事務所
あやめ「ニンニン」
P「いや、その入ってきかたはおかしいと思うぞ」
あやめ「これはP殿。なんとも恥ずかしい所を…」
P「別に恥ずかしくはないと思うけど」
あやめ「これは世を忍ぶ仮の姿。P殿に見せるものでは…」
P「いや、何回も見てるから」
あやめ「そういえば、そうでした」
P「そうだろ。しかし、制服も似合うな」
あやめ「本当ですか?」
あやめ「…はっ!当然です。世を忍ぶ姿が浮世から浮いてしまっては本末転倒ですし」
P「まぁ、何着ても似合いそうだけどな」
あやめ「何とも…嬉しいような、努力のし甲斐がなくなるようなセリフですね…」
P「悪い悪い」
P「そういやあやめ」
あやめ「なんですかP殿」
P「今のあやめは忍びなのか?」
あやめ「いかにも。いつでもあやめは臨戦態勢です」
P「おやつあるんだけど食べるか?」
あやめ「えっ…」
P「あ、でも、忍びっておやつ食べるのかな?」
あやめ「あ、えっと、ですね。P殿!」
P「は、はい」
あやめ「い、今は、普通の学生の浜口あやめですっ!」
P「そうか」
あやめ「だから、おやつをP殿と一緒に食べても問題ないですよね?」
P「問題ないな」
あやめ「それじゃ頂きます」
ちひろ(可愛い…)
P「お茶飲むか?」
あやめ「あ、ありがとうございます」
P(普段は普通の女子高生だよなぁ…)
あやめ「む?あやめの顔に何かついてますか?」
P「いや、なんでもないよ」
あやめ「そうですか。P殿から並々ならぬ何かを感じましたので…」
車内
P「最近寒くなってきたな」
あやめ「そうですねぇ」
P「やっぱり、忍者って寒さに備えて何か特訓とかするのか?」
あやめ「と、言いますと?」
P「いや、イメージで話して申し訳ないが、くのいちとか忍って屋根裏とかにいるじゃないか」
あやめ「確かに時代劇とかでは、屋根裏で話を盗み聞きとかしていますね」
P「冬場は寒いだろうなと思ってさ」
あやめ「そこは、大丈夫ですよ。ホッカイロとかあるので」
P「そこは、特訓で何とかするんじゃないのか」
あやめ「忍法ホッカイロの術ですよP殿」
P「それでいいなら別にいいが…」
P「そう言えばさ」
あやめ「はい?」
P「この間、一石十鳥って書いてたけどどういう意味だ?」
あやめ「言葉通り、一石で十もの鳥を落とすという意味ですよ」
あやめ「アイドルになったということで十個もいいことがありました。ニンッ!」
P「お、そういう意味か」
あやめ「気になるようですねP殿」
あやめ「一つ目はですね、忍ドルになれたことです!」
P「アイドルになれたことに近いな」
あやめ「ま。確かにそうですが、アイドルから更に一歩踏み込むことが出来ました」
P「なるほどな」
あやめ「他にもですね、友達や仲間が増えました」
P「確かにあやめは友達が多いよな」
あやめ「P殿が色々なアイドルを担当しているからですけどね。皆いい人ばっかりで、あやめは幸せ者です!」
あやめ「あと、太秦や忍びの里に行ったり、時代劇に出られました」
P「あやめの努力の結果だよ」
あやめ「いえ、ひとえにP殿の尽力あってのものです」
P「俺一人じゃ何も仕事なんて取って来れないぞ。あやめを使ってもいいって先方に言わせるにはあやめが頑張らないといけない訳だし」
あやめ「む…それじゃ、二人共頑張った結果です!」
P「そうだな。ありがとなあやめ」
あやめ「こ、こちらこそ。P殿と一緒で良かったです」ニコ
あやめ「あとはですね…歌う仕事が出来たことですね。それと伊賀と甲賀を制覇もしました」
P「ニンニン」
あやめ「P殿も一緒に忍術を学んでみますか」
P「機会があればな」
あやめ「機会は作るものですよ」
あやめ「それと、あやめにファンが出来ました。それと、活躍を見て祖父が喜んでくれました」
P「確かお祖父さんが書道家なんだよな」
あやめ「はい。なので、字が下手である訳にはいかないです」
P「一石二鳥だな」
あやめ「何がですか?」
P「俺があやめのプロデューサーをやってよかったこと」
あやめ「に、二個しかないのですか…すみません」
P「いやいや、あんまり一杯あげてもキリがないかと思ってな」
