1 : VIPに... - 2014/08/15 15:12:48.44 ZK/5vRWB0 1/48*PはオリジナルのP。バネPじゃない。
*アイドルの美容関係でオリジナル設定多数あり。公式と情報が違っても二次創作ということで見逃してください。
P「春香、お前はアイドルになるのが夢だったな。」
P「アイドルになった今はどうだ。思ってたよりも何も変わらなかっただろう。」
P「まあそんなものだ。自分で変わろうとしない限りなにも変わらん。」
P「夢が叶った今のお前は抜け殻だ。なんとなくでやっていけるほどアイドルは甘くはない。」
P「お前はこの先何がしたい、どうしたい。」
P「答えが見つかるまでしばらくオーディションはなしだ。」
P「そうだな一つヒントをやると、答えは見つけるんじゃんなくて作るものだということだ。」
P「若い女の子にはついつい甘くしちまうな、俺も歳かねえ。」
春香「雪歩って髪サラサラだよね。」
雪歩「うん、毎日手入れしているから。」
真「女の子らしいなあ。」
春香「真はボサボサだね。」
真「うっ!」
雪歩「真ちゃん・・・。」
真「ボクだってちゃんと毎日とかしているよ失礼な!」
雪歩「真ちゃん、女の子ならもっと自分の体を手入れしてあげないと可哀想だよ。」
真「だってトリートメントをしたって全然髪が柔らかくならないんだ。」
春香「トリートメントは毎日続けて使って髪が痛まないようにするもんだよ。」
真「う~。」
雪歩「真ちゃんの髪はこしが強くてハリのあるいい髪だよ。」
真「・・・まあ、朝のジョギング後のシャワーは面倒くさくて、ろくにケアしてなかったかな。」
春香「それでろくに乾かさないままボサボサになるんだね。」
真「なんだよ、春香だって後ろ髪はボサボサじゃないか。」
春香「ギクッ!」
雪歩「肩位の長さでセットしないで寝ると外に跳ねるよね。」
真「それで朝寝坊して、慌てセットするけど時間がなくて後ろ髪はそのままなんだろ。」
春香「ア、アハハハ・・・。やっぱり変かな?」
雪歩「なんだか変に凝った髪型にしようとして失敗してるみたい」
真「横髪は綺麗にまとまっているのにね。」
春香「のワの」
真「今度綺麗にセットして見せてよ。」
春香「う、うんでも急に髪型変えて変に思われないかな?」
雪歩「確かに余りイメージが変わったらびっくりしちゃいそう。」
真「一度付いたイメージってなかなか消えないんだよ。ファンも僕に王子様を期待しているし。だからいまさら髪のケアをしてもイメージを壊してしまいそうで手を出しにくいんだ。気にしすぎなのはわかっているけどね。」
雪歩「大丈夫、どんなにボサボサでも真ちゃんは未来永劫格好いいから!」
真「」
春香「雪歩は偉いなあ、毎日きちんと手入れしていて。」
雪歩「そんなことないよ。」
真「特に派手なことはしていないけど、体の隅々まで手入れが行き届いているよね。」
雪歩「体はお父さんとお母さんからの贈り物だから、丁寧に扱うのが感謝の証なんだよ。」
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春香「あずささん後悔していませんか?」
あずさ「そうね、切ったばかりの時は私には似合わないんじゃないかしらって不安には思ったけど、後悔はしてないのよ。」
春香「でも、あんなに綺麗な髪をばっさり切っちゃうなんて・・・。千早ちゃんも何か言ってよ。」
千早「別に髪の長さなんてその人の好きで良いんじゃないかしら。」
春香「そんなあ・・・。」
千早「そうね、長年自分に付いていたイメージをあえて捨てることで新たな方向を周囲に示し、新鮮な印象を与え注目を集めるのは有効だと思うわ。」
あずさ「まあ、そんなにしっかりした考えがあった訳じゃないのよ。ただちょっと髪を切ってみようかしら~と思っただけで。千早ちゃんもそういうことないかしら?」
千早「いえ、そういうことは特には。」
