『インフィニティ・バトルログ』。
現在、世界中で爆発的にヒットしている大人気ゲームである。
ジャンルは異能バトルゲーム。睡眠導入型のVRゲームだが、今となってはそれほど珍しくもない。
このゲームの最大の特徴は、ゲームマスターでもあるAIとの対話によって、自分だけのオリジナルの能力を使うことができるという点だ。
みんなでゲームを楽しむための多少の制約はあるが、文字通り可能性は無限大というわけである。
そして、ただのしがない女子高生である私もこのゲームにハマっている人間の一人だ。
みんなで好きな能力を使ってわちゃわちゃ楽しもう、というコンセプトのゲームであるため、意外と女性ユーザも多いのだ。
枕元にアプリを起動したスマートフォンを置いて、そのまま眠りにつく。
しばらくして目を開けると、そこはすでにゲームの世界だった。
元スレ
【安価】少女「異能バトルVRゲームで気楽に遊ぶ」
http://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1539495662/
GM「本日もログインありがとうございます、モチコ様」
モチコ「……どうも」
ゲームマスターがにこやかに挨拶をしてきた。私も、それに小さく会釈で答える。
NPCではあるのだが、VRの世界で会う彼女はまるで生きているかのように振舞うので、無視するのも気が引けるのだった。
モチコというのは私のこのゲーム内でのユーザ名だ。特に意味はない。
もこもこの温かそうなポンチョにロングスカート、白髪のショートヘアで頭の上にみかんがひとつ乗った美少女。それがモチコである。
とても戦闘向きの格好とは言えないが、このゲームではわりとみんな好きな格好をしているので浮くことはない。
GM「本日はどのような能力で戦われますか?」
モチコ「そうだなぁ……」
どんな能力を選ぶか ↓から書かれたものでよさげなものを一つ
3 : 名無しさ... - 2018/10/14 14:45:13 Uo6 3/45空気固定化
足場にしてもよし飛び道具に対しての盾にしてもよし
モチコ「空気の固定化で。足場にできたり盾にできたりするやつ」
GM「なるほど……了解しました。では、そちらの能力をお渡しいたします」
【能力を付与しました】というメッセージが表示される。
体感的には何も変わったところはないが、これで私は超能力者になった。
ためしに、足元に空気のブロックを作るよう念じてみる。
見た限りでは、足元には何の変化もない。だが、足を前に軽く振ってみると、つま先が確かに硬い何かにぶつかった。
そのままつま先で押してみるが、空気のブロックはビクリとも動かなかった。
ブロックの上に立ってみる。端からは、地面から10センチほど浮いたように見えるだろう。
能力を解除するようイメージしてみると、足元のブロックが消え去った。大した高さではなかったが、足場が消え去ったことで身体がふらついてしまった。
モチコ「あわわっ、と……」
モチコ(うん……使い方次第では、いろいろと面白そう)
GM「満足いただけたようで何よりです。それでは、サブスキルを選択してください」
サブスキルとは、メインとなる能力とは別に貰える補助用の簡易な能力のことである。
こちらはすでに用意されたものの中から選択することになるが、どれを選ぶかによって戦略も大きく変わってくる。
選べるサブスキルは以下の5つ。
1.キュア 1回のバトル中に2回まで、体力や精神力を回復させることができる
2.ウェポン 戦闘に使用可能な武器を一つ使用することができる
3.アナライズ 敵プレイヤーの情報を知ることができる
4.ストレングス 一定時間、身体能力・精神力が上昇する
5.ディスペル 相手の能力をある程度無効化することができる
それぞれのサブスキルがどれぐらい強力なものとなるかは、後から決めるバトルタイプによって決まるのだが……
モチコ(今日はどれにしようかな……)
どれを選ぶ? ↓2
9 : 【90】 - 2018/10/14 15:33:26 LG0 6/454
私が選んだサブスキルはストレングスだ。
発動してから一定時間、身体能力を精神力を上昇させることができる。
どんな能力やバトルタイプであっても扱いやすいサブスキルだ。
それに、使っている間はなんだか自分が超人になれたみたいで気持ちがいい。
ただ、発動できるのはバトル中に1回のみ。使いどころは考えなければならない。
GM「では最後に、バトルタイプを決定してください」
バトルタイプは、ようはどのような戦い方に適した能力者になりたいかを決定するものだ。
プレイヤーの中には、異能特化にして超常の力で場を制圧するものもいれば、異能はあくまで補助程度にして物理で殴って他を圧倒するものもいる。
