あやめ速報-SSまとめ-

穂乃果｢今こうして、アクア・ウィタエのカウンターで、マスターが差し出した1杯の生ビールを飲みホッとしている｣ｺﾞｸｯ

穂乃果｢仕事をやり遂げたと言う満足感が、時と共に少しずつ広がってくる･･･｣

ダイヤ｢流石フリーライター、今の心境をナレーションで説明してる訳ですわね･･･｣

穂乃果｢マスター聞いてよ！かっこよくナレーションで決めたけど、本当はめちゃくちゃ大変だったんだから！｣

ダイヤ｢ハイハイ、その御苦労話を伺うとしましょう｣

ー穂乃果宅ー

ｺﾞｫｰ･･･

穂乃果｢すぴー･･･すぴー･･･｣

ﾌﾟﾙﾙﾙ･･･ﾌﾟﾙﾙﾙ･･･

穂乃果｢んぇ･･･何･･･？折角クーラー効いた部屋で寝てんのにさ･･･｣

ｶﾞﾁｬ

穂乃果｢はひ、高坂です･･･はい･･･｣

穂乃果｢･･･お、叔母さんっ！？お久しぶりです！｣

穂乃果｢はい、はい･･･えっ、千歌ちゃんが？！ ｣

ダイヤ｢穂乃果さん、クーラー買ったんですの？｣

穂乃果｢買いましたよ、30度以上の猛暑が30日以上続いた記録的な夏ですよ｣

穂乃果｢ついに買いました、25日目に･･･｣

ダイヤ｢まあ、よく25日も耐えましたわね｣

穂乃果｢暑くなると水風呂に入って、お風呂の中で原稿書いたこともあるよ｣

ダイヤ｢それで、そのお電話はどなただったんですの？｣

穂乃果｢昔、大変お世話になった親戚の叔母さんなの｣

穂乃果｢大学時代にお金を借りたり、貰い物のお酒を頂いたり｣

穂乃果｢1番お世話になったのは家賃をためて夜逃げして、叔母さんの家に転がり込んだ事かな｣

ダイヤ｢良い叔母さんがいてくれたお陰で、今日の穂乃果さんがいる訳ですわね｣

穂乃果｢そうなの、その叔母さんの頼みごとと言ったら断れないですよ｣

ダイヤ｢そのお願い事というのは？｣

穂乃果｢叔母さんには今度高校生になる妹さんがいてね、その子が大した病気じゃないんだけど入院してて｣

穂乃果｢渋谷のなんとかって店のソフトクリームが食べたいって駄々こねて、叔母さんを困らせてるの｣

ダイヤ｢ソフトクリーム？｣

穂乃果｢そう、そのソフトクリームを買ってきて欲しいと頼まれたの｣

穂乃果｢お易い御用ですよと安請け合いしたよ、そりゃお世話になった叔母さんだからさ｣

穂乃果｢でもお易い御用じゃ無かったんだよねこれが！｣

ダイヤ｢相手はソフトクリームですから、溶けますわね｣

穂乃果｢そう、この暑さの中｣

穂乃果｢渋谷で買ったソフトクリーム、それを届ける先は沼津の病院！｣

ダイヤ｢沼津って、最近ららぽーとが出来たあの沼津ですの？｣

穂乃果｢二時間近くはたっぷりかかるよね｣

穂乃果｢そして買ったソフトクリームをこのクーラーボックスに入れて、沢山ドライアイスを入れてもらいました！｣ﾄﾞﾝ

ダイヤ｢だからそれを抱えてたんですの･･･｣

穂乃果｢うおおおおおおおおっ！！｣ﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ



｢渋谷から乗り換えて川崎へ、国府津駅で降りて、御殿場線で沼津へ｣

｢またその病院が駅から遠いと来てんだ･･･｣

｢道は間違えるしタクシーも無い中、30度の猛暑の中私は走ったよ･･･｣



ー〇〇病院ー

穂乃果｢ぜぇ、ぜぇ･･･！！｣

穂乃果｢あのっ！高海千歌の病室はどこですかっ！？｣

看護師｢高海千歌さんですね、お待ち下さい｣

穂乃果｢はやく教えてくださいっ！溶けちゃったらどうするんです！！｣

