P「和久井さん!」
留美「あら、どうしたの?」
P「新しいお仕事をとってきたんですが、どうでしょうか」
留美「仕事……?」
P「えぇ、これまでにないジャンルのことなので、確認をとろうと思いまして」
留美「なるほど、どんな内容なのかしら?」
P「工作番組です」
留美「工作……」
元スレ
モバP「わくわくさん今日は何を作るの?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1348910249/
P「えぇ、子供向け番組ですけどぜひ」
留美「……わかったわ。慣れていないけれど精一杯やらせてもらいましょう」
P「さすが和久井さん!」
留美「でも、そうね」
P「?」
留美「あまり慣れていないから、ちょっとためしてみていいかしら?」
P「ためすって何をですか?」
留美「番組の進行や内容よ。私の覚えている印象とあっているかどうかは大切でしょう?」
P「確かにそうですね……わかりました」
留美「じゃあ、やってみましょうか」
留美「和久井留美の、作ってわくわく」
P「えっ」
留美「どうしたの?」
P「い、いや……その、番組タイトルは……」
留美「仮で適当につけてみたのだけれど……ダメだったかしら?」
P「そういうわけではないですけれど……ねぇ?」
留美「なら、大丈夫ね。もう一度いくわよ」
P「は、はい」
P(……和久井さん、そのタイトルでいいのかな……?)
留美「和久井留美の、作ってわくわく」
P「わ、わぁー」
留美「……」
P「……」
留美「……」
P「……る、留美さん?」
留美「わくわくさんよ」
P「は?」
留美「今、この場では私のことはわくわくさんと呼んで欲しいの」
P「は、はぁ……わかりました。わくわくさん……」
留美「それでいいわ。もう一度いきましょう」
留美「和久井留美の、作ってわくわく」
P「わ、わぁー」
留美「……」
P(何も言わずにこっちを見てる……ってことは、聞けってことか……?)
P「あ……えーっと、わくわくさん?」
留美「何かしら、P君?」
P「P君……?」
留美「今は、私の番組アシスタントのP君よ。違う?」
P「ははは……そ、そうですね。えーっと……今日は、何を作るんですか?」
留美「……うーん、違うわね」
P「はい?」
留美「私の知っている番組アシスタントのP君はもう少しフレンドリーな印象なの。お願いできるかしら?」
P「は、はぁ……」
留美「じゃあ、お願いね」
P「わかりました……」
P(こ、こうなりゃヤケだ!)
留美「和久井留美の、作ってわくわく」
P「わぁー! ……ね、ねぇわくわくさん!」
留美「何かしら、P君?」
P「わくわくさん今日は何を作るの?」
留美「既成事実よ」
P「」
P「は?」
留美「用意するものは簡単。まずは婚姻届を」
P「ストップ! ストーップ!」
留美「どうしたの?」
P「え、なんですって?」
留美「だから既成事実を作りましょう?」
P「……規制? 最近厳しいですね」
留美「そうね、少子化問題が大変ね」
P「ナニイッテンダ!?」
留美「何って、そうね……アプローチよ」
P「アプローチ? どう見ても旗包みレベルで狙ってきてますよね?」
留美「話が早いわね、そういうところも素敵よ」
P「いや、了承してませんが」
留美「あら……」
P「なんで残念そうにしてるんですか……」
留美「心底残念に思っているからよ?」
P「そうですか……俺も残念ですよ。いろんな意味で」
留美「あら、年上は嫌い?」
P「そうじゃなくて」
留美「じゃあ、どういう意味かしら」
P「どうって……和久井さん、あなた自分が何をいってるのかわかってますか?」
留美「もちろんよ」
P「……」
留美「私はそんなに魅力がない?」
P「いや、魅力的ですけどね? あなたはアイドルですよ」
留美「そうね……私には、仕事しかなかったわ」
P「そうでしょう? 和久井さんは、仕事には誰よりも真摯なはずですよね?」
留美「だけど、今はそれ以上に大切なものに気づけたの」
P「Oh……」
留美「私なりに、自分を磨いてもきたわ」
P「最近レッスンもすごいですものね」
留美「あとはあなたが応えてくれるだけでいいの」
P「い、いや和久井さん……」
留美「留美、って呼んでくれていいのよ?」
P「待ってください、待って! にじり寄らないで!」
留美「大丈夫よ、怖くないわ」
P「怖いです! 目が怖いです、目が!」
留美「目が怖いのなら、目をつむりましょう。さぁ、怖くない怖くない……」
P「なにこれこわい」
留美「そっちね?」
P「ひぃっ! 目をつむってるのに正確にこっちを狙ってるぅ!?」
留美「ふふっ、この程度できなければ秘書なんてやれなかったもの」
P「秘書って何だっけ……」
留美「さぁ、観念しなさい」
P「ちょ、ちょっと待って!」
留美「何?」
P「わ、和久井さんはそれでいいんですか?」
留美「……」
