1 : 以下、2... - 2014/03/25 13:58:14.59 2M4nyw5q0 1/72

「へー……暇つぶしにフリーゲームを探してみたけど、」

「今はこんなのが流行ってるんだなぁ」

「クッキーを作るだけのゲームかぁ」

「なんか微妙そうだけど……」

「『隣の部屋にラスボスがいる』とか、『星探』みたいに、ブラウザゲームってのはいいな」

「いちいちダウンロードやインストールをする必要がないのはありがたい」

「ま、とりあえずやってみるか」カチカチッ

元スレ
P「クッキークリッカー?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1395723494/

2 : 以下、2... - 2014/03/25 14:04:12.36 2M4nyw5q0 2/72

「なるほど、この大きなクッキーをクリックすると、」カチカチ

「1クリックで1枚、クッキーが焼けるわけか」カチカチ

「はー……」

「おっ、焼けたクッキー15枚で何か買えるみたいだな」

「『カーソル』……おっ、買ったら大きなクッキーに変化が出たぞ」

「毎秒0,1枚と表示されている」

「そして、何もしなくてもクッキーが焼けていく」

「なるほど、右の画面のアイテムを買うと、自動で焼けていくクッキーの数が増えるのか」

「ふむふむ、クッキーを増やして、アイテムを買う」

「そして、効率を上げてクッキーを焼いていくわけだな」

4 : 以下、2... - 2014/03/25 14:07:38.89 2M4nyw5q0 3/72

「って、やっぱり目的はクッキーか」

「RPGみたいに魔王を倒すとか、目的があればよかったんだけど……」

「ん? 何か表示されたぞ?」

「実績? ……ああ、『統計』画面の下にあるこれか」

「なるほど、これが目的なんだな」

「まだ『?』表示が多いけど……」

「これを全部埋めることがゴールなんだろうな」

5 : 以下、2... - 2014/03/25 14:10:27.09 2M4nyw5q0 4/72

「まあ、暇つぶしだし、適当にやってみるか」カチカチ

「おっ、カーソルの次のアイテムが出た」

「『グランマ』……なるほど、このお婆さんがクッキーを焼いてくれるわけか」

「クリックしたらクッキーができる、ってのよりは分かりやすいな」

「って、うわっ!? 間違えてグランマを売ってしまった!?」

「せっかく買ったのに……あーあ、『背徳』って変な実績を得てしまった」

「まあ、いいや。すぐに買い戻せるだろ」カチカチ

7 : 以下、2... - 2014/03/25 14:13:10.52 2M4nyw5q0 5/72

「グランマの次は『ファーム』」カチカチ

「農場でクッキーが採れるってどういうことだよ」カチカチ

「うわっ!? 今、なんかトナカイが飛んできた!?」カチカチ

「何だったんだ、あれ……」カチカチ

「今度は金色のクッキーが出てきたぞ?」カチカチ

「とりあえず、クリックを……」カチ

「おお!? クッキー生産量が7倍になった!?」

「あ、でも、時間制限つきか……」カチカチ

8 : 以下、2... - 2014/03/25 14:16:06.65 2M4nyw5q0 6/72

「なるほど、コツがつかめてきたぞ」カチカチ

「増やしたアイテムはなるべく新しいアイテムに回して、」カチカチ

「余裕で買えるようになったら『アップグレードアイテム』も買う」カチカチ

「そして、基礎生産力を上げておいて……」カチカチ

「ゴールデンクッキーでバースト!!!!」カチカチカチカチカチカチカチカチカチ!

9 : 以下、2... - 2014/03/25 14:19:42.74 2M4nyw5q0 7/72

「トナカイはクリックしてつかまえたら、クッキーをくれるんだよな」カチカチ

「ゴールデンクッキーの効果中につかまえたら、これも7倍になるから」カチカチ

「なるべく、ゴールデンクッキーは消えるギリギリで発動させるようにして……」カチカチ

「あっ、来た! ゴールデンクッキー発動だ!」カチ!

