右京「~♪(紅茶を楽しむ右京)」
甲斐「おはようございま~す」
右京「カイト君、お早うございます」
甲斐「杉下さん、そんな毎日毎日紅茶紅茶で飽きないんですか?
俺だったら、たまにはコーヒー飲みたくなりますけど」
右京「おやおや、僕だってたまにはコーヒーを飲むこともありますよ」
甲斐「見たこと無いですよ。杉下さんがコーヒー飲んでるところ」
右京「見たことが無いからって、無いと決め付けるのは些か早合点ではないですかねぇ」
甲斐「はいはい、すみませんでした(スマフォをいじりながら)」
元スレ
杉下右京「学園都市…ですか」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1357401118/
角田「暇か?」
右京「おや、角田課長。お早うございます」
甲斐「お早うございま~す」
角田「おい、知ってるか?」
右京「はい?」
角田「超能力だよ超能力!」
甲斐「何ですか?藪から棒に…それも、超能力とか」
角田「いや、実は昨日テレビ点けたらたまたま超能力特番がやっててさ。
で、そこに出てた超能力者ってのが凄いんだ、また」
甲斐「凄い…って、例えばどんな?」
角田「出演者が思い浮かべた数字を遠い海外からピタリと当てんだよ!それも百発百中!
あれは絶対モノホンの超能力だね」
甲斐「うわ…ヤラセくせえ。そもそも超能力なんて、今時子供でも信じませんよ?」
右京「おやおやカイト君。君はそんなつまらないことをおっしゃいますか。
超能力…いいじゃないですか。
実際に超能力としか思えない現象というものは世界各地で報告されており、
そう無碍に否定すべきものではないと僕は考えています。
それに『学園都市』というところでは政府全面協力の下、超能力者の育成を行っていると聞きます」
甲斐「…杉下さんも意外と子供っぽいんですね。意外な一面発見って感じです。
それに、その学園都市…でしたっけ?そんな何の得にもならないことを都市ぐるみ、
それも政府主導で行うなんて税金の無駄遣いもいいところじゃないですか?
また国民から色々言われちゃいますよ」
角田「かぁ~っ、夢が無いねえ、最近の若者は。(棚からコーヒーカップを取り出す)
…そういや、今朝から1課が騒いでたぞ」
右京「1課…ということは殺人事件でしょうか?」
角田「おお。どうやら焼死体が発見されたらしいぞ」
プルルルルルル
右京「おや、電話ですか。(受話器を取る)はい、こちら特命係」
???「…」
右京「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
???「…」
ガチャン
右京「…おやおや、切れてしまいましたか」
甲斐「いたずらじゃないですか?」
右京「それにしては、息遣いが妙に深刻のように聞こえました。
…気になりますねぇ。ちょっと発信記録を追ってみましょうか」
甲斐「それ、俺も行く感じですか?」
右京「おや、これは個人的な興味なので、カイト君は別に付いて来なくてもよろしいですよ」
甲斐「…まあ、このままここにいても特にやること無いですし、取り敢えず付き合いますよ」
右京「そうですか。では、行きましょうか」
都内某所
伊丹「こいつがガイシャか」
三浦「うわ、ひでぇな~」
芹沢「グロいっすねえ。完全に炭になっているじゃないですか」
米沢「ガイシャに他に外傷はなく、死因は全身を焼かれての焼死かと思われます。
詳しいことは解剖して見ないと分かりませんな」
伊丹「ったく、酷いことしやがるぜ」
右京「妙ですねえ…」
伊丹「!!また警部殿ですか…」
芹沢「妙…って何がですか?」
右京「焼死…それも全身をこれだけ焼かれてるとなると、
恐らく被害者は全身に油やガソリンのようなものをかけられたと考えるのが普通です。
しかし、現場には零れたガソリンや油のようなものは見当たりません」
米沢「ええ、確かに現場とその近辺にそういった可燃性液体の痕跡などはありませんでした」
伊丹「別の場所で火をつけられたんじゃないのか?」
右京「だとしたら、被害者はそこからここまで移動したことになります。
全身炎に包まれながら。
体が炭になるほどの炎です。そんなに離れた場所から移動できますかねぇ?」
三浦「なるほど…。で、警部殿はどうしてこちらへ?」
甲斐「あ、それは俺から説明します」
芹沢「何だ、カイトもいたのか」
甲斐「あ、お早うございます。
…実は今朝頃に特命係へ電話がありまして。
無言電話だったらしいんですが、杉下さんが気になるって言って発信先を追って来たところ
こちらに出くわした…というわけで」
芹沢「無言電話なんか無視すればいいのに…カイトも大変だったなあ」
甲斐「全くですよ」
杉下「妙と言えば、この現場は近いんですよ…。その発信先の公衆電話に」
米沢「被害者が身につけていたものなどは全て黒こげになっていましたが
恐らく火が燃え広がる前に被害者が捨てたと思われるバッグにはいくつか遺留品が見つかりました」
伊丹「で、ガイシャの特定に繋がるものはあったのか?」
米沢「ええ、バッグの中に学生証と思わしきものが。
ところどころ焼けていますが、どうやら常盤台中学のもののようですな」
三浦「常盤台中学…って、例の学園都市のか?」
米沢「ええ。被害者の名前などは焦げていて読めないのですが、
この校章は常盤台中学のもので間違いないと思われます」
右京「学園都市…ですか」
チャ~ラララ!
チャチャ~ララ~
チャ~ララ~
チャ~ララ~
チャ~ラララ!
チャ~ラララ~
チャラララチャラララチャラララチャ~
相棒
甲斐「うわあ…ここが学園都市か。掃除ロボットとかまるでドラえもんの世界みたいだなあ。
凄いですね杉下さん」
右京「ええ、ここ学園都市内では最先端の科学技術が実験的に運用されているそうです。
その為、外部と比べて10年は進んでいるということですよ」
甲斐「なるほど。だから、学園都市へ入るのにあんなに色々と審査があったんですね。
いわゆる機密保持…って奴?」
右京「入るだけではなく、学園都市内の人間が外出するのにも大変厳しいチェックが必要と聞きます。
何でも都市内を監視カメラ、果ては人工衛星によって監視しているとのことですよ」
甲斐「うへえ、監視カメラはともかく人工衛星って…。まるでこの都市全体が一つの監獄みたいじゃないですか」
右京「監獄…とは言いえて妙かも知れませんねぇ」
甲斐「事件のことが無ければ、一生中に入ることなんて無かったと思いますよ。
…しかし、さっきから結構人とすれ違ってるんですけど、名前の通り学生ばっかりですね」
右京「何でも人口の8割が学生で構成されているそうですからねぇ」
甲斐「8割…ってことは、学生以外にも人いるんだ。まあ、当然か」
右京「…どうやら、ここが目的の場所のようですねぇ」
甲斐「ここが常盤台中学か」
???「風紀委員(ジャッジメント)ですの!ちょっと失礼、あなたたちは一体何処のどなたなんですの?
