陰茎術。
それは日本古来より実在し、歴史を左右する大合戦の折、常にその陰で活躍して勝利を引き寄せた、古武術の一つである。
自らの陰茎を鍛え上げ、鋼の剣と化すその武術の鍛錬はまさに荒行、凄惨を極めた。
男として生まれ落ちたその時から、自らの陰茎にありとあらゆる苦痛を与える。
まだ精通どころか勃起すらできない陰茎に、有刺鉄線を巻きつけながら手淫をする鍛錬。
沸騰する熱湯と氷水の中、交互に陰茎を突き入れる鍛錬。
カリの部分に指輪をはめ、その指輪に鉄の重りを吊るす鍛錬。
何度も泣き叫び、苦痛にもだえ、陰茎を切り落としたいとまで願った。
だがすべての鍛錬を乗り越えた時、陰茎術を体得した時、この世に敵はいなくなる。
そんな最強の武術。
ときは平成、現代日本。
平和の水面下に陰湿な闇が蠢く時代。
そんな時代でも陰茎術の伝承者は―――まだ生き残っていた。
元スレ
男「俺のちんこはこの世で最も強い」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1427211654/
DQN「待ちなよ姉ちゃん」
女「やっ、やめてください!」
チャラ男「いいだろ? ちょっと遊ぼうよ」
サワサワ
女「きゃ! 大声だしますよ!」
DQN「へへ、誰もきやしねーよ」
チャラ男「ほら暴れんじゃねえ……きもちよくしてやっからさ!」
グイッ ビリビリィッ
女「きゃああああっ!」
DQN「へへへっいい夢みせてやるよおおお!!」
女(だれかっ、だれかたすけて……!)
「待ちな」
女「ッ……?」
DQN「あん?」
チャラ男「なんだテメーは」
男「嫌がってるだろ。やめてやれよ」
女(助けに来てくれた……?)
チャラ男「だからなんだテメーはって訊いてんの」
DQN「お前にゃ関係ねーだろが、どっか行けや、あぁ?」
男「あるね。俺も男だからな」
DQN「はぁ!?」
チャラ男「なに? 混ぜて欲しいわけ?」
女「っ……」ビクッ
男「……」
男「……」カチャカチャ
ジィィィィ
DQN「お、おいこいつズボン脱ぎ始めたぞ! はっはは、まじで参加する気かよ!」
チャラ男「まあどーでもいーや、とりあえず4Pけってー!!」
女「ひっ……そ、そんなっ」
DQN「あー、もう勃起してきたわ」
ぼろん
女「やっ、いや! きゃああ!!」
チャラ男「ちょっ、お前でかすぎだっつーの!」ギャハギャハ
DQN「こういうの久しぶりだからな! お前も楽しませてやるよ!!」
女「いやああああああああ!!」
男「それを勃起とは言わない」ボソ
DQN「っ……あ?」
チャラ男「なんか言ったか?」
DQN「え―――」
男「……これが勃起だ」
チャラ男「な――――」
ジャッキイィィィィイインン
DQN「ちんこが……ズボンのファスナーから出たちんこが……」
チャラ男「頭の高さまで反り返ってそびえ立っているだとぉぉ!!?」
DQN「でっけええええ!!!」
男「でかいだけじゃない」
ビュンッ
ゴシャッ!!
DQN「ごっはぁ!!」
女(おち○ちんで頭を叩いた!?)
チャラ男「なっ……なにぃぃぃ!!?」
男「勃起した陰茎は自分の意思で上下に動かすことができる。知っているな」
男「本来ならばぴくぴくとした些細な動きだ」
男「だがそれは気の狂いそうな修練を得て、強力な打撃技となる」
男「肥大化、硬質化させた陰茎を上段に反り上げたまま」
男「瞬く間もなく相手の頭上に振り下ろす打撃」
DQN「っ……」ピクピク
男「この技をうちの武術じゃ――『勃ち鼎』と呼んでいる」
チャラ男「て、てめええええ!!」ブン
バシッ
チャラ男(ち、ちんこを盾にして俺の右ストレートを防いだ!?)
男「俺のちんこはお前の拳より速い、そして硬い」
チャラ男「くっそがああああ!!」
バシッ バシッ
バシバシィッ
女(すごい……攻撃を全部、おち○ちんで受け止めている!!)
チャラ男「くそっ、くそっ!」
男「そろそろたまってきたか」
チャラ男「あぁっ!?」
男「おお振りに殴られる衝撃すらも俺にとっては豊かな乳房にちんこをこすりつけるに等しい甘美な刺激でしかない」
チャラ男「……なんだと」
男「感じている――と言ったんだ」
チャラ男「っ……!」ゾク
男「そして絶頂のときは近い」
チャラ男「くそがぁっっっ!!」ダッ
女(あっ、逃げ出した!!)
男(ちんぴらにしては正しい判断だ。力量差を感じ取ったか)
男(だがもう遅い)
男(お前は俺を見た瞬間から――違う)シコシコ
男(俺がお前を見た瞬間から……お前はこうなる運命だったッ!)シコシコ
男「お前は俺にかけられる運命だったッッ!!」シコシコシコシコ
ドッピュゥワッ!!!!
男「陰茎術最大の奥義……」
男「徒手格闘術、唯一の遠距離技」
男「最大限に膨張した陰茎からの射精それはもはや砲撃っ!」
男「花びらのように散れ!!!」
ドビチャビチャビチャァアッ!!!
チャラ男「アアアアアッーーーー!!!」
女「す、すごい」
男「ふぅ……」
女「あんなに怖そうな不良二人を……ものの数秒で」
男「この技をうちじゃ『乱れ牡丹』と呼んでいる」
女「あっ、あの!」
男「?」
女「ありがとうございました! 本当に怖かったんです!!」
男「いいんだ。はけ口を探していただけだから」
女「え?」
男「今の世の中、俺のようなスポーツではない古武術を追求する者は息苦しい」
男「だからこうして夜の街でチンピラ相手に武をぶつけているわけだ」
男「平和の裏で悪さをする悪党をこらしめる」
男「そういうと聞こえはいいがな」
女「で、でも……あなたに助けていただいたのは本当です」
男「感謝など」
女「本当に……ありがとうございました」
ペコリ
男「……夜風がしみるね」
女「すごくかっこよかったです、おつよいんですね?」
男「なんてことはないよ」
女「あのおち○ちんで相手の頭を叩くのとか!」
男「勃ち鼎ね」
女「おち○ちんを振って相手のジャブをガードしたやつとか!」
男「勃ち鼎の応用だね」
女「あとあと最後の精子かけるやつとか!」
男「乱れ牡丹というよ」
女「なんか正直見てるのもアレでしたけど、おち○ちんなのにすごいですね!」
男(正直アレ?)
女「助けてもらってありがとうございました!」ペコッ
男「……」
女「では、おち○ちん出したままだと警察に通報されかねないのでしまったほうがいいですよ!」
男「……」
女「じゃあまた! おち○ちんのすごいひと! ばいばいちん!」
男「……」
男「……そうだよな」
男(結局おち○ちんなんだよな……)
現代に生き残る最強の古武術、陰茎術伝承者である男は、悩んでいた。
男(ちくしょう)
男(どれだけ強くなって全ての奥義を会得して)
男(どれだけかっこつけてチンピラから女の子を助けようとも)
男(結局俺のやってることはちんちん振り回してるだけなんだよな……)
男はティーンエイジャー。自らが使う陰茎術を恥じる年頃になっていた。
男(子供の頃からずっと地獄のような鍛錬をつんできた)
男(陰茎術の鍛錬は凄まじい激痛をともなう)
男(あまりの激痛で失神、あまりの激痛で覚醒という恐怖の1セットを数秒間隔で繰り返すような鍛錬だった)
男(だが辛くはなかった)
男(何故ならこれが最強の武術だと信じていたから!!)
男(事実師匠でもある俺の父は強かった)
男(その身一つで中国マフィアやヤクザのアジトに乗り込み、日帰りで壊滅させるほどには強かった)
男(父が俺に対して与えた数々の試練と修行の日々は、はたから見れば虐待に等しかっただろう)
男(もう一度言おう。だが辛くはなかった!)
男(何故なら父は優しかったから!!)
男(だが、だが……)
男(いつも世間の闇と戦い、純粋におのが武術を極めんとしていた父は)
男(志半ばにして……)
男(公然わいせつの罪で逮捕された……!!)
『こんにちわー! あけてくださーい!』
ドンドンドン
父『息子よ。陰茎術はその1つ1つが秘技の塊だ』
男『オヤジ! 警察きてるよ!』
父『その性質上、不用意に使えばこういった事態も訪れる』
男『馬鹿野郎! 今そんな事言ってる場合かよ!』
『いるのはわかってるんですから! あけないなら突入しますよ!』
ドンドンドンドン!!
父『いいか息子よ!』ガシッ
男『っ!』
父『この時代、俺たち本物の武人の肩身は狭い……だが折れるな! 決して心を中折れさせるな!!』
男『オヤジ……』
父『いつかお前の武器が役に立つときがくる。必ず本番はやって来る』
男『……』
『あけろっつってんだろ! おい! ちんこ野郎!!』
男『でも俺オヤジなしじゃどうやって……この先強くなればいいんだ』
父『ふっ。いい加減親離れしろよ』
男『……』
父『武術も人生も、真の部分はお前がその手でつかむんだ。ペニスをつかむようにな』
男『……』
父『修行の日々は無駄ではない。やがてお前が磨き上げた陰茎捌きが、求められる時がくる、その時まで』
男『……ああ』
父『お前はもっと大きくなれ。2つの意味でな』
男『わかった……わかったよオヤジ』
父『それでこそ俺の弟子……いや息子だ』
『おらぁー!! 変態露出狂やろー! 観念しろ!』ドカァァ
父『じゃあ俺はちょっくらオナ禁してくるぜ』
男『お、オヤジ……!!』
『うわこいつチンコでかっ!!』
男「……俺はそれからもずっと修行をかかしてない」
男「陰茎を振り下ろす技、たち鼎でレンガを叩き割れるようにまでなった」
男「だが結局それはちんこをふっているだけだ……!!」
男「家にある陰茎術に関するありとあらゆる秘伝の巻物、文書を読みあさったが」
男「こんなもん人前でつかってられるかよ!!」
友「でも強いんだからいいだろ」
男「ばっきゃろー!!」
友「なんだよ、せっかく話きいてやってんのに!」
男「陰茎術をこのまま極めてなんになる!?」
友「そりゃまあ……どんどん強くなるんじゃないの?」
男「強くなってどうするんだよ!?」
友「……知らんよそんなん」
男「逮捕されんだよ!!!!!!」
男「友……ボクシングの高校生の大会で全国優勝したらしいな」
友「たいしたことないよ」
男「日本一の強さということだろ」
友「お前に比べたら俺なんて弱いよ」
男「うるせーーー!! 俺は一度も公式大会なんて出たことねーんだ!!」
友「そりゃお前の武術は知名度ないし」
男「あってたまるか! 秘術だぞ!!」
友「めんどくせーなじゃあもう何が言いたいんだよ!」
男「俺と勝負しろッッ!!」ヌギッ
友「うわっ、やめろちんこ出すな!!」
男「俺は俺が持つ最強の武術を無駄にしたくないんだ!!」
友「なんで勃起してんだよ! おい、やめろ!!」
男「ボクシングの『ストレート』より、陰茎術の『燕返し』のほうが強いとわからせてやる!!」
友「おまわりさーーーん!!!!」
男「……」ヘナン
友「あ……縮んだ」
男「陰茎術を極めたものなら何のスイッチもなく勃起と萎えを操作できる」
友「中学時代とか重宝しそうだな……授業中勃起した時とか」
男「そんなくだらない事にしか俺の技は使えないのか」
友「まぁ……」
男「友。俺は悔しいよ」
友「なにがだよ」
男「俺は強いんだ。誰よりも強い。武に人生の全てをかけてきたんだよ」
友「……」
男「この力を試せる機会がほしい……俺のちんちんが陽の目を見る日を迎えたい、こう考えるのはおかしいことなのか?」
友「……お前」
男「なんだ?」
友「パンツはけよ……」
――――――――
男「……」トボトボ
男(はぁ……無駄な人生)
男(むなしい放課後)
男(帰り道、すれ違う同級生たちのはしゃぎようが疎ましい)
男(俺は武術一筋に生きてきたから、漫画も知らないし芸能人もわからない)
男(友達もつくってこなかった。唯一の友達の友は、今日は女と遊びに出かけたらしい)
男(俺は一体なぜうまれてきたのだろう)
男(陰茎術の体得に身を捧げていなければ俺も今頃、彼女とかできてたんだろうか)
ドンッ
ヤクザ「いてっ」
男「あっ、ごめんなさい」
ヤクザ「おい、ごめんなさいじゃねぇだろ、おら」
男「……」
ヤクザ「いってぇな、クソガキ、お前殺すぞ? あぁ!?」
男「や、やめてください」
ヤクザ「やめてくださいじゃねぇだろ!!」
男「あ、おまわりさんだ! ちょうどいいところに!」
ヤクザ「はぁっ?」クルッ
男(敵が後ろを振り向いた隙に踏み込む)ザッ
陰茎術とは何も陰茎だけを強化する武術ではない。
『空手』が『手』以外も鍛えるように、当然陰茎術も全身を鍛える。
特に武術の性質上、下半身の鍛錬はかかさない。
鍛え上げたバネのような腰を軸にして、音もなく一瞬でヤクザの背後に回り、それと同時に両手は制服のズボンのチャックを下げる。
繰り出されるのは、敵が背後を向いている場合を想定した陰茎術の秘技。
男「陰茎術……『後ろやぐら』」
チャックの間から稲妻のように飛び出す硬く勃起した陰茎が、ヤクザの菊門をこじ開け、破壊した。
陰茎は菊門にとどまらず、そのまま大腸を突き刺す。
ヤクザが受けた初めての衝撃は、直接内蔵を攻撃する、陰茎術の真骨頂。
衝撃によって前のめりに崩れたヤクザは、アスファルトに顔面を打ち付け、一瞬静止したあと、声にならない悲鳴をあげた。
男はズボンのチャックをあげ、そそくさとその場を後にしようとした。
男は、
その一部始終を見られている事に気が付かなかった。
男「……ん?」
美少女「……」
男(可愛い女の子だ……なんでこっちを見ているんだろう)
美少女「……」ニコッ
男(……)
男(……)
男(……っ!!!)バッ
男(良かったチャックはちゃんと閉めてある)
美少女「すいません」
男「えっ? は、はい」
美少女「人を探してるんですけど、今ちょっとお時間よろしいですか?」
男「あぁ……うん」
美少女「よかった」
美少女「この人なんですけど」スッ
男(……携帯の写メ)
男(っ!?)
