事務所
P「ちょっと思ったんだが」
千鶴「なんですかいきなり」
P「あぁ、悪いないきなり話しかけて」
千鶴「まぁ、別に今ならいいけれど…」
P「そうかなら良かった」
千鶴「それで、どうしたんですか?」
P「ちーちゃんラブリビームのポーズのことなんだけれど…」
千鶴「前言撤回します。話さないで下さい」
P「えっ」
千鶴「まさか本当に見られてたなんて…じゃなくて、あれはのぞき穴を覗くポーズですって」
P「そんなポーズが役に立つ日が来るのかな」
千鶴「ないですね」
P「今度またやってくれよ」
千鶴「えっ…似合ってたのかな…。ハッ!危うく口車に乗せられてる所でした」
P「似合ってたとは思うけどな」
千鶴「ふ、ふんっ…!笑いたければ笑っていいんですよ」
P「何だか残念だな…そう言われると」
千鶴「あ、でも…自分でも、少しは、本当に少しだけですけどいいかなって…」
P「大丈夫分かってるから」
千鶴「何を分かってるか不安なんですけどね…」
P「ちゃっかり昨日レッスン終わった後、鏡に向かってやってたよな」
千鶴「えっ、見てたんですか!?」
P「本当にやってたのか」
千鶴「見られちゃったんだ…えっ、嘘だったの!?」
P「ごめんな」
千鶴「いや、謝られても…こっちも困るけど」
P「そうそう、本当に話そうとしたことは別のことだった」
千鶴「そうだったんですか」
P「悪いな。時間は大丈夫か?」
千鶴「とりあえずは。というかプロデューサーの方が私のスケジュールに詳しいでしょ」
P「俺より本人の方が詳しいに決まってるさ」
千鶴「そうなのかな」
P「それでな」
千鶴「う、うん。…なんだろ。変なことかな…」
P「世間話だよ」
P「心ってどこにあるんだろうな」
千鶴「は?」
P「この間テレビ見ててふと思ってさ」
千鶴「どんなテレビ見てたんですか?」
P「普通の番組だよ。体の構造を見てたら心ってどこにあるのか気になってさ」
千鶴「そうなんですか…哲学的っぽいですね」
P「心はここにあるぜとは言わないんだな」
千鶴「い、言わないですよ。…言おうとしたけど。ハッ、今のなしで」
P「そうか。それで、千鶴はどう思う?」
千鶴「わ、私ですか…な、なんで私なんかこんなこと聞くんだろ…」
千鶴「引っかけ問題の可能性が…」
P「ないない」
千鶴「そ、そう?それじゃ、うーん…どこにあるんだろ…」
P「ま。そこまで深く考えるなよ。それじゃ行くか」
千鶴「あ、はい。って行くってどこに…?」
P「仕事」
千鶴「あっ…」
P「忘れてたのか?」
千鶴「い、今だけ忘れ…わ、忘れてなんかいませんよっ!」
P「なんだそりゃ」
千鶴「な、なんでもないですっ!」
凛「あれだよね」
ちひろ「なんですか?」
凛「千鶴ってプロデューサーと話してる時だけあんな風だよね」
ちひろ「そう言えばそうですね」
凛「やけに早口な時も多いし…緊張してるのかな?」
ちひろ「どうなんでしょうね…」
凛「ま。別にいいんだけどね」
ちひろ「見てて微笑ましいですよね」
凛「…そうだね。何だかいつまで経っても初々しいよね」
ちひろ「そうですね」
凛「私もそうしてみようかな」
ちひろ「たまにはギャップを見せてもいいかもしれませんね」
凛「…そっか」
ちひろ「えぇ。たまには甘えてみるとか」
凛「い、いきなりハードル高いかも…」
ちひろ「そうですかね?」
凛「…うん」
凛「ら、らぶりービーム…?」カァァ
車内
P「体調でも悪いのか?」
千鶴「い、いえ、絶好調ですっ」
P「絶好調か」
千鶴「そうです」
P「その割にはちょっと思いつめたような顔してないか?」
千鶴「それは…まさか二人きりだとは思わなくて…あっ、別に嫌とかそっちのが良いとかじゃないんですけど!」
