事務所
P「んー」
晶葉「どうかしたのか助手よ」
P「お、晶葉かおはよう」
晶葉「おはよう。今日も快晴だな」
P「快晴だよな。雲一つない」
晶葉「こういう時は、実験中でも白衣を脱ぎたくなるものだ」
P「意外に暑いからなアレ」
晶葉「しかし、どうかしたのか?」
P「あ、いや、暑くてボケっとしてた」
晶葉「ふむ…助手とプロデューサー業の二足のわらじが負担になっているのかもな」
P「いや、助手って言っても大したことしてないから負担じゃないよ」
晶葉「ならいいのだが…」
P「晶葉だって発明家とアイドルをやってるだろ?」
晶葉「ま、まぁ、確かに…」
P「俺からしたらそっちの方が心配だよ」
晶葉「いくらPの頼みでもどっちかを切ることなんて出来ないがな」
P「それは知ってる」
晶葉「ふふふ…流石助手だ」
P「それほどでもないがな」
晶葉「謙遜しなくてもいいぞ。私の助手が務まるのはPしかいないからな」
P「そう言われると少し嬉しいな」
晶葉「お、それは良かった」
P「しかし…実際問題何かあったらすぐ言ってくれよ?起きてからじゃ遅いしな」
晶葉「そうだな。そこは気を付けよう」
P「あぁ、それに俺が出来ることならなんでも言ってくれ」
晶葉「そうか……」
晶葉「あー、助手よ」
P「どうした?」
晶葉「最近な、どうも肩と首が凝っている感じなんだ」
P「発明疲れか?」
晶葉「まぁ、恐らくそんなものだろうな」
P「……」
晶葉「……」ジー
P「分かった。ちょっとこっちに来い」
晶葉「な、何が分かったと言うのだ」
P「そう言う割には来るのが早いな」
晶葉「まぁ、呼ばれたらすぐに行かねば悪いだろう」
P「そういうことにしておいてやるか」
晶葉「そういうことにしておいてくれたまえ」
晶葉「それで、Pは私を自分の前に呼んで何をしたいんだ?」
P「まぁ、単純に肩と首でも揉んでやろうかとな」
晶葉「おぉ、それは助かる。是非ともお願いしたいものだ」
P「それじゃ、背中向けてくれ」
晶葉「……ん」
P「痛かったか?」
晶葉「い、いや、平気だ」
晶葉(冷静に考えると随分と恥ずかしいなこれ…)
P「結構凝ってるな」
晶葉「そうか?マッサージチェアでも買おうかな」
P「事務所に一台欲しいな」
晶葉「Pも使うのか?」
P「疲れたらな」
晶葉「前に肩凝ったことないとか言ってなかったか?」
P「言ってたな」
晶葉「絶対使わなそうだな…」
P「まぁ、他の人が使うから買うのもありかもなぁ…」
晶葉「……んぁ」ピク
P「ん?」
晶葉「――っ!」カァァ
P「気持ちいいか?」
晶葉「そ、そうだな…」
晶葉(絶対今の変な声聞かれたな…恥ずかしい)
P「こんなもので大丈夫か?」
晶葉「ん?そうだな。もう少しやってくれると嬉しい」
晶葉「勿論仕事に差し支えないならば」
P「まだ、大丈夫だよ」
晶葉「そうか、なら頼む」
晶葉(しかし…上手いな…誰か他のアイドルの肩も揉んでいるのだろうか)
晶葉(……)スゥ
P「寝ちゃったか…」
P「お疲れ様」
晶葉「……ふあ?」
晶葉(ね、寝てたか…)
晶葉(Pは…仕事か。流石に寝てしまった私の面倒までは見れないものな)
晶葉(本当はひさまくらとか期待していたが、流石にそこまで思い通りにはいかないか)
晶葉「……ふふ」
晶葉「こうやって、横顔を見てるだけというのも懐かしいな…」
一年前
P「ロボット作ってるのか、凄いな」
晶葉「まぁな。と言うよりキミは誰だ?」
P「ここの近くに住んでる者です。Pと言います」
晶葉「そうか。それで何か用か?」
