涼「Pさん、意外にロマンチストなんだな。でも……この場で告白はちょっと恥ずかしいぞ」
P「バカ、曲のタイトルだよ。お前にカバーの依頼が来たんだ」
涼「へっ?ああ……曲か。初めて聞くタイトルだな。誰が歌ってんの?」
P「お前、COMPLEX知らないのか?」
涼「こんぷれっくす?特に考えたことないな」
夏樹「ちげーよ。日本のロックユニット。あたしも好きだったな」
涼「夏樹、いたんだ?知ってんの?」
夏樹「BOOWYの布袋寅泰と吉川晃司の組んだユニットさ。『恋をとめないで』はその代表曲」
涼「ふーん。吉川晃司ってるろうに剣心の鵜堂刃衛のひとだっけ?」
P「だいたいあってる。だけど違う。吉川晃司は元はロックアーティストだったんだ」
涼「そうなんだ。全然知らなかった」
夏樹「涼はUKと全米しか知らないからな」
涼「仕方ないじゃん。でもなんでアタシなの?」
元スレ
涼「恋をとめないで?……」モバP「そうだ」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1359311688/
P「え?……えっとな……俺の学生時代の後輩がレコード会社にいて、お前の話をしたら使ってみたいってさ」
涼「そうなのか……そういう知り合いがいるなら、もっと早く言ってくれたらよかったのに」
P「すまんな。今回はかつての名曲を現代のアイドル達がカバーするという企画のアルバムらしい」
涼「ということは、あたし以外にも他のアイドルがカバーで参加してるってわけか」
P「他の事務所の子達だがな。少しばかりスケジュールがタイトだがやってみるか?」
涼「日本のロックってのがシャクだけど、歌の仕事なら喜んでやらせてもらうよ」
夏樹「やったじゃん、涼。これは、あたしも好きな曲なんだしっかりカバーしてくれよ?」
涼「まかしときなって」
P「とりあえず原曲を聞くところが先だな。原盤とスコアは向こうから送ってくるはずだが」
涼「いいや、時間がもったいない」サササッ
P「なにしてんだ?」
涼「iPod。ネットで今買ってるところ……あった。これか」
P「もう買ったのか……それじゃ領収書切れないぞ」
涼「いいよ、別に。iTuneには10万位あるし。それに」
P「それに?」
涼「音楽にケチるのはロックじゃねーし」
夏樹「ひゅーっ、カッコイイな。だりーなんかyoutubeだぜ」
涼「あははは。それはそれでいいんじゃない?んじゃ、がっちり聞き込んでくるわ」
P「涼」
涼「なに?」
P「本当に大丈夫か?」
涼「心配すんなって。昔はコピーバンドもやってたんだ。じゃあ、お先に」
P「……」
――――――――――――涼の部屋
涼「ふぅ……」
涼「これはいい曲だな。夏樹が推すのもなんとなくわかるよ」
涼「さて、これをどうカバーするかだけど……」
涼「古い曲だし、固定のファンも多くついてる」
涼「下手に現代風のアレンジをしたら、これまでのファンの神経を逆なですることになるし」
涼「原曲を忠実に再現したほうがよさそうだ」
涼「ボーカルのキーも合わせて……曲のテンポは……」
――――――――――――後日、ボイトレ室
ベテ「よし、今日はここまで!」
全員「ありがとうございました!」
夏樹「よっ、涼。COMPLEXどうだった?」
涼「良かったよ。ギターもイカしてるし、聞いててノってくるね」
夏樹「だろ?」
涼「アタシとしては『RAMMBRING MAN』の方が好みだけどな」
夏樹「おー、あれもイイよな」
ベテ「松永、ちょっとこい」
涼「ん?何か用事ですか?……ごめん、夏樹、またな」
夏樹「あいよ、じゃあな」
ベテ「お前、プロデューサーから仕事が来てるんだろ?調子はどうだ?」
涼「んー、今のとこ80%くらいかな?ある程度出来たら、みんなに聞いてもらいますよ」
ベテ「そうか…」