学校の関係者じゃありませんですわよね?」
甲斐「ん?何だこの子は?君、ここの生徒かい?」
???「あら、人にものを尋ねる時は、まず先に名乗るのが礼儀ではありませんこと?」
右京「これは失礼。警視庁特命係の杉下と申します」
甲斐「…同じく、甲斐亨」
???「警視庁?もしかして外からいらっしゃったんですの?」
右京「ええ、その通り我々は外からやって来ました。
お嬢さんは、その制服から察するにここの生徒で間違い無いでしょうか?」
???「ええ、間違いないですわ。私は白井黒子、常盤台中学の1年生ですの」
黒子「…それで外の人たちが何でここへ?」
右京「実はこちらの生徒の方が学園都市の外で事件に巻き込まれた可能性がありまして」
甲斐「で、捜査の為に来たってわけ」
右京「もしよろしければ、心当たりなどございませんでしょうかねぇ?
どんなに些細なことでもよろしいのですが…」
黒子「…私からお話出来ることは何もありませんわ。失礼ですけど、お引取り願いますの」
右京「そうですか。不躾な質問をして申し訳ございません」
黒子「では、私はこれで…」
右京「あ、もう一つだけ」
黒子「…何ですの?」
右京「先程、黒子さんは自らをジャッジメント…と名乗っておりましたが、
そのジャッジメントとは何のことでしょうか?」
黒子「…その質問はそちらの捜査と何かご関係があるんですの?」
右京「いえ、どちらかと言えば個人的な興味です。何でも気になるのが僕の悪い癖」
黒子「…そちらで言うところの警察みたいなものと考えて下さればよろしいですの」
甲斐「へぇ…君たちみたいな子が。まあ、学生中心の街だからそういうのもあるのか」
黒子「もう行ってよろしいかしら?」
右京「ええ、お引止めして申し訳ございません」
甲斐「…杉下さん。さっきの子、明らかに何か隠していますね」
右京「ええ。恐らく彼女の立場的に上から緘口令が敷かれているんだと思います」
甲斐「緘口令…そっか、学園都市はセキュリティが厳しいから」
右京「外部の者に対して迂闊なことは口に出せないと言ったところでしょうねぇ」
甲斐「どうするんです?このままじゃ捜査出来ませんけど?」
右京「そうですねぇ」
ブルルルル(携帯のバイブレーション)
右京「おや?米沢さんからですねぇ。はい、こちら杉下」
米沢「あ、警部殿。被害者の遺品を調べていたところ、気になる封筒を発見しまして」
右京「封筒…?」
米沢「ええ、バッグの隠しポケットに入っておりました。
こちらもところどころ焦げていてすべては読めなかったのですが
どうやら、特定の人物に宛てた恋文だと思われます」
右京「恋文…ということは、封筒なり中の手紙なりに誰かの名前が書かれているんじゃありませんか?」
米沢「ええ。申し訳ないと思いながら読ませて頂いた所、
手紙には“御坂美琴”という名前がありました」
右京「みさかみこと…ですか」
米沢「ええ、手紙の内容から察するに女性かと思われます」
右京「被害者も確か女性だったと記憶しておりますが?」
米沢「いわゆる、女子から女子へ宛てた恋文…といったところでしょうな
最近の女子高なんかではそういうのが流行っていると聞きます。
…今のところ分かったのはそれだけなのですが、
取り急ぎ杉下警部にはお伝えしておかねばと連絡させて頂きました」
右京「なるほど…分かりました。他に何か分かりましたらまた連絡を下さい」
甲斐「杉下さん、何か分かったんですか?」
右京「ええ。どうやら会わねばならない人物が出て来たようです」
甲斐「会わなきゃならない人物…誰ですか?」
右京「どうやら、みさかみことという名だそうですよ」
???「御坂さんですか?」
甲斐「ん?君は…ここの生徒じゃないね」
???「え?あ、はい。私は柵川中学ですけど」
右京「おや、お嬢さんはみさかみことさんのことを知ってらっしゃる?」
???「はい。…あの、失礼ですけどお二人は?」
右京「ああ、失礼。警視庁特命係の杉下です」
甲斐「同じく、甲斐です」
???「警視庁…ってもしかして外の人ですか?」
甲斐「…何か、また同じ展開だな」
???「…すみません!」
甲斐「あ、行っちゃった。…しかし、頭に花輪ってどんなファッションだよ」
右京「おや?何か落としましたねぇ」
甲斐「これ、何でしょう?住所書いてありますけど」
右京「届けに行ってあげましょうか」
一七七支部
黒子「初春、どうしたんですの?そんなに息を切らして」
初春「ハァハァ…白井さん、外から警察の人が来てますよ」
黒子「初春も会ったんですの?…まったく、ただでさえこんな忙しい時に」
初春「え~と、確か失踪者の捜索…でしたっけ?」
黒子「そうですの。常盤台中学2年生の剛力絢さん。一昨日から行方が知れないんですの」
???「物騒な話ねえ」
黒子「あ、固法先輩」
固法「これだけ探していないとなると、学園都市の中にいないのかも…」
黒子「それは有り得ませんわ。ここ数日、学園都市から外へ出た人はいないという報告ですもの」
初春「でも…無断で外に出たとか」
黒子「それも有り得ませんわ。私みたいな空間移動(テレポート)持ちならともかく
通常の能力者があのセキュリティの中、誰にも見つからずに外へ出るなんて」
固法「それに、剛力さんは空間移動系の能力者ではないそうよ」
黒子「聞くところによるとゴリ押し系の能力だそうですわ」
初春「そうなんですか…」
???「失礼します」
固法「?誰か来客予定あったかしら?」
初春「いえ、聞いてないですけど。もしかして佐天さん?」
黒子「いえ、彼女ならわざわざ声を掛けなくても入れる筈ですわ。
それに、明らかに女性の声じゃないですの」
固法「どなたですか?」
???「警視庁特命係の杉下です」
黒子・初春「!?」
初春「白井さん、杉下って…」
黒子「ええ、さっきの刑事ですの!」
固法「刑事…?何で警察がここに…」
杉下「こちらに初春飾利さんという方はいらっしゃいますでしょうか?」
初春「!?な、何で私の名前を!?な、名乗ってないのに」
杉下「彼女が落としたものをお届けに参りました。
もしよろしければ、ここを開けて頂きませんでしょうか?」
固法「…つまり、杉下さんは初春さんが落とした手帳を拾い、
そこに書かれた住所を頼りにここまで来た…ということですか?」
杉下「手帳の中身を勝手に拝見し、誠に申し訳ございませんでした」
初春「ううぅ、私の手帳が見られたぁ」
杉下「しかし、黒子さんもここにいらっしゃったとは。
奇遇ですねぇ」
黒子「…私は会いたいとは思っておりませんでしたの」
固法「…で、外の警察が学園都市に何の用なんでしょうか?」
杉下「詳しいことは言えないのですが、常盤台中学の女生徒らしき人物が
とある事件に巻き込まれた可能性が高く、その為に捜査しに来た次第です」
黒子「そういえばそんなことさっきも言ってましたわね。
で、とある事件って何ですの?」
杉下「申し訳ございません。捜査上の秘密なもので」
初春「白井さん、もしかしてその女生徒って剛力さんじゃ…」
杉下「おや?何か知っていらっしゃる?」
黒子「初春!」
初春「ご、ごめんなさい!!」
黒子「と、ところで連れの方はどうなされたんですの?1人みたいですけれども」
杉下「カイト君でしょうか?彼なら、別行動を取って貰っています。
ところで、先ほどそこの飾利さんが仰っていた『剛力さん』とは一体?」
黒子「…あの、杉下さん」
杉下「はい」
黒子「…そちらに捜査上の秘密があるのと同じで、
こちらにもその…事情というものがありますの」
杉下「ええ、お察しいたします」
黒子「申し訳ないですけど、お引取り願いますの」
杉下「そうですか…仕方ありませんねぇ。
それでは…」
固法「…待って下さい」
黒子「!?固法先輩!?」
固法「白井さん。私はこの事件、解決しなきゃならないと思うの」
黒子「で、でも」
固法「今のままだと、あまりに手掛かりが無さ過ぎる…。
少しでも解決の糸口になりそうなら、私はこの刑事さんに協力するべきだと考えるわ」
黒子「でも!」
固法「…分かってる。上から指示が来ているのは。
でも、考えてみて?この指示、何か変じゃないかしら?
