1 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/26 11:49:38.18 yD696GWeo 1/51

「この間だってさ」

「うん」

「わたしがホラー苦手なの知ってるくせに絶対観るって聞かないし」

「ほぉ」

「暑苦しいから離れろー、とか意味わかんないこと言い出すし」

「ほぉ?」

「それにお風呂も寝るのも別々ってありえなくない? ねぇ友ちゃん?」

「……そ、そうだねぇ」

元スレ
友「私もお兄ちゃん欲しいなぁ」妹「ウザイだけだよ、お兄ちゃんなんて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1666752577/

2 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/26 11:50:49.25 yD696GWeo 2/51

「いくつか聞きたいんだけど」

「なぁに?」

「一緒に観るのは確定なの?」

「え? うん」キョトン

「暑苦しいからってのはなに? 抱きつくの?」

「いやいや抱きつかないから。腕を捕まえてぎゅーってするだけ」

「するだけかぁ」

「あとはお膝に乗っかって後ろからぎゅーってさせるとか」

「そっかぁ」

「お風呂と寝るのが別々ってのは? いつも一緒なの?」

「いつもじゃないよ。お風呂はたまに一緒、寝るのはたまに別々」

「たまに別々とは……」

3 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/26 11:51:46.00 yD696GWeo 3/51

「確認なんだけど、妹ちゃん高一よね?」

「友ちゃんもね」

「お兄さんは何個上なんだっけ?」

「にこ」

「だよねぇ……」

「?」

ピコンッ

「あ! お兄ちゃんっ」パァッ

「嬉しそうだね」

「いや別にうれしくないけど」ニマニマ

4 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/26 11:52:49.47 yD696GWeo 4/51

「お兄さんなんて?」

「今日は早めに終われるから帰りに甘いものでも食べに行こうって」

「よかったねぇ」

「ご機嫌とりにきただけでしょ。お財布すっからかんにしてやろ」

「デートだねぇ」

「いやいやただの買い食いだし。ってかお兄ちゃんとデートとかないわ」

「と言いつつあーんとか……ってさすがにしないか、はは」

「え?」

「え?」

5 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/26 11:53:58.38 yD696GWeo 5/51

ピコンッ

「あっ! じゃあ先帰るね」

「う、うん……」

「ばいばい」トタタタッ

「ばいばい……」フリフリ

「……」

「……」キュポッ

「……」ズズズッ

「間違えて持ってきたブラックが大活躍だぜ……」

7 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/27 02:52:08.37 GCm1KTtdo 6/51

「はぁ……」

「どしたの? 朝っぱらからため息なんか」

「今朝寝坊してさー、お兄ちゃんが」

「お兄ちゃんが……」

「そのせいで自分で髪セットしなきゃでさぁ」

「まるでいつもはお兄さんにやってもらってるみたいな言い方だな」

「おひざに座るのも無しだし、髪の毛くらい自分でとかせーとか言ってくるしさぁ」

「いつもお兄さんにやってもらってるみたいだな」

「自分が寝坊したくせにだよ? おかしいよね友ちゃん?」

「……そうだねぇ」

8 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/27 02:53:03.54 GCm1KTtdo 7/51

「ちなみに妹ちゃんは寝坊しなかったの?」

「いつもお兄ちゃんに起こされるまで寝てるからなぁ」

「あぁ、うん……」

「今朝はたしか、目が覚めたらお兄ちゃんが寝てて、ちょっと寒かったからぎゅーってして……」

「ナチュラル同衾……」

「とにかく、お兄ちゃんが寝坊したせいでわたしにまで災難が……はぁ、ほんとウザイ……」

「そっかぁ……」

「めちゃくちゃ腹たったから、登校中1回も口聞いてやんなかった」

「でも一緒に登校するんだねぇ」

9 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/27 02:54:22.09 GCm1KTtdo 8/51

