『早く来い、若白髪』
元スレ
白髪の男「エルフのメスガキ?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1333915623/
とある村
白髪「……」
「目をつけていた村はここのはずですが……これは酷い」
白髪「ああ」
「全部焼け落ちちまってる」
白髪「そうだな」
「エルフどももみんな死んでやがるぜ」
白髪「……」
「また、ですか。一体何があったのでしょうな。数日前までは普通の暮らしだったような気配ですが」
白髪「さて。だが俺たちは盗賊だ。やることが変わるわけでもない」
「へへ、その通りだお頭。さっそく始めますぜ」
白髪「村をあさって食べ物と使えそうなものをかき集めろ。俺も少し見て回る」
「へい!」
白髪「女。子供。男。老人」
白髪「皆エルフ。死んでいるな」
白髪(いや)
白髪「……殺されたのか」
白髪「家々の焼け方もずいぶん激しい」
白髪(何者かの悪意を感じる)
白髪「……奴隷の死体はないな。人間の」
白髪(反乱か?)
白髪「さて」
白髪(これで三つめ。三つの村が壊滅しているのを確認した。この一ヶ月の間に)
白髪(人間の反乱にしては数が多い。そんなのは、今までほとんど、いや全く聞きもしなかったのにな)
白髪(この一ヶ月の間に"偶然"人間の反乱が頻発した?)
白髪「そんな偶然があるか?」
白髪「……」
白髪(人間がエルフの奴隷にされてから早十年だ。その間に反乱は、あるにはあったらしいが)
白髪「ないな」
白髪(だとすると何が起こった? 起こってる?)
白髪「これらをやらかした奴、もしくは奴らが残ってたら話を聞けるんだがね」
白髪「……ん?」
白髪(かろうじて残った家の壁に何かでかでかと……)
白髪「これは……紋章か。王家の。しかも人間側のだ。エルフのものじゃない」
白髪(もとから壁にあったのではなく、後から、しかも騒動のあとに描かれたものみたいだな)
白髪(ってことはこの村を潰したのは間違いなく人間)
白髪「もしくは人間の仕業と見せかけたいエルフか」
・
・
・
「すみませんお頭。これっぽっちしか集まりやせんでした」
白髪「これだけ荒らされていたからな。むしろよく集まった方だ」
「ありがとうございます」
白髪「今の手持ちと合わせて、当面はしのげるな」
「おう」
白髪「……」
「どうなさいましたかな」
白髪「やりにくくなるな」
「どういうことだ?」
白髪「この村で起こったのは、経緯は分からないがまず間違いなく人間による破壊だ」
「でしょうな」
白髪「これだけ大きい村だと近くの都市とも交流があったろう。すぐに王都にも知れる」
「ふむ」
白髪「そうなればエルフたちは警戒する。先の村二つも合わせて、その度合いは相当なものになる」
「なるほどな。俺たちのささやかな盗賊稼業にも支障が出るってか」
白髪「そうだ。今後は特に慎重に仕事をする必要がある」
「……」
白髪「他の奴にも伝えて、注意を呼び掛けてくれ」
「へい」
白髪「――よし。まあ今日の仕事はこんなものか。そろそろずらかろう」
「了解です」
白髪「全員そろったか?」
「へい! あ、いや、一人足りやせん!」
白髪「?」
「あいつ、もうちょっと奥を探してくるって」
白髪「……呼んでこい」
「申し訳ありません! 今すぐ――」
「お頭ー!」
白髪「ん?」
「すみません、遅れました!」
白髪「準備をしろ。すぐ出発する」
「いや、ちょっと待ってください。大変な拾いものをしたんです。したんですよ」
白髪「食い物か? 使える道具か?」
「もっと素敵なもんです」
白髪「もったいぶるな」
「生き残りですよ」
白髪「生き残り?」
「ええ、生き残りです!」
少年?「ぅ……」
白髪(……意識を失ってるのか。大きな外傷はない)
「どうです? どうですか?」
白髪「どこにいた?」
「奇跡的に燃えてない家の瓦礫の下です。ちょうど潰されない空間におさまってましたよ」
白髪「生きてるな」
「ええ」
白髪(ってことは、騒動が起きたのはは昨日一昨日といったところか?)
白髪「何にしろ最近には違いないか。起きそうか?」
「いえ。すぐには無理でしょうな」
白髪「そうか。じゃあ運んで連れていこう」
「本気ですか?」
白髪「……」
「見えてないわけでもないでしょうに」
白髪「何のことだ?」
「少年の耳。エルフですな」
白髪「俺のモットーは」
「はい?」
白髪「女子供は殺さないって事だ。というより殺しは避けたい。精一杯避けるべきだ」
「はあ」
白髪「なんでかわかるか?」
「かわいそうだからですか?」
白髪「それがギリギリ神に見放されないためのコツだからだよ」
「ふむ?」
白髪「神に見放された奴は長続きしない。そういうもんだ」
「……で、それが何か?」
白髪「このガキを見殺しにすれば、それは俺が殺したのと変わらない。だから助ける」
「それは厄介な考え方ですな。苦労しますよ」
白髪「文句はこのガキを見つけた馬鹿に言え」
「それじゃ納得しない奴もいるぜ。エルフを憎んでない人間はいない。この盗賊団だって例外じゃない」
白髪「冗談だ」
「は?」
白髪「さっきのは冗談って言ってるんだ。神に見放されないコツ? さんざん悪さやってきて今更馬鹿か」
「では?」
白髪「こいつは騒動を見ている」
「あ」
白髪「そういうことだ。貴重な情報源になるんだよ」
「何が起こったかが正確に分かれば、より安全に仕事が続けられると。そういうことか」
白髪「ああ」
「承知いたしました。でしたら運ばせましょう。見つけた馬鹿に」
「おう。運べよ、馬鹿」
「え。酷くない? 酷くないですか?」
白髪(……)
白髪「行こう」
12 : VIPに... - 2012/04/09 05:18:26.09 Iv4+7Zg8o 10/133当ssは"エルフ「早く来なさい、奴隷」 男「へっ」"のスピンオフです
こちらも読めばより楽しめるかもしれませんのでよろしく
エルフ「早く来なさい、奴隷」 男「へっ」
https://ayamevip.com/archives/54510049.html
森の手前
白髪「周りに危険は?」
「ありやせん」
白髪「ガキの具合はどうだ?」
「気を失ってますからな。危ないは危ないでしょうが、とりあえずやれることはやりましたよ」
白髪「そうか」
「……それで、ですが」
白髪「ん?」
「いえ、気付いたことが一つ」
白髪「なんだ?」
「実はですな――」
白髪「メスガキ? こいつが?」
「ええ」
白髪「本当か?」
「嘘をつく理由がありますかな?」
白髪「いや」
「特に重要なことではありませんが、まあ一応お知らせしておこうかと」
白髪「……」
「では、エルフが目を覚ましましたらお知らせします」
白髪「頼む」
・
・
・
幼エルフ「……」
白髪「気分はどうだ?」
幼エルフ「……」
白髪(目を覚ましたばかりで衰弱しているな)
白髪「いくつか訊く。正直に答えろ。それでお前の生死が決定する。俺は怒りっぽいぞ」
幼エルフ「……ぅ」
白髪「そうだ。死ぬのは怖いだろう? 訊かれたことに真っ直ぐ答えるんだ。いいな」
幼エルフ「……」コクン
白髪「それでいい。……村を襲ったのは人間だな?」
幼エルフ「……」コクン
白髪「奴隷が反乱を起こした?」
幼エルフ「……」フルフル
白髪「……? じゃあ、村の外から人間が?」
幼エルフ「……」コクン
白髪「……ふむ」
「お頭。そろそろ限界です」
白髪「そうか。分かった」
幼エルフ「……」
白髪「終わりだ。休め」
幼エルフ「……」
白髪「安心しろ。殺しはしない」
幼エルフ「……」
白髪「だが、俺たちは盗賊だ。気が変わることもある」
幼エルフ「……っ」
白髪「下手な真似はするなってことだよ。肝に銘じておけ。じゃあな」
二日後
幼エルフ「……」
白髪「よう。元気になったようだな」
幼エルフ「……お前は」
白髪「この盗賊団の頭だ。好きに呼べ」
幼エルフ「……」
白髪(反抗的な目だな。ちっと休ませすぎたかね)
白髪「お前、名前は?」
幼エルフ「盗賊なんかには教えない」
白髪「はは」
幼エルフ「……」
白髪「そうか」
ガスッ!