中には、サブスキルを強化して戦闘の主軸に置く玄人もいる。
もちろん、どのような状況にも柔軟に対応できるため、バランス型を選ぶものも多い。
今回、私が選ぶのは……
どのタイプを選ぶ? ↓2
1.バランス型
2.身体強化型
3.異能特化型
4.サブスキル特化型
5.その他細かい要望があれば(異能・サブスキル両立型、スピード重視の身体強化型など)
12 : 【88】 - 2018/10/14 16:31:23 SMb 8/45バランス型
モチコ「能力も応用効きそうだし、バランス型にします」
GM「かしこまりました。バトル形式はどうしますか?」
モチコ「フリーのバトルロイヤルで」
GM「かしこまりました……それでは、今宵も異能者同士の決闘をお楽しみください」
ゲームマスターのお辞儀とともに、辺りのビジョンが書き換わっていく。
戦闘のステージは毎回ランダムで決定される。
ステージによっては特殊なギミックがあったり、モンスターが徘徊していたりと特色は様々だ。
周りの景色がピクセルごとに次々と切り替わっていく様は、何度見ても非現実的で、ワクワクしてくる。
モチコ(さて、どんなステージが来るかな……)
そうして、ビジョンが確定された。
戦いの舞台となるステージは? ↓2
1.高層ビルが立ち並ぶ大都市
2.木々が生い茂るジャングル
3.太陽が照りつける砂漠
4.海に浮かぶ豪華客船
5.その他
15 : 名無しさ... - 2018/10/14 17:06:49 yvq 10/452
目の前に現れたのは、鬱蒼としたジャングルだった。
遠くから、鳥の鳴き声と翼を羽ばたかせる音が聞こえる。
モチコ(今回はジャングルか……シンプルなやつなのか、それとも特別なギミックがあるやつなのか)
モチコ(前は恐竜が歩いてたり、原住民かなんかがしかけたトラップみたいなのがあったりしたことはあったけど……)
足元は樹の根っこが生えていたり土が窪んでいたりで非常に歩きづらかった。
そのため、地面の少し上に空気の足場を作りそこを歩く。
異能を使いすぎると精神力を消耗し異能が使えなくなってしまうが、これぐらいなら問題がないだろう。
モチコ(さて、どうしますかね……こう隠れるところが多いと、不意打ちで倒されちゃうってのが一番嫌だけど)
モチコ(しばらくは様子見するべきか……それとも、ド派手に動いて敵を炙り出そうか)
ここで一度、簡単に状況を整理する。
今回はフリーのバトルロイヤル。参加者は自身を含めて七人。最後の一人になったプレイヤーが勝利だ。
時間の経過とともに活動できるフィールドの範囲は狭まっていく。ずっと同じ場所で身を潜めているというわけにもいかない。
それに、敵を一人倒すごとに、ボーナスとしてサブスキルを追加で一つ貰うことができる。
これは非常に魅力的だ。ステージや敵の情報を知った上で、追加のサブスキルを選ぶことができる。
そして同時に、敵が複数のサブスキルを得るというのは非常に不利な状況となってしまうということでもある。
敵を倒したほうが有利になるが、攻めに転じればその分危険も増える。
モチコ(まあ、これはゲームだし。攻撃を食らっても痛くないんだから、怖がりすぎる必要はないけどね)
モチコ(じーっとしてたって、面白くないし)
モチコはどうする? ↓2
1.しばらく様子見であたりを探索
2.あえて見つかる想定で大胆に行動
3.その他詳しい行動指定あれば
19 : 名無しさ... - 2018/10/14 18:10:58 ZMd 13/451
モチコ(とはいえ、油断は禁物……どんな能力者がいるか分からないし、しばらく様子見しますか)
辺りの様子を見回しながら、木々の陰を移動していく。
これでも私はこのゲームをやりこんでいる。プロ級というわけではないが、一応上級者と言っても差し支えないだろう。
気配を殺す方法も、辺りの気配を探る方法も身につけている。まあ、現実世界では全くそんな能力はないのだが。
空気の足場の上を歩くことで、余計な足音も立てないですんでいる。
今のところ、鳥の声が聞こえるだけで人の気配は感じられない。
モチコ(アナライズ持ちの人に近づかれたら居場所バレちゃうかもしれないし、注意しないと)
一応、不意打ちでの即死を避けるために、頭の周りと背後にのみ空気の壁を形成している。
ただ、一度生み出した壁はその場から動かせないため、何度も作っては消してを繰り返す形となっている。
モチコ(今のところ精神力の消耗は感じないけど……ていうかこの空気の壁、強度どれぐらいなのかなぁ……)
モチコ(精神力をめいいっぱい込めたら、強度もあがったりするのかな?)
