貴音「なにもそこまで驚かなくとも」
響「だって寝てたと思ってたから」
貴音「目覚めてしまったのです」
響「ごめん」
貴音「早く布団に戻りましょう、怖いわけではありません」
響「すぐ戻るから先にいってて」
貴音「怖いわけではないのです」
貴音「えぇ、怖いわけでは」
響「怖いんじゃん」
貴音「ところで響はなにを」
響「うん」
貴音「まさかわたくしに隠れて夜食を」
響「そうそう」
貴音「なんと」
貴音「これは目覚めて正解でしたよ」
響「」
貴音「お水を飲むなんて珍しいですね」
響「最近はまってるんだ」
貴音「それは初耳」
響「うん」
貴音「ではわたくしにも一杯」
響「えっ」
貴音「くださいな」
響「おいしくないぞ」
貴音「なんと」
貴音「おいしくないのに飲むのですか」
響「健康だから」
貴音「健康のために」
響「そうそう」
貴音「構いません、いただけますか」
響「えっ」
貴音「独り占めとはいけずですよ」
響「高いから」
貴音「なんと」
響「やっぱり自分飲むのやめようかななんか寒いし」
貴音「えっ」
響「はい」ジャア
貴音「高級なのでは」
響「ほら戻ろうよ」
貴音「もったいないではありませんか」
響「まだまだたくさんあるから」
貴音「それなのにわたくしはいただけないのですか」
響「いや」
貴音「では見るだけでも」
響「眠いから布団いこうってば」
貴音「気になってわたくしは眠れません」
響「身体冷えちゃうから」
貴音「そうですか」
響「ほら早く」
貴音「ではこうすれば」ギュッ
響「」
貴音「こんなに震えて」
響「実は水道水だったんだ」
貴音「なんと」
貴音「どうして嘘を」
響「ごめんだから布団いこ」
貴音「もう少しいいではありませんか」
響「自分もう眠たいから」
貴音「寂しいのでしょう」
響「今は布団が好き」
貴音「でもわたくしも寂しかったのですよ」
響「わかりました」
貴音「響の家族達が皆居なくなってしまったことだって」
響「調子悪くしちゃったから病院」
貴音「皆ですか」
響「うん」
貴音「わたくしに一言あってもよかったではありませんか」
響「次はそうするから戻ろ」
貴音「わたくしとお布団どちらが大切」
響「お布団」
貴音「えっ」
響「貴音」
貴音「そうです冗談はいけずです」ギュウ
響「」
貴音「そんなに寒いのですか」
響「戻りたいの」
貴音「ではわたくしがさすってあげましょう」スリスリ
響「やめて」
貴音「こうすれば次第に暖かく」
響「苦しい」
貴音「はて」
貴音「ぽけっとになにかありますね」
響「」
貴音「夜食ですかそれはいけません」モゾモゾ
響「離して」ジタバタ
貴音「離しません」
響「変態触るな」
貴音「響」
貴音「何ですか、これ」
響「っ」
貴音「響」
響「おくすり」
貴音「そのようですね」
響「返して」
貴音「何の薬ですか」
響「普通の」
貴音「内科」
響「そう」
響「もう寝ようってば」
貴音「処方箋は何処に」
響「えっ」
貴音「貰ったはずですが」
響「捨てちゃった」
貴音「何故」
響「違う間違って捨てちゃった」
貴音「そうですか」
貴音「ではこちらはわたくしが預かります」
響「やめろォ!!」
貴音「今日の響は嘘ばかりですね」
響「返して!!」
貴音「響」
貴音「気がつかないとでも思っているのですか」
響「っ!?」
貴音「他には」
響「し、知らない」
貴音「響」
響「知らないってば!!」
パァン
響「あがっ」
貴音「早くしなさい」
響「の中」
貴音「聞こえません」
響「冷蔵庫の中」
貴音「自分で出しなさい」
響「こ、これ」
貴音「はい」
貴音「これで全てですか」
響「うん」
貴音「そうですか」
響「ごめんなさい」
貴音「えぇ」ガサゴソ
響「た、貴音? 台所には無」
貴音「どうしてわたくしは刃物など」
響「えっ」
貴音「手にしなければならなかったのでしょうね」
響「貴音」
貴音「悪いのは響です」
響「た、助けて」