「ぐあああ!? 7倍効果じゃなくて、クッキーゲット効果が出た!」

「くそー……次のチャンスを狙うぞ……」カチカチカチカチカチカチ

カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ

カチカチカチカチカチカチカチカチ

カチカチカチカチカチカチ……

10 : 以下、2... - 2014/03/25 14:21:17.10 2M4nyw5q0 8/72

「おはようございまーす」

小鳥「はい、おはようございます」

小鳥「って、あれ? 寝不足ですか? クマができていますよ」

「ははは……実は、あるゲームにはまっちゃいまして」

小鳥「あるゲーム?」

「クッキークリッカーってフリーゲームでして」

小鳥「ああ、あれですか」

12 : 以下、2... - 2014/03/25 14:23:18.23 2M4nyw5q0 9/72

「小鳥さんも知っているんですか?」

小鳥「ええ。話題になった時にやってみました」

小鳥「意外にはまるんですよね、あれ」

小鳥「くだらないとは思いながらも、気がついたら夢中になっていました」

「そうなんですよね」ハハハ

13 : 以下、2... - 2014/03/25 14:25:59.16 2M4nyw5q0 10/72

「ゴールデンクッキーやトナカイを見逃さないために、昨夜はずっとモニターに注視してて……」

「キリがいいところまで、キリがいいところまでってやっていたら、気づけば三時を回っていました」

「慌ててベッドに横になってからも、クッキーのことが気になって……」

「おかげで、あんまり眠れませんでしたよ」ハハハ

小鳥「分かります、分かります」

14 : 以下、2... - 2014/03/25 14:30:23.36 2M4nyw5q0 11/72

小鳥「私もアチーブメントのために、クリックの鬼と化していました」

小鳥「特に、777倍バーストの時は、16連打もかくやという勢いで……」

律子「へえ、そうですか」

小鳥「ピエッ!?」ビクッ!?