看護師｢と、溶ける？･･･はい、7階B棟の5号室です｣

穂乃果｢どうもっ！7階か･･･っ！｣ﾀﾀｯ

穂乃果｢エレベーターどこぉ！？あ、あった！｣

穂乃果｢もう、遅いエレベーターだなぁ！！(怒)｣

ﾁｰﾝ

ﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ

穂乃果｢5号室、5号室･･･っ！｣

ー5号室 高海千歌ー

穂乃果｢あったっ！！｣

ｶﾞﾁｬｯ

穂乃果｢千歌ちゃん！ソフトクリーム持って来たよっ！！｣

千歌｢え、ほんと！？ほんとに持ってきてくれたの？｣

ﾊﾟｶｯ

穂乃果｢よっと、はい、おまちどうさま｣

志満｢穂乃果ちゃん、無理言ってごめんなさいね｣

穂乃果｢いえ、さんざお世話になってる叔母さんの為なら･･･｣

千歌｢う～ん！美味しいのだ！｣

穂乃果｢という訳でやんす･･･｣

ダイヤ｢そうだったんですの、穂乃果さんも良い所ありますわね！｣

ダイヤ｢･･･そう言えば、今の穂乃果さんの話で思い出したんですけど、1845年に今日の穂乃果さんと同じことをした人がおりますわよ｣

穂乃果｢え、それじゃあその人もソフトクリームが溶けないように猛暑の中走り回ってたの？1800年代に？｣

ダイヤ｢運んでいたのはソフトクリームではなく、"ビール酵母"ですわ｣

ダイヤ｢名前はヤコブ・クリスチアン・ヤコブセンと言いますわ｣

穂乃果｢じゃあそのなんとかヤコブセンって人は、ビールの酵母を持って私みたいに走り回ったんだ｣

ダイヤ｢しかもドイツからデンマークまでを休みなく馬車を走らせたから、渋谷から沼津までの比じゃないですわ！｣

穂乃果｢もう少し分かりやすく！｣

ダイヤ｢ヤコブ・クリスチアン・ヤコブセンと言う人は、デンマークのビール工場の社長の息子｣

ダイヤ｢ヤコブセンは自社の上面発酵ビールでは飽き足らず、当時ヨーロッパで流行りつつあった下面発酵ビールの技術を身につける為、ミュンヘンに行く訳ですわね｣

ダイヤ｢ヤコブセンは下面発酵の酵母を二瓶貰い、コペンハーゲンへ馬車を走らせた｣

ダイヤ｢ところがこの酵母は摂氏零度に冷却しても持って1週間が限度！｣

ダイヤ｢温度が高くなると酵母が死んでしまうから、途中で馬車を止め、冷たい井戸水で冷やしながらデンマークまで運んだという話が残っているんですわ｣

ーカールスバーグー

https://i.imgur.com/M1MlrQs.jpg

穂乃果｢ほえー、ヤコブさんも私と同じ苦労したんだね｣

穂乃果｢ドイツからデンマークまでどれくらいあるのかな･･･馬車に揺られてさぞかしおしりが痛かっただろうに｣

穂乃果｢マスター、カールスバーグちょうだい！ヤコブさんと私は異体同心だ！｣

ダイヤ｢はい、かしこまりました｣

ｺﾄｯ

ｼｭﾜｰ･･･

穂乃果｢いただきます｣

ｺﾞｸｯ

穂乃果｢おっ、軽くて飲みやすいタイプだねぇ｣

ダイヤ｢その爽やかな味が、デンマークの人達に受け入れられたんでしょう｣

穂乃果｢カールスバーグってどういう意味？｣

ダイヤ｢カールがヤコブセンの息子の名前で、バーグは山ですわ｣

ダイヤ｢工場がコペンハーゲンの小高い丘なので、山、つまりバーグと名付けたのです｣

穂乃果｢和風に言うと、太郎と山ね｣

穂乃果｢ちょっと待って、カールスバーグのサクセスストーリーは分かったけど｣

穂乃果｢その大成功を収めた素はドイツの下面発酵酵母なんでしょ？｣

