卯月「こんにちは、島村卯月です!」
卯月「私の心がボッキリ折れるその時を、今か今かと待ち望んでいた皆さん!」
卯月「大変です!色んな意味で笑えない事態になってしまいました!」
卯月「やっぱり決め手は、どうあがいても笑顔……!」
卯月「笑顔になるために、私、もっともっともーっと頑張ります!」グッ
卯月「……どうやったら、笑顔になれるんでしょう?」
元スレ
島村卯月「私、笑顔になります!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1442798881/
武内P「大丈夫です、島村さん」ニュッ
卯月「あ、プロデューサーさん」
武内P「実はこんなこともあろうかと、切り札を用意しています」
卯月「………」
武内P「島村さん?」
卯月「せめてこんなことになる前に助けてほしかったですね」
武内P「……すみません。私も忙しくて」
卯月「私と仕事、一体どっちが大事なんですか!」
武内P「笑顔です」
~レッスン場~
武内P「笑顔を無くした、今の島村さんを救えるのは……」
武内P「やはり、笑顔のスペシャリストではないかと」
卯月「笑顔のスペシャリスト、ですか?」
武内P「もうすぐこちらに来られるはずです」
ガチャ
笑美「こんちわー!」
武内P「時間を取らせてすみません、難波さん」
笑美「かまへんかまへん。ほんで、ウチらの新しい番組決まったんはホンマなん?」
武内P「実は、その件なのですが……島村さん」
卯月「はい?」
武内P「このプラカードを、彼女に見せてください」スッ
『ドッキリ、大成功!』
卯月「えっ」
笑美「?……何や?」
笑美「なるほどなるほど、つまりウチらの新番組はここに呼び出すための口実で……」
笑美「卯月はんの笑顔復活に協力させたるでー、がホンマの話やったと」
武内P「はい」
笑美「うわーこれは一本取られたわ、ドッキリかー、しゃーないなー……」
笑美「まぁ、ええよ!卯月はんの笑顔、ウチらで取り戻したるわ!」
卯月「!……プロデューサーさん!」
武内P「うまくいきましたね」
笑美「ってなるかアホーッ!!」ダンッ
笑美「あれから何話経っとる思てんの!?何の音沙汰も無かったやん!」
笑美「正直ウチら忘れられてへんかなーって、ピリッピリしてんねんで!何やねんこの仕打ち!」
武内P「難波さん達にはゲスト出演以降も準レギュラーとして、とときら学園の方に出ていただいている……」
武内P「そういうことになっています」
笑美「『実際には見られへんけどそういう設定になっとるで~』みたいな言い方せんといて!」
卯月「……クスッ」
武内P「今、島村さんが笑って……!」
笑美「笑顔ちゃうわ今のは!完全に嘲笑やん!」
笑美「……普通に頼めばええことを、こんな回りくどくして何がしたいねん」
武内P「すみません。緊急事態ですので、少しでも早く島村さんの笑顔を取り戻したく……」
笑美「ダーティな笑いしか取り戻せへんやんそれ」
武内P「島村さんの笑顔を取り戻していただければ、新番組の件は必ず検討します」
笑美「ホンマに?園児服着んでも漫才できるん?」
武内P「検討はします」
笑美「……ならええわ。助けたる」
卯月「本当ですか!?」
武内P「ありがとうございます。それでは、私はこれで……」
卯月「最後までいてくれないんですか?」
武内P「芸n……アイドルの自主性は、尊重すべきだと思いますので。私ができるのは、ここまでです」
卯月「プロデューサーさん……」
笑美「芸人て言いかけたやろ今!聞いとるで!」
武内P「島村さん……笑顔です。頑張って下さい」
笑美「スルーかい!」
卯月「プロデューサーさん!……私、頑張りますから!」グッ
笑美「しゃーないなぁ、ホンマにもう……ほんで卯月はんは、何がしたいん?」
卯月「え?」
笑美「笑いたいんか?それとも笑わせたいんか?」
卯月「笑わせたいって……それ、アイドルの仕事じゃない気がしますけど」
笑美「そんな事あらへんよ。これはどっかのスクールアイドルが言うとったらしいんやけど……」
笑美「アイドルはな、自分が笑顔になる仕事ちゃうねん。人を笑顔にするのが仕事なんやて」
卯月「人を笑顔にするのが、仕事……」
笑美「それが絶対だとは言わへん。けど、笑わすんも大事っちゅう話ですわ」
卯月「……プロデューサーさんも、そのことを言っていたのでしょうか?」
笑美「うん?」
卯月「私の良い所、笑顔だと言ってたんです。ずっと、私の笑顔のことだと思ってたんですけど……」