あずさ「あ、あらそう・・・。」
春香「ち、千早ちゃんは髪をいつから伸ばしているの」
千早「子供のころから伸ばしているから・・・。でも最後に美容室に行ったのが3年前になるかしら。」
春香「ええっ、3年!前髪は?」
千早「基本は横に避けて、目にかかるのが無視出来なくなるくらい伸びたら自分で邪魔にならない程度に切るわ。時間とお金が勿体無いから。」
春香「」
あずさ「あ、あらあら・・・」
千早「そ、そんなに変かしら?」
春香「だって前髪だよ!前髪一つで顔の印象が全然違っちゃうのに・・・。」
千早「確かに前髪が容姿の上で大事なのは知ってはいるわ。でも前髪変えたぐらいでそんなに印象が変わるとは思えないの。」
あずさ「うーん、そうともいえないんじゃあないかしら。」
千早「それに春香や萩原さんみたいに切り揃えると、こまめに切らなくてはいけないでしょう?」
春香「まあ、髪が伸びるとみっともないから。」
千早「切った時は綺麗でいいけれど、暫くするとすぐに伸びてきて揃わなくなってしまうんでしょう。いつ切りに行けばいいのか気になって仕方ないわ。歌に集中出来なくなってしまいそうで・・・。」
春香「確かに千早ちゃんが前髪を切り揃えたら、一週間ごとに伸びたのが気になって美容室に行って切ってもらうぐらいケアに力を入れそうかも。歌どころじゃなくなっちゃう。」
あずさ「まあ、千早ちゃんには千早ちゃんにあった髪型があるわね。」
千早「結局、髪型に拘っていいのは時間とお金の余裕のある人か、多少乱れても気にならない神経の持ち主なのよ。」
春香「(ん?それって・・・。)」
あずさ「か、髪型って自分が思っているよりも案外他人は気にしてなかったりするから~。」
千早「そうかもしれません。まあ、とにかく私は髪にはこだわりはありません。必要ならば手を加えますが。」
春香「あずささんも前髪は伸ばしてますね。」
あずさ「私はこの前髪のスタイルが気に入っているのよ。なるべくこまめに美容室に行って毛先を揃えたり、トリートメントをしてもらっているのよ。」
春香「そんなに大事にしていたのに切っちゃったんですか?」
あずさ「今までやってきたことを大事にするのも大切だけど、新しいことに挑戦してみるのも大事だと思ったの。不思議なことに髪型を変えたら新しい自分に会えた気がしたわ。イメージチェンジは新しい自分を探す冒険なの。戸惑ったり迷うこともあるけれど冒険に出たことは後悔しないわ。」
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春香「やよい、髪が崩れそうだよ。」
やよい「はわっ!本当だ、ゴムが緩かったのかな?」
春香「直してあげるよ。こっちおいで。」
律子「ゴムが緩いままじゃ駄目ね。ほら、代えのゴムよ。」
やよい「律子さん、ありがとうございます!」
律子「使い捨ての安いやつだから、そんなに喜ばなくて良いのに。」
春香「はいここ座って。」
やよい「春香さん宜しくお願いします!」
春香「はいはい、春香さんにお任せあれ。まずは携帯コームで髪を左右均等に・・・あれ結構難しい?」
律子「そこはきちんとバランス良く分けないと。」
春香「うーん、よし、分けられた。次に頭の右上で髪をまとめて・・・。」
やよい「春香さん、いつもはもう少し上の方でまとめてます。」
春香「ん、ここ?」
やよい「はい、そこです。」
春香「で、ゴムでしっかり縛って。」
律子「ちょっと緩いんじゃない?」
春香「このぐらい・・・。」
やよい「ちょっときついかなーって。」
春香「ああ!ごめんやよい、このぐらい?」
やよい「はい!」
律子「次は左だけど大丈夫?」
春香「?右と同じじゃないんですか?」
律子「先に結った右と左右対称になるように気をつけてね。」
春香「あっ、そうか。」
律子「ほら、こうやるの。」
春香「律子さん上手。」