男「な、なんだ……これ」
男(友が)
男(ボコボコにされた友が!)
男(全裸で亀甲縛りされている!!)
美少女「しりませんか?」
男「なっ、なんだこの写真……こいつそんな趣味があったなんて!!」
美少女「違います。私達が無理やりやったんです」
男「……!」
美少女「あなたの友達なんでしょう」
男「……」
美少女「陰茎術の伝承者さん」
男「何でそれを知っている?」
美少女「ふふ」
男「友をどうした! お前は一体何者だ!? なんで亀甲縛りする必要があったんだ!!」
美少女「待って。落ち着いてください」
男「なんだと!?」
美少女「質問は一度に一つにしてもらわないと」
男「っ……」
美少女「ね?」
男「……」
美少女「……」
男「……」
美少女「……」
男「なんで亀甲縛りする必要があった……?」
美少女「それですか」
美少女「友さんは無事ですよ。まあ大人しくしててはもらってますが」
男「何のために。俺に用があるなら何故真っ先に俺に来ない」
美少女「有り体に言えば人質……ですかね」
男「……」
美少女「ふふ、男さん……私が探している人、というのは本当はあなたです」
男「……」
美少女「あなたに逃げられないようにするため」
男「俺を……」
美少女「はい?」
男「陰茎術を知っていてよく俺に目をつけたな……今すぐ友を開放しろ」
美少女「それはできません」
男「なんだと」
美少女「あなたには一緒についてきてもらいます」
男「ことわる」
美少女「それなら……貴方のお友達の命は保障しかねます」
男「なるほどな……」
美少女「……」
男「どういうわけかお前は俺を知り、俺を脅迫しているようだが」
美少女「……」
男「教えてやる。陰茎術は常に攻め。タチの1手。陰茎術伝承者にネコはいない」
美少女「ほう」
男「お前を逆に脅迫しよう。今すぐ友を開放しなければ」
男「俺の」
男「怒りでビキビキにいきり立った陰茎が」
男「お前の」
男「あらゆる穴という穴を突き崩す」
美少女「こわいですね」ジュン
男「三秒数えるうちに電話しな。俺は女だからって容赦しないぜ」
美少女「……」
男「……3」
美少女「……甘いですね」
男「2……なに?」
美少女「甘いと言っているんです」
男「……」
美少女「戦いはもう始まっているんですよ」
男「……ッ」
気づいた時には遅かった。
それは臭気。
強烈な臭気が、男の鼻を突き刺した。
くさい。そんなレベルではない。
痛い。鼻が痛い。
爆発的な、それでいてジメッとこびりつくような、不快な臭気が一瞬であたりに充満しているのだ。
男「うっわクサッ!!!」
美少女「陰の世界の古武術を使う人間はあなただけじゃない」
男「おえっ、おえぇぇぇっ、えっ!!!」
美少女「私は陰唇術の使い手……美少女」
男「くっっっっさ!!!!」
美少女「陰唇術秘技……『スメルズ・ライク・ティーン・スピリット』」
美少女「半径10メートル圏内に、自らの女性器の臭気を一瞬で振りまく秘技」
美少女「男性器は萎え、植物は枯れ、空気は濁る」
美少女「禁術のひとつです」
美少女「陰茎術と対をなす、もう一つの最強」
男「っ……まだ生き残りがいたのか!?」
美少女「あなたと同じく私が最後の一人です」
男「げほっ、おっ、おえっ!!」
美少女「ふふ……無様ですね」
男「ぐぅっ……ふ、ふふっ!」
美少女「?」
男「最強……だと? 書物で読んだよ」
男「陰唇術は大昔の戦争の裏、陰茎術伝承者の一派に大敗を喫している」
男「お前らが滅んだのは陰茎術に負けたからだ……」
男「陰茎術のほうが……はるかにつよい……おええっ」
美少女「なら立ち上がってください?」
男「っ……」
美少女「陰唇術はあなた達のように時代錯誤の流派ではありません」
美少女「あなた達に滅ぼされ……」
美少女「住む場所を追いやられ……尊厳を失い……陰唇術一派は、惨めにも海外へ逃げた」
美少女「そしてそこで得たのです」
美少女「米国美女の女性器の臭いをっ……!!」
男(下水道のザリガニと腐ったフライドチキンをミキサーでグチャグチャにした臭いっ……!!)
美少女「陰唇術は進化する! 負の歴史は私が塗り替える! もう敗者の武術とは言わせません!」
美少女「そのためにはっ!」
美少女「この時代に今なお生き残る陰茎術伝承者……!」
美少女「あなたを亡き者にしなければならないっ!!」
美少女「私の愛液と屈辱にまみれて死になさい!」
美少女「陰唇術秘技っ! 『ペニーロイヤルティー』!!」ジョバァッッ
男「っっ……!!」
その技は、片足をバレリーナのように高く振り上げ、相手に向かって股を開いた姿勢から繰り出される。
当然ミニスカートの中に下着はつけていない。
むき出しになった女性器から吹き出すのは潮である。
潮吹き。
女性が何故潮を吹くのか、潮の機能とは何なのか。
諸説あるが、真の所は現代医学を持ってしても未だ解き明かされていない。
一子相伝の古武術を使う一族、陰唇術一派に代々受け継がれる秘伝書にはこうある。
『川ノセセラギノ如シ愛液デハ、木ノ板ヲ穿ツコトモ敵ワヌ。
細ク鋭シ潮吹キナレバ、コレ岩ヲモ穿ツ、陰唇術ノ秘技ナリ』
陰唇術一派は潮吹きを、条件反射による本能的な反撃行動だと認識していた。
それを極めた先にあるものが陰唇術秘技『ペニーロイヤルティー』である。
さらに海外で修行を重ねた美少女の愛液には、生物を中毒死させる成分が含まれている。
その猛毒を吹き出す速度は秒速350メートル。これは銃弾の速度に匹敵する。
自然界にこの技を避ける事の出来る生物は存在しない。
かすれば最後、しかし避けることも許されない、最強の秘伝術。
その音速の牙が、臭気に悶える男に迫った。
男「『乱れ牡丹』っ……!!」ドピュッッ
ビチャッッッ!!!!
美少女「!!」
ビチャチャッ……
男「中距離技はお前らの専売特許じゃない……」ボロン
美少女「いつの間にイチモツを」
男「精液を、潮吹きに空中衝突させて分散させた。ぎりぎり間に合ったな。早打ちには自信があってね」
美少女「……」
男「この臭気の中、俺の陰茎は不能になると思っていたのだろうが」
男「甘いのはお前のほうだ」
男「陰茎術は自らの陰茎のすべてを操る」
男「たとえ本番の最中に女性器から、小学校の頃クラスで飼ってた金魚の水槽にシチューを混ぜたような臭いがしても萎えたりなんてしない」
美少女「ふふ。そうこなくては」ジュン
男(陰の武術を使う人間)ジリ
男(まさか自分と同じ境遇のやつと会えるとは思っていなかった)
男(友もボクシング全国一位の実力者だ……)
男(そう簡単にやられるわけがないと思っていたが……納得がいったよ)
美少女「……」ジリ
男(こいつは強い)
男(生半可な武術家じゃきっとかなわない)
男(だが……)
男(こんな時だが俺は燃えている)
男(おやじ……ついに来たぜ)
父『いつかお前の武器が役に立つときがくる。必ず本番はやって来る』
男(必ずやってくる本番)
男(それが今だ……ッ!!)
男「イクぞっ!」ジャキッ
美少女「かんじるッ!!」ジュンッ
男(相手との距離は約3メートル)
男(踏み込んで瞬速のちん撃技『勃ち鼎』を浴びせるにはもう2メートルは近づく必要がある)
男(この臭気の中、長期戦は避けたい)
男(早く勝負を決めないと卒倒しそうだ)
男(さっきの技、吹き出る潮こそ目で追うことは出来ない、恐るべき速度だったが)
男(片足を大きく上げるあの予備動作)
男(攻撃を繰り出した後は完全に無防備になる……)
男(そこを狙う……狙いたいが)ジリ
美少女「……」ジュン
男(こいつには隙がない)
男(自分から仕掛けてこないつもりだな……このままにらみ合いを続けたほうがお前には有利だろうから)
男(うっ……)ウプ
男(ダメだ吐きそうだ……! 考えてる時間はもうない!)
男(この技でいく……!)ビンッ
男「陰茎術秘技っ……『流鏑馬』!!」
流鏑馬とは突き技である。
目標に向けて、陰茎の勃起と萎えを刹那の間で繰り返す事により、瞬間的に無数の突きを浴びせる。
それは合戦の際、雨のように振りかかる矢の如く、あらゆる標的を打ち滅ぼす高速の連撃。
流鏑馬は、上段から陰茎を振り下ろす勃ち鼎に比べて、一撃一撃の威力は劣る。
だがこの技の利点は、技を繰り出しながらゆっくりと前進できる点にある。
高速で伸縮する陰茎が風を斬りさくその音を引き連れて、男は悠々と美少女への距離をつめていった。
美少女「ふふ……なるほど」
男(笑ってる暇はない……あと2メートルのとこまで近づいたぞ……あと1メートルで俺の陰茎の射程圏内だ)
ババババババババッッ
男(仕掛けてこい……もう一度潮を吹いてみろ)
男(半歩、身を逸らして潮吹きを避け、勃ち鼎に移行する。隙だらけのお前に即尺させる)
男(そのまま何もしないのであればそれもいい)
男(俺の流鏑馬を……お前の毛穴の一つ一つにねじ込んでやる)
男(あと1メートル30センチ……!! ちんこ射程圏内まであと30センチだッ……!!)
美少女「だから甘いと……いってるんです」
男「なにっ!?」
美少女「今度こそくらってください」ババッ
男「っ!!」
男(来た……この至近距離で足を振り上げた!!)
男(潮吹きがくるっ!!)
男(潮は尿道から吹き出る!)
男(そして片足をあげているから、当然体重はもう一方の片足だけで支えている)
男(片足じゃ小さな方向転換もできないだろう……!)
美少女「『ペニーロイヤルティー』!!」ジョバィロッ!!
男(半歩、横によけるだけでこの技はかわせ……)ダンッ
ツルッッ
男(るッッ……)
男(……足がすべっ……)
ブシュッッ!!
男「ぐっ……ぁあ!!?」
美少女「あたった……!!」
男「ああっ……ぁっ!」ドサァッ
男「肩がっ……肩に穴があいたっ……!!」
美少女「辺りに立ち込める臭気と、私からの攻撃を警戒しすぎて、足元への注意を疎かにしていたようですね」
男「っ……な……」
男「なん……だ……あれは」
男(奴の足元の周りに水たまりがひろがっている……しかもうす汚い色の……)
男(あれで足をすべらせたのか……!!)
美少女「陰唇術秘技……『カム・アズ・ユー・アー 』」
美少女「私の陰唇から滝のように流れ落ちていく愛液は、地面に広がり、敵の足元をすくう罠となる」
美少女「陰唇術伝承者にとっての愛液とは、男性器を受け入れるための潤滑油ではありません」
美少女「迎え撃つための武器です」
男「っ……」
ドピュゥッ
男「っ……ふぅ」ヌリヌリ
美少女「自分の傷口に向けて射精した……?」
男「あぶなかった。これ毒があるんだろ」
美少女「書物をよんだんですか」
男「……ふ」
男「お前ら陰唇術は自らの武器に毒をこめるようだが」
男「俺達の陰茎術は逆でね……」
男「薬草や漢方をためた壺に向かって陰茎を突き刺す修行をするんだ」
美少女「まさか貴方の精液には毒消しの効果があるとでも……?」
男「お前らが何故俺たち陰茎術一派に敗れたのかがわかったよ」
美少女「っ……」
男「お前の持つ全ての技を破るすべが俺にはある」
美少女「ふっ……減らず口を!!」バッ
男「こいっ……全部撃ち落としてやる!!」
美少女「『ペニーロイヤルティー』!!」
ジョバィロッ!!!
男「『乱れ牡丹』!!」
ドビュッシィ!!!
ビチャチャッ!! ビチャビチャ!!
美少女「はぁぁぁぁぁぁ!!」
男「うぉぉぉぉおおお!!」
ビチャッ!!
ビシャシャッ!!
バシュッ!! バシュゥ!! ヌチャヌチャ!!
美少女(ふふっ……)
美少女(このまま撃ち合いを続けるつもりですか!?)
美少女(残念でしたね)
美少女(陰茎術は近距離戦を……陰唇術は中距離、遠距離を得意とする武術)
美少女(遠距離での撃ち合いならあなたの技より、私の技のほうが威力も連射力も弾数も上回っている!!)
バシュッ!! バババシュッ!!
男「おおおおおおお!!!」
美少女(私は負ける訳にはいかない!)
美少女(一族の屈辱を晴らすため……!)
美少女(ここで負けたら私は……私の人生は……)
美少女(全て無駄になるんですからっ!!!
――幼少期――
美少女『うぅっ……またニンニク?』
美少女母『食事の栄養価も緻密に計算されている。文句を言わずに食せ』
美少女『……やだ』
美少女母『やだではない! わがままを言うな!』
美少女『だって……くちゃくなるもん』
美少女母『なにがだ!!』
美少女『……あしょこ』モジモジ
美少女母『臭くするために食べるのだ! もっと硫黄化合物を、動物性蛋白質をとれ!!』
美少女『うぅ……やだぁ……やだよぉ』ジワッ
美少女母『やだではない!』ジョバィロッ!!
ビシャシャッ!!
