1 : VIPに... - 2014/05/31 18:15:51.27 KuIiX5g1o 1/52



   ウロ……

           ウロ……


カイジ「……まいったな」


 役所を出て十五分……伊藤カイジは迷っていた

 本来であれば五分で最寄りの駅につくはずの道程

 暑さに参ってコンビニでアイスを買ったのがいけなかった

元スレ
カイジ「迷子か……!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401527751/

2 : VIPに... - 2014/05/31 18:16:44.25 KuIiX5g1o 2/52

カイジ「どっちだ……? この道、いや、この方角……?」


 慣れぬ場所、慣れぬ道、慣れぬ風景……!

 カイジは完全に迷っていた

 灰色の怪物……コンクリートジャングル

 魔の手の上っ……!

3 : VIPに... - 2014/05/31 18:17:59.02 KuIiX5g1o 3/52



カイジ「今、どこに居るんだ……? 徒歩だし、そう遠くはないはず」


 カイジ、道の案内図を見つけ思わず駆け寄る。


カイジ(なあんだ。地図があるじゃないか)

カイジ「現在地は……っと」



カイジ「駅から遠ざかってるじゃねぇか……!」

4 : VIPに... - 2014/05/31 18:18:24.75 KuIiX5g1o 4/52


 しかし、この地図からカイジ、閃くっ……!


カイジ「……いや、待てよ。一つ先の駅は、ここから歩いて近いぞ」

カイジ「くくくっ……一駅分歩いて、電車賃が浮くな」

5 : VIPに... - 2014/05/31 18:19:02.82 KuIiX5g1o 5/52

 気を取り直して歩き出したカイジ



カイジ「……ここの道を暫く歩いて、右に曲がるんだな」テクテク

カイジ「…………」チラッ

カイジ「さっき地図で見た方角はこっち……この小道、ショートカットできるな」

6 : VIPに... - 2014/05/31 18:19:33.73 KuIiX5g1o 6/52


 カイジ、逡巡……

 そして、道を曲がるっ……!


カイジ「…………」クルリ


 一見理にかなった右折……!


カイジ「~♪ ~♪」テクテク

7 : VIPに... - 2014/05/31 18:20:03.20 KuIiX5g1o 7/52



 この時、カイジ
 迷子にならないための定石を忘れている
 今まで培ってきた感覚……!

 経験をっ……!


カイジ「…………うん?」ピタ


カイジ「そろそろ、曲がらないと駅につかないが」キョロキョロ

カイジ「……もう少し歩いてみるか」テクテク

8 : VIPに... - 2014/05/31 18:20:31.09 KuIiX5g1o 8/52



 カイジ、直進……!


 左に曲がる道を発見


カイジ「よしよし。あーくたびれたな」



 しかし、裏目っ……!


カイジ「な、なんだこのフェンス……!」


 駅の表裏を断つ、金属の柵……!

10 : VIPに... - 2014/05/31 18:21:37.08 KuIiX5g1o 9/52

 しかし、カイジはこの柵を乗り越えるほどの恥知らずではない

 断念っ……! 来た道を引き返すしかないっ……!


カイジ「くそっ、どうして……どうして……!」


カイジ「しょうがない、引き返すか……いや、でも結構距離が……」

 カイジ、おもむろにスマートフォンを取り出す

 文明の利器っ……!

11 : VIPに... - 2014/05/31 18:22:31.31 KuIiX5g1o 10/52

1401527751-011


12 : VIPに... - 2014/05/31 18:26:22.92 KuIiX5g1o 11/52

カイジ「あるっ……! 小さい道だが……あるぞ……!」

カイジ「ここから、抜けていって……これなら、もう一駅歩くか……?」

 カイジ、ここまで歩いたカロリーが惜しく
 ただそれだけのためにもう一駅、歩くプランニング……!


カイジ「まあ、いい運動になるさ……」テクテク

 近道、近道と行っているつもりが、実は大きな遠回り……!

 迷子の人間が陥るパターン

 その"論理(ロジック)"、泥沼に

 カイジは完全にはまっていた……!

15 : VIPに... - 2014/05/31 18:29:14.24 KuIiX5g1o 12/52

カイジ「また迷うとまずい……ここは、スマホの地図を駆使しよう」

 カイジ、地図のアプリを出しっぱなし

 現在位置を通信で表示……!


カイジ「よし。これで、間違いないぜ」

 間違いのなさ

 それこそが落とし穴と、カイジ、まだ気付かない……!

16 : VIPに... - 2014/05/31 18:30:09.74 KuIiX5g1o 13/52

1401527751-016


18 : VIPに... - 2014/05/31 18:41:42.89 KuIiX5g1o 14/52

1401527751-018


19 : VIPに... - 2014/05/31 18:42:14.90 KuIiX5g1o 15/52

1401527751-019


20 : VIPに... - 2014/05/31 18:42:48.47 KuIiX5g1o 16/52

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21 : VIPに... - 2014/05/31 18:43:44.25 KuIiX5g1o 17/52

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22 : VIPに... - 2014/05/31 18:58:07.34 KuIiX5g1o 18/52

カイジ「このアプリ、狂ってるんじゃないのか……!」

カイジ「俺は今一歩も歩いてないのに、大通りと路地を物凄いスピードで往復しているっ……!」

カイジ「くそっ、しかもよく見たら、歩いている道も300mずれてるじゃねぇか……!」


 飲まされる煮え湯っ……!

