承太郎「今日こそはまじめに学校に行くぜ」
キュッ サッ バッサァァッ
承太郎「さて、行くか」
仗助「あっ、はよーッス」
承太郎「ああ」
スタスタスタ… ピッタァァ
承太郎「ちょっと待て仗助。何でてめえがここにいる」
仗助「は? 寝ぼけてんスか?」
承太郎「昨日…泊めたか?」
仗助「泊めるゥゥ~? それじゃあまるで俺がよそのうちの子みてえじゃねえッスか、『承太郎兄ちゃん』」
承太郎「…何?」
元スレ
ジョニィ「空条承太郎の消失、か…」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1316944511/
ジョニィ「空条承太郎の消失、か…」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1316958462/
ジョルノ「おはようございます、『承太郎兄さん』。洗面台あきましたよ」
承太郎「仗助、ジョルノ・ジョバァーナ…今なんて言った?」
仗助「兄ちゃん」
ジョルノ「兄さん?」
承太郎「つじつまが合わない! これは幻覚だ!」
仗GIO「!?」ビグゥッッ
ジョルノ「つじつまが合わないのは承太郎兄さんですよ。なんですかジョバァーナって。僕はジョルノ・ジョースターです」
仗助「で、俺は仗助・ジョースター」
承太郎「そして俺は承太郎・ジョースター…つまり、挟み撃ちの形にならないな」ボグオンッ
仗助「痛いッ!」
承太郎「ということは夢ではない…」
仗助「俺を殴ってどうするンスかぁー!」ビシッ
ドッ
アハハハハ
――朝っぱらからなれないボケにてんやわんやできりきりまいの承太郎であった――
承太郎「いやオトすな。オチてないし、そもそもどういう状況かもわからない」
仗助「やっぱ寝ぼけてんじゃねえッスか?」
承太郎「そう思って顔を洗ったが、効果はいまひとつのようだ」
ジョセフ「おっはよー弟たち。何やってんだ? 洗面台で固まって」
ジョルノ「それが、承太郎兄さんの様子がおかしいんです」
ジョセフ「ん?え? おぉ? そいつぁ珍しいなー、なんだどうした、恋か、思春期か? おーい聞いてる? ドゥーユーアンダスタン?ハッピーうれピーヨロピクねー」
承太郎「(うざいぜ)…誰だてめえは」
ジョセフ「えぇ~~俺のこと忘れちったのぉぉ~? このジョセフ兄ちゃんをさあ、かなピー!」
承太郎「(うざいぜ)ジョセフ…だと…いや…このうっとおしさ……まさしく…おじいちゃん…」
ジョセフ「!?」
承太郎「(『誰だ』ってくらい若返ってやがる)」
ジョナサン「おーい、早く朝ごはん食べないと遅刻するよー」
ジョニィ「ジャイロ来てるから僕先行くね」
承太郎「本当に誰だーッッ!」
Wジョナサン「!?」ビグゥゥッッ
ジョルノ「長男と末の弟まで忘れてしまうなんて…」
仗助「承太郎兄ちゃん、気分悪いなら無理してガッコいくことないッスよぉ~?」
承太郎「ああ、いや…」
承太郎「(落ち着け…。落ち着くんだ承太郎…。
さっき気づいたが…俺は朝普通に学ランに着替えたわけだが……俺はとっくの昔に高校も大学も卒業したはず…。
だがこの顔は!この顔は!…どう見ても十代…若返っている!やった!じゃない!)」
仗GIO「(百面相…)」
承太郎「(そもそもなぜこいつらが兄弟なんだ…親御さんはどれほどお盛んなんだ…。
幸いスタープラチナは問題なく出せる。この世界が一体何なのかを見極めなければ。
見極めるとは、聞くんではなく聴くことだ…見るんではなく観ることだ…)」ブツブツ
仗助「…」
ジョルノ「完全に自分の世界らしい、こうなったら何を言っても無駄なんだ…無駄無駄」
承太郎「(とにかくこれがなんらかのスタンド攻撃なのは間違いない。俺の本能がそういっている)」
承太郎「…よし、整理しよう」
承太郎「仗助…それからジョルノ。俺はお前らの『兄貴』なのか?」
仗GIO「…」
承太郎「(そんな目で俺を見るな)」
承太郎「悪いが俺が馬鹿になっちまったわけじゃねえ。
新手のスタンド使いに、俺たち全員攻撃されている可能性がある。
だから『16かける55は880だ』ってくらい当たり前のことでも確認する必要があるんだ」
仗助「…」
ジョルノ「…」
仗助「兄ちゃん、ひとついいッスか」
ジョルノ「ぼくも質問が」
承太郎「何だ」
仗助「スタンド…ってなに?」
承太郎「やれやれ、そんなことも忘れちまったのか…スタンドは…その…だな」
(思い出せん)
承太郎「!? ち、ちがう、落ち着け承太郎、COOLになるんだ。素数を数えて…」
承太郎「(まずい…。だんだん記憶があいまいに…それと入れ替わりで、よくよく考えてみれば兄弟が…いたような…気がしなくも…という気分になってきたぜ…)」
ジョルノ「珍しいですね、承太郎兄さんが」
仗助「いやぁ~、天変地異の前触れかってぐらいレアだぜ。承太郎兄ちゃんがうろたえるなんてよぉ~」
承太郎「俺を兄さんと呼ぶなァーー!」
仗GIO「」ビックゥゥッ
承太郎「ハァ、ハァ、すまん…少し取り乱した…」
承太郎「(じ、『自分ですら信用できない状況に追い込まれる』。それが恐ろしいところだぜ、この攻撃の…。
俺はすでに『自分のどの記憶が信用に足るかわからなくなっている』…)」
仗助「…あぁ~~、そーいえば、徐倫のことなんスけどぉ~~」チラッ
承太郎「徐倫…?」バッ
仗助「そうそう! 俺たちのかわいい妹ッスよ!」
ジョルノ「ああ…そういえば一足先に出ていましたね」チラッ
仗助「なんかぁ~~、アナスイッぽいヤツと登校してたような気がしたなぁぁ~とか…」チラチラチラッ
承太郎「徐倫…徐倫は…俺の娘だ……!」
仗GIO「…」
仗助「(グレート…本気でやべえよ兄ちゃん。ビョーインに連れてくべきだぜこれはよぉ~)」ヒソヒソ
ジョルノ「(落ち着いて…帰ったらジョナサン兄さんとも相談しましょう。幸い腕のいい医者には心当たりが…)」ヒソヒソ
承太郎「(今ので確信が持てた。ここは、俺の知ってる世界ではない)」
キャーキャーJOJOダワーオハヨウJOJO-オハヨウJOJOー
仗助「じゃあ、俺たちこっちなんで…」
ジョルノ「また放課後に」
ペコリッソソクサッ
承太郎「妙な誤解を受けている気がするぜ」
花京院「やあ、おはよう承太郎」
承太郎「ああ花京院」
承太郎「…」
承太郎「花京院ーーッ!!」
花京院「ケバブゥゥゥゥッッ!!」バキバキバキバキッッ
通りすがりの少女「す、すごい、バックブリーカーなんて大技…」
花京院「いきなり何をするんだい、ヘドぶちまけちゃったじゃないか」
承太郎「ゲロを吐くほど痛くしてすまん」
承太郎「…話がしたい。授業はサボって保健室まで付き合ってくれ」
花京院「もとよりそのつもりだよ」ゲボォッ
承太郎「保健室だぜ」
花京院「お互い向かい合わせでソファに座ってるね」
承太郎「…花京院、少し、質問をして良いか。おかしなことがあったら言ってくれ」
花京院「ああ」
承太郎「お前は花京院典明だ。
スタンド使いの一人で、名前は忘れたが(やれやれ…どんどん記憶があいまいになっていくぜ)メロンの筋が光ったようなスタンドを持っていて、得意技は緑色のぬるぬるしたものをカチカチにして飛ばすエメ…エロ…エロエロスプラッタとか…そんな…」
花京院「じょ、承太郎」ポッ
承太郎「なんでもいい。とにかくスタンド使いで、友達はいない」
花京院「えっ」
承太郎「で、エジプトのカイロでタンクに刺さって死んだ」
花京院「何で!?」ガビーン
承太郎「(やはりこの花京院は…俺の知っている花京院じゃねえ)」
ブオンブオンブオン
パラリラパラリラパッパー
WRYYYYYYYYYY
承太郎「何だ?この頭の悪そうな擬音は」
花京院「ま、まさかあいつらが…!」
DIO「フフアハハハハハハ! 流星十字軍(スターダストクルセイダーズ)の奴らよ、今日こそ倒しにきたぞー!」ドォーーン
メメタァッ
花京院「あいつ性懲りもなくって承太郎ーー!?(窓に頭を打ち付けているーー!?)」
花京院「一体どうしたって言うんだ、今日の君はらしくないぞ」
承太郎「逆に考えるんだ…。俺だからこの程度のメダパニで済んでいると」
花京院「承太郎…」
承太郎「そんな目で見るな…。花京院、あいつらは何だ?」
花京院「何を言ってるんだ。あいつらこそ僕たち流星十字軍(スターダストクルセイダーズ)の天敵、悪怒(わあるど)じゃないか」
承太郎「俺たちは暴走族なのか」
花京院「スターダストクルセイダーズだよ!」
承太郎「やれやれだぜ…」
DIO「どうした! 臆したか流星十字軍!」
ジョセフ「誰がビビッたって?」
DIO「ヌッ」
ジョセフ「ちょっぴりハイになりすぎじゃあねえの? DIOちゃんよぉぉ」
DIO「あいにく、ジョースターの一族を見るとぶちのめしたくなるサガなものでな…余裕たっぷりに出てきたところ悪いが、もしや、お前一人で我々を相手にする気じゃあなかろうな」
ジョセフ「えっ!? うそ、俺一人!? …なーんてね」
バババッ
DIO「ヌッ!?」
エンヤ婆「あびゅなぁーい! 上からおしょってくるぅ!」
ガキィィンッ(何か肉弾戦の音)
花京院「みんなが集まっている! 僕たちも加勢に行かねば、承太郎!」
承太郎「パスだぜ」
花京院「承太郎!」
承太郎「すまん。少し考えておきたいことがあるもんでな」
花京院「なにをっ…」ハッ
花京院「…わかった。信じよう、君を…!」タタタッ
承太郎「…(何か嫌な期待を背負ってしまったぜ)」
承太郎「(それにしても花京院、あいつあんなキャラだったのか…)」遠い目
ジョセフ「流星十字軍、総長ジョセフ・ジョースター!」バンッ
花京院「同じく総長補佐、花京院典明!」ドンッ
ポルナレフ「同じく特攻隊長、J・P・ポルナレフ!」バンッ
イギー「アウワオオオッ(親衛隊長イギー!)」バンッ
アブドゥル「そして私モハメド・アヴドゥル!」
一同「流星十字軍、押忍!!」ドォォーーーン
DIO「…」キョロキョロ
DIO「おい、承太郎のヤツはどうした」
ジョセフ「あれそういやいねえ」
ポルナレフ「花京院、お前しらねえか?」
花京院「それが…あ、あれは!」
マライヤ「屋上だぁぁーー! 屋上でサボってやがるビチグソがぁ!」
承太郎「やれやれ…やっとおちつけると思ったら…やれやれだぜ」
DIO「承太郎きさまァー! そんなところに座ってこのDIOを見下すんじゃない! 降りてきて勝負をしろォ!」
ジョセフ「朝といいどうしたのよー! 遅れてきた反抗期!?」
イギー「イギッグアアッ」
アブドゥル「やれやれですな」
承太郎「うっとおしいぜ…。しょうがねえ…スタープラチナ!」ドゴォッッ「で、床を壊したぜ」
承太郎「そしてスターパンチ!」
ボグシャアァァァ
DIO「UMUAA!」
ヴァニラ「DIOさまーー!!」
ブラフォード「意外ッ! それは投石!!」
フーゴ「どう考えてもパンチじゃないのにパンチと言い切るその度胸! 僕は敬意を表する!」
承太郎「やれやれ、これで静かになった」
承太郎「というか、今日はもう、フケるぜ」
テクテクテク
アナスイ「徐倫、今日こそ俺の気持ちをっとおおお承太郎さんこれはっ…?」
エルメェス「『スルー』!?」
徐倫「…き、奇跡よ…飛んでるゥ~~」
FF「明日はカエルか!?」
ウェザー「降らすか!?」
アナスイ「これはやっと認められ」スターフィンガー「ザクッときたァッ!!」
億泰「でよぉ~~そのとき兄貴がよぉ~~」
康一「とかなんとかいいながら由花子さんへのメール邪魔するのやめてってー」
仗助「つーかその話昨日も聞いた気がするぜ」
ジョルノ「ミスタ、次の授業サボりますよ。暗殺チームがストライキ起こしたらしいです」
ミスタ「げぇ!? またかよ、今月に入って五度目だぜ?」
フーゴ「じゃ、僕はド低の…腐れ脳ミソ他を拾って向かいますんで」
テクテクテク
ジョセフ「シィィィザァァァァァ!!」
シーザー「うるせえよ。ほら、千円な(授業ノート)」
ジョナサン「ディオ!! 君はまた講義をサボって!」
DIO「ヌオッおのれよくわかったなジョジョォ!」
テク…テク…テク…
ジョニィ「…」
承太郎「…」
ドジャァァーーーン
承太郎「お前は…確かうちの末っ子だったか」
ジョニィ「名前はジョニィ・ジョースター 中等部一年。まっ!この車椅子は気にしないでくれ」
承太郎「…それで、グーゼン鉢合わせたって感じじゃないな。何か用か?」
ジョニィ「今は落ち着いてるみたいだけど、今朝のあんたは…。どうもイカレてた。
すごくイカレてて…でもすごく『まとも』なようにも見えた…」
承太郎「『あんた』…? まて、てめえ俺のことを『あんた』と呼んだな?