貴音「寒くなんてないのでしょう」
響「電話……!!」
バキッ
貴音「響のせいでわたくしも犯罪者に」
響「うあっ」
貴音「人の身体は思う以上に柔らかいと聞きます」
響「助けてぇ!! だれかぁ!!」
貴音「それは楽しみでもあり、また不安でもあり」グッ
響「やだやだやだやだ!! お願いだからぁ!!」
貴音「他には」グイッ
響「ああああ!!」
貴音「早く!!」
響「トイレの棚……!!」
貴音「……はい」
響「お願い助けて」
貴音「わかりました」
貴音「あちらの世界で逢いましょう」グッ
響「だれか!! だれかぁ!!」
貴音「さようなら、響」
響「……裏!!」
響「テーブルの裏、です……!!」
貴音「はい」
貴音「手を染めずに済みました」
響「あっ……、うあっ……」ヘタッ
貴音「本当ですね、ありました」ベリッ
響「はあっ、うっく」
貴音「後でトイレにも取りに行きますからね」
響「うわあん、あうあうあう!!」ポロポロ
貴音「はい」
響「うわあん、あうあうあう!!」
貴音「あっ」
響「うわあん、あうあうあう!!」
貴音「……雑巾は何処にありましたでしょうか」
響「うわあん、あうあうあう!!」
貴音「すぐにシャワーに、いやその前に拭かなくてはいけませんか」
響「……はーっ、はーっ」
貴音「響?」
響「はっ、ひうっ、ひっ」
貴音「響、落ち着きなさい」
響「ひっ、ひいっ、ひぐっ」ポロポロ
貴音「……今度は紙袋ですか」
響「ふーっ、ふーっ、ふーっ」
貴音「ビニール袋ですが何とかなるでしょう」
響「ふーっ、ふーっ」
貴音「何よりも落ち着くことが大事です」
貴音「ほら、足を上げなさい」
貴音「濡れたままでは気持ち悪いでしょうに」
貴音「右足もです」
貴音「転ばないように気を付けて」
キュッ
貴音「自分で洗えますか」
貴音「響」
貴音「頭を下げてください、頭を流します」
響「はっ、はうっ、ふうっ」
貴音「深呼吸を、響」
響「くふっ、はあっ、んっ」
貴音「落ち着いて深呼吸を」
響「うぐ」ヒクン
響「えくっ、かはっ、うえええ」ビチャビチャ
貴音「……全て出してしまいなさい」
響「おえっ、げほっ」
貴音「大丈夫ですから」
響「ごめんなさい」
貴音「……響」
響「ごめんなさい」
貴音「えぇ」
貴音「何故、響は謝り続けているのでしょうか」
貴音「何故、響が謝り続けているのでしょうか」
貴音「何故、響に謝り続けているのでしょうか」
貴音「何故」
貴音「なにゆえ」
響「だって、すごい久々だから」
貴音「大丈夫ですよ、一年前と変わりありません」
響「み、みんなも?」
貴音「仕事の量も」
響「……ダメじゃん」
貴音「頑張ってはいるのですよ?」
響「止まんない」
貴音「……違う震えではないでしょうね」
響「ち、違うぞ!!」
貴音「本当に?」
響「この前はたまたま出ちゃっただけ!!」
貴音「そうですか」
響「これからは、違うから」
貴音「はい」
貴音「今日、夢を見ました」
響「うん」
貴音「あの時のです」
響「恥ずかしいな」
響「ごめん」
貴音「まったく、夢の中でも迷惑をかけるとは」
響「貴音」
貴音「申し訳ありません」
響「なんで」
貴音「わたくしも分からなかったのです」
響「謝らないでよ」
貴音「ごめんなさい」
響「こっちこそ、ごめんなさい」
響「誰がいるかな」
貴音「全員です」
響「えっ」
貴音「わたくしが知らせましたから」
響「そっか」
貴音「はい」
響「でもみんな集まっちゃうなんてホントにお仕事無いんだね」
貴音「言うものではありませんよ」
響「んふふ」
貴音「本当に違う震え、ですよね?」
響「この階段見たら、もっと緊張してきた……」
貴音「響」
貴音「先程のは嘘です」
貴音「皆、今では有名アイドルですよ」
ガチャ
響「……おはようございます」
響「うわっ」
響「ホ、ホントにみんないるんだね」
響「あの、えっと」
響「ただいま」
響「ちょ、ちょっと!! 抱きつくな!!」
響「うぎゃあ」
終