P「こ、こんなむりやりするのがいいとでも!?」
留美「そうね……正しくはないわ」
P「そうでしょう?」
留美「でも、間違っていることが悪いこととは限らないのよ」
P「い、いやいや……」
留美「さぁ、怖くない……」
P「怖いです!」
留美「ふぅ……じゃあ、こうしましょう」
P「お、落ちついてくれましたか……」
留美「私があなたを襲うのはダメよね」
P「えぇ、当然です」
留美「なら、あなたが私を襲えばいいのよ」
P「は?」
留美「さぁ、来てちょうだい」
P「ひ?」
留美「どうしたの?」
P「ふ?」
P「いかん、思考が停止してた……何いってるんですか」
留美「押してダメなら引いてみようと思ったのだけれど」
P「おかしいですよね? 押してますよね?」
留美「そうかしら。私はむしろ押されたいのだけれど」
P「下ネタですか!?」
留美「軽快なビジネストークよ」
P「おっさんか!?」
留美「言われることはあったけど、まさか言う側に回る日が来るなんてね……」
P「しみじみとしないでくださいよ!」
留美「さぁ、どうするのかしら?」
P「どうって、俺はアイドルには手を出しません!」
留美「そう……」
P「そうです。俺はプロデューサーですから」
留美「なら、私がアイドルで無くなればいいのね?」
P「は?」
留美「今日限りでこの仕事は辞めさせてもらうわ」
P「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 何いってるんですか!」
留美「再就職先なら見つかってるから平気よ」
P「なんで熱い視線を投げかけてるんですか! この辞表は受け取れません!」
留美「そう、どうしても私を辞めさせる気はないのね」
P「当然です」
留美「なら、あなたがプロデューサーを辞めるしかないわね」
P「へ?」
留美「安心して。あなたのことを養うぐらいなら簡単よ」
P「ほ?」
留美「さて、ちひろさんに……」
P「ストーップ! へいストーップ!」
留美「何かしら?」
P「やめてください。俺から仕事を取り上げる気ですか!?」
留美「……そうね、仕事が生きがいの人間が仕事を取り上げられた時の辛さは私が誰よりも知っていたはずなのにね」
P「よかった……わかってくれたんですね」
留美「なら、新しい仕事を見つけるまで私が全力でサポートするわ」
P「わかってなかった」
留美「?」
P「きょとんとしないでください」
留美「じゃあ、どうすればいいのかしら」
P「俺が聞きたいです。どうすれば諦めますか」
留美「そうね……」
P「……」
留美「作りたいものがあるのだけれど」
P「既成事実以外なら考えましょう」
留美「じゃあ、子供を」
P「変わってないですね?」
留美「あら……」
P「そんな唖然とした表情をしないでください」
留美「そうね、考え方を変えるというのはどうかしら」
P「変える?」
留美「私がしたいことと、あなたがしたいこと。それが同じになればいいんでしょう?」
P「そうですね」
留美「あなたがしたいことは?」
P「和久井さんをトップアイドルに導きたいです」
留美「そして私がしたいことはあなたとのセッ」
P「いわせねーよ!?」
留美「……ふふっ、やるじゃない。流石ね」
P「いや、なんでそんなしたり顔なんですか。和久井さんらしくもない」
留美「……」
P「和久井さん?」
留美「私は、不安なのよ」
P「不安……?」
留美「あれだけ情熱を捧げてきた仕事が、目の前から無くなった時……どれだけ絶望したと思う?」
P「それは……想像もつきませんけど……」
留美「そう。だから……この仕事にも、この仕事で得た繋がりにも確かなものを求めてしまったのね」
P「和久井さん……」
留美「消えない、繋がりが欲しいと思ってしまったのよ……愚かね……」
P「和久井さん、服を脱ぐのをやめてください」
留美「あら?」
留美「女にここまでさせて、恥をかかせるのかしら?」
P「いや、なんかもう……疲れました」
留美「大丈夫? 疲れが取れる飲みものでも飲む?」
P「そういうのはいいです」
留美「そう……」
P「和久井さんのこと、割と本気で思ってたんですけれどね……」
留美「!?」ガタッ
P「あぁ、アイドルとして」
留美「……」ストン
P「本当にもう、不器用なんですから」
留美「私、こういう経験はないものだから……」
P「和久井さん、子供向け番組には向いてないかもしれませんね……」
留美「やっぱり、そうかしら……」
P「これもかたづけておいてくださいね」
留美「……さっき用意した婚姻届……あら?」
P「……」
留美「これって……」
P「……まだ当分先ですけど。もっと立派に胸を張れるアイドルになったら届けましょう」
留美「……ふふっ、あなたって不器用な人よね」
P「和久井さんほどじゃないですよ」
留美「だって、あなたの名前が書いてあるの、妻の欄よ」
P「なんと」
おわり