ガチャリ
凛「おはようございます」
シーン…
凛「……あれ? 誰もいないのかな」
凛「プロデューサー? ちひろさん?」
凛「ま、いいか。ちょっと早く来すぎたし」
凛「……あ」
凛「プロデューサーのコート」
凛「……」キョロキョロ
凛「……」
凛(これはくんくんするしかない……!)
凛「っ! ダメ、そんなのおかしいって」ブンブン
凛「だ、だいたいアイドルとプロデューサーだよ? ないない、ないって」
凛「うん、……ないよ」
凛「……」
凛「……ちょっとだけ」
凛「ちょっとだけならノーカンだよね」
凛「それに、プロデューサーが変な匂いとかだったら他のみんなが抱きついたときとか困るし」
凛「そう、これはプロデューサーのため。プロデューサーの……」ソーッ
ガチャ
卯月「おはようございまーす! 島村卯月、今日も一日頑張りまーす!」
凛「!? う、卯月!」バッ
卯月「あ、凛ちゃんおはよー♪今日のラジオ収録楽しみだねっ」
凛「あ、う、うん。そうだね」
卯月「? 凛ちゃん、なんか動揺してない?」
凛「してない! してないよしてない!」
卯月「そう?」
凛「う、うん」
凛(プロデューサーのコートをくんかくんかしたい、だなんて言えるわけない……)
ガチャ
P「あーすっきりしたっと……お、凛に卯月。おはようさん」
卯月「プロデューサーさんっ! おはようございます!」ニコッ
凛「お、おはようプロデューサー」
P「あー、やっぱ朝一番に見る卯月スマイルは格別だなぁ」
卯月「そ、それほどでも……ありますけど♪」
P「あざといっ!」
卯月「ガーン! ひどいですよう!」
P「あっはっは、冗談だよ冗談! 卯月は可愛いなぁ」
卯月「んもう、よいしょしたってダメですからねっ」ニヨニヨ
P「と言いつつもニヨニヨする卯月可愛い!」
凛(プロデューサーの朝一番の匂い……いい)
P「って凛、どうした? 具合でも悪いのか?」
凛「! ……ううん、なんでもないよ。心配しないで」
P「ほんとか? 何かあれば頼ってくれていいからな」
凛「うん、ありがと。そういえばプロデューサー」
P「ん?」
凛「椅子にかかってるコート、新しいよね。買ったんだ?」
卯月「それ、私も気になりました! 着るにはまだちょっと早いですよね?」
P「ああいや、俺寒がりだからさ。こうでもしないと朝は外に出れないんだよね」
凛「へー……」
凛(つまり)
凛(これから寒い日が続けば、どんどんコートにプロデューサーのフレーバーが……!)
凛「……ふふ」
卯月「どしたの凛ちゃん?」
凛「何でもないよ、卯月」ニッコリ
P「うんうん、凛もいい笑顔だ。この調子で頑張ろうな!」
凛・卯月「はい!」
.
.
.
.
凛(そして、たった一人、私の孤独な戦いが始まった)
凛(すべては、プロデューサーの匂いをくんかくんかするために!)
.
.
.
.
数日後
凛「予報通り、ここ最近は例年よりも気温が低い」
凛「他のアイドルのスケジュールも頭に入ってる。みんなはもう少し後から来るはず」
凛「プロデューサーはいつもモーニングコーヒーを飲んでくるから、この時間はお手洗いに行く」
凛「……カンペキ」
凛「そして目の前には、プロデューサーの、コート……!」
凛「絶好のくんかくんか日和。神様に感謝しよう」
凛「っと、プロデューサーが戻ってきちゃう。早くしないと」
凛「……」ゴクリ
ガッチャーン
未央「おっはよーございまーす!!」
未央「本田未央、ただいま参上! 今日も張り切っていこー!」
凛(ああああああ!!?)
