1 : VIPに... - 2013/03/21 00:19:34.44 Uf++ANjD0 1/23


「へぇ、初耳ですね。どんな人だったんですか」

あずさ「とっても格好良い人で、困ってる私に手を差し伸べてくれました」

「あ、もしかして俺ですか!?」

あずさ「うふふ、プロデューサーさんも良い人ですけど、その人には敵いませんよ」

(……失恋した)



元スレ
あずさ「私にも、白馬の王子様が現れたときがあったんですよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363792774/

2 : VIPに... - 2013/03/21 00:20:19.64 Uf++ANjD0 2/23


「残念です。――あ、注ぎましょうか」

あずさ「お願いします。……あの人こそ、運命の人なのかもしれませんね」

「あずささんにそこまで言われるなんて、羨ましい人だ」

あずさ「あら、嫉妬してくれるんですか」

「それはもう! 腹の中が煮えくり返りますよ」

「それで、その人とはどんな関係なので?」

あずさ「大人の関係、ですよ」

(死にたい)

3 : VIPに... - 2013/03/21 00:21:37.95 Uf++ANjD0 3/23


「ええー、スキャンダルは勘弁してくださいよ……」

あずさ「冗談です。……本当は一度しか会ったことないんですよ」

「心臓に悪いなぁ。ということは一目惚れですか」

あずさ「惚れちゃいました」

「よっぽど格好良かったんですね」

あずさ「いえいえ、実は顔もよく憶えてないんです」

「さっき俺より格好良いって言ったじゃないですか」

あずさ「それは立ち振舞いのことですよ。……詳しく聞きます?」

「酒の肴としてならぜひとも」

(聞かなきゃ諦めつかんし)

4 : VIPに... - 2013/03/21 00:22:46.55 Uf++ANjD0 4/23


あずさ「あらあら、ならまた今度にしましょ」

「え、ここまできてそれは無いですよ!」

あずさ「もう随分飲んだじゃないですか。そろそろお開きにしないと、明日に響きますよ?」

「くっ……分かりました。でも今度飲むときは話してくださいね?」

あずさ「もちろんです。私だって思い出を語りたいですから」

「楽しみにしてますよ」

5 : VIPに... - 2013/03/21 00:23:54.69 Uf++ANjD0 5/23


~別れてから~

(あずささん、好きな人いたのか)

(ああ、好かれてるとか思ってた自分が恥ずかしい)

「……一人で飲み直そうかな」

6 : VIPに... - 2013/03/21 00:25:05.86 Uf++ANjD0 6/23


(ん? 携帯が震えてる。着信は――小鳥さんからだ)

「もしもし、どうしたんですか」

小鳥『あ、プロデューサーさん。唐突ですけど飲みに行きません?』

「本当に唐突ですね。……良いですよ。一人で飲もうかと思ってたので」

小鳥『やりぃ! 今どこにいます? すぐ行きますから』

「えっと、×××の前です」

小鳥『おお、入店前でギリギリセーフだったんですね』

「実はあずささんと飲んでたんですよ。なので出店直後です」

小鳥『へぇ、あずささんと……まあ良いでしょう。今から行きますね』

「分かりました。待ってますよ」

7 : VIPに... - 2013/03/21 00:26:28.66 Uf++ANjD0 7/23


小鳥「それで酷いんですよ、私が独身なのを知ってるくせに……」

(飲み始めると同時に愚痴が始まってしまった)

(というかこの人こんなんばっかだな)