美少女『ふえええっ!!』
美少女母『これだから貴様はいつまでたっても一本筋なのだ!! この未使用マンコめが!!』
美少女母『いいか、我ら陰唇術の使い手は敗北の歴史をたどってきた』
美少女『……グスン』
美少女母『にくき陰茎術に一族の大半を滅ぼされ……今はもう私とお前だけだ』
美少女『……うん』
美少女母『お前が私の技をすべて引き継げ』
美少女『……』
美少女母『復讐するのだ。お前には伝承者としての自覚が足りん』
美少女『……』
美少女母『気を引き締めろ、気のしまりが女性器のしまりに繋がる』
美少女『ふくしゅうして、どーなるの?』
美少女母『なに』
美少女『わたし、もっとふつーのおんなのこになりたい』ポロッ
美少女母『……』
美少女『クラスで、わたしのとなりの席のこ、机くっつけてくれないの……グスッ、くさいからだって』ポロポロ
美少女母『悲願を果たせ』
美少女『っ……グス』
美少女母『陰茎術伝承者は未だ滅んでいない。我らのように細々と、だが確実にどこかで息づいている』
美少女母『奴らを打ち滅ぼし、復讐を果たしたその時』
美少女母『我々は呪縛から開放されるのだ』
美少女『うぅ……』ポロポロ
美少女母『必ず見つけ出し、復讐する』
『復讐しろ』
『我らが積み上げた武の尊厳のために』
『必ず勝て』
『戦え』
『甘えた考えは捨てろ』
『濡れろ』
『もっと濡れろ』
シュン
男「っ……」ビッ
男(頬をかすめた……奴の潮の連射速度があがっていく……!!)
美少女「はああぁぁぁ!!」
美少女(かすっただけでも! 私の潮が持つ毒性はあなたの体を侵食する!)
美少女(精液で消毒させる隙を与えない!)
美少女(あなたに、個人的に恨みはありませんが)
美少女(一族の無念のために私は貴方を……!!)
シュン!!シュン!!シュン!!!
男「っ……!」
ドピュドピュドピュピュ!!!
男(近づく必要がある)
男(金玉袋のこの感覚……自分の精液の残量が急激に減っていっているのがわかる)
男(俺は……)
男(俺は悔やんでいる)
男(さっき流鏑馬で牽制しながら近づいた時)
男(奴の罠に気づかず足をすべらせた)
男(潮で肩を射抜かれ、俺はひるみ、後ろに転がった)
男(あのとき動揺せず)
男(肩のひるみに耐え……)
男(そのまま距離を取らず攻めていればあの時点で勝負はついていた)
男(奴に至近距離での攻撃方法はないのだから)
男(これは試合ではない)
男(自分が待ち望んだ実戦であるにも関わらず……俺は恐れた)
男(致命傷の恐怖を前に、勝利より保身を優先してしまった)
男(だからあのまま攻め込めたのに……後ろに転がった)
男(俺は悔やんでいる)
男(あのまま攻めていれば……ひるまずに勃ち鼎で終わらせておけば)
男(この技を使わなくてすんだのに……!!)フッ
美少女「!!」
男が姿勢を変えた。
正確には男の陰茎の向きが変わった。
『乱れ牡丹』を敵の潮にぶつけて相殺させるため、絶え間なく精液を撃ちだすその陰茎は、常に前を向いている必要がある。
にも関わらずその陰茎が、美少女の不意をつき、地面に向かって唐突にうなだれたのだ。
まるで助けを懇願するかのように。
陰茎に先ほどまでの雄々しさはない。猛るような荒々しさはない。
こうべを垂れるように、陰茎は、ざらつくアスファルトにその鈴口でキスをした。
美少女「なにをっ」
美少女は一瞬躊躇した。
なにをしているんですかと言いかけた。降参のつもりか。決闘を途中で投げるつもりかと。
だがすぐにその思考はかき消え、今度は、しまったと思った。
それは男が、地面に向かって伸びる陰茎に股間でもたれかかるようにして、一気に前のめりになったのを見たから。
なにより男の目が語っていたから。
『お前を犯す』
アスファルトを砕く音が耳に届くと同時に、風が吹き抜け、男の姿が消えた。
男父『敵がもし飛び道具を持っていたら?』
男『そうだよ。陰茎術ってのは戦国時代からあったんだろ』
男父『うむ』
男『弓矢……銃とか……相手が飛び道具を使ってきたらどう対処していたんだよ』
男父『乱れ牡丹で応戦する』
男『ふーん』
男父『おい、なんだ不満か』
男『あれは威力はあるけど、いかんせん不便だろ。射精を繰り返していたら陰茎の硬度は維持できねえよ』
男『連射にも向かないしなにより』
男『射程距離……せいぜい10メートル』
男『俺が弓の使い手なら10メートル圏外をキープして、陰茎術の乱れ牡丹を完封する』
男父『まず言っておくが男。少し射精を繰り返して陰茎が萎えるようなら、まずお前が半ちん前なだけだ。修行がたりんな』
男『ぐっ』
男父『だがあるぞ』
男『お?』
男父『陰茎術には、遠距離にいる敵を倒す技が……乱れ牡丹以外にも』
男『ほんとか!』
男父『その技の名は「鶯の谷渡り」』
男『うぐいすの……たにわたり……』
男父『相手が遠距離からこちらを狙い、リーチの有利にあぐらをかいていた場合』
男父『間違いなくこれで勝てる』
男父『だが危険な技だ。使用者にとってのリスクも高い』
男『……オヤジ』
男父『なんだ息子よ』
男『俺は陰茎術を極める男だぜ……リスクはいいさ、教えてくれ!』
男父『ふ……』
男父『それでこそ我が息子だ』
美少女(ば、ばかなっ……!!)
美少女(さっきまで15メートルは距離があったのに……)
男「っ」ビュゥッッ!!
美少女(何故すぐ目の前まできているんですか……!!?)
男(鶯の谷渡り……それすなわち縮地法)
余力を残して少しだけ萎えさせ、脱力した状態で地面に密着させた陰茎を、瞬時に膨張させる。
そしてその陰茎で、地面を『突く』というより『押しだす』。
バネの原理で、それによって反対方向に自分の体を押し飛ばす荒業。
男(すなわち遠距離へ自分を吹き飛ばして、敵の懐に一気に詰め込む高速移動術!!)
男(ただし……自分を遠くへ飛ばすためにはちんこにもある程度の弾力……柔らかさが必要)
男(つまり完全に最高硬度まで勃起させたちんこでレンガを叩き割るのとはわけが違う)
男(勃起力7割程のちんこを固いアスファルトに強打させるということは)
男(いくら陰茎術の伝承者であっても危険なコト)
男(この技を使いすぎればちんこの寿命を縮めることになる)
男(だが今に全力をかけなければ俺にこの先はないッ!!)
美少女「っ……!!」
美少女(不覚っ……ここまで接近を許すとは……!)
美少女(接近戦になれば私に勝ち目はなくなる!!)
美少女(ま、負けるわけには!!)
美少女(負ける訳にはいかないッッ!!!!)
ザリッ
美少女(片足を軸に!!)
グルッ
美少女(フィギュアスケートのように全身を高速回転させるッッ!!)
ギュルルルルッッ!!
美少女「ペニーロイヤルティー全方位!!!」
ブシュンブシュンブシュンブシュン!!!!!
美少女(回転しながら360度全方向に向かって乱射される潮はあらゆる敵を寄せ付けない!!)
美少女(そして防御と共にっ……どこへ逃げても私の潮からは逃げられない)
美少女(私の奥義です!! これであなたもっ……)
ガガガガガガガガガ
美少女「!!?」
ガガガガガガガガガ
美少女(敵の姿が消えた!?)
美少女(いやっ……周りで)
ガガガガガガガガガッ!!!
美少女(回転する私の周りをさらに囲って周るようにして、アスファルトが砕けて散っていく)
美少女(まさか)
美少女(さっき、一瞬で距離を詰めたあの技で、私の目に見えない速さで)
美少女(潮を……避け続けている!?)
美少女(そんなばかな……)
美少女(弾丸に匹敵する速度の私の潮吹きを……!!??)
ガガガガガガガガガッ!!!!!!
美少女(そんなばかなっ、バカな事が……)
美少女(私の周りを彼は! 弾丸より速い速度で飛び回っている!! おち○ちんで地面を叩いて!!!!)
美少女「どこにっ……!!」
ザザッ
男「うしろだよ」
美少女「!!」
男「これが鶯の谷渡りだ。直進だけじゃない、陰茎の向きを変えることで縦横無尽に瞬間移動を繰り返せる」
美少女(しまっ……背後をとられ)
男「人間には目で追う事もできない速度でだ」
ガシィッ!!
美少女「あっ!」
男「両手首を後ろにとらえた。お前にもうなすすべはない」
美少女「ぐっ……!」ジュンジュン
男「愛液を垂れ流しても無駄だよ」
美少女「ううっ……!!」
男「お前は強かった」
男「ここまで強いやつには出会ったことがない」
美少女「何を上から目線に……!」
男「俺は嬉しい」
美少女「はいっ!?」
男「まだまだ……俺には超えるべき相手がいるって事がわかった」
美少女「私はまだ戦えます!!」
男「いや、もう勝負はついてる」
美少女「ついてません!!」
男「ついてるよ。けつに感触を感じないのか」
美少女「え……」
スリスリ
美少女「か……かたいものが……あたっています」
男「あててんだよ」
男「終わらせるぞ」ガシッ
相手の両太ももを、背後から両手でそれぞれわしづかみにする。
それは逃げ場をなくすため。
次いで、硬く膨張させた陰茎を、相手の女性器へと深くねじ込ませる。
子宮を貫くほどに深く。
二人が完全に固定されたその時、太ももを掴む両の手と、下腹部を突き刺す陰茎によって、受け手の重心は攻め手にコントロールさ
れる。
レバーをおろすように陰茎を下に動かすと、美少女は体勢を維持できず地面に突っ伏した。
陰茎術伝承者の、陰茎の挿入を許したという事。
それは裸三角絞めにかけられるよりも、逃れることの出来ない絶対的な詰み。
たとえどんなに屈強な武人であろうと逆転不可能の状況。
美少女「ぎっ……!!」
だが美少女はあがいた。
それが無駄だと分かっていてもあがかずにはいられなかった。
しかし下半身に力が入らない。
人体内部深くに突き刺さる陰茎が、子宮を超え、丹田を刺激し、気の流れを掌握している。
もはやどうする事もできない。
そこから、陰茎術一族秘伝の技は繰り出される。
男「陰茎術秘奥義『千鳥』」
ジュポスジュポウスジュポシュシュシュ!!!
美少女「ひぎいいい!!!」ビクンビクンッッ!!
男「気分はどうだ……! 陰茎が体内で縦横無尽にのたうちまわっている、その気分は!」
男「まるで千の鳥が一斉に飛ぶように……!」
男「膣内のあらゆる点を捉えて同時にめった打ちされている気分はどうだ!!」
美少女「んほおおおおおおおおッ!!」
美少女「やっ、やめてええ! もうコレ以上いけっ、いぎっ、いぐぅ!! いきますうう!!!」
美少女「ンほっ! もっと、もっどしでぇ!!! おち○ちんもっどしてええええ!!!! やめてえ! んひいい!!!!!」
男「終わりだ……陰唇術の女」
男「俺はこのままコンマ0秒間隔でお前に絶頂の悦楽を与え続ける」
男「脳はオーバーヒートして失神と覚醒を繰り返す」
男「秘部への攻撃を通じて、鍛えることの出来ない脳そのものを攻撃する技」
男「それが陰茎術秘奥義……千鳥」
男「うっ……終幕」ドピュピュン
美少女「あへっ……あへ」ビクビク
男「とどめは刺さないぜ」
美少女「んほ……」ビクビク
男「俺を狙った理由……一派の悲願のためと言っていたな」
男「俺が戦うときはそんな信念なんて持ってないんだ」
男「ただ……自分の武をひけらかしたいだけ。誇り高き自分の武術を」
男「お前のほうがよっぽど立派だ」
美少女「っ……」ビクビク
男「武術やめるなよ」カチャカチャ
男「お前強かったよ……」ジィィ
男「……」
男「あばよ陰唇術。俺は友を助けに行く」
スタスタ
美少女「……」
美少女「負けた……完膚なきまでに」
美少女「強かった」
美少女「私の積み上げてきたものが……今日で……終わった」
美少女「武術の鍛錬一筋に……友達も作れず生きてきたのに……」
美少女「私は……どう……すれば……」
美少女「……ん」
ドロォォ
美少女「中だしまでされて……」
美少女「……え?」
美少女「……」ヌチャァ
美少女「くさくない……」
美少女「お、おま○このにおいが……なくなっている!?」
美少女「なんで……まさか」
男『お前ら陰唇術は自らの武器に毒をこめるようだが』
男『俺達の陰茎術は逆でね……』
男『薬草や漢方をためた壺に向かって陰茎を突き刺す修行をするんだ』
美少女「そんな……」
美少女「あの男の射精で……膣のにおいが……浄化されたというの」
美少女「ずっと消えなかった」
美少女「このにおいのせいで……彼氏はおろか友達すらできなかったのに」
美少女「……」
男『誇り高き自分の武術を』
美少女「ふふ」
美少女「やっぱり私の完敗ですね」
美少女「宿敵に敗れ、臭気という武器もひとつ奪われたというのに」
美少女「わたし……今」
美少女「とてもさわやかな気持ちです……」
スタスタ
男(さて……この戦い)
男(あいつ一人の計画じゃないな)
男(仲間がいるのは確実)
男(さっきの女の携帯は預かってきたが……用意周到なことだ)
男(電話帳も着信履歴も削除されてる)
男(お仲間の連絡先を知ることは出来ない)
男(俺と戦う前に携帯にのこる情報を自ら削除させたのだろう)
男(それはつまり)
男(女の仲間たちは、女が負ける可能性も十分踏まえていたということ)
男(向こうは俺をなめてない)
男(陰茎術を知っていて、そしてある程度警戒している)
男(今まで戦ってきた相手は、不良、格闘家、ヤクザ)
男(どいつにしても俺の力量がわからず油断していた)
男(陰茎術は意表をつく武術、そういう相手はたとえピストルを持っていようが初見殺しで秒殺できる)
男(だが今回の相手に油断はない)
男(そして……)
男(向こうは陰茎術と同じように)
男(裏の世界の武術を持っている可能性もある)
スッ
男(何故か亀甲縛りされている友の画像の背景は……古びた廃屋)
男(知ってる場所だ。地区の外れにある。寂れて使われてないマンション)
男(自転車で30分くらいかな)
男(子供の頃よくそこで遊んで、親に怒られたよ)
男(奴らは俺を狙って初めてこの街に来たのだろうが、俺にとっては地元)
男(だから陰唇術の女にはあえて友の場所を聞き出さなかった)
男(陰茎術は警戒していても……刺客がやられる事を想定していても)
男(自ら選んだアジトを画像一つで特定されようとは思うまい)
男(わかるはずがないだろうと油断している)
男(陰茎術は忍びの武術)
男(廃屋に忍び込んで……)
男(一人ずつ叩き潰してやる)
男(俺のちんこで……待ってろ友)
――――――――
ジタバタ ジタバタ
友「んー……んー……!」
友「んぅぅぅ……!!」
友「んーーーー!!!!」
「うるさいわね」
友「んぐぅ……!」
「うめいてもくわえてるギャグボールがヨダレまみれになるだけよ」
友「……っ」モガモガ
「わかったら大人しく亀甲縛りされてなさい」ナデナデ
友「……」
デブ男「ふふ……それでいいのよ」
デブ男「高校生日本一ボクサーの引き締まった裸体に、私の施した亀甲縛り」
デブ男「こんな芸術品、もがいて縄がほころんだら勿体無いわ」
友「フー……フー……」
友(ほころぶだと)
友(この縄、どれだけ動いても少しも緩まらないじゃねえか!!)