あやめ「な、なるほど…して、その二個とは?」
P「1つ、あやめに遭えたこと、2つあやめと今も仕事が出来ること」
あやめ「ふやっ!?」
P「ど、どうした?」
あやめ「あ、す、すみません…変な声が出ました」カァァ
あやめ「で、ですが…くのいちに、忍びにそのような情けは無用ですP殿」
P「情けとかじゃないんだけどなぁ…」
あやめ「だ、ダメです。弱さが生まれてしまいます…ニン」
P「お前はどこを目指してるんだ…」
あやめ「で、でもですね。浜口あやめって言うただの15歳の学生になら言ってもいいです…にん」
P「そうか」
あやめ「はい」
P「今は制服を着てるんだから、ただの学生だろ?」
あやめ「…はい!」
P「考えてみたらさ」
あやめ「はい」
P「これから撮影に行くわけど、忍びが表に出るってのもアレだな」
あやめ「む。確かに忍んではいないですね」
P「まぁ、今のままでいいんだけど。アイドルな訳だし」
あやめ「違いますよP殿。忍ドルです」
P「それそれ」
あやめ「P殿がそう言うなら、表でもあやめは活躍できるように頑張ります」
P「そもそも忍ドルってなんだ?」
あやめ「忍ドルとはですね…光となって人を導き、影となって人を助けるんです」
P「かっこいいな」
スタジオ
P「それじゃ、頑張れよ」
あやめ「時代劇の撮影ですからね。思いっきり頑張ります。ニンニン」
P(空回りしなきゃいいけど…)
*
P「入れ込みすぎじゃないか…アレ」
カーット
P「まぁ、そうなるわな」
P「俺が見てるから力が入ってるとかあるのかな」
P「…まぁ、上手くいかない日もあるか」
車内
P「お疲れ様」
あやめ「……」
P「どうした?」
あやめ「いえ、ちょっとですね…」
P「今日のミスを悔やんでるのか?」
あやめ「…はい。結果的に成功したとはいえ」
P「そういう日もある。気にしないでいこう」
あやめ「…はい」
P(まぁ、そう簡単に気分転換できる訳ないか…)
P「…よし、決めた」
あやめ「なにをですか?」
P「ちょっと今から出かけるぞ」
あやめ「は、はい…」
あやめ(どこに行くんだろう…?)
あやめ「どこにいくんですか?」
P「秘密だ」
あやめ「そ、そうですか…」
P「別に変な所じゃないから安心してくれ」
あやめ「変な所…?」
あやめ(どこだろう…?)
P「変な所じゃないって。お、ここら辺かな」
河
あやめ「ここは…」
P「ちょっと雰囲気があるよな」
あやめ「はい。なんだか、時代劇にも出てきそうな感じです」
P「昔、知り合いと川遊びしに来てたんだ」
あやめ「そうなんですね…」
P「魚も泳いでるぞ」
あやめ「あ、本当ですね」
P「なんか、川の音とか聞いてると悩み事なんてどうでもよくならないか?」
あやめ「…分かります。あ、もしかしてP殿はあやめの為に…」
P「まぁ、久しぶりに来たかったのもある」
P「いい天気だったし、日が高かったからな」
あやめ「あやめは、P殿のために魚を取ってみせます!」
P「流石に捌けないし、入れ物もないからいいよ」
あやめ「そうですか…」
P「でも、ありがとな」
あやめ「こちらこそありがとうございますP殿」
P「元気になってよかったよ」
あやめ「P殿はこっちに来ないんですか?」キョトン
P「あぁ、見てるだけでいいよ」
あやめ「そんなこと言わずにー」
P「まぁ、ちょっとだけなら…」
あやめ「P殿覚悟ー!」
P「…風邪ひいても知らないからな」
P「そろそろ帰るぞー」
あやめ「あ、はい」
P「結構濡れてないか?」
あやめ「一応、気を使ったのですが…」
P「とりあえず、タオル。それと、俺のジャージでも履いてろ」
あやめ「は、はい」
あやめ「あ、こっち見ちゃダメですからね!」
P「はいはい」
あやめ「…もう、いいですよP殿」
P「それじゃ、帰るか」
あやめ「…P殿」
P「なんだ?」
あやめ「後先考えないで、遊ぶあやめは忍びとして失格でしょうか」
P「そんなこと考えてたのか」
あやめ「はい…」
P「俺が遊べって言ったんだから命令に従ってるじゃないか」
P「なんら問題はないさ」
あやめ「はいっ!」
P「あの河さ」
あやめ「はい?」
