春香「えー、そうかな?ほら、この綺麗なメダカとか」
千早「犬とか猫とかなら話は分かるけど…」
響「何見てるんだ?」
春香「熱帯魚の画像だよ、響ちゃんは熱帯魚は飼わないの?」
元スレ
千早「魚はそんなには可愛いと思わないけど」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1362922259/
響「んー…他に飼ってる動物がいるからなあ、水槽にいたずらされても困るし」
春香「それもそっか、でも色んな色のメダカがいるんだね」
響「これメダカじゃなくてネオンテトラだぞ、ショップによく置いてるぞ」
春香「ネオンテトラっていうんだ」
千早「確かに色がネオンっぽいわね、春香は飼わないの?」
春香「なんか難しそうじゃない?綺麗だし可愛いけどなあ…」
千早「確かに…、春香はネオンテトラのどの辺が可愛いと思うの?」
春香「小さいところとかかな、こっちみたいな大きいのよりやっぱり小さいほうが可愛いよ」
千早「小さ…い…?」
春香・響 ハッ
響「あ!ああ~!そ、そうだよな!こう、一生懸命生きてるって感じがしてさ!」
千早「な、なるほど…、でも表情が変わらないのって寂しいと思うのだけど」
春香「…まあ魚だし?表情が変わる魚っているの?響ちゃん」
響「うーん、いないんじゃないかな…?知らないけど…」
響「まあ可愛いとか可愛くないとかは人によるだろうな、貴音もヘビ香の事怖がるし」
千早「それもそうね、そろそろ行く?我那覇さんもどうかしら」
響「どこに行くんだ?」
春香「ゲームセンターだよ、行こう!」
響「うん、行く行く!」
ガヤガヤ
春香「全然勝てないよー…」
千早「流石我那覇さん、エアホッケー凄く強いわね…」
響「へっへー、まあねー。次はあれやろう!」
春香「よし!」
千早「こっちも貰ったわ!」
響「うぎゃ~!うう…2人ともやるなあ、コインが減る一方だぞ…」
春香「ふふふ~、やってきました春香さんの得意種目!UFOキャッチャー!」
千早「…そうなの?」
響「始めて聞いたぞ」
春香「まあまあ任せなさいって!ぬいぐるみ、キーホルダー、なんでも…」
春香「…あれ?」
千早「…フグが景品なの?」
響「…正直、こういうのあんまり関心しないな」
春香「…うん、なんか命とおもちゃは一緒なのかなって思うよね」
千早「…!!」
千早(か…)
千早(可愛い…!?)
春香「たまになってるよね、景品に…」
千早(…でも、こんな小さいビンでかわいそう…)
千早(…)
千早「…我那覇さん、後でペットショップについてきてくれる?」
響「…良いよ」
千早「ありがとう。…春香」
春香「…まかせて!」
ウィーン
ウィーン
3人「…よし!」
―響が良く行くペットショップ―
店員「いらっしゃいませ。あ、響ちゃん。前に言ってた犬のおもちゃ…」
響「ミドリフグって飼うの難しいかな!?」
店員「…ん?」
千早「これなんですけど…ゲームセンターで景品になってたのがかわいそうで、でも私達飼い方が分からないんです…」
店員「うわあ、これは急がないと…とにかくこっちに来て!」
店員「…これで一安心かな」
千早「さっきよりも良い所に行けたわね」
響「小瓶よりもこっちがいいよな」
春香「可愛いなあ…」
店員「さて、このフグなんだけど、しばらくここに居てもらうことになる」
千早「それまで準備をするって事ですか?」
店員「そう、理由があるんだけど…僕達生き物は排泄するでしょ、もちろん魚もね」
響「でも、取り除けばいいんじゃないか?」
春香「それ無理じゃない?犬とかじゃないし」
響「それもそうだな…」
千早「水をろ過する必要があるって事ですね、でもろ過機?っていうのだけじゃダメなんですか?」
店員「そのろ過機なんだけど…僕達人間は栄養分として何を身体に取り込むと思う?」
響「ご飯!」
春香「お肉!野菜!」
店員「お肉の動物は何を食べる?」
響「草だぞ」
店員「じゃあ野菜や草は何を栄養にするかな?」
響「えっ…」
春香「タウリン!1200mg!」
千早「リン、窒素ですね」
店員「うん、リン、窒素だ」
春香「私惜しかった?リンとタウリン」
千早「タウリンとリンは全く関係ないわよ春香…」
店員「で、その窒素なんだけど僕達はどうやって排出すると思う?」
千早「窒素は尿素としてですね」
