狼「なんだい。赤ずきんや」
赤ずきん「どうしておばあさんのお耳は、そんなに大きいの?」
狼「これはね、お前の声が良く聞こえるようにだよ」
赤ずきん「そうなの」
狼「そうだよ」
赤ずきん「どうしておばあさんのお口は、そんなに大きいの?」
狼「それはね。……お前を食べるためさ!」ガバッ
赤ずきん「>>5」
元スレ
赤ずきんちゃん「ねぇ、おばあさん」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1418133724/
5 : 以下、\... - 2014/12/09 23:05:41.74 EZNi6GUs0 2/43キャオラッッ
赤ずきん「キャオラッッ」
狼「……っ!?」
赤ずきんの放った蹴りは、狼の頬スレスレをかすめた。
赤ずきん「……わざと外してやったが、次はもうないものと思え」
トントンとつま先で軽く跳び、赤ずきんは構える。
狼「>>11」
11 : 以下、\... - 2014/12/09 23:12:14.54 KLLD6mis0 4/43狼牙風々拳
狼「狼牙風々拳」
呟くように言うと、狼は滅茶苦茶に殴打と蹴撃を繰り出した。
赤ずきんはそれを鼻で笑い跳躍し、渾身の回し蹴りを狼の胸部に叩き込む。
狼「がふっ……!?」
壁を突き破り、狼は屋外へと投げ出された。
赤ずきん「ふん……。狼牙風々拳は武術を極めた人間ならではの技。狼である貴様に扱えるわけがない」
狼が開けた大穴から外へ飛び出すと、
赤ずきんはとどめの>>14を狼に向けて放った。
14 : 以下、\... - 2014/12/09 23:24:22.91 5o7OceWt0 6/43すごいぱんち(あいてはしぬ)
赤ずきん「すごいパァンチ!」
狼「……ッ!」
仰向けに倒れる狼の腹部に、赤ずきんの拳がめり込んだ。
爆炎のごとき砂埃が舞い、視界が一瞬で失せる。
赤ずきん「他愛のない」
おもむろに頭巾を脱ぐと、赤ずきんは狼の血で汚れた拳をそれで拭った。
赤ずきん「ひとつ、答えろ」
砂埃が晴れ、大きく抉れた地面に横たわる狼の姿が浮かび上がる。
赤ずきん「おばあさんはどこだ」
か細い呼吸を繰り返す狼に、赤ずきんは氷のように冷たい声を吐いた。
赤ずきん「どこだ。答えろ」
狼「>>19」
19 : 以下、\... - 2014/12/09 23:33:59.87 beOrLtM10 9/43滋賀
赤ずきん「滋賀……」
それはどこ?
言いかけて、赤ずきんはその言葉を飲み込んだ。
地理に疎いことを狼にばれるのが、なんだか気恥ずかしかったからだ。
赤ずきん「なるほどね……、おばあさんは滋賀に……」
虫の息で横たわる狼を置いて、赤ずきんは>>23で滋賀に向かうことにした。
23 : 以下、\... - 2014/12/09 23:41:53.24 79wnieeL0 11/43ホバーボード
赤ずきん「こっちの準備はOKよ!」
狼「それじゃあ発進」
ぶるるるるるる。
独特のエンジン音を奏で、狼の所有するモーターボートが海上をゆっくりを進みだした。
狼「つーかそれ独立して走れるんだから、俺いらないんじゃないの?」
赤ずきん「途中で転んだらどうするのよ! サポートは任せたからね!」
狼「それならこっちに乗ればいいのに……」
赤ずきん「滋賀!」
狼「まだここは福井だよ。滋賀まではもうちょっと」
赤ずきん「なんでわざわざ福井経由するのよ!」
狼「君が飛行機嫌がるからでしょう……。滋賀まですぐだから」
赤ずきん「まったく! 使えないわね!」
狼「……」
赤ずきん「今度こそ滋賀!」
狼「そうだね」
赤ずきん「おばあさんはどこ!?」
狼「琵琶湖だよ」
赤ずきん「琵琶湖!? 鳥人間コンテストで有名な!?」
狼「うん」
赤ずきん「ああ。うちのおばあさん鳥人間だものね」
狼「そうだね」
赤ずきん「おばあさん!」
おばあさん(鳥人間)「赤ずきんや!」
二人は抱きしめ合った。感動の再開である。
狼「へへっ……。歳取ると涙もろくなっていけねぇや」
狼の目には光るものがあった。
赤ずきん「ところで。おばあさんはなんで琵琶湖へ?」
おばあさん「それはね。>>30だからだよ」
30 : 以下、\... - 2014/12/09 23:55:04.69 aPTFhVX+0 16/43存在
赤ずきん「存在?」
おばあさんは何を言っているんだろう。
赤ずきんの頭にたくさんの疑問符が湧いた。
赤ずきん「存在って……。どういうこと?」
そのまま、質問にしてぶつける。
おばあさんは無表情のまま口を開いた。
おばあさん「私が琵琶湖に来たわけじゃないんだよ。私はね、琵琶湖そのものなんだよ」
赤ずきん「なんですって……!?」
赤ずきんは当惑した。
よく考えれば、おばあさんはかなりの高齢である。
妄言の類が始まっていてもおかしくはないのだ。
赤ずきん「おばあさん……。何を言っているのよ……」
無表情で佇むおばあさんに、赤ずきんは恐怖を感じていた。
琵琶湖そのもの……?