P「用はないですけど、ロボットに惹かれまして」
晶葉「ロボットが好きなのか?」
P「ロボットはいつだって男のロマンですよ」
晶葉「私は女だが」
P「女の子も男の子っぽい感覚は持ってますよ」
晶葉「そうなのか。言っておくが戦隊モノに出てくるような巨大ロボットなんて作れないからな」
P「分かってますって。そんなものが作れたらきっと今頃博士。って皆に呼ばれてますって」
晶葉「博士か…。悪くない響きだな」
P「よっ!博士」
晶葉「照れるからやめてくれ」
晶葉「しかし…P…さん?仕事とかはないのか?」
P「今は外回り中なんです。だから問題ないんです」
晶葉「問題ないならそれでもいいが…」
P「えぇ、それにさん付しなくてもいいですよ」
晶葉「そ、そうか。分かったP」
P「えぇ、よろしくお願いします」
晶葉「しかし、ロボットが好きだからと言っていきなり見知らぬ人に話しかけてくるものなのか?」
P「どうなんでしょうね…。まぁ、ガレージとかにいなかったら流石に声はかけなかったでしょうけど」
晶葉「それもそうか。今は今まで作ったロボットを並べていたんだ。ガレージが一番広く使えるからな」
P「なるほど。確かに」
晶葉「Pは機械科を出ていたりしないのか?」
P「残念ながら」
P「もしかしたら、羨ましかったのかもしれないです」
晶葉「…ん?」
P「話しかけた理由ですよ」
晶葉「羨ましかった?誰が?」
P「あなたを?」
晶葉「池袋晶葉」
P「はい?」
晶葉「名前だ。好きに呼んでくれて構わない」
P「はい。池袋さん」
晶葉「ふむ。それで、私のどこが羨ましかったんだ?」
P「夢に向かって着実に進んで成果に現れていることですかね」
晶葉「夢…?」
P「えぇ。ロボット作ってなにかするのが夢かと思ったんですが違ったんですかね?」
晶葉「どうだろうな。考えたこともない」
P「そうでしたか。ただですね。ロボットを弄ってる時はキラキラしてましたよ」
晶葉「自分を自分で見る機会はないが、きっとそうだろうな」
P「実はですね。俺もロボットとか作ってみたいなーとか思ってたんですよ」
晶葉「そうなのか?」
P「えぇ、残念ながら全然作れなかったんで辞めてしまいましたけど」
晶葉「そうか…」
P「だから、凄いなぁ…って思って来たんですよ」
晶葉「変わってるなキミは」
P「そうですか?」
晶葉「あぁ。私が言えたことではないかもしれないが」
P「いやいや」
晶葉「久しぶりに楽しく話せた気がする」
P「それはよかったです。あ、そろそろ…」
晶葉「そう言えば、ロボットを作ることを諦めたPは何をやっているんだ?」
P「あ、俺ですか?一応プロデューサーってのを…」
晶葉「なんの?」
P「アイドルのです。実はこっちも夢だったんですけどね」
晶葉「夢を二個も持ってるなんて欲張りだな」
P「人の欲望に際限はないですから」
晶葉「なるほど…確かに話した感じで、理詰めと言うよりファジイで動いているように感じるからそっちの方が向いていたのかもな」
P「お恥ずかしい限りで」
晶葉「い、いやだな、えーと、そう。私なんかはこう、理詰めで動かないと気が済まない性質なんだ」
晶葉「べ、別に馬鹿にしている訳じゃないんだ。えっと、整理するとだな…」
P「分かってますからいいですよ」
晶葉「む?そうか?ならいいのだが。正反対だな私達は」
P「そうですね。あ、これ名刺です。よろしければ」
晶葉「使い道があるか分からないが受け取っておこう」
P「それでは…」
晶葉(…また、会えたりするのかな?)