友(それどころか動けば動くほど)
友(キツく締めあげられるよ……)ギギギ
デブ男「それにしても美少女ちゃんからの連絡がないわね」
デブ男「戦い、やっぱり長引いているようね」
デブ男「ねえ……どう思う?」
巨乳女「そうだな」
巨乳女「長引いてるか、もしくは」
巨乳女「もう負けたか……」
巨乳女「だが美少女は臭気で徐々に相手のコンディションをさげる戦いを得意とする。持久戦にもつれ込むこともある」
デブ男「そうねえ。今絶賛戦闘中かもねぇ」
巨乳女「それに奴が負けるとも思えん」
デブ男「美少女ちゃんのこと?」
巨乳女「私は陰茎術の伝承者と戦ったことはないが」
巨乳女「陰唇術は強い。並みの武力では歯がたたない技を持っている」
巨乳女「一度奴と手合わせした事がある。美少女の力量は知っている」
デブ男「だわよねぇ」
デブ男「……」
デブ男「あんたはどう思うの?」クルッ
根暗女「……」
根暗女「油断……よくないよ」
根暗女「【あの人】も……陰茎術には気をつけろと言ってたし」
根暗女「そろそろ次は誰が行くかを決めた方がいい……」
デブ男「ふーん」
巨乳女「【あの人】がそう言うなら警戒するに越した事はないのだろうが、私は負ける気がしないな」
デブ男「じゃあ次は巨乳女ちゃんがイク?」
巨乳女「いいのか?」
根暗女「いいよ……陰茎術の伝承者が本当に強ければ……私にも番はまわってくるし」
巨乳女「ふ……礼を言うよ」タユン
巨乳女「美少女の奴は一派絡みの因縁があったようだから一番手は譲ったが」
巨乳女「陰茎術の使い手とは私も戦ってみたかった」
巨乳女「陰茎術などに因縁はない……ないが」
巨乳女「私の武術こそが最強だ」
巨乳女「たとえ【あの人】の命令でなくとも……この手でやつを倒し」
巨乳女「我が武の歴史にまたひとつ白星をつける」
巨乳女「あいにくだがお前らの出番はまわってこない」タユンッ
スタスタ タユンタユン
デブ男「燃えてるわねぇ」
根暗女「でも……まぁ……巨乳女が行ったら」
根暗女「どれだけ陰茎術の使い手が強かろうと……相手は負けるよ」
デブ男「【あの人】が来る前に事が終わりそうでよかったわぁ」
友(……)
友(こいつら……)
友(一体なんなんだ)
友(男の事を狙っているのは話を聞けばわかるが……)
友(くそっ)
友(何も出来ずに囚われている自分が情けない)
友(可愛い女の子に放課後呼び出されたかと思えば)
友(その美少女の強烈なマン臭で気を失って)
友(気づいたらこのザマだ……)
友(男のやってる……えぇと……陰茎術、こいつら知ってるんだな)
友(そしてどういうわけか男を狙ってる)
友(俺は人質か……)
友(男の助けを待っているだけじゃなく、出来ることなら抗戦したいけど)
友(こいつらのかもし出すオーラが尋常じゃない……!)
デブ男「……」
友(俺を亀甲縛りしやがってるデブと)
根暗女「……」
友(髪の毛がくそ長くて不気味なこの根暗女)
友(そしてさっき歩いてった巨乳女と、俺を呼び出したマンコが臭い女……!)
友(ふつーのチンピラ相手なら男なら勝てるだろうけど)
友(この四人……多分タダモンじゃねえ)
友(格闘技やってる俺にはわかる)
友(表世界の格闘選手とはちがうオーラがある……)
友(男とおなじだ……間違いない)
友(裏世界の陰の武術を使う奴らだ……!)
友(男……きをつけろ……!)
友(こいつらなんの目的があってお前を狙うかはわからねえけど)
友(四人とも……一人残らず強いぞ……!!)
デブ男「巨乳女ちゃんが戻るまで暇だわねぇ、記念にもう一枚写メっとこうかしら」
パシャパシャ
友(男ー!! 早くキてくれー!!)ジタバタ
デブ男「あとでTwitterにアップしよ」パシャパシャ
巨乳女「さて……」タユン
巨乳女「このあたりは本当に田舎だな」
巨乳女「潜伏先に選んだこの廃マンションもそうだが……」チラ
ガサッ
巨乳女「マンションの外に出れば、あたり一面雑木林だらけで歩くのも困難じゃないか」
ガサガサ タユンタユン
巨乳女「交戦中と思わしき場所まであるいていくか」
巨乳女「道場もない……開けた空き地もない」
巨乳女「こんな田舎に陰茎術伝承者が潜んでいたとはな」
ガサガサ
巨乳女「……」
巨乳女「…」
巨乳女「」
廃マンションの周りを囲む雑木林の中を、かき分けるように進んでいく巨乳女。
その巨乳女を見下ろす眼光がふたつ。
巨乳女の5メートル程上、高くそびえる木に実る、枝葉の中に潜むものがいた。
息を殺し、全開にしたズボンのチャックから陰茎を伸ばし、木の幹に突き刺して、滑り落ちぬよう体を固定している者がいた。
男「………………」
男(奴はこっちに気づいていない)
男(あの廃屋から出てきたということは、友をさらった奴らの仲間だろう)
男(見回りか? それとも帰ってこない美少女を心配して、俺に新たな刺客を送り込んだか)
男(俺が先手を打ってこの雑木林に潜んでいるとは思わなかったか)
男(部外者……)
男(じゃ……なさそうだ)
巨乳女「……」タユンタユン
男(強そうなオーラ感じるよ……相当な使い手だろうな……俺の睾丸が震えている)
男(奇襲……不意打ち)
男(これがスポーツならダーティーな行為と観客からブーイングも受けるだろうが)
男(実戦だ)
男(観客もルールブックもない)
男(そして俺の技は合戦や暗殺で使われた古武術)
男(自分に気づきもしていない相手を……真上……死角からの攻撃で倒すという行為でも)
男(友を人質にとったお前らに……)スゥ…
樹の幹に突き刺した陰茎の硬度を緩めていく。
徐々に体の重心が変わっていく。
やがて、するりと音もたてずに陰茎が樹の幹から抜け、男は重力に身を任せて、巨乳女めがけて落下した。
男(卑怯とは言わせないッ!!)ギュルンッ!!
ビュオオオオッ!!!
巨乳女「っ!! 何!!?」バッ
男(気づいたか!)
男(だが遅い……ッ)
男(空中から、全身を回転させながら、体のバネと遠心力そして重力……全てをのせた陰茎を振り下ろす!!)
男(陰茎術の48手ある秘技奥義のうちでも数少ない)
男(空中から繰り出す大振りの決め技っ)
ゴオッッ
巨乳女「きっさま……!!!」
男「陰茎術秘技ッ……『御所車』ッッ!!」ビュンッ!!
ドゴォォォォォォォ!!!!
男(決まった……!)
男(俺の振り下ろした陰茎は確実に直撃し……)
男「ッ!?」
メキメキ ミシミシ
「確かに」
ミシシィッ
「いい一撃だ」
男「なっ……!!」
「だが……」
ミシシ……メキメキ……
巨乳女「私には通じない」タユユン
男「ばかな!!」
男「肥大化した乳房で……!」
男「俺の陰茎を防いだだと……!!!!」
巨乳女「ふんっ!」タユンッ
ばいんっ
男「うおっ……!!」ザザァッ
男(乳房で跳ね飛ばされた……!)
男(俺の陰茎を受け止めるほど固いと思えば、弾き返すような、ゴムのような弾力にも切り替えられるのか!)
巨乳女「陰茎術の使い手だな」
男「っ……」
巨乳女「貴様がここにいるということは美少女は敗れたか」
男「返り討ちにしてやったよ……」
巨乳女「どうしてここがわかった?」
男「お前らの質問に答える義理はない。聞きたいことなら俺のほうがいっぱいある」
巨乳女「ほう。言ってみろ」
男「なぜ友を亀甲縛りにしているんだ」
巨乳女「それか……」
男「そもそもお前らなんの目的があって俺を狙う」
男「さっきの陰唇術の女は一派の事情だった……陰唇術総出で俺たちを目の敵にしているらしいから」
男「だがお前ら……陰唇術の手のものじゃないな」
男「お前らは何なんだ」
巨乳女「我らは自分の流派の因縁などに興味はない」
男「なに?」
巨乳女「貴様を狙う理由は2つだ」
巨乳女「ひとつはとある人の命令……」
巨乳女「もうひとつは……純粋に自ら個人の武の証明」
男「なるほどね……」
男(景気良く答えてくれるぜ。ある人の命令……黒幕の存在、そして)
男(我らは、と)
男(まだ下っ端仲間がいるということだ)
男(加勢を待ってやる必要はない、さっきの戦いと同じく早期戦で潰して廃マンションに突入する)キッ
巨乳女「私の後ろの廃屋が気になるか」
男「……」
巨乳女「囚われの友人が気になるか」
男「……」
巨乳女「だが心配するな。貴様をここでうちのめしたら、無事に解放してやる」
男「お前が打ちのめされたらの間違いだッ」バッ
ドンッッ!!
巨乳女「ほう」
ガガガガッガガッガガガガガガ!!!!
男(陰茎術秘技『鶯の谷渡り』……! 仲間がいるとわかった以上奥の手は出し惜しまない!!)
男(対象の周囲を縦横無尽に駆け回り、翻弄する!!)
男(目で追うことすらさせないままお前を倒す!!)
巨乳女「……」キョロ
男(後ろだッッ!!!!)バッッッ!!!!
巨乳女「後ろか」クルッ
男「!!」
バインッッ!!
男「なっに……また乳房ではじかれただと!!」
巨乳女「すばしっこい動きだが」
男「くっ……!!」
巨乳女「私の前では無意味だ」
乳房に弾き返された反動で、体勢を崩して、男は豪快に草木の上を滑り転げた。
枝や小石が体に食い込み、破れた衣服に血がにじみだす。
巨乳女はシャツのボタンを開け放ち、窮屈そうに自己主張していたそのたわわな乳房を外気に晒した。
巨乳女「私も貴様と同じく陰の武術を会得した者」
巨乳女「我が流派は『魔乳護身術』」
巨乳女「乳房の硬度、サイズ、あらゆる状態へと自在に変化させて、戦闘に用いる」
巨乳女「後の先を得意とする格闘技や武術は多々あるが」
巨乳女「『魔乳護身術』は後の後……相手の攻撃を完全に受けきるところから始まるカウンター特化の武術!」
巨乳女「極端なインファイトが必至である武術の性質上……」
巨乳女「反射神経をあげる訓練は欠かしたことがない」
巨乳女「それに加えて乳房の微細な揺れで周囲の状況を感知できる」
男「……」ヨロ
巨乳女「さっきのような高速の攻撃だろうと、突然の不意打ちだろうと私なら受けられる。一点の隙もない最強の武術だ」
男「……ふふ」
巨乳女「……」ピク
男「武術自慢が聞いて呆れるぜ」
巨乳女「なに?」
男「攻め手はないわけか」
男「カウンター特化の……護身術? それが武術?」
男「じゃあ乳を放り出してるお前を無視して俺は廃マンションに向かうよッ!!」
男(『鶯の谷渡り』の高速移動で!)
男(こいつの横を突っ切るッ!!)ビュッッ!!
巨乳女「……甘いな」
男「っ……!!」
男には一瞬何が起きたのか理解出来なかった。
『鶯の谷渡り』は人間の感知スピードを超えた高速移動。
そのあまりの移動速度に、術者本人ですら移動中、辺りの景色を確認することは出来ない。目が追いつかないのだ。
ゆえに、技を繰り出す時はあらかじめ到達する距離を決めてから、陰茎を撃ちだす。
それは要するに無敵の縮地術ではないという事。
コンマ数秒前と周囲の状況が変わっていたとしても、急な方向転換が出来ないという弱点をもっている。
急に目の前に『壁』が現れたとしても、術者自身の反射神経で咄嗟に躱す事は不可能なのである。
今、男の前に『壁』が現れた。
男「ッあ……!!?」
バインッッ!!
巨乳女「ここは通さない」
男(ばかなっ、こいつ!?)
男(何故俺のスピードに追いついたッ!?)
高速で衝突したがダメージはなかった。
柔らかい乳房がお互いの衝撃を吸収したのだろう。
だが、巨乳女が身じろぎもせず仁王立ちしているのに比べて、乳房の弾力を受けた男は宙高くに弾き飛ばされた。
男(まずいっ!!)
男(受けられた瞬間じゃないんだ……!!)
男(こいつは『受けられた後』がまずいッッ!!)
男は木々の間を吹き飛び、枝にその身を裂きながら、凄まじい速度で大木に背中から激突した。
肩の後ろで、黒人男性の男根のように太く立派な大木がミシミシと悲鳴をあげる。
巨乳女は男とぶつかるその瞬間、肥大させた乳房によってトランポリンのように衝撃を吸収した。
そして増幅し、倍増させ、跳ね返したのだ。
男「がっ……はぁ……!」
男(10メートルは飛んだぞ俺……っ!)
