伊織「ふーん……」
律子「……」ゴク
伊織「……あ、枝毛」チョイチョイ
律子「……ふぅぅ~」
伊織「そんなに美味しいの?」
律子「まぁね」
伊織「ふーん、コーヒーなんて苦いだけなのに」
律子「プロデューサーのコーヒーだから」
伊織「…………」
律子「何よ」
伊織「いや……、淹れてもらったの?」
律子「まぁ、自分で淹れたんじゃないかしら」
元スレ
伊織「何飲んでるの?」 律子「コーヒー」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1362839329/
伊織「…………」
律子「……」ゴクゴク
伊織「……飲みかけ?」
律子「うん」
伊織「ちょっとちょうだい」
律子「駄目」
伊織「あっそ」ムスッ
律子「苦いだけよ、コーヒーなんて」ゴク
伊織「何、お返しのつもり?」イラッ
律子「そう怒らないでよ」
伊織「怒ってないわよ」イライラ
律子「怒ってるじゃない」
伊織「はぁ……それで」
律子「ん?」
伊織「どうやって手に入れたの?」
律子「さっき、プロデューサーが『ああー、コーヒー飲みきれないなぁ』って」
伊織「無理に声色真似なくて良いわよ」
律子「送り迎えがあるみたいで急いでてね」
律子「そこで私が『プロデューサー!もったいないから捨てるのは止めてくださいね! 後、環境にもよろしくないですよ!』って言ったわけよ」
伊織「なるほど」
伊織「『早く行かなきゃ!でもコーヒーが!でも、これ以上は飲めない!』」
律子「無理に声色真似なくて良いわよ」
伊織「別に真似してるわけじゃないわ」
律子「それでもうどうしようもなくなって、プロデューサー『うぅー』とかって唸っちゃって」
伊織「ふむ」
律子「そこで私が『ああもう、私が飲んどきますから早く行ってくださいよ』と」
伊織「やるわね」
律子「『いや、でも……飲みかけだし』って、ちょっと渋るんだけど」
律子「『良いですよ別に。ほら、早く』と手を出すとカップを渡してくれて……」
律子「『悪いな、律子』ってちょっと困った笑顔に胸キュン」
伊織「ずるいわ」
律子「いいでしょ」
伊織「ちょっとちょうだい」
律子「駄目」
伊織「ケチ」
律子「……まだ話には続きがあるのよ」
伊織「……どんな」
律子「カップを受け取ったまでは良かったの」
律子「ただ」
伊織「ただ?」
律子「……小鳥さんが引いてた」
伊織「あっ……」
律子「『居たんだぁ~』って、頭抱えたくなったわ」
伊織「こ、小鳥は何か言ってた?」
律子「いや……ただ『そこまでするんだ~』みたいな目でずっとこっち見てた」
伊織「きついわね……」
律子「小鳥さんにドン引きされるレベルなんだ……私って」
律子「これからゴミ出しとか誤解が怖くてできなくなるわ」
伊織「……律子はさすがにゴミ漁ったりとかは」
律子「しないわよ、さすがに。大体、他のみんなも使うんだから……」
伊織(みんなが使わなかったらするのかしら……?)
律子「あ、でも……」ボソ
伊織「え、なに、あるの?」
律子「いや……あれは入らないわ、多分」
伊織「何よ、ちょっと言ってみてよ」
律子「いや、一昨日プラゴミの中にコンビニ弁当のケースがあって」
伊織「事務所でコンビニ弁当食べるのはアイツか小鳥ね」
律子「そうでしょ?……で、ケースの中に割り箸が」
伊織「」ガタッ
律子「落ち着いて」
伊織「あっ、うん……」ストン
律子「それで、『このお弁当、プロデューサーが食べたやつですかー?』って、聞いたの」
伊織「……それで?」
律子「『ああ、俺だけど、何で?』」
伊織「声真似はいいから」
律子「『分別くらいちゃんとしてくださいよー』って文句を……」
伊織「箸は?」
律子「……とった」
伊織「変態!」
律子「え"っ」
伊織「変態!」
律子「違う!私はただ分別しようと……」
伊織「そしたらたまたま持ち帰っちゃったの?」
律子「う、うん……」
伊織「変態!」
律子「やめて!」
伊織「はぁ……」
律子(伊織も引くレベルの私……)
伊織「それで、使ったの?」
律子「えっ」
伊織「えっ、じゃないわよ。その箸、使ったの?」
律子「いや……使ってない」
伊織「ならちょうだいよ!」
律子「え"っ、だ、駄目よ!私の宝物なんだから!」
伊織「何が宝物よ!宝の持ち腐れだわ!」
伊織「使われない箸に一体何の価値があるのよ!」
律子「いやでも……」
伊織「使ってこその箸でしょう!?」
律子「いや、ケースの中にあったとはいえ、他のゴミと一緒だったし……」
伊織「……確かに、一理あるわね」
