猫「実家に帰ったときだけ、飼い主づらするな」
猫「いちいち抱きかかえるな、うっとうしい」
猫「眠りかけてのときに、あたまにふれるな。寝れん」
猫「その低い声で名前を連呼するのも耳ざわりだからやめろ」
猫「それから、むやみに猫じゃらしで釣るのもだ」
猫「本能のままに追いかけちゃうから」
猫「懐中電灯のあかりで釣るのも、もちろん禁止」
猫「ついでに肉球にさわるのもな」
俺「おまえ、かわいい顔して文句しか言わないな」
元スレ
俺が実家に帰省したとき、飼い猫としゃべったことをただ書くわ
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1409236779/
猫「わたしは今年で12年生きたことになる」
俺「知ってるけど。なんだよ唐突に?」
猫「この年になってくると、カラダが重くてしゃあない」
猫「食えるエサの量も減ってくる。出る小便の量もだ」
猫「おまけに階段の手すりに飛び乗ろうとして、失敗する始末」
俺「まあ、いい年だもんなあ」
俺「そんで? それがどうかした?」
猫「もっと労われと言ってるんだ」
俺「これでも気ぃつかってるつもりなのに」
猫「にゃあ?」
俺「唐突にかわいいな、おまえ」
猫「……今のはまちがい。正しくは、ハア、だ?」
猫「言ってみろ。昨日、自分がなにをしてたのか」
俺「お前も知ってるでしょ」
俺「昨日は一日じゅう寝てて、ちょっとお前と遊んでただけ」
俺「いや、遊んであげたって言ったほうがいいか?」
猫「ふざけるな、遊んでやったのはこっちだ」
猫「だいたいおぬしは、下半身をベタベタさわりすぎだ」
俺「ちょっとしか触ってないじゃん。おまえ、なぜか怒るし」
俺「そうだよ、気になってたんだよな」
猫「ん?」
俺「なんでおまえってさ、下半身さわられるのをイヤがるの?」
14 : 名無しさ... - 2014/08/28 23:50:44 AeGI8qJNi 4/38ちなみにこれがうちの猫
猫「イヤだと感じることにいちいち理由なんてない」
俺「ただ単にイヤってこと?」
猫「そうだ。おまえがそら豆を食べられないのと同じだ」
俺「おっ。感心感心。飼い主のキライなものをおぼえてたか」
猫「ずっと昔に食わせようとしてきたからな、ガキんちょのおまえが」
俺「おぼえてないや。……しかし、テンション落ちるなあ」
俺「あと一時間もしたら東京に行くバスに乗るのに」
俺「お見送りが文句だもんなあ。しかも、猫の」
猫「文句ならまだある。『パシャパシャ』だ」
俺「パシャパシャ? なにそれ?」
猫「あれだ。そう、スマートホンだ」
俺「ほほう、スマホがわかるか。えらいえらい」
猫「……なでるなら、もっと優しくなでろ」ゴロゴロ
俺「はいはい。で、それが?」
猫「だからパシャパシャだと言ってるだろうが」
俺「ああ、ひょっとして写真のこと?」
猫「そう、それだ」
俺「そういや昨日はあまりに暇だったから、おまえの寝顔を撮ってたんだよな」
猫「あれのせいで、わたしの貴重な睡眠時間が削られたわ」
俺「いつも寝てしかいないんだから、いいじゃん」
猫「おまえの惰眠といっしょにしないでほしい」
俺「どういう意味?」
猫「わたしがふだんから寝ているのは、いざというときに力を発揮できるようにするため」
俺「というと?」
猫「もしも獲物があらわれたとき、体力がなくて狩りができなきゃこまる」
俺「こまらないよ」
猫「なに?」
俺「だって、そんなことしなくてもエサもらえるじゃん」
猫「たしかに。しっぽをふって泣けばエサがもらえるからな」
猫「外の世界と比べればなんとチョロイことか、人間は」
猫「ほれ、ニャーニャー。エサくれニャー」
俺「たった今、それ通じなくなったから」