「あーもーほんとムカつくったらほんとにさぁ……」ブツブツ

「もしかしてお兄さんとおしゃべりしたくなっちゃったのかにゃ?」

「文句は言いたいかもね」

「1限まであと5分くらいあるよ」

「3年の教室遠いし」

「お電話差し上げるなんていかがでしょう?」

「む……べ、べつに……」

「いつもは髪梳いてもらってる間とか登校中とか、いっぱいおしゃべりしてるんでしょ?」

「いっぱいじゃないもん……ちょっとだけだもん……」

「声聞きたいんじゃない?」

「むぐ」

「ぅぅ……」

「うー……」

10 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/27 02:55:42.25 GCm1KTtdo 9/51

「友ちゃん」ガタッ

「なぁに?」ニコニコ

「違うから」トタタッ

「そうだねぇ」ニマニマ

「んんん……」タプタプ

「あ、お兄ちゃん? 出るの遅い、あんまり時間ないんだから。あのね……」

「……」ガサゴソ

「……」キュポッ

「……」ズズズッ

「やっぱブラックだなぁ……」

11 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/27 20:02:36.45 GCm1KTtdo 10/51

「お? 妹ちゃん、今日はなんかもこもこだねぇ。寒い?」

「ん、ちょっと寒いかも」

「あっためてしんぜよう」ギュッ

「だよね。普通そうするよね?」

「えっ、なにが?」

「寒いって言われたらおててつなぐよね?」

「おててて」

「やっぱりお兄ちゃんがおかしいんだ……」

「なになに? なにがあったのよ」

12 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/27 20:03:54.81 GCm1KTtdo 11/51

「お兄ちゃんに寒いーって言ったらさ」

「うんうん」

「そうでもなくね? ってそれでおしまい。おかしいよね友ちゃん?」

「……そ、そうだねぇ」

「でもまぁ最近あったかいしぃ?」

「お兄ちゃんが寒いかどうかなんてどうでもいいの」

「言いきっちゃったよ……」

「それにわたしもほんとに寒いわけじゃないし」

「ハイコンテクストすぎる……」

13 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/27 20:04:42.37 GCm1KTtdo 12/51

「なのに今日の気温何度とかどうでもいいこと話し始めるし」

「うん……」

「挙句の果てにカーディガンよこしてくるし。ほんとに全然わかってない」

「そうだねぇ……」

「自分で渡してきたくせに匂い嗅ぐなとか言ってくるし」

「着たうえ嗅いだと」

「ムカついたからそのまま強奪してやった」

「あぁ、それお兄さんのなんだ。通りでぶかぶか」

「あったかい?」

「うんっ♪」

「そうかい……」

14 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/27 20:06:02.17 GCm1KTtdo 13/51

「お兄さん今ごろ寒がってるんじゃない?」

「かもね。でもどーでもいいし」

「風邪ひいちゃうかも」

「バカは風邪ひかないからだいじょぶ」

「もしほんとに風邪ひいたら、伝染るから近寄るなーって言われちゃうかもよ?」

「え?」

「そうなったらぎゅーもなでなでも無し、一緒に寝たりもできないし登下校もひとりぼっちに……」

「え、ぁ……」

「ぅ……」

「……」

15 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/27 20:06:44.99 GCm1KTtdo 14/51

「あの、友ちゃん……わたし……」

「うん」ニヤニヤ

「なにニヤついてんだよぉ」

「別にぃー?」ニマニマ

「んもー! わたしもう行くからね? じゃ」ガタッ

「あいいってら。今のうちに匂い堪能しときなよー」

「うんっ!」タタタッ

「いや、うんじゃねーわ」

「まったく……」ガソゴソ

「……」キュポッ

「……」コポコポ

「……」ズズズッ

「今日も今日とてブラックが美味いぜ……」

17 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/28 13:06:32.51 qNj0JvrSo 15/51

「……」ムッス-

「お?」

「……」ブッス-

「今日に限ってはブラックは不正解だったか?」

「……」プック-

「妹ちゃんどったん?」

「あー友ちゃん。聞いてよ」

「聞く聞く」

「昨日は珍しくわたしのベッドで一緒に寝たんだけどさ」

「大正解だったか……」

18 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/28 13:07:28.51 qNj0JvrSo 16/51