普通、兄貴に対してそんな呼び方しねえと思うが…というか、てめえの態度、兄貴に対してにしちゃあいやに他人行儀な気がするぜ」
ジョニィ「ビンゴォ! やはり思ったとおりだ…『あんたは僕と同じようにこの世界に違和感を持っているみたいだ』」
承太郎「何…」
ジョニィ・ジョースターは杜王学園の中等部一年生である。
アメリカのケンタッキー州に生まれ、その後兄弟とともに現在の町に移住して来た。
幼いころから兄の乗馬技術に魅せられ、そのころから彼の夢は当たり前のように『兄のような天才ジョッキーになること』と決まっていた。が、幼いときの不注意で彼の下半身は完全に麻痺してしまう。
絶望だった。
物心付いてからの希望は一気に崩れ去り、彼の心の輝きは次第にくすんでいった。
周りは彼を励ましてくれたが、彼の心にはそれも儀礼的なものに見えた。障害を負っても成功を収めた人間の自伝を持ってくる者もいた。どの本も彼の心には響かなかった。
どうせこうなった自分のことを本気で心配してくれる人間などいない。自分の将来に希望を持ってくれる人間もいなかろう。なら、自分は一生このままでいい。そうしたら、少なくとも同情は買えるのだから。なにより――この方が楽だ。
ダメ人間の思考だった。彼の心は完全にいじけきっていた。
――そんなときに出会ったのが、年上の変なヤツ、ジャイロ・ツェペリ。
ジャイロは、彼の心に意地と誇りを取り戻させてくれた。ジョニィはようやく歩き始めたのだ。肉体的にではなく――少年から青春という意味で。
彼は中等部でジャイロとともに乗馬部に入った。
どこか影を背負った、いろんな意味で魅力的な男装の麗人ホット・パンツ――あらゆるところがいけ好かない天才ディエゴ・ブランドー――ダイエットとリバウンドを繰り返す顧問のファニー・ヴァレンタイン――。
さまざまな人間と交流し、彼の心は今また、輝き始めていた。
――だが。
彼はある日、ふと思いついた。
『自分は確かにケンタッキー州の生まれだったが、そのとき一緒だった兄は、どの兄だったろう(天才的に乗馬が上手かった兄はどこに行ったのだろう。兄弟で乗馬をしているのは彼一人だった)』?
五人の兄は口をそろえてこう言った。
『何を勘違いしてるんだ。お前はこの町の生まれだ』
――そういわれれば、そんな気もした。
そもそも、アメリカ・ケンタッキー州での記憶など彼にはなかった。
――だが、なぜ自分はそんな勘違いをしていたのだろう。
――空き教室
ジョニィ「そこで僕は、いろんな人間に質問をしていった。『出身地はどこ?』とか『家族との思い出は?』とか」
承太郎「それで」
ジョニィ「結論から言わせてもらうと、『穴だらけ』なんだ。どいつもこいつも過去の記憶と今がちぐはぐすぎる。
僕らの『兄弟』なんて、イギリス、日本、イタリア、アメリカと生まれ故郷からしてばらばらだ。
僕ら兄弟はほぼ一歳違いだっていうのにさ、一年ごとに産む国を変える母親なんているか? いや、いるかもしれないけど…そうしたら、誰か一人くらい、国から国に引っ越した記憶があってもいいと思わないか? ないんだよ、誰も」
承太郎「…そのくせ誰も疑問に思っちゃいねえのか」
ジョニィ「もっと興味深い事実を言ってやろうか。その『ちぐはぐさ』は次の一瞬には『修正』されている」
承太郎「『修正』?」
ジョニィ「さっきも言っただろ? 記憶自体が変わるんだ。そしてそれは『勘違い』だったってことで済まされる。ひどいときには、一瞬前にあったはずの家が更地になってたこともあった」
承太郎「この世界は『穴だらけ』だが…『修正』する早さがそれを補ってるようだな」
ジョニィ「だけど僕らは例外らしい。僕はここの矛盾に気づけたし…あんたは今朝唐突に気づいたみたいだけど」
承太郎「そこなんだが。俺は『気づいた』わけじゃねえ。感覚としては、『もといた世界』からいきなり『ここの世界』に放り込まれた、ってのがしっくりくる」
ジョニィ「じゃあ、おたくには『もとの世界』の記憶があるのか?」
承太郎「ああ、少しな。俺は高三のころあの、ここじゃあ暴走族のボスらしいが――DIOと戦って、二十歳後半のころ仗助と出会い、ジョルノ・ジョバァーナを知り…娘の徐倫と…なんかした」
ジョニィ「あいまいだな」
承太郎「察せ。俺の記憶も『修正』されてるらしいぜ」
ジョニィ「ぶっちゃけ、この状況はどういうことだと思う?」
承太郎「俺は新手のスタンド使いの仕業だと思う。というか、この超常的な力は、それしか考えられねえ」
ジョニィ「スタンドか…。僕の世界にもそういう人を超えた力はあったよ。そしたらさ、誰が何の目的でってところが重要にならないか?」
承太郎「心当たりは腐るほどあるが…お前と共通する敵となると、さっぱりだぜ。そもそもお前と面識がない」
ジョニィ「あ! …今思いついたんだけどさ、
敵スタンドの能力が『この世界に人間を住まわせる』ことだったら、僕も別の世界からここに放り込まれたってことになるよな」
承太郎「情報が少なすぎる今、安易に特定するのは危険だが…その前提ならイエスだろうな」
ジョニィ「となると、僕たちだけじゃない、この世界にいる全員が記憶を消されている…と考えてもいいかもしれない」
承太郎「ならあのDIOも本物のDIOかもしれないってことか。 …考えを改めなくちゃならねえ様だな。色々と…」
ジョニィ「とにかく、僕はもとの世界――があるとしたらだけど――に帰りたい。なにか、大切なものを残してきた気がするんだ」
承太郎「俺もだぜ。ここは前いたとこより平和だが、気にいらねえ。何よりムカつくのは、自分の名前も『修正』されてるってことだ」
ジョニィ「僕は変わってなかったけれど…そこにも何かヒントがあるのかな」
承太郎「忘れないうちにお前にも覚えてもらいたい。『俺の名は空条承太郎』。条と承が続いてるからジョジョっていうあだ名だ。…もっとも、この世界じゃそんなヤツ存在すらしてなかったみてえだがな」
ジョニィ「空条承太郎の消失、か…」
…時間軸は承太郎と別れた直後の仗GIOらに戻る…
仗助「ジョルノよぉ~。改めて思うに、承太郎兄ちゃんの様子、ありゃあ異状だぜ。溺愛してた徐倫にさえあの反応だもんなぁ~」
ジョルノ「仗助。わかりきったことを何度も言わないでください。二度言わなきゃいけないって事はそいつが馬鹿だって事です。同じ事を繰り返すなんて無駄なんだ、無駄だから嫌いなんだ、無駄無駄…」
仗助「んだよォ~、その態度はよォォ~」
ジョルノ「僕だって、あの承太郎兄さんがイカレちまったのはショックですよ。僕の言いたいのは、愚痴なんて無駄なことはやめろって事です」
仗助「イカレってお前」
ジョルノ オホンッ「失礼。とにかく、今日一日様子を見て、暴れだしたり等異常な行動が目立つようなら然るべきところに相談しに行きましょう」
ドッシィィーーン
仗助「うおっ!」
ジョルノ「仗助」
ガシッ グッ
徐倫「うおおっわりっ…って何だ、仗助兄さんか」
仗助「ぐ…グレー…ト…」
ジョルノ「徐倫、胸倉つかんで支えるのはいいですけど、それじゃあ首吊りです」
徐倫「うわっ、ごめん! 大丈夫、仗助兄さん!?」
仗助「ゲホゲホッ! し、死ぬかとおもったぜぇ~。なんか俺、朝から間抜けな役が続いてねえかぁ?」
ジョルノ「そんなことより、徐倫、どうしたんです。そんな大荷物を持って」
徐倫「ああ~、国語の先生に準備室まで運んでって言われちゃってさぁー」
ジョルノ「ブチャラティですか…徐倫に…なるほど…」サラサラ
仗助「何書いてんだよお前ェよー」
ジョルノ「ちょっとしたメモですよ。徐倫、ひとりじゃ大変そうですし、僕らも手伝いますよ」
徐倫「マジでェ~? 助かるわ、兄さん」
仗助「さらっと俺も手伝うことになってんのに意見言ってもいいですかぁ~」
ジョルノ「へえ。なら仗助は困っている妹に手助けのひとつもしないヤツなんですね。思いやりとか信頼とかに欠けた人間なんですね。そう思っていいんですね」
仗助「う、ううぅ~(前から思ってたけどよォ~、ジョルノみたいなクールっていうの? ねちっこいっていうの? こういうタイプ苦手だぜェ~、承太郎さんは平気なのによォ~)…ん?」
ジョルノ「どうしました、仗助。とっとと持ってくださいよ」
仗助「(なんで俺今、承太郎兄ちゃんに『さん』なんてつけたんだ?)」
仗助「(…ま、いっか)へいへいよ~っておい! 何で俺の持つ分が一番多いんだよ!」
徐倫「え? そう? 多い? あたししーらないー!」ダダダッ
ジョルノ「徐倫、廊下は走らない、またぶつかりますよ」タタタッ
仗助「ああ~もう! また間抜け役になってるぜ俺ェ~」ヨロヨロ
仗助「ってうわ! 一冊おち…」
ズギャンッ パシッ
仗助「…あり?」
――準備室
ジョルノ「だいぶモノが多いですね。この辺に置いとけばいいでしょうか」ドサッ
仗助「と言った時にはすでに置いてるんだからなぁー」ドサッ
徐倫「おかげで早く片付いたわ、ありがと、兄さんたち」ドサッ
ドサササァァーーー
徐倫「うおおおっ!?」
仗助「あーあ、何やってんだ徐倫」
ジョルノ「どうせ適当につんであったものです。適当につみなおしておきましょう」
徐倫「あーくそっ、ついてねぇー」
仗助「(本が多いんだな…国語の先生だし当然か)っと、本から『しおり』が落ちちまった」ヒョイ
仗助「…何だコリャ?」
徐倫「なんか見つけたの、兄さん?」
仗助「いや、この本の間にしおりが挟まってたんだけどよぉ~」