俺「だいたい箱入り娘のおまえは、外に出ないじゃん」
猫「なにを言っている! 数え切れぬほど、外の世界へ飛びだしておるわ!」
俺「ああ、あれね」
俺「いつもオレや母さんが帰ってきて、とびらのすき間から出るやつね」
猫「そうだ。見事な身のこなしだろう?」
俺「アスファルトに足がのったと同時に家に戻ってくるけどな」
猫「それは、あの地面が肉球に容赦しないからだ」
俺「それに。トラックが目の前を横切ってたとき、おまえすごかったぞ」
猫「トラック? ああ、あのデッカイのか」
俺「転げまわりながら、家に帰っていったからな」
猫「外になじめば、おのずとトラックとやらにも慣れる」
俺「たぶんムリだよ。おまえって猫一倍からだ小さいし」
俺「ついでに気も小さいしな」
猫「そんなことはない」
俺「うしろから抱えようとするだけで、ビビって脱兎のごとく逃げるくせに」
猫「警戒心が強いだけだ」
俺「いーや、母さんも言ってた」
猫「なんて?」
俺「『なんであたしが育てると、気もからだも小さく育つんだろ?』って」
猫「……」
俺「外の世界にはキャットフードもジャーキーも猫缶もないからな」
猫「食料を自分で確保せにゃならんことぐらい、わたしでもわかる」
猫「食べるものが、虫やゴミに変わることも」
俺「考えるまでもなく、外の世界が大変だってわかるだろ?」
猫「ふんっ、自分こそ猫の手をかりんと虫も駆除できんくせに」
俺「……そんなことはない」
猫「ヤモリが便所に出たとき一目散に、わたしを抱えて、便所に連れこんだのは誰だっけ?」
俺「あれは訓練だよ、訓練。万が一のときのな」
俺「おかげでめったにできない狩りが、体験できただろ」
猫「ヤツは壁に張りついてた。けど、にらんだら怖気づいて落っこちた」
猫「あとは一瞬。あれじゃ、訓練にゃあならん」
俺「……今さあ、狩りで思い出したんだけどさ」
猫「どうした?」
俺「そのヤモリ狩ったあとに、なんでオレの部屋に置いた?」
猫「あれはまだ生きてたんだよ」
俺「え? そうなの?」
猫「オスのくせに自分よりはるかにちっちゃい生き物すら狩れないおまえに狩りの練習をさせようと思って」
俺「いらんわ、そんな気づかい」
猫「からだはちっちゃくても、大きなお世話はできるみたいだな」
猫「まだわたしのほうが偉大だな、うん」
俺「でもまあ、あの行動にはそんな意味があったわけだ」
猫「おぬしたち人間よりわたしたちの時間は短い」
猫「余計なことにさく時間は、もっと短い」
俺「……なるほど」
猫「なんだか嬉しそうだな」
俺「気のせいだよ。それより、寿命で思い出したんだけど」
俺「猫って死ぬ間際に、人の前から消えるらしいんだよ」
俺「どうしてそんなことをするのか、理由わかる?」
猫「知らん」
俺「え?」
猫「わたし、飼い猫だからそういうのわかんなーい」
俺「……さてはおまえ。オレがバカにしたこと、気にしてるな」
猫「べつに」
猫「人間のすみかは至れり尽くせり。飼い猫であるわたしには、それがよくわかる」
猫「この家の中にいても、知りたいことを調べることはできるだろう」
俺「実際に猫本人の意見を聞きたいんだよ」
猫「知らんもんは知らん」
猫「だいたい箱入り娘が、この家からどうやって消える?」
俺「それはまあ、そうだけど」
猫「そういうのは、外をうろついてる連中に聞いたほうがいい」
俺「……そうだな」
猫「だけど、ほかの質問になら答えられる」
俺「質問じゃなくて文句ならある」
猫「誰に?」
俺「もちろん、おまえに」
俺「オレの勉強のジャマをしたこと、おぼえてる?」
猫「はて。記憶にないな」
俺「人が受験勉強のために、ノートを机にひろげてたらな、おまえってばその上にのってきたんだよ」
俺「しかも、何回ノートの上からどかしても、すぐにもどってくるし」