“外部の者との協力は禁ず”って。
まるで、外部から誰かが来ることが最初から分かっていたみたいじゃない」
黒子「…」
固法「確かに、失踪事件の捜査は私たちもやらさせて貰っている。
でも、ここまで手掛かりが無いのはあまりにおかしいと思うわ。
解決出来ないこと前提で捜査させて貰っているとしか思えない。
…もし、この事件が学園都市の『外』で起きたものだとすれば、
全てのことに説明がつくと思わない?」
黒子「…でも、そんな勝手なことをすれば固法先輩が」
固法「ごめんなさい白井さん。本来ならば、あなたがこういうことを言う筈なのに…。
私なんかを守る為に、上からの言いなりに」
黒子「そんな…そんなことはありませんの!!」
杉下「…何やら、計り知れない事情がおありのようですねぇ」
固法「…杉下さん、全てをお話いたします」
甲斐「ちぇ、やっぱ無理か」
~1時間前~
杉下「カイト君、一つ頼まれてくれませんか?」
甲斐「何ですか?」
杉下「ここ1週間ほど、この学園都市に出入りした人物を調べてくれないでしょうか?」
甲斐「え?でも、そんなの外の人間である俺に教えてくれますかね?」
杉下「何事もやってみないと分からないものですよ。
では、僕は先にこの手帳に書かれた住所へ向かいます」
甲斐「あ、ちょっと杉下さん!!」
甲斐「ったく、警視庁って名前出しただけで門前払いだもんなあ。
ここが特別な場所だって改めて感じるよ」
???「お困りかニャ~?」
甲斐「ん?誰だお前?」
???「警視庁の刑事だっけ?何か、色々と調べているらしいけど、
どうやら手詰まりみたいだな」
甲斐「…何なんだお前は?」
???「ほれ」
甲斐「!?うわっとと。…何だこれは?」
???「お前が欲しがってたもんだ。じゃあな」
甲斐「あ、ちょっと待て!!」
甲斐「…ったく、何だあのアロハシャツのガキは。
それにこのUSBメモリ。
欲しがってたものって…まさか、ね」
???
???「良かったのか、アレイスター?」
アレイスター「ああ、何も問題は無い」
???「しかし、外部の人間だぞ?」
アレイスター「何を今更。何人も魔術師を招き入れているのに、
刑事の1人2人くらいどうということはない。
意外と心配性だな、土御門元春」
土御門「フン」
土御門「しかし、お前がどういう心境の変化だ、アレイスター」
アレイスター「…強いて言うならば、私の思惑の外でうろちょろされるのが目障り
といったところかな?」
土御門「そうか。もう用がないなら俺は帰るぞ?」
アレイスター「好きにするがいい」
土御門「相変わらず読めない奴だ、お前は」
アレイスター「…」
アレイスター「さて、招かれざる者達よ。お前たちの一挙手一投足を見させてもらうぞ」
固法「…ことの発端は、3日前に起きた常盤台中学2年生の剛力絢さんという子の失踪でした。
剛力さんが寮の門限を過ぎても戻らず、翌日翌々日と学校を休んだことから
学校が失踪届けを出したんです」
杉下「普通、失踪届けは身内が出すものだと思うのですが、
彼女のご家族はどうされたのでしょうか?」
固法「ここ、学園都市では学生は基本的には親元と離れて暮らしています。
家族との連絡も毎日する子ばかりというわけではないですし、
1日2日連絡が無いだけで失踪届けを出す親御さんがいなくても不思議ではないです」
杉下「なるほど。つくづくここは特別な環境なんですねぇ」
固法「勿論、剛力さんの家族へこの件のことを連絡はしました。
ですが、どうやら不在のようで…。
彼女の失踪は事件として我々風紀委員と
警備員(アンチスキル)が捜査することになったんです」
杉下「度々、申し訳ございません。アンチスキルとは何でしょう?」
固法「我々と同じ、学園都市の警察のようなものです。
風紀委員との違いは、警備員は学園都市の教員が主に所属していることです」
杉下「確かに子供だけに治安維持を任せるのは些か無理がありますからねぇ」
固法「それで、学園都市内で彼女の行きそうな場所や人の集まる場所などをくまなく捜査したのですが
彼女の居場所はおろか、その手掛かりすら無いのが現状というわけです」
杉下「なるほど。先ほど仰られたことはそういう意味でしたか」
固法「…私たちの知っていることは以上です。
もしよろしければ、先ほど杉下さんが仰った事件についてお話をお聞かせ願えますか?」
杉下「…分かりました」
杉下「今朝方、都内にて焼死体が発見されました。
遺体は完全に炭化しており、外見から身元を割り出すことは出来ませんでした。
ですが、遺留品の中に常盤台中学の学生証があった為、
何か関係があるのではと学園都市へ捜査に参ったのが我々の現状となります」
固法「焼死体…」
初春「そんな…」
杉下「あくまで可能性があるというだけで、
焼死体とその剛力絢さんを結び付けるものは何もありませんよ」
黒子「でも、もしその焼死体が彼女だとすれば…」
固法「彼女は学園都市の外へ出て、そして何者かに殺された
…そうなるわね」
甲斐「すみません、警視庁特命係の甲斐亨です。開けて下さーい」
杉下「おや、カイト君」
固法「待ってて下さい。今すぐ開けます」
(ドアが開く)
杉下「カイト君。例の件はどうなったでしょうか?」
甲斐「ダメでした。機密保持の為に外部の人間には見せられないってことで。
ですが…こんなの貰っちゃいました」
杉下「それは…USBメモリですか。誰がそれを?」
甲斐「何か金髪にグラサン、アロハシャツの少年です」
杉下「何でしょうかねぇ…。取り敢えず、見てみましょうか?」
固法「初春さん、お願い」
初春「はい」
カタカタカタカタ
初春「中には文書ファイルが入ってるみたいですね」
杉下「中を見せて頂けますか?」
初春「はい」
甲斐「これは…」
固法「学園都市への出入り記録…って、機密情報じゃない!」
黒子「な、何でこんなものが?」
甲斐「何者なんだ…あいつ?」