男(弾力を操作でき、瞬時にサイズもかえられるということはつまり)
男(そうか、あいつ……『鶯の谷渡り』と同じ原理で……高速移動できるのか)
ずるっ
男「ぐあっ……」ドサッ
巨乳女「驚いたか」
巨乳女「私の乳房はあらゆる衝撃を倍にして跳ね返す」
巨乳女「私にはどんな攻撃も通じない」
タユン タユン
男「くっ……」ジャキッ
巨乳女「っ」
男「『乱れ牡丹』!!」ドピュン!!
バインッ
男(っ……跳ね返っ)
ドシュゥッ
男「があっ……!!」
巨乳女「通じないといったばかりなのに、愚かな男め」
巨乳女「やめておけ。私の乳房は」
巨乳女「ライフルだろうと反射する」
巨乳女「ふんっ!」
巨乳女が大きく膨らませたその乳房は、一メートルほどのサイズの2つのゴム玉のように見えた。
そのまま前傾姿勢をとり、膨らませたゴム玉を地面に密着させる。
その光景を見た瞬間男は考えるより早く反射的にガード姿勢をとっていた。
想定通り、それは陰茎術の『鶯の谷渡り』と全く同じ姿勢。
あらゆるものを跳ね返すその乳房をクッションにして地面をバウンドする。
それが『魔乳護身術』の縮地法。
バイン、という何かが跳ね返るような音が響いた時にはもう、男のすぐそばに巨乳女がいた。
男(来たッ……!!)
巨乳女(『魔乳護身術』伝承者の持つ乳房はその弾力であらゆる物質を跳ね返す)
巨乳女(相手の運動エネルギーは問題ではない)
巨乳女(向こうが止まっているならこちらが高速でぶつかればいい)
巨乳女(そして乳房で相手を跳ね飛ばす)
巨乳女「もう一度森の中を吹き飛ぶがいい!!」タユンッ
男「くっ!!」
バインッ!!
男(跳ね……飛ばされたッ)
男(着地時に受け身をとることはできるが、ダメージを0に出来るわけじゃない!)
男(ちくしょうっ……!!)
ザザザザッッ!!!!
男「あぎっ……!」ゴロッゴロッ
男「がはっ、げほ!」
男「くそっ……!!」フラッ
男(極限まで鍛えあげられた反応スピード、絶対的な防御力)
男(そしてほぼ防御不可能といっていいこの攻撃方法)
男(デカ乳女……反則だろッ)
バインッ!! バインッ!!
男「っ!!」
目で追うことは出来ない。
巨乳女の姿は視界に映らないまま、あたりを音が跳ね返る。
木の葉が舞い、小石や泥だけが宙に飛び散っている。
男(どうやって攻略するッ……!!)
むにゅぅっ
男「ッ!?」
巨乳女「とべ」
背中に柔らかい感触を覚えたと思ったら、地面が遠ざかっていた。
男(いつの間に後ろに――)
高速移動で敵に何もさせぬまま背後をとる。
先ほどの戦いで、陰唇術の使い手相手に見せた戦法と全く同じ。
ただひとつ相違点は、今は自分がその手にやられているということ。
雑木林に立ち並ぶ木々の中、景色がめまぐるしい速度で回転していく。
男(体が遠心力に振り回されている)
男(受け身――いや――地面はどっちだ)
男(俺はどのくらいの――高さを)
男(とばされ――)
ゴシャッッ
男「ッッ……」
男はわけもわからぬままに、地面にたたきつけられた。
かろうじて受け身をとれたのは、日頃鍛錬を欠かしてこなかったその成果だ。
熱くほてる自分と対照的に、冷たく湿った土を握りしめ、体中のきしむような痛みをこらえる。
男「てめえっ……」ガバッ
巨乳女「遅いっ」
男「っ……!!」
バインッ
男「しまっ!! また吹き飛ば――」
ゴシャアッ
男「かはあっ……!」
バインッ
男「っ!!?」
ドシャアッ
男「がふっ!!」
バインッ
男「うぉわッッ!!」
男(まずい!!)
男(これはまずいパターンだ!!)
男(完全に奴のペースにのせられている!!)
男(吹っ飛ばされて、ぎりぎり受け身をとって着地したと思ったら、すでに背中に奴が待ち構えている)
男(そしてまた吹っ飛ばされて……繰り返し)
男(まるでサッカーボール……)
男(奴のペースを、崩す必要があるっ!!)
ゴシャァァァッ
男「がふっっ……!!」
巨乳女「もう一度だ」ザッ
男「いい加減にしやがれ!! 『流鏑馬』ぇ!!!!」バッッ
男(一撃一撃の威力は低いが、連続して打ち出せる突き技ッ、これならどうだッ)
バババババババッ!!
巨乳女「子供だましだな」
バインバインバインバインバインッ!!!!
男(乳を揺らしてっ……全弾防がれている……!!)
巨乳女「出会い頭お前が空中から見せたあの技、渾身の一撃だったのだろう?」
男「っ……!」
巨乳女「相手が隙だらけであり、一発は確実に入るとしたら、牽制するような技などまず打たない」
巨乳女「お前はあの一撃で決めるつもりだった」
巨乳女「それはつまりあれがお前の持つ技の中で最も高火力の大技ということ」
男「ハァ……ハァ……」
巨乳女「それが通じなかったのだ。もはやお前に為す術はない」
男「ハァ……どうかな」
男「決めつけはよくないぞ」
巨乳女「まだ奥の手があるのか?」
男(考えろ)
男(考えろ……!!)
男「お前は重大な勘違いをしている……!」
巨乳女「……なに」ピクッ
男「とても重大なことを見落としている、俺に関してな!」
男(何が目的だ? と尋ねたら素直に答えを教えてしまうような奴だ)
男(意味深な言葉を投げかければ攻撃の手を休めて話に集中するだろう)
男(その間だ……その間に対抗策を練らなければ)
男「ひとつ。何故俺がお前らのアジトを特定できたか」
巨乳女「それが貴様の奥の手と関係しているのか?」
男「大いにな。そもそもこの世には無関係な事なんて一つもないんだよ。地球上に俺たちが存在している限り」
巨乳女「どういう事だ」
男(あれ、考え事しながら喋ってたら何言ってるか自分でもわかんなくなってきた)
男「おっぱいは何故2つあると思う? 2つある必要性はあるのか?」
巨乳女「何をくだらん事を言っている」
男「くだらん事と切り捨てる所が甘いな……思慮深さが足りない」
巨乳女「なに?」
男「そもそも胸の大きな女性と知能指数の反比例関係についてNASAが述べた見解では……」
男(こいつには)
男(速さで攻めても、手数で攻めても、強力な一撃で攻めても)
男(全て防御される)
男(そしてヤツの高速移動術のほうが俺より上だ)
男(安易に『鶯の谷渡り』を仕掛ければ、手痛い反撃に合う)
男(一見俺のこの状況は詰み)
男(だが……)
男(奴にも決定的な弱点が存在する)
男(奴の防御範囲は前面だけということ)
男(前からの攻撃は頭から爪先にかけて一切の隙がない)
男(反射神経にくわえて、エアーバッグのように肥大化させた乳によって全てを跳ね返してくる)
男(後ろからだ)
男(背後から狙う。それしかない)
男(問題は……どうやって背後をとるか)
男「乳の大きな女性は乳の小さな女性に比べて圧倒的に偏差値が低いことが実験で明らかになっており」ブツブツ
巨乳女「っ……」ピキピキ
男(やるとするなら……ん?)
巨乳女「貴様言わせておけば根も葉もない戯言をダラダラとッ!!!!」
男(んん!?)
男(しまった考え事に夢中すぎて喋ってることがいいかげんすぎた!! 逆に怒らせた!!)
巨乳女「今すぐ潰す!!」バッ
男「落ち着け!! 『乱れ牡丹』!!」
ドピュピュンッ!!!!
巨乳女「無駄だぁ!!」
バインッ
男「ッ……」
バシュゥッッ!!
男「いてえっ……!!」
男「くっ……そっ!」
男「まだまだっ! 『乱れ牡丹』!! 連続精射ッ!!!!」
ドピュピュン!! ドピュン!! ドピュドピュピュ!!
巨乳女「血迷ったか!!」
バインバインバインバインバインッ
男「くっ……」バッ
相手に向けて強力な水圧の精液を飛ばす『乱れ牡丹』の連撃を繰り出しながら、跳ね返ってくる自らの精液もかわす。
まるでガンマンの銃撃戦のように、精液を撃ち、土の上を転がり避け、撃ち、転がり。
本来『乱れ牡丹』の威力はせいぜい打撲で相手を失神させる程度の威力である。
だが、巨乳女の乳房によって反射され、返ってきた『乱れ牡丹』は何倍にも威力が跳ね上がっている。
背後に並ぶ大木達に風穴が開いていき、今にも倒れそうにぎしぎしと音を鳴らした。
巨乳女「無駄だというのがわからないのか!」
男「うおおおおおおおっ!!」
ドピュドピュピュ!!
バインバインバインッ!!
男「っ……!!」バッ
ゴロゴロッ
男「まだ……まだだっ!!」
ドピュドピュピュ!!
巨乳女「おい、いい加減にしろ!!」
巨乳女「私の胸にそんな攻撃が通用すると!?」
巨乳女「数で押して打開できると思ったか……!! 哀れなやつだ!」
巨乳女「きてみろ!!」
男「おおおおおおおおお!!」
ドピュドピュピュ!!
バインバインバインッ!!
巨乳女「距離をとって時間稼ぎか!? 男らしく向かってこい!!」
男「そっちから向かってきてみろ! 出来ないだろうけどな!!」ゴロゴロ
巨乳女「なに!?」
ドピュドピュピュ!!
バインバインバインッ!!
男「お前は攻撃を受けている最中はさっきのような高速移動はできない……!」
巨乳女「……」
男「俺はお前の高速移動の原理を知っている!」
男「一度、前傾姿勢になって地面につけた乳に重心を預ける必要がある!」
男「この絶え間ない射撃の雨の中で、そんな姿勢を一秒でもとろうものなら、頭を俺の精液がぶちぬくぜ!」
ドピュドピュピュ!!
バインバインバインッ!!
男「おっと!」ゴロッ
ドシュドシュドシュゥ!!
巨乳女「……」
男「どうした……! 図星じゃないのか?」
巨乳女「ふふ」
男「……!」
巨乳女「貴様はやはり愚か者だ……!」
巨乳女「私が跳ぶのに一秒もいるか」
巨乳女「どんな連撃の中でもほんの一瞬あればお前の元へ行ける!!」
男「じゃあやってみろ!!!」
ドピュドピュピュ!!!!
巨乳女「甘く見るなよッ」フッ
バインッ――!
男「!!」
男(来た……!!)
男(なんて挑発にのせやすい女なんだ!!)
ビュォォォオオオオオオ!!!!
男(相変わらず早すぎて目では追えないッ! 一瞬で見失った!!)
男(だがプライドが高いお前の移動する位置はわかりきっている……!)
男(会って数分だが……拳を合わせると相手のことがわかるってのは本当らしいな)
男(少しでも自分の優位性を知らしめたい性格のお前はッ)
男(俺の背後に移動するッ……!!)
巨乳女(背後をとった!!)ビュウッ!!
巨乳女(もらった!!)
男「そこだ!!」バッ
巨乳女「なっ!?」
男「いくぜ……ッ」
巨乳女(何故私の速度に追いついた!?)
巨乳女(だが……まずはっ)
巨乳女(攻撃がくる……防がなければ!!)ボインッッ
彼女にとって男がこちらを振り向くのは完全な想定外だった。
スピード反射神経ともに自らが完全にまさっていると確信していたから。
想定外の事態ではあるが、鍛えあげられた反射神経はなんなく防御態勢をとる。
上半身が隠れるほど肥大化させた2つの乳房を押し出し、谷間の隙間から敵を睨みつけた。
巨乳女(こいっ……!!)
巨乳女(どんな攻撃だろうと私には通じない!!)
巨乳女(攻撃してみろ!!!!)
男「陰茎術秘技ッ……『菊一文字』」
とすっ。
巨乳女「っ」
硬く、鋭く、太く、勇ましく隆起するその凶暴な陰茎は、意外にも、ソフトタッチで巨乳女の乳房に触れた。
激しい攻撃であればあるほど威力を増幅させて跳ね返す巨乳女の乳房。
撫でるように接触してきたその弱々しい陰茎を跳ね返す事はない。
だが当然巨乳女にダメージもない。
巨乳女「……」
男「……」
巨乳女「……乳をつついて何になる?」
男「つつかないさ」
陰茎と乳房は密着している。弾力を確かめるように、陰茎は少しだけ乳房に沈んでいる。
男の陰茎がぴくりと動いた。
正確には、回った。
周囲の密着している肌も、陰茎の動きに合わせて少しだけ、シワをつくる。
男「ねじりあげるッッ!!!!」
ギュルルルルルルル!!!!
巨乳女「!!?」
男の陰茎が勢い良く回転し始めた。
陰茎で円を描くのではない。陰茎自身がドリルのように回転しているのだ。
柔らかく弾力性を持った巨乳女の乳房は、回転に巻き込まれて、菊花のようにうずを巻いた。
陰茎術秘技『菊一文字』とは、一切の衝撃を生み出さずに、相手の皮膚を巻取り、ねじ上げて攻撃する特異な性質の技である。
巨乳女「ッ……」
ギュルルルルル!!
男「お前が跳ね返せるのは衝撃」
男「この技は衝撃を生まない。陰茎が完全に相手と密着した0距離で繰り出す」
男「フォークでスパゲッティを巻くように、お前の乳房を巻き込んで離さない」
男「あらゆるモノを跳ね返す……弾力性を持ちつつも柔軟性を備えたお前の乳房」
男「この技をかけるにうってつけのようだぜ」
ギュルル……ルル……ル……!
巨乳女「ふふ……」
男「……」
ギギギ……ギギ……!