未央「お、しぶりんおっはー♪」
凛「お、お、おはよう未央」
未央「どったの、プロデューサーのコートなんかジッと見て」
凛「え、あ、ち、ちょっとホコリがついてたんだよ。それを取ろうとしたの」
未央「そっかー、しぶりんは相変わらずプロデューサー想いだね♪私も負けないからねっ!」
凛「あ、あはは。そ、そういうんじゃ……」
凛(ハイパーくんかくんかタイムが……あああ……)
ガチャ
P「あーすっきりしたっと。お、未央に凛、おっはー」
未央「おっはープロデューサー! 聞いて聞いて! 朝来る途中さ、私のファンだ、って子に話しかけられたんだ!」
未央「私嬉しくって嬉しくって、走ってきちゃったよー!」
凛(そんなことが……喜ばしいけど、予定が……!)
P「マジで!? やったじゃないか!」ガシィ
未央「お、おおお!? プロデューサーパワフルー!」グルングルン
P「良かったなー未央ー!!」
未央「えっへへー、プロデューサーのおかげだよー!!」
P・未央「あははは!!」グルングルン
凛(う、うぅ……今日を逃したらいつになるか……)
凛(ううん、諦めちゃダメだよ私! 絶対にもふもふくんかくんかするんだ!)
また別の日
凛「よし、今日こそは……今日こそは……!」
ガチャ
凛「おはようございます……よし、誰もいない」
凛「……給湯室、休憩室ともにクリア」
凛「もふもふくんかくんかすりすり作戦開、始……!?」
美穂「すー……すー……」
小日向美穂(17) CV:津田美波 はにかみ乙女
中々見ないから一応プロフィール
凛(美穂がソファで寝てる……! な、なんでこんな朝早くに)
美穂「ふにゃ……」コロン
凛(しかもプロデューサーのコートがかけられてる!」
美穂「ん、んぅ……? ふあー」
凛(しまった声に……!)
美穂「あれ、凛ちゃん? おはよ……」
凛「う、うん、おはよ。どうしたの、早いね」
美穂「あぅ、じ、実はね」
美穂「私、アニメの声優さんに起用されてね……それで緊張しちゃって」
美穂「不安で、プロデューサーに相談したら、『一緒に練習しよう』って言ってくれて……えへへ」
凛(なんということ、なんということ……!!)
美穂「朝じゃないと収録間に合わないからって、さっきまで練習してたの」
凛「そ、そうなんだ」
美穂「でもね……窓ガラスから朝日が暖かくて、すごく心地良くて。ふわ……」
凛「そう……そのコートは?」
美穂「あ、これ? プロデューサーが掛けてくれたんだぁ。えへ、Pさんの匂い……♪」
凛(さすが、はにかみ乙女……! 天然でくんかくんかするなんて! しかも名前呼びなんて、油断ならない!)
ガチャ
P「あーすっきりしたっと。お、凛。最近早いな。はよっす」
凛「……おはよ」
P「テンションひっくいな。大丈夫か?」
凛「……うん。今日はちょっとね」
P「……んー、そっか。ま、無理すんなよ? ……で、美穂?」
美穂「はひゃい!」
P「まったく、お前は……練習付き合うって言ったのにすぐ寝ちまって」
美穂「うぅぅ、ごめんなさい……」
P「朝早かったからしょうがないにしても……。しょうがない、今日はアフレコ付いてってやるから」
美穂「えっ、い、いいんですか?!」
P「今日はフリーだしな。一肌脱ごうじゃないか」
凛(人肌! 脱ぐ! つまり匂い付きシャツとか諸々!)
美穂「あ、ありがとうございますっ! 私、一所懸命やります!」
P「おう、期待してるぞ。ほれ、もう一度役の声出してみな」
美穂「は、はいっ。こほん……きーば、きばきばごっ♪」
P「うんうん、その調子でいこうな! 自分に自信持って!」
美穂「はい! 頑張りますっ!」
凛(きば……牙? ……歯! はみはみ! そういうのもあるんだ)
凛「ふふ、よかったね美穂」
美穂「うん!」
凛(私も収穫があったよ……早く、早く……!)