律子「仕事をしている割には、クリック音が激しいと思いましたが……」

律子「まさか、職場でゲームをしていたなんて、ね」

小鳥「あわわわわわわ……」ガタガタ

15 : 以下、2... - 2014/03/25 14:32:44.47 2M4nyw5q0 12/72

律子「もう許しませんよ!」

律子「小鳥さんのパソコンにはフィルターをかけさせてもらいます!」

小鳥「それだけはー! それだけはー!!」

律子「問答無用!!」

ドタバタ……

「やれやれ。小鳥さんは相変わらずだな」

「とはいえ、俺もゲームで仕事に支障をきたしたらいけない」

「今日は張り切っていくぞ!!」

16 : 以下、2... - 2014/03/25 14:36:16.58 2M4nyw5q0 13/72

春香「その意気ですよ、プロデューサーさん!」

「おっ、春香か。おはよう」

春香「はい、おはようございます!」

「春香は今日も元気がいいな」

「それに、今日も甘い匂いがする」

「何を作ってきたんだ?」

春香「はい、クッキーです」

「クッキー、なあ」ククッ

春香「?」

17 : 以下、2... - 2014/03/25 14:38:15.90 2M4nyw5q0 14/72

春香「どうかしたんですか?」

「いや、なに。今、クッキーのゲームにハマっててな」

「それに、小鳥さんが律子に怒られているのも、そのクッキーのゲームのことでだ」

「タイムリーだなと思ってな」ププッ

春香「そうですね」ウフフ

18 : 以下、2... - 2014/03/25 14:39:50.62 2M4nyw5q0 15/72

春香「でも、クッキーのゲームって珍しいですね」

春香「パズルものですか? それとも料理もの?」

「いや……あれは何というか」

「クッキーを作るゲームだ。うん」

春香「うん? だとすると、料理ものですか?」

「いや、そうじゃないんだ」

春香「ええ?」

19 : 以下、2... - 2014/03/25 14:43:49.73 2M4nyw5q0 16/72

「確かに、雇ったお婆ちゃんがクッキーを焼いてはくれるんだが……」

「農場でクッキーを採取したり、宇宙船を飛ばして、クッキー星からクッキーを取ってきたりするんだ」

春香「は、はい?」

「他にも、錬金術で金をクッキーに変えたり、クッキー次元からクッキーを取り出したりもするんだが……」

春香「ちょ、ちょっと待ってください」

春香「クッキーの話ですよね?」

「ああ、そうだ」

「秒間数万、数億と焼き上がるクッキーの話だ」

春香「」

20 : 以下、2... - 2014/03/25 14:47:53.97 2M4nyw5q0 17/72

「そして、焼き上がったクッキーを通貨代わりに、工場を建てたり宇宙船を作ったりするわけだが」

「次の目標は反物質コンデンサーだな」

「反物質を凝縮してクッキーを作る機械なんだが、」

「これ一台で、秒間999,999枚もクッキーを作ることができるんだ!」

「どうだ、ワクワクするだろう?」

春香「何だか、話だけで胸やけしそうです……」

22 : 以下、2... - 2014/03/25 14:50:44.98 2M4nyw5q0 18/72

春香「まあ、ゲームもいいですけど、現実のクッキーもいいものですよ」

春香「はい、どうぞ」

春香「私のは秒間数万枚の大量生産品じゃなくて、手作りクッキーですよ」ニコッ

「おお、ありがとう」

「うん、うまい。やっぱり春香のクッキーはおいしいな」

春香「えへへ。ありがとうございます」

23 : 以下、2... - 2014/03/25 14:52:05.55 2M4nyw5q0 19/72

「よーし、元気出た!」

「今日も一日、仕事を頑張るぞー!」

春香「おー!」



律子「あっ、こら! 小鳥さん!?」ドタバタ

小鳥「フィルター反対! フィルター反対ー!!」ドタバタ

24 : 以下、2... - 2014/03/25 14:54:56.78 2M4nyw5q0 20/72

~その夜~

「ふー、今日も疲れた」

「昼飯を食べるヒマもなかった」

「春香のクッキーがなければヤバかったな……」

「っと、そうだ。クッキーといえば!」

「どれどれ……おお、一日放置していたら、こんなにクッキーが溜まるのか!」

「パソコンのつけっぱなしなんて、電気がもったいないと思ったけど……」

「これだけのクッキー量を前にすると、細かいことが吹き飛んでいくな」

25 : 以下、2... - 2014/03/25 14:57:48.52 2M4nyw5q0 21/72

「よしよし、これで反物質コンデンサーが買える」

「しかも複数台買えるぞ」ムフフ

「これで一気にクッキー生産量を増やして……」

「おおお、すごい。秒間生産量が何倍にもなった」

「これでクッキー作りがはかどるな……」

「って、んん? なんだ、このアップグレードアイテム」

「『ビンゴセンター/研究施設』……?」

30 : 以下、2... - 2014/03/25 21:34:35.21 2M4nyw5q0 22/72