探索するモチコはどうなる? ↓1 !random一桁
偶数 敵を発見(優位)
奇数 敵に見つかる(劣位)
ゾロ目 特殊ギミック遭遇
21 : 【35】 - 2018/10/14 18:48:39 oHB 15/45あ
【判定結果】
敵に見つかる(劣位)
モチコを見つけた敵の詳細を決めます。
↓1~3 !random最大
【異能】どんな能力を使うか
【サブスキル】>>7参照
【バトルタイプ】>>10参照
【その他】容姿や性格、プレイヤー名など(なければなしでOK)
※思いつかない箇所はこちらで適当に決めます
27 : 【98】 - 2018/10/14 23:33:22 T41 17/45【異能】
床の傾斜と貯水
ある程度の距離まで床を強引に浮き上がらせて斜めにすることができて、
VR空間に存在するあらゆる水を四次元タンクに200億リットル貯水できる
また、自分の近くで水を放出するための放出口を出現させる。
α:放出口が小さいほど高圧洗浄機のように噴射できて威力が上がる機能付き
例、傾斜させてから、大きい放出口(限界が国道のトンネル程)で水を開放すれば激流を引き起こすことだって可能
【サブスキル】アナライズ
【バトルタイプ】異能特化型
【その他】
名前: 畝傍
(うねび)と読む ネットでよく見かける厨二ネームのような扱い
容姿・アバター :性格に応じておかめ面から般若面に変わるお面を顔に装飾してる 黒ロングコートを際立たせるレザー系な恰好
性格:普段は装模作様な態度をとっていて、戦闘でハイな状態になると相手を軽視するような粗暴なふるまいになる。
異能に関する情報
「異能ガチャ」で習得できる激レア異能。
デメリット:
タンク容量MAXにするには相当な時間と場所及び仮想マネーの出費、異能使用量がかかるので一日、プール12杯分の約432万リットルを貯めるのが理想というありさま。
28 : ◆olmiJdlapkQK - 2018/10/15 21:55:34 Ne1 18/45安価は>>27に決定ですが、設定に合わせて少し改変します
グラリと、身体が傾いた。
空気の上を歩いているのだから何かに躓くはずもない。
体調に異変が起きたのか、それとも何かに引っ張られたのか。
一瞬そう考えたが、違う。これは、そういうレベルの話じゃない。
私が傾いてるんじゃなくて、世界が傾いているんだ。
モチコ「わわっ……!」
地面を転がり落ちそうになる身体を、空気の壁で受け止める。
畝傍「あれ、そのまま堕ちていかないんだね。まあ、結果は変わらないよ」
頭上から、なんだか芝居がかったトーンの言葉が投げかけれた。
視線をやると、傾いた木の幹に人影が立っていた。黒を基調とした衣装に、おかめの面を被っている。
服装と、その立ち振る舞いでピンと来る。彼(もしくは彼女か)は架空のロールを演じて楽しむタイプのプレイヤーだ。
私は少し恥ずかしさがあってそういうのはあまり得意ではないが、テンションの高そうな彼らをみると楽しそうではある。
畝傍「君も、この仮想の箱庭とともに濁流に飲み込まれることになる。僕の能力によってね」
おかめ面が腕を上げ、ビシッと天を指差す。
突如、おかめ面の頭上の空間に巨大な穴が開いた。
直径がビルほどはあろうかという穴から、大量の濁水が重力にしたがって落ちてきた。
視界一面を覆いつくすほどの水の壁が、ものすごい速さと質量でもって迫ってきていた。
モチコ「ちょちょっ、嘘でしょ……!?」
モチコはどうする? ↓2
1.全方位に空気の壁を形成してガード
2.傾いた地面を落ちていきながら回避を試みる
3.その他細かい行動指定(サブスキルを使うかも)
32 : 【86】 - 2018/10/16 01:10:13 88N 21/452
この世界では、あらゆる物理現象やそれを知覚するプレイヤーの五感は正確にシミュレートされている。
一部、痛覚が抑制されていたり身体能力が常人離れしていたりという差異はあるものの、この世界のリアリティは現実と大差ない。
バーチャルだとは分かっていても、迫り来るド迫力の水塊に心臓が縮み上がるのは仕方がないことだろう。
モチコ(受け止める……!? いや、無理!!)