二日後
晶葉「おっ!」
P「……」
晶葉「おーい!」
P「はい?あ、どうも」
晶葉「時間はあるのか?」
P「まぁ、ありますよ」
晶葉「丁度よかった。これを見てくれ」
P「なんです?」
晶葉「新しいロボットを思いついてな。その設計図だ」
P「なるほど…」
晶葉「早く実際に作ってみたいものだ」ウキウキ
P「キラキラしてますね」
晶葉「ん?懐中電灯でも点いてるか?」
P「そういう訳ではなく。仕草一つ一つが」
晶葉「したいことをしているのだからな。当然だろう」
P「そうですね」
晶葉「しかし一つ聞いていいか?」
P「はい?」
晶葉「プロデューサーと言ったが、外回りでこんな時間を潰していいのか?」
P「えぇ。問題ありませんよ」
晶葉「そうか…迷惑だったら言ってくれ」
P「迷惑なんてとんでもない。たまたまここを歩いていただけですって」
晶葉「ならいいのだが…」
P「それより、よく俺だって分かりましたね」
晶葉「まぁな…」
晶葉(そりゃ…外見てたし、結構長く)
二日後
晶葉「そう言えば、ロボットは男のロマンだって言ってたじゃないか」
P「言いましたね」
晶葉「でも、私の周りの男の子たちは特にロボットを見て何かを思うこともないのだが」
晶葉「決してチヤホヤされたい訳ではないのだがPとの反応の差に少し戸惑ってしまった」
P「それに女の子は女の子でロボット作りが趣味なせいで輪に入り辛いとか?」
晶葉「エスパーか何かか?」
P「適当に予想しただけです。ファジイですよファジイ」
晶葉「そうか。それで、事実そうなのだ。別に知り合いの多寡でどうと言う訳ではないが…」
P「天才はその才能故に孤独なんですかね」
晶葉「どうなんだろうな…。別に来る者を拒んでいるつもりはないが…」
P「俺にはそんな大それた才能があるわけではないんで、分からないですね。すみません」
晶葉「果たしてそうだろうか?」
P「どういう意味ですか?」
晶葉「えーと、確証が持てないし、上手く言えないので秘密だ」
P「そうですか。あ、それじゃそろそろ…」
晶葉「そうか…ありがとう」
P「えぇ、お疲れ様でした」
晶葉「あ、P」
P「はい?」
晶葉「呼んでみただけだ。気にしないでくれ」
P「そうですか」
晶葉「…もし、天才が孤独であるのならば、私は天才ではないな」
P「どうかしましたか?」
晶葉「いや、正確には天才ではなくなってしまったな」
P「……?」
晶葉「…やっぱり取り消しで」
晶葉の部屋
晶葉「面白い人だなPは…」
晶葉「私の話に嫌な顔一つせず聞いてくれるし」
晶葉「お、そう言えば、さっきロボに撮らせた写真はどうなってるかな…」
晶葉「……写真はやっぱり腕を固定して撮るべきだったか」
晶葉(手振れしてる…)
晶葉「いや、そもそも手振れ補正機能があるカメラを取り付けるべきだったか」
晶葉「逆にブレてる方が味が出てるのか…?」
晶葉(それはないか…)
晶葉「どんな顔だったっけ…?」
晶葉(こんなのだっけ…)サラサラ
晶葉「……絶対違うな」ハァ
晶葉「なんだ。もうこんな時間か」
晶葉「私がこんなことに時間を使うなんて珍しいこともあるものだ」フフ
晶葉「方程式や数式にあてはめることは出来ないが、こういうことも悪くはないな」
晶葉(次はいつ来るのかな…?)