杉下「カイト君、こちらを見て下さい」
甲斐「!!これは…」
杉下「ええ、警察庁の長官の名前です」
甲斐「そんな人が何で学園都市に…」
杉下「ええ。それも妙です」
甲斐「妙って何がです?」
杉下「長官の出入りした日は、剛力絢さんが失踪した日と重なっています」
黒子「それは…偶然じゃないんですの?」
杉下「偶然かも知れません。ですが、気になりますねぇ」
甲斐「ところで、その剛力絢って誰ですか?」
杉下「そう言えば、カイト君は今来たばかりでしたか。
僕としたことがついうっかりしていましたよ」
(杉下、甲斐へ固法から聞いた話を要約して説明)
甲斐「なるほど。分かりました。
でも、長官の出入りした日と彼女の失踪が同じってのは流石に偶然じゃないですか?
警察庁の長官と女子中学生ですよ?何の接点もないじゃないですか」
杉下「ですから、接点があるか探してみましょう」
甲斐「マジっすか!?」
固法「あの…杉下さん。もしお邪魔で無ければ我々も一緒に捜査してよろしいでしょうか?」
杉下「ええ、勿論。何分ここは普段我々が住んでいる世界とは異なりますので
内部の人間の協力は是非とも欲しかったところです。
ですが、よろしいのでしょうか?先ほどの話ですと、
それはあなたたちの上司に背くことになるのでは?」
黒子「…いいんですの。元々納得して従っていたわけでは無いですし、
固法先輩の覚悟を無駄にしたくは無いですもの」
初春「わ、私も及ばずながら協力させて下さい!」
杉下「ご協力、感謝いたします」
杉下「あ、一つよろしいでしょうか?」
固法「?何でしょう?」
杉下「みさかみことという少女についてお伺いしたいのですが」
黒子「お姉様?何でお姉様が出て来るんですの?」
杉下「おや、黒子さんは彼女のことをご存知ですか」
黒子「ご存知も何も寮では一緒の部屋ですの。それにお姉様は学園都市で7人しかない
超能力者(レベル5) ですし」
杉下「失礼、レベルファイブとは一体何でしょうか?」
黒子「そういえば、あなたたちは外から来たんでしたのね」
黒子「学園都市では超能力者を育成しているという話はご存知ですの?」
杉下「ええ、噂程度ですが」
黒子「レベルとは、その超能力者をランク付けしたものですの」
甲斐「ちょ、ちょ、ちょっと待った」
黒子「何ですの?」
甲斐「今、当たり前のように話してたけど、超能力ってあの超能力のこと?」
黒子「他に何があるというんですの?」
甲斐「いやいやいや、超能力なんて有り得ないでしょ。
杉下さんも当然のように聞いてましたけど、全然当たり前じゃないですからね」
黒子「…ハァ、仕方ないですの」
フッ
甲斐「!!!!!?」
右京「ほほう」
パッ
黒子「これで信用しましたの?」
甲斐「え!え!?何コレ?何?何?何なの?消えた?目の前で消えた?
それで表れた…。トリック?トリックでしょ?え?え?」
右京「カイト君、落ち着いて下さい。どうやらトリックの類では無いようですよ」
甲斐「何で杉下さん、そんな落ち着いてるんですか!?目の前で人が消えたんですよ!?」
右京「ここは超能力者を育成しているとのことですからねぇ」
甲斐「いやいや、今のは超能力ってレベルじゃないでしょ!?」
黒子「…あの、続きを話してもよろしいですの?」
右京「ええ、よろしくお願いいたします」
黒子「ここの学生の殆どは今みたいに個人個人で能力を持っておりますの。
で、お姉様を始めとするレベル5はそのトップクラスなんですの」
右京「そうでしたか。ちなみに黒子さんはレベル5では無いのでしょうか?」
黒子「私はレベル4ですの」
右京「そうですか。あんな素晴らしい能力をお持ちでレベル4とは。
レベル5はさぞ凄いことが出来るんでしょうねぇ」
黒子「で、何でお姉様が出て来るんですの?」
右京「おっと。そうでしたね。
例の焼死体の遺留品の中に、そのみさかみことさんへ宛てた手紙があったんですよ」
固法「手紙…確かに気になりますね」
右京「何でも恋文だそうですよ」
黒子「なっ!?お、お姉様にそんな、そんなものを…!!」
初春「白井さん。今はそんなこと言っている場合じゃないですよ!」
黒子「コホン。
あ、え~と、お姉様はこの時間なら寮にいると思いますわ」
右京「そうですか。では、寮へ案内して頂けますでしょうか?」
黒子「ええ、構いませんわ」
右京「では行きましょうか」
甲斐「ブツブツ、ブツブツ」
右京「カイト君、いつまでも現実逃避してはいけませんよ」
警視庁
伊丹「な!?捜査打ち切りってどういうことですか!?」
内村「同じことを何でも言わせるな。この件には手を出すな」
中園「そうだぞ、伊丹」
三浦「…せめて理由だけでも聞かせては貰えないんでしょうか?」
内村「くどいぞ。とっとと帰れ」
伊丹・三浦・芹沢「…」
伊丹「ったく、何で打ち切りなんだよクソッ!」
三浦「恐らく学園都市絡みだからだろうな」
伊丹「だからって、殺人犯野放しに出来るかよ!」
芹沢「先輩、落ち着いて下さいよ」
伊丹「チッ!」
三浦「こうなりゃ、今動いてる奴に期待するしかねえな」
芹沢「ですね」
伊丹「癪だが仕方ねえ。特命係ぃ~、
しくじるなよ~」
黒子「ここが私とお姉様の部屋ですの」
甲斐「しっかし、ここ本当に凄いなあ。
寮って言うより、豪邸って言った方が正しいかも」
黒子「常盤台中学は世界有数のお嬢様学校ですから、それは当然ですの」
ガチャ
???「おかえり、黒子…と誰?」
右京「失礼します。警視庁からやって来ました特命係の杉下と申します」
甲斐「同じく甲斐です」
???「警視庁…?」
右京「あなたが、みさかみことさんでいらっしゃる?」
美琴「ええ、御坂美琴は私のことだけど…」
黒子「…ということですのお姉様」
美琴「なるほど…。でも、私、剛力さんのことあまり知らないのよねえ」
右京「ということは、剛力絢さんの一方的な片思いだったというわけですねぇ」
美琴「ごめんなさい。何もお役に立てなくて」