春香「水兵リーベ僕の船…」
響「B,O,C,NなのかB,C,N,Oなのかいっつも迷うんだよなー」
店員「アンモニアを尿素に変換する理由は?」
千早「有害なアンモニアを毒性の弱いものに変えて膀胱に貯めるためですね」
響「これって順番違うとダメなのか?」
春香「ダメだよ…」
店員「そう、でもこのフグみたいな硬骨魚類は窒素を尿素じゃなくてアンモニア態として排泄するんだ」
千早「アンモニアは水に溶けるから、こしとって処理ができないってことですか?」
店員「まあまあ、話を進めるよ。で、このアンモニアをどうにかしないと魚は死んじゃうんだけど、それにはアンモニアを亜硝酸に分解してくれる微生物、そして亜硝酸をさらに分解してくれる微生物が必要なんだ」
店員「ろ過機はゴミをこしとるだけじゃなくてその微生物も蓄えてくれる機能がある、物理的ろ過と生物的ろ過って言うんだけどね」
千早「なるほど…水槽の準備っていうのはその微生物の準備を含んでるわけなんですね。分かりました」
春香「私はさっぱり分かりませんでした」
響「ややこしいんだな、魚って」
店員「簡単に言えば空気を作ってあげる必要があるからね、魚は。気を使う部分が他の生き物に比べて1つ多いってわけ」
千早「…私に水槽の準備の仕方、教えていただけませんか?」
店員「勿論!」
―ある日の事務所―
千早「…」
伊織「また千早が空の水槽見てる…」
美希「なんか難しそうなこと言ってるの…」
やよい「何言ってるのか全然わかりません…」
律子「窒素循環を水槽内で再現させるのは手間がかかるのねぇ」
千早「…よし、亜硝酸が出てきた…」
―響が良く行くペットショップ―
千早「こんにちは」
店員「…あ、こんにちは。元気にしてるよ」
千早「はい」
千早「…」
千早「はあぁ…」
千早(良かった…)
スイスイ
千早「!」
千早(こっちに寄って来た!)
店員「慣れたんだね、人懐っこくて可愛いよね」
千早「はい…」ウットリ
千早「さて…どうなってるかしら…」
千早「…あれ、水槽に魚のおもちゃが入ってる」
春香「何にも入ってないのは寂しいかなーって、あはは」
千早「亜美か真美だと思ったんだけれど、春香なのね」
千早「…」
千早「ふふっ、これさかさまじゃない…くくく…」
春香「えっ…」
あずさ「あらあら、お腹が上ってちょっと笑えないわね~…」
―そして…―
千早「…か…」
千早「可愛い…」
春香(千早ちゃんすっかり気に入ってる、魚は可愛くないとか言ってた千早ちゃんはどこに行ったのやら…ははは)
響「ほんと可愛いな~」
P「ただいまー」
真「おかえりなさい、プロデューサー。ねえ見てくださいよ、今日のお昼に来たんですよ!すごく可愛くって!」
P「ああ~、例のゲームセンターで取ってきたフグか」
P「どれどれ…お!これは可愛い…あっ…そんなあ…」
千早「…!」
千早(こっちに泳いできた!)
律子「プロデューサー、逃げられましたね」
P「そんなあ…千早の方が良いのか?」
千早(…大きな目、小さな口、ずんぐりむっくりな体形…)
千早「はあぁぁ…」
亜美「てっさだー!」
真美「てっちりだー!」
バタバタ
千早「!?」
律子「こーら、物騒な事言うのはやめなさい!」
亜美「冗談だよー、見せて見せて!うわ!可愛い!」
真美「めちゃ可愛いよー!…でもこれ一匹なの?」
春香「春香さん号も居るよ」
真「若干傾いてるよ」
春香「ダメコンが間に合って無いのかも」
真「なんで艦隊戦してるんだよ…」
律子「そういえば他に魚は泳がせたりしないの?」
千早「そうなんですけど…齧るらしいです、他の魚のヒレを」
P・真「えっ」
亜美「…そんなに凶暴なの?こんなに可愛いのに」
真美「…亜美、アイドルも似た様なもんだよ…」
亜美「…そうだね…この世界は水槽…私達アイドルという魚は観客に見られるためにここにいるのさ…」
真美「綺麗な花の裏では蜘蛛が毒牙を光らせ潜んでいる…」
亜美「…おぉ…怖いねえ…」
律子「何上手いこと言った気になってるのよ、最後は魚すら関係ないし!」
千早(…プロデューサー遅いなあ…事務所まで迎えに来てくれるって言ったのに)
千早(…もう、もうすぐ日付が変わるじゃない…)
千早(…可愛い)
千早(…寝ちゃったのね、ミドリフグも)
千早(…)
P(やばいなあ!こんなに遅くなるなんて、千早に怒られる!!)
