P(琴葉が相談? 何か重いことじゃないと良いけど……)
琴葉「……」
P(一人で悩んできたって顔だな……俺も覚悟を決めるか)
P「わかった。会議室でいいか?」
琴葉「助かります」
元スレ
田中琴葉「プロデューサー、相談があります」
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1570152792/
……
P「改まって俺に相談ということは、アイドル活動のことか?」
琴葉「はい……私、自信がなくって……」
P「……何か辛いことでもあったのか?」
琴葉「いえ、そういうのは全くないです。とても楽しくやれてます。ただ……」
P「ただ?」
琴葉「私……本当に、正統派アイドルとしてやっていけるのでしょうか?」
P「ん? 俺はやれてると思うけど?」
琴葉「そうですか?」
P「プロデュース方針もそうやってきて、ソロも個性派というより、正統派って感じだし」
琴葉「はい」
P「最近のユニットでも、おもしろいに振りきれることも、かわいいに振りきれることもない、王道って感じだし」
琴葉「そうですね。スタエレに選んで貰って感謝してます」
P「ああ、うん。どういたしまして」
P「ファンの投票企画でも人気だし、TBの演技力は高評価だったし」
琴葉「ありがとうございます」
P「……何で自信がないんだ? もう少し自信を持っても良いと思うぞ」
琴葉「……プロデューサーにそう言って貰えて嬉しいです。でも……」
P「でも?」
琴葉「こんな……」
琴葉「しじみ汁が好きすぎる正統派アイドルなんていませんよね」
P「…………はい?」
琴葉「最近、口を開けばしじみ汁、しじみ汁って言ってる気がして」
P「自覚はあったのか」
琴葉「私、プロフィールを書くとき、三日三晩悩んだんですよ」
P「……もしかして好きなもの?」
琴葉「そうですよ。アイスは正統派アイドルらしい……でも、しじみ汁は違います」
P「そうかなぁ?」
琴葉「過去の正統派アイドルで、しじみ汁が好物と答えた人なんて、一人もいません」
P「それはそうだろうな」
琴葉「だから、断腸の思いで、しじみ汁を書かないことに決めたんです」
P「書いてても良かったと思うけど」
琴葉「でも、それを全面に押し出すと、そういう仕事しかこなくなるかもしれません」
P「そうか?」
琴葉「しじみ観光大使とか、しじみクイーンとか……正統派アイドルとしてどうなんですか?」
P「実在したら謝っておきます。申し訳ありません」
琴葉「だから、この好きな気持ちは、ごく一部の仲間とだけ共有するつもりでした」
P「……そうか」
琴葉「でも最近、急速に広まってきて……困ったことになってきました」
P「……よし、聞こうか」
琴葉「この前、恵美とエレナでカラオケに行ったときの話なんですけど……」
……
恵美『よーし、今日は歌うぞー! あ、ドリンク何にする?』
琴葉『私はしじみ汁で』
恵美『オッケー、エレナは?』
エレナ『ワタシはメグミブレンド、また飲みたいなー』
恵美『クリームメロントコラティね、オッケー!』
……
P「……何に困ってるの?」
琴葉「ここは、恵美かエレナが、『またしじみ汁?』ってツッコんでくれる所だったんです」
P「……そうか」
琴葉「それで私が、『だって、好きなんだもん……』って言う、一種のコミュニケーションだったんです」
P「今のかわいかったぞ」
琴葉「か、かわ……あ、ありがとうございます」
P「そのかわいさがあれば」
琴葉「それで、更なるツッコミを期待して、奈緒ちゃんたちともカラオケに行ったんですけど」
P「続くのね」
……
奈緒『さぁ、今日は歌うでー! 飲みモンどーする?』
可奈『オレンジジュース!』
未来『牛乳!』
奈緒『これから歌うっちゅーのに、牛乳ってなんでやねん!』
未来『でへへ~』
奈緒『琴葉はしじみ汁でええやんな?』
琴葉『……ええ、お願い』
……
琴葉「奈緒ちゃんにツッコんで欲しかったのに……皆のテンポが早すぎて……」
P「先手を打たれてしまったと」
琴葉「こういうことでしか笑いを取りに行けない私……つまらなすぎて絶望します」
P「過去のセリフ引用しないで」
琴葉「それに、浸透しすぎて困ったことが他にもありまして」
P「よし聞こう。どんどん話してくれ」
……
琴葉『ただいま戻りました』
美奈子『おかえりー! 琴葉ちゃん、待ってたよー! 新作! しじみラーメン!』ドンッ
琴葉『へ?』
美奈子『琴葉ちゃん、しじみ好きでしょ? だからティンときて、作ったんだ。愛情たーっぷりこめたよ。さぁ、召し上がれ』
琴葉『……ありがとう。……あ、おいしい』
美奈子『でしょでしょ?』
……
琴葉「最初の30分は天国でした」
P「30分も食べ続けられたのか。それはすごいな」