律子「いいの、私は眺めてるだけで……」
伊織「……箸を眺めるの?」
律子「あら、結構楽しいわよ」
律子「プロデューサーがこの箸でご飯食べたんだぁ~、って」
伊織「やっぱりあんた変態だわ」
律子「うぅむ……」
P「ただいまー」ガチャ
律子「あ、おかえりなさい」
伊織「ちょっと、帰ってきたら手ぇ洗ってよ!風邪流行らせる気?」
P「悪い悪い。あ、律子」
律子「は、はいっ。なんですか」
P「さっきは悪かったな。今度何か埋め合わせするよ」
律子「えっ、あ、いや、大したことじゃ……」
伊織「変態」
P「えっ」
律子「えっ」
伊織「あっ、いや、なんでもない……」
――違う日
P「じゃあ、行ってきます」
美希「行ってくるのー!テレビ見ててね!」
小鳥「行ってらっしゃーい、ちゃんと見るわよー」
やよい「頑張ってきてくださいねー!ハイターッチ!」
P「イェイ!」パシッ
やよい「あれっ、プロデューサー、手袋片方無いです。どうしたんですかー?」
P「ああ、どっか行っちゃったんだよ。多分事務所で無くしたんだと思うんだけど……」
P「まぁ、見つけたら教えてくれよ」
やよい「はぁい、わっかりましたー!行ってらっしゃーい!」
バタン
伊織「…………」
律子「…………」
やよい「ふ、二人とも怖い顔してどうしたんですかー?」
律子「……なんでもないわ、やよい……」
伊織「やることないし、事務所を掃除でもしようかしら」
やよい「伊織ちゃん、手伝うよー!」
律子「あっ、私も……!」
伊織「律子は事務があるでしょ?」
律子「えっ」
伊織「大丈夫よ。私たちだけでできるわ……」フッ
やよい「はい!もう子供じゃないですよー」
小鳥「律子さーん!この資料なんですけど……」
律子「ぐっ、社会人は辛いわ!」
小鳥「働いてることを基準にすればみんな社会人ですよぅ」
伊織「やよい、頑張りましょう!」
やよい「はいっ!うっうー!」
――三十分後
律子「」カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
小鳥(す、凄ぇッ!律子さんの指が何十本もあるように見えるッ!)
小鳥「り、律子さ~ん。あんまり、無理しない方が……」
律子「」カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
小鳥(馬鹿なッ!?まだ加速しているだとッ!?)
< アッ、テブクロアリマシター!
< ナ、ウソォッ!
律子「」ガタッ
小鳥「あら、何かしら……」
伊織「や、やよいっ、それ渡しなさい。後でアイツに渡しておいてあげるから」
やよい「えー、大丈夫大丈夫。無くしたりなんかしないよ」
伊織「いやっ、でも……」
やよい「伊織ちゃんは心配性だな~」
伊織「ぐぐ……」グニャァ~
小鳥「二人ともどうしたの?」
やよい「あっ、プロデューサーさんの手袋、見つかったんですー」
小鳥「あらっ、良かったわね~。やよいちゃん、後で渡してあげてね」
やよい「はーい!」
伊織「……粗方掃除も済んだし、休憩にしましょうか」
やよい「うん、そうだね!私、お茶入れてくる!」
伊織「……はぁ~」トコトコ
律子「……お疲れ様」
伊織「負けたわ……」ストン
律子「そうね……」
伊織「手袋、すっごく欲しかったのよ」
律子「どうして?伊織、プロデューサーに無理言ってマフラー貰ったりしてたじゃない。あれじゃ不足なの?」
伊織「……いつでも」
伊織「いつでも手を繋いでいる気分でしょ」
律子「ああ……」
伊織「片手だけ……」
律子「うん……」
伊織「両手じゃないところがミソね」
伊織「私は右手に、アイツは左手に同じ手袋してるの」
律子「ああ、良いなぁ……」
伊織「はぁあ~……」
やよい「みなさーん、お茶入りましたー!」パタパタ
伊織「ありがとう、やよい」
小鳥「お茶菓子もありますよー」パタパタ
律子「ありがとうございます」
ゴクゴク…
やよい「ふぅ~、美味しいですねぇ、われながら」
伊織「そうね……」
小鳥「あ、そうだ、テレビテレビ」
律子「ああ、美希が生放送出てるんでしたね」
小鳥「そうそう」ピッ
< コンカイノゲストハコノカタデェス
765プロニンキアイドル ホシイミキチャーン
やよい「美希さん、お客さんいっぱいなのにとっても楽しそうです!」
律子「本当ね。すごい度胸だわ、まだデビューして間もないっていうのに」
小鳥「いきなり、テレビ特番出演できるなんて、美希ちゃんすごいわよねー」
―― 一時間後
小鳥「あーらら、結構あっという間に終わっちゃいましたね」