涼「大丈夫ですって。念には念を入れて、聞いてもらったあとも調整の時間とってるし」
ベテ「お前のことだ。そのあたりは心配してないんだが……」
涼「締切には間に合わせますって。それがプロってもんでしょ?」
ベテ「……そうだな。期待しているぞ」
涼(ベテさんも心配性だな……まあ、期待されてるってのは悪くないけどさ)
――――――――――――後日、ボイトレ室
周子「なんか慌ただしいなぁ。夏樹ちゃん、何か始まるの?」
夏樹「ん?今から涼が依頼されてたカバーソングのお披露目なんだ」
周子「へえー……それってあたしも聞いていいの?」
夏樹「邪魔にならなきゃいいんじゃないか?あたしも聞かせてもらうし」
周子「涼ちゃんのロックかぁ……久しぶりだな」
ダダダダダン♪
涼「……ふぅ、こんな感じだよ」
P「……」
マス「……」
ベテ「……」
夏樹「……い、いいじゃん!なあ?完璧だよな?さすが、涼!!」
P「マスさん、どうですか?」
マス「原曲を何度か聞いたが再現度は問題ないだろう。ベテはどう思う?」
ベテ「私はそんなに原曲を聴いていない……歌の完成度は高い……だが」
涼「みんな、テンション低いなぁ……大丈夫だって。次には、きっちり仕上げてくるからさ」
P「……」
夏樹「まあ、まだ時間あるし。きっちりやってくれるよな」
涼「あんがと、夏樹」
周子「ねえ、みんな?……本当にこれでいいの?」
夏樹「何言ってんだよ、周子?上手く出来てたじゃんか?」
周子「そう?あたしはそう思わなかったなー」
涼「周子、あんた原曲聞いた?どこか違うなら言ってよ」
周子「原曲は知らないよ。でも涼ちゃんの歌じゃなかった」
涼「はあ……本当に何も知らないんだな。いいか?カバーってのはそういうものなんだ」
周子「人の真似して歌うのがカバーなの?それってモノマネじゃない?」ムッ
涼「そうじゃねえって。原曲のファンの人もいるんだ。その人達のためになんだよ!」イライラ
周子「そう……だったら、あたしでもいいよね?あたしカラオケ得意だよ」
涼「なんだよ、周子。やけに絡んでくるな?ケンカ売ってんの?」
周子「そんなワケないし……なんか、今の涼ちゃんカッコよくない。ロックじゃないよ」
涼「うるせー!!何も知らねえくせに説教してんじゃねーよ!!!」
ベテ「やめろ、松永!!レッスン場だぞ!!ケンカならよそでやれ!!」
涼「……チッ」
ベテ「塩見も言い過ぎだ。口を慎め」
周子「あたし、間違ったこと言ってないもーん」
涼「てめえっ!」
夏樹「落ち着けって二人とも!」
マス「今、お前たちが言い争ったところでどうにもならん。ここはP殿に判断してもらう」
涼「……」
周子「……」
マス「どうだい、P殿?どう判断したかね?」
P「僕は……」
――――――――――――涼の部屋
涼「くそっ!!!!」
バサバサッ!!!
涼「なんなんだよ!ふざけんな!!」
涼「ここまで来てやり直しって……いまさら、そんなのできるわけないだろ」
涼「あたしだって……あたしなりに真剣に考えた結果なんだ!」
涼「……」
涼「もう……無理だよ」
涼「プロデューサーに言おう……」
涼「別にいいよな……たまたま来た仕事なんだし、次頑張ればいいさ」
涼「プロデューサー、まだ事務所かな?」
涼「いつも遅くまでいるし、大丈夫だよな」
――――――――――――夜、事務所
涼「こんばんわー……っと……あれ?いない?」
涼「鍵もかけないで無用心だな」
???『!!!』
涼「応接室から声が聞こえる……なんだろ?」
――――――――――――応接室
???「いい加減にしてくれませんかね?」
P「すみません……」
???「すみませんじゃ済まないんすよ?」
P「なんと詫びたらいいのか……」
???「確かにあなたは先輩だから話しましたけどね」
涼(もしかして、例のレコード会社の後輩さんか?)