「グランマの生産力が4倍になる……すごいアイテムだな!」

「これは買わない手はない。ぽちっとな」カチ

「よーし、よしよし。それじゃ、今夜もクッキーを焼くか!」

「ふんふんふーん♪」カチカチ

「ん? 統計ページの『スペシャル』に新しい項目が増えているな」

「『29分』? 29分経つと、どうなるんだ?」

「ちょっと待ってみるか」カチカチ

31 : 以下、2... - 2014/03/25 21:36:51.97 2M4nyw5q0 23/72

「29分経ったが……おっ、新しいアップグレードアイテムが増えた!」

「そして、項目の数値が30分になった」

「なるほどな……研究施設でクッキーの研究を行っているわけだな」

「それで、成果が出るのが30分ごとってわけか」

「ふふふ、さすがクッキークリッカー」

「ここに来て、飽きさせない仕組みの発動とは恐れ入る」カチカチ

32 : 以下、2... - 2014/03/25 21:43:49.72 2M4nyw5q0 24/72

「特殊チョコレートチップを購入!」

「三十分後、デザイナーココア豆を購入!」

「どんどん増えるぞ! 次の研究アイテムは……」

「……ん? 儀式的のべ棒?」

「なんか、いきなり悪魔的なアイテムになったな」

「説明文も物騒だし……まあ、いいや」カチッ

「それで、次のアイテムは……地獄のオーブン?」

「これ、買うとやばいやつじゃなかろうか」

33 : 以下、2... - 2014/03/25 21:45:49.38 2M4nyw5q0 25/72

「まあ、買うけど」カチッ

「ふふふ、どんどん生産効率が上がっていく」

「次々とできあがっていくクッキーを見るのは気持ちいいな」

「悪魔の手を借りてでも、もっともっと増やしたいものだな」フフフ

「さて、また30分経ったぞ」

「次のアイテムは……ワン・マインド?」

34 : 以下、2... - 2014/03/25 21:48:51.20 2M4nyw5q0 26/72

「『我は個にして全。全にして個』……説明文だけ見るとわけ分からんな」

「まあ、買ってみるか」カチッ

『警告! ここから先はずっと下り坂です!』

『それでもこのアイテムを購入しますか?』

「っ!?」ビクッ

「何だこれ……どういうことだ?」

「下り坂って……ええい、臆病者にはクッキーは焼けない!」

「ここまで来たら購入あるのみだ! でないと、次の研究アイテムが買えない!」

「ワン・マインド、購入だ!」カチッ

35 : 以下、2... - 2014/03/25 21:50:35.89 2M4nyw5q0 27/72

「……」

「ふー、何も起きないじゃないか」

「ハッタリか。ははは」

「さーて、生産効率が上がったグランマでも増員するか」

「グランマは、っと……」

「っ!?」ビクッ

36 : 以下、2... - 2014/03/25 21:54:25.45 2M4nyw5q0 28/72

「何だこれ……!?」

「グランマの目が赤黒く光っている……!?」

「さっきの研究アイテムのせいか?」カチカチ

「うわっ、統計ページにまた新しい項目が増えてる!」

「グランマの状態……『覚醒』」

「何に目覚めたっていうんだよ……」

37 : 以下、2... - 2014/03/25 21:56:53.50 2M4nyw5q0 29/72

『医師ら、目に生気がなく口から泡を出す老婦人の集団に囲まれる!』

『診断書、老婦人の周囲に「奇妙なクッキー生地の臭い」!』

『数百万人もの老婦人が失踪!』

「画面に表示されるニュースも物騒なものになってるし……」

「もしかして、あれは本当に買っちゃいけないアイテムだったのか?」

38 : 以下、2... - 2014/03/25 21:58:35.88 2M4nyw5q0 30/72

「って、うわっ!?」

「クッキーに変な怪物がたかりはじめたぞ!」

「うわわわわ……! この化け物、クッキーを喰ってるのか?」

「クッキーの生産効率が下がっている!」

「それに、何だ、この赤いクッキーは!?」

「ゴールデンクッキーじゃないのか!?」

39 : 以下、2... - 2014/03/25 22:01:34.65 2M4nyw5q0 31/72

「と、とりあえずクリックしてみるか……」オソルオソル

「ぐわあああ!? 生産効率が7倍になるどころか、逆に半減したぞ!?」

「なんだこれ!? これ、全部あのアイテムのせいか!」

「くそー……警告に従っておけばよかった」

「てっきり、冗談か何かと思ったのに……」

「……ええい、でも、毒を食らわば皿までだ!」

「こうなったら、最後まで研究アイテムを買ってやる!」

41 : 以下、2... - 2014/03/25 22:03:52.43 2M4nyw5q0 32/72

グランマの状態……『覚醒』から『不満』へ

『各地でギラついた目をした恐ろしい老婆の集団を目撃!』

『混乱した町では奇妙な老婆たちが幼児を連れ去り、クッキー用の調理器具を強奪しようと住宅に侵入!』

