1 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:00:27.51 +Z6nejFDO 1/22


「ありがとうございましたー」


ガサ


「しょっと」

「おお。手際がいいな」

「へ?」

「袋に詰めるの苦手なんだ。大抵もたもたやってると、横に来たおばちゃんにものすごい剣幕で睨まれる」

「こ、このくらいで大げさだなぁ…」

「でもそれ想像つくや。ふふ。プロデューサーさんって、いつもは鈍臭いよね」

「すいません…」

「へへっ。ほらーしょんぼりしてる暇があったら袋を持ちなさいっ」

「あ、はい」

「ちゃんとそっちに飲み物とか、重いもの、入れてあるんだよ♪」

(…手際がいいな)ガサ



冬の話だけど気にしないで


元スレ
工藤忍「雪だね」モバP「雪だな」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1378494027/

2 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:01:49.09 xZrQgoT/o 2/22


「それにしても」

「なに?」

「俺、忍の家に林檎を食いに来たんだったような」

「合ってる合ってる。大正解だよ」

「ぱぱーん。見事正解したプロデューサーさんにはチャンスタイムです」ゴソゴソ

「なんだそれ」

「はい。これ」パッ

「なんだこれ」

「お昼に買ったジュースのおまけ。不思議なお人形と名付けました」

(そのネーミングセンスはどうだろうか…)

「いらないからあげる」

(いらないのかよ)

「どうもありがとう」

「礼には及ばないよ!ふふーそれ、ケータイにつけておくときっと、」

「災いを招きそうだな」

「いいことあるよ。選んでくれたの茄子ちゃんだし」

「よしいますぐつけよう」ゴソ

「……」バシ

「いたい」

3 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:03:30.67 +Z6nejFDO 3/22


「な、なんだよ」

「なんでもないけどー」フン

「なんだよー」

「…ん、どうするかな…」

「??どうかした?」

「スマホだから付けられないかもしれない」

「あーそっか…」

「じゃあ…これ」ハイ

「これは?」

「べつのおまけの、……えい。はい、イヤホンジャックのとこだけ、使っちゃおう」

「あ、なるほど…」カチ

「おお。忍はかしこいな」

「その褒められ方はあんま嬉しくない……ま、まあいいけど」テレ

5 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:05:55.44 xZrQgoT/o 4/22



プラン


「……茄子さんの御利益はともかく、魔除けにでもなりそうだ。ありがとう」

「どういたしまして。あ、近いうちにプロデューサーさんになにか不幸があっても、当工藤は一切責任を負いかねますから!」

「当工藤ってなんだ。というか洒落にならん」

(魔除けなんかじゃなくて…赤い糸になってくれると嬉しいなっ…なんて…)ゴソ

「忍も同じように、スマホになにか付けたりしてるのか?」

「ふふっ」バシッ

「いて」

「付けてないよ♪」

「??そ、そうか。…機嫌よさそうなのに叩かれたのはなんでかな…」

「♪」フフー

7 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:06:35.63 +Z6nejFDO 5/22


「しかしこうするとおまけもばかにしたもんじゃないな」プラン

「だよね。プロデューサーさんも一緒にどうかなーおまけ集め。楽しいよ」

「……いやでも…ほら、だいぶ前にさ…」

「へ?…ああ、そっか、そうだったね…」

「二人してチョコ菓子のおまけ集めるのにはまってな」

「あんまおいしくないのにね。買ってはだれかにあげてたっけ」

「俺の机は食玩まみれ」

「うちの事務所はちょこまみれ」

「……ぷ」

「あはは」

「なにやってんだろうな、俺たち」

「ばかやってるねー」

8 : (>>6 忍ちゃんだけですまんな) ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:07:55.43 xZrQgoT/o 6/22


「あのとき集めたのって、まだとってあるの?」

「ああ。家の押し入れに仕舞ってあるよ。今度見に来るか?」

「へへ、そうしよーかな。またそのうちね」

「おう」

「……」ヘヘー

「…」

「?」

(そういえばなにか話を逸らされたんだったような?)

「…んしょ」ガサ

「そっちも持つよ」

「あ…ありがと。助かったかも…ふふ」

「それはよかった」

「…へへ」ニコ

「…」

(まあ…いいか)

9 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:08:53.18 +Z6nejFDO 7/22



ハー…


「うう…ビニール袋を持つと、この季節は手がいたくなっちゃうよね」

「重いと尚更な。手袋はどうしたんだ?」

「な、失くしちゃった」

「そうだったのか。また買っておくんだぞ。手だって大切な忍の一部だ」

「はーい」

10 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:09:41.08 xZrQgoT/o 8/22


「でも…プロデューサーさんこそ」

「ん?」

「手袋してないね。手、いたくない?大丈夫?」

「こんなに冷えるとは思ってなかったからなー」

「えい」パシ

「っと」

「えへ…これでちょっとくらい、暖かくなる、かな」

「ほ、ほら。アタシも…手袋ないし…そ、それに手先は器用なんだ!」

「手を繋ぐのに手先の器用さは関係ないと思うが」

「……あ、あはは…。そ、そーだね」

11 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:10:38.62 +Z6nejFDO 9/22


「でも、たしかに暖かいな」

「……ね」

「うん」

「…まあさっさと屋内に入った方が暖かいだろうけどな。ちょっと急ぐか」

「……」バシバシ

「さっきから無言で叩くのはやめてくれ」

「ばーか」バシ

「…、やっぱ無言でいいです…」

「……」ゲシゲシ

「ちょ、足は、いた、ちょ」

12 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:11:58.38 xZrQgoT/o 10/22