後輩「頼んだのはあなたでしょ?ロックでいい子がいるって」
P「はい……」
後輩「あんたが土下座までするから、仕方ないからねじ込んでやったのに」
P「……」
後輩「今更、締切を伸ばせなんて通ると思いますか?他はみんな出してんすよ」
P「重々承知しています」
後輩「だったら、今すぐ出してくださいよ?たかがアイドルの歌でしょ?」
P「……」
後輩「こっちもさ、アイドルの企画物CDくらいで経歴に傷つけたくないんすよ?」
P「それでも……」
後輩「ん?」
P「俺はそれでも、あいつが本物だと信じていますから」
後輩「はぁ?」
P「あいつはきっと満足のいくものを出してくれる……だからそれを信じてやりたいんです」
後輩「甘っちょろいこと言ってんすね。あんた音楽業界向いてないっすよ」
P「それでも構いません……だから、もう少しだけ待ってください……この通りです」
後輩「また土下座かよ……本当に使えないな」
涼「…………」
――――――――――――涼の部屋
涼「…………」
涼「嘘つき……どこがオファーだよ」
(P『え?……えっとな……俺の学生時代の後輩がレコード会社にいて、お前の話をしたら使ってみたいってさ』)
涼「余計な気を使いやがって……バカ野郎……」
ピンポーン
涼「なんだよ……こんな時間に」
ガチャ
夏樹「よっ!調子はどうだい?」
涼「……夏樹」
夏樹「頑張ってるだろうと思ってな。これ、差し入れ」
涼「……ありがと」
夏樹「少しだけ、あがっていいか?」
涼「……ああ」
夏樹「さっきまで、周子と話してたんだ」
涼「周子と?」
夏樹「意外だったよな……普段クールな周子があんなに突っかかるなんて」
涼「うん……」
夏樹「あいつさ、お前の歌が目標なんだってさ」
涼「あたしの?」
夏樹「あいつ、スカウトされて京都の実家を出て来たのはいいものの、何も目標がなかったんだと」
夏樹「でも、あんな感じだろ?アイドルなんてどうにかなるって、思ってたんだってさ」
夏樹「だけどさ、お前の歌を営業で聞いてシビレたらしい」
夏樹「ロックなんてほとんど知らないくせに、全身から汗が吹き出すほど衝撃を受けた」
涼「………」
夏樹「技術がどうこうより、がむしゃらに、ひたむきに自分を出してるお前に感激したってよ」
涼「…………」
夏樹「自分で言えばいいのにな、変なとこで意地っ張りなんだよ、アイツ」
涼「……そうか」
夏樹「……あたしはさ、どんな結果でも構わないと思ってる」
涼「夏樹……」
夏樹「でも、本当にお前のやりたいことをやってくれ。ただ、それだけ」
涼「……うん」
夏樹「じゃあな。お前のロック魂を見せてくれよ」
涼「……ありがとう」
涼「…………」
涼「夏樹の差し入れ……DVD?」
涼「COMPLEXの『日本一心』……」
涼「………」
涼「すげーな、このおっさん達は……若い奴よりパワーありすぎんだろ」
涼「客もそのパワー跳ね返すほどのもの持ってるし……」
涼「羨ましいな、こんなライブ……最高じゃないか」
(涼『日本のロックってのがシャクだけど、歌の仕事なら喜んでやらせてもらうよ』)
涼「……馬鹿だな、アタシ」
涼「こんなライブがしたくてアイドルになったはずなのに……」
涼「お、『RAMBRING MAN』……」
http://www.youtube.com/watch?v=KgbaIQxvvQk
涼「………よし」
――――――――――――ボイトレ室
ベテ「なんだ、松永?また残ってたのか?もう今日は終わりだぞ」
涼「ベテさん、ごめん。もう少し借りてていいかな?鍵はあたしが返すよ」
ベテ「ギターまで持ち込んできたのか?」
涼「部屋じゃ近所迷惑になるからね……アンプは付けてないんだけど」
ベテ「ここしばらくは毎日残ってるだろ?本当に体を壊すぞ?」
涼「でも……アタシ……」
ベテ「姉さんから居残り練習は体調を壊すから、やめるように言われてるんだがな……」
涼「……ごめん……」
ベテ「ふぅ……好きにしろ。自己責任だ。私は知らない」
涼「ありがとうございます!」
ベテ「……そういや、倉庫に使ってないギターアンプがあったな」
涼「えっ」
ベテ「やれやれ、ルキの奴、処分忘れてたな。あーこまったこまった」
涼「ベテさん、それって……」
ベテ「まあ、捨てるもんだしいいかな……じゃあな、松永」
涼「ありがとう……」
――――――――――――後日、発表の日
夏樹「よっ、周子」
周子「……なに?夏樹ちゃん」
夏樹「例の涼のカバーできたんだってよ」