右京「いえいえ、そんな。こうしていきなり訪ねたのに、
こうしてお話して下さるだけで充分ですよ」
甲斐「本当に知らない?」
美琴「ええ、下手すると顔すら知らないかも」
甲斐「あてが外れた感じですね、杉下さん」
右京「ちなみに、剛力絢さんの部屋はどちらか分かりますでしょうか?」
美琴「それなら寮監さんに聞けば分かると思います」
右京「有難うございます」
寮監「剛力さんはこの部屋です」
右京「有難うございます。あ、一つよろしいでしょうか?」
寮監「何ですか?」
右京「先ほどの美琴さんの部屋は黒子さんと相部屋でした。
絢さんの部屋にも誰かそういった方がいらっしゃるんでしょうか?」
寮監「最初は相部屋だったんだけど、その子が病を理由に部屋の変更を申し出たので
それからは剛力さんは1人で部屋を使っていた筈です」
右京「なるほど。有難うございました」
ガチャ
右京「殺風景な部屋ですねぇ」
甲斐「ですね。あのくらいの年頃の子なら、もう少し小物なり何なりがあってもいい筈です」
右京「では、何か手掛かりがないか探しましょうか」
甲斐「はい。剛力絢って子の写真か何かがあればいいんですけどね」
甲斐「何も無いですね」
右京「ええ。というより、何も無さ過ぎる…といった方が正しいでしょうか?」
甲斐「最低限の家具はあるようですけど、何と言うか…生活感が全く無いですねこの部屋」
右京「まるで最初から生活する気など全く無かったかのようですねぇ」
甲斐「…剛力って子、何者なんだろ?」
右京「ええ、僕も彼女のことがとても気になります」
甲斐「黒子ちゃんは剛力って子のこと知らないの?」
黒子「ええ、恥ずかしながら全く。そう言えば、私も彼女を直接見たことはないですの」
右京「そういえば、先ほどの支部でも剛力絢さんの写真などはありませんでしたねぇ」
黒子「実は彼女の写真が全く無いんですの」
右京「全く無い…はて、おかしいですねぇ。
このセキュリティの厳しい学園都市において、身分証明のための顔写真すら無いのは
とても不自然に思えてなりません」
甲斐「そもそも写真も無いのに、どうやって探してたの?」
黒子「彼女のIDだけは分かっていましたから、彼女が学園都市内の何か設備を利用すれば
そこから彼女の痕跡が分かる筈でしたの」
右京「しかし、彼女の痕跡は無かった」
黒子「ええ」
右京「もしかすると、彼女の失踪はただの失踪では無いのかも知れませんねぇ」
甲斐「…結局、寮には彼女の足取りについての手掛かりは無かったですね」
右京「ええ。しかし、僕には彼女がそう仕掛けたように思えてなりません」
甲斐「彼女って剛力絢ですか?」
右京「まるで生活感のない部屋。顔写真すらない。
自ら痕跡を残さないようにしているとは考えられませんか?」
甲斐「…何の為に?」
右京「何時消えてもいいようにですよ」
甲斐「…まるでスパイみたいじゃないですか、それ」
右京「もしかしたら彼女はスパイだったのかも知れませんねぇ」
甲斐「それ本気で言ってます?」
右京「ええ、僕は何時でも本気ですよ」
甲斐「だって女子中学生ですよ?」
右京「彼女が本当に女子中学生だと言う根拠はありませんよカイト君。
彼女がそう主張し、学校側がそれを受け入れただけに過ぎません」
甲斐「…にしても突拍子無さ過ぎですよ、その考えは」
右京「そうでしょうか?ここは学園都市。我々の常識を遥かに超える場所です。
そしてここには最先端の科学など数々の機密がある。
…スパイの1人や2人はいてもおかしくないと僕は思いますよ」
黒子「…」
甲斐「ほら、黒子ちゃんが面食らってるじゃないですか杉下さん」
黒子「いえ、部屋一つでそこまで話が飛ぶとは思ってもいなかったものですから」
甲斐「この人はいつもこうだから」
黒子「何だか分からないけど凄い人なんですのね」
右京「さて、彼女がスパイだと仮定し、あの焼死体も彼女だとすると
事情がかなり変わってきます」
甲斐「まあ、もし彼女がスパイだったら、それが殺されたってのは穏やかな話じゃないですね」
右京「黒子さん、先ほど話していた超能力の中に火を熾すようなものなどはあるのでしょうか?」
黒子「え、ええ。それは勿論いますの」
甲斐「杉下さん。まさか、あの焼死体は超能力で殺された…なんて言わないですよね?」
右京「ええ、その通りです。あの焼死体は超能力で殺された可能性が高いと僕は考えています」
甲斐「ちょっと、いくらなんでもそれは…」
右京「第一に、あの焼死体が何処で火をつけられたか。
それが僕は引っ掛かっていました。
人が炭化するには、数百度の熱である程度時間を掛けないといけません。
それ程の炎は、そう簡単には熾せません。
ガソリンなどの可燃性の物質が必要となります。
しかし、現場からその近辺にその痕跡は全くといっていいほどありませんでした。
これは明らかに不自然です」
右京「第二に、被害者が投げ捨てたと思われるバッグです。
人が炭になるほどの炎なのに、あのバッグは焦げていたとは言え中身も無事だった。
被害者、及び現場はずっと燃えていたというのに。
これは炎の範囲が限られていたからでは無いでしょうか?
たまたまその範囲の外にあったため、バッグは無事だった。
自然の炎ではそういった現象はまず起き得ません」
甲斐「確かに…」
右京「ですが、これらが超能力による引火が原因であるならば、全てに説明が付きます」
右京「黒子さん。学園都市にいる全ての能力者を特定することは可能でしょうか?」
黒子「…それは難しいと思いますの。第一、能力が明らかになっていない方も大勢いますし」
右京「そうですか。一応、炎系の超能力が使える能力者を分かる範囲だけで
リストアップすることをお願いしてもよろしいでしょうか?」
黒子「分かりました」
右京「(ピッ、ピッ)ああ、もしもし角田課長ですか。
申し訳ないのですが、一つ頼まれてくれませんでしょうか?