律子「私は自分のを結うので慣れてるだけ。まあ先に春香がやっているのを見て要領を得たのもあるしね。不器用でもそれなりになるわ。」
春香「律子さんは毎朝お下げを結っていたんですね。」
律子「別にお洒落してたわけじゃないわよ。髪を垂らしたままにしておくと鬱陶しくて邪魔になるし、知らない間に汚れてたりして不衛生なのが嫌なのよ。それに垂らしたロングヘアーなんて小顔の美人に許された髪型なのよ。私みたいな顔デカ女が垂らしても全然似合わないって分かっているからお下げにするしかなかったの。」
春香「そうかなー。」
律子「だからといってやよいが可愛くないって言っているわけじゃないの。ツインテールなんて可愛い女の子にしか似合わないんだから。はい、できた!」
やよい「うっうー!律子さん、春香さん、ありがとうございました!似合ってますか?」
春香「うん、天使みたい!」
律子「可愛いわよやよい。ところで結っている間ご機嫌だったけど、なにニコニコしていたの?」
やよい「私この髪は毎朝お母さんに結ってもらっているんです。いつもお母さんは忙しいけど結っているときは私に集中してくれていて、学校のこととかアイドル活動のこととか私の話良く聞いてくれているんです。人に髪を触って貰うとその人が私のこと大事にしてくれているのが分かるんです。律子さんと春香さんに髪をいじってもらっている間凄く気持ち良かったです。だから私この髪型大好きです!」
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春香「ほら美希、もう起きないと美容室の予約に遅れちゃうよ。」
美希「う~ん・・・あと5時間。」
春香「美希が時間になったら起こしてくれって言ったんでしょ。おーきーてー。」
貴音「春香、このように気持ちよく寝ている美希を無理やり起こすのはいかがなものかと。」
春香「美希は貴音さんの膝枕で随分と気持ちよさげに眠ってますね。」
貴音「しかしこのような無邪気な寝顔、邪魔をするのに忍びないものですね。」
春香「美希、いい加減今日リタッチしないと次のオフまでプリンになっちゃうよー。アイドルがプリンでいいの?」
美希「美希プリンよりイチゴババロアがいい・・・。」
春香「ピンク髪のアイドルって凄い。」
貴音「春香、先程から一体何を言っているのです?」
春香「美希は前回髪を染めてから大分時間が経って根元が目立ってきたので、今日美容室でリタッチをしてもらう予定なんです。」
貴音「髪を染める?美希はこれほど美しく輝く金の髪を持っているのに何故染めるのです?」
春香「美希は元々金髪じゃないんです。美希は日本人だから本当はもっと黒に近い髪の色なんです。」
貴音「なんと!ではなぜ美希はこのような光り輝く髪に?」
春香「ええと、美容室でカラーをしてもらったんです」
貴音「では美希のこの色は金色の絵の具を塗ったものだったですね。なんと面妖なっ!」
美希「美希の地毛に色を乗せただけじゃ染まらないよ。」
春香「あ、起きた。」
美希「あふぅ、うるさいから目が覚めちゃった。」
貴音「申し訳ございません美希」
美希「あーあ、美容室行くの面倒くさいな。貴音代わりに行ってくれない?」
貴音「はて、りたっちは私で代行可能なのですか?」
春香「可能なわけあるか!」
美希「根元の数センチを染めるだけで1時間もかかるんだもん。絵の具みたいに染められたらな。」
貴音「数せんちだけ染めるのですか、なぜそのようなことを?」
美希「美希は生まれつきの金髪じゃないから、ずっと嘘をつき続けなきゃならないの。」
春香「なんかカラーリングも面倒そうだね。」
美希「でも月に一回数時間我慢すればあとはずっと綺麗なままだもん。トリートメントさえしっかりやっとけば朝面倒なセットしなくてもキマるから。」
春香「ふーんって美希もう時間!」
美希「・・・あふぅ」
春香「おい!」
貴音「分かりました。美希、私がりたっちを代行いたしましょう。」