P「まぁ、凛とかも事務所にいたしな」
千鶴「そう、そうなの」
P「そういや千鶴」
千鶴「なんですか?」
P「アイドルやってみてどうだ?」
千鶴「どうって…私なりに頑張ってるつもりですけど」
P「そうか」
千鶴「あくまで、『私なりに』ですから、プロデューサーから見たら足りないのかもしれないですけど…」
千鶴「私はプロデューサーがいないと仕事も出来ないし…」
P「それは俺もそうなんだけどな」
千鶴「そうなの?」
P「だって、俺はプロデューサーだぞ?アイドルがいなくてどうやって仕事をするんだ」
P「八百屋で野菜じゃなくて自分を買ってくれ。なんて言う人いないだろうし」
千鶴「…そういうことね。アイドルがいれば仕事は出来るんでしょ?」
P「まぁな。ただ、俺だってどうせなら自分でプロデュースするアイドルは決めたい」
千鶴「まさか…今、凄いこと言われて…。あっ!そんな凄くないことですよね…!」
P「そこら辺は分からないけど…」
千鶴「もう、びっくりさせるようなこと言わないで下さいよ」ドキドキ
P「事務所にいるアイドルは皆、俺がプロデュースしたいと思ったからスカウトしたんだ」
千鶴「えぇ、きっとそうでしょうね」
千鶴「あくまで、貴方はプロデューサーで、私はアイドルですから」
P「そうだな」
千鶴「今日のお仕事は…撮影だっけ?」
P「そうだな。大丈夫か?」
千鶴「大丈夫です。このために練習したんだし…」
P「練習してたのか」
千鶴「しっかり聞いてるんだ…」
P「あんまり独り言っぽくなかったからな」
千鶴「いいですよ。笑っても。どうせ笑われて元々だし」
P「笑わないさ」
千鶴「え…」
P「自分で考えて、今の自分じゃここが足りないって思って練習したんだろ?」
千鶴「ま、まぁ、そうだけど…」
P「なら堂々とすればいいさ」
千鶴「堂々と…」
千鶴「で、でも…私」
千鶴「私、かわいいアイドルとか別に、目指してなんか…」
P「そうなのか」
千鶴「う…、そ、そうなんですよっ!」
P「それは残念だな」
千鶴「残念?何言ってるの?」
P「笑った顔、中々可愛いと思うぞ」
千鶴「…ふぅ」
千鶴「そんな風に希望を持たせるのはズルい…期待しちゃうじゃないですか…ハッ!なんでもないですからっ!可愛いとか別に興味ないしっ」
P「ははは」
千鶴「また一つ秘密を握られた…」ガクッ
スタジオ
カメラマン「はい、いきまーす」
千鶴「は、はい…」
千鶴(やっぱり緊張するなぁ…)
カメラマン「表情もっとリラックスでお願いしまーす」
千鶴「あ、は、はいっ!」
P(また、表情が硬くなった…)
カメラマン「うーん。もっとリラックスでー」
千鶴「こ、こう、ですかね?」
P「こうだろ?」
千鶴「…ぷっ」
千鶴(なんで、笑わせに…)
パシャ
カメラマン「はい。OKでーす。お疲れ様でした」
千鶴「あ、はい。ありがとうございます…」
P「お疲れ様」
千鶴「お疲れ様です…」
P「浮かない顔だな」
千鶴「見てれば理由は分かるよね…」
P「さっきの撮影か?」
千鶴「…はい」
千鶴「練習したのになぁ…」ボソッ
P「まぁ。カメラ向けられて自然な笑顔で笑うのは慣れが必要だろうからさ」
千鶴「そうかもしれない…」
P「ちょっと寄り道していいか?」
千鶴「別にいいけど…」
P「ありがとな」
家電量販店
P「ちょっとさ、電池買いたくて」
千鶴「そうですか…」
P「千鶴はちょっとここら辺で待っててくれ」
千鶴「あ、分かりました」
P「電池買うのに五分くらい並んだな…」
P(少額専用のレジとかあればいいのになぁ…)
P「さてと…千鶴はどこに行ったんだ?」
P(アイドルだし、変に注目されてなきゃいいけど…)
千鶴「……」ジー
P「あ、いた。おい、ち――」
P(何見てるんだ?)