幼エルフ「っ!」ドサ
白髪「舐めるなよクソガキ」ガシ
幼エルフ「く……」
白髪「お前は偶然、それと俺のちょっとした気まぐれで生きている。情報を引き出した時点で殺してやってもよかったんだ」ググ
幼エルフ「っ……」
白髪「従順になれとは言わない。でも少しは立場ってものを理解したほうがいいだろうよ」ギリギリ
幼エルフ「あぐ……」
白髪「命を拾ったのと同様、俺のちょっとした気まぐれで死ぬこともあるはずだからな」
幼エルフ「ぐ……」
白髪「分かったか?」
幼エルフ「っ……っ……」コクコク
ドサ!
幼エルフ「ゼィ……ゼィ……」
白髪(目の光がなお強いな)
白髪「チビ」
幼エルフ「……?」
白髪「お前のことはそう呼ぶ」
幼エルフ「……」
白髪「しばらくは俺たちと一緒だ。なんならおいていってやってもいいがな」
幼エルフ「それは……」
白髪「いやならついてこい。だが下手な真似はするなよ。したら殺す」
幼エルフ「わ、分かった」
・
・
・
「ずいぶん手荒だったな」
白髪「ああ、やりすぎかもな。だが変な考えを起こさせないためには必要だ」
「まあ、お頭の方針に口出す気はねえよ」
白髪「村の外から人間が襲って来たらしい」
「あのエルフからの情報か」
白髪「あとは村の中にあった王家の紋章。関係あると思うか?」
「ないわきゃないだろ」
白髪「そうだな」
「問題は」
白髪「俺たちにどんな影響があるか、だ」
「あのエルフは約に立つのか?」
白髪「さあな。まあとりあえずは移動を始めよう」
『ずっと、一緒にいような』
翌日の夕方
白髪「――じゃあやっぱり、村の外から人間が襲ってきたこと以外は何も分からないんだな?」
幼エルフ「……」コク
白髪「包み隠さずに話せよ。死にたくはないだろ?」
幼エルフ「分からないものは……分からない」
白髪「……。そうか。ならいい」スク
白髪「しばらくしたら食事だ。それまで好きにしてろ」
幼エルフ「……」
白髪(……強い眼光だな。ぶん殴った俺への仕返しでも企んでんのかね)
・
・
・
「お頭。どうでした?」
白髪「本当に何も知らないらしい」
「そうっすか」
白髪「見込み違いだったな」
「どうしやす?」
白髪「何がだ?」
「あのチビの扱いですよ。捨てやすか?」
白髪「お前はどうしたい?」
「自分、エルフはいっとう嫌いっす。でも子供に酷いことするとバチが当たるっす」
白髪「ううむ。まあ、ついてくるに任せるか。ついてこれなくなったらおいていこう」
「ドライっすね」
白髪「養う義理はない。食料だって限られてるんだ」
「まあそっすけど」
食事の席にて
白髪「で、紋章の件についてはどう思う?」
「何者かが意図的に残したもので間違いないですな」
「エルフを粛清した証、ってところか?」
白髪「エルフたちへ向けた、人間からの挑戦状ともとれるな」
「では」
白髪「ああ。エルフとの全面対決姿勢を示す人間の武装グループがいる」
「……」
白髪「他に何か手掛かりは?」
「村の破壊具合から、割と武器や道具には困ってないと推測できるぐらいだな」
白髪「加えて人間の死体が極端に少なかった。損害を出さずに手際よく殺してる」
「ですな。その道の者でしょうか」
白髪「可能性はある」
「何者だ?」
白髪「さて」
白髪「何にしろ問題は、俺たちの盗賊稼業に影響があるかどうかだ」
「だな。十中八九やりにくくはなる」
「こっちは細々やってたいのに、なんだかなあって感じっす」
白髪「……」
「何をお考え? お考えですか?」
白髪「もし、という話なんだが」
「ええ」
白髪「仮にその武装グループと遭遇した場合。どうする?」
「そいつらは人間だろ? 何も怖がるこたねえだろ」
「そうです。そうですよ」
白髪「いや、そういうことじゃない」
「というと?」
白髪「そいつらの目的がなんにしろ、俺たちは決めなけりゃならないだろう」
「なるほど。協力するか否か、ということですか」
白髪「ああ」
「……」
白髪「俺たちの目的はただ生き延びることだけだ。エルフとの全面対決じゃない」
「ううむ……」
白髪「だが行動から見て、そいつらはかなり過激な考えを持っているように思える」
「もしこちらが協力を拒んだら」
白髪「……」
「おいおい……」
白髪「いや。そう深刻になるな。ただの可能性の話だ。一生会わないってこともあり得る」
「確かにそうっすけど」
白髪「臨機応変にいこう。その時はその時だ」
「……わかりました」
白髪「まあ当面は、エルフたちが警戒している中でどうやって食いぶちを稼ぐかってことだが――」
「お頭」
白髪「ん?」
「お食事中すみませんお頭」
白髪「いや。なんだ?」
「あのチビが、何やら話したいことがあるそうです」
白髪「分かった。あとでな」
「それが、今すぐお頭に伝えたいことだそうで」
白髪「……? 分かった、行く」
「もしや、その武装グループの事では……」
白髪「あり得るな。すぐ戻る」
白髪「――来たぞ。どこだ?」
「おや? 先ほどまで間違いなくここにいたのですが」
白髪「……おいどうした! 出てこい!」
ヒュッ!
白髪「うおっ」パシ!
白髪(木の枝? なんだ?)
ゴンッ!