律子「そうですね。見ててはらはらしたわ……」
やよい「…………」グーパーグーパー
伊織「……やよい、何してるの?」
やよい「えっ!あ、いや、なんでも……」
律子「あれ、それプロデューサーの……」
やよい「いや、試しに着けてみただけです」ワタワタ
伊織「ぶかぶかじゃない」
小鳥「意外とプロデューサー、手ぇおっきいのね」
伊織「わ、私にも貸して!」
やよい「あんまり貸し回したら、プロデューサー、怒りませんかね……」スポッ
小鳥「うーん、まぁ、大丈夫でしょう」
伊織「大丈夫よ。なんなら新しいの買ってやればいいんだから」スポッ
伊織(本当、アイツの手、大きい……)グーパーグーパー
伊織(今、手ぇ繋いでる?繋いでるよね?はぁぁ~……)
小鳥「な、なんか危ない目だピヨ……」
律子「伊織ッ!危ないッ!!」スポッ
伊織「はぁぁ~、えっ」
律子「ふぅ……」
伊織「ちょっと律子!!」
律子「何よ、そんなに怒鳴らなくたっていいじゃない」
やよい「伊織ちゃん、怖いよ……」
伊織「あっ、ごめん……」
伊織「…………」キッ
律子「のヮの」
小鳥(デコちゃん必死杉ワロタwwwwwワロタ……)
律子「では……」スポッ
律子(これは……良い……)ヌクヌク
律子(まるで、まるでプロデューサーの手に包まれて、温められてるみたい……)
律子「あぁふぅううう~……」トローン
やよい「うわぁ……」
小鳥「伊織ちゃんよりさらに危険な表情に……」
伊織「ちょっと律子、着け過ぎよ!早く替わって!」
小鳥「伊織ちゃん落ち着いて!」
律子「駄目っ!私は……私はプロデューサーと一つになるの!!」
小鳥「あんたはあんたで何言ってんだ!」
ギャーギャー
ガチャ
P「ただーいまー!」
美希「ただいまなのー!」
律子「私のプロデューサーは渡さない!!」
伊織「あんたって人はぁああああー!!」
小鳥「伊織ちゃん!落ち着いて!律子さんも!」
やよい「律子さん、それはプロデューサーに返すんですー!」スポッ
律子「いやぁああああああ!私のマイエンゼルを返してよー!!!」ボロボロ
P「な、何だこれは(困惑)」
――ちょっと後
やよい「はい、プロデューサー。手袋見つかりましたよ」
P「ああ、ありがとう。少し……席を外しててくれ」
やよい「はいっ!わかりました!」
P「えーと、落ち着いた?」
律子「……はい」ションボリ
伊織「……ふんっ」
P「喧嘩か?珍しいな、二人が喧嘩するなんて……」
律子「すみません……とんだ痴態を」
伊織「もとは律子が悪いのよ」
P「こら、止めろ」
伊織「ふん」
P「それで……原因はなんだ?」
律子「えっ……とぉー」
伊織「それは……」
P「手袋か?」
伊織「…………」ドキッ
律子「……はい」
P「はぁ……子供じゃないんだから、取り合いなんかするなよ」
律子「はい、ごもっともです……」
伊織「だって……」
P「片方ずつあげるから、もう取り合うなよ。はい」パサッ
律子「えっ」
伊織「えっ」
P「喧嘩するよりいいだろ」
律子「でも、プロデューサーのは!」
P「ああ、どうせ見つからないと思って、今日の帰り、新しいの買ってきたんだよ」
伊織「そ、そうなの……」
P「デザインが気に入ったんだろ?俺もこの柄好きでさー」
P「片方ずつだけど、大事に使ってくれよ」
律子(嬉しいけど、それじゃ意味が……いや、十分意味はあるな……しかし着けるたび伊織を思い出すのはちょっと……)
伊織「ね、ねぇ」
P「何だよ」
伊織「新しいのを片方と、こっちの古いの片方ずつ、二人で貰っちゃ駄目かしら?」
P「えっ、どういうことだよ」
律子(!!)
伊織「駄目ならいいんだけど……」ウルッ
P「うっ、その顔は反則だろ~……いいよ、それで。はい」ガサガサ
伊織「……」グッ
律子(天才か!!)グッ
P「じゃあ、俺帰るよ」
律子「あ、はい。お疲れ様でした」
< オツカレサマデース
< アラ、モウスンダンデスカ、サヨウナラー
< ウッウー!オツカレサマデスー!
< マタアシタナノー!
バタン
伊織「…………」
律子「…………伊織ぐっじょっ!ぐっじょっ!」ガシッ
伊織「にひひ……天才ですから」
律子「で、どっちにするの」
伊織「どちらにもどちらの良さがあって捨てがたいわね」
律子「確かに、古い方はよりプロデューサー色が濃い」
律子「けど、新しい方をプロデューサーと一緒に使い古していくのもまた……」
伊織「…………」
律子「どうしたのよ」
伊織「やっぱりあんた変態だわ」
律子「……それはお互いさまよ」
伊織「そうね……にひひっ」
終わり