P「…あれ、千早?」パチッ
P「なんだ、千早、電気もつけずに」
P「…ふふ、見ながら寝てたんだな…」
P「ったく…お前の大好きなご主人様は寝てしまいましたよ…」
P「…!?」
P「おい!!千早!!なんかフグの様子がおかしいぞ!!」
千早「…はい?」
P「ほら!!底に沈んで動かない!!」
千早「…寝てるんですよ」
P「…そうなの?」
千早「そうです、あ…尻尾丸めて可愛い…」
P「そ、そっか、ならよかった…」
P(千早にも怒られなくて良かった…)
千早「…あと遅すぎです、プロデューサー」
P「すみません…」
千早「…」
真「どう?」
千早「…多分大丈夫と思うわ」
真「やったね!」
律子「昨日の水換えは成功?」
千早「そうですね、緊張しました…」
律子「ふふ、良かったわね」
―ラジオ収録―
春香「前にブログに書いたんだけど、最近ミドリフグを飼い始めたんだよね」
千早「ええ、春香と我那覇さんの3人でゲームセンターで小瓶に入ってるのをね」
春香「そういえば名前って付けてたっけ?」
千早「…そういえば付けてないわね」
春香「…というわけで、今回リスナーの皆さんには名前を色々挙げてもらいましょう!」
春香「…来てます来てます…」
千早「ハンドパワーですか?」
春香「メールパワーです」
春香「…東京都にお住まいのヒロさん『ますお』」
千早「ええっ!!」
千早「…くくく…」
春香「自分で笑っちゃダメだよ千早ちゃん…」
春香「…滋賀県にお住まいのうぉーたんさん『かつお』」
千早「かつおて…くくく…」
春香「新潟県にお住まいのシュウさん『さざえ』」
千早「もう貝じゃない…くく…ふふふっ…」
春香「えー、サザエさんはやめてください、サザエさんシリーズはやめてください」
春香「北海道にお住まいのたっちゃんさん『パフ はいかがでしょうか、フグの英名のパァファァから取りました』」
千早「なんで微妙に発音いいのよ…くくく…」
春香「でもいいよね、パフ、可愛いし」
千早「そうね、パフ、可愛いわ。パフにしましょう」
春香「パフに決定しました!たくさんのご応募ありがとうございました!」
千早「…」
千早「…ショップの人に貰ったサカマキガイ、パフは食べるかしら…」ピチョン
スイッ
千早「!」
バリバリ
千早「…凄い食べ方、野生を垣間見た気がするわ…」
春香「ああ…春香さん号が齧られてる…」
千早「遊んでるのかしら」
響「だな」
春香「…パフが来てからもう半年以上経つね」
響「パフも千早に貰われて良かったんじゃないのか?」
千早「…そうだったらいいんだけど…」
千早「…」じーっ
スイスイ
千早「!」
響「千早には懐いてるんだよな、ははは」
春香「ホントだね」
千早「…はあぁ…」
千早「…大事な話を社長とプロデューサーがしてる?」ヒソヒソ
小鳥「ええ、なんでもプロダクション同士で提携するんだとか」ヒソヒソ
千早「へぇ…」ヒソヒソ
春香「もっと大きい仕事が来るんですかね?」ヒソヒソ
小鳥「そうね、今は交渉段階で…」ヒソヒソ
小鳥「じゃあ、お茶を持っていくわね」ヒソヒソ
小鳥「失礼します」
社長「おお、小鳥君、ありがとう」
社長「なにぶん、こんな狭いところでして、申し訳ありません」
相手プロダクション社長「いえいえ、事務所の大きさではプロダクションの価値は決まりませんよ」
相手プロダクション社長「そういえばその水槽は…」
社長「ああ…これですか。可愛いでしょう、うちのアイドルが飼っているんですよ」
相手プロダクション社長「本当ですね、丸くてとても可愛いです」
小鳥(あ、パフちゃんが膨らんでる、可愛い…)
春香「どうですか?上手くいきそうですか?」
小鳥「ええ、良い雰囲気だったわよ」
小鳥「そういえば私、パフちゃんが膨らんでる所初めて見たわ」
千早(パフが膨らんでた…?)