穂乃果｢ヤコブセンに酵母を渡した、ドイツミュンヘンのビールってあるの？｣

ダイヤ｢流石ライター、いいところに気づきましたね。勿論あります｣


ーシュパーテン プレミアム・ラガーー
https://i.imgur.com/FzfNQON.jpg


穂乃果｢ちゃんとあるんだ、流石Aqua Vitaeですね｣

ダイヤ｢お飲みになりますか｣

穂乃果｢勿論！｣

ｺﾞｸｯ

穂乃果｢おお･･･｣

穂乃果｢こりゃまたカールスバーグとは違って、何と言うか、味わい深いビールだね｣

ダイヤ｢この夏はかなりビールを飲みましたわね、コメントがしっかりしてますもの｣

ー数日後ー

ｶﾗﾝｶﾗﾝ･･･

ダイヤ｢いらっしゃいませ｣

穂乃果｢ふふ、マスター見て見てこのシュシュ｣

穂乃果｢例のソフトクリームの千歌ちゃん、元気になってお礼のプレゼントだって！｣

穂乃果｢あのみかんソフトクリーム、よっぽど美味しかったのかな｣

ダイヤ｢ふふ、何に致しますか｣

穂乃果｢勿論ヤコブセンのビール！穂乃果と山！｣

ダイヤ｢えっ？･･･あっ、そうでした、ふふふっ｣

ー第二夜ー

ｶﾗﾝｶﾗﾝ･･･

ダイヤ｢いらっしゃいませ｣

英玲奈｢マスター、紹介する、イタリアの友人のマリー・オハラだ｣

鞠莉｢Ciao☆宜しく！｣

ダイヤ｢こちらこそ、アクア・ウィタエのマスターです｣

英玲奈｢じゃあ、私はシュタインヘーガーのギンギン｣

鞠莉｢ギンギン？What？｣

英玲奈｢ギンギンに冷えたやつ、つまり冷凍庫に入ってるのを下さいって意味さ｣

鞠莉｢oh、日本語は難しいわね｣

英玲奈｢日本語じゃないよ、アクア語と言ってだな、私とマスターにしか通じないよ｣

鞠莉｢ギンギンは冷たい･･･Very Cold･･･｣

英玲奈｢マリーは何にする？｣

鞠莉｢私は、ジントニックを下さい！｣

ダイヤ｢かしこまりました｣

鞠莉｢日本はギンギンねぇ｣

英玲奈｢え？日本がギンギン？｣

鞠莉｢春なのに、とっても寒いわ｣

英玲奈｢ああ、毎日冷たい雨で、これじゃ桜も咲かないな｣

鞠莉｢oh残念ね、私、桜を見るのを楽しみにして来たのに･･･｣

英玲奈｢満開にはあと一週間てとこかな･･･それ迄いればいいじゃないか｣

鞠莉｢No! im very busy･･･｣

ﾍﾟﾗﾍﾟﾗﾍﾟﾗﾍﾟﾗ･･･

ダイヤ｢(こうなってしまうと会話には入れませんわね･･･)｣

英玲奈｢いやマスター、参ったよ｣

英玲奈｢マリーが桜を見て帰りたいってごねるんだ｣

ダイヤ｢ほう？｣

英玲奈｢つまりな、桜と言うよりも日本のお花見をしたいと言ってるんだが｣

英玲奈｢この寒さだろう、どこも咲いてないというのに･･･｣

鞠莉｢残念でならないワ･･･｣

英玲奈｢1週間の予定を三日延ばして咲くのを待ったんだが、とうとう咲くのを見れずに明日帰ることになったんだよ｣

ダイヤ｢明日ですか･･･｣

鞠莉｢Yes、明日帰るの、寂しいわ｣

英玲奈｢マスター、どこかないかな、この辺で桜が咲いてるとこ｣

ダイヤ｢うーん、南の九州でもまだ三分咲きらしいですからね･･･｣

英玲奈｢マリー、諦めるしかないよ。どうしても見たいならあと1週間いるしかない｣

鞠莉｢Oh My God!｣

ダイヤ｢うーむ･･･｣

ダイヤ｢･･･あっ、そうですわ！｣

えれまり｢｢え？｣｣

ダイヤ｢ちょっと思い付きましたわ、少し待ってて頂けますか？｣

英玲奈｢あ、ああ構わないが･･･｣

ｶﾗﾝｶﾗﾝ･･･

鞠莉｢マスター、どうしたの？｣