千鶴「あ…プロデューサー」
P(ファッションショーか…)
P「悪い。待たせたな」
千鶴「べ、別にそんなに待ったわけじゃ…」
P「ならいいけど」
千鶴「は、はい」
P「お、こんなのやってるんだな」
千鶴「べ、別にこういうのに出たいとかじゃなくて…」
P「なんかキラキラしてるよなー」
千鶴「そう…ですね」
P「アイドルも出てるなー」
千鶴「あ、そうですね」
P「…出たいか?」
千鶴「へ?」
P「いや、そんな気がしてさ」
千鶴「別に…。そんなこと言っても出れる訳ないし…私なんか」
P「そんなことないと思うけどな」
千鶴「なんでもない。…忘れて」
P「分かった」
千鶴「行こ」
P「あぁ…」
車内
P「……」
千鶴「……」
P(空気重いなぁ…)
P「あ――」
千鶴「キラキラしてたね」
P「ん?」
千鶴「さっきの映像。皆キラキラしてた」
P「あぁ、そうだな。俺もそう思った」
千鶴「皆自信に溢れてて、全員が主役みたいで…」
千鶴「私はあそこで笑っていられる自信がないです…」
P「最初は誰でもそう思うさ」
千鶴「そうかもしれませんけど、絶対的才能は存在しますよ」
P「それはそうかもしれないが、その人にはなくて千鶴にはあるものだってあるさ」
千鶴「そ、そうかな…」
P「そうさ。じゃなきゃ俺がスカウトなんてしない」
P「俺は千鶴が輝く姿を描けたからスカウトしたんだ」
千鶴「……」
P「自分が信じられないなら、俺を信用してくれ」
P「いきなり、あんな上等なランウェイを用意出来る自信はないが、徐々に目指していこう」
千鶴「ぷ、プロデューサーって口が上手いよね」
P「そうか?」
千鶴「私でも…って期待させちゃうんだから…って、なんでもないからっ!」
P「はいはい」
千鶴「子供扱いしてない?」
P「してないしてない」
千鶴「な、ならいいけど…」
事務所
千鶴「それじゃ…お疲れ様」
P「おう。お疲れ様」
ちひろ「お疲れ様でーす」
バタン
ちひろ「何だか浮かない顔してましたね」
P「何でも練習してた笑顔が上手く出来なかったからみらいですよ」
ちひろ「なるほど…緊張しそうですもんね」
P「そうですよね」
ちひろ「変に気負いすぎないといいですけど」
P「そうですね」
千鶴の部屋
千鶴「えっと…明日の予定は…収録か」
千鶴「なんのだろ?」
千鶴「こんな私なんかに務まるのかな…」
千鶴「よ、弱気は大敵!頑張らないと」
千鶴「頑張らないと…」
翌日
事務所
P「おはよう」
千鶴「おはよ」
P「さ、今日は朝からだからもう行くぞ」
千鶴「…うん」
P(元気がないな…)
車内
千鶴「今日はなんの収録なの?」
P「実はな、書道の撮影なんだ」
千鶴「…?」
P「何でも、書道のPRに使うらしい」
千鶴「そうなんだ…」
P「得意だろ?」
千鶴「えっと…まぁ、少しは」
千鶴「書けなくないと思うけど…」
P「そう言えばさ」
千鶴「なに?」
P「昨日の世間話覚えてるか?」
千鶴「心は体のどこにあるか?って話ですか?」
P「そうそうそれ」
千鶴「そんなの胸に決まって…」
P「胸か」
千鶴「き、聞こえてましたっ?」
P「そりゃ、聞こえるからな」
千鶴「そ、そうですか」
P「まぁ、胸か頭だろうなぁ」
千鶴「そ、そうですよね…合ってて良かった」
P「正解はないんだけどね。多分」
P「あんまり書道のことは詳しくないんだけどさ」
千鶴「はい」
P「文字には魂が、心が宿るって言わないか?」
千鶴「言いますね」
P「きっと、体のどこかにある心が手を伝って筆を伝って紙に表現されるんだろうな」
千鶴「紙に…」
P「弱い、自分に自信がない心で書くときっと字は弱弱しく揺れて見えるんだろうな」
千鶴「そうかも…」
P「だけど、自信を持って書けば、それは堂々とした雄々しい字になる気がするんだ」
P「ま。俺は文字のことはよく分からないんだけどな」
千鶴「凄いなぁ…」ボソッ
P「ん?」
千鶴「はっ!な、なんでもないっ!続けて」
P「今すぐに煌びやかなステージで、可愛い衣装を着て満面の笑みで皆の前に出るのが難しくてもさ、