「小鳥さんにも良い人ができますって」

小鳥「こんな妄想女もらってくれる人なんて……あ、プロデューサーさんが」

「俺はあずささん一筋ですんで」

小鳥「ピヨ……ならあずささんと飲んでれば良かったじゃないですか!」

「俺だってそうしたかったんですよ」

小鳥「うう、酷いです。私とあずささんの何が違うって言うんです……」

「……言って良いんですか」

8 : VIPに... - 2013/03/21 00:27:31.84 Uf++ANjD0 8/23


小鳥「言わないでください。分かってますから。……ああ、プロデューサーさんに振られちゃった」

「俺もあずささんに振られたんで、お互い様ですよ」

小鳥「え、マジですか!」

「急に元気になりやがって、この鳥は……」

小鳥「ともかくご愁傷様です。でも、プロデューサーさんとあずささんって、なかなか良い雰囲気でしたけど」

「なんでも、白馬の王子様がいたらしいですよ」

小鳥「王子様――つまり真ちゃん、まこあず、いやあずまこ? ……盲点だったわ」

「おいこら音無」

小鳥「え、あ、冗談ですよぉ!」

9 : VIPに... - 2013/03/21 00:28:42.22 Uf++ANjD0 9/23


「はぁ、やっぱり仕事仲間としてしか見られてなかったのか……」

小鳥「どんまい、どんまい。私がいますって」

「小鳥さんがいてもな……」

小鳥「そんなこと言ってると後悔しますよ! ああ、あの時小鳥さんに優しくしておけば――みたいな」

「それじゃ優しくしますんで、あずささんから何か聞いたりしてませんか。運命の人について」

小鳥「おざなりな反省ですねぇ。んー……、ダメですね。どれもお酒の席の話で、記憶が曖昧です」

「優しくするんじゃなかった」

小鳥「まだ一回もしてないでしょう!?」

10 : VIPに... - 2013/03/21 00:29:35.27 Uf++ANjD0 10/23


小鳥「そういうプロデューサーさんは何かないんですか」

「何か、とは?」

小鳥「白馬の王子様に対抗できる話ですよ」

「白馬……あ、ありました」

小鳥「あるんですか」

「プロデューサーになる数年前の話なんですけどね」

小鳥「興味深いですよ。お注ぎします」

「これはどうも。――その頃の俺は大学生でした」


11 : VIPに... - 2013/03/21 00:31:06.64 Uf++ANjD0 11/23


「ある日、暇を持て余して突発的に旅行に行ったんです」

「旅行先で特に目的なく歩いていると、道端で無料乗馬体験なる看板を提げた男が二三人がいたんですよ。気になって近づいてみたら、ちょっとくすんだ白色の馬が見えまして」

「人も疎らだったので、なんの気もなしに乗らせてもらったんです。そしたら突然馬が暴れだして、俺を乗せたまま走り出したんです」

小鳥「そんな怪しげなのに関わるからですよ」

「今となってはそう思いますよ。で、走り出した馬に必死でしがみついてると、何かにぶつかったのか馬が体を上下に揺らして、とうとう振り落とされちゃいまして」

小鳥「えらくハードな話ですね」

「それで地面に転げたら、凄い可愛い女子高生に助け起こされたんです」

小鳥「……なんですか、自慢ですか」

「そんなことはありませんよ? その時はもう恥ずかしくて恥ずかしくて……。周りに人も集まってきてたので、なんか格好つけて適当なこと喋ったあと、走って逃げちゃいましたよ」

12 : VIPに... - 2013/03/21 00:31:58.50 Uf++ANjD0 12/23


小鳥「それはキツイ……あー、お酒注ぎましょうか」

「いただきます。――まあ、俺じゃあ白馬の王子様は無理ってことですよ」

小鳥「プロデューサーさんには、一番プロデューサーが似合ってますよ」

「違いないです。天職だと思ってますからね!」

小鳥「その意気ですよ、私だって仕事が楽しいから独身なんです!」

「ですよね。仕事人間万歳!」

小鳥「独身万歳!」

小鳥「独身最高!」

ワハハハハハ……

14 : VIPに... - 2013/03/21 00:32:51.10 Uf++ANjD0 13/23


小鳥「んん……頭痛い……。いつの間に家に帰ってたんだろ……」

小鳥(そうえば、プロデューサーさんの話、なんか似たような話をどこかで聞いたような)

小鳥(どこで聞いたんだっけ? 同じくお酒を飲みながら聞いた気が)

小鳥「あー……駄目だ、頭が痛い。もう寝よ」

小鳥「ピヨピヨ……」

15 : VIPに... - 2013/03/21 00:33:40.74 Uf++ANjD0 14/23


「うげぇ……頭が痛い……」

(小鳥さんは遅れてくるらしい。あの鳥め……)

あずさ「あらあら、プロデューサーさん。私と別れた後も飲んだんですか」

「ちょっと小鳥さんと……」

あずさ「もう、ほどほどにしないとメッですよ」

「へへえ、肝に銘じます」

(天使だなぁ)

16 : VIPに... - 2013/03/21 00:34:32.29 Uf++ANjD0 15/23


数週間後

あずさ「白馬の王子様の話、ですか」

「ええ、こんどこそ聞かせてくださいよ」

(ハートブレイクの準備はできてる。骨は小鳥さんに拾ってもらおう)