そうそうに迎え撃つことを諦めた私は、身体を支えていた空気の壁を解除した。
世界の傾きにそって、身体が落ちていく。
このまま落ち続けていれば水塊に追いつかれることはないが、それでは何の解決にもならない。
斜めになった地面に衝突する直前、空気を固定する。
緩やかなカーブを描いて地面から離れていく、滑り台のような形状を形成する。
下側に向かう加速の力を、滑り台のカーブで前方への加速に切り替えていく。
モチコ(うわわわわっ! 速い速い速い……!)
木々の深緑が高速で後ろに流れていく。前方からの風の抵抗で髪やスカートがはためく。耳元がゴウゴウとうるさい。
頭上から迫る水塊との距離が縮まっている。
あともう少しで飲み込まれそうという状況で、私は確かに高揚感に包まれていた。
現実世界の絶叫マシンよりも安全で、それでいて遥かにスリリングだ。
モチコ(最っ高! これだからやめられないのよね……!)
そして、私の体は滑り台から勢いよく射出された。
日差しをさえぎっていたジャングルから飛び出すと、視界に一気に蒼天が広がった。
そのまま再び落下してしまう前に、空気の足場を作り、ホップ、ステップ、ジャンプの要領で跳ねながら勢いを殺していく。
そして、最後の跳躍中に空中で身体を捻り、ジャングルの方へ向き直った。
私からは、急勾配の地面に木々が生えているように見えた。上の方ほど私から遠く、下の方ほど近い。
下をみやると、濁った水が溜まって河のようになっていた。どうやらフィールドの境界で堰き止められてしまっているようである。
こういう非現実的な光景を見ることができるのもゲームの醍醐味である。
モチコ(うーん、確かあの辺りだったと思うんだけど……木で隠れちゃって相手の正確な位置が分からないな)
モチコ(これだけド派手な異能が使えたってことは、まず間違いなく異能特化型と考えていい)
モチコ(つまり、身体能力は対して高くない……接近戦に持ち込めば私が有利かな)
モチコ(ただ問題は、あの異能相手にどうやって接近戦に持ち込むかなんだよなぁ)
モチコ(固定化した空気は動かせないから、私は今遠距離攻撃の手段を持ってないんだよね)
モチコ(……攻撃手段を補うためにウェポンでもよかったかも)
モチコ(さて、どうするか……こんな状況じゃ、他のプレイヤーも静観はしてられないだろうけど)
モチコはどうする? ↓2
1.畝傍を倒すため再び接近する
2.一度逃げて体勢を立て直すことを考える
3.このまましばらく様子見
また、1、2を選んだ場合は、!random一桁の数値で敵側の動き判定
1~3 動きはなし何もなし
4~6 畝傍の方から攻撃してくる
7~9 第三者から攻撃される
0、ゾロ目 畝傍、第三者から攻撃される
38 : 【29】 - 2018/10/17 20:49:54 Hcv 24/452
【安価結果】
一度逃げて体勢を立て直すことを考える
第三者から攻撃される
第三者の設定を決めます
↓1~3 !random最大
【異能】どんな能力を使うか
【サブスキル】>>7参照
【バトルタイプ】>>10参照
【その他】容姿や性格、プレイヤー名など(なければなしでOK)
※思いつかない箇所はこちらで適当に決めます
41 : 【98】 - 2018/10/18 10:22:55 zXm 26/45【異能】電撃放射
周囲に電撃を放つ。電撃は速度は早くて割と遠くまで届くが、直線にしか放てない。選んだ理由は『動画映え』らしい。
【サブスキル】ウェポン(竹刀。何故真剣にしなかったのか、本人も若干後悔してる。)
【バトルタイプ】身体強化型。その為、電撃が大して強くない。何なら竹刀に電撃を纏った方がまだ威力が出る。