春香「ええ~、いいな~。今見に行っちゃダメかな?」
伊織「邪魔になるだけよ」
春香「ぶ~…」
伊織「うわっ!見て見て!相手のプロダクション結構大きい所で実績もあるわよ!うちも注目されるようになったのかしら、にひひっ♪」
千早(…)
千早「今日も交渉に?」
小鳥「ええ、そうね…だけど…」
響「…ハム蔵どこに行ったんだ~?」
雪歩「居ませんね~…」
貴音「どこへ行ったのでしょう…」
響「…うう…まさか会議の部屋に行ってるんじゃ…まずいぞ…」
相手のプロダクションの社長「えーと…お手洗いは…」
小鳥「はい、あちらを曲がった所で…」
相手のプロダクションの社長「…なんてね、はい」
ハム蔵「キュイキュイ」
響「ハ、ハム蔵!?」
相手のプロダクションの社長「しーっ…」
相手のプロダクションの社長「やっぱり。君のプロデューサーに見つかると君が怒られると思ってね、ほら」ヒソヒソ
響「ご、ごめんなさい…!」ヒソヒソ
小鳥「し、失礼いたしました…!」ヒソヒソ
相手のプロダクションの社長「いいよいいよ、大事にしてあげてね」ヒソヒソ
響「は、はい…」
響「…良い人だな!ハム蔵!」
ハム蔵「キュイ!」
雪歩「そうですね!」
小鳥「そうね、本当に」
千早(ハム蔵は懐いたのね…)
千早(…やっぱりただの思い過ごし…か…)
P「…はい、ははは、そうですね…」
P(…よし、良い感じだ!すぐにでも同意に持ち込めそうだ!)
社長「…では、また次の機会に」
P(…あ、あれ?)
相手のプロダクションの社長「ええ、良いお話が出来ました」
P(…)
社長「うん?」
P「いえ、話がまとまった以上、決断を引き伸ばす意味があるのかなと…」
社長「まあまあ、落ち着きたまえ。我々は最初から決まった交渉の期間を設けているんだ、そしてそれをどう使おうと我々の勝手だ。そうだろう?」
P「ええ、まあそうですが…」
社長「なあに、任せておきなさい、はっはっは」
―ある日―
小鳥「社長、お電話です」
社長「はい、お電話変わりました」
社長「…はい、ですがね…はい、確かにわが社としてもとても…」
小鳥(…交渉、なんで社長は首を縦に振らないのかしら…?)
千早「さて…用意出来たわよ」
春香「ばっちりだね、早速パフを避難させよっか」
千早「ええ…あ、あれ…パフの色が黒くなってる…」
春香「ほんとだ、黒っぽく…なんで?」
千早「強いストレスを感じてるときに変わるんだけど、まだ水替えは始めてないのに…」
千早・春香「…!?」
ピチョン!
ポテッ
ピチピチ!
千早「パフ!!!」
春香「ああ!?飛び出した!?どどど!!うわああ!!」
どんがらがっしゃーん!!ばっしゃーん!!ばりーん!!
社長「…わが社としてはそれには同意出来かねます、」ブツッ
千早「春香!?」
小鳥「きゃあっ!?」
律子「ちょっと!!何!?」
社長「今すぐの判断は双方にとってよろしくないかと、ですので…ん…?」
社長「…切れちゃった」
春香「うわああ!!水槽!!パフ!!」
千早「くっ…!!」ヒョイッ
ポチャン
スイスイ
春香「ああ…わ、私…どうしよう…」
小鳥「だ、大丈夫!?ああっ!!親機に水が!!」
律子「小鳥さん、触らないで!!ブレーカー落とします!!」
社長「…」
バツンッ
P「こらー!!」
春香「ごめんなさい!」
春香「うう…大切な電話の最中だったのに…」
P「これで交渉も全部無かったことになったんだぞ!」
春香「ごめんなさい…ごめんなさい…」
千早「…私が水槽をあそこに置いたのが悪かったんです…」
P「…だからって…」
社長「…まあ…とにかく怪我しなくて良かった、水槽が割れたんだからな。君もあんまり怒らないでやってくれ、天海君も反省しているようだからね」
社長「最初から縁が無かったのだよ、無理に引き伸ばしたのも私だ」
P「…はい」
春香「ううっ…」
千早(…)
スイスイ
数ヵ月後
千早「あ、おはようございます」
春香「おはようございます!」
響「おはよう!」
P「おはよう、3人とも」
P「おはようございます、社長」
社長「君は今日の朝刊は見たかね?」
P「…朝刊ですか、まだですが…え?」
P「…あそこの社長が脱税で逮捕…!?」
社長「それどころではないぞ?まあ調べたら出るわ出るわ、アイドルに手を出そうとしただの、それを拒否されてかそのアイドルを左遷しただの…」
P「えっ…」
社長「なんとなくすぐに話をまとめようとは思わなかったんだが、まさかこうなるとは…いやはや、何が起きるか分からんものだなあ」
P「…」チラッ
スイスイ
春香「…パフは分かってたのかな?」
響「ハム蔵は懐柔させられてたけどなー」チラッ
ハム蔵「キュイ…」ショボン
千早「…」
千早(…あの時膨らんでたっていうのも、不機嫌になってたのも、パフは教えてくれてたのかしら…?)
スイスイ
千早(…)
千早「…ありがとう、パフ」
千早「…!」
響「…?」
春香「どうかした?」
千早「…今、一瞬笑ったように見えた…」
おしまい