春香・美希「え!」
貴音「同じ事務所に所属する皆様は私にとってかけがえのない存在です。ともに嵐のような芸能界をがむしゃらに突き進む者同士、時に助け合い時に励ましあい絆を深めてまいりました。私にとって浅からぬ縁の美希がただひとり秘密を抱え虚構に押しつぶされそうになっているのを黙って見ていては四条の名が泣きます。どうかここは私にりたっちを代行させてあなたの抱える苦しみを分かち合わさせていただけませんでしょうか?」
春香「貴音さん、格好いい。」
美希「ま、待って!」
貴音「はい?」
美希「美希は別に地毛が嫌いなわけじゃないの。でも金髪にすればもっとキラキラになるから、美希は好きで嘘をついているの。貴音のその髪はキレイだよ。だから貴音の好きじゃない色で染めて欲しくないの!」
春香「美希!」
貴音「しかし美希。」
美希「いいの!自分で選んだのにイヤなわけがないの。美希は美希だから、落ち込んだりなんかしないよ。美希はもっともっとキラキラして世界中をキラキラさせるの。カラーリングなんてどうってことないの!」
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春香「伊織トリートメントありがとう」
伊織「どう?結構良かったでしょ。」
春香「うん、いつもよりもずっとツヤツヤしてびっくりしちゃった!」
伊織「にひひっ!この超スーパーアイドル伊織ちゃん御用達のブランドだもの、そこらへんの一般販売品とは品質からして違うのよ。」
響「春香、伊織はいさい!あれ、春香なんだかいい匂いがするぞ。」
春香「おはよう響ちゃん。伊織に愛用のヘアケアブランドの試供品をもらってつけてみたんだ。どうかな?」
響「なんかいつもと違ってツヤツヤしっとりとしていい女みたいだぞ春香!」
春香「あ、ありがとう。でもそれって普段の私がガサガサでいい女じゃないみたいだよ!」
伊織「響、アンタってばいつも髪がボサボサなのね。ちゃんとヘアケアしているの?」
春香「あれ、無視?」
響「うがー余計なお世話だぞ!自分だってちゃんとヘアケアぐらいしているさ。」
春香「無視なの、ねえ?」
伊織「本当かしら?この超スーパーアイドル伊織ちゃん御用達のブランドの試供品をあげるからもっと気をつけなさい。」
響「ふんっ、そんなものなくったってヘアケアぐらいできるさ。なんせ自分完璧だからな!」
伊織「な、なんですって!」
春香「響ちゃんもらっておきなよ。凄くツヤツヤするよ。」
響「いらない!」
伊織「な、なによせっかく人が好意であげようとしたのに・・・。」
春香「響ちゃん!」
響「・・・・・・・そういうケア用品には人工香料が使われているんだ。自分の家族たちはそういう香りを嫌がるからなるべく使わないようにしているさ。」
伊織「じゃああんたはどうやってヘアケアしているのよ!」
響「アロマオイルを配合した自然派のグッツを中心に使って、石鹸や洗剤もなるべく無添加のものを使っているさ。」
春香「へーじゃあ響ちゃんのこの香りはハーブなの?」
響「自分が使っているのはローズマリーを中心にゼラニウムやカモミールが配合されたヘアクリームさ。あとは石鹸の香りだな。」
伊織「そんなので本当に手入れが行き届くのかしら?」
響「結局人は自然の魅力を活かすのが一番さ。人工香料や合成品に慣らされた伊織にはわからないけどね。」
伊織「自然の魅力ねえ・・・。そう言う割にはあんたリボンやアクセサリーが大好きじゃない。」
響「リボンなら伊織や春香だってつけているじゃないか。」
伊織「私や春香は装飾としてリボンを使っているの。女の子らしい華やかな魅力を演出するにはこれが一番だからね。」
響「そうなのか春香?ていうか春香のそのリボンってどうやってつけているんだ?」
春香「ん、これは後ろ髪を留めるヘアピンについているリボンだよ。」