事務所
P「ただいま帰りました」
周子「お、お疲れ」
P「周子か」
周子「シューコちゃんですよ。アイスキャンディー買ってきたけど食べる?」
P「そうだな。貰うよ」
周子「ほい」
P「出来れば棒だけじゃなくてアイスも欲しいな」
周子「そっか。ほい」
P「ありがとな」
周子「いえいえ。露店のおっちゃんに安くして貰ったし」
P「なるほどな」
周子「最近帰ってくるの遅いよね。なにかしてるの?」
P「外回り」
周子「まぁ、確かに仕事は増えてるし。お疲れ様」
P「あぁ、ありがとな」
周子「こっちこそありがと。お父さんにいい報告が出来そうだよ」
P「それは良かった」
周子「あ、Pさんもウチに来なよ」
P「なんかあるのか?」
周子「いや、私のプロデュースでここまで有名に出来ました。これからもよろしくお願いしますみたいな」
P「あー、なるほどな。そう言うのはやった方がいいのかもな」
周子「はい。けってーい」パチパチ
P「周子の都合に合わせられなくけどいいのか?」
周子「大丈夫だよ」
ちひろ(実家に挨拶ってなんか響きがアレなんですけど…分かってるんですかね?)
翌日
事務所前
晶葉「お」
P「あ」
晶葉「奇遇だな!」
P「奇遇ですね。どうしたんですか?」
晶葉「ちょっと部品を買いにな」
P「そうでしたか」
晶葉「よければ…」
P「少しでしたら」
P(先方との予定は一時間半後か…)
晶葉「そ、そうか!それじゃ行こう!」
晶葉「少し考えたのだが」
P「うん」
晶葉「Pに私の助手をやって貰おうと思っているんだが…」
晶葉(よし、ここまでは台本通り)
P「助手?」
晶葉「あ、あぁ、助手と言っても大したことをするわけじゃないんだがな…」
P「そうなんですか」
晶葉「あ、あぁ…えーっと…」アセアセ
晶葉(あれ…?なんだっけ?忘れてしまった…)
P「もしもーし」
晶葉「あ、いや、なんでもない。やっぱりなしで…」
P「そうか…ならいいですけど」
晶葉「う、うん…。なんかそのごめんなさい」シュン
晶葉(セリフが飛ぶなんてこと…恥ずかしい…)カァァ
電気街
P「久々に来たなぁ…」
晶葉「おぉ、そうか。それはよかった」
P「それで、何か買うのか?」
晶葉「あぁ、リストを書いてきた」ピラ
P「結構あるんですね」
晶葉「まぁ、纏めて買わないと高いからな」
P「今だと通販とかありそうですけど」
晶葉「通販より直に見る方が好きだからな」
P「まぁ、自分で使う物ですし」
晶葉「その通りだ」
晶葉「これは…悪くないな。どうおも――」クルッ
P「あ、もしもし、はい、はい。大丈夫です」
晶葉「あ…」
P「はい。予定通り1時間後ですね。分かりました」
晶葉(忙しそうだな…)
P「あ、すみません。なんですか?」
晶葉「あ、いや、なんでもない…ごめん」
P「…?」
晶葉「時間は大丈夫なのか?」
P「あ、はい。隣の駅の近くで打ち合わせなんですよ」
晶葉「それならいいけど…」
P「えぇ、ただ、そろそろ…」
晶葉「そうか。それじゃ、駅まで送ろう」
P「ありがとうございます」
晶葉「そう言えば、一つ質問してもいいか?」
P「はい?」
晶葉「アイドルのプロデューサーって言ってたが、誰か有名な人を担当しているとかあるのか?」
P「そうですねぇ…塩見周子とか、岡崎泰葉とか知ってますか?」
晶葉「…アイドルには疎くてな」
P「それじゃ…渋谷凛とかは?」
晶葉「聞いたことがあるような…ないような…」