英玲奈｢さあな･･･｣

ｼﾄｼﾄ･･･

ダイヤ｢よっと、自転車も久しぶりですわ｣

ｷｨｷｨ･･･

ダイヤ｢この雨ですし･･･姉さん、お店休んでないといいんですが･･･｣

ｷｨｷｨ･･･

ダイヤ｢･･･あっ！ちゃんとやってました･･･｣


ーおでんの屋台ー


ダイヤ｢姉さん！！｣

海未｢おやマスター、息急ききってどうしたのです？｣

ダイヤ｢お願いがあって来ました･･･！｣

海未｢･･･！｣

ダイヤ｢飛び切りの日本酒を1本、分けて頂きたいのですわ｣

海未｢銘柄は？｣

ダイヤ｢カクテル、春暁を作りたいのです｣

海未｢たしか、上田和男氏オリジナルのカクテルですね｣

ダイヤ｢はい･･･｣

海未｢･･･相応しいのが1本、ありますよ｣ﾆﾔ

ダイヤ｢えっ！｣


ー幻味 純米大吟醸 ｢梅錦｣ー
https://i.imgur.com/fDEQqtU.jpg


ダイヤ｢これはありがたい･･･流石姉さんですわ！いいお酒がありますわね｣

海未｢いいですから、早く持っていきなさい｣ﾆｺｯ

ダイヤ｢ありがとうございます、姉さん。それじゃ頂いていきますわ｣

海未｢お酒の相談ならいつでも乗りますよ、お気を付けて｣

ｷｨｷｨ･･･

ｶﾗﾝｶﾗﾝ･･･

ダイヤ｢お待たせ致しました！｣

英玲奈｢おお、おかえり。急にどうしたんだ？｣

ダイヤ｢残念ながらお花見が出来なかったマリーさんに、私からささやかなお花見をプレゼントしたくて、ちょっと用意してましたわ｣

鞠莉｢え、お花見を？｣

ダイヤ｢そうです、アクア・ウィタエのお花見です｣

ダイヤ｢まず"春暁"というカクテルを作ります｣

上田和男氏オリジナルカクテル｢春暁｣

日本酒を3分の1、ウオッカを3分の2

グリーンティリキュールを1tsp

塩漬けにした桜の花びらを水につけて軽く水抜きしている間に

ミキシンググラスで材料をステア

カクテルグラスに注ぐと、抹茶に桜の花びらが浮いているように見える、日本的なカクテル


https://i.imgur.com/trblZR3.jpg

ダイヤ｢どうぞ、お待たせ致しました｣

鞠莉｢Oh･･･！まるでお茶ね･･･！｣

ｺﾞｸｯ

鞠莉｢･･･美味しい･･･｣

鞠莉｢とっても美味しい！Very Deliciousよ！｣

ダイヤ｢そしてもう一つプレゼントです｣

ｿｰｯ･･･

鞠莉｢Oh My God！｣

鞠莉｢桜よ！桜が咲いてるわ！｣

ダイヤ｢少し前にお花屋さんで買った枝ものですわ｣

ダイヤ｢お店の中は暖かいので早く咲いたのです。思い出して持ってきました｣

英玲奈｢ははは、良かったな、マリー｣

鞠莉｢Yes im very happy！｣

英玲奈｢桜を見ながら春暁を飲む、これぞアクア・ウィタエのお花見だよ｣

鞠莉｢マスター、安心してイタリアへ帰れます。Thank You、Thank You Very Much！！｣

ダイヤ｢ゆあうぇるかむ、ですわ｣

｢本物のお花見は出来なかったけど、昨日のアクア・ウィタエでのお花見は一生忘れないわ｣

そう言って、マリーはイタリアへ帰っていったーーー

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ｶﾗﾝｶﾗﾝ･･･

ダイヤ｢いらっしゃいませ｣

ダイヤ｢何に致しますか？｣

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