…課長しか頼める方がいないんですよ
…そうですか。では、よろしくお願いいたします。
(ピッ)」
右京「(ピッ、ピッ)ああ、もしもし米沢さんですか。
申し訳ないのですが、バッグから発見された例の手紙。
あれを分かる範囲で結構ですので、メールで送っては頂けないでしょうか?
ええ。では、よろしくお願いいたします。
(ピッ)」
(メールの着信)
右京「来ましたか」
甲斐「例の恋文って奴ですか?何でそんなものを?」
右京「彼女がスパイである可能性があるならば、この恋文はまた違った意味を持ってきます」
黒子「違った意味…?」
右京「外国のスパイは何気ない手紙に暗号を隠し、やり取りをしていると聞いたことがあります。
この恋文も、実はそうなんじゃないでしょうかねぇ」
恋文
拝啓
御坂美琴様
ご機 麗し う えます。
きましては、 なたの とを 慕い申して ります。
ご迷惑 なければ、 まで、足を運んで下 いませ。
あなたを慕う より
甲斐「…うーん、どう見ても普通のラブレターにしか見えないけどなあ」
右京「ええ。しかし、何故御坂美琴嬢を指名したのかは気になります」
甲斐「レベル5って奴だからじゃないですか?7名しかいないなら、そりゃ有名人でしょうし」
右京「それと、この部分」
甲斐「ええっと、足を運んで…の所ですか?」
右京「ええ。足を運ぶ…という表現は恋文ではあまり使わないと思いませんか?」
甲斐「うーん、使う人は使うんじゃ?」
右京「そもそも足を運ぶという言葉は自分に対して使う言葉であり、
他人に対して…それも慕う相手に使うには適した言葉ではありません。
これは、自分に対してのメモだったのでは無いでしょうか?」
甲斐「メモをラブレター風にしたってことですか?」
右京「ええ。場所の名前が焦げてしまっているのが残念でなりません」
黒子「あら?固法先輩からですの」
甲斐「杉下さん。一度、さっきの支部まで戻りませんか?
寮にいても手がかりは無さそうですし」
右京「そうですねぇ…。あ。もう一つだけ。寮監さんにお伺いしたいことがあるのですが」
寮監「はあ、私ですか?」
右京「寮監であるあなたは、当然剛力絢さんを直接その目で見たと思うのですが
外見に何か特徴などはありましたでしょうか?」
寮監「特徴と言われても…1日に何人もの顔を見てるし、入寮日以降はあまり見掛けなかったので
あまり覚えていないから…。寮監なのに申し訳ない。
強いて言うならば黒いショートの子としか…」
右京「顔は日本人っぽかったでしょうか?」
寮監「それは間違いないと思う」
右京「貴重な情報、有難うございます。
では、行きましょうかカイト君。黒子さん」
初春「あ、皆さんお帰りなさい」
固法「何か収穫はありましたか?」
右京「ええ、僅かですが確実に前進はしたかと思います」
甲斐「ところで、玄関前のゴミ袋はまだ出さないの?」
固法「ええ、忙しくて…すみません」
甲斐「ゴミ袋の中にいっぱい入ってたムサシノ牛乳って聞いたこと無いブランドですけど
ここのオリジナルブランドなんですかね?」
右京「カイト君、他人のゴミ袋の中身を詮索するのは感心しませんねぇ」
甲斐「あ、すみません」
初春「あ、紅茶いれたんですけど飲みますか?」
右京「ええ、頂きましょう」
固法「あ、初春さん。私も頂けるかしら?」
黒子「あ、私もですの」
初春「はーい。あ、ついでに冷蔵庫の中のシュークリームもお出ししますね」
右京「お構いなく」
ブルルルルル
右京「おや、角田課長からですねぇ。ちょっと失礼。
はい、杉下です」
角田「おお、さっき頼まれた件についてなんだけどさあ。
教えられた住所に剛力なんて奴は住んでなかったぞ」
右京「やはりそうですか。有難うございます」
角田「おう。
あ、それと例の焼死体の事件、捜査打ち切りだってよ」
右京「はい?」
角田「1課の奴らが悔しそうに言ってんのが聞こえてな。
どうも上からの指示らしい」
右京「なるほど。有難うございます課長」
角田「おう!俺は忙しいから、もう電話掛けてくんなよ!じゃあな!」
甲斐「角田課長は何て?」
右京「ええ、剛力絢さんのご家族が住んでいると言われる住所を調べて頂きました。
どうやら、そこには剛力という苗字の人間は住んでいないそうですよ」
固法「住所がニセモノ…」
黒子「ますますもって、その剛力って方が怪しく見えてきましたわ。
強ち、杉下さんの仰られたスパイ説は間違ってないかも知れませんですの」
初春「あ、紅茶の用意が出来ました」
右京「頂きます。…これはアールグレイですね。実にいい香りです」
初春「最近、紅茶に凝ってるんですよー」
黒子「そう言えば初春は上流階級に憧れを抱いていましたわね。
だから紅茶に嵌るとは単純ですのね」
初春「ぶー、どうせ私は単純ですよ」
固法「(コクッ)それで、これからどうします?