巨乳女「確かにな」
男「……」
巨乳女「こんな攻撃は今まで見た事がなかったよ」
男「……」
巨乳女「だが……どうした?」
男「……」
ギギッ……ギギギ……
巨乳女「それ以上陰茎は回らないのか?」
巨乳女「私の乳房は武器だ。どんな形にねじられようと痛みはない」
巨乳女「それよりもお前……動けないだろ?」
男「……」ググッ……
巨乳女「あいにくだが、からめとったのは私のほうらしいな」
男「……」
巨乳女「このまま膠着状態を続けるか」
男「……」
巨乳女「なんの意味がある……ふふ」
男「……」
巨乳女「……」
男「……」
巨乳女「……無駄なあがきはよせ」イラッ
巨乳女「お前はすでに詰んでいるというのがわからないのか!!」
巨乳女「時間稼ぎに意味は無い……!」
巨乳女「貴様も武人なら潔く散れッ!! 恥を晒すなッ!!」
男「意味ならある」
巨乳女「なにっ!?」
男「俺は狙って時間稼ぎをしているという事だ」
巨乳女「貴様に仲間がいない事は知っている!! こんな深い雑木林の中で助けを待つのは無駄だ!!」
男「助っ人ならくる」
巨乳女「戯言をッ……!!」
男「戯言じゃない」
ギギギ……ギギッ……
男「俺が」
男「俺が……さっき」
男「効きもしない、それどころか跳ね返される『乱れ牡丹』を」
男「何故連射したと思う」
男「挑発のためだけじゃない」
巨乳女「またそれかっ……くだらない御託を並べるのがお前の戦い方か」
男「今度は違う。くるぞ。助っ人が」
メキッ……
巨乳女「……なに?」
メキメキッ……メキッ……
巨乳女「なんだ……この音は」
男「俺の『乱れ牡丹』だけでアレを倒すのは無理があった」
巨乳女「なんの……つもりだ」
男「お前に跳ね返してもらって、威力を倍増させる必要があった」
メキッ……
バキキィッ メキメキメキィッ
バキバキィッ……
巨乳女「おいっ……何の話だ!! 私の後ろでなっているこのイヤな音はなんだッ!!」
男「後ろを振り向いてみろ。首くらい動かせるだろ」
巨乳女「まさか……!!」クルッ
バキッ!!!!
バキバキバキィッ!! メシシッ!!!
巨乳女「バカなッッ……!!!」
その音の発生源は巨乳女の背後、こちらに倒れたがっている大木。
幹にいくつも空いた風穴によって、バランスを崩し、自重によって徐々に角度を変えていく。
樹皮はバリバリと剥がれ落ち、こちらに向かって確実に傾いてきている。
巨乳女「貴様ッ……二人揃って大木に潰される気か!」
男「お前は俺より圧倒的に速い」
男「背後にしか死角がないにも関わらず、お前の背後をとることは不可能だ」
男「苦肉の策だが……コレしかなかった」
巨乳女「は、離せ……今すぐ陰茎を離せ!! 貴様もつぶれるんだぞ!!」
男「ことわる。『菊一文字』は痛みを与えるのが目的じゃない」
ギギギッ……ギギ……ギ!
男「最初からお前をこの場に固定するためだ……!!」
巨乳女「ぐっ、きっさま……離せっ! 離せぇぇぇぇぇ!!」
バキャッ。
乾いた音がはじけた。
大木を真っ直ぐと支える決定的な何かが、折れて砕けた音だと、巨乳女は理解した。
大木が加速する。
男「終わりだ」
二人もろとも下敷きにしようと、こちらへ倒れてくる。
巨乳女「くっそっ……!!」
巨乳女は、自らの乳房を変質化させた。
大木が倒れてくるその数瞬で、持ち前の反射神経を極限まで稼働させて。
弾力を捨て、硬度を捨て、柔らかく、プリンのような乳房へと変化させた。
絞るようにねじりあげていた陰茎から、乳房がほどける。
すかさず背後を向く。
巨乳女(すぐさまもう一度!!)
巨乳女(乳房を変質化させる!!)
巨乳女(硬度と弾力性を兼ね揃えた、たとえ大木だろうと跳ね返すような乳房にッ!!)
巨乳女(私なら間に合うッ!! 私なら防げるッ!!)
巨乳女(我が武術に隙はないッ!!!!)
バインッ。
「ッ……」
2つの、ゴム球のような乳房が、波打った。
大木はもと来た道を巻き戻り、一時的に直立したものの、勢いが死にきらず、向こう側に倒れて地響きをあげる。
巨乳女「ッ……」
巨乳女は防御に成功したのだ。
迫り来る大木は既に巨乳女のうなじ付近まで近づいていた。
にも関わらず振り返り、乳房の精密なコントロールを巧みに成し遂げ、巨大な木の幹を吹き飛ばしてみせた。
紛れも無い達人技だった。
『魔乳護身術』伝承者の中であっても、巨乳女以外でコレほどの身のこなしが出来る人間はいないだろう。
一点の無駄もない完壁な動きだった。
彼女の反射速度は本物だった。
巨乳女「……」
だが――――。
男「……前後同時の攻撃は」
巨乳女「……」
男「さすがのお前も受けきれなかったようだな」
巨乳女「きさ……」
動いていた。
『菊一文字』でねじ上げられた乳房をほどいた瞬間、男も巨乳女と同じく動いていた。
大木が迫り来る刹那、その選択が2人の運命を分けた。
膠着状態から解かれ、自由になった瞬間、巨乳女は防御のために動いた。
男はただ攻撃するために動いた。
流れるような速度で、何の迷いもなく、身の丈ほどもある陰茎を上段に振り上げ、攻撃態勢をとっていた。
繰り出されるのは陰茎術秘技のうち、最も基本となる、上段から振り下ろした陰茎で、相手の頭部を打ち砕く打撃技。
大木が跳ね返る瞬間と同時に、男の打撃は、自分に背を向けた巨乳女の、『隙だらけ』の頭部に届いていた。
巨乳女「」ドサッ
男「陰茎術秘技『勃ち鼎』」
男「……」
男「……」
男「……」
男「っ……」フラ
男「こ、こいつ……」ズサッ
男「強かった……陰唇術のあいつもだが……こいつはやばかった……!」
男「っ……」ズキン
男「ハァ……ハァ」
巨乳女「」
男「わるいな……デカ乳」
男「大木に潰されて共倒れなんて気はさらさらなかった」
男「お前が防いでくれるのを期待してたよ……ある意味じゃお前の防御性能を信頼してた」
男「チキンレースに勝ったってとこだ……」
フラフラッ
男「さてっ……と……」
男(まずい……)
男(『鶯の谷渡り』を……使いすぎた)
男(負担が大きい技なのに)
男(ちんこが痛い……体中あちこちが軋む)
男(こいつらの仲間はあと何人いる)
男(この状態で俺は勝てるのか……?)
男(もし仲間がいるとしたら、さっきのデカチチが最強クラスである事を願う)
男(こんなにかよ)
男(こんなに強い奴らがまだいたのか……)
男(井の中の蛙だった)
男(真っ向勝負で勝てないのは親父だけだと……過信していた)
男(俺はまだまだ弱い)
男(だけど)
男(だからこそ……)
男(俺は今たぎっているのも……確かだ)
男(海綿体が熱く充血している)
男(俺より強い奴がいるというなら超えてやる)
男(廃マンションはすぐ目の前だ)
男(あの中に……囚われた友と……まだ見ぬ敵がいる)
男(向かうしかない)
男(引き下がるつもりはない)
男(陰茎術は攻めの1手……)
男「ハァ……ハァ」
巨乳女「」プルン
男「ハァ……」
巨乳女「」
男「……」
男「チチ……」
男「放り出したまま失神してたら風邪ひくだろうから……」ヌギヌギ
男「上着……かしといてやるよ……」
バサァッ
巨乳女「」
男「なあ親父……見てろ」
男「何人仲間がいようが関係ねえ」
男「全員叩き潰して……俺は最強になる……!!」
デブ男「……」
根暗女「……」
デブ男「さっきの音きいた?」
根暗女「うん……音っていうか……衝撃」
デブ男「この建物のすぐ外ね」
根暗女「何か大きいものが倒れるような音……」
デブ男「なんの音か、だいたい検討はつくわ」
根暗女「きっと巨乳女が何かと交戦中……もしくは決着」
友(男……すぐそこまで来てるのか?)
デブ男「思ったよりやってくれるわね」
根暗女「うん……相手は間違いなく陰茎術」
デブ男「巨乳女が負けた可能性も考えなきゃね」
根暗女「……」
根暗女「【あの人】が……」
デブ男「……」
根暗女「何故あそこまで陰茎術を警戒しているか……わかった」
デブ男「……」
根暗女「何故私達四人を組ませたのか……その意味が」
デブ男「陰茎術使いが強者なら、【あの人】がじきじきに戦えばいいのにね」
根暗女「……デブ男」
デブ男「あら。彼の命令に口答えするつもりはないわよ?」
根暗女「確かに……【あの人】が自ら戦えば」
根暗女「どんな武術家相手でも……」
根暗女「間違いなく勝てるのに……とは思う」
デブ男「でしょ?」
根暗女「陰茎術の使い手は発展途上の高校生と聞く……【あの人】もまだきっと……実力を測りかねているんだ」
デブ男「美少女ちゃんが負けた。巨乳女ちゃんもまだ帰ってない」
根暗女「……」
デブ男「もし」
根暗女「……」
デブ男「もしも私達が負けたら」
根暗女「……」
デブ男「【あの人】は私達をどうする気かしらね」
根暗女「言うまでもない……」
デブ男「……」
根暗女「【あの人】は強者だけを求めている……弱者は必要とされない」
デブ男「……」
根暗女「おそらくは……というか……確実に」
根暗女「私達四人とも……」
根暗女「【あの人】に殺される」
デブ男「そうね」
デブ男「【あの人】は私達を拾ってくれたけど」
デブ男「何の感情もなく私達を殺せるでしょうねぇ」
デブ男「きっと親愛みたいなものも感じてない」
デブ男「【あの人】は何も感じない。何も感じないまま人を殺せる」
デブ男「残忍……冷酷……」
デブ男「恐ろしく……無表情で……無敵で……最強」
デブ男「敵に回したくないからこそ、ついていきたいと思う」
根暗女「そんな……」
根暗女「裏社会の武術家の中でも……ダントツに強く……恐れられている【あの人】が」
根暗女「唯一……『油断するな』と言った陰茎術」
デブ男「その伝承者が……すぐそばに潜んでいるってわけ」
根暗女「私達がやることはひとつ……」
友「っ……」モゴモゴ
友(おいおい)
友(こいつら何の話をしてるんだか、わからないけども)
友(【あの人】ってなんだ?)
友(そんなにヤバイやつが上にいるのか?)
友(こいつらは……そいつに命令されている)
友(こんな強いオーラをまとった奴らが)
友(【あの人】という存在に怯えている?)
友(殺されるだって!?)
友(おいおい、男……本気でやばいんじゃねーのか)
友(とてつもなくやばいやつに目をつけられたんじゃないのか……!!)
友(強者を求め、弱者は平気で殺す……)
友(【あの人】……?)
友(一体)
友(一体どんな奴なんだ……)
――――――――
――――――
――――
――
…
チュッ……チュパッ……
アムアム……
チュゥゥゥ……レロレロ……
風俗嬢「んっ……んっ……」レロレロ
【……】
風俗嬢「レロ……チュゥゥゥ……ぷっは」
【……】
風俗嬢「ご、ごめんねお客さん」
【……】
風俗嬢「私が下手だからかな……お客さんのおち○ちん、勃起しないね」
【感じないんだ】
風俗嬢「え?」
【俺は不感症だから】
風俗嬢「え……ぁ」
【続けろ】
風俗嬢「う、うん……」
パクッ
チュッチュッ……チュパチュパ……
ジュルルッ……
風俗嬢「んっ、んっ」
【……】
風俗嬢「んっ、んっ」
【……】
風俗嬢「んっ、んっ」
【……来る】
ガチャッ!!
風俗嬢「えっ?」
【……】
ヤクザ1「おらぁ!! ここにいたか!!」
ヤクザ2「ようやく見つけたぞ……!!」
風俗嬢「え、えっ……?」
ヤクザ3「てめえはどいてろ売女!!」グイッ
風俗嬢「きゃっ……髪をつかまないでっ!!」
【……】
ヤクザ1「おい……てめぇ……!」
【遅かったな】
風俗嬢「なっ、なに! なんなの!?」
ヤクザ1「こんな田舎の風俗店に隠れてやがるとはなぁ!!」
【……】
ヤクザ2「うちの若頭を殺したのはテメーだな」
ヤクザ3「こいつが例の不感症の男か……」
ヤクザ1「ああ。【あの人】と呼ばれている男だ」スルッ
風俗嬢(っ……刃物を持ってる!?)
風俗嬢(なにが起きているの!?)
風俗嬢(この人達、その筋の人だろうけど)
風俗嬢(この店のしのぎとは関係ないはず……見たことがない顔だもの!)
風俗嬢(この3人がいる組の若頭を殺した!?)
風俗嬢(このお客さんが?)