琴葉「だって、追いラー油も準備してくれて……おいしかったんだもん」
P「流石美奈子」
琴葉「後半は流石にその場に居た星梨花ちゃんと杏奈ちゃんに手伝ってもらいました」
P「貴音が居ないのが悔やまれる……その2人では戦力にならなそうだけど」
琴葉「星梨花ちゃんが中の人を降ろして何とか完食できました」
P「今更だけどメタはやめよう」
P「……というか、そんなに困ってないんじゃないか?」
琴葉「ここまでは、まだ事務所の中だけなので、まだいいんです……でも」
P「他にもあるのか?」
琴葉「はい。この前のライブで危機感を覚えたことがありまして」
P「え?」
……
未来『終わった! スタエレ最高!』
可奈『楽しかったね! また3人でやりたいね』
琴葉『本当に……さぁ、浸るのは後にして次の準備に』
スタッフ『お疲れ様、はい、矢吹さん』スポドリ
可奈『ありがとう!』
スタッフ『はい、春日さん』黄色い水
未来『ありがとうございます!』
スタッフ『はい、田中さん』しじみ汁
琴葉『あ、ありがとうございます』
可奈『ごくごく……ぷはー、生き返るっ』
未来『暑いもんねぇ、レモンティーがごーごーろっぷんにしみわたる……』
可奈『お菓子もあったら最高なのに……はっ。いけない、終わるまでがまんがまん』
未来『よーし、じゃあ次にそなえてレッツゴー!』
可奈『おー!』
琴葉『ズズ……』
……
琴葉「あのしじみ汁、おいしかったですけど……流石にあの場面は水がいいです」
P「わかった。伝えておく」
琴葉「ライブの時のケータリングにあれば充分です」
P「それは欲しいのか」
琴葉「……おいしいし、疲労回復にもいいし、あるのが普通では?」
P「そうだな(琴葉のためにわざわざ用意してもらってるなんて言えない)」
P「よし、これで解決した?」
琴葉「それで、これが一番困ってることなんですが……」
P「オーケー、話してくれ」
……
琴葉『そういえば、私の曲っていつ発売されてたかな』
琴葉『検索検索っと』
……
P「ちょっといいか」
琴葉「はい?」
P「だいたい読めたから言うけど、ネット上には悪意のある人が多くて、そんな意見を気にしすぎると……」
琴葉「わかってます。今回の件はそうじゃないんです」
P「え?」
……
琴葉『シルエットは……そのままだとヒットしづらい気がする』
琴葉『た、な、か、こ、と、は。 し』
琴葉『!』
予測変換
→田中琴葉 しじみ汁
→田中琴葉 シルエット
琴葉『』
……
琴葉「持ち曲より、しじみ汁が先に来るなんて……」
P「お、おう。そうか」
琴葉「事務所の中で終わらせるはずが、一般の人にまで浸透してしまいました」
P「本当にそのつもりだったかはアレだけども」
琴葉「予測変換で気付いてしまったんですけど、他にも『田中琴葉 ss』『田中琴葉 ssr』が候補に上がっていました」
P「ほう」
琴葉「きっと『隙あらば しじみ汁』とか『しじみ汁 好きすぎる リターンズ』の略だと思います」
P「それは違うと思うぞ」
琴葉「こうして、私の意図しないところで……しじみ汁ごり押しキャラが定着してしまいました」
P「そうか」
琴葉「印象が強すぎて、今やアイスが好きなことなんて、ほとんど忘れ去られてます」
P「……そうかもな」
琴葉「正統派アイドルとして、これはどうなんでしょう?」
P「……あのな、ちょっといいか?」
琴葉「なんですか?」
P「まず、琴葉が正統派アイドルについて、真剣に考えてくれてることはわかった。素直に感心する」
琴葉「いえ、そんな、私なんてまだまだ……」
P「でもな、俺が売り出したいのは、正統派アイドルじゃない」
琴葉「え?」
P「アイドル田中琴葉なんだよ」
P「何事にも真面目で、一生懸命。かわいい。ちょっと重い。清楚。この琴葉の良さを全面に押し出したい」
琴葉「あ、え、その……はい」
P「正統派という言葉が重荷なら、個性派でも構わない。しじみ汁が好きだっていいじゃないか」
琴葉「そう……なんですか」
P「琴葉がどう感じてるかはわからないけど、ファンは庶民的な面が見れて、喜んでると思うぞ」
琴葉「……そうだといいですね」
P「まぁ、これからも琴葉は琴葉らしく、一生懸命やってくれたらいい。俺も全力でサポートするからさ」
琴葉「……はい、ありがとうございます」
P「よし、いい顔だ。これからもよろしくな」
琴葉「よろしくお願いします。あの、さっそくですが、その……私、やりたいことがあります」
P「プロフィール変更か? いつでもできるぞ」
琴葉「あ、いえ。そうではなくて……えっと……」
P「……何でも言ったらいいぞ。さっきも言ったとおり、全力でサポートするから」
琴葉「……わかりました。私、これから……」
琴葉「以前プロデューサーに貰った指輪を左手薬指につけて活動したいです」
P「それはやめて」
おわり