「今朝起きたらお兄ちゃんが反対向いててさぁ」

「おぉ」

「しかもわたしじゃなくてぬいぐるみぎゅーってしてたの」

「お兄さん、抱き枕ないと寝られないタイプなのか?」

「隣に私いるのにだよ? ほんとありえなくない? ねぇ友ちゃん?」

「そうだねぇ」

「ムカついたから今夜はずぅっとぎゅーさせるんだ。絶対そっぽ向かせない」

「へぇ……」

「起きたときちゃんとぎゅーってしてなかったらぼこぼこにしてやろ」シュッシュッ

「凹凸の少ない握りこぶしですこと」

19 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/28 13:08:43.22 qNj0JvrSo 17/51

ピコンッ

「ん? あ……」

「お? どしたの?」

「……」

「妹ちゃん?」

「ねぇ、友ちゃん……」

「なんだね?」

「謝るときに連絡だけってありえないよね?」

「あー、そうかもねぇ」

「フツーならちゃんと直接会って目を見て誠心誠意謝って、それで機嫌なおるまでぎゅーってしてなでなでするよね?」

「後半はさすがに……」

「ね?」

「はい……」

20 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/28 13:09:47.62 qNj0JvrSo 18/51

「では行って参る」トタトタ

「ご武運を……」

「……」

「……」

「……」キュポッ

「……」コポコポ

「……」ズズズッ

「ふは……」

「インスタントも飽きたなぁ」

21 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/28 21:01:31.52 qNj0JvrSo 19/51

「♪」ニマニマ

「お?」

「♫」ニヤニヤ

「なんかご機嫌だねぇ」

「全然そんなことないよ。お兄ちゃんウザすぎて機嫌わるわる」

「そうは見えないけどなぁ。なんかあった?」

「駅前に新しくクレープ屋さんできたじゃん?」

「できたねぇ」

「あそこ行ってみたくてさぁ。お兄ちゃんに連れてってもらおうと思って」

「デートだねぇ」

「違うし。お兄ちゃんなんてただのお財布係だし」

「ひでえ」

22 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/28 21:02:33.23 qNj0JvrSo 20/51

「ともかく、誘ってもらえるようにさりげなくアピールしてみたの」

「さりげなくとは?」

「駅前にできたお店屋さんなに屋さんだっけーって言ってみたり」

「あーなんだかクレープ食べたいなーって言ってみたり」

「お店のチラシをお兄ちゃんの机にセッティングしてみたり」

「さりげなくとは……?」

23 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/28 21:03:15.71 qNj0JvrSo 21/51

「そんな感じで3日も頑張ったのにさぁ、全然誘ってこないの」

「自分から誘うという選択肢はないんですか……」

「それは、だって……断られちゃうかもしんないし……」

「なぜ急に弱気」

「んで、焦れったくなって問い詰めたの」

「なぜ急に強気……」

24 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/28 21:03:53.88 qNj0JvrSo 22/51

「そしたらね、カップルデーに誘おうと思ってた、だってさ」

「あぇ?」

「ほんと意味わかんないよねー♪ カップルじゃなくて兄妹だしー♪」ニコニコ

「それでか」

「てゆーか最初から誘うつもりなら早く言えばいいのに♪ ほんとバカだよねー♪」

「……そうだねぇ」

25 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/28 21:04:41.99 qNj0JvrSo 23/51

「そんでいつ行くの?」ガサゴソ

「今日」

「じゃあ放課後デートだ」ザラザラ

「うんっ♪」

「わーいい笑顔」ゴ-リゴ-リ

「ところで友ちゃんよ」

「なんだね妹ちゃんよ」ゴ-リゴ-リ

「それなに?」

「ミル」ゴ-リゴ-リ

「なにそれ?」

「コーヒー豆挽くやつ」ゴ-リゴ-リ

「コーヒー好きだっけ?」

「最近ハマっちゃって」

「へー、なんかおしゃれ」

「飲む?」

「んー、いいや。わたし苦いのダメだし」

「私もだよ」

「??」

26 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/29 15:02:04.13 niSj4kxRo 24/51

「あー……」

「おやおやどうしたのかね妹ちゃん」

「お兄ちゃんがさぁ……」

「うむ」

「ウザくてさぁ……」

「そう言うと思ってたよ」

27 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/29 15:02:58.60 niSj4kxRo 25/51