響「そうなのか。てっきり自分はもみあげを縛っているリボンかと思ってたぞ。」
伊織「もみあげ縛ってどうすんのよ!っていういうかもみあげは縛れないじゃないの。」
響「演出とかそういうのを気にしてやりたいことをやれないのはバカみたいだぞ。もっと自分のやりたいようにやればいいさ。他人の評判なんて気にしたってしょうがないさ。自分は自分じゃないか。」
伊織「そうはいってもね、社会で暮らしている以上他人の評価から逃れることは不可能よ。それに持って生まれた素質にあぐらかいて努力を忘れたら素質だって枯れてしまうわ。少女時代は短く貴重なのだからできる限り商品価値を上げて世間に売って何が悪いの。なるべく魅力的な女の子になりたいというのは自然な願望だわ。」
響「なに真みたいなこと言ってんだ。」
伊織「あいつと一緒にしないでよ!」
春香「ふ、二人共落ち着いて。真が睨んでるよ・・・。」
響・伊織「「春香は黙ってて!」」
春香「は、はいっ!」
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春香「ねえ亜美は髪を伸ばさないの?」
亜美「ふぇ?どうしたのさはるるん、やぶからスティックに。」
春香「藪から棒に、ね。だって亜美と真美は昔は二人でお揃いの格好をしていたじゃない。でも・・・。」
亜美「真美が髪を伸ばしたから亜美も伸ばしてお揃いにしないのかって?」
春香「うん。」
亜美「うーん、別にいっかなって。」
春香「何で?昔はずっと一緒だったのに二人別々になっちゃったんだよ、不安にならないの。」
亜美「はるるんは分かってないな~。亜美と真美は今でも一緒だよ。というか二人が離れることはありえないのだよ。」
春香「どういうこと?今真美は営業にいってて、事務所には私と小鳥さんと亜美しかいないんだよ。」
亜美「はるるん、距離の問題じゃないのだよ。我ら双子は生まれた時から一心同体、例え肉体が離れていようとも心は常に側にあるのだよ。」
春香「今度はなんのアニメのセリフ?」
亜美「おっと、鬼軍曹殿が帰ってきたでござる。亜美はこれから軍曹殿の地獄のシゴキに耐えねばならぬのだ。じゃーねはるるん、また会う日まで!」
春香「あ、うんじゃあね亜美。・・・あれ、真美そこにいたんだ。今の聞いてた?」
真美「うん・・・。」
春香「そっか。ねえ亜美の言っていた事の意味わかった?真美も亜美とは常に一心同体な感じなの。」
真美「違うよ。真美は一度逃げたんだよ。」
春香「え?だって亜美は常に一緒だって。」
真美「真美はね、信じきれなかったんだよ、亜美のこと。そして真美自身のこと。」
春香「どういうこと?」
真美「真美は“双海亜美”から逃げたんだ。でもそもそも逃げられるものじゃなかったし、逃げる必要だってなかったんだって気づいたのは逃げた後だったんだけどね。」
春香「真美は逃げたことを後悔している?」
真美「しているよ。でもあの時逃げたから“双海真美”ができたんだよ。逃げたのは無駄だったけど、その無駄を拾って再利用してできたのが真美。真美はこれからも無駄だと分かっていても逃げ続けるよ。そして亜美が逃げる真美に気づいて怒ってくれたとき、真美は逃げるのを止めるんだ。」
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春香「はあ~~。」
小鳥「春香ちゃんどうしたの大きなため息ついて。悩みがあるならお姉さんが相談に乗るわよ。」
春香「小鳥さんはどうしてその髪型なんですか?」
小鳥「髪型かあ、そうねえ事務員とは言え接客をすることもあるから、社会人として信頼されるように清潔感と安心感を意識しているわね。とは言ってもついつい寝坊しちゃって、髪が乱れたまま出社することも多いのよね。」
春香「リボンは?」
小鳥「へ?」
春香「リボンはつけないんですか?」
小鳥「い、いや特には・・・。」
春香「なんで付けないんですか?」