自分が得意なことなら自信を持てるだろ?無理に笑おうとしなくていい。自然体で行こう」
千鶴「で、でも…私不器用だし…」
P「一回だけさ、事務所で書き初め大会したの覚えてるか?」
千鶴「え?あぁ、はい」
P「あの時の顔良かったぞ」
千鶴「えっ、あっ、でも、私そんな何か特別なことしたわけじゃ…」
P「今はそれでいいって。それじゃ頑張ろうな」
千鶴「う、うん…」
P「さてと…」
ギュ
千鶴「……」
P「どうかしたか?」
千鶴「さっきの言葉信じるね」
P「あぁ」
千鶴「か、勘違いしないでね。誰でも彼でも信頼する…なんて言わないから」
千鶴「貴方の言うことだから聞くの!それだけ」
スタジオ
千鶴「な、なんてこと言っちゃったんだろ私…」
P「嬉しかったぞ」
千鶴「はっ!プロデューサー、今の聞いてたんですかっ!?」
P「まぁな」
千鶴「うう…ま、まぁ、見てて」
千鶴「私の想いを筆に込めてくるから」
千鶴「貴方への思いも全部」
カメラマン「いい表情ですねぇ…」
P「ですね」
カメラマン「キリっとした表情の中に時折見せる満足そうな笑顔がいいですね」
P「あれが松尾の魅力です」
カメラマン「なにかが、吹っ切れた感じですね。書道が得意なのもあって余裕があるのかもしれませんけど」
P「いい仕事頼みますよ」
カメラマン「任せて下さい」
千鶴「た、ただいまっ!」
P「お疲れ」
千鶴「あんまり疲れなかったけど…」
P「そうか」
千鶴「…文字、見てくれた?」
P「『夢』だったな」
千鶴「…うん。それが私の伝えたいこと」
千鶴「私一人じゃ叶えらない夢も、ぷ、プロデューサーと一緒なら…叶えられると思うの」
千鶴「あっ!別に一緒にいたいとかそういうわけじゃなくて…」
千鶴「あ、でも、いたくないとかじゃなくて…うぅ」カァァ
P「いい顔してたぞ」
千鶴「…ホント?」
P「あぁ、いい笑顔だった」
千鶴「…ありがと」
P「なんか言ったか?」
千鶴「き、聞こえてる癖に…!」プー
P「悪い悪い」
千鶴「私の気持ち…伝わった?」
P「あぁ、一緒に頑張ろうな」
千鶴「…うん」
千鶴「仕事の一つ一つは、プロデューサーが私の為に取って来てくれたものだから」
千鶴「私はプロデューサーの為に精一杯頑張るから…!」
数日後
ちひろ「これ見ましたか?」
P「あぁ、千鶴の記事ですか」
ちひろ「反響良いみたいですね」
P「えぇ、笑顔と真剣な表情のギャップが良いと方々から評判がいいです」
ちひろ「流石ですね千鶴ちゃん」
P「頑張ってますから」
小梅「か、かっこいい…」
加蓮「凛々しい顔してるねー」
千鶴「ほ、本人を前に言うこと…?」カァァ
加蓮「本人を前にして言うから意味があるんじゃん」
小梅「あ、赤くなった…」
千鶴「…うぅ」
加蓮「可愛いー♪」ニヤニヤ
ちひろ「おもちゃにされてますね…」
P「皆仲良さそうだな」
千鶴「み、見てないで助けて下さいよっ!」
泰葉「あ、ちょっといいですか?」
P「どうした?」
泰葉「今度のライブのことなんですけど…」
P「あぁ、うん。どうした?」
泰葉「はい。ここなんですが――」
千鶴「ライブ…」
加蓮「そういえばそうだね」
千鶴「私達も出るんだよね?」
加蓮「そりゃ、事務所に所属してるアイドルだし」
小梅「…うん」
ライブ前日
車内
泰葉「それじゃ、ありがとうございましたー」
P「おう。明日頑張ろうな」
泰葉「そうですね」
加蓮「ばいばい」
P「じゃあな」
バタン
千鶴「……」
P「どうした緊張してるのか?」
千鶴「べ、別にっ!そこまで…」
P「ならいいけどな」
P「あー、緊張するなぁ。明日は」
P「正直、緊張してやけに喉が渇くしドキドキだ」
千鶴「プロデューサーも緊張するんだ…。じ、実は私も少しだけ緊張してて…」
P「あ、そうだったか」
千鶴「は、はい…」
P「でもさ、まだ夢の途中なんだよな」
千鶴「はい?」
P「覚えてるだろ?千鶴が心を込めた『夢』って文字のこと」
千鶴「勿論…覚えてるけど」
千鶴「夢に近づく為にまた一歩、踏み出すんだから」
P「千鶴万亀って知ってるか?」
千鶴「せんかくばんき?」
P「鶴は千年、亀は万年ってことだな」