徐倫「『鍵を集めろ。期限は二日』…? なんかのメモかしら」
仗助「さあ…でも、なんか奇妙な感じがするぜぇ~…」
徐倫「…」
仗助「…」
ジョルノ「ふたりとも、何やってるんです。早く片付けて授業に戻りましょう」
仗助「お、おう…」ササッ
徐倫「…『ゴージャス・アイリン』。…読んだことはないけど、なんとなく、この本のための『しおり』じゃない気がするわ。なんとなく、この『しおり』は持ってなくちゃいけない気がする…」
~~~
承太郎「話も終わったし、とりあえず、俺はいったんうちに帰るぜ」
ジョニィ「僕はサボらないからね。不良じゃないから」
承太郎「…勝手にしな。また変わったことがあったら話し合おうぜ」
ジョニィ「ああ」
テクテクテク
DIO「フンッ、やっと来たか承太郎」
承太郎「…」
DIO「あからさまに嫌そうな顔をするんじゃあない。おい、待て、どこへ行く」
承太郎「テメーのいないところだ」
DIO「ヌッ…フッ…クックックなるほどな…なんだかんだと言って!貴様、このDIOにコンクリートの塊など投げつけたのを後悔しているのだな!気まずいのだろう!」
承太郎「(ああ、そんなこともあったか)」
DIO「よかろう! 謝るならいまのう…WRYYYYY!!このDIOを無視していくんじゃあない!」
承太郎「(うるさいぜ)…悪いが、いや、悪いだなんてこれっぽっちも思っちゃいねえが…テメーと関わりあってる暇はないんでな。消えろ」
DIO「ヌヌヌッ…おい待てというに! いったい何をそんなに怒っているのだ!今日の抗争のことか!?気化冷凍法で貴様の席を凍らせたことか!?体操着を赤く染めたことか!?
まさかとは思うがまだジョナサンの件を根に持っているんじゃあなかろうな!」
承太郎「…(頭が…。なんだ、このDIOの馴れ馴れしさは…まさかとは思うが…俺たちはこの世界じゃ『なかよしこよし』ってやつなんじゃあねえだろうな…)」
DIO「…フンッ!何に怒ってるにせよ! 今夜貴様のうちで夕食をいただくという約束は覆らんからな!」
承太郎「何…(家族ぐるみの付き合い…だと…)」
DIO「なにをそんなにおどろ…おど、そんなに嫌そうな顔をするんじゃあない!!」
承太郎「…おいDIO」コイコイ
DIO「なんだ?」テクテク
承太郎「テメーは確か…吸血鬼だったよな、おい、もっとこっちに寄れ」
DIO「今更なんだ、そんな当たり前のことを」
承太郎「太陽は大丈夫なのか? 今昼だぞ。…そうだな、もうちょっと左側へ出て来てくれるとベストだが…まあいいだろう」
DIO「フンッ。文明の利器…日傘さえあればすべて解決よ! それで?何が…」
承太郎「スタープラチナ!!!」ドーーン
DIO「うげえええええッ!!」ボゴーンッ
DIO「お、おのれ! 何だ今のは!? 何をした!? 痛い、痛いぞォ!!」
承太郎「見えてねえのか…」
DIO「何が?」
承太郎「もういい。失せな。テメーといると頭が痛くなるぜ」
DIO「なんだというのだ一体! 今夜貴様の血を吸いに行ってやろうか!」
承太郎「(やれやれ…残ってる設定の基準がむちゃくちゃだな)」
ジョニィ「ほ…ホット・パンツ…何をやってるんだ、体勢はともかくわけを言え…」
HP「いや…恐竜の乗り心地ってのが気になってな」
DIO「WRY…」
ジョナサン「お帰り、学校はどうしたんだい?」
承太郎「…あんたこそ」
ジョナサン「今日は大学は午前中で終わり。今日は週に一度のディオの来る日だし、晩は手の込んだものにしようと思ってるんだけど、リクエストあるかい?」
承太郎「そうか…納得だぜ」スタスタスタ
ジョナサン「そういう日もあるのはわかるけどね、サボりはよくないよー」
承太郎「ああ…明日は出るぜ…多分…」
ジョナサン「…随分顔色がよくなかったな…風邪なのを隠しているんだろうか? 承太郎らしいけど…」
ドサッ
承太郎「疲れたぜ…少し頭を…休ませよう…うん…」グーグースヤスヤ
トントンッ
承太郎「う…む…」
ガチャッ
仗助「承太郎兄ちゃん、ちょっといいスかー?」
承太郎「仗助か…学校は」
仗助「とっくに下校時刻ッスよ。それより今朝の話で聞きたいことがあって…」
承太郎「今朝?」
仗助「…」
承太郎「…」
ゴヅッッ
仗助「何やってんスか承太郎にいちゃーーん!!(額を角に打ち付けたーー!?)」
承太郎「あ、危ない…うっかり全部忘れるところだったぜ」
仗助「あぶねーのは兄ちゃんの行動言動ッスよ…」
承太郎「それで、聞きたいことってのは?」
仗助「何事もなく話を続けようとするその姿勢にはしびれるし憧れますけどね。…その、『スタンド』ってやつのことで聞きたくって…」
承太郎「『スタ…ンド』?」
仗助「変なこと話すけど…俺、小さいころからなんか『奇妙な能力』があるんス。物を直したり、傷を治したり…おれ自身のはちょっとダメなんスけどね。
変な風に思われるのがヤで、今まで隠してたんスけど。で、今朝兄ちゃんの『スタンド』って言葉を聞いてから…」
ドンッ
承太郎「!」
仗助「こんなクレイジーなモンが出てくるようになっちまって…これが『スタンド』なんスか? 『スタンド』って、一体なんなんスか?」
承太郎「仗助…!」ガシッ
仗助「おわっ!? なんスか?」
承太郎「思い出したぞ、お前は東方仗助だッ!」
仗助「は? いや俺は…」
承太郎「お前の母親の名前は何だ。祖父の名前は。出身はドコだ」
仗助「お、落ち着いてくださいよ承太郎さ、ん……?」
仗助「お…俺の出身はここですよ。杜王町…。母親の名前は朋子…ひ、がしかた…東方朋子…」
仗助「ああ! それで俺、ここの養子になって引き取られたんでした! だから今の名前は仗助・ジョース」
承太郎「仗助」ガシッ
仗助「だ、だから胸倉はやめて下さいってば~」
承太郎「『~~でした』なんて今思いついた言い訳はいらねえ。安易な記憶に流されるな。思い出せ、仗助」
仗助「~~…!」
ジョルノ「失礼します兄さん…って何やってるんですか」
仗助「ジョ…ジョルノよぉぉ~~! なんか承太郎さ…兄ちゃんがおかしいんだって!」
承太郎「おかしいのはテメーらだ! 目を背けるなと言っただろうが仗助!」
ジョルノ「ちょ…いったん落ち着いてください。暴力は無駄ですよ…何も生み出しません…無駄無駄…」
徐倫「何々? どうしたのよ大声出して」
ジョニィ「承太郎、どうした!?」
承太郎「…」
仗助「…」ダラダラ
ジョルノ「…」
ジョニィ「…!」
徐倫「?」
ジョニィ「うおおおおおおッッ!!?」ガクンッ
ジョルノ「ジョニィ?」
徐倫「あっづぅ!? し、『しおり』! ポケットに入れていた『しおり』がッ!」
承太郎「徐倫!」バッ
仗助「はぁっ! …な、なんなんだよもう…」ヘナヘナ
ジョニィ「せ、背中がァァーー! 僕の背中が猛烈に痛いッ!!」
徐倫「『鍵を集めろ』の文字が…変わっていく…!」
承太郎「『鍵』…そうか、期せずしてこの部屋に集まっていたというわけか、鍵がッ」
ジョルノ「三人とも無駄な行動は慎んで! ジョニィが大変なことになってますよ!」
ジョニィ「う…うぅ…!」
ジョルノ「背中が痛むんですね? 失礼」バサッ
ジョルノ「これは…」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ジョニィ「ハァ、ハァ、ハァ…『脊髄』…感じる……そうか…僕は『もとの世界』から、この『脊髄』を…」
ジョニィ「これは…『もとの世界』からのメッセージだ…!」
バァァーーンッ
徐倫「何これ、背中に…地図?」
仗助「みたいに…みえるな。ほら、ここが俺達の家で…学校。このバッテンは目的地…?」
承太郎「『お前たちは正解を集めた。道は開かれる』」
仗GIO徐「…!」
承太郎「『しおり』の言葉だ。ようやく一歩前進したようだぜ、ジョニィ」
ジョニィ「ああ…!」
――家族会議
シィィーーン…
ジョセフ「えー…ちょっと失礼。あー…つまりだ。お前たちはこの世界が『まやかし』だと。作られたものだといいたいのね?」
承太郎「ああ」
ジョニィ「その通りだよ」
ジョセフ「…」
ジョナサン「えっと…それはつまり…」
ジョセフ「…フ…フフフ…クックック…ハーハハハハハハッ! いや面白ェーー! お前らでもそんな面白いジョークが言えたのねェん!お兄ちゃんちょっとビビッちまった!」
仗助「あー…」
ジョルノ「…」
ジョセフ「ジョナサン兄貴もそんなマジにとるなって! で?今日は何の記念日なわけ? ジョニィの刺青記念日?」
徐倫「マジよ…」
ジョセフ「!」
徐倫「兄さん達は実際見てないからわからないだろうけど…これはマジよ…。それに、私達はジョニィの背中の地図の指す場所に…『いかなくてはならない』。そんな気がする…」
仗助「俺も! よくわからねえっちゃわからねえけどさ、俺も奇妙な感覚はあったんだ…前から…承太郎兄ちゃんのこと『さん』付けで呼んじまったり…この違和感をスッキリ解決できるのって、ここに行くしか方法はねえと思うんスよォ!」
ジョルノ「ふたりが行くなら僕も行きます。正直半信半疑だけど、2人の勘が間違ってるとも思えない」
ジョセフ「おいおいおいおいよォ~。マジで言ってんのか?お前ら。『アザが地図に見える』ってだけだろォ~?」
ジョナサン「承太郎…君が思慮深いのは知っているけれど…これは…その……なんていうか…」
承太郎「イカレてるか」
ジョナサン「承太郎!」
承太郎「信じられねーならそれでいい」シボッ