【プレイヤー名】タカくんチャンネル
【性格】自分の事を「タカくん」と呼ぶ。口調がやけにウザい。
【容姿】痩せた眼鏡の男。黄色のTシャツに黒の短パンという、ゲーム内なのに何故か現実の自分をそのまま反映している。
【その他】人気がそこそこの動画配信者。バトル中はずっと実況してる。敵と戦いながらも実況していて、何故かそれで相手といい勝負してる。
異能バトル自体はかなりの経験者で実力もトップクラスだが、動画の企画や取れ高を優先している為、よく負ける。
モチコ(別に無理してあいつとやりあう必要はない。他のプレイヤーと潰しあってくれるかもしれないし、一度退いて立て直そう)
空気の足場を作り、再び森に向かって走る。
何もない宙を走る私はとても目立つ存在だろう。早く戻らないと敵に見つかってしまうかもしれない。
と、木々の合間から、チカッと何かが光るのが見えた。
今までの経験から、咄嗟に腕でガードのポーズをとる。
次の瞬間には、全身をビリビリとした衝撃が駆け巡った。
モチコ「ガッ……!?」
空気の足場が消滅し、身体が浮遊感に包まれる。
すぐさま異能で新しい足場を作るが、着地の衝撃を殺せずに膝が痺れてしまう。
痛くはない。痛くはないが、脚を痺れさせたときの数倍のビリビリとした感覚が襲う。
モチコ(電気系の異能……! また厄介なのが……!)
電撃はシンプルかつ強力な能力だ。雷速の一撃は、メタな異能を持っていないと初見殺しにもなりうる。
パワーバランスの調整のため壊れ性能になることは少ないが、それでも脅威であることに変わりはない。
モチコ(ダメージは少ない……距離で減衰するタイプなのか、元から威力が少なめなのか)
モチコ(ていうか私の異能、電気系と相性悪すぎるんだけど……!)
空中に立っている私には隠れる場所などない。とにかく私はジャングルに向かって走った。
再び狙い撃ちされないよう、空気の壁を上下左右に展開し、それらを蹴りながらジグザグに動く。
景色がグルグルと動く。目が回りそうだ。
モチコ(ひえぇ……! この動きつらい……!)
ジャングルに突入する直前、再び電撃を食らった。
小枝を盛大に折りながら、斜めになったままの地面にぶつかった。
転がる身体を空気の壁で受け止める。
モチコ「はぁ……はぁ……クソ、災難だ……」
タカ「おぉーと! これはかなりの美少女だー! マズいマズい、ヘイトためちゃうよ!」
モチコ「げっ……」
やたらハイテンションで現れたのは、痩せた眼鏡の男だった。
せっかくのバーチャル空間だというのに、非常に冴えない格好をしている。手に持っている竹刀がまるで似合っていない。
彼のことは知っていた。長くこの界隈にいれば名前ぐらいは聞いたことがある人も多いだろう。
名前は確か……
タカ「いやでもね、ここは真剣勝負の世界ですから。女子供相手だろうとタカくんは容赦しませんよ」
そう、タカだ。いちいち自分のことをくん付けでよぶのが非常にうざったい。
私は苦手なタイプの実況者だが、なかなかどうして意外と人気があるらしい。
コメントで好き勝手叩けるそのキャラと、なんだかんだで撮り高を作れる程度のプレイングの上手さが人気の理由だった。
タカ「さて、彼女はいったい何の能力者なんだろうね。空の上を飛んだり跳ねたりしてたから、空気を壁にできる能力かな?」
モチコ(ご名答ですよ)
タカ「避けるばっかで攻撃をしてこなかったのを見ると、遠距離攻撃の手段はないでしょ。ディスペルでもなさそうだし、こりゃー勝っちゃったかなー!」
モチコ「……」イラッ
モチコ(配信を盛り上げるためにべらべら喋ってるってのは分かりますけどね……ここは真剣勝負の世界だよ)
モチコ(コッチ見ろこのタコ!)ダッ!