卯月「もしかしたら本当は、人を笑顔にすること、だったんじゃないのかなって」
笑美「なるほどなぁ」
卯月「そういう事でしたら私、笑うことより笑わせることを頑張りたいです!」
笑美「……ええ顔んなってきたやん、卯月はん」
卯月「そ、そうでしょうか?」
笑美「ま、頑張る言うんやったら、ウチも全力で助けたるわ。ほなレッスン、始めよか!」
卯月「はい!」
笑美「ところで、卯月はんは笑顔の作り方言うの知っとります?」
卯月「作り方があるんですか?どうやって作るんですか?」
笑美「まずな、黒酢を用意する」
卯月「黒酢」
笑美「それをな、このカプセルにタラーっと詰めて」
卯月「カプセルに詰めて」
笑美「飲むとな、健康になるんや」
卯月「……へー」
笑美「あかん!」
卯月「えっ!?」
笑美「へー、で流したらあかんで卯月はん!ツッコまな!!」
卯月「え、えっと、体に良さそうですね!」
笑美「当たり前やん!黒酢なんやから!」
卯月「あの……一体どういう話だったんです?」
笑美「そっからかい……」
卯月「え○おって黒酢カプセルを作ってる会社があるんですか?」
笑美「せや」
卯月「つまり笑顔の作り方はえが○の黒酢カプセルの話をしていたと、そういう事だったんですね!」
笑美「(……こんなボケ殺し、初めて会うたわ)」
笑美「ボケがあかんならツッコミかとも思たんやけどなぁ……」
卯月「え?まだツッコミしか教えてもらってませんよね?」
笑美「やらんでも分かるわ。正直言うけど、ボケには向いてへん」
卯月「ど、どういうことですか?」
笑美「卯月はんはドが付く天然のボケなんや。舞台の上であらかじめ決めたボケをボケるタイプちゃう」
卯月「ドが付く天然のボケ!?」
笑美「日常でランダムに繰り出される不意打ちのボケこそ、卯月はんの持ち味……」
笑美「自分に合わないことやって笑わすんが苦痛になるって、そうなっても嫌やん?」
卯月「……一瞬バカにされてるのかと思いましたけど、ちゃんと真面目に考えてくれてるんですね」
笑美「こっちは新番組かかっとんのや!死活問題に本気出さんでどこで出すねん!」
笑美「せやけど、こうなると……漫才以外の手を考えなあかんな」
卯月「漫才以外ですか?」
笑美「例えば……」
「着ぐるみ」
笑美「せや、着ぐるみ……ん?」
「笑美しゃ~ん」ガシッ
笑美「ファーーーーーーーーーッ!?」
仁奈「ようやく気付いたでごぜーますか」ガバッ
卯月「……に、仁奈、ちゃん?」
笑美「なな、な何や自分ら!いつからおったん!?」
仁奈「ドッキリに引っかかりやがる所からいたですよ」
笑美「ち、ちゅうか何や、その全身タイツは!心臓止まるか思たやん!」
鈴帆「レッスン場のフローリングに擬態し、ステルス性を高めた特製タイツばい」
仁奈「匍匐前進で笑美おねーさんに近づき、足下でスタンバってごぜーました」
笑美「何ワケの分からんことしてんねんアホ!もっと普通に出てこれへんの!?」
仁奈「フッ……仁奈たちを分かってねぇですな」
鈴帆「ウチらが普通でおったことが、これまで一度でもあったと?」
笑美「いや、確かに分かるんやけど!普通やないけども!!」
鈴帆「まぁとにかく、笑美しゃん一人では荷が重か。ここはウチらに任しときんしゃい」
仁奈「こんな事もあろうかと、特製の着ぐるみを用意してきたのです」
卯月「……着ぐるみを着て、本当に何か変わるんでしょうか」
笑美「ウチは着た事あらへんから、なんとも……ところで、何持ってきたん?」
仁奈「ジャーン!アルパカでごぜーますよ!」
卯月「アルパカ……」
笑美「……待って。鈴帆っち、これ」
鈴帆「シーッ!」
笑美「いや、シーやなくて」
卯月「わぁ、結構モフモフしてますねこれ」モフモフ
笑美「アレ、採寸ミスってサイズ合わへんから着られん言うてた物やんか」ヒソヒソ
笑美「……まさか、作り直すん面倒やから押しつけたんちゃうよね?」ヒソヒソ
鈴帆「………」
笑美「何で腕クロスして目ぇつぶるん、鈴帆っち」ヒソヒソ
鈴帆「……い、今のウチは、どこの家にもあるただのツタンカーメン……」ヒソヒソ
笑美「今の格好でようツタンカーメンや言えたな!」ヒソヒソ
仁奈「こ、こまけーことは気にするなですよ」ヒソヒソ
笑美「気にするわアホ!……ったく。採寸もせんと持ってくるとか、おかしい思ったわ」ヒソヒソ
笑美「最初からおったなら、聞いとるやろ?ウチらの新番組がかかってんねんで」ヒソヒソ
鈴帆「………」