「んで、今度はどしたん?」

「昨日さぁ、お風呂上がったらお兄ちゃんがソファで寝ててさ」

「あー、うちもお父さんがたまに占領してるわ 」

「とりあえず上に座ったの」

「感覚麻痺ってるけどその距離感がもう既におかしいんだかんな?」

28 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/29 15:03:44.53 niSj4kxRo 26/51

「そしたらね、退かそうとしてくるの。わたしもソファ座りたいのにさ」

「そりゃそうなるだろ」

「髪乾かさないと風邪ひくぞーとか言ってくるし。そう思うなら自分で乾かせばよくない?」

「ああそうだな、自分で乾かせ」

「まぁなんやかんやで乾かしてくれたんだけどさ」

「お兄さん甘すぎねぇか?」

29 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/29 15:04:38.88 niSj4kxRo 27/51

「終わったら、はいおしまい俺は寝るってまたソファ占領してさ。せっかくお膝の上でご機嫌だったのに台無し」

「ご立腹ですなぁ」

「ぎゅーとかなでなでとかするでしょフツー。せっかくお風呂上がりであったかいんだしさぁ」

「……そうだねぇ」

「お兄ちゃんはわたしがどれだけ文句言いたいかわかってないんだ」

「ほぅ」

「だから同じ気持ち味わわせてやろうと思って、上に寝っ転がってそのまま寝てやった」

「お兄さんどうだった?」

「あったかかった♪」

「反応を聞いたんだけど……」

30 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/29 15:05:36.14 niSj4kxRo 28/51

ピコンッ

「あっ」

「お兄さん?」

「うん」タプタプ

「なんでいつもゆっくりなんだっけ? 部活?」

「なんか課外授業とってるとか……」

「あー進学組かー」

「それー」

31 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/29 15:07:56.42 niSj4kxRo 29/51

「先帰ってていいよとか言われないの?」

「この前それで喧嘩した」

「あーうん、だいたい想像ついたわ」

「思い出したら腹たってきた。お財布すっからかんの刑にしてやろ」

「お兄さん、すまん……」

「んじゃお先ー」フリフリ

「手加減してあげなよー」フリフリ

「……」

「……」ガサゴソ

「今日はちょっといい豆使ってみますか……」ザラザラ

32 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/29 20:48:33.36 niSj4kxRo 30/51

「ムカつく……お兄ちゃんまじムカつく……」

「今度はどうしたん?」

「お兄ちゃんがウザすぎて、毎日のように文句言ってるんだけど」

「文句ねえ……」

「最近ね、わたしが怒ってるとお兄ちゃんが急にこうやってね……」

「ほぉ?」

「ばーって両腕広げて、おいでーってするの」

「わーお」

33 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/29 20:49:20.30 niSj4kxRo 31/51

「わたし怒ってるんだよ? ほんとどんな神経してるんだか」

「そうだねぇ」

「しかもわざわざ言わなきゃなでてこないし」

「しっかり抱きしめられとる……」

「ちゃんと言葉にしなきゃわかんないんだよ? おでこぐりぐりーってしても全然気づかないの」

「うん……」

「ほんと鈍いっていうか、どんくさいっていうか……ウザイんだよねぇ」

「そっかぁ……」

34 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/29 20:50:26.53 niSj4kxRo 32/51

「しかもほんのちょっとで、そろそろ離れろーとか言ってくるし」

「あー」

「匂い嗅ぐなとか頭こすりつけるなとかさぁ。自分からおいでってしたくせにさぁ」

「ご立腹なんだねぇ」

「まぁでも大人しくぎゅーさせてあげれば、そのうち自分から謝ってくるんだけど」

「怒ってるときは何言っても逆効果だから落ち着かせてから謝ると……完全に手玉じゃねぇか……」

35 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/29 20:51:21.51 niSj4kxRo 33/51

「でもやっぱり、人が怒ってるときにそういうことするのはどうかと思うの」

「そうだねぇ」

「ちゃんと言わなきゃ分かんないからなぁ。今日も文句言わなきゃなぁ。疲れるなぁ」

「あれ、味占めてる? 怒ると抱きしめてもらえるの気づいちゃった?」

「お兄ちゃんまだかなぁ……」

「ダダ漏れじゃねーか」

36 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/29 20:52:32.38 niSj4kxRo 34/51