タカ「っ……!」
どうなるか 下1 !random一桁(ストレングスを使うことで判定+3)
1~2 敗北
3~6 劣勢
7~8 優勢
9~0 勝利
ゾロ目 第三者乱入
46 : 【85】 - 2018/10/18 21:57:26 Ctf 30/45ストレングスは使うか選択するって事?
選択するならまだ使わない。
空中と違って、ジャングルの中は遮蔽物に恵まれている。
木と木の間を縫うようにしながら、一気に距離を詰めていく。
タカ「ははっ! さっきのアクロバット芸でも思ったけど、君も相当やりこんでんねこのゲーム! この世界での身体の動かし方を分かってる」
男の発言は意に介さず、足元の小石を蹴り上げる。小石はまっすぐに男の方に伸びていく。
男は焦る様子もなく竹刀を振るった。慣れた動きだ。小さな的ではあるが、そのまま振りぬけば小石を弾き飛ばすことができるだろう。
だが、竹刀の軌道は途中で阻まれた。
タカ(なっ!? 見えない壁……!?)
その隙を逃すまいと、私は一気に男目掛けて駆け出す。
しかし、眩いフラッシュが放たれ、次の瞬間には私の身体は電撃に貫かれていた。
モチコ「ガッ……!?」
タカ「今ので俺に隙ができたと思ったかい?」
モチコ(クソ、近くだとやっぱり効くなぁ……!)
追撃を諦め、即座に木の陰に隠れる。
その後すぐに、幹に雷が直撃し、木の皮が爆ぜた。
モチコ(さて、どうするか……刺し違えるの覚悟で突っ込むか、何か策を練るか……)
モチコ(もしくは退くか……だけど、退いてばっかりじゃ勝てないし、それになによりこいつ倒したい……!)
タカ(うーん……このまま相手の動きを待って着実に削っていけば勝てるけど……動画映えしないかなぁ)
モチコまたはタカの行動 ↓2
49 : 名無しさ... - 2018/10/18 22:52:54 aw2 32/45モチコ
壁で木の上に登り、木の葉で隠れながら木々の枝と枝を行き交い、時には壁を出現させる衝撃で木の枝を揺らしたり攪乱させチャンスを伺う。
モチコ(直進はダメだ、とにかく隙をつくるしかない!)
私は空気の階段を跳ねると、葉が寄せ集まった枝の上に登った。
枝の上はただでさえ移動しづらい上に、今は世界そのものが傾いた状態だが、私には関係がない。
葉をざわめかせながら、木々の上を高速で移動した。
二次元ではなく三次元の動き。足場が悪いこの状況では、動きを追うのも辛いだろう。
タカ「ははっ、すごいな! まるでジャパニーズ忍者じゃん!」
モチコ(日本人のくせにエセ外国人みたいなこと言うな!)
タカ「そこだっ!」
雷撃が枝葉を吹き飛ばす。火花が舞い、チリチリと葉が焦げた音がする。
だがそこは、すでに私が通り過ぎた場所だ。
タカ「あちゃー、残念!」
モチコ(こいつ……! 余裕ぶってるな……!)