「……」

「手袋さ」

「?」イテテ…

「ま、まだこっちで、買い物するの慣れてないから。今度一緒に買いに行ってくれる?」

「おう。いいぞ。ついでに俺も新しいのにしようかな」

「!」パアア

「ありがと!じゃあアタシがプロデューサーさんの、選んであげるね」ゲシゲシ

「お、おう。じゃあもう蹴らなくてもいいんじゃないかな…ってっ…」イデデデ

13 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:12:47.16 +Z6nejFDO 11/22








「着いた」ゼェ

「お疲れさま。重かったよね。ごめんね、全部持たせちゃって」

「気にしないでくれ」

(それよりもローキックのダメージの方が大きかったからな)

「??」

「なんでもない」

14 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:13:52.06 xZrQgoT/o 12/22



カン カン


「早くお鍋で暖まろー」

「そうだな」

「……、そうだ思い出した」

「うん?」

「うん」ガサ

「林檎を食いに来たはずが、なぜか鍋の材料を買って忍の家へ来ていた――なんでだろ」

「……って…思ったんだった。さっき」

「ふむふむ」

15 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:14:30.14 +Z6nejFDO 13/22


「ま、いつものことだし、いいんじゃないかなっ」

「まあそうだけどな」

「一人暮らしだからって、心配していつもお節介を焼くのはプロデューサーさんだもんねー」

「う、……悪いな。いつもじゃまして」

「あ……えと…ううん。べつにそんなつもりじゃ…」フルフル

「……、でも…気にはなってたんだよね…」

「なにが?」

「うん」

16 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:15:05.57 xZrQgoT/o 14/22



ズイ


「っ…お、おい。顔が近い」

「ふふ、近づけてるから」

「…プロデューサーさんって、どーしていつも…こんな風にアタシにやさしくしてくれるのかなって」

「…………」

「……これって…あ、アタシの、自意識過剰とかじゃ、ないよね?」

「……う、うん。ええと」

「め、面と向かって言うのは、その…照れ臭いんだが」

「う、うん」ドキ

17 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:15:34.51 +Z6nejFDO 15/22


「俺も一人暮らしだからさ」

「はい」

「ほ、ほら。ご飯は…一人よりも、だれかと一緒に食べた方がおいしいだろ?」

「…………」

「それだけ?」

「も、もちろん!なにかやましい気持ちなんてちっとも――」

「えいやぁ!」ガツッ

「いってぇ!?」

18 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:16:42.12 xZrQgoT/o 16/22


「……ぉぉ……。ず、頭突きで来るとは……」シュウウ…

「はあー…はー…。そうだよねー…プロデューサーさんだもんねー…はー…」

「な、なんだよ」

「なんだよはこっちの台詞だよ!」ガゴ

「お、おう。すいません」

「もー…なんだよー……」

「はあ…まあいいや。うん」

「いいですか」

「いいです。そうだね。ご飯は二人で食べた方がおいしいよね」

「そ、そうだよな。よかった……」ホッ

19 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:17:14.90 +Z6nejFDO 17/22


「その方が忍が楽しいかと思ってたんだ。俺の思い込みじゃなくてよかった」

「……、?」

「あ、そういう」コクン

「ん?」

「あ、ううん。なんでもないけど」

20 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:17:50.85 xZrQgoT/o 18/22


(ふ、不意打ちか。油断してた。もうこの人、いっそ暗殺者にでもなった方がいいんじゃないかなっ)ドキドキ

(ま、まったく…いつもは鈍臭いくせにいざってときだけこんなだし…ずるいぞー…もー)

「??」

「どうかしたかー」

「ど、どうもしないよ。忍は今日も元気です」ハイ

(お母さんへ送る手紙みたいだな)

21 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:18:28.97 +Z6nejFDO 19/22


「はー…もう。これだからプロデューサーさんは…」

「さ、さっきも言ってたな…それ。なあ、それってどういう――」

コツン

「ん」

「大好きだよ。大好きですよ」

「…………」

「……ああ…う、うん。ありがとう。…どういたしまして…?」

「なにそれ」アハハ

「……なんだろう…」ハハ…

22 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:19:05.54 xZrQgoT/o 20/22


「うー。冷えて来たね…早く部屋に入ろ」

「そうだな。階段でなにやってんだか」カン カン

「……あっ…ねえ、プロデューサーさん。あれ」クイ

「ん?…ああ」


「雪だね」

「雪だな」

23 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:19:39.01 +Z6nejFDO 21/22


「……ほわー…」

「…………」

「…あれだね」

「初雪もだれかと見るとお得感がある感じだね」

「お得感て」

「ちょっと幸せかも」

「……、そっか」

「うんっ。これきっと、不思議なお人形さんのおかげだよ!」

「それはない」

24 : ◆9A08jC1.oE - 2013/09/07 04:20:17.42 xZrQgoT/o 22/22


「…えへへ」

「それじゃあーお鍋にしよっか!」

「そうだな」



・・・・おしまい

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