白髪「っ――!!」
「お頭!?」
?「よしっ、ざまあみろ!」
白髪(ぐ……木の枝で気をそらして一撃、か)
幼エルフ「これであたしを殴った分は返したからな!」
白髪「……。言いたいことはそれだけか?」
幼エルフ「……!」
白髪「おおいてえいてえ……くそいてえ」
幼エルフ「いい気味だ!」
「お頭」
白髪「お前は黙ってろ」
「は、いやしかし……」
白髪「おいチビ」
幼エルフ「なんだよ」
白髪「死んだ方がマシ。そんな気分を味わわせてやるよ」
幼エルフ「上等だ! こい!」
――厄介だな、と。その時ようやく気付いた
――暴力に萎縮しない相手は至極やりにくい
――むしろこのメスガキは押さえつければ押さえつけるほど強い力で反発してくるようだった
――人間とエルフの超局地戦争が勃発した
翌日、朝食時
「大丈夫です? 大丈夫ですかお頭?」
白髪「どうってことはない」
「見事に腫れてますな」
白髪「平気だ」
「まあ……それならいいけどよ」
白髪「そうだ、問題ない。倍以上はあいつに返したしな」
「大人げないっす」
白髪「なんか言ったか?」
「何でもないっす」
「あのエルフ、なかなかの気骨ですな」
白髪「はねっかえりだ」
「ここはいわば敵地の真ん中。そんな場所で無茶できる若さが少し羨ましいな」
白髪「若いから、じゃない。馬鹿なんだろうよ」
「お頭といい勝負っすね」
白髪「……」
「あ、いたっ。すみません! すみませんっす!」
白髪「次妙なこと言ったらチビからもらった分お前を殴る」
「ええっ? それは勘弁っすよ」
白髪「まあ、とにかくあのチビは厄介だ。これからのことも考えて、もう一度立場ってもんを分からせ――」ガリ!
「どうしましたかな?」
白髪「……今日の食事当番は誰だ?」
「俺だけど?」
白髪「気をつけて作れ。砂利が入ってたぞ」
「そんなはずねえよ。俺が几帳面なのはお頭も知ってるだろ」
白髪「だが現に……あ」
「?」
白髪「あのメスガキ……」
・
・
・
幼エルフ「砂利なんて入れてない」
白髪「まだ何も訊いてないが」
幼エルフ「ふん!」
白髪「やっぱりお前か。殴られ足りないようだな」
幼エルフ「どっちかっていうと噛み足りない」
白髪「チッ、やたらめったら歯型を増やしやがって」
幼エルフ「もっと増やしてもいいぞ」
白髪「いらん。もらいっぱなしは悪いからな」
幼エルフ「そうか」
白髪「ああ。今から殴る。歯、くいしばれ」スタスタ
幼エルフ「……」
――ボスッ!
白髪「……」
幼エルフ「よし! ひっかかったな!」
白髪(落とし穴……)
幼エルフ「どんな気分だ白髪頭」
白髪「いつの間に掘ったんだ」
幼エルフ「夜中」
白髪「ってことはその時からいろいろ計算してたってことか」
幼エルフ「ふふん」
白髪「無駄に労力を使ってるな」
幼エルフ「うるさい! これでも喰らえー!」
・
・
・
「お頭」
白髪「何だ」
「泥だらけっすね」
白髪「似合うか?」
「いえあまり」
白髪「だろうな」
「……。ところで何をしてるんすか?」
白髪「倍返しの準備だ」
「飽きないんすか」
白髪「暇なんだよ」
「そっすか」
「チビが折れるのに昼飯一食分」「じゃあ私はお頭が諦める方に」
「何の話だね?」
「あのチビ対お頭戦争の決着だよ」「気になります。気になりますから」
「まだやってるのかね」
「毎日飽きずにな」「もう日課と化してますよ」
「今はどっちが優勢なんだい?」
「今日はお頭が返したところだな」「でもそろそろ――」
幼エルフ「喰らえー!」
「……」
「始まったな」「始まりました。始まりましたよ」
「報復の繰り返しかね。まるで本物の戦争のようだ」
「まったくだな」「ええ。ええ」
夜
幼エルフ「……」ザックザック
幼エルフ(今度は落とし穴をフェイクにして、別の罠を仕掛けよう)
幼エルフ「……ふう」
幼エルフ「ん? あれは」
白髪「……」
幼エルフ(白髪頭。あんなところに座って……なにしてるんだ?)
白髪「……」
白髪(星が、綺麗だな)
白髪「……」フゥ……
◆
幼エルフ「……」
幼エルフ(変な目だ。どこを見てるんだか)
幼エルフ「……疲れたし、戻ろう」
朝食の席
「何してるんすかお頭?」
白髪「砂利のチェックだ」
「入ってました?」
白髪「ああ」
「そりゃ災難」
白髪「災難は災難だが、日課になってしまってな」
「麻痺してきたんすか」
白髪「ああ」
「それこそ災難すね」
白髪「まったくだ」
「ところで、あと二日ほどで次の村が見えてくるはずなんすけど」
白髪「そうか。今のところなにか問題は?」
「特にはない。が」
白髪「なんだ」
「熊の足跡や糞がいくつか見つかっている。割と多いぜ」
白髪「出くわすことも考えた方がいいと?」
「いや。だが一応伝えた方がいいと思った」
白髪「分かった。覚えておく。他には?」
「他の足跡や痕跡も見つかった」
白髪「他?」
「エルフ、ないしは人間のものだ」
白髪「……!」
「街道を大きく外れたこんな場所を通るエルフはいねえだろうから……」
白髪「……人間か」
「予想するに、数は十以上」
白髪「紋章の、か」
「恐らく、そうでしょうな」
白髪「……」
「向かっている方向が同じというわけすか」
白髪「前の村から最も近い、ある程度の大きさがある別の村」
「ううむ……」
白髪「皆に警戒しておくよう伝えてくれ。一応だ」
「了解しました」
・
・
・
白髪「ふんッ!」パコン!
幼エルフ「ふぐっ」ベシャ!
白髪「……ふう」
幼エルフ「うう……」
白髪「少しは懲りたか馬鹿チビ」
幼エルフ「……」
白髪「今日はこれぐらいにしてやる。もう刃向かおうなんて――」ボス!