タカ(さて、どうしようかね……)
タカの行動 ↓1 !random一桁
1~4 最大出力であたりの枝を燃やし尽くそうとする
5~7 居合いで迎え撃とうとする
8~0 さくっと終わらせようとする
52 : 【47】 - 2018/10/19 20:21:32 LZV 34/45せいや
タカ「そっちが忍者なら、こっちは侍だ!」
男の持つ竹刀から光が迸った。日差しが遮られていたジャングルの中を、青白い光が照らす。
竹刀の表面で、雷が生き物のように荒れ狂っていた。バチバチと爆ぜる音が鼓膜を震わせる。
私は、思わず唾を飲み込んだ。脚が止まりそうになるが、そのまま走り続ける。
痛みも伴わない、所詮バーチャルなエフェクトだというのに、その雷に本能的な恐怖を抱いてしまう。
それほどのリアルさ。そしてプレッシャー。今まで積み重ねてきた経験で分かる。
モチコ(アレをまともに食らったら、即ゲームオーバーだ!)
タカ「小細工は一切抜きだぜ。一撃で決めまぁす!」
伸ばした人差し指で天を指しながら、男は高らかに宣言した。
その宣言は私に向けてのものなのか。それとも、今この戦いを見ているであろう視聴者に向けてのものなのか。
その不誠実な態度が、非常に気に食わない。
男は竹刀を腰の辺りに添えると、軽く腰を下ろした。そして、目を瞑り微動だにしなくなる。
モチコ(こいつ、居合い切りでも決めるつもりか! カッコつけやがって……!)
私もこういうゲームをやっているので、そういうカッコよさは分かる。
だからこそ、こいつにそんなカッコいい勝ち方なんてさせたくなかった。
そもそも、そう簡単には決まらない凄技だからこそカッコいいのであって、この有利な状況でこの手段を選ぶというのはある意味舐めていると言えるだろう。
モチコ(こいつ絶対負かす!)
私も速度を上げていく。
雷鳴と、木々のざわめきだけが森林を包む。
そして。
決着はどうなる? ↓1 !random
1~5 モチコ敗北
6~8 モチコ勝利(ただしストレングス使用)
9~0 モチコ勝利(ストレングス不使用)
55 : 【52】 - 2018/10/19 21:14:39 isx 37/45カッコつけて勝率半分なのか
男は微動だにしない。先ほどまで余計なぐらい喋っていたのに。
男の集中力が高まっているのを感じ取る。認めたくはないが、あいつもまた上級者と言っていい実力を持っている。
覚悟を決めた私は、あらかじめ拾っておいた手ごろな木の枝を、別の木に向かって投げた。
そして、自身の周りの空気を枝ごと固める。音が振動として伝わるのを最小限に抑えるためだ。
投げた枝が生い茂る葉をざわめかせたと同時に、私は男に向かって飛び出した。
タカ「!? そこぉ!」
モチコ「っ!?」
モチコ(これで気付かれちゃうか……! 耳はいいのかこの眼鏡!)
タカ(クソ、反応が遅れた……! 何か細工しやがったなこの無愛想女!)
雷を纏う竹刀が振りぬかれる。
その一閃はまさにドンピシャ、私の身体を一刀両断できる軌跡だった。
だが当然、そんな攻撃は通さない。
竹刀が不可視の壁によって弾き飛ばされた。竹刀に宿っていた電気が霧散する。
竹刀を失った右手はそのまま振るわれ、流れるように拳が握られる。
モチコ(はなから弾かれる想定で……!)
タカ「歯ぁ食いしばれ!」
モチコ「配信者が美少女グーパンなんて炎上するぞ!」
タカ「いや今それはズルいっしょ!?」
そうツッコみつつも、腕を振るうのをやめるつもりはないらしい。
だが当然、その攻撃も通さない。
硬い何かとぶつかる鈍い音とともに、男の拳が宙に止まった。
タカ「あっでっ!? この……!」
男は私の拳を受け止めようと左手を動かした。
私の攻撃の軌道上には空気の壁は作れないので、受け止めるという選択は悪くない。
が、そもそもその左手を動かすことを私は許さない。
タカ「いっづ!?」
タカ(ていうか、後ろにも壁作られてるし!? まず、接近戦を挑む選択肢は失敗だったか!?)