また捜査は行き詰ったような気もするんですけど」
右京「そうですねぇ…」
右京「ん?電話ですねぇ。おや、これは…。はい、杉下です」
峰秋「私だ」
右京「これはこれは…」
峰秋「今、学園都市にいるそうだな?」
右京「はい、仰る通りです」
峰秋「…その、なんだ。あいつもいるのか?」
右京「…ええ、代わりましょうか?」
峰秋「とんでもない!第一、用件はお前にあるんだ!」
右京「用件…とは何でしょう?」
峰秋「この件からは手を引け」
右京「手を引け…ですか」
峰秋「スタンドプレーは大いに歓迎する…。
だが、学園都市ともなれば話は別だ。
ただお前たちのクビを切るだけでは済まなくなる」
右京「ということは、やはり警察庁がこの件に絡んでらっしゃる?」
峰秋「…もう一度だけ言う。この件からは手を引け」
右京「ご忠告、感謝いたします」
峰秋「忠告というのは聞かなければ何の意味も無いんだぞ?」
右京「ええ、僕もそう思います」
峰秋「…!!」
ガチャ ツーツーツー
甲斐「…もしかしてあいつからですか?」
右京「ご想像にお任せいたします」
甲斐「そうですか」
右京「…仮に剛力絢さんがスパイだとしたら、何処からのスパイだったんでしょうねぇ」
甲斐「え?」
右京「カイト君。学園都市の出入り記録を覚えていますでしょうか?」
甲斐「え?ああ、確か警察庁の長官が出入りしていた奴ですか?」
右京「ええ、長官がここを出入りしたのと同じ日に剛力絢さんは失踪ということになっています。
…もしかしたら、彼女と長官は接触したんじゃ無いんでしょうか?」
甲斐「ということは…彼女は警察庁からのスパイ?」
右京「ええ、そう考えれば彼女が失踪したことに合点がいきます」
甲斐「じゃあ彼女が殺された理由って…」
右京「ええ、スパイであることがバレ、口封じの為に殺されたのでしょうねぇ。
学園都市の能力者に」
固法「そんな…」
右京「黒子さん。先ほどリストアップして頂いた能力者をお教え願えますか?」
黒子「あ、はいですの。初春」
初春「はい、白井さん」
甲斐「なるほど。それと出入り記録を照合すれば、犯人が分かるってことですね」
右京「ええ。ですが、登録されていない不明な能力者もいるそうなので
そう簡単にはいかないと思われますが」
20分後
甲斐「…やっぱりいないみたいですね」
右京「仮にいたとしても、その情報を消されている可能性があります」
固法「杉下さん!それって、学園都市が街ぐるみで殺人を犯し、
犯人を匿ってるって意味でしょうか?」
右京「ええ、その可能性は高いと思いますよ」
黒子「そんな!!」
固法「いくら何でもその発言はいただけないです杉下さん。
第一、能力者は大体が学生なんですよ?そんな大それたこと…」
右京「おや?大人の能力者はいないのでしょうか?」
黒子「ごく一部の例外を除いていない…ということになっておりますの」
甲斐「だとしたら不味いですよ杉下さん」
右京「ええ、犯人が学生なら、少年法が適応されますからねぇ」
右京「それに、学園都市の能力者が外で殺人を犯した。
なんてことが公になれば、当然学園都市の存在意義に関わってきます。
学園都市は政府の管理下です。その失態はそのまま現政府への反発になるでしょうねぇ」
甲斐「そうなったら、学園都市共々現政府も倒れる…ってことか」
右京「先ほど、角田課長より捜査の打ち切りがあったと聞きました。
また、君のお父上からもこの件からは手を引けと忠告を受けました」
甲斐「さっきの電話、やっぱりあいつからだったのか…」
右京「この事件、下手をすれば闇に葬られてしまうかも知れませんねぇ」
固法「そんな!!」
黒子「酷い話ですわ…。私たちの青春を何だと思っていやがるのですの!!」
固法「そんな上からの圧力に屈し、事件を闇に葬るような真似は絶対に許されません!!
この事件は絶対に解決しなきゃならないんです!!絶対に!!」
右京「固法さんはこの事件に余程強い思い入れがあるのですねぇ。
剛力絢さんとお知り合いか何かだったのでしょうか?」
固法「知り合いとか知り合いじゃないとか関係ないです!
学園都市で起きた事件ですよ!?我々が解決しないと…」
右京「やはりそれがあなたの狙いでしたか」
固法「え?」
甲斐「え?杉下さん、どういう…」
右京「この事件を仕組んだ犯人、それはあなたですね?固法さん」
固法「!!」
黒子・初春「ええええ!?」
右京「いえ、こう言った方が正しいかもしれませんねぇ…。
“剛力絢”さん」
固法「なっ!?」
右京「玄関前に置いてあったゴミ袋を見た時から不思議に思っていたんですよ
あれだけの数の牛乳が捨ててあるということは、
固法さんという方は1日に何パックも消費するほど牛乳がお好きなのだということです。
しかし、あなたは僕たちと出会ってから一度も牛乳を飲んでいない」
固法「そ、それだけで?それに、何で私が牛乳を好きだと…?」
右京「あなたの机です」
固法「机?」
右京「机の上に白い輪のようなものがあるのが見えます。
これは牛乳を入れたマグカップが置かれた後です。
それが1箇所だけでなく、何箇所も見えますねぇ。
飾利さん黒子さんが使っている机にはそういった跡はありませんでした。
となれば、この中で一番牛乳を飲んでいるが誰かは明白です」
甲斐「でも、杉下さん。たまたま飲まなかっただけかも知れないじゃないですか」
右京「ええ。でも、思い出してください。彼女が本当に固法さんなら
必ず牛乳を使うであろうシチュエーションがつい先ほどあったじゃないですか」
甲斐「先ほどって…ああ!紅茶か」
右京「ええ、彼女は紅茶に牛乳を入れずにストレートで飲んでいました。
本当に彼女が固法さんであれば、紅茶に牛乳を入れた筈なんですよ」
甲斐「でも、たまたま牛乳が無かっただけかも…」
右京「いえ、先ほど飾利さんがシュークリームを取る為に冷蔵庫を開けた時に確認しましたが
複数の牛乳パックが入っていたのが確認出来ました。
恐らく彼女が入れた筈です。であれば、牛乳を取りに行かなかったのは不自然です」
固法「わ、私は紅茶には牛乳を入れない主義なのよ!」
右京「果たしてそうでしょうか?」
右京「飾利さん、黒子さん。固法さんは果たして紅茶に牛乳を入れない。
そんな方でしたでしょうか?」
初春「こ、固法先輩はいつもコーヒーや紅茶には牛乳を入れていました…」
黒子「え、ええ」
固法「…そ、そんなの証拠にならないわ!!」
右京「ところで、この部屋には何枚か写真が貼られていますねぇ。
楽しそうな写真です。
特にこれなんか」
初春「あ、これって…」
黒子「私とお姉様と初春とそれを見ている固法先輩の写真ですの。
確か佐天さんが撮った奴ですわね」
右京「彼女のマグカップの中、よく見て下さい」
初春「あ…茶色い。それにこれはティーパックの紐!」
右京「どうやら彼女は紅茶に牛乳を入れる人みたいですねぇ」
固法「しゅ、趣味嗜好が変わっただけよ!急に牛乳が嫌いになった!
それだけ!!それの何が悪いの!?」
黒子「固法先輩…」
初春「…」
固法「ハァハァ…」
右京「もう誤魔化すのも限界だと思いますよ。
少なくとも、黒子さんと飾利さんはあなたを疑っている」
固法「それはあなたがああいうことを言うから!!」
右京「いえ、常に固法さんという人物を見続けてきた彼女たちです。
もしあなたが本当に固法さんであれば、全くの外部の人間である
僕の言うことで彼女を疑うことなんてないでしょう。
彼女たちの絆は誤魔化せないということですよ」
固法「…」
固法?「…そう。そうね。確かに彼女たちに疑われたら、ミッションは失敗ね」
黒子「あなた…一体…?」
固法?「さっき、そこの刑事さんが言ったでしょ?