幼エルフ「よし!」
白髪「……」
・
・
・
夜
幼エルフ「……」ザックザック
幼エルフ「!」
幼エルフ(白髪頭だ)
白髪「……」
幼エルフ(また空を見てるのか)
白髪「……」
白髪「……」フゥ……
白髪「出てこい。チビ」
幼エルフ「!!」
白髪「いるんだろう。分かってる」
……ガサガサ
幼エルフ「……」
白髪「覗き見は感心しないな」
幼エルフ「ふんっ」
白髪「近々エルフの村に着く」
幼エルフ「!」
白髪「俺たちは一仕事していくためにそこに立ち寄る」
幼エルフ「……それが?」
白髪「さて。一応伝えたからな。後はお前の好きにしろ」
幼エルフ「……なんであたしを助けた?」
白髪「助けた? どうしてそう思う」
幼エルフ「あんたたちはあたしから情報を引き出した。もう用済みだったろ?」
白髪「用済みだからほっといた。お前が勝手についてきただけだ」
幼エルフ「……」
白髪「あまり思い上がるな。お前にそんな価値はない」
幼エルフ「……」
白髪「まあ、それでもしいて言えば、だ」
幼エルフ「?」
白髪「神に見放されないためだな」
幼エルフ「……?」
白髪「罪を犯しすぎた者は、神に捨てられる。俺はそれがいやなだけだ」
幼エルフ「本気で言ってるのか?」
白髪「信じないよな?」
幼エルフ「ああ」
白髪「それでいい。冗談だからな」
幼エルフ「くだらない……」
白髪「星を見てた」
幼エルフ「なんだよ?」
白髪「神の創りたまいし空の宝石だ」
幼エルフ「?」
白髪「天に昇りし死者たちの魂の輝きとも言われているな」
幼エルフ「それが?」
白髪「永遠に手に入らない。そばに行くこともできない」
幼エルフ「……」
白髪「……。もう寝ろ」
幼エルフ「……」
次の村に向かう道中
「お頭」
白髪「ん?」
「気付いてますよね? 前方に煙がのぼってるっす」
白髪「……ああ」
「炊事にしては様子が変かと」
白髪「そうだな。どれくらいで着く?」
「昼過ぎには」
白髪「気付いてない奴はいないと思うが、一応気をつけるよう全員に伝えとけ」
「了解っす」
幼エルフ「……」
・
・
・
昼過ぎ 村
「死屍累々。という言葉がよく似合いそうな光景ですな」
白髪「ああ」
「つい数刻前ってところだ。これをやった奴らが立ち去ったのは」
白髪「……」
「今回も紋章が見つかりました。見つかりましたよ」
白髪「やはり、か」
「とりあえず使えそうな物は集め終わりました」
白髪「ああ、ご苦労。とりあえずここを離れよう」
「分かった」
幼エルフ「……」
幼エルフ「っ……」ギュッ……
村から少し
「おや」
白髪「どうした?」
「あのエルフがいませんな」
白髪「そうか?」
「ええ」
白髪「さっきの村に残ったんじゃないか? 数日もすればエルフの調査隊が来るはずだ」
「なるほど。確かに保護してもらうことを考えているのかもしれませんな。ですが」
白髪「ん?」
「彼女はショックを受けたのかもしれません」
白髪「どういうことだ?」
「彼女は我々に拾われた時は気を失っていました。同胞の死体は見ていません」
白髪「ああ」
「今日、彼女はようやく気付いてしまったのではありませんかな。自分が故郷を失ったことを」
白髪「……」
「故郷には両親もいたでしょう。友人もいたでしょう」
白髪「……」
「我々について足を動かしていた時には考えなくて済んだかもしれませんが」
白髪「……」
「ですが、あの光景を見てしまっては気付かざるを得ない」
白髪「……ああ」
「どうします?」
白髪「ん」
「彼女を拾いに戻りますか?」
白髪「……」
白髪「いや、戻らない」
「……」
白髪「何度も言った。俺たちに奴を養ってやる義理はない」
「しかし」
白髪「あいつはエルフだ」
「……」
白髪「進むぞ」
「はい」
森
ザー……
白髪「……」
「雨脚が強いですな」
白髪「ああ」
「村を出てから怪しかったが……本降りになったか」
白髪「ああ」
「そろそろ日が暮れますが、これじゃあ火が起こせません。起こせませんよ」
白髪「ああ」
「……どうしたっすか? さっきから生返事っすけど」
白髪「いや。別に」
「もしや」
白髪「違う」
「今戻ればあのエルフを拾えますな」
白髪「チビは関係ない」
「熊」
白髪「?」
「出るやもしれませんな。熊が」
白髪「……」
「そう言えば糞や足跡が……って」
白髪「そうだったな」
「このまま森の中で夜を過ごせば」
白髪「まあ、可能性はある」
「ええ!? それはいやっすよお!」
白髪「……」
「お頭」
白髪「……仕方ない。村の跡に戻るか。森の中よりは幾分安全だろ」
「承知いたしました」
夕刻 村跡
白髪(……おや?)
「いませんな。エルフが」
白髪「……」
「街道にでも出たのでしょうか」
白髪「さあな」
「これから日が暮れるというのに心配ですな」
白髪「俺たちが気にかけることじゃない。爺さんはやけにチビを気にするな?」
「はあ。まあ、老人というのはそういうものなのです」
「お頭。近くに川があったっす」
白髪「使えそうか?」
「いえ。雨で水量が増えてて、今は濁流と化してるっすね」
白髪「そうか。だが、一応俺も見てこよう」
「危険はないと思いますが、念のためお気をつけくださいっす」
白髪「ああ」
・
・
・
ゴゥ ゴゥ……
白髪(確かに飲み水等には使えそうにないな)
白髪「戻るか」
白髪「……ん?」
白髪「これは……子供の足跡か?」
白髪(こっちから来て、あっちに行って……)
白髪「……」
村跡
「あ。お帰りなさいっす」
白髪「ああ」ゴソゴソ
「どうした?」
白髪「いや。少し荷物を持ってくぞ」
「かまいませんが……何か? 何かあったんですか?」
白髪「大したことじゃない。すぐ戻る」
「はあ。お気をつけて」
川沿い
白髪「……」ザッザッ
白髪(……さて。だいぶ川沿いを下って来たが)
白髪「いた」
幼エルフ「――」
白髪「おい。生きてるか」
幼エルフ「ぅ……」
白髪「……はぁ」
幼エルフ「――」
幼エルフ「うう……」
幼エルフ「……」
幼エルフ(暗いや。夜?)
幼エルフ「あたしは……川に落ちた。んだっけ……?」
白髪「まあ、それ以外ないだろうな」
幼エルフ「……!」
幼エルフ「お前は……っ」ブルッ!