『ストリートで硬直した老婆、生暖かい砂糖の液体を分泌する!』

「……」カチカチ

42 : 以下、2... - 2014/03/25 22:05:21.49 2M4nyw5q0 33/72

グランマの状態……『不満』から『怒り』へ

『肉の建造物に変貌している最中の硬直した「老婆」の残骸が発見される!』

『悪夢は続く、驚異的な速度で萎びた大量の肉塊は拡大する!』

『大陸の巨大な「肉のハイウェイ」の痕跡は各地のクッキー施設を繋いでいた!』

「……」カチカチ

43 : 以下、2... - 2014/03/25 22:07:37.25 2M4nyw5q0 34/72

「……」カチカチ

「……」カチカチ

「……と、とんでもないことになったぞ」

「研究アイテムを買うにつれ、グランマの見た目が崩れていって……」

「今では、グランマは萎びた肉の怪物とも呼べる姿に変わってしまっている」

「ニュースを読む限りでは、こうなったグランマたちが世界を蹂躙しているみたいだけど……」

「それでもクッキーを焼き続けているのは、逆に怖いところだな」

44 : 以下、2... - 2014/03/25 22:11:09.65 2M4nyw5q0 35/72

「でも、最後の最後に希望は残されていた」

「『誓約』と『契約』。怒れるグランマを元に戻すアイテムだ」

「研究アイテムの最後が、このふたつだなんて……本当に助かったよ」

「これで、グランマの生産効率はそのままに、この悪夢を終わらせることができる」

「よーし、それじゃさっそく、『契約』を……」

「ああ、ダメだ。これを買うと総生産力がグッと下がってしまうらしい」

「時間制限つきだけど、『誓約』の方を買うか……」カチッ

45 : 以下、2... - 2014/03/25 22:14:52.42 2M4nyw5q0 36/72

「ああ、よかった」

「グランマは元のおばあちゃんに戻って……」

「クッキーにたかる怪物も出なくなった」

「赤いクッキーも、ゴールデンクッキーに戻ったぞ」

「これで心置きなくクッキーづくりに励めるな」カチカチ

「って、うわっ!? もうこんな時間か」

「誓約の効果時間がまだ残っているから、ここで放置するのはもったいないけど……」

「ええい、でも、寝ないと明日、もたないぞ!」

46 : 以下、2... - 2014/03/25 22:17:07.32 2M4nyw5q0 37/72

「それじゃ、寝るか」

「……」

「ちょっとだけなら……」

「いや、いかんいかん」

「さっさと眠ってしまおう」ガバッ

「……」

「……zzz」




????『始まったわ』

グ?ン?『もうすぐすべてが終わる』

グランマ『止めることもできたはずよ』

47 : 以下、2... - 2014/03/25 22:20:28.63 2M4nyw5q0 38/72

~一週間後~

「いやー、順調、順調♪」

小鳥「プロデューサーさん、ご機嫌ですね」

小鳥「何かいいことでもあったのですか?」

「いやあ、実はですね。とうとうクッキークリッカーで、『ファイナル・クロース』を買えまして」

「ここまでが長かったのですが……その分、感慨もひとしおでしたね」

小鳥「ああ、続けていたのですね、クッキークリッカー」

48 : 以下、2... - 2014/03/25 22:22:36.38 2M4nyw5q0 39/72

「そうなんですよ。自分でもびっくりです」

「まさか、クッキーを焼くだけのゲームにここまでハマるとは」

「寝ても覚めてもクッキーのことを考えてしまいます」

小鳥「妙な中毒性がありますよね、あれ」フフッ

小鳥「私も一時期、クッキーの生産力を伸ばすことしか考えていませんでした」

「ははは、ですよね」

50 : 以下、2... - 2014/03/25 22:31:28.86 2M4nyw5q0 40/72

小鳥「それにしても、最近、クッキーの話題が多いですね」

小鳥「春香ちゃんもすっかりクッキー作りにハマっちゃったみたいです」

小鳥「今日もほら、あんなにクッキーを焼いてきて……」ウフフ

「春香、ですか?」



春香「千早ちゃん、今日はチョコチップクッキーを焼いてきたよ!」

春香「遠慮しないで、たくさん食べてね!」

千早「ええ、ありがとう春香」

千早「でも、ちょっと多過ぎじゃないかしら」

千早「バスケットいっぱいのクッキーって……」

春香「大丈夫だよ! もっと焼けるから」

千早「いえ、そういうことじゃ……」

51 : 以下、2... - 2014/03/25 22:33:31.56 2M4nyw5q0 41/72

小鳥「そのうち、事務所がクッキーで埋まっちゃいそうですね」フフッ

「……」

小鳥「プロデューサーさん? どうかしましたか?」

「いえ、その……春香なんですが」

「先ほど、レッスン場で別れたばかりなんです」

「用事を済ませてから戻るって言ってましたけど……」

「もう戻ってきたのか?」

「いや、それにしては早すぎるような……こっちは車で直帰だぞ」