ジョセフ「!? ちょ、承太郎、オメー今…」
承太郎「どうした?何かあったか?」
ジョナサン「(き、奇妙だ…火はおろか煙草を出したのも見ていないのに…承太郎がいつの間にかタバコを吸っている!)」
承太郎「…」
ジョセフ「…ケッ!何の手品かしらねーけどな!俺にイカサマで勝とうなんて百年は早ぇぜ!」
仗助「ジョセフ兄ちゃん…」
ジョセフ「ジョナサン兄貴、こんな話信じるこたぁねーかんな」
ジョナサン「う、うん、それはもちろん…でも…」チラッ
承太郎「行くぞ」ガタッ
徐倫「うん」ガタッ
仗助「…」ガタッ
ジョニィ「じゃ」ガタッ
ジョルノ「…」ガタッ
ジョセフ「あー行け行け、どうせなにもねーよ。凹んで帰ってきたって慰めてやんねーからな」
ジョナサン「…」
ジョナサン「承太郎、みんな!」
承太郎「…」
ジョナサン「えっと…ちゃんと帰ってくるんだよ」
承太郎「そいつは無理な話だ」ザッ
ジョセフ「兄貴…いい加減家の中入れよ」
ジョナサン「本当に…行かせてしまってよかったんだろうか…」
ジョセフ「心配しなくても、明日の朝には戻ってくるって。『やっぱり何もありませんでした』ってな」
ジョナサン「でも…もう二度と彼らは帰ってこないような気がするんだ…」
ジョセフ「…」
??「…」
ジョナサン「……あ。もう来てたんだ…まあいろいろあってメンバーは足りないんだけど、とりあえず中に……どうしたんだい?」
DIO「…」
仗助「地図によるとこの線路の傍ッスねぇ~~」
承太郎「…」
ジョルノ「何もありませんね…」
ジョニィ「そっ…そんなはずはない! 僕の背中にこの地図が浮き上がってきたのは!必ず意味があるはずなんだ!」
ジョルノ「でも実際何もありませんよ。ここにあるのは野原と線路と小さい池です。それだけですよ」
徐倫「ここに何かが通るってことじゃあないの?」
ジョルノ「どっちにしても今来たのは無駄骨だったってことですかね…」
承太郎「いや。意味は『あった』ぜ」
ジョルノ「!?」
ジョルノ「!?」
承太郎「見ろ。この池の亀」
徐倫「甲羅に変な模様が…」
ジョニィ「いいや!鍵だ! 鍵のはまった亀!! やっぱりここにヒントはあった! 見てみろよ仗助って遠ッ!」
仗助「い、いや…爬虫類って奴は苦手で…」
ジョルノ「なんだ…どこかで見たことがあるような…この感覚…」ソッ
ブアアアアアアッ
徐倫「うおっ!?」
ジョニィ「うおおおおっ!? こ、これはー!」
承太郎「ジョルノが触れると同時に…!」
ジョルノ「何かが発動したのかッ!?」
仗助「うわあああ! 俺までーー!?」
シュルルルルッ
ドサッ
徐倫「いってェェ~~! 尻打った~~!」
承太郎「徐倫お前…いや、なんでもない…」
ジョニィ「部屋…?見たこともない部屋だ…なんで部屋に…?」
ジョルノ「いや。これは、やはり僕は見たことがある!」
仗助「…とりあえずよォォ~~! みんな俺の上からどいてくれねえかなァ~~!」
カツ、カツ、カツ…
JOJOS「!?」バッ
??「ようこそ…やはり…お前たちなら…ここに来てくれると思っていたよ……」
徐倫「誰!?」
ジョルノ「あなたは…!」
承太郎「…」
??「お前たちの力を感じたから…あるいは『ココ・ジャンボ』もお前たちを迎え入れたのか…」
ポルナレフ「久しぶりだな、承太郎にジョルノ…。そしてはじめましてそこの三人。旧交を温めてる暇はなさそうだな。ま、座れよ」
承太郎「オラァッ!」
ポルナレフ「なんでっ!?」
承太郎「すまん…『引っ張るだけひっぱいといてお前かよ』の気持ちが大きくてな…」
ポルナレフ「HEEEEYYYYYY!!あんまりだぁぁ~~…!」
ジョルノ「(こんなキャラだったのか…)」
ポルナレフ「えーっと、全員コーヒー党? あとはジュースしかないけどよォ」ガサゴソ
承太郎「いらねえよ」
ポルナレフ「おー! ここに来て三分も経ってないのにまるで自分の部屋にいるようなそのくつろぎ具合! 変わってねえな、承太郎」
承太郎「…。御託はいい。それより…話すことがあって呼んだんだろうが」
ポルナレフ「」ピタッ
ポルナレフ「『呼ぶ』?」
ジョニィ「あんたじゃないのか? 僕のこの背中…」
徐倫「この『しおり』は?」
ポルナレフ「…どっちも俺じゃないな。俺はてっきり、お前たちの『引力』でここにたどり着いたんだと思っていたが…」
ポルナレフ「じゃあ、あの時の…『矢』を持った手はお前たちの誰かではなかったということか?」
承太郎「『矢』? 何の話だ?」
ポルナレフ「俺がここの異変に気づいてまもなく…誰かがこの亀…『ココ・ジャンボ』に『矢』を刺したんだ。スタンドを進化させる『矢』を! 俺はその時寝ぼけてて『手首』までしか見えなかったんだが…」
ジョルノ「シリアスにいっても聞き逃しませんよ」
徐倫「随分マヌケね」
ポルナレフ「ううっ…。ま、まあ…そういうわけで進化した『ココ・ジャンボ』の中にいたわけだが…」
ポルナレフ「もう一度聞くが…お前らじゃないんだな?」
シィィーーン…
承太郎「わからねえことについて考えてもどうにもならねえ…ポルナレフ。今の口調じゃ、お前も『思い出した』ひとりのようだが?」
ポルナレフ「いや…それは少し違うぜ、承太郎。俺は『最初から記憶があったんだ』」
承太郎「…!」
仗GIO徐「!」
ポルナレフ「なぜ…俺が『もとの世界』の記憶を持っているのか。それは俺自身にもよくわからん。俺が幽霊だからっていうのが一番しっくり来ると思うがね」
ジョニィ「やっぱり…あるのか! 僕達の帰るべき世界が!」
ポルナレフ「ああ。結論から言うと、この『世界』は誰かがスタンドで作ったものだ、と、俺は思っている」
ジョルノ「スタンド…?」
承太郎「解説は後だ。ポルナレフ、言わせてもらうが、世界自体を構築するほどの精神力を持つ奴がいるなんて…それこそ眉唾物だぜ」
ポルナレフ「…ひとつ、話をしよう」
JOJOS「…」
ポルナレフ「ある男は自分の住む『世界』に疑問を持っていた…。
『この世界は本当は真っ白で、自分の行動する範囲に限って精巧な世界が作られているんじゃあないか』、と。
自宅、会社、学校…『海外旅行をしよう』と思ったらその時点で誰かがロンドンやらパリやらを先回りして作っている世界!自分のいるのはそんな『世界』じゃあないのか? と!」
ド ド ド ド ド ド ド ド ド
徐倫「あたしたちの世界も、『そう』だっていうの?」
ジョルノ「…!」
仗助「グレート…」
ジョニィ「すごく…イカレた話だ」
承太郎「だが納得はできる。それなら世界…地球丸ごとコピーなんて…無茶なまねはしなくて済むからな」
ジョルノ「しかし、いったい誰が、なんのためにその…『箱庭的世界』を作ったんです?」
ポルナレフ「そのヒントとなるのが、『この世界』の構成だ。『この世界』で俺が認識済みの『世界』をまとめてみた。…多分、お前たちの認識している『世界』とほぼズレはないだろう」
『ジョースター家』!
『十字流星群(スターダストクルセイダーズ)構成員』!
『DIOの率いる暴走族・悪怒(わあるど)』!
『ツェペリ家』!
『徐倫の友人』!『仗助の友人』!
『ジョルノの友人と「組織」』!
ポルナレフ「わかるか、この『世界』が!いったい『何を中心にできているかという』ことが!」
承太郎「」ハッ
ジョニィ「」ハッ
ジョルノ「まさか…」ゴゴゴゴゴ
ポルナレフ「この『世界』はッ! 『ジョースター家を中心に構成されているんだ!』」
徐倫「な」
JOJOS「何だってェーーッ!?」
承太郎「おい待ちやがれポルナレフ…そいつはつまり…『この世界』を作ったのは…」
ポルナレフ「『世界』の中心!それすなわち『神』! 『この世界』の『神』は!ジョースター家の中にいるッ!」
ドォォォーーーン
ポルナレフ「ジョースター家の『誰』が『神』なのか!?
俺の『体験』が、『ひらめき』をもたらしてくれた…昔語りをしてくれたジョースターさん、承太郎とDIOの因縁、ジョルノとの出会い、ココ・ジャンボ…どの『体験』が欠けても俺は『その答え』にはたどりつけなかっただろう!」
ポルナレフ「その人物とはッ!」
~~~~
ド ド ド ド ド ド ド ド
徐倫「うそ、でしょ…!」
仗助「グレート…」
ジョニィ「…すごく、映画みたいな展開だ…」
ジョルノ「…」
承太郎「…」
ポルナレフ「犯人は――『この世界』の『神』は『あること』を願ったのだと俺は考えた! それは『平和』!」
ポルナレフ「ありとあらゆる勢力が、その運命にとらわれず! 永遠に笑い合えるような平和な世界だ! なぜなら! 『ヤツ』は最初から敵と戦うつもりなどなかったのだから!」
ポルナレフ「一体何をどうやったのかはやはり推測の域を出ねえ…だが! 俺の考えについてきてくれるというなら、そのすべてを受け継いでくれると言うなら! 俺はありのままを話すぜ!」
ポルナレフ「誓ってくれ…俺の話を心から信じると」
シィィーーーン
ジョルノ「ポ、ポルナレフ」ガタッ
ポルナレフ「…」
ジョルノ「悪いけれど、僕はこれ以上付いていけません…」
承太郎「…」ピクッ
仗助「…ジョルノ。おめぇ、何言ってんだ?」ガタッ
ジョルノ「『あの人』が『神』?『もとの世界』だって? 意味がわからない…」
仗助「何言ってんだよオメーはよォォォーー!!」
ジョルノ「頭がおかしいとしか思えないと言ってるんだ! 『この世界』がまやかし!? じゃあ『僕の記憶』は、『苦労』は『仲間』は! すべてまやかしとでもいうのか!