P「あはは…もっと周知して貰えるように頑張ります…」
電気街
晶葉「やっぱり、忙しいんだな。プロデューサー業」
晶葉「ん?テレビ?」
周子『ささ、今日は東京浅草に来てるよ』
泰葉『やっぱり人が多いですね?』
周子『そーだねー。あ、あそこに美味しそうなものがあるよ』
泰葉『しゅ、周子ちゃん!そ、それでは始まりまーす』
晶葉「この二人…確かPがプロデューサーのアイドルだ」
十数分後
泰葉『あ、えっと…それじゃ、ここで宣伝を』
泰葉『今度ライブをやるんで来て下さいっ!』
周子『それじゃ、エンディングはアタシらの曲で。ばいばーい』
?♪?♪
晶葉「…はっ!もうこんな時間か」
晶葉「長居しすぎた…」
晶葉「しかし…」
晶葉(二人は楽しそうにテレビに出ていたな)
晶葉「あれがキラキラしてるってことなのだろうか」
晶葉「…なるほど」
晶葉(私もロボットを弄ってる時はあんな感じなのだろうか)
数日後
晶葉(最近来ないなぁ…)
晶葉「まぁ、所詮偶然だろうしな…」
晶葉「……」
晶葉(なんだか思考がまとまらん…)
晶葉「…むぅ」
晶葉「答えのない問は苦手なんだが…」
晶葉(私の手の中にある知識ではこのモヤモヤは解けないのか…)
P「こんにちはー」
晶葉「遂に幻聴まで聞こえるようになったか」
P「すみません」
晶葉「って本物か。どうかしたのか?」
P「久々にこっちに来る用がありまして」
晶葉「そうなのか」
晶葉「あ、そう言えば、塩見周子と岡崎泰葉をこの間テレビで見たぞ」
P「お、そうですか」
晶葉「あぁ、楽しそうにやっているように見えたな」
晶葉「今度ライブがあるらしいじゃないか」
P「あ、そうですね。来ますか?」
晶葉「そんな軽いノリでいいのか…」
P「まぁ、一人くらいなら」
晶葉「たまには外に出ないといけないからな。丁度いい」
P「分かりました」
晶葉「天才は99%の努力と1%の閃きだよな」
P「どうかしましたか?」
晶葉「エジソンの言葉だ。99%の努力より1%の閃きの方が大事という言葉だな」
P「…なんか空しくなりますね」
晶葉「まぁ、それもしょうがないだろう。私はどちらも大事だと思うが、1%の閃きと言うのは即ち才能だからな」
晶葉「99%の努力に勝るとも劣らないだろう」
P「才能の『才』の字には十に斜めの閃きが必要ですからね」
晶葉「言葉遊びが上手いなPは」
P「偶然ですよ。偶然」
晶葉「そういう風に返せるのは才能だと思うぞ」
事務所
P「お疲れ様です」
凛「お帰り」
P「ただいま」
凛「今日もお疲れ様」
P「凛もな」
凛「おかげさまでライブは上手くいきそうだよ」
P「気負い過ぎないようにな」
凛「大丈夫。恥はかかせないから」
周子「そういうことじゃないんだよーん」グニー
凛「……痛いんだけど」
周子「ほら、そんな怖い顔しないで。さっきまでいつ帰ってくるのかなって顔で待ってた癖に」
凛「そんな具体的な顔をした覚えはないけど」
周子「顔赤いよ?」
凛「そ、そんなことない…と思う」カァァ
美嘉「分かりやすっ」
杏「人のこと言えないけどね」
美嘉「何か言った?」
杏「別に。飴が美味しいよ。食べる?」
美嘉「ありがと」
ライブ当日
晶葉「なるほど…こうなっているのか」
P「ステージの裏側に興味を示す人なんてあんまりいませんよね」
晶葉「習性みたいなものだな」
P「でしょうね」
晶葉「思っていたんだが、やはり敬語は無図痒いな」