千鶴「あ、それなら聞いたことがある…」
P「めでたいことの象徴なんだけどさ、千鶴ってちづるって書くんだよ」
千鶴「あ…」
P「鶴は気位が高くて、その声は天にまで届くそうだ」
P「千鶴もそうなれるさ」
千鶴「わ、私が…?」
P「あぁ、晴れの舞台で堂々と振る舞えた時、その声は天にでもどこにでも届くだろうさ」
P「名は体を表すとも言うように俺はそう思ってる」
千鶴「どこにでも…って」
P「ん?」
千鶴「プロデューサーの心にも…かな?」
千鶴「私が、頑張ったら…はっ!ご、ごめん忘れて!」
P「ち――」
千鶴「な、なんでもないっ!」
千鶴「あの…」
P「ん?」
千鶴「明日は勿論、ファンの人のためにも頑張るけど…、貴方のためにも頑張るから」
千鶴「もしかしたら、ダメかもしれないけど、しっかり見てて。今までの集大成を見せるから」
P「おう」
千鶴「そ、それだけだけっ!じゃあね!」
ライブ当日
リハーサル
P「大きいなぁ」
ちひろ「そうですねぇ」
凛「ここはこうだね」
加蓮「そうだね」
千鶴「……」キョロキョロ
P「どうかしたのか?」
千鶴「広いなぁって…ここが埋まるんだって思って」
P「確かにそうだよなぁ」
千鶴「外から見てた眩しいステージの上に立ってるんだなって」
ちひろ「頑張りましょうね!」
ガヤガヤ
P「盛況ですね」
ちひろ「えぇ、これだと…いくらくらいに…」
P「そういう計算は後にしましょうよ」
ちひろ「そ、そうですね」
P「壮観ですね」
ちひろ「え、えぇ…」
*
加蓮「さぁ、皆いっくよー♪」
ワァァァ
千鶴「色々言いたいはずなのに…言葉が上手く…出て来なく…み、みなさん…来てくれて、あひ、ありがとうございますっ!」グスッ
ワーワー
事務所
P「皆お疲れ!」
加蓮「いっえーい!」
凛「おつかれ」
泰葉「大成功でしたね!」
周子「お、泰葉ちゃん珍しくテンション高いね」
小梅「……♪」
千鶴「……」ポケー
P「お疲れ様」
千鶴「あ、はい。お疲れ様です」
加蓮「MCって難しいね」
周子「だよねー」
凛「そうだね」
加蓮「凛をいじるのは得意だけど」
凛「私はいじられるの得意じゃないんだけどね」
周子「あははー」
クイ
P「ん?」
千鶴「ちょ、ちょっといいですか?」
P「どうした?」
千鶴「えっと、感謝の言葉を…じゃなくて、ちょっと来て貰っていいですか?」
屋上
P「どうしたんだ」
千鶴「あ、ありがとうございますっ!」ペコリ
P「いきなりどうした?」
千鶴「あんな一杯のお客さんの前で歌わせてくれて」
P「実力さ」
千鶴「プロデューサーがいなかったらあんなに眩しくて暖かい景色は見れなかった」
千鶴「ほ、本当は、もっと伝えたいことがあるんだけど、胸が一杯で、えっと…その…」
千鶴「ありがとう」
千鶴「い、今だけは、素直に言える。そんな気がしたから」
P「ライブの時さ」
千鶴「は、はい?」
P「いい笑顔だったぞ」
千鶴「あ…」
P「書道をしてる時と同じくらい良い顔をしてた」
千鶴「そ、それは…同じだから…」
P「何が?」
千鶴「どっちも私のことを考えてくれた仕事だから…」ボソボソ
千鶴「な、なんでもないっ!さっ戻ろう!」
千鶴「まだまだ、夢の途中なんだから」ニコッ
36 : VIPに... - 2014/10/11 22:16:55.27 NsjceacOo 35/36終わりです。
見て下さった方ありがとうございました。
37 : VIPに... - 2014/10/11 22:45:22.69 NsjceacOo 36/36簡単な解説です。
千鶴万亀は、淮南子という思想書に書かれていたものです。
原文は次のようになっています。 『鶴寿千歳、以極其游、蜉生而暮死、而尽其楽』
*
体のどこに心があるかと言うのは明確な答えはないようですね。
脳なのか心臓なのか定かではありません。
『心は心臓にある』と説いたアリストテレスは次のような言葉を残していたりします。
『感覚でとらえられるものこそが実体である』
つまり、外部からの刺激に脳よりも強く反応する心臓の方が心の場所として正しいと考えていたそうです。