モチコ「オラ一発ッ!!」
タカ「ガフッ!?」
私の拳は、そのまま男の鳩尾に刺さった。
痛みは感じないはずだが、男の顔に苦悶の表情が浮かぶ。
モチコ(ざまあみろ! このまま反撃の隙も与えない!)
そのまま畳みかけようと拳を握り締める。
と、男の体表で、バチッと火花が迸った。
マズい、と思ったが、すでに交わす方法などない。
歯を食いしばるより先に、電撃が私を襲った。
モチコ「ぐぅぅ……!」
タカ「いやほんと、こんだけ当ててもノックダウンできないなんて電撃の威力低すぎだわ!」
タカ「まあその分、こっちにはパワーがあるけどね」
モチコ(マズい、早く、壁を……!)
タカ「いいバトルだった! 掛け値なしに!」
男の手刀が、私の頭に振り下ろされた。
世界が揺らぐかと錯覚するほどの衝撃。視界がブラックアウトする。
そして、『You lose』というメッセージが表示された。
モチコ「く゛や゛し゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!」
最初の無機質なエントランスで、私は悔しさで身を悶えさせた。
モチコ「ストレングス、出し惜しみせずに使うべきだった……クソ、悔しいぃぃ!」
タカ「やあ、お疲れモチコさん!」
モチコ「っ!」フイッ!
ゲームが終わり、エントランスに戻ってきていた眼鏡男に声をかけられた。
私はつい、子供みたいに顔を背けてしまう。
ちなみに、先ほどのゲームで優勝したのは、最初に戦った畝傍というプレイヤーだった。
最後、畝傍とタカの一騎打ちで、水を浴びせられたタカが自身の電撃で自爆するという結末を迎えたのだった。
ざまあみろとも思うが、自身を負かした男がそんな間抜けな負け方をするというのもそれはそれで納得いかない。
タカ「いやぁ、オチもついたし、今回もいい配信になったよ……あ、今はもう切ってるから安心して」
モチコ「……最後まで配信のことですか」
タカ「ん、なんか嫌だった?」
モチコ「負けて悔しくないんですか?」
タカ「いや、悔しいよ? でもそれ以上に、やっぱ面白いのが一番っしょ」
モチコ「……」
タカ「……君とのバトル、本当に楽しかった。最後はハラハラしたよ。相性が悪かったのに、よくあそこまで戦えたね」
モチコ「……負けた相手に褒められても嬉しくないです」
タカ「はは、ストイックだなぁ。どうだい? 君も配信始めてみたら? 視聴者とワイワイしながら遊ぶのも楽しいよ」
モチコ「私、そういうの苦手なので」
タカ「あっそう。君ほど上手い美少女プレイヤー、絶対人気出ると思うけどなぁ。まあ、リアルじゃ俺よりおっさんかもしれないけど」
モチコ(現役の女子高生だよ、っていうとウザい反応されそうだから黙っとこう)
タカ「じゃあまた、機会があれば。次も最高に盛り上がるバトルにしよう」
モチコ「……次は絶対勝つ」
タカ「そのときは、画になる勝ち方してよ。ま、次も俺が勝つけどね」
少女「……」
寝ぼけ眼で、スマホの目覚ましアプリを止める。
視界の端に、地味な黒髪が映る。身体が重い。どこにでもいる平凡な女子高生の寝起きの身体だ。
なんだか、一気に現実に戻ってきた気がする。まあ、事実そうなのだが。
少女(ああー、現実だるい……ずっと遊んでてー、ずっと眠っててー……)
ふわあ、と一度大きなあくびをして、私は身体を伸ばした。
部屋から出て、リビングに向かう。お母さんが作ってくれているお弁当の匂いがする。
少女(ま、今日も頑張るか)
この当たり障りのない日常も、なんだかんだ嫌いじゃない。
次はどんな能力者になろうか、と考えながら、私はパンを齧るのだった。
64 : ◆olmiJdlapkQK - 2018/10/19 23:35:13 Ly3 45/45短いですけどこれで終わりです
異能バトルモノはまたいつかリベンジしたいですね
付き合ってくれた方はありがとうございました