幼エルフ「クシュンっ!」
白髪「そんなに暖かい時期でもない。風邪くらいはひいてるだろ」
幼エルフ「寒い……」
白髪「お前は川岸に引っかかってた。それをこの洞窟まで引きずってきた」
幼エルフ「引きずって?」
白髪「ああ」
幼エルフ(……だから背中が痛いのか)
白髪「悪いが服は替えさせてもらったぞ」
幼エルフ「えっ。あ!」
白髪「文句は元気になってから聞く。毛布かぶっとけ。今は寝ろ」
幼エルフ「ちょっと!」
白髪「俺は外にいる」スク スタスタ
ホーゥ ホーゥ……
白髪「……」
白髪「……」フゥ……
「おい」
白髪「寝てろって言ったろうが 文句なら明日――」
幼エルフ「また星を見てたのか」
白髪「……結構流されたくせに、見た感じ元気だな」
幼エルフ「……若いから」
白髪「そういう問題でもないと思うが」
幼エルフ「……」
白髪「どうした?」
幼エルフ「あたし、さ」
白髪「ああ」
幼エルフ「パパとママが死んじゃったなんて考えないようにしてた」
白髪「……」
幼エルフ「本当はまだ生きてるんだって、思ってたんだ」
白髪「そうか」
幼エルフ「うん……」
白髪「……」
幼エルフ「……」グス
白髪「……」
白髪「なんで川に落ちたんだ?」
幼エルフ「え?」
白髪「いや。川に落ちる状況ってのが分からなくてな。気になっただけだ」
幼エルフ「雨ざらしはかわいそうだったから」
白髪「?」
幼エルフ「知らない人たちだったけど、埋めてあげたほうがいいかなって、思ったんだ」
白髪「……。それで?」
幼エルフ「拾ったスコップで穴を掘ってるうちに、手がすりきれちゃって。傷を洗うために川を探してあそこまで行った」
白髪「……」
幼エルフ「その後戻ろうとしたんだけど、後ろから物音がして」
白髪「……?」
幼エルフ「振り向いたらすごく大きい影が見えて、それでびっくりして足が滑って……」
白髪「ふうむ」
白髪「熊、かね」
幼エルフ「……」
白髪「分かった。話し終わったならもう寝とけ。そうすれば余計なことは考えずに済む」
幼エルフ「白髪頭はなんで毎晩星を見るんだ?」
白髪「あ?」
幼エルフ「いや、なんとなく気になっただけだけど……」
白髪「なんとなく?」
幼エルフ「いつもため息つくだろう?」
白髪「……よく見てるな」
幼エルフ「言いたくないならいいんだ」
白髪「俺には恋人がいた」
幼エルフ「?」
白髪「俺は二十と少しになるまである村に住んでいたんだよ。彼女もそこに住んでいた」
幼エルフ「……」
白髪「彼女と俺が出会ったのはお前の歳よりもう少しちびっこの頃だ。俺はいじめられっ子だった」
幼エルフ「え?」
白髪「お前は俺の髪の毛をどう思う?」
幼エルフ「ええと……年寄りっぽい?」
白髪「そうだな。俺の髪はガキの頃からこうだったから、格好の標的だったんだ」
幼エルフ「そうか……」
白髪「結構きついぞ? 遊びの輪に混じれないってのはな」
幼エルフ「だろうね」
白髪「そんな俺を助けてくれたのが彼女だった」
幼エルフ「……」
白髪「『悪くないんじゃない?』」
幼エルフ「?」
白髪「俺の頭を見た彼女がそう言った」
『確かにおじいさんみたいだけどね。でも光が当たるときらきらしてきれいだよ?』
白髪「……」
白髪「彼女は俺に力をくれた。俺は相変わらず一人だったが、それでもこの髪を褒めてもらえたのはうれしかった。支えになった」
幼エルフ「……そっか」
白髪「ただ、彼女とはそれから会う機会がなくて、数年後に顔合わせた時には俺のこと忘れてたけどな」
幼エルフ「あれ?」
白髪「まあでも、それでよかった。彼女と再開できただけで俺は満足だった」
幼エルフ「でも恋人同士になったんだろう?」
白髪「ああ、そうだ」
幼エルフ「……けど」
白髪「死んだよ」
幼エルフ「……」
白髪「彼女は、もういない」
幼エルフ「……やっぱり、十年前の?」
白髪「……。星を見てると彼女を思い出すんだ」
幼エルフ「え?」
白髪「あいつも星が好きだったから」
幼エルフ「……」
白髪「……」
幼エルフ「あの」
白髪「ん?」
幼エルフ「感謝してる」
白髪「……」
幼エルフ「二度も助けてくれて、ありがとう」
白髪「礼なら天の彼女に言え」
幼エルフ「……?」
白髪「俺を救ってくれた彼女は、俺の女神だ」
幼エルフ「神に見捨てられないための……」
白髪「そうだ。俺は、あいつにだけは見放されたくない。嫌われたくないんだ」
幼エルフ「そうか」
白髪「……」
幼エルフ「……星がきれいだな」
白髪「ああ」
翌日 川沿いを上流へ
白髪「しっかりつかまっとけよ」
幼エルフ「別におぶってもらわなくても……」
白髪「この方が速い」
幼エルフ「でも」
白髪「お前に何か言う権利はない。この風邪ひきめ」
幼エルフ「……」
白髪「そうだ。黙っとけ」
幼エルフ「……分かった」
白髪「そしたらそうだな。代わりに話を聞かせてやろう」
幼エルフ「?」
白髪「俺たち盗賊団は、もともと同じ村の奴隷だった」
幼エルフ「そうなのか?」
白髪「ああ。反乱を起こして自由になったんだ」
幼エルフ「よく生き延びられたな」
白髪「いや。俺たち自身も生き延びるつもりはなかった」
幼エルフ「? じゃあなんで反乱なんか」
白髪「まあ、少しくらい仕返ししてから死んでやろうと思ったんだな」
幼エルフ「へえ?」
白髪「誇りを取り戻すための戦いだった。俺たちにはそれで十分だった」
幼エルフ「けど生き延びた」
白髪「そうだな。十分といっても死にたくないのが人情だ。俺たちは村を出て、盗賊としての生き方を選び、運よく生きながらえた」
幼エルフ「なんで白髪頭がリーダーに?」
白髪「特別な理由はない。生き残った奴の中では俺の頭が幾分マシだったってだけだよ」
幼エルフ「ふうん?」
白髪「それから五年。短くはなかったはずだ。仲間もずいぶん減った」
幼エルフ「……」
白髪「それでもまだ全滅してはいない。俺は生きている」
幼エルフ「でも……」
幼エルフ(白髪頭は、本当は恋人に会いたいんだろうな。けど。それはつまり……)
白髪「どうした?」
幼エルフ「……なんでもない」
白髪「そうか」
幼エルフ「うん」
幼エルフ「あ」
白髪「ん?」
幼エルフ「そ、そういえばさ」
白髪「なんだ?」
幼エルフ「お前はその、あたしの……」
白髪「ああ」
幼エルフ「……」
白髪「? 言えよ」
幼エルフ「その……見たんだよな? あたしの裸」
白髪「ああ、そうだったな」
幼エルフ「……何か言うことはないのかよ」
白髪「別にどうということもなかった。女らしさの欠片もないしな」
幼エルフ「……」
白髪「痛い。つねるな」
白髪「ところで」
幼エルフ「なんだよっ」
白髪「そのまま何気ない風でいろ」
幼エルフ「?」
白髪「熊がいる」
幼エルフ「え?」
白髪「左斜め後ろの茂みだ。だが振り向くな。刺激は与えたくない」
幼エルフ「そ、そんな。どうするんだよ……!」
白髪「いや、どうもしない。このままゆっくり遠ざかるぞ」
幼エルフ「で、でも!」
白髪「大丈夫だ」
幼エルフ「……?」
白髪「俺を信じろ」
幼エルフ「……」
・
・
・
村跡
幼エルフ「こ、怖かった……」
白髪「そうだな」
幼エルフ「白髪頭は怖くなかったのか?」
白髪「怖かった」
幼エルフ「そうは見えないけど……」
白髪「それどころじゃないからな」
幼エルフ「え?」
白髪「あいつらはどこに行った?」
幼エルフ「あ」
幼エルフ(白髪頭の仲間たちがいない……)
白髪「荷物は残っている」
幼エルフ「何かあった、とか」
白髪「何かって何だ? 俺たちにとって荷物は命と同じくらい大事だ」
白髪「……ッ!」
ヒュッ! ……トスッ!
幼エルフ(矢!? どこから!)
白髪「何者だ。出てこい」
「おいおいおいおい。お前が命令できる立場か、ええ? 違うだろ。よく確認しろよぉ」
幼エルフ(後ろ……!)