52 : 以下、2... - 2014/03/25 22:36:06.99 2M4nyw5q0 42/72

小鳥「考えすぎじゃないですか?」

小鳥「現にここにいるってことは、何かしらの移動手段があったんですよ」

「ですかね」

「まあ、本人に聞けば分かることか」

「おーい、春香。ちょっと聞きたいことが」

「って、あれ? いなくなってる」

53 : 以下、2... - 2014/03/25 22:38:13.75 2M4nyw5q0 43/72

「千早。春香はどこに行ったんだ?」

千早「あれ? そういえば、いませんね」

千早「先ほどまでそこにいたのですが……」

「……そうか、ありがとう」

千早「いえ……?」

「……」

54 : 以下、2... - 2014/03/25 22:42:08.50 2M4nyw5q0 44/72

「……」

「まさか、な」

「考えすぎだよ、考えすぎ」

「春香がワープできるだなんて……」ハハハ

プルルルル、プルルルル

春香『はい、もしもし?』

「あっ、春香か? 俺だ、プロデューサーだ」

「ちょっと聞きたいことがあってな」

「今、どこにいるんだ?」

春香『まだ帰り道の途中です』

春香『もうすぐ事務所に着きますけど……急ぎましょうか?』

「いや、いいんだ。ゆっくり帰ってきてくれ」

春香『はい!』プツッ

「ははは、そうだよな」

「そうだよ。当然、春香はまだ帰り道のはず」

「事務所にいるわけないよな」ハハハ

「……あれ?」

「じゃあ、さっきの春香は……!?」ゾクッ 

55 : 以下、2... - 2014/03/25 22:46:27.28 2M4nyw5q0 45/72

~夜・プロデューサー宅~

「きっと、何かの勘違いだろうな」

「ドッペルゲンガーでもあるまいし、春香が2人いるだなんて」

「バカバカしい。クッキークリッカーでもやって、さっさと忘れてしまおう」

「さーて、グランマのアポカリプス……グランマポカリプスにも慣れてきたぞ」

「萎びた肉の怪物になったグランマにも見慣れたし、」

「赤いクッキー、レッドクッキーの使い方も分かった」

「効率で言えば、グランマをおかしくさせた方がいいんだよなぁ」

「始めは驚いたけど、今ではこっちの方が基本になってしまった」

56 : 以下、2... - 2014/03/25 22:49:34.59 2M4nyw5q0 46/72

「さーて、今夜もクッキーを焼くか……」プルルルル

「ん? 誰だ? ……春香か」

「こんな時間に何か用か?」

「まあ、出てみるか。もしもし?」

春香『あっ、プロデューサーさん。夜分遅くにすみません』

「おう、構わないぞ。どうした?」

春香『今日は事務所でおかしなことがあったみたいで……』

春香『プロデューサーさんも気にしていたって、小鳥さんから聞きましたから』

「ああ、あのことか」

57 : 以下、2... - 2014/03/25 22:52:11.44 2M4nyw5q0 47/72

「すまないな。あれは俺の勘違いだ」

「まさか、春香が2人もいるだなんて……」

「亜美真美じゃないんだから、そんなことあるわけないよな?」ハハハ

春香『そうですよ』

春香『私たちは、1人しかいません』

春香『たくさんいるけど、天海春香は1人しかいないんです』

「……えっ」

58 : 以下、2... - 2014/03/25 22:53:43.52 2M4nyw5q0 48/72

「それってどういう……」

ピンポーン!

「っと、お客さんみたいだ」

「すまん、春香。ちょっと待っててくれ」

春香『はい』

59 : 以下、2... - 2014/03/25 22:55:22.38 2M4nyw5q0 49/72

ピンポーン!

「はーい、今出ます!」

「こんな時間に誰だ?」

「宅配便かな……」

ピンポーン!

「はいはい、今開けます」ガチャ

春香「こんばんは、プロデューサーさん!」

60 : 以下、2... - 2014/03/25 22:57:19.44 2M4nyw5q0 50/72

「………………え?」

春香「ふふっ、どうしたんですか、そんな顔しちゃって」

春香「私ですよ、私! 天海春香です!」

春香「こんな時間にどうかと思いましたけど……」

春香「とっても美味しいクッキーが焼けたので、持ってきちゃいました!」エヘヘ

61 : 以下、2... - 2014/03/25 23:00:13.78 2M4nyw5q0 51/72

春香『プロデューサーさん。もしもし?』

春香「あっ、私と電話してたんですよね」

春香「もう切っちゃっていいですよ」

春香「私が会話すれば、私にも伝わりますから」

春香「あっ、それとも……」

春香『たくさんの私と話したいのなら……』

春香×2【もっと呼んできますよ?】

「……ぅ、ぅわぁあああああっ!?」

62 : 以下、2... - 2014/03/25 23:03:11.15 2M4nyw5q0 52/72

プルルルル、プルルルル

ドンドン、ドンドン!