P「鮎漁っていうか、梁漁やってるみたいだから、時期が合えばまた行ってみるか?」
あやめ「はいっ!P殿の手腕に期待です」
P「俺もやったことはないけどな…」
あやめ「いやいや、P殿でしたら、女の子をスカウトするかのように華麗な技を見せてくれるに違いません!」
P「それはどう受け取っていいのやら」
あやめ「あやめは水遁の術をお見せしますっ!」
P「漁はしないのか…」
数日後
車内
あやめ「P殿、命令を」
P「そんなもの今までしたことないだろ」
あやめ「ちょっと主と主に使える忍っぽいことをしてみたかったんです」
P「なるほどな」
あやめ「まぁ、冗談はさておき…今日はどんな仕事なんですか?」
P「強化?今日は陰から皆を支えて貰う仕事だ」
あやめ「…撮影には参加しないんですか?」
P「言い方が悪かったな、今日はチアをやってもらおうと思うんだ」
あやめ「チア…忍とは関係ないんですね」
P「周囲に溶け込みつつ、応援という仕事を遂行するんだ。まさに忍じゃないか」
あやめ「流石に無理があると思いますが…」
P「そうかな」
P「こんな仕事取ってきてから言うのもアレなんだけどさ」
あやめ「はい?」
P「あやめってどんな仕事でも喜んでやってくれるよな」
あやめ「それは…どんなお仕事もP殿が取ってきてくれたお仕事ですから」
あやめ「それが、どんな端役でも、見ててくれるって知ってますから…」
P「そうか」
あやめ「はい…そうなんです」
あやめ「P殿」
P「ん?」
あやめ「一石十鳥の十個目の話…覚えてますか」
P「あぁ、十個目は秘密って言ってたな」
あやめ「だって…くのいち失格ですから…主にこんな思いを抱くなんて…」ブツブツ
P「あやめ?」
あやめ「は、はいっ、十個目は同じです」
P「同じ?」
あやめ「あやめもP殿に会えたこと…です」ニコ
あやめ「て、照れますねっ!ニンッ!」
P「あやめ」
あやめ「は、はい…」
P「ありがとな」
あやめ「に…ニン」コク
車内
あやめ「P殿」
P「どうした?」
あやめ「忍という文字は刃の下に心あり。と書きますよね」
P「言われてみればそうだな」
あやめ「忍の本当の心を分かるのは主だけという意味ですよねニンニン」
あやめ「あやめ秘蔵の名刀正宗の下にある心はほとんどの人はわかりません」
P「そうなのか」
あやめ「…はい。P殿にしか見せないあやめの顔もあるんですよ?」
P「わかってるよ」
あやめ「P殿はなんでもお見通しですね」
P「そりゃ、俺はあやめの主だからな」
あやめ「いかにも。P殿は私の主にふさわしい人物です」
あやめ「だから、私もふさわしい忍ドルになりますね」
スタジオ
P「さぁ、頑張って行こうか」
あやめ「はいっ!」
P「気負いすぎるなよ」
あやめ「…P殿」
P「なんだ?」
あやめ「今はくのいちでもなんでもありません。ただのアイドルの浜口あやめです」
P「そうだな」
あやめ「だから、だから、少しだけ自分の気持ちに素直になれそうです」
あやめ「私は…あやめは、P殿をお慕い申しております」
P「お――」
あやめ「へ、返答はいいです。刃の下にある素の私の気持ちを知ってくれるだけでいいです。それでは…ドロンっ!」
P「あ…」
P「…参ったな」
P「これも、あやめの忍術かな」ポリポリ
P「慕うってどういう意味で言ってるんだろうな…」
事務所
P「どうだった?」
あやめ「あ、いや、楽しかったです」
P「良かった」
あやめ「……」
あやめ(返答はいいって言ったけど…何も反応がないのは…ちょっと)
あやめ(まぁ、しょうがないのかな…)
あやめ「それじゃ、おつか――」
P「あ、あやめ」
あやめ「はい?」
P「この後ごはんでもどうだ?」
あやめ「えっ?」
P「だってさ、くのいちはずっと主の近くにいるんだろ?」
あやめ「は、はいっ!」
あやめ「あやめはいつまでもお供させていただきますっ!」
あやめ「ずっと、ずっと、よろしくお願いしますP殿」
25 : VIPに... - 2014/11/15 20:03:37.99 ACRMSsdF0 23/23終わりました。
読んで下さった方ありがとうございました。
何かありましたらどうぞ。