「おっと。振り向くなよ。振り向いたら今度は当てる」
幼エルフ「っ……」
白髪「お前は……」
「俺か? お前は知ってるんじゃねえか? なんとなく見当ぐらいつくだろうよ」
幼エルフ「……?」
白髪「お前か」
幼エルフ「知ってるのか?」
白髪「いや正確なところは知らない」
幼エルフ「それはどういう――」
白髪「お前が……お前たちがエルフの村を焼き払い、紋章を残したんだな?」
幼エルフ「え?」
「そう。そうだよ。その通りだぁな。俺だ」
赤目の男「俺が、やった」
あまり大きくもない天幕にて
白髪「……」
赤目「こえー顔だなあ、おい」
白髪「そりゃ悪いな。機嫌が良くないんだ」
赤目「ご心配はお仲間たちのことかぁ? べっつに手荒なこたしてねえよ」
白髪「よかったな。俺に殴られるための理由が一つ減ったぞ」
赤目「は。年下のくせにいきがんなよ」
白髪「くだらない上下意識があるのは騎士階級だった頃の名残か?」
赤目「おんや。なんで騎士だと?」
白髪「エルフ殺害の手際の良さ。人間の仕業である事のアピールに王家の紋章を使うこと」
赤目「判断材料は多くねえんだな」
白髪「外れか?」
赤目「いやあ当たりだ。大当たりよ」
赤目「俺は昔、王家に仕える騎士だった」
白髪「十年前の革命で?」
赤目「おう。運よく生き残って、しかし奴隷となった」
白髪「それがなぜ自由の身に?」
赤目「自由……へっ、自由か」
白髪「……」
赤目「エルフを殺したよ。一人。なるたけ無残にな」
白髪「……?」
赤目「それだけだ。最初にやったことは」
白髪「どういうことだ?」
赤目「その時のクソ主人はある別のエルフと仲が悪かった」
白髪「……」
赤目「殺したのはその娘だ」
白髪「……なるほど」
赤目「ひひ。分かったか? 俺は主人の命令で仕方なくやったのだと、涙ながらに訴えた」
白髪「信じたのか? そのエルフは。同族よりもお前の言葉を?」
赤目「別に理由は何でもよかったんだろうよ。俺の事なんかそっちのけで争い始めやがったぜ」
白髪「……」
赤目「憎しみっつーのは人間だろうがエルフだろうが変わりゃしねえんだぁよ」
白髪「そうかもな」
赤目「そして適当に混乱が広がったところで人間の奴隷を解放して回って、エルフは全て殺した」
白髪「……」
赤目「快感だった。今まで見下してた輩に踏みつけにされる顔ってのが、あんなにも間抜けとは思わなかった」
白髪「……お前がどうやって奴隷の身から解放されたのかは分かった」
赤目「おう、分かってくれるか」
白髪「クソ十分にな。もういいか。俺は仲間たちと仕事に戻らにゃならん」
赤目「まあ待てよ。話はちゃんと聞こうぜ。お前にいい話があるんだ」
白髪「……言え」
赤目「エルフの血を絞ろうぜ。たんまりと」
白髪「……?」
赤目「エルフの都市を一つ、血の海にしてやろうぜってことだぁよ。ひひ」
白髪「エルフの都市を?」
赤目「白髪の。俺ぁな、嫁さんをエルフにやられたんだ」
白髪「……」
赤目「あれはもう十年前になるんかぁね。どうだったか」
白髪「……」
赤目「あいつがどう殺されたかはもう覚えてない。思い出したくもない。吐き気がする。ああそうだ」
白髪「……」
赤目「ただ、決めたよ。あの日に。エルフたちは、一人残らず、想像もできない程の苦しみを与えて、殺してやると」
白髪「そのために、エルフの都市を?」
赤目「そう! その通りだ」
赤目「計画としちゃ難しいところは全然ない。俺がやったことと同じだ。エルフの仲間割れを誘う」
白髪「できるのか?」
赤目「できる。都市っつーのは豊かなところで、その豊かさゆえに他の者に狙われる」
白髪「……今、都市のエルフたちは人間の奴隷の反乱よりも、他のエルフによる簒奪を恐れている」
赤目「はっは! 分かってんじゃねえかおい。俺たちはちょっと暴れて、他のエルフが裏にいると騙ってやりゃいい」
白髪「あとは混乱に乗じてエルフを根絶やしにする」
赤目「そう。そうだ。興奮しねえか。ビンビンくるだろ?」
白髪「……小さな反乱には終わらない」
赤目「俺にはできる。俺たちにはできる。決してたわごとじゃない。だろ!? なあ!?」
――その男の酷く充血した眼を見ていて思った
――こいつは俺に似ていると
――願っていなかったわけではない。復讐は
――胸の底に、がさがさと干からびて、それでも残っていた
赤目「俺に力を貸せよ。白髪の」
白髪「……」
赤目「悪いようにはしねえよ。お互いのためになる」
白髪「……」
赤目「かーっ、じれってえなぁおい。いいか、お前に選択肢はねえんだよ」
白髪「……そうだな」
赤目「そう。そうだとも。仲間は全て俺に押さえられ、ご執心のエルフのガキも俺の手の中だ」
白髪「……」
赤目「協力しろよ。白髪頭」
白髪「……」
――がさがさと干からびてなお……
白髪「……分かった」
赤目「よしきた!」
白髪「ただ、一つ言っておく」
赤目「なんだ?」
白髪「エルフのチビは関係ない」
赤目「へっ。そうかよ」
白髪「ああ」
赤目「ま、そこは別にいい。よろしくなぁ、白髪」
白髪「よろしく。クソ野郎」
『早く来い、若白髪』
――死んだあいつの夢を見た気がした
――心細いほど遠く、ぼんやりと
――都市に向かう道中、そのことはどうしてか心を重くした
夜中 幼エルフを縛ってある天幕
幼エルフ「……」
ガサ
幼エルフ「……!」
白髪「気分はどうだ」
幼エルフ「白髪頭……」
白髪「まだ生きてたんだな」
幼エルフ「死ぬもんか」
白髪「くくっ。そうかそうか」
幼エルフ「何の用だ」
白髪「いや。最後に顔を見ておこうかと思ってな」
幼エルフ「……そうかよ」
白髪「ああ。そうだ」
幼エルフ「見張りはどうしたんだよ」
白髪「寝てた。見るか」
幼エルフ「遠慮しとくよ。で? あたしになんの用だ」
白髪「……」
幼エルフ「……最後に、ってなんだよ」
白髪「最後は最後だ。他に意味もないだろ」
幼エルフ「そうだけど……」
白髪「どうした」
幼エルフ「……。なんでもない」
白髪「そうか」
白髪「俺たちは数日後、都市を強襲する」
幼エルフ「え?」
白髪「都市を襲うんだ」
幼エルフ「殺すのか……?」
白髪「ああ。皆殺しだ」
幼エルフ「やめろよ……!」
白髪「今更止まらない」
幼エルフ「だって……危ないんだろう?」
白髪「?」
幼エルフ「やめとけよ……」
白髪「……。人間とエルフは、昔から対立していた」
幼エルフ「……」
白髪「殺して、殺されて。今度は俺たちが殺す側になるってだけだ」
幼エルフ「でも。逆に殺されることだって」
白髪「お前……もしかして心配してくれてるのか?」
幼エルフ「……悪いかよ」
白髪「……くくっ。そうか。そうかよ」ワシャワシャ
幼エルフ「気安く撫でるな」
