/07 20:53:49 sf5J 79/79
気付かれた方もいると思いますがこのSSは星新一の影響を受けております
私など星新一の足元にすら及ばないと思いますがどうか見てくれた人が少しでも感じ取ってくれれば幸いです