ピコンッ

「お兄ちゃんっ!」ガタッ

「犬か」

「じゃあ友ちゃん」

「あいよー」ガサゴソ

「……え、友ちゃん? それなに? 理科室から盗んできたの?」

「そんな悪いことしないよ」

「いつも給湯室からお湯くすねてるのに」

「まぁまぁ」

37 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/29 20:53:33.89 niSj4kxRo 35/51

「これはサイフォンって言ってな。まぁかっこいいコーヒーメーカーみたいなもん」

「ほぇ、なんかすごそう」

「バレたら怒られるから内緒ね」

「わかった。んじゃね、友ちゃん」パタパタ

「じゃねー」フリフリ

「さて……」

「……」

「……」

「……」

「うし……」コポポ

「……」ズズズッ

「ほぅ……」

「ハンドドリップとはまた違ったおもむき……」ズズズッ

38 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/30 10:51:46.11 zdjZzF8do 36/51

「妹ちゃんってさぁ」

「うん?」

「お兄さんのこと好きなの?」

「いや全然。まったくない。ウザイしきもい」

「そっか。結構仲良さそうだから気になって」

「毎日喧嘩してるし、むしろ悪い方じゃない?」

「ほぅ……」

39 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/30 10:53:34.65 zdjZzF8do 37/51

「じゃあさ、例えばお兄さんに好きだよって言われたらどうす……あらららららら?」

「……///」

「わーお」

「ぅ、ぁ……///」

「ふむ……」

40 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/30 10:54:37.09 zdjZzF8do 38/51

「妹ちゃん妹ちゃん。いったんカムバック」ガクガク

「あぇ? あれ? なんだっけ?」

「これまでのことはいいのです。大事なのはこれからです」

「はて?」

「より質量のある妄想にしましょう」

「?」

「目を瞑ってください」

「はい?」ギュ

「いいですか? あなたは今お兄さんに抱きしめられています」

「うん、いつも通り」

「もはや何も言うまい……」

41 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/30 10:56:17.03 zdjZzF8do 39/51

「いつもより強く抱きしめられています」

「う、うん……」

「いつもの優しい抱きしめ方と違って、お兄さんはなにか必死なご様子。精一杯妹ちゃんを求めているようです」

「お、お兄ちゃん……」

「そしてお兄さんが耳元で囁きました。『妹、愛してる』」

「ぁ……」

「おにい、ちゃん……」ポロッ

「おにいちゃぁん……!」ポロポロ

「うわぁ、おもしれぇ……」

42 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/30 10:57:21.91 zdjZzF8do 40/51

「うん、うんっ……わたしもっ……!」

「そーら戻ってこーい」ガックンガックン

「あぇ? お兄ちゃんは……?」キョロキョロ

「お、復活した」

「……」ソワソワ

「あらら? まだ心ここに在らずって感じ?」

「あ、あの、友ちゃん……」

「なんだね?」

「わたし……行かなきゃいけないところが……」

「お兄ちゃんに会いたくなっちゃったのかにゃ?」

「……ん」コクッ

43 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/30 10:58:05.57 zdjZzF8do 41/51

「では往くといい。それが汝の答えとなるだろう」

「うん! いってきますっ!」タタタッ

「いってらー」フリフリ

「……」

「……」

「……さて」ガサゴソ

「……」カキカキ

「……」トンッ

「ブラックコーヒー1杯50円でーす。あぁ並んで並んでちゃんとみんなの分あるから。え、3杯? まいどありー」

44 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/30 20:15:42.07 zdjZzF8do 42/51

「……」

「……」

進路希望調査
第一希望「」

「はぁ……」

「あ゛ー……」グタッ

「進路希望かぁ……」

「さぁて、どう書いたもんかなぁ」

「なんでこんなの書かなきゃいけないの……まだ高一なのに……」

「ねー」

45 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/30 20:16:35.36 zdjZzF8do 43/51

