1 : 名無しさ... - 24/11/21 14:23:09 Y8WU 1/18

女性Pと飛鳥のなんでもない日常の話。いつもの作品とは一切関係ありません。

元スレ
二宮飛鳥のダイアリー
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1732166589/

2 : 名無しさ... - 24/11/21 14:23:59 Y8WU 2/18

 突然だが、ボクはアイドルと言うやつをやっている。そう、ステージの上で煌めきを放つあのアイドルだ。……柄じゃないと思うかい?フッ、少し前のボクだったらそう思ったことだろう。その後で、光の下に立ちたくない臆病なボクはこう思うんだ。

「アイドルになんて、絶対なってやるもんか」、ってね。

 だが、実際ボクの人生はたった一人の女に変えられてしまった。街中でボクを見つけ出し、宥めすかして言いくるめた果てにシンデレラに仕立て上げた人。女性なら誰もが憧れるはずの洒落っ気を産着の中に捨ててきたような見た目のくせに、誰よりも綺麗で真面目な目が出来る人。

 ーこれは、そんなボク、二宮飛鳥と担当プロデューサーとの、ささやかなセカイの記録だ。

3 : 名無しさ... - 24/11/21 14:24:07 Y8WU 3/18

【眠気】

女性P「……ねむ」カタカタ

P「ねー飛鳥、何で午前10時ってこんなに眠いのかな」

飛鳥「キミが深夜アニメにうつつを抜かしているからだろう」

P「ぐうの音も出ない」

飛鳥「それなら深夜アニメを観るのをやめたらどうだい、ついでにそのボサボサの髪の毛ややる気のない化粧もまともになることだろうし」

P「あたしから深夜アニメ取ったら何が残るってのよ」

飛鳥「セカイに認められつつある偶像二宮飛鳥のたった一人のプロデューサーという肩書」

P「なっ」カァァァ

4 : 名無しさ... - 24/11/21 14:24:14 Y8WU 4/18

飛鳥「……と、カフェインとニコチンの中毒患者、ってところかな」

P「ふーん、どうせあたしゃタバコとコーヒー無きゃ生きていけない干物女ですよーだ」

飛鳥「キミは自分を絶対に飾りたてない所を好む奇特な人間でも捕まえたらいい。少なくともそんなキミに好き好んで着いてきている奇特なのが目の前にいるだろう」

P「飛鳥……」 

飛鳥「ついでに言うと、その奇特なのはホットココアを奢ってくれる人間にもほいほいついて行くだろうね」

P「飛鳥のそういう現金なところ、嫌いじゃないわよ。ちょっと早いお昼ご飯にでもしましょ」

飛鳥「……」グッ

P「子供ねぇ……」ボソッ

飛鳥「何か言ったかい」

P「いーや?」

5 : 名無しさ... - 24/11/21 14:24:20 Y8WU 5/18

【クリスマス前】

P「そろそろクリスマスの時期ね」

飛鳥「ミトラ教の冬至祭と言うべきだと思うけどね」

P「飛鳥らしい。サンタはいつぐらいまで信じてた?」

飛鳥「今でも信じてるさ。子供の期待に応えようとする親は誰しも、理念の上ではサンタクロースだろう」

P「……悪い物でも食べた?」

飛鳥「シツレイな」プク

P「冗談よ。飛鳥のことだから『フッ、クリスマスなんて大企業が年末に売り上げを伸ばすために作り上げた虚構で塗り固められたイベントだろう』なんて言うのかってちょっと思ってたの」