小鳥「だ、だってリボンは春香ちゃんのトレードマークじゃないの。」
春香「リボンなんて伊織や響ちゃんもつけてるじゃないですか。」
小鳥「そ、それはそうだけど・・・。どうしたの春香ちゃん?どこか具合でも悪いの?」
春香「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
小鳥「あの・・・。」
春香「・・・ないんです・・。」
小鳥「ん?」
春香「私は真みたいにファンのために自分を殺したり、雪歩みたいに家族のために徹底して自分を磨くような献身性はないんです。」
春香「千早ちゃんみたいに歌のためにオシャレを放棄したり、あずささんみたいに新しい自分を追い求める情熱はないんです。」
春香「律子さんみたいに嫌いなわけでも、やよいみたいに好きなわけでもないんです。」
春香「貴音さんみたいに生まれ持った資質を惜しみなく分け与えたり、美希みたいに理想のために嘘をつき続ける度胸はないんです。」
春香「響ちゃんや伊織みたいに一本通った信念がないんです。」
春香「亜美みたいに信じて留まることも、真美みたいに後悔することを覚悟で逃げる勇気はないんです。」
小鳥「そんなに気にしなくても。私だってそんなに深い理由でこの髪型にしているわけじゃないのに。」
春香「小鳥さんは事務員だけど、私はアイドルなんです。」
春香「アイドルなのに私にはなんにもないんです。」
春香「私っていったいなんなのでしょう。」
小鳥「春香ちゃん、世の中には何も持っていないのにそれに気づかずに漫然と過ごしている女の子がそれこそ星の数ほどいるわ。」
小鳥「あなたも何も持たない子だったけど、それでもそんな自分を変えようと何かを得ようとアイドルへの道を歩み始めた。」
小鳥「もうあなたは“何か”の種を芽生えさせているのよ。」
小鳥「みんなだって最初は何も持っていなかったけど、一生懸命種を育てて“何か”を手に入れたのよ。」
小鳥「今のあなたは何も持っていないけど、あなたが望むならこれから先何だって手に入るわ。」
小鳥「だから焦らず育てればいいの、自分の種とじっくり向き合って欲しいものに育てればいいの。」
小鳥「困ったときは周りを頼ってくれたっていい。少しなら迷惑をかけたっていいの。」
小鳥「だってあなたはアイドルなのだから。」
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P「最近健康のために弁当をつくるようになったんだよ。」
P「まずご飯をいれるだろ。」
P「で、焼肉をドーンとのっける。俺肉大好きなんだよ。」
P「これだけじゃあ見た目が茶色くてイマイチだから、緑とか赤い野菜を入れる。」
P「そうすると弁当箱に入りきらないから焼肉をちょっとどける。」
P「あいた隙間に卵とか詰めとく。」
P「あとご飯が真っ白で寂しいからごま塩をふる。」
P「これで完成。結局ごく普通の弁当になっちまった。」
P「でも普通の弁当が一番バランスがいいんだよな。」
P「普通って悪いように言われてるけど、実は欠点がないってことだ。」
P「いいんじゃねえのか普通のアイドル。成長すれば完全無欠のアイドルになれるってことだろ。」
P「まあ、その分トレーニングもハードになるから覚悟しとけよ。」
P「はん、返事だけは立派だな。まあせいぜい泣くんじゃねえぞ。」
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P「うし、このオーディションは大事だぞ。絶対に落とすんじゃねえぞ。」
P「おっ、気合十分じゃねえか。」
P「分かってんだろうな、落としたら一ヶ月間事務所の便所掃除だぞ。」
P「時間だ、いけ。」
審査員「では3番の人、自己紹介をお願いします。」
「はい!天海春香17歳です。トレードマークは頭のリボン、ごく普通のアイドルです!」
終わり