猫「にゃー、ひょっとしてさかりのときのことか?」
俺「そうだよ。勉強してるオレの目の前で、ずっとケツふってたんだよ」
猫「なんだ、そんなことか」
俺「そんなこととはなんだ、そんなこととは」
猫「おぬしは真夏の炎天下に、汗をかいてる人間に文句を言うのか?」
俺「汗かかないおまえが、汗をたとえに使うんかい」
俺「とにかく、さかり時期のおまえは勉強のジャマだったんだよ」
俺「しかも夏だと、毛をまきちらすし」
猫「それもしゃあない」
猫「ずっと同じ毛をまとっていては、不潔だ」
俺「おまえ、風呂に入らないもんな」
猫「誰があんな恐ろしいものに入るか」
猫「全身に水を浴びるなんて……身の毛がよだつ」
俺「12年生きてて風呂に入ったの、5回もないだろ」
俺「そういや。一回、洗ってやろうとしたオレを引っかきまくったよな」
猫「人間の生活習慣を猫におしつけようとしたバツだ」
俺「トイレとかは数回でおぼえて、感心したのになあ」
猫「それとこれとはべつだ」
俺「ていうか、我が家に来たときのこと、記憶にある?」
猫「うっすらとなら」
俺「すごかったなあ、あのときのおまえ」
俺「もうずっとリビングの中を走りまわってさ」
俺「猫って、こんなに元気な生き物なんだってビックリしちゃったよ」
猫「ずっと狭いケージの中にいたんだ」
猫「子どもだったわたしは、いきなりの広い空間に興奮したんだろ」
俺「二時間ぐらい、転げまわるように暴れてたもんな」
猫「そっちこそ、おぼえてるのか」
俺「なにを?」
猫「子どものわたしに、たえずベッタリだったこと」
俺「忘れてないよ」
猫「眠りからさめて目をあけると、かならずおぬしの顔が目の前にあったからな」
俺「だって当時のおまえって、メチャクチャかわいかったんだもん」
猫「今は? ……まあいいや」
猫「おぬしはすぐに目をのぞきこんでくるからな。それもうっとうしかった」
俺「目があうと絶対顔をそらすよな、おまえ」
猫「目をあわせるのは好きじゃない」
猫「そうじゃなくても、おまえは存在そのものがやかましい」
俺「なんだよ、存在がやかましいって」
俺「まあでも、おまえって子どもキライだよな」
俺「イトコたちが来ると、すぐどっかに隠れちゃうもんな」
猫「あの双子のガキんちょか」
猫「来客が子どもだと、家に入ってくる前にわかる」
俺「どうして?」
猫「子どもの足音は耳が痛くなるから」
俺「なるほど。あいつらドタドタ歩くもんな」
猫「おぬしの足音は、ここ数年でだいぶマシになったな」
俺「オレも成長するんだよ」
猫「からだはちっこいままに見えるが」
俺「うるせー」
俺「ていうか、おまえって一番母さんになついてるじゃん」
俺「なんで母さんなの?」
猫「愚問だ。お母さんがわたしの世話を一番してくれるからな」
俺「オレだってするじゃん」
猫「どこがだ。エサやりだってときどきしかしない」
猫「シモの世話はまずしない」
猫「気をきかせて、暖房をつけることもしない」
俺「……」
猫「その点、お母さんはおまえとは真逆だ」
猫「よく気がつき、よく気が利く」
猫「どちらになつくか、考えるまでもない」
猫「なにより、お母さんの足音は静かだ」
俺「はいはい。おまえは世話してくれて、静かな人間が好き、と」
俺「あれ? でも、オレが寝てるときはおまえって、オレの上にのってくるよな」
猫「おぬしは体温が高くて、寝床にはちょうどいいからな」
俺「うるさいんじゃないのかよ」
猫「寝てるおぬしがたてるのは、寝息だけだからな」
俺「ふーん」
猫「ただし、春のおまえは寝てるときもやかましいな」
俺「春は花粉症で、鼻がつまってるんだよ」
猫「ところで。さっきから誰と比べてる?」
俺「え?」
猫「あきらかに誰かとわたしを比較してるだろ」