6 : 名無しさ... - 24/11/21 14:24:25 Y8WU 6/18

飛鳥「その声真似が無駄に似ている点は突っ込まないとして……少し前のボクならそんなことを言ったと思うよ」

飛鳥「でも、ボクだって成長する。今まではそのベクトルが否定の方向に伸びていたけど、今のボクは肯定や受容も出来る」

飛鳥「それは紛れもなく、キミがこのセカイにボクを呼び込んだからだよ。……ありがとう」ニコッ 

P「ごめんメールの対応してたわ、何て?」

飛鳥「ばーか」

P「酷っ!」

7 : 名無しさ... - 24/11/21 14:27:52 Y8WU 7/18

【車内】

P「おかえり飛鳥。あったかいもの飲む?」

飛鳥「ココアがあるなら頂くよ」

P「残念、あたしお手製の無糖コーヒーならあるけど」

飛鳥「あのカフェインの煮凝りを珈琲と呼ぶのは珈琲への冒涜だと思わないか」

P「思いませーん。あれはちゃんとしたコーヒーですぅー」

飛鳥「キミのその味覚だけは理解れそうにないな……」 

P「少なくとも目は覚めるはずだけどなぁ」

飛鳥「その代わり胃が痛くなりそうだから遠慮するよ。というかさせてくれ」

8 : 名無しさ... - 24/11/21 14:27:58 Y8WU 8/18

ブロロロ…

飛鳥「いつも思うけど、キミの車からはタバコの臭いがしないね」

P「飛鳥を乗せるからね。それにこんな狭い空間でタバコ吸ったら流石に臭いがきつくなるでしょ、あたしも飛鳥もそこそこ鼻が利くし」

飛鳥「ふーん……」

P「あとこの車高かったし。ミニクーパーよミニクーパー」

飛鳥「そっちが本音じゃないか」

P「四分の一ぐらいはね。残りはさっき言った通り」

飛鳥「……キミに我慢させてたのかな」

P「その分事務所でふかしてるから大丈夫」

飛鳥「これからは事務所でも吸わないでくれ」

P「遠回しに死ねって言ってない?」

飛鳥「フッ、冗談だ。でもキミにタバコを吸ってほしくないのは本当だよ」

飛鳥「……キミには長生きしてもらいたいからね」ボソッ

P「なでなですりすりペロペロもふもふしていいかしら」

飛鳥「タバコの吸いすぎで肺がんになってくれ」

9 : 名無しさ... - 24/11/21 14:28:03 Y8WU 9/18

【身体】

P「~♪」

飛鳥「ご機嫌だね」

P「少し背が伸びたの。やっとあたしにも成長期が来たってわけ!」

飛鳥「身長に一喜一憂するのか。前から思ってはいたけど、キミもずいぶんと子供っぽいね」

P「この年でぬいぐるみ抱っこしながら布団蹴落として寝てるような干物で悪かったわね」

飛鳥「そこまでは言ってないよ?」

P「ふーんだ」

10 : 名無しさ... - 24/11/21 14:28:09 Y8WU 10/18

P「飛鳥はどうなのよ?体重とか胸とか気にしてんじゃないの?」

飛鳥「フッ、愚問だね。体重はともかくボクはバストサイズなんて気にしない。だいたいバストサイズが大きければ大きいほど良いという考え自体が過ちであってー」

橘ありす「あっ、飛鳥さんとプロデューサーさん。おはようございます」

飛鳥「やぁありす」

ありす「橘です」

P「おはよう橘ちゃん、珈琲いる?」

ありす「遠慮しておきます。ところで飛鳥さん、この間貸した『今すぐDカップになる100の方法』をそろそろ返して欲しいんですが……」

飛鳥「……ありす、ボクはそんな本を借りてないと思う」

ありす「LINEのやりとり見せましょうか?」ジトー

P「そうだ橘ちゃん、取引しない?橘ちゃんがあたしにそのLINEのやりとりを見せたらあとであたしが下のカフェテリアのコーヒーチケット5回分をあげるって取引なんだけど」

飛鳥「やめろ……やめてくれ……」カァァァ

しばらく飛鳥に鶏ささみ肉の差し入れが増えたそうな
なお同時期にはカフェテリアでコーヒーチケットを使うありすの姿も確認されている

11 : 名無しさ... - 24/11/21 14:28:13 Y8WU 11/18

【自主練】

飛鳥「はぁ……はぁ……」

P「飛鳥ー、入るわよー」ドアガチャ

飛鳥「……許可を出す前に入るのをやめてくれないかといつも言っているんだが」

P「女同士なんだし細かいことは気にしないの」

飛鳥「ボクが気にするんだよ……で、何の用だい」

P「これ、忘れてったでしょ」ヒョイ

飛鳥「タオルとスポーツドリンク……?」

P「飛鳥は真面目だからどーせあたしが言っても聞かないし止めないけど、ちゃんと水分補給と汗拭きと休憩ぐらいはすること。1時間おきに来るけど、その時に休憩してなかったら家に帰すから」