ピンポーン! ピンポーン!

「夢だ……これは夢だ」

「春香が何人もいるはずがない」

「そうだ、きっと、録音した声か何かを使って……」

「俺を驚かせようとしているんだ」

63 : 以下、2... - 2014/03/25 23:05:20.60 2M4nyw5q0 53/72

「ラジオ……ラジオでも聞いて気分を紛らわせよう」

「765ラジオ……みんなの声が聞きたい」

「誰でもいい。誰か、声を聞かせて――」



春香『今夜も生放送! 765ラジオ、始まりますよー!』



「ひいっ!?」ビクッ!

64 : 以下、2... - 2014/03/25 23:09:18.70 2M4nyw5q0 54/72

春香『今日のラジオは、私こと天海春香と』

春香『この私、天海春香でお送りします!』

春香『今日も我らが765プロの歌と、』

春香『リスナーから寄せられた素敵なお便りを紹介していくのですが……』

春香『ここでなーんと! サプライズゲストの登場です!』

春香『それでは、さっそく登場していただきましょう』

春香『今夜のゲストは……天海春香ちゃんです!』

春香『はーい、みなさん、こんばんは!』

春香『春香ですよ、春香! 765プロの天海春香です!』

65 : 以下、2... - 2014/03/25 23:13:03.81 2M4nyw5q0 55/72

春香『わー、私! これはサプライズだー!』

春香『私と私。今夜もよろしくね♪』

春香『それでは、今夜も765ラジオ!』

春香『私と私と私で、盛り上げていきま――』

「もういい! もうたくさんだ!」ガシャ!!

66 : 以下、2... - 2014/03/25 23:15:10.41 2M4nyw5q0 56/72

「これは夢だ……夢なんだ」ブツブツ

「寝て起きたら覚める夢……」ブツブツ

「そうさ、今日もクッキークリッカーをして」ブツブツ

「たくさんクッキーを焼いて」ブツブツ

「疲れたらベッドで眠ろう」ブツブツ

「これまでと同じことをしていたら、同じような明日がやってくる」ブツブツ

「そうに違いないんだ」ブツブツ

67 : 以下、2... - 2014/03/25 23:18:41.53 2M4nyw5q0 57/72

(俺のささやかな願いとは裏腹に――)

(世界は、春香とクッキーで満ちていった)

(あのラジオを皮切りに、春香は次々と現れて――)

(彼女たちは、目を疑うような勢いでクッキーを焼き上げていった)

(世界は、グランマポカリプスのように、肉と生地とに埋もれていった)

(地球に、甘い匂いが充満していった――)

68 : 以下、2... - 2014/03/25 23:20:35.80 2M4nyw5q0 58/72

「いやあ、クッキークリッカーは楽しいなあ」カチカチ

「まさか、ここまでハマるとは思わなかった」カチカチ

「たかがクッキーを作るだけのゲームなのにな」ハハハ

春香『そうですね、プロデューサーさん』

「……」

69 : 以下、2... - 2014/03/25 23:23:30.90 2M4nyw5q0 59/72

春香『でも、現実のクッキーもいいものですよ』

春香『ほら、今の私なら、たくさんクッキーを作れます』

春香『いっぱい食べてくださいね♪』

(そう言って、触手からクッキーを生み出す、春香の顔をした『何か』)

(ボトボトと湿った音を立てて床に――肉とクッキーに覆われた床に落ちるクッキー)

(俺が手をつけないそれは、やがて肉に呑み込まれていって――新たなクッキーを生み出す原動力に変わる)

70 : 以下、2... - 2014/03/25 23:26:13.30 2M4nyw5q0 60/72

春香『プロデューサーさん』

春香『私、頑張ってクッキーを作りました』

春香『一枚でもいいので、食べてくれませんか?』

(化け物が『産んだ』クッキーなぞ食べるものか)

(食べてしまえばどうなるのか――俺は知っているし、)

(そもそも、俺はとっくの昔に、甘い匂いに吐き気を催すようになってしまっている)

(おかげで胃液は空っぽだ。涙さえも、もう出ない)

71 : 以下、2... - 2014/03/25 23:29:04.76 2M4nyw5q0 61/72

千早「クッキー! もっともっとクッキーを!」

律子「やったわ、クッキーよ! クッキーの山よ!」

「幸せだー。自分、幸せだぞー」

(部屋の外からは、みんなの声が聞こえる)

(俺を堕とすために集められたアイドルたちの声がする)

(春香は決して、無理やりクッキーを食べさせない)

(飢えと渇きと――こうした搦め手を使って、自発的にクッキーを食べさせようとする)

72 : 以下、2... - 2014/03/25 23:30:19.57 2M4nyw5q0 62/72

(でも、いやだ。俺はいやだ)

(たとえ飢え死にしたとしても、世界にクッキーしかなかったとしても)

(俺はクッキーなんて……食べたくない!)