 文明の利器、スマホの裏切りっ……!

 GPSの不調っ……!

23 : VIPに... - 2014/05/31 19:02:45.15 KuIiX5g1o 19/52

カイジ「このままじゃ、家にもどれねぇっ……!」

カイジ「どうする……どうする……」


 カイジ、熟考……!


カイジ「一番、確実なのは、来た道を戻ること……」

カイジ「だが、それは厳しい……」

カイジ「もう四十分も経っちまった」チラ

カイジ「………………」


カイジ「とりあえず、歩こうっ……!」


 カイジ、直進っ……!

24 : VIPに... - 2014/05/31 19:03:32.41 KuIiX5g1o 20/52

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26 : VIPに... - 2014/05/31 19:07:28.62 KuIiX5g1o 21/52

カイジ「あ、あれは……もしかして……!」テクテク


 完全に道に迷ったカイジ、もはや勘を頼りに歩くばかり

 こうなるともう泥沼っ……!

 しかし、一筋の光明……!
 灯台、標が

 カイジの前に現れたっ……!

 それは……


カイジ「こ、交番……!」

27 : VIPに... - 2014/05/31 19:10:30.20 KuIiX5g1o 22/52

交番(こうばん、k?ban)とは、日本の警察が設置している施設で、
市街地の各所に設けられた警察官の詰め所のこと。
(Wikipediaより)


カイジ「…………ぐっ」モジモジ

カイジ「ここで助けを求めたら、今までの苦労は水の泡」

カイジ「アウツ……!」

カイジ「……だが」


 カイジ、迷うっ……!
 道に迷って、なお迷うっ……!

28 : VIPに... - 2014/05/31 19:12:34.72 KuIiX5g1o 23/52

カイジ「……お、お巡りさ~ん!」ダッ


 カイジ、駆け込む……!

29 : VIPに... - 2014/05/31 19:13:43.61 KuIiX5g1o 24/52

1401527751-029


30 : VIPに... - 2014/05/31 19:15:08.86 KuIiX5g1o 25/52

カイジ「その駅まではどうやって行けばいいんですか……?」

お巡りさん「前の道をずーっと進んだところに、
 ファミレスがあるんだけど、そこを左に曲がればすぐだよ」

カイジ「あ、ありがとうお巡りさんっ……!」


 カイジ、蜘蛛の糸を掴むっ……!

31 : VIPに... - 2014/05/31 19:17:05.53 KuIiX5g1o 26/52

お巡りさん「あ、しかし……だけどなぁ……」

カイジ「え、な、なんです……?」

お巡りさん「いや、ちょっと道は分かりづらいんだけどね、そっちから行った方が近いかも……」

カイジ「近道……?」


   ざわ…
        ざわ…

32 : VIPに... - 2014/05/31 19:17:40.42 KuIiX5g1o 27/52

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33 : VIPに... - 2014/05/31 19:39:26.98 KuIiX5g1o 28/52


 方向音痴の多くは近道への誘惑に敗けてしまう……!

 カイジもその例に漏れないっ……!


カイジ「教えてくれませんかっ……近道……!」

お巡りさん「うーん、分かりづらいから……ちょっと待ってね。紙に描くよ」

カイジ「ありがとうございます……!」


 カイジ、学習しないっ……!

34 : VIPに... - 2014/05/31 19:42:44.78 KuIiX5g1o 29/52

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35 : VIPに... - 2014/05/31 19:43:20.60 KuIiX5g1o 30/52

カイジ「ありがとうございます! 世話ンなりましたっ……!」


 カイジ、希望を見出す……!

36 : VIPに... - 2014/05/31 19:50:20.62 KuIiX5g1o 31/52

カイジ「帰れるぞっ……!」

カイジ「このメモによると……信号の二つ目を右に行けばいいのか」テクテク

カイジ「なるほど……ん?」テクテク

カイジ「あの信号……何個目だ?」


カイジ「…………まあ、いいか。次のを曲がろう」テクテク


 そしてカイジ、信号の三つ目を右折っ……!

 またもやミス……!

37 : VIPに... - 2014/05/31 19:52:03.90 KuIiX5g1o 32/52

1401527751-037


38 : VIPに... - 2014/05/31 19:53:05.00 KuIiX5g1o 33/52

カイジ「この狭い路……立ち並ぶ住宅……」

カイジ「大通りに出るはずじゃなかったのか……?」

 カイジ、混乱……!

39 : VIPに... - 2014/05/31 19:55:42.45 KuIiX5g1o 34/52

カイジ「道を引き返すべきか……?」

カイジ「もう一度交番に……いや、最初に教えてもらった道を行った方が確実か……!」



カイジ「………………いや」

40 : VIPに... - 2014/05/31 19:56:16.87 KuIiX5g1o 35/52

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41 : VIPに... - 2014/05/31 19:57:11.55 KuIiX5g1o 36/52


 カイジ、またもや直進っ……!