あずさ「ふふ、良いですよ。あれは私が高校生の頃、修学旅行中の話です――」

17 : VIPに... - 2013/03/21 00:35:32.75 Uf++ANjD0 16/23


あずさ「自由行動中に班の皆とはぐれてしまって、途方に暮れてたんです。そうしたら、突然私に話しかけてきた人がいて」

「その人が白馬の?」

あずさ「いえ、違います。その人はなんというか、服を凄く着崩してる不良さんでした」

あずさ「内容はいまいち憶えていないんですけど、たぶんナンパされてたんでしょうね。困っちゃいました」

「俺がその場にいれば、きっとその不良をボコボコに」

あずさ「してくれました?」

「……する前に警察を呼びましたね」

あずさ「うふふ、それでも充分嬉しいですよ」

18 : VIPに... - 2013/03/21 00:37:02.98 Uf++ANjD0 17/23


あずさ「それで、助けを呼ぼうにも人通りが少ない道なのか、全然人がいないんです」

あずさ「とうとう不良さんは痺れを切らして私の手首を掴んできて……」

あずさ「そこで王子様の登場ですよ」

「ドラマみたいな話だ」

あずさ「だからこそ、運命の人かもって思ってるんです」

「くそ……俺がその場にいれば」

あずさ「あらあら、先着順ですよ?」

「繰り上げの予定は」

あずさ「今のところありませんね」


19 : VIPに... - 2013/03/21 00:38:11.06 Uf++ANjD0 18/23


あずさ「私がもう泣きそうになったとき、目の前を白馬が通ったんです」

「え?」

あずさ「白馬です」

「比喩とかじゃなくて、本当に白馬に乗った王子様なんですか!」

あずさ「最初からそう言ってるじゃないですか、もう」

20 : VIPに... - 2013/03/21 00:39:13.69 Uf++ANjD0 19/23


あずさ「不良さんは白馬に轢かれて気を失ってました。そして私の足元に、いつの間にか人が転がってたんです」

あずさ「私が声をかけると、その人はすぐに立ち上がって『大丈夫』と答えてくれたんです」

あずさ「それで『怪我は無いですか、美しいお嬢さん』って」

「こう言ったらなんですけど、キザな台詞ですね」

あずさ「その時の私には、とっても格好良く聞こえたんですよ」

あずさ「それから少し話すと、その人は走ってどこかに行っちゃいました。それで気づいたら、人通りが少なかったはずなのに、人がいっぱい集まってきてて」

あずさ「その人だかりのおかげで、班の人にも見つけてもらえたんですよ」

「……な、なんだか現実味の無い話ですね」

(釈然としない……。なんか、小鳥さんの妄想癖を知ったときと同じ気持ちが湧いてくる)

21 : VIPに... - 2013/03/21 00:41:08.50 Uf++ANjD0 20/23


あずさ「うふふ、信じれませんか。でも本当のことなんですよ?」

「ノーコメントでお願いします」

あずさ「あらあら」

「まあ、俺はあずささんとその人が、また会えることを願ってますよ」

あずさ「嫉妬してくれないんですね」

「しまくりです。いやぁ、今日も小鳥さんと飲んじゃいそうですよ」

あずさ「それなら私も混ぜてください」

「あずささんが来るなら小鳥さんはいらないです」

あずさ「小鳥さんに言いつけちゃいますよ」

「どうぞどうぞ。きっとピヨピヨ言うだけですから」

あずさ「酷い人ですね」

「心外です。愛情の裏返しですよ」

あずさ「あら、でしたら私には?」

「裏返す必要がないので」

あずさ「嬉しいですねー」

(ああ、俺がその場にいたらなぁ……はぁ)


22 : VIPに... - 2013/03/21 00:42:11.96 Uf++ANjD0 21/23


小鳥(そうだ、プロデューサーさんの話、どこかで聞いたことあると思ったら、あずささんから聞いた話に繋がるじゃない!)

小鳥(ということは、プロデューサーさんとあずささんは相思相愛……)

小鳥(言った方が良いのかしら)

小鳥「――さすがに当人が気づくか。言わなくていいや」


                          おわり

24 : VIPに... - 2013/03/21 00:43:57.40 Uf++ANjD0 22/23

小鳥さんが嫌いなわけじゃない。あずささんが好きなだけなんだ

もっとPとピヨとあずささんのSS増えろ

25 : VIPに... - 2013/03/21 00:58:07.92 Uf++ANjD0 23/23


蛇足

「ちなみに、修学旅行ってどこに行ったんです?」

あずさ「確か……×××です」

「あ、そこ俺も行ったことありますよ」

あずさ「そうなんですか。プロデューサーさんも修学旅行で?」

「いえ、俺は個人的な旅行でして。まあ、散々でしたけどね」

あずさ「あらあら、何があったんですか」

「ともかく恥をかいただけですよ。……馬に乗って街中走って、挙句に落馬して女子高生にそれを見られて」

あずさ「――あの、プロデューサーさん。それっていつ頃の話なんです?」

「え? だいたい四五年前ですけど」

あずさ「プロデューサーさんの見た女子高生って、どんな人でした?」

「えー……そうですね、よく憶えてませんけど、落ち着いてて美人さんでしたよ。だからこそ余計に恥ずかしくて」

あずさ「……えっと、その子に話しかけたりしました?」

「やっぱりよく憶えてないですけど、少しだけ話した気がしますね。野次馬が集まってきたので、すぐ逃げましたけど」

あずさ「あ、あの、プロデューサーさん。もしかしてそれって――」


                       おすまい




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