仁奈「………」
笑美「冗談思とる場合とちゃう。もっと真剣に取り組まなあかんの」ヒソヒソ
笑美「そもそもアレが卯月はんに合わんかったら、意味が……」ヒソヒソ
卯月「あの」
笑美「ん?」
卯月「こんな感じでいいんでしょうか」トコトコ
笑美「えっ」
鈴帆「き、着てて、苦しくはなか?」
卯月「いえ、全然」
仁奈「ジャストフィットでごぜーますか!?」
卯月「これ、頭は付いてなかったんですか?」
鈴帆「いや……それで完成しとっとばい」
笑美「(……体はアルパカ、頭は卯月はん……)」
笑美「(な、何やねん、この謎生物……!)」
鈴帆「笑美しゃん」
笑美「鈴帆っち……」
鈴帆「あれこそが、何もしなくてもただいるだけで起こる笑い……」
笑美「!……し、シュールっちゅうやつなん?」
鈴帆「前にもその道を極めようとはしとったんじゃけんど……あれを見ると、ウチもまだまだばい」
仁奈「改めて見るとすげぇ不気味なのです……」
卯月「(……もう本当にアルパカになれたらいいのになぁ)」トコトコ
笑美「いや、確かに……シュールな笑いにはなっとるけど……」
笑美「この卯月はんで、プロデューサーはんが納得するかどうかまでは」
卯月「パカー!」
仁奈「アルパカってこんな鳴き声でごぜーましたか?」
鈴帆「ウチはアルパカの鳴き声、聞いたことなかよ」
笑美「……あ、これ人の話聞いてへんな」
ガチャ
武内P「島村さん、笑顔の方の進捗は……」
智絵里「卯月ちゃん、大丈夫……?」
笑美「あ、プロデューサーはん」
武内P「……こ、これは一体、どういう……!?」
笑美「え、えっとな?……これには色々あって、ふかぁーいワケが」
卯月「パカー!」トコトコ
トゥンク…
武内P「!!!」
智絵里「あっ……!!」
笑美「えっ」
~翌日~
武内P「ニュージェネレーションズのクリスマスライブが差し迫っておりますが……」
武内P「ここで一つ、大事なお知らせがあります」
ザワ… ザワ…
武内P「正統派キュート(仮)を発展させた新ユニット、ピンキーキュートを新しく結成しました」
凛「ピンキーキュート……」
未央「おおっ!どんなユニットかな?」
武内P「メンバーは、小日向さん」
美穂「は、はい」
武内P「緒方さん」
智絵里「はい……!」
武内P「島村さん」
卯月「パカー!」
武内P「以上の三名です」
ドンガラガッシャーン
未央「ち、ちょっ……ちょっと待って!ちょっと待ってよ!しまむー、そのカッコ……」
卯月「パカ?」
未央「いや、パカ?じゃなくてさ!」
凛「……それが卯月の掴んだ、新しい何かなんだね」
未央「え……こ、これが?」
凛「前に仮装したアイドルを見て、あんな風になれたらいいなって、卯月も言ってたから……」
未央「ホントに!?」
武内P「問題はありません。神崎さんと同じく、副音声も今後実装予定です」
智絵里「あぁ……アルパカさん、モフモフです……温かくて、キモカワイイです……!」モフモフ
卯月「パカー」
美穂「あの……歌とか、大丈夫なんですか?」
武内P「Happy×2 Daysの双葉さんの担当パートのようになるよう、調整はします」
未央「今サラッと杏ちゃんバカにしたよね、このプロデューサー」
常務「これは一体どういう事だ。説明してくれないか」
武内P「………」
常務「アイドルのライブは、仮装大会ではない。君もそれを分かっているはず……」
武内P「常務」
常務「何だ」
武内P「後ろ向きで話をなさらないで下さい。正面を向いて、話を……」
常務「これで十分だ」
武内P「いいえ。正面から、島村さんを見て下さい」ガシッ
常務「何をする……」
武内P「彼女の掴んだ、新しい可能性を、その目で……!」グイグイ
常務「やめろ!」グググ
武内P「さぁ!見て下さい!ちゃんと!」バッ
卯月「パカー」トコトコ
常務「っ!?……ふ……く、ふ、ふふ……」
未央「あの常務さんが、笑った!?」
凛「これが卯月の、人を笑顔にする力……私じゃ、かなわないな」
智絵里「アルパカさん、すごい……!」
美穂「え?……そ、そうだね」
武内P「彼女は、シンデレラプロジェクトに必要なメンバーです」
常務「……分かった、分かったから……もう、離してくれ……ふふ、ふっ……」
~クリスマスライブ~
未央「ファンの皆が待ってる……いくよ、二人とも!」
凛「3……2……1……!」
「「フライド……!」」
卯月「パッカーッ!!」
ワァァァァァ…
笑美「……ほ、ホンマに、これで良かったん……?」
おわり