赤ずきん「どういうことなのよ……」
狼「危ない! 赤ずきん!」
狼の声で我に返った。
赤ずきんはその身を伏せる。
赤ずきん「うわ……っ!」
突如風を感じ、周囲の木々がなぎ倒された。
赤ずきん「おばあさんっ!!!」
鳥人間のおばあさんが、羽を広げて上空を舞っていた。
おばあさん「分からないのも無理が無いだろうねぇ……」
赤ずきん「ぐう……っ!」
狼「……っ」
おばあさんを中心に、とてつもない突風が巻き起こっていた。
琵琶湖の湖面は時化の海上のようだったし、
緑樹は台風の直撃を受けたかのように薙いでいた。
おばあさん「私は”存在”しているんだよ。この場、この時にね……」
赤ずきん「おばあさん……っ!」
狼「話し合いが通じる相手じゃねぇ! ここはいったん引いて……」
言いかけた狼を、赤ずきんが強いまなこで制した。
赤ずきん「退いてどうするのよッ!? あれは……、あそこにいるのは……。私のおばあさんなのよッ!!!」
狼「赤ずきん!」
必死に叫ぶ狼の制止も聞かず、赤ずきんは嵐の渦中へと飛び込んでいった。
おばあさん「おいで……、赤ずきん……。私の孫よ……」
赤ずきん「そこで待っていろッ! おばあさんッ!!!」
狼「なんだよ……、ありゃあ……」
呟くように言った狼は、驚愕に目を大きく見開いていた。
赤ずきんの背中に、何やら巨大な白いものが見える。
おばあさん「おやおや……。お前も目覚めたようだねぇ……」
赤ずきん「この穢れた血筋……! 私の代で終わらせてやる……!」
琵琶湖の上空。
吹き荒れる嵐の中で笑う、鳥人間のおばあさん。
そこへと飛び立つ赤ずきんは、
背中で天使の白い羽をはばたかせていた。
おばあさん「あんまり子供が調子に乗るもんじゃないねぇ……」
赤ずきん「くっ……!」
おばあさんが力強く羽を振ると、あたりにいくつもの竜巻ができた。
赤ずきんはそれに飲まれないよう、必死に翼を動かし続ける。
おばあさん「天使と鳥人間。どちらが強いか、ここではっきりさせようじゃないかッ!」
赤ずきん「ああっ!」
おばあさんが大きく目を剥くと、赤ずきんは荒波の琵琶湖へと真っ逆さまに落ちていった。
狼「赤ずきんーーーっ!!!」
私はここで死ぬのだろうか。
湖面が、白く泡立つ波が、眼前へと迫る。
暴風の中で、自分の翼は役に立たないようだった。
どう羽ばたいても落ちるスピードは変わらなかったし、
何より生えたばかりの翼は、あまり言うことを聞いてくれない。
ここまでか。
諦めかけた赤ずきんは、誰かの声を聴いた気がした。
懐かしいような、そうでないような。
赤ずきん「……こんなところで、死ぬわけにはいかない」
生と死のはざまの中で、赤ずきんは>>41の能力に目覚めていた。
41 : 以下、\... - 2014/12/10 00:17:43.33 yuC7D49h0 25/43滋賀県の県庁所在地を彦根にする
おばあさん「うふふふふ……。こんなものか、赤ずきん……」
赤ずきん「どこを見ているの!? 私はここよ!」
おばあさん「何ィ!?」
はるか上空で笑うおばあさん。
その、さらに上。
大きな白い翼をはためかせて、赤ずきんは不敵な笑みを浮かべていた。
赤ずきん「今、滋賀県の県庁所在地は彦根になった……。ここからは……、私の番よ!」
おばあさん「そんな……、馬鹿な……っ!」
おばあさん「そんな……。滋賀県の県庁所在地は大津のはず……。ああ……、私の法則が……、私の”存在”が乱れる……」