さらに後日
凛(ああもふもふしたいくんかくんかしたいすりすりしたいはみはみしたい)
凛(もうダメ)
凛(全身がプロデューサーのフゥレイヴァーを欲してる)
凛(形振り構ってられない、もう誰が居ようと居まいと、もふもふくんかくんかすりすりはみはみプロジェクトを実行しよう)
凛「いざ」
ガチャ
凛「おはようございます(美声)」
凛「……」キョロ
凛「……」キョロキョロ
凛「……」キョロキョロキョロ
凛「……!」
凛「今日こそ誰もいない!」
凛「ふ、ふふ……天は私の味方をしてるんだ」
凛「コート、手袋、マフラー……三種の神器が揃ってる」
凛「もう身に付けるしかあり得ないね」
ゴソゴソ
凛「……」
凛「……いい」
凛「馴染む。実に馴染む。ちょっと大きいけど」
凛「こんな清々しい気持ち、初ライブ以来かも」
凛「……もふもふ」
凛「……くんかくんか」
凛「……すりすり」
凛「……はみはみ」
凛「……もいちどくんかくんか」
凛「……ふぅ」
凛「今なら飛べる気がする(万感)」
P「よう凛」
凛「」
P「ったく、最近俺の防寒具をジロジロ見てると思ったら……」
P「今は俺しかいないからいいものの、どうみても変態だぞ? なんだよはみはみって」
凛「」
P「いやまぁ、男としてはなんとも言えない気持ちなんだけど」
凛「」
P「凛?」
凛「プロデューサー」
P「ん?」
凛「縄ってどこにあるかな。首括れるような」
P「ようし落ち着け凛ちゃん。大丈夫だ何も心配いらない、縄も要らない」
凛「ふふ、ふふふふ。あ、そうだ。ふふふ、ちょっと待っててねプロデューサー」
P「あ、おい何を」
サラサラサラリ
凛「はい」
P「え」
『じひょー』
『ぜんりゃくわたししふやりんはあいどろやめますけいぐ』
P「いやいやいや、待て待て話し合おう、な!」
凛「あ、ちゃんとクリーニングして返すから大丈夫だよふふふふ」
P「違うから、せめて意識をこっちに向けろ!」
凛「あははは」
凛「あは」
凛「……グスッ」
P「!?」
凛「きらわれた」
凛「ぷろでゅーさーにきらわれた」グスグス
P「お、おい凛」
凛「ごめんなさい。ごめんなさいぷろでゅーさー……」ポロポロ
P「謝るなって……嫌いになんかならないよ」
凛「だって……こんな変態、どうしようも」
P「むしろ嬉しいかな。いつもはクールな凛が、こんな風にアプローチかけてくるなんてさ」
P「凛の愛情表現なんだから、俺はなんだって受け入れるよ」ナデナデ
凛「プロデューサー……」
P「ほら、さすがに暖房効いてる事務所じゃ、防寒フル装備は暑いだろ? 脱いだ脱いだ」
P「誰もいない、今のうちならぎゅってしてやるから、な?」
凛「……うん」
P「よしよし、いい子いい子」
凛「プロデューサー」
P「どした」
凛「直接嗅ぎたい」
P「……うん?」
凛「プロデューサーの匂い、もっと……。直ならもっと、もっと……!」ジリジリ
P「スターップ。にじり寄るな手をワキワキさせるな」
凛「愛情表現、素晴らしいよね」ジリジリ
P「確かに素晴らしいよね。でもね、眼が据わってるんだよ凛」
凛「ちょっとだけいいよね。毎日ちょっとだけだから。いいよね、いいよね、ね、ね?」
P「凛おいやめ、あっそこはいかんっ! あ、あああっ!?」
いやああああああ……
凛「ふふ、満足……♪」テカテカ
おわり