猫「トイレの話やわたしが家にきたときに、こんなに猫って元気なんだなって言葉でわかった」
俺「……」
猫「おそらく、前に飼ってた猫のことを言ってるんだろ」
俺「おまえ、あたまいいな。猫のくせに」
猫「おぬしはあたまわるいな。人間のくせに」
俺「まあ、そのとおりなんだけど」
俺「おまえの前にも、いっしょに住んでた猫がいたんだよ」
猫「それで?」
俺「そいつはミルクって名前なんだけど」
俺「野良猫だったんだよ」
猫「誰かからもらったのか?」
俺「ううん。ついてきた」
猫「ついてきた? 野良猫が?」
俺「そう。まだ8歳のときだよ」
俺「学校帰りだったんだけど。たまたま歩いてるあいつと、目があったんだよ」
俺「そしたら、家までついてきた」
猫「めずらしいこともあるんだな」
俺「母さんとオレの予想では、たぶん本当によわってたから……かな」
俺「どうしようもなくて、人間にすがるしかなかったんだと思う」
猫「そのすがる相手が、たまたまおぬしだったと」
俺「そういうこと」
俺「真っ白な猫でさ。目の色が左右でちがったんだよ」
猫「ふーん」
俺「おまえもちっさいけど、あいつはもっとちっこかったんだよな」
猫「そいつはどうなった?」
俺「いなくなった」
猫「……」
俺「うちで育てるようになってから、一ヶ月後にきえた」
俺「もともとおまえとちがって、夜以外は放し飼いにしてたんだ」
猫「だからさっき聞いたんだな、猫が消える理由」
俺「うん。ずっと気になってたんだよ」
俺「もちろん思い当たる場所は全部探したけどさ、見つからないし」
俺「あのときは放し飼いにしてたこと公開して、しばらくは泣いてたな」
猫「聞く相手をまちがえたな」
俺「かもね」
猫「……」
俺「……」
猫「で、そのあとわたしと会ったわけだ」
俺「そう。なんとなくペットショップに寄ったら、たまたまな」
猫「なんでわたしを飼いたいと思った?」
俺「直感、かな」
猫「もっと具体的な理由はないのか」
猫「毛並みが美しかったから、とか。目がくりくりしててかわいかったから、とか」
猫「以前飼ってた猫と似ていた、とか」
俺「真っ白なあいつと、アメショーのおまえは似ても似つかんわ」
猫「それもそうか」
俺「まあでも、なんかいっしょに住みたいな、って思ったんだろうな」
猫「ひと事みたいに言うんだな」
俺「昔の自分のことって、案外わかんないんだもん」
猫「いいかげんなヤツ」
俺「まあね」
猫「……そういえば、わたしもずっと気になっていたことがある」
俺「ん?」
猫「わたしの名前」
猫「なんであんな名前にしたんだ」
俺「へえ。おまえも自分の名前の由来が気になるのか」
猫「すこし」
俺「……ミルクは、真っ白だったこと。はじめてあげたのが、牛乳だったからその名前にしたんだ」
俺「ほんとは猫に牛乳ってあんまりよくないらしいけどな」
猫「それが名前の由来なのか。ガッカリだ」
俺「10歳にもなっていないガキんちょが考えたんだぞ」
猫「で、わたしの名前は?」
俺「……おまえの名前かあ」
猫「てきとうに考えたのか?」
俺「まさか」
俺「なぜかおまえを見てたら、おジャ魔女ドレミってアニメを思い出してさ」
猫「アニメ?」
俺「だから、最初はおまえの名前を『ドレミ』にしようかと思ってた」
猫「ほとんど考えてないじゃないか」
俺「でもそれだと、安直すぎるからさ」
俺「あたまの文字をいろいろ入れかえてみたんだよ」
俺「『ファレミ』とか『ミレミ』とか『ソレミ』とか」
猫「で、最終的に今の名前になったわけか」
俺「うん。三文字ってうっとうしいからな」
俺「それに、その名前だと漢字をあてれたからな」
猫「なるほど」
猫「よし、もう気になったことも知れたし帰っていいぞ」