ボスを倒しパッショーネを乗っ取って護衛チームと暗殺チームのわだかまりを解き! 麻薬ルートもようやく駆逐できたところなのに! それをすべてまやかしだというのか!」
仗助「…!?」
ジョルノ ハッ「い、いまのは…すみません、忘れてください…」
仗助「…まあ、薄々やばいことに足突っ込んでそーとは思ってたけどよぉ~」
ジョルノ「…とにかく、僕は『誇り』がある…短い間だけど、この世界でパッショーネのボスとして生きてきたという『誇り』が…」
仗助「ジョルノ…オメーの気持ちはわかるぜ…俺だって億泰や康一との関係とか、吉良吉影とのあれこれがゼロにもどっちまうと思うとゾッとするがよぉ~」
ジョルノ「…あなたの言いたいことはわかりますよ、仗助…でもやはり、これは譲れない…」
シィィーーーン
ジョルノ「承太郎兄さん、仗助、徐倫、ジョニィ、ポルナレフ…すみません。僕は、『降ります』」
仗助「…ジョルノよぉ~~」
承太郎「やめとけ仗助」
仗助「承太郎兄ちゃ…さん!何でとめるンスか! 『誇り』とか何とか言って、こいつは甘ったれてんスよ、『ここでの記憶』によぉー!」
ジョルノ「その通り、僕は都合のいい記憶に甘えてるのかもしれない…。仗助、僕は『覚悟』を知ってるつもりだ」
仗助「あん?」
ジョルノ「今の僕には『覚悟』がない…この居心地のいい世界を捨てて、光の道を切り開く『覚悟』が…ここで無理やり自分を納得させて付いていくのはたやすい…でもそれでは、僕は絶対に足手まといになる…だから『降りる』んだ」
仗助「…」グッ
ジョルノ「じゃあ僕はこれで…結果がどうあれ、また会えるよう期待しておきますよ」
ピューーーンッ
ドッシィィンッッ
徐倫「いっっってぇぇ~~!着地ィ~!着地ヘビィ~!」
承太郎「あのヤロー…」
ジョニィ「ああ~~!車いすの!」
徐倫「車輪が!」
仗助「コロコロ!」コロ~
コロコロコロ…
コツン
仗ジョ「!」
徐倫「あ」
承太郎「どうやら『特急便』だったらしいな」
ジョナサン「…みんな?」
影の歴史となった男がいた。
彼は戦場での激戦の末、敵の凶刃に倒れる。その肉体は吸血鬼に奪われ、灰になり――首から上は海底深くへと沈んでしまった。
百年以上を海の底で過ごしながら、生首にはまだわずかばかりの精神エネルギーが残っていた。
それは肉体に宿る残留思念と言ってもいい。
その『残りカス』のようなエネルギーが唐突に膨張し、爆発した。
ある『矢』の力によって。
ポルナレフ「なぜ海底に沈んでいたはずのジョナサンの頭部に『矢』が刺さったのか。そこまではわからない。
だがとにかく!頭部に残った『残留思念』はスタンドのエネルギーへと姿を変え、それは『残留思念』の望むまま、『世界』を作っていった。
あらゆる時間軸から俺たちを集め、記憶を改ざんし!徐々に『世界』を構築していった!」
ポルナレフ「この世界のジョナサンはその残留思念が形になったものだ。それはきっと、ジョースター家の血筋のものしか倒せない!
ジョナサン自身の魂がそれを望んでいるはずだからだ!」
承太郎「話は分かったぜ。今からジョナサンの野郎をぶちのめしに行けばいいんだな?」
ポルナレフ「先祖にお前…ま、まーそういうことだ」
ポルナレフ「ここで進化した『ココ・ジャンボ』のスタンドが役に立つ。これは部屋の内部にいる人間を好きな時間・好きな位置へ『飛ばす』ことができるんだ。俺は幽霊だからダメみたいだけどね。お前たちが望むなら、すぐ生まれて間もない『神』のもとへ『飛ばして』やろう」
仗助「望むに決まってるッスよぉ~~。俺には詳しい事情はわかんねえけど、『あいつ』をぶっとばしてやんなきゃってのはわかってますからねぇ~~」
承太郎「ああ…これは俺達『血族』の責任だろう」
ジョニィ「僕も、『あいつ』が僕にとっての悪なら、それを正す必要があると思ってる」
徐倫「あたしも気持ちは同じ。さっ、早くやっちゃってよ!」
ポルナレフ「やったぞ。既に」
JOJOS「え」
そういうわけで瞬間移動してきたのである。
承太郎「(…ちょうど世界の改ざんをしていたみてえだな)」
ジョナサン「承太郎、仗助、徐倫、それにジョニィまで。こんな夜遅くにこんなとこで、一体何をしてるんだい?」
承太郎「それはこっちのセリフだぜ、ジョナサン・ジョースター」
ジョナサン「? いや僕は…えっと…ああそう!散歩だよ、散歩に出てたんだ」
ジョニィ「とぼけてる…いったん締め上げるか?」
仗助「いいや、あのキョトン顔…俺には嘘ついてるようには見えないッスけどねぇ~」
承太郎「自分の記憶も消す、それは『盾』だ…自分が完璧に被害者に成りきるっていうな…」
ジョナサン「四人とも…なんでそんなに怖い顔をしているんだい?」
徐倫「ジョナサン兄さん…あんたは自分が悪だと気づいてない…『もっともドス黒い悪』だ…」
ジョナサン「…?」
ジョニィ「とにかく、やっとこの『世界』の『神』をあぶりだしたんだ」
承太郎「少々手荒くなるが…てめえには『思い出して』もらわなくちゃならねえんでな」ザッ
ジョナサン「な、なにをするだァーー!」
徐倫「脚固めたァ! これで逃げれないわよ!」
仗助「今ッス承太郎兄ちゃん!頸動脈をコキッと!」
承太郎「いや、スタープラチナならデコピンで十分だ」ドンッ
ジョニィ「後援は任せろー」グルグル
ジョナサン「やめて!本当にッッ!」
ドォォーーーン
承太郎「」
承太郎 ハッ「こ、これは…まさか」
ドドドドドドドドドド
承太郎「まさか…」
ドドドドドドドドドド
徐倫「」
承太郎「ッ!!」ダッ
ドスゥッ
ザ・ワールド
DIO「『世界』…時は止まった…!」
承太郎「DI…O…」
DIO「フンッ…娘をかばって飛び出したか。承太郎、相変わらずだな。相変わらず、便所のネズミの糞ほどにも価値のないことにこだわる…だから…こうなるのだァァー!」
ズボォォッ
承太郎「がっ…」グラッ
DIO「そして時は動き出す…」
承太郎「」ドサァッ
徐倫「…」
仗助「え」
ジョニィ「じょ……ジョータロォォォ!!!」
徐倫「うおおおおおっ!? なぜっ! いつの間に承太郎兄さんがっ!」
ジョニィ「仗助! 早く治療しろ! 腹に穴が開いている、出血も…」
仗助「…」
ジョニィ「何をしている仗助ェェー!! 早く治療しろォォーー!!」
仗助「ち…治療はよォ…『もうやったんだ』」
徐倫「…」
ジョニィ「」ハッ
仗助「治療は終わってんだよ、とっくの昔によォ…なのに、なんで目があかねーんだ…」
ジョニィ「…」
徐倫「…うそでしょ…」
ジョニィ「あの承太郎が…あっけなさ過ぎる…」
徐倫「う…うう…うああああああ!! 起きろ! 何寝てやがる畜生! くそっ、父さんッッ…!!」ハッ
ジョニィ「徐倫…今…」
徐倫「とう…さん…」
DIO「フム…一番厄介なのを叩いたのはいいが…思った以上に『世界』の均衡は崩れてるらしいぞ、ジョジョ」
ジョナサン「…い、一体…ディオ、君は何を、なぜ承太郎が」
DIO「わからんか?」
ジョナサン「わ、わからない…僕には何がなんだかさっぱりわからない」
DIO「ならそれでいい。考えることは、すべてこのDIOに任せればいい」
ジョナサン「ディオ…?」
DIO「ジョジョォ…たった一言…一言でいい。この場を『任せる』と言ってくれれば…すぐお前の不安を粉砕して消滅させてやろう。なぁに時間はかからんさ、ほんのちょっと目をつぶっていれば、すぐ元通りの『世界』に戻してやる」
ジョナサン「ディオ、君はいったい何を言ってるんだ?」
DIO「貴様の洗面器に小豆粒を放り込んだような脳みそでは、どの道理解できん。“Every man to his own trade.”(餅は餅屋)だよジョジョォ…素人が頭ひねるより…その道のプロフェッショナルに任せたほうが得策だと…俺は思うがね」
ジョナサン「ディオ! しっかりしてくれ、君までおかしくなったら僕はどうすればいいんだ!」
DIO「何度も言わせるなよジョジョォ…見るな、考えるな、わかろうとするな。だがそれでお前が盲目になることはない。俺たちは『ふたりでひとり』なのだからな…このDIOさえすべてを承知していれば…何も問題はないのだ」
ジョナサン「ディオ…ぼ、僕は…」
DIO「わからんヤツだな。考えなくていい。ほんの一言、一言言うだけでいいのだ。『任せる』と…」
ジョナサン「…」
ジョニィ「あのDIOも…同じだ」
仗助「みたいだなぁ~、ジョナサンの盾ッつー点ではよぉ~」
ジョニィ「逆に考えれば、呼び出した本人さえうろたえるほどのイレギュラーを持ってくるほど追い詰められてるって事だ、この世界は…」
徐倫「」キッ
徐倫「DIOォォーーー!!」ドンッ
仗助「うおっ! 俺の『スタンド』みたいな奴を徐倫も出した!?」
ジョニィ「『思い出した』のか…」
仗助「ジョニィ…承太郎さんはまだ死んじゃいねえ…頼んだぜ!」ダッ
ジョニィ「仗助!」
徐倫「オラオラオラオラオラオラオラオラァァーーッ!!」
DIO「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!! のろいのろい! なまっちょろいぞ!」
徐倫「ぐぅっ!?」ブシュッ
仗助「だが問題なく治す!」ギュンッ
徐倫「仗助…!」
DIO「フッ…雑魚が一人増えたからといって何になる…」
ジョナサン「ディ、ディオ!!」
DIO「なんだ…? まさか『やめろ』とか言い出すのではなかろうな…これはお前が望んだことだぞ」
ジョナサン「!? ちっ、違う!」
DIO「そう思うのは勝手だがな…ムッ」
徐倫「うおおおーーーッ!」
仗助「ドラララララァッ!!」
DIO「おっと、フム…これは困った、手が四本欲しいところだな」
ジョナサン「ディオ!!」
DIO「…」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ジョナサン「殺しちゃ…いけないよ…」
DIO「ああ、そうしよう」
ジョニィ「…ッ」グルグル