「差し当って進学か就職か……」

「んー、特にやりたいことないしなぁ……」

「もうさ、お兄さんのとこに永久就職しちゃえば?」

「ん? どゆこと?」

「お兄ちゃんと結婚するー、みたいな?」

「そんな5歳児みたいなこと言わないから」

「お、おう……」

46 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/30 20:17:38.00 zdjZzF8do 44/51

「それに兄妹は結婚できないでしょ」

「できたらするのか……?」

「いやしないよ。結婚なんてしてもしなくても同じだし」

「?」

「どうせ死ぬまで一緒にいるんだからさ」

「わーお」

47 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/30 20:19:21.87 zdjZzF8do 45/51

「んー、どうしよ。進学って言っても行きたい大学とかないし……」

「お兄さん進学組でしょ? 同じ大学は?」

「むーりー。なんか頭いいとこ行こうとしてるし。ちゃんと稼げるようにならなきゃーとか言ってさぁ」

「あぁ、養わなきゃいけなさそうなのがいるもんなぁ」

48 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/30 20:21:20.98 zdjZzF8do 46/51

「でもあれだね。お兄さん卒業したら寂しくなるね」

「ぜーんぜんこれっぽっちもさみしくないし」

「今まではずっと一緒だったんでしょ?」

「ずっとじゃないし。お兄ちゃんなんてどこでも好きなとこ行っちゃえばいいんだ」

「あら? お兄さんもしかして、来年から一人暮らし?」

「うん……」

「また喧嘩しちゃった?」

「した。めっちゃした」

「とにかく強情でわがままで、全然話聞いてくれないの。兄離れがどーのとか知らないし」

「あーもームカつく。お兄ちゃんのばか、あんぽんたん、おたんこなす。お兄ちゃんなんて指と爪の間にシャー芯いっぱい突き刺さる夢見て飛び起きればいいんだ……」ブツブツ

49 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/30 20:23:09.49 zdjZzF8do 47/51

ピコンッ

「む……」

「あーほら、お兄さんじゃない? 返信しなくていいの?」

「お兄ちゃんなんてもう知らないもん」プイッ

「ごめんね、私が余計なことを……」

「友ちゃんはなんにも悪くないもん。ぜーんぶお兄ちゃんが悪いんだもん」

ピコンッ

「そう言わずに機嫌直してよ。ほら、お兄さんからもまた連絡来てるし」

「別に機嫌悪くなしー。お兄ちゃんなんて知らないしー」

50 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/30 20:24:13.69 zdjZzF8do 48/51

ピコンッ

「あーもーうっさいなぁ」

「わたしの話は全然聞いてくれないくせに自分ばっかりさぁ」

「だいたいお兄ちゃんはいっつもいっつも……!」

「妹いるー?」

「!」ビクッ

「お?」

51 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/30 20:25:11.53 zdjZzF8do 49/51

「あぁ、ごめんね。妹なんだけど、どこにいるか分かるかな?」

「噂をすれば王子様のご登場だよ……って」

「……///」

「私のことはもう眼中にすらないってか? 恋する乙女みたいな顔しちゃってさぁ」

「んぁ?あぁ、いたいた。妹ー帰るぞー」

「う、うんっ!」ガタッタタタッ

「あっ」クルッ

「友ちゃんばいばい!」フリフリッ

「えぁ……?」

「妹ー?」

「今行くっ!」クルッタタタッ

「ば、ばいばい……」フリフリ

52 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/30 20:26:24.93 zdjZzF8do 50/51

「あ、お前、連絡ちゃんと返せよな。心配するだろ」

「うっさい。子供扱いすんな」

「……」フリ…

「お兄ちゃん寒い」

「また? お前ほんと寒がりな。カーディガン着る?」

「だから違うっての。なんでわかんないかな……」

「……」

「いらないなら……」

「いる。はやくよこせ」

「嗅ぐなよ」

「うっさい」

「……」

53 : ◆vRiO2kxgZN7e - 2022/10/30 20:27:17.97 zdjZzF8do 51/51

「……」

「……」

「はぁ……」

「……」ピラッ

「……」トントン

「……」カキカキ

進路希望調査
第一希望「バリスタ」

「フッ……」トオイメ-

おしまい

記事をツイートする 記事をはてブする