 そして、でたらめな右左折

 破綻っ……! 道案内の破綻っ……!

42 : VIPに... - 2014/05/31 19:58:54.89 KuIiX5g1o 37/52


 住宅街、その迷宮……!

 とても外部の人間が

 しかも方向音痴が、勘や方角を頼りに脱出できるものではないっ……!

 カイジ、四つ目の行き止まりでへたり込むっ……!

43 : VIPに... - 2014/05/31 20:00:03.90 KuIiX5g1o 38/52

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44 : VIPに... - 2014/05/31 20:02:58.00 KuIiX5g1o 39/52

カイジ「くそっ……!」ムクリ


 カイジ、起き上がり、自販機でコーラを買う……!


カイジ「もはや、道を戻るのも難しい」カシュ

カイジ「何か打つ手は……?」ゴクゴク



 その時、カイジのスマホに着信……!

45 : VIPに... - 2014/05/31 20:05:47.27 KuIiX5g1o 40/52

    ピッ

カイジ「もしもし」

古畑「もしもし、カイジさん? 貸してたCDそろそろ返してほしいんですけど」

カイジ「悪い、今それどころじゃないんだ」

古畑「何かあったんですか?」

カイジ「……その、道に迷って」

古畑「道に? あっははは、カイジさん子供じゃないんだから」

カイジ「黙れ! お前に俺の気持ちが分かってたまるか!」

46 : VIPに... - 2014/05/31 20:10:05.50 KuIiX5g1o 41/52

古畑「す、すみません。どこで迷ってるんですか?」

カイジ「……○○町のN丁目M番地だ」

古畑「あー、俺、そこ分かりますよ!」

カイジ「何っ、本当か……!」

古畑「ええ、昔住んでたので……近くにクリーニングの看板見えませんか?」

カイジ「おお、あるある!」

古畑「そっちの方向に進んでくと、街まで出てるバス停があるんで」

カイジ「なるほど! サンキュー古畑! CD、今度返すよ」

古畑「どういたしまして。傷とかつけてませんよね」

カイジ「大丈夫だよっ……!」

47 : VIPに... - 2014/05/31 20:11:30.86 KuIiX5g1o 42/52

   ピッ


カイジ「ふぅー、助かったぜ」

カイジ「また迷っても、電話すればいいしな……!」

カイジ「どれ、また歩かなきゃっ……!」


 この時、カイジは気付いていなかった……!
 小銭の残りがどれくらいになっていたのか……!

48 : VIPに... - 2014/05/31 20:13:17.10 KuIiX5g1o 43/52


カイジ「やったぜ! 無事、バス停までたどり着けた……!」

カイジ「奇跡と言っていいな。次に来るのは十分後か……」

カイジ「どれ、座って待つか……」チャラ


カイジ「ん……?」

カイジ「そういえば、俺、さっきジュースを……まさかっ……!」バッ


 カイジ、残金176円っ……!

49 : VIPに... - 2014/05/31 20:15:09.43 KuIiX5g1o 44/52

カイジ「も、もしかしてバス乗れねぇんじゃねぇか……!?」

カイジ「くそっ、くそっ……!」


カイジ「ジュース飲んでんじゃねぇよハゲっ……!!」

50 : VIPに... - 2014/05/31 20:16:01.74 KuIiX5g1o 45/52

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52 : VIPに... - 2014/05/31 20:17:12.30 KuIiX5g1o 46/52


 だが、まだカイジの運は尽きていなかったっ……!


 遠くから聞こえるエンジン音に気が付き、カイジ、顔を上げるっ……!

53 : VIPに... - 2014/05/31 20:18:05.32 KuIiX5g1o 47/52

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54 : VIPに... - 2014/05/31 20:19:17.93 KuIiX5g1o 48/52


 カイジの脳内を一閃、思考が駆けたっ……!

 タクシーなら後払い、そして家に金を取りに行くと言えば待ってて貰えるっ……!


 再びカイジは希望を見出したっ……!

55 : VIPに... - 2014/05/31 20:21:14.18 KuIiX5g1o 49/52

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56 : VIPに... - 2014/05/31 20:23:13.50 KuIiX5g1o 50/52


ブロオオオーー キッ

カイジ「やった……止まったっ……!」

ガチャ


運転手「はい、どこまででしょう」

カイジ「チョメチョメアパートまでっ……!」

運転手「はい、チョメチョメアパートですね」

カイジ「あ、運転手さん、今手持ちがないから、家に取りに行くことになるんだけど」

運転手「ああ、はい。構いませんよ」

カイジ「優しいオジサンっ……!」

57 : VIPに... - 2014/05/31 20:25:40.86 KuIiX5g1o 51/52


 こうしてカイジの迷子は終わった……!

 タクシーの座席に座りながら、カイジは思った……



カイジ「最初からタクシー使えばよかった」


 完

58 : VIPに... - 2014/05/31 20:26:16.38 KuIiX5g1o 52/52

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