ジョニィ「くっ…くそ! なんて早さだ、『タスク』で狙いを定める隙がない! …このままじゃ…!」
徐倫「ぐっ!」ドサッ
仗助「いっ…でえ…」
DIO「他愛もない……さて、この『世界』に、戻ってもらおうか…」
仗助「誰が…そんなもん…」ゼエゼエ
徐倫「(まずいわ…仗助は自分の怪我を治せないの…?)」
DIO「」ピタッ
仗徐「…?」
DIO「ま、まさか…」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
DIO「死体が…死体が承太郎の…!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
DIO「死体がないだとォーー!?」
ジョナサン「な、なぜだ…どうしてこんなことに」ガタガタガタ「僕は、ただ…」
承太郎「ただ…なんだ?」
ジョナサン「…!」
承太郎「まったく…やれやれだぜ…『ちいと…遠回りすぎるぜ』、ジョナサン・ジョースター」
承太郎「オラァッ!!」ドゴォッ
ジョナサン「ぐ…!」
DIO「ジョジョ! 承太郎貴様ァーー!」
承太郎「」バッ
スカッ
DIO「な…なにィィ!? ワールドの腕が透けただと!?」
承太郎「どうやら、これで終いだな…」
ジョニィ「…じょ、承太郎! 大丈夫なのか!?」
承太郎「ああ…どうやら…『殺しそこなってくれたらしいからな』」
仗助「そいつぁどーゆー…っと」ドンッ
徐倫「」ズンズンズン
バシィッ
承太郎「…?」
ジョニィ「ひ…」
仗助「平手…」イタソー
徐倫「傷が治ってるならよォ~…とっとと目を覚ませってのよ馬鹿親父ィーー!!」
承太郎「すまなかったな…心配をかけた」ポンポン
徐倫「うるせェ誰がだコラァーー!!」ポカポカ
仗助「…」
ジョニィ「…『やれやれだね』」
仗助「ッスねェ~っと…」
DIO「ヌオオオッ! ど、どういうことだ、ワールドが出せない…スタンドがッ!出ないだとッ!?」
ジョニィ「あいつの体が…どんどん崩れていく…」
仗助「いや…あれは崩れてんじゃねえ…『変わってってるんだよ』ありゃあよォ~~」
ディオ「ぐ…!?」バサァッ
ジョニィ「マントの似合うフワフワヘアーに!?」
仗助「それによォ~心なし、若がえってねえか?」
ディオ「ヌオオオッ…!」ググググ…
ジョニィ「ま、まだ変わってる…」
仗助「このままよォ~究極体になっちまうとかいうオチじゃあねーよなァ~?」
承太郎「いや、『逆』だぜ、仗助。あっちを見な」
ジョナサン「…」ググググ…
ジョニィ「あ、あいつもか…?」
承太郎「ここは…ジョナサン・ジョースターの世界だ」
ジョニィ「」ハッ
徐倫「そうかッ!この現象は!ジョナサンの精神に限界が来ている証拠! 度重なるイレギュラー因子によって混乱がピークに達してるんだわ! それでも本能は自分の身を守ろうとする!」
仗助「そこまで聞きゃー俺にもわかってきたぜェ~。動物の赤ん坊ってのは、外見の『かわいさ』を武器にして敵に襲われないようにするって話だ! だからジョナサンにいちゃ…ジョナサンも本能的に身を守ろうとして若返っている、いや、幼くなってやがる!」
ジョニィ「だ、だが!それは同時に戦う力を失うということ!『自滅』!自分の身を守ろうとして逆に『自滅』してしまっている!」
ジョナサン「う…あ、あれ?」
承太郎「」ドドドドドド
ジョナサン「ひっ!? だ、誰?誰なの?」
承太郎「」ヒョイ
ジョナサン「わああ! な、なにをするだァー!誰か助けて!父さん!ディオ!」バタバタバタ
仗助「これを…締め上げるんスかァ~?」
ジョナサン「」ビクビク
徐倫「わかってはいても、気が進まないわね…」
ジョニィ「でもやらなくちゃいけないんだろ。みんながどうしても嫌なら僕が…」
ドンッ
承太郎「!」
ディオ「貴様ァ!その薄汚い手を離さんかァ!」ポコポコ
ジョニィ「小さいな」
徐倫「小さいわ」
仗助「小さいッスねェ~」
承太郎「やめときな…今のテメーは吸血鬼でもスタンド使いでもない…ただのガキだ」
ディオ「…ッグ、ヌヌヌッ…!」ピクピク
承太郎「俺が聞きたいのはだぜ、ジョナサン」ヒョイ
ジョナサン「ヒッ!」
承太郎「どうして俺を殺さなかった。テメーなら…いや、テメーの動かしてるDIOか、そいつならやれたはずだろう」
ジョナサン「え、あの、なんの話か、僕には…」
ディオ「離せと言ってるだろうこの汚らしい阿呆がーー!」ゲシゲシ
承太郎「」イラッ
仗助「承太郎さん抑えて、相手は子供ッスよ」
ディオ「フンッ! いーだろう承太郎、その阿呆の代わりにこのディオが答えてやる。貴様を殺さなかったのはただ単に手元が狂ったせいだ! 急に呼び出されたのでうまくワールドを扱えなかったのだ!これで満足かッ!」
承太郎「いいや、全然。まったく」
ディオ「」ギリッ
ジョナサン「」オロオロ
承太郎「思えばジョナサン、俺たちの『旅』はどうも順調すぎた。常に誰からのものかわからないヒントをもらってたからだ。ヒントをくれたのは誰だ?」
承太郎「…俺はこう考える。『世界』に干渉できるのは『神』だけだ」
ジョナサン「僕は…何も知らない…」
承太郎「そうかもしれねえ。だが、テメーの深層心理を勝手に汲んで、勝手に動いてくれる奴がいるだろう……さっきだって頼まれもしねえのにやってきた…」
仗助 ハッ「『DIO』!」
仗助「なるほどォ~~?ジョナサンの考えを、DIOが代わりに実行してたっつーわけか!」
ジョニィ「じゃあココ・ジャンボに『矢』を刺したのは!」
徐倫「あの『しおり』を仕込んだのも…」
承太郎「テメーだな、DIO」
ディオ「…」フイッ
ジョニィ「ちょ、ちょっと待ってくれ。なら彼らは『僕たちを閉じ込める』『脱出のヒントを送る』それらを同時にやってたってことかい? 確かにつじつまは合うけど…すごく合うけど…すごく、イカレた話だ」
仗助「確かに、それってよぉ~矛盾っていわねースか? 俺らを閉じ込めたいのか、逃がしたいのか、どっちなのかっていうかよォ~」
徐倫「でも…こいつらからすれば、その行動は『無駄』じゃあないのよね…」
承太郎「テメーがこの世界の『神』ってことは確実だ…それは間違いねー。だが、『なぜ』やったのかってのはまだはっきりしてねーな」
ジョナサン「…ッ」ダラリ
承太郎「とぼけるのは終わりだ…。ジジイのジジイ…ジョナサン・ジョースター…『てめえ、誰をかばってやがる』」
ジョルノ「(家に誰もいない。心当たりを当たってみてもどこにもいない、そう…まるで『この世界』から『消えうせた』ように)」
ジョルノ「(あのときのフーゴを思い出す…彼は冷静に物事を見すぎたから、一歩を踏み出せなかった。運命に立ち向かう一歩を…)」
ジョルノ「(そう…。何がきっかけなのかわからないけれど…僕は『もとの世界』の記憶を取り戻しつつある)」
ジョルノ「(そこでようやく僕は、本心からみんなを信じる気になれた)」
ジョルノ「『だが、遅すぎる』とみんなは言うんでしょうね。きっと、みんなを追う手段は、すでに失われてしまった。『この世界』の『神』からしてみれば『しめしめ』といったところだろう…」
ジョルノ「…だが」バンッッ
ジョルノ「『僕がここに残ったのは僕なりの考えがあったからだとしたらどうだろう』?」
ジョルノ「自分で言うのもなんだが…僕は『冷静に』この状況を見極めようとしている。あの時…ココ・ジャンボの中で決断を迫られたときだってそうだった」
ジョルノ「僕は考える。『果たして本当にジョナサン兄さん…ジョナサンさんが「神」なのだろうか』と。話を聞く限り、彼は納得して死んでいった。あとのことはともかく、彼は納得して天に召されたんだ。
納得は安らぎだ。安らぎの中にある彼が、いまさら僕たちに干渉してくる理由は何だ? 『まったくない』。彼は見守りこそすれ、僕たちに干渉するだけの理由など『ない』んだ」
ジョルノ「『ではなぜジョナサン・ジョースターが犯人と思われたのか?』僕は仮説を考え出す。
1.ポルナレフの見たジョナサン・ジョースターは偽者だった。
2.実行犯はジョナサン・ジョースターだが、裏で彼を操っている人物がいる。
どちらにしたって、『じゃあ誰が真犯人だよ』という疑問が残る」
ジョルノ「僕は考えた。ジョースター家を中心にこの世界は作られている。ではなぜジョースター家なのか? 空条家や、汐華家ではないのか? 答えは一つ、『神』自身が『ジョースター』だからだ」
ジョルノ「そしてこれも重要。『イレギュラーを生み出すのはイレギュラーだ』」
ジョルノ「最後の思索だ。『ジョースター姓であり、なおかつイレギュラーなのは誰か』?」
ジョルノ「…」
ジョルノ「ジョセフ・ジョースター…あなた、見ているんでしょう」
ドドドドドドドドド
ジョセフ「…」
ドドドドドドドドド
ジョセフ「『OH MY GOD』…!」ニヤリ
影の歴史になった男がいた。
ジョセフ・ジョースターは愛する祖母から繰り返し繰り返しその話を聞いていた。
やさしくて、強くて、誇り高い。そんな彼はある男との戦いで死体すら残さずこの世から消えた。
幼心にその人生は心に響いた。
そんな男の死体が、百年の歳月を超えて見つけ出されたと聞き、ジョセフはおっとり刀でSPW財団へと走ったものである。
海底調査の途中で偶然見つけ出されたのだという。DNA検査はまだだが、時期と地点からほぼ間違いないとか。
そんな情報がなくても、ジョセフはすぐその死体が先祖のものだとわかった。
ジョセフは驚いた。その頭蓋に重なって、あるヴィジョンが見えたのだ。
それは『世界(ザ・ワールド)』の頭部だった。
ポルナレフからの証言をもとに、ジョナサンの肉体が『スタンド』を発現していたのは知っていた。
だがそれは、己の『隠者の紫(ハーミットパープル)』と同じイバラのスタンドだったはずでは?
そして、ジョセフはさらに考える。
DIOはあの戦いの終盤、自分の血を吸って体を完全に『なじませていた』。
そのとき『スタンド』も一体化していたとしたら?