(クッキーはこうして作るものだ)カチカチ

(食べ物じゃないんだ……)カチカチカチ、カチカチカチ

73 : 以下、2... - 2014/03/25 23:32:07.37 2M4nyw5q0 63/72

春香『プロデューサーさん! クッキーを食べないと死んじゃいますよ!』

春香『せめて、一枚だけでも……食べやすいように、柔らかめのクッキーを焼きましたから』

春香『意地をはっていないで、楽になりましょう? ね?』

「……」カチ……カチ……

75 : 以下、2... - 2014/03/25 23:34:03.92 2M4nyw5q0 64/72

(もう、ダメかもしれないな)カチ……

(最後の食料と水が尽きて……もう、何日経ったかな)カチ、カチ……

(クッキーを食べて、楽になるか)カチ……

(いや、それは嫌だ……)カチ……

(俺は最後まで俺でいたい……)カチカチ……

76 : 以下、2... - 2014/03/25 23:35:52.37 2M4nyw5q0 65/72

(……)カチ、カチ

(はは、バカみたいだ)カチ……

(何でこんなになっても、クッキークリッカーなんてやってるんだろ)カチ……

(思えば、これが原因かもしれないな)カチ……

(何もかもがおかしくなったのは……)カチ……

77 : 以下、2... - 2014/03/25 23:38:41.16 2M4nyw5q0 66/72

(これと関わったことを、なかったことにしたい)

(これまで焼いてきたクッキーを、全部消してしまいたい)

(そうしたら、春香も世界も、元に戻るのだろうか……)

(……)

(…………)

(…………そんなこと、できるわけ――)カチ

-Reset-

(……あ?)

78 : 以下、2... - 2014/03/25 23:41:27.21 2M4nyw5q0 67/72

「く、くくく……」

「あるじゃないか、リセットボタン」

「これを、これを押せば……」

春香『っ!?』

春香『ダメッ! プロデューサーさん、ダメ!!』

春香『リセットナンテユルサナイ!!!!』グワッ!

「はは……」

「お前らの動きよりも、俺のクリックの方が早いに――」

「決まってるだろ……」カチ

80 : 以下、2... - 2014/03/25 23:42:56.23 2M4nyw5q0 68/72

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81 : 以下、2... - 2014/03/25 23:44:44.42 2M4nyw5q0 69/72

「ふー、久しぶりの休みだな」

「丸一日、ゆっくり休めるぞ」

「とは言っても……何をしていいのやら」ハハハ

「ここまで来るのに、必死だったからな」

「この半年、ろくに休んだ覚えがないぞ」

82 : 以下、2... - 2014/03/25 23:47:12.92 2M4nyw5q0 70/72

「休日の過ごし方さえ忘れてしまったような気がするが……」

「まあ、適当に遊ぶとするか」

「どれ、半年前、買ったまま放置してたゲームでも引っ張り出すか」

「……うーん、そんな気分でもないな」

「今日やったところで、クリアできそうにもないし……」

「ちょっと摘まむ程度のゲームなんてないものか」

83 : 以下、2... - 2014/03/25 23:49:07.51 2M4nyw5q0 71/72

「……そうだ、フリーゲーム!」

「あれなら無料だし、ちょっとする分には十分楽しめる」

「しばらくぶりだけど、かえって新鮮でいいだろう」

「そうと決まれば、さっそく、パソコンを起動して……」

「フリーゲームを紹介しているブログに行って、っと」

84 : 以下、2... - 2014/03/25 23:50:50.88 2M4nyw5q0 72/72

「ここで面白いと評価されているものをやってみよう」

「さて、何がオススメなのかな……」

「……ん?」



「クッキークリッカー?」



~おわり~

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