飛鳥「……フッ、理解った。ちゃんと休憩は取るよ」

P「よろしい。あとここ今日は19時までしか開いてないから忘れないでね」

飛鳥「了解」

12 : 名無しさ... - 24/11/21 14:30:02 Y8WU 12/18

P「あたしにはダンスのことは分かんないけど……せいぜい正しく頑張ること。努力の方向間違えたら意味なくなるのはどんなことでも同じよ」

飛鳥「正しく?」

P「ずーっと出来なかったところだけやってても意味ないってこと。あたしの飛鳥ならあとは理解るよね?」

飛鳥「……少し考える時間をとろう」

P「よろしい。じゃあ、1時間後に」

飛鳥「あぁ」

ドアバタン

飛鳥「……素直に休めって言われても聞いたんだけどな。それもまた、プロデューサーらしいということなのだろうけど」ゴクゴク

飛鳥「……レモン味……」クスン

13 : 名無しさ... - 24/11/21 14:30:06 Y8WU 13/18

【今年最初の雪の華】

P「暗くなるのも早くなったわね」テクテク

飛鳥「全くだ。この街だけでなく、人々の心までもが冷たくなる季節の到来だよ……憂鬱だ」トコトコ

P「そう?あたしは好きだけどな」

飛鳥「何故だい」  

P「ガードの固い好きな人と気軽に手を繋げる季節でしょ」スッ

飛鳥「……!」カァァァ

P「」ニヤニヤ

14 : 名無しさ... - 24/11/21 14:30:10 Y8WU 14/18

飛鳥「……髪の毛がボサボサで眼の下に隈がなければときめいたんだけどね」

P「残念。で、飛鳥はいつまでその冷たい手のままなのかしら」

飛鳥「……」フイッ

P「素直じゃないところもかわいいんだけどね」ギュッ

飛鳥「……ばか」ギュッ

15 : 名無しさ... - 24/11/21 14:30:14 Y8WU 15/18

P「あら、雪」

飛鳥「いわゆる初雪、か。雪が初めて降ったというただそれだけの自然現象にこれほど人々が騒ぐのは何故だろうね」

P「二人で寄り添って同じものを見つめる、今シーズン初めての幸せだからじゃないかな」

飛鳥「ずいぶんとロマンチスト的な思考回路だね」

P「あくまで一般論よ……あたしは雪空の下でタバコを吸える季節の始まりだから好きなんだけどね。寒い外であったまる喜びはこの時期ならではよ」

飛鳥「ロマンの欠片もなかった」

P「ロマンなんて売りつけるだけのものでしょ、この稼業やってる以上は」

飛鳥「……本当にそうかな」

P「飛鳥?」

16 : 名無しさ... - 24/11/21 14:30:17 Y8WU 16/18

飛鳥「キミにだってロマンの一つや二つ、あるだろう」

P「あたしの顔と部屋と趣味を見てから言いなさい」

飛鳥「……そんなキミの欠陥を見ても好意を寄せる偶像の存在は、ロマンとは呼ばないのかな」カベドン

P「あああ飛鳥ちょっと落ち着いて流石にそんな至近距離でそんな顔されたらあたしの寿命が持たないってー」

飛鳥「……ククッ、アハハハ!」

P「……へ」

飛鳥「キミは本当に新しい顔を見せ続けてくれるね!傑作だよ!」クスッ

P「飛鳥~!」ボコボコ

飛鳥「ハハッ痛い痛い」

17 : 名無しさ... - 24/11/21 14:30:33 Y8WU 17/18

飛鳥(……でも、この想いはきっと虚像じゃない)

飛鳥(虚構で塗り固められたボクの人生に、ホンモノの感情をぶつけてくれた初めての人。殻の中で孤立を恐れていたボクを、光の下へ連れ出してくれた人。その感謝は、きっと人生でしか果たせない)

飛鳥(今はまだ、偽りの言葉でしか伝えられないけど……いつか彼女にホンモノを、見せる。だからその日まで……)

P「飛鳥?寒すぎて頭凍った?」

飛鳥「セカイについて考察を深めていただけさ……さぁ、往こうか」

飛鳥(……待っててくれ、プロデューサー)

18 : 名無しさ... - 24/11/21 14:33:52 Y8WU 18/18

Twitter見てたら女性Pって良いよね的な話が流れてきて書きたくなったので書きました。関西弁じゃないPっていつ以来だろ?

以上です。完結報告してきます

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