それはDIOと『ボディ』の精神――DIOの精神とジョナサンの残留思念の一体化である。DIOが敗れたことにより、『ワールド』は別のよりしろを求めたのではないか? それが、海底深く沈んだジョナサン・ジョースターの頭部だった。と。
だが所詮死んだ本体に取り付いたスタンドだ。じき消える。
ザ・ワールドにSPW財団所有の『矢』を刺してみたのに深い意味はない。もしかして、先祖の声を聞けるかもしれないという淡い期待だった。
『矢』はしっかりと死にかけの『ワールド』に刺さり……直後、パワーは膨張して爆発した。
ジョセフは瞬間、『ザ・ワールド・レクイエム』の力を知った。
そして自分の力を知っていた。『ハーミットパープル』……『念力』。
この力は強大すぎる。暴走させるわけにはいかない。
なら自分が制御するしかないじゃあないか。
だが、老いた魂は逆に『世界』に呑み込まれていく――。
ジョルノ「…『ゴールド・エクスペリエンス』。僕のスタンドも復活している…!」ドンッ
ジョセフ「…」
ジョルノ「言い訳はいらない…一気に行かせてもらう」
ジョセフ「…十代ってさぁ~」
ジョルノ「?」
ジョセフ「一番輝いてるときだよねぇ~ん。二十代でもまだまだ、三十くらいから色あせてくるんだよなぁー」
ジョルノ「…何を言ってるのかわからない…イカレてるんですか?この状況で…」
ジョセフ「おまえが『過程や方法なんぞどうでもいい、ぶちのめせればよかろうなのだぁぁ』みたいな感じに話進めるからさぁ~俺がこうして自分から説明してあげてるんじゃないの。ジョルノ~。確かお前は二十そこそこまでしか生きてないだろ?」
ジョルノ「だからなんだというんだ」
ジョセフ「『死ぬことの苦痛を思うのは簡単だ。だが、生きることの苦痛は経験と時間でしか計れない』…誰の格言か知ってる?」
ジョルノ「いいえ」
ジョセフ「俺が今考えた」
ジョルノ「」イラッ
ジョセフ「俺はさぁ~八十そこそこまで生きてそれを知ったわけよ。いや、誤解が怖いから言っとくと、なにも『不死身』や『不老不死』に憧れたっつーわけじゃねえぜ。『生きることの苦痛』…それは過去を思う苦しみさ」
ジョルノ「同じだ。『若さ』を求めるという点では…」
ジョセフ「だーかーら、違うって言ってんのよぉ~『老人は若さに憧れる』。若い奴はすぐそう考えるんだもんな~」
ジョセフ スッ「たとえば…」
ジョルノ バッ「…!?(いつの間に背後に…それにジョセフの姿が!老人になっている!)」
ジョセフ「向う見ずな行動とか、新鮮さとかな。それは羨むに値しない。かわりに経験という、素晴らしいものを手に入れたからだ」
ジョルノ「ではなぜ」
ジョセフ「おお! やぁっと聞いてくれたの! そう、強いて言えばそれは『愛』だった!」
ジョルノ「愛…?」
ジョセフ スッ「俺は思ったのよォ、ジョルノ~」
ジョルノ「(また…! 今度は若く…!)」バッ
ジョセフ「今まで『運命』という名のもとに過ごしてきた時間のむなしさをさぁ~。『戦闘』『戦闘』『戦闘』!あらぶる潮の流れのように俺の人生は戦いばかりだった」
ジョルノ「あきれたな…だからすべてを否定しようというのか。その戦闘の中で生まれたものさえも否定しようというのか!」
ジョセフ「いいや、ジョルノ。おれはさぁ~悲しくなっちまったのよ。なあんてアワレなんだってさ。俺も、俺と戦った奴らも、これから戦うことになるだろう俺の子孫も」
ジョセフ「もし運命があるとしてー…人間同士の『引力』があるならー…『戦わずに出会えた世界もあったんじゃないか』ってな」
ジョルノ「戦うのが運命だった」
ジョセフ「いいや違う! 違うぜジョルノ。『和解』はできたじゃないか。お前の組織みたいにさぁー」
ジョルノ「…!」
ジョセフ「『いくら人死にが出てもおかしくない抗争だった』『でも暗殺チームも護衛チームも、組織のボスも、誰一人として死ななかった』」
ジョセフ「俺が夢見たのはまさにそういう世界なんだよジョルノォ~。『抗争』はあっても『殺し合い』はない世界なんだぜ」
ジョルノ「そんなもの…」
ジョセフ「『甘い』と思うか、ジョルノ。でもこれは『素晴らしい世界』と思わないか、ジョルノ?」
ジョルノ「あなたは…あなたは自分で積み上げてきた屍を見て、恐怖したに過ぎない! 僕はそんな感情持たない、絶対に!」
ジョセフ「お前は次に『「運命」に立ち向かい死んでいった仲間のためにも!』と言う…」
ジョルノ「運命に…」ハッ
ジョセフ「ジョルノジョルノジョルノくぅ~ん。『生きることの苦痛』についてはまだ話し終わってないんだぜ」
ジョセフ「これはお前も簡単に想像できることだ」
ジョセフ「『生きることの苦痛』。それは過去の苦痛、『残された者の苦痛』だ。お前も大事な人間をなくしてるからわかるだろ?」
ジョセフ「『どうしてあの時死んでしまったんだ』『あの時自分がこうしてれば今あいつは隣で笑っていたかもしれないのに』」
ジョルノ「…!」
ジョセフ「年を取ってやることがなくなるとよぉーどうしても日に二三回はそう考えちまうのよ。いつだって『あいつ』は俺の後ろにいて、俺はそのたび『あったはずの素晴らしい世界』を思っちまうのよ」
ジョセフ「俺やお前だけじゃない。大切なものを失った奴は、誰だってそう考えて、苦痛を感じるんだ。
その気持ちを片付けなきゃならねえ。片づけるってつまり、過程はどうあれ悲しみを忘れるってことだ。忘れて傷を背負いつつ生きるってことだ。
『愛』ゆえに、俺らは苦痛をこらえて生きなくちゃならない」
ジョルノ「…あなたは思ったよりネガティヴだ」
ジョセフ「いや! いやいや、俺ほどポジティヴな男はいないよん。だから、その何十年来の苦痛を消す方法があると知って飛びついたんだ。お前だってきっとそうする」
ジョルノ「僕はお前とは違う」
ジョセフ「そうかな?」
ズアッ
ジョルノ「…! これは…あなたは…!」
ブチャラティ「…」
ジョセフ「お前にだってあるだろ? 『生きることの苦痛』。ぽっかりと空いた心の『穴』が」
ジョルノ「…こんなものはまやかしだ」
ジョセフ「いいや。いっとくけど、このブチャラティは偽物なんかじゃないぜ。死ぬ前の時間から来たってだけの…まぎれもない本物だ。『素晴らしい世界』になじみやすいよう、ちょこっとばかし記憶をいじってはいるけどねん」
ジョルノ「同じだ、まやかしだ!」
ジョセフ「ちっちゃいことにこだわるねぇ~、ジョルノは。お前の心にとって大切なのは、今本物のブチャラティが生きて動いてるってことじゃねえか?そうなんじゃあねえのか?ジョルノォ~!?」
ジョセフ「ふぅ~~ん。じゃっ!ま、その『覚悟』がどれほどのもんか…見せてもらおうか、ジョルノ!」
ブチャラティ「…」スッ…
ジョルノ「…!」
ブチャラティ「『スティッキーフィンガーズ!!』」グアッ
ジョルノ「…ッ無駄ァァァ!!!」
ドゴォォンッ
ジョセフ「あらら…結構ためらいなくぶっ飛ばしちゃうのねえ」
ジョルノ「ハァーッ、ハァーッ、ハァーッ!」ガクガクガク
ジョルノ キッ「ハァーッ! 吐き気をもよおす『邪悪』とはッなにも知らぬ無知なるものを利用することだ…! ましてやブチャラティをー!お前がやったのはそういうことだ!