ヤクザ2「てめえ、こら。何すました顔してんだ」
【……】
ヤクザ1「いっぺん事務所まで来てもらうが、その前にここでシメてやるからよ。ブルってみせろや」
【……何故だ】
【何故なんだ】
ヤクザ1「あぁ!!?」
【何故】
【何故に俺は】
【何も感じないんだ】
ヤクザ1「何をぶつくさと……」
【チンピラ三人に囲まれているのに】
【三人ともドスを持っていて、俺は素手……局部を露出したままの】
【この絶望的状況で何故俺は何も感じないんだ】
ヤクザ2「おいコイツ薬のきめすぎじゃねぇのか」
ヤクザ3「気ィぬくな……武闘派の若頭を素手で殺しやがった男だぞ」
【俺は感じない】
【危機感も焦燥感も……】
【お前らごときでは……何も感じない】
【俺は不感症なんだ】
【試してみてくれ】
【できることなら感じさせてくれ】
【俺は】
【命のやりとりの中でしか勃起できないんだ】
【頼むから】
【どんな手を使ってもいい……俺を感じさせてくれ】
ヤクザ1「このシャブキメ野郎がッ!!」
ヤクザ2「ゴタゴタ気持ち悪い事ほざいてんじゃねえ、てめえの命でッ」
ヤクザ3「落とし前つけさせたらぁ!!」ジャキッッ
風俗嬢「きゃっ!!」
風俗嬢は部屋の隅でただ震えている事しか出来なかった。
許容範囲を超えた恐怖は、風俗嬢に目をつむる事さえ許さなかった。
仕事上、暴力団の人間と接する機会もあった。客との流血沙汰のトラブルも少なくなかった。
風俗嬢が怯えているのは刃物を持っていた暴力団員ではない。
数秒で部屋は真っ赤に染まった。
血液とローションが混じった赤く粘りけのある水たまりに沈む、2人の暴力団員が何かをうめいている。
防刃チョッキを着ているのに何故だ。何故俺は横たわっている。
そうやって、か細くしきりにうめいている。
一方あと一人、立ち尽くしている暴力団員は無傷である。一切の外傷がない。
ただ口から垂れ流すヨダレを顎まで滴らせ、半開きの目で虚空を眺めて動かない。
魂を無くしたマネキンのように直立している。
天井に飛び散った鮮血と、その男の顎から滴り落ちる唾液が、一定のリズムを刻んで、静寂に水滴音を鳴らしている。
【やはり】
【お前らでは俺は感じなかった】
【時間潰しをしていても本命のほうから連絡はない】
【俺から向かおう。陰茎術伝承者の息子】
【お前は俺を感じさせてくれるだろうか】
繰り返す。
風俗嬢が怯えているのは刃物を持っていた暴力団員ではない。
――――――――
友「……」
友「……」
友「……」
ガタッ
友「っ」
男「友!」
友「おほこっ!」モゴモゴ
男「待たせて悪かったな!」ザッ
友「っ……」
男「しかし全裸で亀甲縛りされた挙句、天井から吊るしあげられているお前の姿なんて見たくなかったぜ」ヘヘヘ
友「んっ、んー……んんん!」モゴモゴ
男「なんだ?」
友「おほこっ、うひほら!」
男「ギャグボールかまされてて何言ってるかわかんねーよ。ド変態めが」
友「うひほらぁ!!」
男「ったく、そんなに助けが嬉しかったのか?」
友「ひはぅっ!!」
男「心配しなくても今とってやるからな」スッ
カポッ
友「ぷはっ……!」
男「まあお前が無事でなにより――」
友「違う!! 後ろだッッ!!」
男「?」
ドゴォォォッ!!!!
友「うわっ……!!」
パラパラ……
デブ男「あらあらあらぁ~~~!?」ゴゴゴ
デブ男「ほんとに巨乳女ちゃんを倒したみたいねぇ!!」
デブ男「まさか自力でここを特定して、単身乗り込んでくるだなんて思いもしなかったわぁ!!」
ザザッ……
男「ぶん殴ったコンクリ床を粉々にするそのパンチ力……」
デブ男「あらぁ?」
男「相当な使い手だな」
デブ男「よく躱したわね? いい動きだわ」
男「お前が最後の1人か」
友「まだだ男ッ! まだもう一人いるッ!!」
シュン シュン シュン…
シュシュンッ!!
男「ッ」
男「なんッ……」
ズシャッ!!
男「ぐぁッ!?」
男(なんだ……腕が切り裂かれた!?)
男(なにで攻撃された!!?)
男「テメエかッ……!!」
根暗女「……」スッ
根暗女「ようこそ……陰茎術伝承者」
根暗女「あなたが相当の腕を持っていることは……あなたがここにいるという事実が証明している」
根暗女「最後は私とそこのデブ男……2人で相手をするよ……」
デブ男「そういう事。悪く思わないでね」
男「ッ……」ジャリッ
根暗女「私達は……陰の世界の武人……卑怯などという言葉は通じない」
男「へっ、同意見だよ」
友「男気をつけろ! そいつらもかなり強いはずだ!!」
男「わかってる」
男(二体一か……)
男(想定の範囲内……!)
男(陰唇術と魔乳護身術……俺が倒した2つの武術の共通点は陰の古武術ということ)
男(残りの仲間も陰の武術家で固めているというのは想像にかたくなかった)
男(そして陰の武術家は陰茎術しかり、ほとんどの流派が昔の時代で滅んでいる)
男(仲間が残っていても3人ほどだと推測していた)
男(二体一は……マシな状況)
男(まぁ勝てるかはどうかは別だけどな……)
男「そこで待ってろ友」
友「……!」
男「俺の本当の力を見せてやる……すぐに終わらせてやるからな」
根暗女「やってみなよ……」
根暗女「ん……」グググ
根暗女「っ……ぇろっ」
ベロォォォッ
男「舌……?」
根暗女「私は陰の古武術『舌拳』の使い手……」
根暗女「江戸時代前期から代々続く、自らの舌を武器とした暗殺拳……」
根暗女「一族が持つ特異体質と修行で手に入れた……伸縮自在の舌で」
根暗女「あなたをしゃぶりつくして……切り刻む……!!」ベロンッッ
シュバッッ!!!!
根暗女「舌技『連撃口淫斬』……!!」
男「『流鏑馬』ッッ!!」
バババババババッ!!!!
根暗女「!」
ガガガガガガガガガ!!!!!
根暗女「へぇ……私の舌の連撃を全て受け止めている……やるね」
ガガガガガガガガガ!!!!
男(こいつの舌……!)
男(同じ連打でも陰茎術のそれとは違う! 直線的な動きじゃない!)
男(不規則に、蛇のように宙を動きまわってやがる……!!)
デブ男「あらぁ、私の相手もしてくれなきゃダメよぉ?」
男「ッ!!」
デブ男「ほぉぉぉぉおおおおおおお!!!!」メキメキメキィッ
バリバリバリィッ
男(なんだこのデブ! 服が破れて全裸になった!?)
デブ男「ふしゅゥぅ……!!」ムキムキィ
男(しかも自分の裸体に直接、荒縄を巻きつけている!)
男(自分で自分を縛っている!?)
男「なんて変態野郎だッ!!」
デブ男「私の流派は『緊縛拳法』ッ……」
デブ男「人体に存在する経絡を、的確に縄で締め付けて、気の流れを操作し、身体能力を強化させる技を持つ!!」
デブ男「特殊な緊縛方によって人間の限界を超えた腕力をとくと思い知りなさい!!」
デブ男「『菱縄剛撃』ッッ!!!!」ブンッッ
男「くそっ……!!」
ドグシャァァァアアアアッッ!!!!!
友「お、男ぉー!!」
友「くそっ……俺も加勢したい、したいがッ」
友「縛られてちゃ……動くことすらできねえ……!!」
ザザァッ
男「ッ……」
男(舌で戦う女は……スピードと手数!)
男(縄に縛られたデブは圧倒的な火力!)
男(この2人をまとめて相手にするのはキツイぜ……!)
根暗女「隙あり……!」
ビュンッッ
男「あがぁっ!?」ズシャァッ
根暗女「陰茎術……あなたはこのまま私が仕留める……」
男「みっ……『乱れ牡丹』ッ!!」ジャキッ
ドピュドピュドピュッ!!
根暗女「舌技『口淫旋風陣』……」
根暗女(プロペラのように、伸ばした自らの舌を回転させて、精液を弾き飛ばす……!)
バシバシバシバシィッ!!
男「くそっ!!」
デブ男「後ろよお」ガバッッ
男「このデブ……!」
デブ男「死になさいっ」
男「それはテメエだ『勃ち鼎』ッッ!!」ビュンッ
ガキィィィンッ
男「――――ッ」
デブ男「無駄よぉ!! 私のこのはちきれんばかりの筋肉と脂肪の前ではぁ!!」グググッ
男「正面から俺の打撃を受けきるだとぉ……!!」グググッ
デブ男「『強制緊縛』ッ!!」
シュルルッ
男(っ……ヤツの手から荒縄が伸びてくる!?)
ギュルルルッ……!
ギチ……ギチ……!
男(俺の右腕に……縄が絡みついた……!)グググッ
男(クソ……ほどかないと……)ググッ
男(っ……?)グッ…
デブ男「『強制緊縛・亀甲式』」
男「な、なんでだ……縛られている右腕から……力がぬけてゆく」
デブ男「人体の経絡を縛り上げ自らを強化する『緊縛拳法』」
デブ男「利用するのは人体強化のツボだけじゃあないわ」
デブ男「私の亀甲縛りは、その位置さえ微妙にずらせば、とらえたものの気の流れを乱し」
デブ男「身体機能を弱体化させる事も可能……」
男「な……んだ……と」ググ…
デブ男「食らって血反吐ぶちまけなぁ!!」
男「友を亀甲縛りしているのには理由があったのかッ……!!」
デブ男「人体強化による強烈な正拳『菱縄剛撃』ッッ!!!!」
ドグシャァァッ!!!!
男「ごふっ」
ビチャチャッ
男「っ……」
男(血……あれ……?)
男(この血……俺が吐いたのか……)
男(やばいイマ意識が一瞬とん)
根暗女「舌技『貫舌突き』」
ドスッッ
男「かッはァ……!!」
男(腹に……ヤツの舌が突き刺さッ……)
男(やばいっ、やば)
グラッ
男(あ、足がふらつくっ……こらえろ……)
デブ男「はああああああ!!」
ドゴォッ!!
男「がっはッ」
根暗女「っ…………!!」
ズシュゥゥッ!!
男「あぎッ」
ドゴッ バキャッ メキィッ
ズシャッ ザクザクッ ズンッ
男「ぎゃあっ……!!」
男「ぐがっ! がふっ!」
男「ぐああぁっ!!」
男(やばいッ……逃れるすべがないッ)
男(攻撃を受け続けている――)
男(『鶯の谷渡り』で仕切りなおすッ……!!)ジャキッ
ガッ……
デブ男「!?」
根暗女「!?」
男(――あ)
男(れ――?)
ドサァァッ
男(こけた……?)
男(つ、使いすぎたのか……?)
男(『鶯の谷渡り』は陰茎に大きく負担をかける移動方)
男(人を跳ね飛ばすような、硬さと柔軟さ、しなやかなバネのような陰茎は……この疲労度じゃ作れない)
男(ちくしょう……!)ググッ
デブ男「『強制緊縛・亀甲式』」
シュルルルルルルッ
ガシィッッ!!
男「あっ……」
男(全身を……荒縄で縛られた)
男(力がぬけていくのがわかる……)
男(長時間血の通わない体勢をとって、痺れて感覚のない足のような)
男(全身のちからがぬけて、しびれてゆく)
根暗女「舌技……」
シュルルッ
男(荒縄に縛られた上に……さらにヤツの舌が巻き付い……)
グンッッ!!
男「っ……」
根暗女「鍛え上げた舌の筋肉で、相手に巻きつき、空中に持ち上げて……叩き落とす」
根暗女「『口淫イズナ落とし』…………」
グイッッ――――
男「ッ――――」
グチャッッ!!!!
男「ごふっ……!!」
友「男ぉぉぉぉ―ッッ!!!!」
男「ヒュー……ヒュー……」
男「な……縄を……」
男「巻き付いた荒縄を……はずさな……ければ」
デブ男「無駄よ。一度巻き付いたらあなたの力でほどく事は無理」
根暗女「もう一度……天井まで持ち上げて……叩き落とす」
グググッ
男「あぁ……ッ」
男(地面がッ……地面が遠のいていく)
男(縄のせいで……力がぬけて受け身がとれない……)
ビュンッッッ
男「ッッ……!!」
ビュォォォオオオオッッ―――――
根暗女「『口淫イズナ落とし』ッ……!!」
ドグチャァァァァッ!!!!
男「がはァッ!!!!」
友「男ッ……」
男「ッ……」ピクッピクッ
友「お、おいお前らやめろぉ!!」
デブ男「なに?」
友「そこまでやる必要があるか! 死んじまうよ!!」
デブ男「命が惜しいなら黙ってなさい」
根暗女「あなたは部外者……偶然そこにいるだけ」
友「部外者だろうが関係あるかぁ!! 俺はボクサーだ!! こんな戦い俺は認めねえ!!」
友「二体一で勝って嬉しいのかこの卑怯者共ッ!!」
デブ男「二体一の状況を作ることも強さ、二体一で戦わざるをえない状況を作ってしまうのは弱さ」
友「はぁ!?」
根暗女「私達はそうやって教わってきた……【あの人】に」
友「……!」
デブ男「強さっていうのはね、ぼく? リングの上だけで決まるようなものではないの」
友「卑怯者の屁理屈だね! 男には一対一で勝てないから!」
根暗女「卑怯という言葉自体がもはや場違い……」
男「ハァ……ハァ」
根暗女「これは試合じゃないよ……点数もないし、判定もない……」
根暗女「達人同士の命のやりとり……」
根暗女「あなたみたいなスポーツマンにはきっと一生理解できない……」
友「ッ……」
ビュンッ
ドグチャァッッ!!!!
「ぐああああッ!!」
友(男……男……ッ!)
友(ちくしょう!!)
友(俺はなんのためにトレーニングしてきた!!)
ビュンッ
ゴシャアァァアッッ!!!!
「がはあっあぁぁ!!」
友(男が、親友が死んじまう……殺されそうなのに!!)
友(何もできずに見ていろってのかよ……!!!!)