そう、私こそ剛力絢よ。最も、その名前も偽名だけどね」
初春「え…じゃ、じゃあ本物の固法先輩は…?」
右京「恐らく、あの焼死体が彼女なんでしょうねぇ」
黒子・初春「!?」
剛力「…まさかたかが牛乳でバレるなんてね。不覚も不覚だったわ」
右京「いえ、僕はあなたに会った時から既にあなたを疑ってましたよ」
剛力「…どういう意味?」
右京「僕がここへ初めて来た時のことを覚えているでしょうか?
僕は常盤台中学の生徒がとある事件に巻き込まれ、その捜査の為に来た。
…と言いました。
しかし、あなたはすぐにそれが学園都市の『外』で起きた事件だと決め付けました。
学園都市のセキュリティの厳しさを知っている人間…特に治安維持活動に参加している
あなたたちのような方なら簡単にそうは思わないんじゃないでしょうかねぇ」
剛力「そう…初っ端からミスってたわけね」
右京「固法さんを殺したのもあなたですね?」
剛力「ええ、私が能力を使って殺したわ」
黒子「…!!」
初春「白井さん!!」
黒子「初春!!止めないで!!こいつは私が!!」
初春「止めて下さい!!白井さんまでそんなことしたら、私…私!!」
黒子「…チッ」
甲斐「でも、彼女が剛力絢で焼死体が固法って子だとしたら
殺害の動機はなんなんですか?」
右京「彼女は学園都市の外で能力を使い殺人を犯す…ただそれだけが目的だったんですよ」
甲斐「何の為に?」
右京「先ほど言った通りです。
学園都市の外で能力を使って人が死ねば、それが元となり
現政府が完全に崩壊する可能性があります。
彼女の狙いは恐らくそれだったのでしょう」
剛力「ご明察」
右京「あなたにそれを依頼したのは…警察庁の長官ですね?」
剛力「ええ、如何にも」
甲斐「警察庁の長官が何でそんなことを…」
右京「現政府が倒れれば、新たな政府が立ち上がります。
恐らく、長官はそこに自分のポストを置こうという狙いなのでしょうねぇ」
剛力「そ。私はただの捨て駒ってわけ」
甲斐「おい、お前は人を1人殺してるんだぞ!?」
剛力「だから何?」
甲斐「何でそんなに余裕なんだお前!!」
右京「カイト君、能力者はごく一部を除いて学生…というのを覚えていますか?」
甲斐「!!お前、まさか…」
剛力「そ、私はまだ17歳。捕まってもすぐに出られるわ」
甲斐「だからって!!」
剛力「私の役目はこれでお終い。この事件、大々的に報道してねぇ。
そうすれば…」
パァン!
剛力「!?」
バタッ
初春「キャアアアアアア!!」
甲斐「窓が…!?まさか、狙撃!?何で…」
右京「黒子さん!!飾利さん!!早く救急車を!!」
黒子「は、はい分かりましたの!!」
~病院~
(手術室のドアが開く)
???「…」
右京「彼女の容態は?」
???「…(首を振る)」
甲斐「糞!!」
???「冥土帰し(ヘブンキャンセラー)と言われる私でも
流石に死人を生き返らせることは出来ない」
右京「彼女は撃たれた直後に死んでいた…ということですね」
???「ああ。綺麗に額を撃ち抜かれていたよ」
右京「そうですか…」
???「失礼します」
甲斐「ん?何だお前たちは?」
プシュー
右京「!?これは、カイト君、すぐに口と鼻を塞いで…」
甲斐「杉下さ…」
バタッ
???「さて、こいつらをとっとと学園都市の外へ空間移動させろ」
???「分かったわ」
???「…ったく、なンで俺たちがこンなことしなきゃなンねえンだよ?」
???「これも仕事…だからですね?」
???「ああ。でなけりゃ、こいつらも消されちまうんだぜぇ」
いつの間にか学園都市の外にいた特命係の二人は仕方なく警視庁へと戻った。
その後、内村刑事部長にこっぴどく叱られた後2週間の謹慎を食らうのであった。
事件はただの焼死事件として処理され、
その事件と学園都市の繋がりがメディアに上がることは無かった。
また、学園都市内の失踪事件もまた捜査を打ち切られ、
剛力絢という名前はやがて人々の脳裏から忘れ去られていくのであった。
そして、2人の謹慎が明ける。
(紅茶をいれる右京)
甲斐「杉下さん。結局、例の事件はただの焼死事件になってしまいましたね」
右京「ええ、予想はしていましたが、非常に残念です」
甲斐「しかし、あそこで剛力絢を狙撃したのは誰なんでしょうか?」
右京「恐らく、学園都市内部の者の犯行でしょう」
甲斐「…もう一度学園都市に行けないかな」
右京「それは無理でしょうねぇ。前回もただでさえ、無理を言って入ったようなものですし
二度目は通用しないでしょうねぇ」
甲斐「…あ~!何かもやもやするー!!」
右京「そう言えば、警察庁の長官が更迭されてしまったようですよ。
何でも収賄容疑が掛かっているそうです」
甲斐「…何か露骨だなあ。見えない力が働いてるのを感じますよ」
右京「ええ、確かに」
角田「暇か?」
右京「おや、角田課長。お早うございます」
甲斐「お早うございま~す」
角田「知ってか?超能力ってあれ全部インチキだったんだな。
昨日たまたま見た特番で、種明かしやっててさ。
いや~俺騙されてたわ~」
甲斐「前は肯定してたのに今度は否定するんですか?
適当だなあ」
角田「ま、超能力なんて有り得ないわな。常識的に考えてさ」
右京「ええ、そうですねぇ(チラッ)」
甲斐「全くその通りですね(チラッ)」
角田「だろ~?」
END
653 : イタミン嫁 ◆I5KUYW9xwA - 2013/01/07(月) 03:30:14.47 Oq0Q2eO50 101/103というわけで完結です。
こんな駄文垂れ流しに2日も付き合って下さり有難うございました。
昨日からスレを保守して下さった皆様には感謝です。
では、またいつか何処かで。
655 : 以下、名... - 2013/01/07(月) 03:31:23.76 hufFxIDx0 102/103釈然としないが乙
何故固法先輩が標的にされたのかとかも気になる
657 : イタミン嫁 ◆I5KUYW9xwA - 2013/01/07(月) 03:33:23.69 Oq0Q2eO50 103/103>>655
書いてる流れでそうなっただけで
決して固法先輩が嫌いとかそういうことではないです。
最初は何処かで監禁しているってのも考えたんですけど
それで話作るとややこしくなりそうなので、素直に殺してしまいました。
固法先輩ファンの皆様にはお詫び申し上げます!