晶葉「可能なら辞めてくれ」
P「…分かった」
晶葉「それでいい」
晶葉「こういうライブの時はプロデューサーとして何かしないのか?」
P「舞台の横で応援はするがそれ以外は特に。主役は彼女たちだから」
晶葉「言われてみれば確かにそうだな」
P「あ、始まりますよ」
ワーワー
晶葉「わぁ…」
P「凄いですよね」
晶葉「あぁ、何というか力強さを感じる」
P「ですね」
晶葉「そう言えばなんで、このライブに私を誘ったんだ?」
P「理由ですか?」
晶葉「あぁ。ただの近所に住んでる人だろ?私は」
P「なんででしょうねぇ…強いて言えば俺の夢を見て貰いたかったのかもしれない」
晶葉「夢?」
P「あぁ、言ったろ?別の夢を叶えましたって」
晶葉「言ってたな」
美嘉『みんな!来てくれてありがとねーっ!』
杏『杏に飴くれてもいいよ』
ワーワーワー
晶葉「盛況の内に終わったな」
P「あぁ、大成功だ」
晶葉「楽しんでやることの重要性を認識したよ」
P「楽しまなきゃ損だよな」
晶葉「少し、興味が湧いたぞ」
P「そ――」
周子「お、Pさんなにしてんの?ナンパ?」
P「違うぞ。ただ知り合いと話してるだけだ」
周子「ふーん」
P「なんだよ」
周子「べつに」
P「あ、周子」
周子「なに?」
P「お疲れ様。良かったぞ」
周子「それはどーも」ペコリ
泰葉「あ、周子ちゃんお疲れー」
周子「お、お疲れ」
泰葉「どうしたの?口元なんか押えて」
周子「別に。ちょっと口元が緩みそうでね」
泰葉「…?」
P「さてと、それじゃ俺は――」
晶葉「あ、待ってくれP」
P「ん?」
晶葉「えーっとだな、話があるんだが――」
事務所
晶葉「……ん?」パチ
P「お、起きたか」
晶葉「私は寝ていたのか」
晶葉(と言うことはさっき起きたと思ったのも夢の中だったのか…)
P「あぁ、ぐっすりだったな」
晶葉「すまない。…ん?ここはどこだ?」
P「事務所だが?」
晶葉「違う。これはもしかして膝枕されているのか私は」
P「硬くてごめんな」
晶葉「い、いや、私は寝る時のマットレスは硬い派だから問題ない」カァァ
P「そうか」
晶葉「あぁ。しかし、すまない。すぐにどく」
カタカタ
晶葉「懐かしい夢を見たよ」
P「どんな夢だ?」
晶葉「アイドルを始める前の夢だ」
P「懐かしいな」
晶葉「あぁ、Pがロボットに興味を持たなければ私はここにいなかっただろうな」
P「そうかもなぁ」
晶葉「天才はいつも孤独という話をしたのを覚えているか?」
P「覚えてるぞ」
晶葉「天才が孤独であるならば、私は天才じゃないな」
晶葉(まぁ、理由がPが分かるわけがないか…)
P「分かった」
晶葉「え?」
P「あれだろ? アイドルの皆がいるから、今の私は一人じゃないって言ってるんだろ?」
晶葉「……」ジー
P「あれ?違った?」
晶葉「99%正解だな。ただ、1%は不正解だ」
P「どういうことだ?」
晶葉「それはだな…えーっと…つまり…あーもう!」
P「ど、どうした…」
晶葉「Pといるとどうも予想出来ない私が出てきてしまう」
晶葉(ただ、不思議と嫌じゃない)
晶葉「1%はPだ」
P「え?」
晶葉「つ、つまりだ!私とだな、ず、ずっと、ずーっと一緒に居て欲しいってことだ!」
45 : VIPに... - 2014/09/13 11:27:37.18 Kp8vihqqO 42/42終わりです。
見て下さった方ありがとうございます。