友「ッ――」
―――――『またいじめられてたのか、友』―――――
『ま、もう大丈夫だ』
『いじめっこたちは俺が倒してやったかんな』
『え? あはは!』
『しんぱいすんな! 俺はつよい!』
『いんけーじゅつの使い手だから!』
『あ、でもあんまり他の人にはいっちゃだめだぞ?』
『ん……?』
『なんで男くんはそんなに強いの? って……』
『そりゃすごいしゅぎょーしてるからさ』
『小学校にあがるまえから、つよくなるために毎日しゅぎょーしてるんだ!』
『きついシュギョーだぞ~。お前なら泣いちゃうかもなぁ~』
『イヤじゃないのって?』
『んー……イヤじゃないなあ、辛い時もあるけどさ』
『強くなれたら誰だって嬉しいもんだろ?』
『俺はさいきょーをめざしてるからな!』
『さいきょーになってどうするの? って』
『そりゃどんどん強くなるんだよ!!』
『そしたら誰にもいじめられなくなるんだ』
『くやしかったらお前もつよくなれ!』
『え?』
『いやぁ……お前にいんけーじゅつは無理だろうなぁ』
『だって……そりゃ……まあ』
『で、でもあれだ、お前パンチ力とかあるから、あれだ』
『中学あがったらぼくしんぐとかさ、そういうの始めたら?』
『そんで強くなったら誰にもいじめられなくなるぜ!』
『お前のことをいじめる男子もいなくなるさ!!』
『友、お前は女だけど、だからって強くなっちゃいけないわけじゃないんだ』
グググッ
メキメキメキ メキキィッ
友「うっ……ぁぁぁ……!」
デブ男「無駄よ。その亀甲縛りは屈強なプロレスラーだろうとほどけない」
根暗女「まして女のあなたには……ね」
友「知るかテメエも女だろうが……!」グググ
男「……友……っ」
友「ハァッ……ハァ……!」
デブ男「経絡を完全に抑えてあるのよ。無理に動けば気の流れがめちゃくちゃになるわ」
友「知るか知るか知るかぁ……!!」グググググッッ
根暗女「廃人になる可能性もある……」
デブ男「ふふふ、若さね。死にたいならお好きにどうぞ」
男「やめろっ、友……俺が負けたら、お前は解放されるんだッ……」
男「お前は俺が巻き込んだ……無茶するな……やめろぉッ」
友「巻き込まれた? 知るかッ……!」
友「お前だってさんざん俺の問題に首つっこんできたくせに!」
男「っ……」
友「たのんでもいねえのに、俺を助けてくれたくせにぃ!!」
男「そんなのは……」
男「ガキの時の話じゃねぇか、バ……」
男「バカヤロぉ……!」ググッ……
友「ガキの時の話がどうした!!」
友「あの頃のお前の言葉で俺はいま高校生女子ボクシングチャンピオンやってんだ……!」
友「強さってのは……二体一で寄ってたかって相手をいたぶる事じゃねえ!!」
友「それがたとえ、ちんこを振り回して相手を引っ叩くような……ヘンテコな戦い方だろうとッ」
友「そこで横たわってるそいつみたいに! 何かを守るために使うものだ! それが強さだッ!! それが武術だッ!!」
友「お前らのそれは武力じゃねえッッ!!!! 暴力だッッ!!!!」ググッ
友「武術家の片隅にもおけねえ卑怯者共がぁぁぁぁぁぁぁ!!」ググググググッ!!!!
バラッ!!
デブ男「!!!!」
根暗女「ばっ……」
ズダンッ
友「ふぅぅぅぅうぅぅー……!!」
根暗女「ばかな…………」
デブ男「全身の経絡のツボを荒縄で的確に刺激して、弱体化させているはずなのに」
デブ男「指一本動かすので精一杯のはずなのに!」
デブ男「動くどころかッ! 力ずくで縄をぬけたッ!?」
友「うあああッッ!!」バッッ
友「男から離れろクソヤロォォォォォ!!」
ダッダッダッダッッッ!!
根暗女「でも……デブ男……」
デブ男「ええ、そうね」
友「ああああああああッ!!」ダダダダダッ
根暗女「強制緊縛から脱したその馬鹿力と……爆発力には恐るべきものがあるけれど」
デブ男「所詮表世界のスポーツ選手」
根暗女「…………」レロォォン
デブ男「私達裏の人間にとっては恐るに足らぬ相手」ムキムキ……
友「うおおおおおおおッ!!!!!!」バッッ
デブ男「一撃でその頭くだいてあげるわッッ!!!」
根暗女「私はその肢体を切り刻むッッ……!」
デブ男「『菱縄剛撃』ッッ!!!!!!」ゴォォォッ!!!
根暗女「舌技『連撃口淫斬』…………ッッ!!!!!!」ババババババゥッ!!!!
デブ男(死ね!! 死ね!! 死ね!!)
根暗女(死ね……死ね……死ね……!!)
友「ッ――――」
その刹那は、大量分泌する自身の脳内麻薬に引き伸ばされ、とてもゆっくりした時間に感じた。
前方2方向から突き刺すような殺意を向けられても、友はひるまない。
決して目をつむらない。
一度でも瞬きをすればその時には自分は見るも無残な骸へと変えられている。だから友はひるまない。
友は理解している。
悲しいほどに断絶する、その力量の彼我差を理解していた。
どれだけ自分が強くなっても男にはかなわなかったから。
手合わせをしたことこそないが、する必要もないほどに圧倒的な力の差があった。
そんな男をああしてズタボロに虐げている二人組に自分が勝てるわけはない。
だが、男をズタボロに虐げている事こそが、友が立ち向かう理由なのだ。
理屈では分かっていても堪えられない拳がある。
抑えてはいけない拳がある。
たとえ自分がここで命を失う事になったとしても――
友「これが俺の本望だッッッ!!!!!!!」
ガクンッッ
デブ男「ッ……!?」
ありえない事だった。
向かい来る友へとその凶悪な拳を振りぬかんとしている、デブ男が、何故か突然体勢を崩した。
グラッッ
根暗女「ッ……!!」
根暗女も同じだった。
デブ男に飛び込む友の身へ、八つ裂きにするべく鋭利に研ぎすませた舌を伸ばしているさなか、何故か体勢を崩した。
友を狙う拳と舌が、同時に軌道をそらしていく。
何故だ。
根暗女の繰り出す舌技の早業なら、たとえ体勢を崩そうとも友の喉元をえぐる事は可能だった。
だが、根暗女は思考してしまった。
何故自分は体勢を崩しているのだ、と。
(膝が熱い。攻撃を受けている。防御しなければ)
生物の本能が一瞬、そう考えてしまった。
気付いたら刹那のうちに、ぎょろりと回した目玉で、部屋中を見回している自分がいた。
陰茎術の男は確かに立ち上がっている。
こちらに向かってきている。
だが奴はまだ遠い。
奴が攻撃を繰り出してくるのは、これからだ。
陰茎術の男が何かをしてきた様子ではない。
じゃあ誰が――――。
――視界にちらりと映った影がある。
知らないシルエットではない。見慣れた姿だ。
何故お前がそこに――――。
根暗女は自分に攻撃を加えた人間の正体を理解した。
目の前には男が迫っている。0.2秒後には陰茎の打撃を浴びせられているだろう。防御は間に合わない。
友へと伸ばした舌が帰ってくるのは0.4秒後。
限界まで引き伸ばされた、その一瞬は終わる。
友「コークスクリュー・ブローォォォォオオオオ!!!!」
ドグシャッッ!!
デブ男「ぐぎゃぶッッ……!!!!」
男「陰茎術秘技『勃ち鼎』ッッッッ!!!!」
ズガンッッ!!
根暗女「あぎゃッッ……!!!!」
男と友の繰り出した渾身の一撃は、同時に敵へと届いていた。
デブ男「がふぅっ!!」ドサァッ
根暗女「うあッ……!!」ゴロゴロ
友「ハァッ、ハァッ……男!!」
男「バカヤロウ無茶しやがってテメエ!!」
友「知るか! 無茶してるのはお前のほうだろーが!!」
男「お前だ、お前のほうが無茶してた! 俺は全然余裕だけど!」
友「無茶してねーよ……へへへ」
男「な、なに笑ってるの気持ち悪い」
友「きもちわるくねえ!!」
男「それよりもさっき……」
友「え?」
男「気づかなかったのか?」
友「なにがだ?」
男(デブの足元に……)
男(白く、透明の水たまりが広がっている……)
根暗女「なッ……なんで……! なんであなたが邪魔をする……!!」
美少女「陰唇術秘技『カム・アズ・ユーアー』」
デブ男「美少女ォ……てめぇ……!!」
美少女「デブ男の足元に広がってる水たまりは私の愛液です。それで足を滑らせました」
根暗女「美少女……!!」
美少女「あなたの膝を撃ちぬいたのは陰唇術秘技『ペニーロイヤルティー』」
根暗女「ッッ……!!」ギリリ
友「や、奴はッ……!!」
男「美少女!!」
美少女「一時間ぶりですね男さん。そしてそのご友人」
友「男気をつけろ……あいつが俺を呼び出してッ」
男「い、いや」
友「……?」
美少女「友さん。すいませんでした」ペコッ
友「……は?」
男「……」
美少女「関係ないあなたを巻き込んで、怪我をさせ、許してもらおうとは思いません」
友「……」
美少女「ですが謝罪だけはさせてください」
友「え、いや……ええと」
美少女「本当に申し訳ございませんでした!!」ペコッ
友「っ……お、男?」
男「なるほど。こういう事か」
友「は?」
男「昨日の敵は今日のなんとかっていうだろ? 拳をまじえて打ち解ける事ってあるんだな」
美少女「正確には私と男さんがまじえたのは陰唇と陰茎です……本当にすいませんでした……!!」
友「は!!? おい男!!!??」
デブ男「なんでテメエが邪魔をするんだ、ああ!? 美少女ォ!!」
美少女「……目が覚めたからです」
デブ男「なんだと!?」
美少女「私は陰茎術の奥義の真髄で脳に直接ダメージを受けた」
美少女「そのとき憑き物がとれたんです」
美少女「【あの人】の洗脳から解放されたというべきですかね」
根暗女「逆らう気なの……許されないよ……」
デブ男「陰唇術一派の残党! お前の母親が死んでから誰がお前をそこまで強くしたと思ってる!! 【あの人】のおかげだ!!」
美少女「それでも私は男さんに救われた」
男「……」
美少女「私は気づきました」
美少女「私は武術に対する執着がない」
美少女「本当は小さい頃から普通の暮らしがしたかっただけ」
美少女「陰茎術を目の敵にしていたのも」
美少女「彼を破ることが出来た時、この因縁を脱して、普通の生活が送れる……そう信じていたから」
美少女「ただそれだけの事」
美少女「強さへの執着など最初から興味はありませんでした」
美少女「たとえ【あの人】に逆らうことになろうとも」
美少女「私はこれから自分のために戦う」
美少女「自分のしたいことをする……!」
デブ男「後悔するんじゃあねーぞ」
根暗女「あなたは裏切り者だ……仮に私達を倒しても……【あの人】を敵に回すことになる」
デブ男「お前は間違いなく殺される!!」
根暗女「あなたは今……自分の命をむざむざ捨てようとしている……」
美少女「ッ……」
男「お前ら聞いていればあの人あの人と」
美少女「男さん……」
男「そんなにソイツが怖いのか。武術家のくせに長いモノに巻かれて楽しいか」
デブ男「テメエには分からんさッ!!」
根暗女「【あの人】の戦いを少しでも見れば……そんな大口はたたけなくなる……!」
デブ男「【あの人】は陰の武術家の中でも最強の人!!」
根暗女「【あの人】にかかれば陰茎術伝承者……お前もその命を失うことになる……」
友「まるでカルトだぜ……」
男「……」
友「男?」
男「最強……か」
男「俺はガキの頃から常々考えていた事があった」
男「最強とはどうやって証明するのか」
男「スポーツ選手なら公式大会がある」
男「何度も何度も大会に勝ち続け、世界大会へ進出」
男「そこで勝てば最強の肩書は間違いないものになるだろう」
男「だが俺たち陰の武術家に大会はない」
男「目の前の敵をひた倒していても、本当の強者と巡り合わないうちに一生を終えるのは当然だ」
男「お前らの……」
男「お前らの言う【あの人】が」
男「【あの人】とやらの強さが本物なら」
男「本当にそいつが最強であるとしたなら」
男「こんなに手っ取り早い話はない」
デブ男「イカレ野郎がッ……」
根暗女「そうだよ……狂ってる……」
根暗女「命知らずにも程がある……」
男「命知らずじゃないさ」
デブ男「……」ググッ
友「……」ピク
デブ男「そんなに死にてえならこの場で俺が、殺してやる……!!」グググググッ
友「立ち上がれるならな」
デブ男「っ……」フラッ
友「全国一位の実力はダテじゃねえ」
友「俺の大振りのブローをまともに顎に受けたんだ」
友「脳は相当ゆれてると思うよ」
デブ男「くそっ、くそっ! くそがあああ!!!」グググッ
友「お前ら揃いも揃って陰の武術だかなんだか知らねえが」
友「表舞台の俺の」
友「お前らがスポーツマンとなめきった俺の」
友「何の変哲もないボクシングの一撃……」
友「効かないってんなら立ってみせろ」
デブ男「うごぉぉぉぉおおお……!!」グググ
男「友は強いよ。それは俺がよく知ってる」
友「っ」
男「お前らひょっとして友と一対一でやっても負けたんじゃねえか」
友「お……男」
男「強烈な悪臭さえなければお前らは友をとらえることも出来なかっただろうな」
美少女「……」
友「男。後ろで美少女が土下座してるから見てあげてくれ」グイグイ
根暗女「私もそれなりに経験を積んできた……だからこそわかる……」
根暗女「あなたは強い……きっとすごく強い……」
根暗女「私達四人のうちでは最も腕の立つ巨乳女をサシで倒したのだから……」
男「やっぱりあいつが最強クラスだったのか」
根暗女「でも……その巨乳女も【あの人】には遠く及ばない……!」
根暗女「次元が違う……」
根暗女「絶対に勝てない相手というのは……存在する……」
男「お前ら、デブと根暗」
男「お前ら2人と巨乳女で何故差がついたか今理解できたよ」
男「あいつは自分の武術が最強だと信じていた」
男「信念があった」
男「不意打ちを仕掛けた俺にも正々堂々一対一で向かってきた」
男「卑怯が悪とは俺も思わない。だがお前らは自分を信じていない」
デブ男「……」
根暗女「なにを……何を知ったような口を……!」
デブ男「根暗女ちゃん」
根暗女「っ……」
デブ男「何を言っても聞く耳持たないわ」
根暗女「…………!」
デブ男「こんなイカれた奴にはね……」
男「俺は狂人じゃない。武術家だ!」
友「ふふ」
美少女「……昔からこんな感じだったんですか? 男さんって」
友「何も変わってないよ」
男「俺なりのやり方で陰茎術の最強を証明しようとしているだけ」
男「心配しなくても【あの人】は俺が倒してやる」
男「そいつに打ち勝ったそのときが俺にとっての世界優勝だ!!」
友「昔から……武術バカで」
美少女「……」
友「無鉄砲……脳筋……」
美少女「はい……」
友「弱い者いじめがきらいで……まっすぐで」
友「つよくて」
友「信念があって」
友「一緒にいると楽しくて」
友「俺の……」
友「あこがれだった……」
美少女「……」クスッ
男「お前らがビビってるからはっきり言うぞ!!」
男「【あの人】とやらには!!」
デブ男「……」
根暗女「……」
男「俺が!!」
友「っ……」ニコッ
美少女「……」クス
男「最強を証明するためのッ!!」
男「指標になってもらうッッ!!!!」
【よく言った】
デブ男「――」
根暗女「――」
美少女「――」
友「――」
男「――」
続き
男「俺のちんこはこの世で最も強い」【後編】