周子「……ふうん」
夏樹「行こうぜ。どんなもん出すか楽しみだろ?」
周子「……別に。また喧嘩したらやだもん」
夏樹「あいつがそれくらいで来るなとかいうタマかよ?」
周子「わかってるよ……だけど」
夏樹「それにあいつをけしかけたのはお前だろ?見届ける義務くらいあるんじゃないのか?」
周子「……」
夏樹「先に行ってるからな」
周子「……」
――――――――――――ボイトレ室
ベテ「松永、準備は出来たのか?」
涼「はい」
ベテ「今回はギターも使うんだな?」
涼「そうです。演奏も聞いてください」
ベテ「みなさん、始めてもいいですか?」
P「……ああ」
マス「構わない。始めてくれ」
夏樹(頑張れよ、涼)
周子(……)
涼「……始めます」
――――――――――――演奏後
涼「……どうでしたか?」
P「………」
マス「………」
ベテ「………」
夏樹「………」
涼「ダメなら、またやり直します。ごめん」
涼「でも……今、アタシがやれる最大をぶつけてみました」
涼「原曲を大きく変えてしまいましたが……」
マス「……P殿、どうかな?」
P「………そうですね」
涼「………」
P「向こうの担当者になんと説明すればいいか……」
涼「……ごめん」
P「だけど、これが松永涼のロックです。僕はいいと思います」
涼「えっ?」
マス「……だったら、これを元にアレンジをするか……なあ、ベテ」
ベテ「ったく……仕事を増やしてくれるな?松永」
涼「は、はい」
ベテ「時間がないからスパルタで行くぞ、覚悟しろよ」
涼「あ、ありがとうございます!」
夏樹「待ってくださいよ、アタシらにも感想聞いてよ。なあ、周子?」
周子「えっ?」
涼「周子……どうだった?」
周子「………………全然違うじゃん。せっかく原曲聞いてきたのに」
涼「そうか……ごめん」
周子「だけど………あたしが好きな涼ちゃんのロックだった。あたしはこっちが好き」
涼「周子……」
夏樹「涼、ちゃんと差し入れのお礼を周子にしとけよ」
涼「えっ?あれ周子の?」
周子「ちょっと、夏樹ちゃん!なんで言うのさ!内緒にって言ったじゃん」
夏樹「ああ、すまんすまん。涼に言われてからずっとDVD見てたんだよな」
周子「ううー……」
涼「そうだったのか……周子、よかったら手伝ってくれよ?アンタじゃなきゃダメみたいでさ」
周子「……しかたないなー。手伝ってあげるよ」
涼「ありがとうな」
周子「もう……お礼は完成してからだよ」
涼「あははは、そうだな」
――――――――――――アルバム発売後、事務所
P「……ということだ」
涼「そっか……ありがとう。プロデューサー」
夏樹「ちーっす!なあなあ、あのアルバム売上でたんだって?」
涼「ああ、今聞いたよ」
夏樹「で?どうだったんだ?」
涼「大爆死。予定の見込みをはるかに下回ったんだってさ」
夏樹「あちゃー……マジかよ?」
涼「仕方ないさ……また一からやり直すよ」
夏樹「おっ?前向き発言だな?何があったんだ?」
涼「さあね……走りださなきゃ始まらないってことかな」
夏樹「『RAMBRING MAN』の歌詞か。詩人だねえ」
涼「うるせー」
夏樹「周子の奴もあれからハマっちゃってさ。ずっと聞いてるらしいぞ。この間無意識に鼻歌になってたし」
涼「そうなのか。今度一緒にカラオケでも行く?」
夏樹「いいねー。アタシにも歌わせろよ」
P「お前ら、それよりレッスンきちんとやるんだぞ?次はリベンジだ」
夏樹「はーい」
涼「もちろんだよ…………あ、あのさ、P」
P「なんだ?」
涼「えっと……」
P「? どうした?」
涼「い、いろいろ、ありがとね……あんたのおかげだよ」
P「なんだよ、いきなり?……いいから早くいけ」
涼「ふふふっ、わかったよ。じゃあな」
ちひろ「Pさんも意地悪ですね」
P「……なんのことでしょう?」
ちひろ「教えてあげればいいじゃないですか?DLされた曲は涼ちゃんが一番多かったって……」
P「……今のアイツには小さなことですよ」
ちひろ「涼ちゃんの想いも小さなことですか?」
P「想い?……なんのことです?」
ちひろ「さあ?……恋がとまんないんじゃないんです?」
P「???」
おわり
40 : 以下、名... - 2013/01/28(月) 05:03:44.65 Ic5XO+XU0 29/29これで終わりです
笑いもイチャイチャもない俺得なだけの内容でしたが
お付き合いありがとうございました
周子Pの方にはごめんなさい