俺「ゲンキンなヤツ」
猫「おまえの帰りのバスの心配をしてるんだ」
俺「まだ大丈夫だよ。ていうか、気づかいとかできるんだな」
猫「ふん。おまえといると疲れるからな、さっさと帰ってほしいだけだ」
俺「しんらつだなあ」
猫「……実際、あまりよくないんだ」
俺「……」
猫「昔に比べると、食欲も減った」
猫「出る小便の量も減った」
猫「階段の手すりにのぼるのを、失敗するようになった」
俺「……」
俺「……なにかあったら、きちんと言えよ」
俺「オレでも、母さんでも、オヤジでもいいからさ」
猫「おバカなおぬしの前だから、こうしてしゃべってるが」
猫「口は災いのもと。ふつうの人間の前で、口を開こうとは思わんな」
俺「フツーじゃないのか、オレは」
猫「それに。安心しろ、まだまだ死んでやらないから」
俺「あたりまえだろ」
猫「……前のヤツが疾走したとき、おぬしは泣いたんだったな?」
俺「うん? そうだけど?」
猫「もし……もし、わたしが死んだら、また泣く?」
俺「……」
猫「なぜ黙る」
俺「いや、そういうのって考えたくないから」
猫「考えろ。考えて、想像して」
俺「…………まあ……泣く、かなあ」
猫「ふーん。満足に世話もしないくせに?」
俺「それとこれとはまたべつだろ」
俺「でも、できりゃ泣かせてほしくないな」
猫「安心しろって言っただろ。そう簡単にはくたばらない」
猫「猫が死ぬ直前に消える、理由」
猫「すこし考えたら、予想がついた」
俺「え? わかるの?」
猫「あくまでわたしの予想だ」
猫「自分が弱っているときに、敵に襲われたらどうする?」
俺「オレに聞かれても」
猫「ふつうに考えれば、すぐに答えは出るだろ」
俺「困るだろうな。弱ってたら反撃もできないし」
猫「それが、そのまま答えにつながる」
猫「死の直前ということは、当然弱っているってことだ」
猫「だったら、身を隠すのが最善の策だろう」
俺「そういうことなの?」
猫「猫のわたしが言うんだ、まちがいない」
俺「……」
猫「どうした?」
俺「もし、だよ。おまえの言ってることが本当だったらさ」
俺「ミルクは、オレや母さんを敵だと思って消えたってことになるでしょ」
俺「それに、もしかしたらおまえも……」
猫「わたしは最期までここにいたい。そう思ってる」
猫「それに、ミルクは野良猫だったんだろ」
猫「野生は野生に帰る。ただ、それだけのこと」
猫「ミルクはおぬしに感謝している。絶対に」
俺「断言するんだな」
猫「だって、わたしもそう思ってるから」
俺「おまえ……」
猫「わたしはとっても恵まれてる」
猫「それぐらいは飼い猫のわたしでも、よくわかる」
猫「野良猫だったミルクはわたし以上に、おぬしやお母さんの施しが身にしみたはずだ」
俺「……そっか」
俺「あー、なんか、うん。すっきりしたよ」
俺「そろそろ行くよ、バスに間に合わなくなるといかないしな」
猫「待て」
俺「ん?」
猫「せっかく知りたいことを教えてやったんだ」
猫「ジャーキーの一本ぐらい、よこしてけ」
俺「へいへい」
俺「……じゃあ、そろそろ本当に行くわ」
猫「次に帰ってくるのはいつになりそう?」
俺「んー、次はやっぱりコタツがリビングに出るころかなあ」
猫「じゃあ、それまでは静かなわけだ」
俺「本当は寂しいんだろ。強がらなくていいぞ」
猫「わたしは本気でおまえをうっとうしいと思っている」
俺「傷つくなあ」
猫「だけど。おぬしがいつ帰ってきも、わたしは確実にここにいる」
俺「おう」
俺「また帰ってくるからな。いってきます」
猫「待っててやる。いってらっしゃい」
89 : 名無しさ... - 2014/08/30 00:24:11 6RHahQcJM 38/38
おわり
ここまで読んでくれてありがとうございました