頭を掻きむしりながら、おばあさんは呻くように呟いた。
そこに向け、赤ずきんは全力で突進する。
ポールスター
赤ずきん「”永久不滅の座標点”! それが私の能力よ!」
力なくうなだれるおばあさんの腹部を、赤ずきんは右の拳で貫いた。
赤ずきん「……覚えておきなさい」
狼「赤ずきん! 大丈夫か!」
嵐がおさまり、凪のようになった琵琶湖のほとりを、狼が不恰好に駆けてきた。
赤ずきんは、血に染まった拳を頭巾で拭いながら、憔悴しきった顔に笑みを浮かべる。
赤ずきん「ええ、なんとかね……」
狼にそう答えながら、湖面に浮かぶおばあさんを振り返る。
赤ずきん「さすが私のおばあさん。恐ろしい、相手だったわ」
赤ずきん「あっ……」
狼「赤ずきん!」
ふらりとよろめき、地面に膝をついた赤ずきんに、
狼が必死に駆け寄った。
赤ずきん「ふふ……、無様ね……」
今さらになって恐怖がこみ上げてきたのか、
赤ずきんの足は、ガクガクと震えていた。
赤ずきん「どうしたの? 狼……」
自身の肩に手を乗せた狼が、何やら呆然と琵琶湖を眺めているのに気付いた。
赤ずきん「何か見つけ」
言いかけ、琵琶湖へと視線を送った赤ずきんは、狼同様固まってしまう。
そんな馬鹿な。
あれを食らって、生きているわけがない。
赤ずきん「あ……、ああ……」
震えがさらに激しくなった。
湖面に浮かぶ影に、心中を占める感情は絶望。純粋な絶望だった。
おばあさん「赤ずきん……。よくもやってくれたね……」
大きく開いた腹部の孔から、大量の血液と湖水を垂れ流しながら、
ゆらゆらと体を揺らめかせて、おばあさんが羽音をたてさせ湖上に浮いていた。
おばあさん「次はこうはいかないよ……。悪ガキにはお仕置きをしないとねぇ……」
赤ずきん「ひっ……、ひっ……」
もう悲鳴も上げられなかった。
身体は震え、顔は雪のように、白い。
狼「に……、逃げるぞ……」
お互いに震える手を取り合いながら、狼と赤ずきんは立ち上がる。
おばあさんはそんな二人を見て、邪悪な笑みに顔を歪ませた。
おばあさん「誰が逃がすものかい……。私の能力>>53……、受けて、死んでおいきよ……」
53 : 以下、\... - 2014/12/10 00:37:53.70 yuC7D49h0 32/43ひこにゃんをあずにゃんに変える
赤ずきん「に、逃げない……」
ガクガクと震える足を手で押さえ、赤ずきんは大きく翼を広げた。
赤ずきん「私は……、絶対にもう……、逃げない……」
大きく羽ばたき、中空へと舞う。
狼「赤ずきん!」
伸ばした手は届かなかった。
赤ずきんはおばあさんへ向け、翔ぶ。
赤ずきん「絶対にもう! 逃げない!」
おばあさん「馬鹿な子だねぇ……」
赤ずきん「!?」
何が起きたのだろう。
急に、身体が鉛のように重くなった。
赤ずきん「がぼっ!?」
苦しい。
湖面に激しく衝突し、口から鼻から水が入り込んでくる。
おばあさん「うふふふふ……。さっきのお返しだよ……」
激しく泡立つ湖を見て、おばあさんは笑う。
アクイノカタマリ
おばあさん「”善意の欠片”……。もっと人気が出るようにって、マスコットを変えてやったよ……」
相変わらず、赤ずきんの落ちた場所から白いあぶくが立つ。
おばあさん「ひこにゃんを……、あずにゃんにねぇ……」
狼「なんだって……!?」
おばあさんの言葉に、狼は自分の耳を疑った。
ひこにゃんを……、あずにゃんにだと……?
