1 : VIPに... - 2013/05/28 22:31:10.52 fUIvQenp0 1/23アイドルマスター シャイニーフェスタの[edeN]を題材としたスレです。
初投稿で拙い所が多いと思いますが、よろしくお願いします。
元スレ
美希「ハニーは蛇さんだね!シャー!!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1369747870/
「…っ!!……っっ!!!」
ショーウィンドウのガラスを両手で全力で叩く。
届かない声を、無駄だと知りながら、必死で、全力で張り上げる。
只怖い、只々、恐ろしい。
俺を、俺を置いて、行かないで。
そんな俺を金色の髪の少女は悲しそうに見つめる。
薄く色付いた唇が、微かに、ゆっくりと、動く。
「……」
「…………」
俺には聴こえない、聴こえないけど、知っている。
あれは。あの、言葉は。
「ハニー」
と
「ごめんね」
だ。
美希「へぇ、だからアダムとイヴは楽園を追放されちゃったんだ?」
P「そう、ついでに言うとアダムとイヴに知恵の林檎を勧めた蛇はその罰で地上を這うようになったとも言われてる」
美希「え?と言う事は…蛇って元々足があったの?」
P「うん、そう言われているな、手もあったんだぞ?」
美希「あはは、それじゃトカゲとかイグアナなの」
P「ん?そういやそうだな…ま、まぁ、神話ってのはどれでもどこかオカシイ所があるモノさ」
美希「ねえ、ハニー?…今回のPV…ミキ達はイヴなのかな…」
P「そうだな……いや、解釈は任せる!気持ちを込めて最高のPVにしてくれ!!」
美希「はいなの!!」
ひらり、と軽やかにステップを踏んだ美希は何かに気が付いたようにこっちを向く。
美希「ねぇ?ハニー?」
P「ん?何だ?」
美希「ミキ達をキラキラさせるハニーは」
美希「蛇さんだね!!シャーー!!」
イタズラ心一杯の笑顔で口を開き牙を向ける美希。
P「……バカな事言ってないで、ほら、真も雪歩も貴音も待っているぞ?」
美希「アハッ☆行ってくるの~」
その顔が妙に引っかかって。
P「蛇、か」
俺は、心の中に蜷[トグロ]を巻いた気がした。
アダムとイヴの神話をベースに、禁断の恋愛を歌う曲。
サンプルが届き、律子と聴いた時にこの曲の可能性に身震いした。
そして、美希、真、雪歩、貴音の声がこの曲にハマった時に
彼女達の、そして、自身の環境すら変えてしまう
ともすれば、薄ら寒いと形容されるような、そんな、気持ちになった。
「凄い曲になる、これは…凄い曲になるぞ」
発するのを止められなかった声を呟き、スタジオに向き直る。
ふと
ライトを一杯に浴びる彼女達を見た時
暗がりから彼女達を見る自分に、自分自身に
どうしようもない感情を抱いた。
それは、まるで蛇が
翼のある生物を、憧れの眼で見つめるような
そんな、感情。
「これで美希達はもっともっと羽ばたく」
この言葉は、そんな感情を振り切るため、喉からか細く出た、俺の、声。
『そうだな、俺の、届かない場所まで、羽ばたくんだろうな』
この言葉は、妙にハッキリとした、それでいて諦めの感情を孕んだ、俺の、声。
「トップアイドルになってそれで」
精一杯希望の言葉を紡ぐ。
『それで?俺は、俺は……どうするんだ?』
が、それは、絶望の言葉に遮られる。
「……お前…誰…だよ……誰だよ!お前!!」
堪らず、叫んだ。
『お前に、覚悟はあるのか?』
「…覚悟?」
『見てみろ、俺と彼女達の違いを』
「…」
『俺が、彼女達を、キラキラさせる?』
「…俺は」
『俺のお陰で、彼女達は、輝く事ができる?』
「…俺は彼女達の……」
『その結果、俺は』
「…」
『そんな瞳で彼女達を見ている』
「…」
『視えているか?』
「視えて?何を」
『そんな瞳で視えているのか?』
「だから、何を…」
『彼女達は、最終的に』
「…っ!!」
『俺を、捨てるよ』
「覚悟…しているさ…」
『出来ていない』
「出来ている…よ」
『解るんだよ、俺は、お前だ…』
「…」
『だからこそ、お前にはまだチャンスがある…』
「チャンス?」
『触れるか?この手に』
「何を…?」
『知恵の林檎だ』
「バカらしい…」
『欲しいさ』
「…欲しくない」
『知恵の林檎にまず触れたのはイヴだ』
「…欲しくない!」
『イヴは自分が林檎を齧り、次にアダムを誘う』
「…欲しくない!!俺は!俺のまま!!彼女達を!!!」
『そうか…』
気が付けば、俺はショーウィンドウの中に居た。
あぁ、ここは…。
PVで使われた【楽園】の世界。