お前のスタンドは誰も正体を知らないし、被害者自身も気づけない…だから……僕が裁く!」
ジョセフ「…裁く、だと? 馬鹿を言うんじゃあねえぜジョルノ…」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ジョセフ「裁くもエジプトも!てめえはもうすでに動けねえんだからなぁー!」
ジョルノ「! こ、これは!(…いつの間に…僕の足元から放射線状に糸が張り巡らされてある…!)」
ジョセフ「会話している間にじっくりこの仕掛けを作っていたのよ…これでかるーく波紋を流して気絶させてもらうぜ」
ジョルノ「ゴールド…」
ジョセフ「遅い!くらえ波紋疾…」
ガグンッッ
ジョセフ「いぶおおおおお!?(床がいきなり裂けやがった!?いったい…)」
ジョルノ ハッ「じ、ジッパー…まさか…」
ガシィッ
ジョルノ「なっ」
ブチャラティ「…」
ジョルノ「…なぜあなたが…僕を落下から助けた…?」
ジョセフ「ハーミットパープル! ひぃ~、なんとか落下は免れたぜぇ~…にしても…」チラッ
ジョルノ「ブチャラティ…あなたは…やっぱり…」
ブチャラティ「この床の下は…異次元につながっている。きっと、お前が会いたい奴らもそこにいるはずだ」
ブチャラティ「この意味が分かるな?」
ジョセフ「記憶はなくても…本質は変わらないか……よくわかったぜ」
ジョルノ「待ってくれ!あなたは僕のッ!」
ブチャラティ「行くんだジョルノ。ここは俺が引き受ける」パッ
ジョルノ「! ま…ッ」
ブチャラティ「…」
ジョルノ「…」グッ
ジョルノ「…さようならブチャラティ…あなたの意志は、いつまでも僕とともにある」
ブチャラティ「…」
ブチャラティ「アリーヴェデルチ(さよならだ)」
承太郎「…ッ」
仗助「こ、これ一体どういうことなんスか、承太郎さん!」
徐倫「いちいち父さんにきいてんじゃねェーーよ!!」
仗助「すいません!」
ジョニィ「…しかし…これは…」
ディオ「URRYYYYYYYY!!?」
ジョナサン「ディ、ディオの腕がッ!僕の頭部に吸い込まれていくーーッ!?」
ジョニィ「いや、違う…『同化』している、あれはッ!」
ズルンッ
徐倫「DIOが…く…食われた?」
承太郎「いや…『元に戻った』のか…」
ジョナサン「う…」ゴゴゴゴゴ
ヒュゥゥゥゥ…
ドゴォッ
仗助「ぐぶっ」
ジョルノ「…!」
ジョニィ「ジョルノ!? …なんでここに…」
ジョルノ「ある人の導きで…とだけ言っておきます。それで、どういう状況ですか?」
承太郎「見ての通りだ。何もわからねえ……お前は何かわかったようだが…」
仗助「いや俺がつぶされてるのに普通に会話しないでくださいよ。冷静な承太郎さんには痺れるし憧れるけどよォ~…」
ジョルノ「これは失礼」ヒョイ
ジョルノ「そうですね、黒幕はジョセフ・ジョースターのほうでした」
ジョニィ「え」
徐仗「!」
承太郎「なるほどな…おおかたジジイの『念力』でジョナサンのスタンドを操ってたってところか…」
ジョセフ「承太郎…お前のそのクールで頭いいところ好きよん…」
JOJOS「!!」
ジョルノ「いつのまに…!」
ジョセフ「だけどよォ~今はちょっと厄介かな…」
承太郎「ジジイ…」
ジョセフ「最後の警告だぜ、子孫ども。今ここで退くならよし……」
仗助「ジジイ…」
ジョセフ「退かないなら全力で叩いちゃうよ?」ゾワワッ
承太郎「『ハーミットパープル』…!」
ジョナサン「…?」
ジョセフ「ジョナサン・ジョースター…これは『あんたも望んでることなんだ』。そうじゃなかったら、スタンドは動かなかった…」スッ
ドンッ
ジョニィ「『スタンド』!?」
ジョルノ「くっ…なんというプレッシャー…」
徐倫「わかってきたわ! あいつは…ジョナサンは『残留思念』! 『思念』は『精神の残りカス』!」
仗助「つまり『あのジョナサン自体がスタンドだった』っつーわけか!」
ジョセフ「これが『ザ・ワールド・レクイエム』! 死に掛けの『ワールド』が元ゆえちょっぴり不恰好だが、パワーは億千万だぜーーッ!!」
ジョニィ「し、信じられない…先祖をッ!自分の手で操っているッ! こんな邪悪…許されるか!」
ジョセフ「あれ? 怒っちゃう? ジョニィ。先祖も食い物にしちゃう邪悪に正義の心がムラムラたぎっちゃうの?」
ジョニィ「このっ…!」
承太郎「待ちな」
ジョセフ「うげっ、承太郎」
承太郎「孫に向かって『うげ』はねえぜ。……ジジイ、正気か」
ジョセフ「正気も正気、いつだって本気よ。それにお前だってあの『世界』を欲しがってたんだろ?」
承太郎「」ピクッ
ジョセフ「『ワールド・レクイエム』の力の源はその心なんだよ。……心の『喪失感』!もう一度あの人に会いたいという消すに消せない強い気持ち!」
ジョセフ「お前も、お前もお前もお前もお前も! 俺と同じ気持ちだから『ザ・ワールド・レクイエム』は発動したんだぜ」
ジョセフ「『死んだあいつを生き返らせたい』。それだけだ。みんな思うことだ…ジョナサンだってそう思ってたんだぜェー!」
ジョルノ「それは違う! 大切なのは『未来へ向かう意志』だ」
仗助「確かによォ~~人が死ねば『悲しみ』も『苦しみ』もある……でもだからって摂理を曲げるのは…ワガママってやつじゃあねえのかジジイ~~?」
徐倫「懐かしいと、もう一度話がしたいと願うことはある。それは裏を返せば心の『弱み』…あんたはその弱みに付け込んだ!」
ジョニィ「『もう一度会いたい』という僕らの気持ちをもてあそんだんだ!」
ジョセフ「あーもう! 怒りんぼさんばっかで嫌になっちまうぜェ~~!」
ジョセフ「『喪失』があるから…『幸せ』をあげたんだろ…?」
承太郎「誰も頼んじゃいねえ…要はそういうことだ…」
ジョセフ「あっそ…」
ジョセフ「ならかかって来いよ。俺の『世界』に…」
ドドドドドドドドドドドド
承太郎「」スッ…
徐仗「!」
ジョルノ「気をつけてください…ここは奴の『世界』…間接的とはいえ、奴は『神』なんです…」ボソッ
ジョセフ「だから、『この世界』のあらゆる法則は全て『俺の意志』次第ってワケね~」
ジョルノ「あの距離から…!」
ジョニィ「『聞こう』と思えば『聞こえる』…」
徐倫「つまり『勝とう』と思えば『勝てる』ってこと…!?」
仗助「おい!反則だぜジジイーーッ!」
ジョセフ「『反則じゃない』と思えば『反則じゃなくなる』んだよー!悔しかったらかかってこいよ~~!」
承太郎「」ザッ
ジョセフ「お? 来る? 来ちゃう? 無敵のスタープラチナで蹴散らしちゃう?」
承太郎「やれやれだぜ…ジジイが若返るとこんなにうざったくなるとはな…」
承太郎「スタープラチナでブン殴る前に…テメーに聞きたいことがある」
承太郎「……ジョナサン・ジョースターが俺達にヒントを与えたのも『テメーの意志』か?」
ジョセフ「…『ヒント』?」
徐倫 ハッ「そ、そうだ! ジョナサン・ジョースターは、私達に『ヒント』を託してくれた! それはあんたの意志なの?」
仗助「それとも…ジョナサンの『意志』なのか、どっちなんだよォ?」
ジョニィ「まあ、あんたが僕らに『ヒント』をくれる理由は『ない』けどね…」
ジョセフ「」ダラリ
ジョセフ「ハ…ハハ…バカ言うなよ…俺はきっちりジョナサンのスタンドを操ってたんだぜ? そんな勝手なことができるわけ」
ジョルノ「ブチャラティは」
ジョセフ「!」
ジョルノ「あなたの思い通りにはならなかった…」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
承太郎「あいつはテメーをかばってたぜ…DIOまで使ってな……それも『テメーの意志』か?」
ジョセフ「…」ピクピク
ジョニィ「そうか…。あいつは、ジョナサン・ジョースターは…『あんたが真犯人だとばれない』まま『この世界が終焉すること』を狙っていたのか…」
徐倫「なんとなくわかるわ…自分の力が子孫をこんな行動に駆り立ててしまったんだから…」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
TWR「……」
ジョセフ「同情で…」
ジョセフ「同情で俺に協力していたというのか! ジョナサン・ジョースターーッッ!!」
承太郎「…」
ジョセフ「HOLY SHIIIIITT!! 俺の気持ちに共感したからじゃねえのか!? なんでだよ!
映画もシリアスよりコメディのほうが楽しいだろ!? 戦うより愉快に暮らすほうがいいに決まってるじゃあねえか!!
どいつもこいつも、なんでその『すばらしさ』がわからねえんだよォォーー!!」
承太郎「わからねえというより…テメーも本心じゃ、そんな『すばらしさ』が間違ってるとわかってるからだぜ」
ジョセフ「!…なにを…言ってる…」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
承太郎「テメーの『本心』の話さ。テメーはちょうど今『本心』の一部を露呈した…ジョナサンの力が、それに反応している…」
ジョセフ「なんッ…!」
ブアアアアアアッ
承太郎「それがテメーの『本心』だ」
??「…」
ジョセフ「シー……ザー…ッッ!」
シーザー「…」
シーザー「…」
ボゴォォォッ
ジョセフ「うげえっ!!?」
シーザー「どうやら脳ミソがクソになっちまったみたいだからな…これは忙しいところをわざわざ呼び出された俺の分だ」
ジョセフ「いやお前もう死んでるから忙しくなくね」
シーザー「そしてこれも俺の分!」
ジョセフ「ぐえっ!?」
シーザー「これも!次も、その次も、次の次も! 次の次の次もッ!次の次の次の次もッ! これも!これも!これも!これも!これも!俺の分だァーーッッ!!」
ジョセフ「なんて自分勝手なのこの子ーーッ!!」
シーザー「それはお前だろうが、JOJO」グイッ
ジョセフ「うっ…グッ…だ、だって…」
ジョセフ「だってよォォーー、だってよォ、だって……俺はお前以上の友は見つけられねえんだよ、シィーザァァーーッ!!」
シーザー「じゃ、死ねば」ボグシャァァ
ジョセフ「うげええ!?」
シーザー「俺が引導渡してやるよ」
ジョセフ「う…」
ジョセフ「い、いやだ…」
シーザー「何で嫌だ?」
ジョセフ「俺まだ寿命残ってるし…」
シーザー「俺があげた寿命がな」
ジョセフ「…!」
シーザー「俺のつないだ魂が、人間の魂がお前にはまだ残ってる。それに気づいてるんだろ?」
ジョセフ「シーザー……でもよ、俺ってさびしがりやなのよ、本当は…」
シーザー「誰がさびしいって?」グイッ
シーザー「お前は嫌ってほど子孫を残してるだろーが。…スケコマシの俺があきれちまうくらいにな」
ジョセフ「うっ…ううっ……」
ジョニィ「ジョセフの体が…老いてゆく…?」
仗助「いいや。元に戻ってるんだぜ」
ジョセフ「うっ…うっ……」
ジョセフ「浮気までしてなァ!お前の魂なんか受け取っちまったせいだぜシーザァァーー!」
シーザー「うるせえよ」
ジョセフ「俺な…ちょっとでいいから夢見たかったんだよ……だって苦しいんだぜ…シャボン玉どころか赤色も嫌いになっちまったんだよ、おめえみたいなスケコマシ見ると吐き気がする、そんな痛みから逃げたかったんだよォー!」
シーザー「……」
ジョセフ「おめえと学生やってバカやってるのすげえ楽しかった、でも楽しくねえんだよォ…なんでか全ッ然楽しくねえ…コメディなのに笑えねえんだよォ…!!」
シーザー「…老いたな、JOJO」
ジョセフ「あれから……何十年経ったと思っとる…!」
シーザー「気は済んだか?」
ジョセフ「大体…」
シーザー「よし、じゃあ若返れ」ポンッ
ジョセフ「へ?」
シーザー「さすがに老人の姿じゃ躊躇するだろうからな…」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ジョセフ「!!(子孫の目が怖い!)」
シーザー「よし、やられてこい」
ジョセフ「え!? ちょっと待ってよシーザーちゃんんんん!」
承太郎「言ったはずだぜ…それはテメーの『本心』だってな」ボキボキ
仗助「覚悟はできてるか、ジジイ~~?」
徐倫「スタンドは可?」
ジョニィ「僕打撃系苦手だから爪飛ばしていい?」
ジョルノ「7ページやっていいですか」
ジョセフ「ッッ…」ダラダラ
ジョセフ「は、はいッッ……!!」
TWR「」シュシュシュ
ジョセフ「あんたも!?」
――かくして、『若ジョセフ顔面ボコボコ事件』は幕を閉じたらしい。
らしい、というのはこの僕――広瀬康一にまったくその間の記憶がないからであって……(そういえばちょうどそのころ、ジョースターさんは入院していたかもしれない)。
語り部の承太郎さんと仗助くんは最後に、
「まったくバカなジジイだったぜ」
「やれやれッスよねェ~~」
と締めくくった。
お葬式の席としてはちょっと不謹慎なんじゃないかと思ったけど、あの人の遺族らしいといったら……らしいのかなァ~~?
でも、僕にもなんとなくその気持ちわかりますよ、ジョースターさん。
多分世界中の人がわかってくれるんじゃあないでしょうか。
そうそう、最後に謎がひとつ。
七人の『JOJO』の中で唯一、『ジョニィ・ジョースター』だけは、ジョースター家の誰かまったくわからなかったそうです。
もしかして、ジョースターさんの作ったような『別の世界』の住人だったのかもしれませんね。
では、そろそろホームパーティーらしいので。
新しい旅立ちを見送ってあげるためだそうです。変わってますよね、アメリカ式葬儀。
おわり