いくらBDBOXが出たばかりとはいえ、知名度でははるかにひこにゃんに劣るはずだ。
それを、なぜ……。
狼の頭は混乱し、思考は迷走を繰り返していた。
おばあさん「うふふ……。滋賀県の未来は……、あずにゃんにかかっているんだよ……」
湖面がひときわ大きく泡立ち。
そして。静かになった。
絶望。悲観。恐怖。
狼の心中は、あらゆる負の感情で埋め尽くされていた。
赤ずきんも殺られた。
眼前の敵に、打つ手立てはない。
がっくりとうなだれ、狼は自分の死を待つことしかできなかった。
おばあさん「うふふふふふふふ……。素直な子は好きだよ。あずにゃんとともに、心中するがいい」
ばさり。
羽音を立てて、悪魔が近づいてきた。
狼「?」
おかしい。
急に静かになった湖面に、違和感を覚えた狼が顔を上げた。
相変わらず、おばあさんは湖上に浮かんでいる。
その足元。
奇妙なものを狼は見つけた。
呆然自失といった狼の表情が、ひきつった笑みへと変わる。
狼「はっは! やってくれるぜ、あの野郎……!」
おばあさんの足首を、何者かの手が掴んでいた。
ざばぁん!
大きな波音を立てて、天使が湖上へと舞い戻った。
おばあさん「なんで……、お前が……」
口を開くたび、腹部の孔がゴボゴボと音を立てる。
赤ずきんは不敵に笑いながら、それを眺めていた。
赤ずきん「いいじゃない……。あずにゃんでも……」
力強く拳を握りしめ、叫ぶ。
赤ずきん「年寄りがッ! あまり舐めるなよ、オタク文化をッ!」
おばあさんは奇妙な感覚にとらわれていた。
眼前で叫んでいる人間は、一人のはずだ。
しかし。
赤ずきん「毎クールごとに嫁が変わる!? はっ! ふざけないで! 私はね、変わらないわよ! 自信をもって言えるわ! いつなんどきでも、一人のキャラを愛し続けると!」
その背後に。
何人もの人影が見える。
……いや。
それは、何十、何百。千、万、億のうねりとなって、おばあさんへと襲い掛かった。
赤ずきん「あずにゃんも、唯も律ちゃんもムギも澪も! 全員まとめて私の嫁よッ!」
おばあさん「馬鹿な……。もう5年も前の……、旬を過ぎたアニメのはず……」
その身をボロボロと崩しながら、おばあさんは呻いた。
赤ずきん「旬を過ぎた、ですって?」
静かに笑い、そして赤ずきんは言った。
赤ずきん「そんじょそこらのにわかと一緒にしないで。私は毎年、みんなの誕生日を祝っているわよ」
キラキラと輝く光に飲まれながら、おばあさんも笑みを浮かべたように見えた。
赤ずきん「それこそ赤ずきんちゃんのように、時代を超えて愛されていくものなの」
狼「大丈夫か!」
おばあさんが完全に消滅するのを確認してから、狼は赤ずきんに駆け寄った。
冷笑を浮かべ、赤ずきんは狼を睨む。
赤ずきん「あんた何もしてないじゃない。来た意味あったの?」
狼「それは……」
無理矢理連れてこられて文句を言われる筋合いはないのに。
狼はやや憤慨していた。
赤ずきん「はぁ。役立たずは胃袋に石を詰めて、湖に沈めてやろうかしら」
狼「それは絶対にやめて」
なんだか本当にそういうオチにされそうなので、狼は必死に懇願するのだった。
狼「やめてって言ったじゃん! なんで詰めるの!?」
赤ずきん「うるっさいわね! これしか思いつかなかったのよ!」
掻っ捌いた狼の腹腔から、ぎゅうぎゅうと石を詰めながら赤ずきんは叫ぶ。
赤ずきん「ちょうどいいじゃない! 湖もあるんだし!」
狼「やだやだやだやだぁ!」
どぼぉん!
赤ずきんが蹴り落とすと、狼は水底へと沈んでいった。
ぶくぶくと泡立つ湖面も、しばらくすると静かになった。
赤ずきん「これにて、一件落着ね」
尊い命を犠牲にして、一つの話が完結するのだ。
静かな湖畔に、赤ずきんの高笑いが、いつまでもいつまでも響いていた。
終わり
71 : 以下、\... - 2014/12/10 01:13:23.79 QFzFjNK8M 43/43読んでくれた方、レスくれた方、ありがとうございました。