【彼女】達は此処から、禁断の果実に触れ。
【楽園】から追放されるのだ。
ガラス越しに外を見ると、世界は先程までのCGに使うブルーシートでは無く。
瓦礫の地面と、暗闇を切り裂く大量の流星が流れる空。
追放されたイヴ達が向かう世界が広がっていた。
俺はショーウィンドウのガラスを両手で押すと、あらん限りの声で叫んだ。
不安。
恐怖。
焦燥。
混じりに混じった声を、吐き出した。
だけど、その世界では、俺の声は聞こえない。
ガラスの先にではなく。
俺自身にも
俺の声は、聞こえない。
ガラスを叩いて、痺れる両手で、顔を覆い。
子供のように声を上げても
何も無い。
しばらく手の中の暗闇に落ち
助けを求めるように
そう、まるで
慈悲を求める赤子のように、顔を上げると。
金髪の少女がこちらを見つめていた。
若草色の瞳は微かに潤み
俺を
とても
とても、悲しそうな瞳で見つめていた。
俺は彼女の名前を叫ぶ
「……っ!」
聴こえないと解っていても
「……っ!………っ!!」
何度も、何度も、何度も
「……っ!………っ!!…っ!!………ーーっっ!!!!!」
叫んだ。
彼女は俺の直ぐ傍に跪くと
聴こえない、か細い声で
「……」
「…………」
と
呟いた。
俺には聴こえない、聴こえないけど、知っている。
あれは。あの、言葉は。
「ハニー」
と
「ごめんね」
だ。
彼女はショーウィンドウの中の俺に瞳を合わせると
そっとガラスに手を触れた。
それが何を意味するかは、直ぐに理解った。
『イヴは自分が林檎を齧り、次にアダムを誘う』
俺を
『お前に、覚悟はあるのか?』
俺を置いて
『彼女達は、最終的に』
俺を置いて、行かないでっ!!
美希っ!
『俺を、捨てるよ』
気が付けば、世界は俺と彼女だけになっていた。
黒一面の世界の中で
彼女は満月のように輝いていて。
俺は
只の泥のように暗く、くすんでいた。
彼女は、まるで、俺を許すような瞳で視ている。
きっと彼女の掌に、俺の掌を合わせれば。
俺も、彼女と肩を並べて
歩む事ができる様になる。
表情を無くした彼女の顔を視て、一つ頷くと。
俺は彼女の掌に、俺の掌を近づける。
その時。
もう一度だけと、顔を上げ彼女の顔を見た時
何故だろうか、彼女の声が頭に響いたのだ。
美希「ミキ達をキラキラさせるハニーは」
美希「蛇さんだね!!シャーー!!」
「…」
『よう』
「…」
『よく帰ってきた』
「帰ってきた…か」
『残される方を選んだのか?』
「彼女達には…」
『頼らない、自分で林檎は齧ると?』
「…」
『さあ、手を』
「…」
『どうした?欲しいのだろう?』
「あぁ、欲しい、それこそ、喉から手が出るくらいな」
『ならば手を出せ』
「…あぁ、そうだ、知っていたか?」
『…?』
「俺は楽園からはとっくに出ていたんだよ」
『知恵の林檎に触れてもいないのに?』
「触れるも何も必要ない、それにそんな事できやしない、だって…」
「蛇には、手も、足も、無いんだよ」
「……に?……ハニー?……ハニー!?」
P「っ!!」
美希「ねえ?ハニー?大丈夫」
P「…美希?か?」
美希「?……そだよ?ミキはミキだよ?」
P「…そう…か、そうだよな、美希は美希だ…」
美希「…変なハニー」
P「あぁ、いや、ごめん、そうだな、撮影は順調か!?」
美希「うんっ!ミキね!この曲、絶対凄い事になると思う!凄くドキドキして!キラキラしてると思うな!」
P「…」
美希「…ハニー?」
P「ああ、そうだな!俺も、そう思うよ!!」
ああ、そうだ。
俺は彼女達と違う。
違い過ぎる程違う。
でも
彼女達をここへ引き摺り出した【蛇】だって言うならば。
どこまでも這いずって、着いて行くよ。
いくら高みに上って、途方も無い程、彼女達が遠くなっても。
その分輝いて見えるならば
追い続けることは、できるから。
『驚いたな、アダムになる気は無いと』
「お前が【そう】言うという事は【そう】思っていたって事か、馬鹿だな、俺は」
『【そう】思うのは勝手だが、俺はお前に、また、直ぐに会いにくるさ』
「冗談は辞めてくれ、蛇はアダムじゃあ無い」
『それでも、お前には伸ばせば届く手がある』
「それなら俺は、今、俺がたった一つ出せる【口】を使って、こう、言うよ」
「もう、二度と来るな、シャー!!」
了
24 : VIPに... - 2013/05/28 23:14:22.77 fUIvQenp0 23/23
以上となります、色々と拙い所だらけで申し訳ありません。
この作品を投稿するに当たり、協力していただいた方々に感謝します。
ありがとうございました。