白髪「そんなお前に餞別だ。持っとけ」
幼エルフ「……なんだ?」
白髪「ナイフだ。お前の手でも隠し持てる」
幼エルフ「え?」
白髪「察しが悪いな。逃げろって言ってんだよ」
幼エルフ「で、でも」
白髪「俺たちが都市を襲っている間、どうしたってお前を見張っておく余裕はなくなる」
幼エルフ「でもさ!」
白髪「隙を見て逃げて、あとは一人でなんとかしろ」
幼エルフ「お前死ぬ気だろ!」
白髪「死なない。運がよければな」
幼エルフ「お前は恋人に会いたいんだろ!」
白髪「……」
白髪「あまり大きい声を出すな。見張りが気付く」
幼エルフ「死んだ恋人に会うってのは、つまり……」
白髪「じゃあな」
幼エルフ「待って! お願いだから……」
白髪「たまに思い出してくれると助かる。ぼんやりとでもいい」
幼エルフ「……」
――振り返らずに天幕を出た
――追いかけてくる声はなかったが、何かしら言いたげな気配だけが背中に触れていた
――見上げると、今日も天をうずめる星の海
――都市到達まで、あと二日
二日後 都市を目視できる森の端
白髪「……」
赤目「おう、白髪の。心の準備はできたかあ?」
白髪「さてな」
赤目「ブルって逃げるにはちょいと近くに来すぎだな、ええ?」
白髪「心配しなくとも俺は今更降りはしない」
赤目「心配なんてするもんかね。共にエルフの血をすする仲間だ」
白髪「……」
赤目「信じてるぜぇ」
白髪「そうかい」
白髪「で……どうするんだ」
赤目「ん?」
白髪「都市は城壁に囲まれていて、門にはもちろん番がいる。それを突破するのは――」
赤目「並みのことじゃねえわな」
白髪「だからどうするか訊いてるんだ」
赤目「焦るな。じき分かる」
白髪「……?」
赤目「お前はナイフでも磨いときなぁ。もし神を信じているなら祈るのもいい」
白髪「……」
赤目「楽しみだなぁ……ああ、楽しみだ」スタスタ
「お頭」
白髪「……ああ」
「これから、っすか?」
白髪「いや、まだ待機だ。よく分からんが待つしかないらしい」
「そうっすか……」
白髪「お前たちを巻き込んですまないな」
「いや、そのことは気にしないでほしいっす。危ないのはいやっすけど、どうせ俺たちに選択肢はなかったでしょうし」
白髪「まあな」
「こいつら、ヤバいっす。お頭、死なないでくださいね。俺も適当に生き延びるっす」
白髪「分かった」
「約束っすからね? 守ってくださいよ?」
白髪「ああ」
「儂からもお願いしときましょう」
白髪「爺さんか」
「死なないでください」
白髪「分かってる」
「あの子も待っているでしょう」
白髪「……なんのことだ」
「分からないこともありますまい」
白髪「さて」
「死ぬのは老いぼれだけで十分。ゆめゆめ過去に囚われなさるな」
白髪「……」
「過去は人をその人たらしめる大切なひとかたまり。ですが、縛られてはなりません」
白髪「……覚えておく」
「これで最後の気がします。お頭。今までありがとうございました」
白髪「こちらこそ」
数刻後 都市の門
エルフ番兵「よし、通れ」
「ありがとうございます」
エルフ番兵「次」
「失礼します」
エルフ番兵「……ん? なんだあの馬車は。いつの間にあそこに?」
ザワ……
エルフ番兵「あの馬車の持ち主は誰だ。出てこないか!」
ザワザワ……
エルフ番兵「名乗り出る者はいないのか? 一体なんだと――」ツカツカ
カッ――!
エルフ番兵「なッ!?」
ドゴオォッッ――ガラガラ……
白髪(城門が……崩れた)
赤目「ははははは!」
白髪「……」
赤目「これは合図だ」
白髪「始まりか」
赤目「そうだ! 野郎ども! 存分に暴れろ! 虚言を吹聴して回れ!」
白髪「……」
赤目「行くぞ! 殺せ! 殺しつくせぇッ!」
ドドドドドドドドドッ――!
――……
――…………
――…………それから先の事はよく覚えていない
――門からなだれ込んで、老若男女、見境なくさんざん殺したのだけは思い出せる
――肉に食いつく刃の手応え。肌を粟立たせるぶちぶちとしたその感触
――あとは恐怖に見開かれる目と目と目。絶叫。血だまり
――哄笑が聞こえている
――真っ赤に充血した眼を持つ男の歓喜の声
――見ると楽しそうに子供の死体その喉を裂いていた
――弱弱しく噴きでる血。真っ赤な手
――男の目には揺れない炎が灯っているのが分かった
――そこかしこが赤黒い
――空も赤黒い
『――若白髪』
天幕
幼エルフ「このっ!」
幼エルフ「切れろ。さっさと切れろ!」
幼エルフ「!」
――ブチッ! パラリ……
幼エルフ(よし、これで縄は……)
幼エルフ「白髪頭!」ダッ!
・
・
・
白髪「――」
白髪(あれ……俺は)
白髪(……なんで、倒れているんだったか)
白髪(ああ。そうか。背後から一撃をもらって)
白髪(痛い……のか? わからない)
白髪(抵抗が思ったより強い……仲間も大勢死んだ……)
白髪「ぅ……」
白髪(だめだ……意識が薄れる)
白髪(終わり、か)
白髪(ああ……殺しすぎたな)
白髪(あいつにあわせる、顔がない)
白髪(だが、これでもう……)
――悔恨に苦しむこともない
・
・
・
『若白髪』
「え?」
『久しぶり。若白髪』
「……」
『会いたかった……』
「俺は……もうお前には会えないもんだと……会ってはいけないもんだと」
『気に病まないで』
「俺は、あのときお前を守れなかった。そして殺しすぎた!」
『いいんだ。わたしも会いたかったから』
「だが……」
『どうか自分を責めないで……』
「……」
『……』
「俺も会いたかった」
『ああ』
「お前との再会を、ずっと願っていた」
『わたしもだ』
「すぐにでもお前のところに行きたかった。そうしなかったのは、皆を率いる立場だったからだ」
『うん』
「でも、皆死んでしまった……」
『……』
「もう、お前のそばに行ってもいいのかな。お前とずっと一緒にいられるのかな」
『……』
『そうだな』
「……」
『若白髪が望めば、そうなるよ』
「……?」
『お前がそのつもりなら、わたしたちはこれからずっと一緒』
「どういうことだ?」
『若白髪は……もう分かってるだろう?』
「え?」
二度も助けてくれて、ありがとう
「あ」
『あの子が待ってる』
「……だが」
『決めるのはお前だ。若白髪が決めるんだ』
「…………」
『……』
「……俺、は」
『ああ』
「お前と会えて、本当に、よかった。と思ってる」
『……クス』
「ごめんな」
『ふふ……気にしないで』
「……」
『そんな若白髪が好きだよ。愛してる』
「俺もだ。愛してる」
『じゃあ、後ろを向くんだ』
「……」
『……行ってらっしゃい』
――ぽん、と。背中を押された
――俺の意識は優しい光に包まれて、眠るようにほどけていった
・
・
・
――!
――白髪頭!
幼エルフ「おい! 白髪頭!」
白髪「――」
幼エルフ「目を覚ませ! 死ぬな!」
白髪「――」
幼エルフ「頼むよ……! お願いだから……!」
白髪「――」
幼エルフ「くそ……くそぉ……!」
「無理だろ。死んでるなそりゃ」
幼エルフ「っ!」
赤目「ひひ……」
幼エルフ「ひっ……」
赤目「立てよぉ」ガシ グイ!
幼エルフ「つっ!」
赤目「ふうむ」
幼エルフ「くっ……」
赤目「潮時だろうなあこりゃ。大暴れして都市はあらかた火の海。嘘も広まった頃合いだろうし、そろそろ逃げるか」スチャ
幼エルフ「……!」
赤目「首から血をゲロしたくなきゃこのまま大人しく来なぁ。一応の保険だ。人質になってもらうぞ」ギリギリ
幼エルフ「うう……」
赤目「……見てるかお前。やったぞ。俺はやったぞ!?」
幼エルフ「……」
赤目「大切なお前の命を奪ったエルフどもを、大勢なぶり殺しにしてやった!」
幼エルフ「……?」
赤目「そうか! お前もうれしいか!」
幼エルフ(こいつ……)
赤目「はは。はははは! 俺は満足だ!」
「そうか。なら思い残すことはないな」
赤目「!?」
ズブ……ッ!
赤目「かはッ!」
白髪「ゼィ……ゼィ……」
幼エルフ「白髪頭……!」
赤目「お、前……」
白髪「すまんね」
――ドサ
幼エルフ「白髪頭!」
白髪「つっ! 抱きつくな……!」
幼エルフ「ご、ごめん」
白髪「無事か?」
幼エルフ「うん。なんとかここまで来れた」
白髪「そうか」
幼エルフ「……これからどうしよう」
白髪「俺は都市を出る。お前はどうする?」
幼エルフ「え?」
白髪「お前はエルフだ。ここに残ってもいいし、俺についてきてもいい」
幼エルフ「……」
白髪「どうする?」
幼エルフ「白髪頭は……どっちがいいんだ?」
白髪「お前が自分で決めるんだ。俺にどうこう言う権利はない」
幼エルフ「ずるいよ」
白髪「くくっ。そうかもな」
白髪「で、どうするんだ?」
幼エルフ「……あたしは――」
・
・
・
エピローグ:海に続く道を踏みしめながら
白髪「あいつが殺されたのは、仲間の死体を埋めている時のことだ」
幼エルフ「……」
白髪「俺たちが住んでいた村が襲撃された。その時、俺とあいつは村を離れていた」
幼エルフ「何をしていたんだ?」
白髪「聞きたいか?」
幼エルフ「……」ゴクリ
白髪「くくっ。変なことを考えるな。一緒に星を見ていたんだよ」
幼エルフ「そ、そうか」
白髪「俺たちの関係は伏せていたからな。まともに会えるのが夜だけだったんだ」
幼エルフ「へえ……」
白髪「エルフ達が去った後で、俺たちは仲間の埋葬を始めた。あいつは泣いてたよ」
幼エルフ「うん……」
白髪「亡骸は多くて、昼を過ぎても終わらなかった。俺は近くにある川に水を汲みに行った」
幼エルフ「……」
白髪「一人だった。二人で行けばよかった」
幼エルフ「どうして?」
白髪「エルフの数人が村の跡に戻ってきたんだ」
幼エルフ「え……」
白髪「俺の見ている先であいつは殺された。俺は何もできなかった」
幼エルフ「……そっか」
白髪「何か、できたはずなんだ。何もできなかった」
幼エルフ「仕方ないよ」
白髪「そう簡単には割り切れないさ」
幼エルフ「……そうだな」
幼エルフ「……」
白髪「……」
幼エルフ「あのさ」
白髪「ん?」
幼エルフ「あの都市があんなことになって、ばらまかれた嘘もそのままで」
白髪「ああ」
幼エルフ「多分、また混乱が起きるよな」
白髪「そうだな。小さく終わるか、それとも……」
幼エルフ「よかったのかな……」
白髪「一度に二つは拾えない」
幼エルフ「え?」
白髪「昔の知り合いが言っていた。まあ、そういうことだ」
幼エルフ「……うん。そっか。そうかもな……」
幼エルフ「これからどうしようね」
白髪「言わなかったか? 昔の知り合いに会いに行く」
幼エルフ「いや。そういうことじゃなくてさ。どう生きようかな、みたいな」
白髪「俺を信じろ」
幼エルフ「ん?」
白髪「俺がなんとかしてやるさ」
幼エルフ「……ふふ。分かった。信じるよ」
――遠くに潮騒が聞こえる
――小さな手を取り歩く
――失ったものと得たものを確かめながら
「あたし、髪伸ばそうかな」
「なんでだ?」
「そうした方が女っぽいかな、って」
「無駄な努力だ」
「……」
「痛い。爪を立てるな」
「あのさ」
「ん?」
「ずっと一緒にいような」
「……」
「くくっ」
(おわり)
192 : VIPに... - 2012/04/30 19:47:02.96 ovcnev5Co 129/133お付き合いいただきどうもでした
今回あっさり気味でしたが、楽しんでもらえていれば幸いです
それではまたそのうち
195 : VIPに... - 2012/04/30 20:05:59.04 ySxWLly/o 130/133前作とかの名前教えてくれ
196 : VIPに... - 2012/04/30 20:55:57.85 JtLVkQ2SO 131/133乙
お前のは多分いつも見てる気がする
>>195
前作…エルフ「早く来なさい、奴隷」 男「へっ」
https://ayamevip.com/archives/54510049.html
前作の前作…男「エルフを買っt エルフ「新しい家ー!」
https://ayamevip.com/archives/3275096.html
その他は前作で色々挙げてた希ガス
201 : VIPに... - 2012/05/01 06:02:00.55 aWwS/hhzo 132/133>>196
紹介ありがとうございました
ちなみに、わかりにくかったかもしれませんが白髪たちは前作の二人と合流します
前作の二人には子供ができてたりするような気もします
繰り返しになりますが、お読みいただきどうもでした
202 : VIPに... - 2012/05/01 06:15:41.11 aWwS/hhzo 133/133あと、迷いましたが、依頼も出してきたことなので>>196にプラスしてこっそり過去作紹介しようと思います
・山姥「生きなさい」
https://ayamevip.com/archives/56630360.html
・侍「なぜ俺の家に童女が……」 幼女「ムニャ……」
https://ayamevip.com/archives/55135745.html
・配達少女「お届け物でーす」
https://ayamevip.com/archives/1277367.html
もしよかったらどうぞ