世界は変わり果ててしまった
花が咲き乱れ、人々は楽しく歌い、踊り
平和な日々がこれからも続いていく、それが当たり前だとみんな思っていた
あの日がくるまでは
元スレ
カレーパンマン「おーい、アンパンマン!」
http://mi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1648341446/
アンパンマンもばいきんまんも
もういない
あいつが消した
あの化け物が
あの日、
ばいきんまんが特製のばいきん草のエキスをロールパンナに注ぎ込み
ロールパンナはブラックロールパンナとなってしまった
しかし、いつもとは訳が違ったらしい
そのばいきん草は強大な力を持ち、優しい彼女の心は本当に跡形もなく無くなってしまった
今この場所は灰色の大地でばいきん草が大量に生えうごめいている
人が暮らせるような所ではなくなった
俺は街の方へ行き、まだ生き残ってる人がいるか探しに行った
ここは確か街だったはず
瓦礫だらけの中
ロールパンナがそこにいた
いや、今はブラックロールパンナというべきか
赤い冷たい眼をギラギラ光らせこちらを睨み付けてる
パン工場のみんなを消した悪魔
許すことはできない
…みんな、みんな、いなくなった
ジャムおじさん、アンパンマンですら
彼女は妹にも弟にも手をかけるほど豹変してしまった
無慈悲な凍りついた心で
みんなを消した
「よぉ、ロールパンナちゃん、そんな怖い顔してどうした?」
白い息を吐いて赤い眼を光らせる彼女は本当に恐ろしい
「コ…ロ……ス」
傷つけては罪悪感に苦しみ一人で泣いていた君はもういない
今ここにいるのは、憎しみと恨みで出来た悪魔そのものだ
アンパンマンは優しすぎたんだ
どんなになっても優しい心は残ってる
そう信じ願っていた
しかし、その思いも虚しく
アンパンマンは…
カレーパンマン「街のみんなは地下に避難させた。だからさ暴れ放題だぜ、よかったな」
俺はおどけたように言ってやった
どうせ何も届いてないだろうがな
「タ…タ…カ…エ…」
青いハートがギラリと光る
「…ああ、付き合ってやるよ…」
俺はなにもかもがどうでもいいんだ
ゴオオオオッ
「ッ…!」
少しは脅かしてやった
「どうした、何を驚いてんだ?」
俺は特製のばいきん草の入った超激辛カレーを顔に入れていた
カレーの代わりに炎を吐くことができるが
しかし毒だ
徐々に俺の身体を蝕んで命を削っていく
「お前は優しさなんてなくなってしまったんだろ?…俺もだよ」
俺は絶対に許さないと睨み付ける
「…」
冷たい眼でにらみ返される
「カレーパンチ!!」
俺は情けなんてかけやしない
やはり、彼女の方が一枚上手だ。
とてもすばやい動きでかわしながらこちらに迫ってくる
「ロォォォルァァァ!!!!」
シュルルルル
ロールリボンで攻撃してくる
岩をも破壊する威力だ
ならば
ゴオオオオッ
「!!」
二本のロールリボンを炎で燃やし使えなくしてやった
ここからは長期戦になりそうだ…
 ̄ ̄ ̄ ̄
ブラックロールパンナは強い
俺の攻撃をかわし、武器を持たずとも攻撃してくる
俺の方はカレーのお陰で力がついたが、代わりに身体を蝕んでゆき限界だった
ならば仕方ない
ブラックロールパンナもろとも炎で焼き付くした
手加減なんかしない
「ハァ…ハァ…ッ…俺はな…アンパンマンを…パン工場のみんなを守るために生まれたんだ…」
「…でも、みんなはもういない…守るものも、自分の生きる意味も…何もない…」
炎の向こうからブラックロールパンナが現れた
服は焦げ、覆面は焼け落ち、
素顔がみえる
以前、彼女の素顔を見たことがあったがとても美しく愛らしかった
しかし今は憎しみと焦げで顔が歪み
化け物のようでありながら妖しい美しさがあった
「…俺にはもうお前への復讐心だけしか残ってない」
ああ、きっと今の俺もお前も正義なんて微塵もない獣なんだろうな
「ハァ…俺も…体が持たねえ…だが」
これでけりをつけるしかない
「ウオオオオ!!!」
ブラックロールパンナが獣のような雄叫びをあげる
「これで……最後だあああ!!!」
俺の拳がロールパンナの胸を貫いた
あの時
アンパンマンは最期に言っていた
ロールパンナちゃんはまだ優しい心が残ってるはず、きっと戻ってくれる。だから、ロールパンナちゃんの優しい心を呼び覚まして欲しい と
アンパンマン、俺はどうやら約束を守れなかったみたいだ
「…ハァ…ッハァッ…ゲホッゲホッ」
力を使いすぎたようだ…
「…」
ロールパンナは目を閉じ横たわっていた
「…ロールパンナちゃん………ごめんよ…」
俺は…
許さないと思っていながらやはり、ロールパンナのことは同情だろうか、とてもやるせない気持ちになった
俺はロールパンナを抱き寄せた
俺としたことが…涙が溢れて止まらない
「…気に…するな…」
ロールパンナの手が俺の頬に触れた
「ロールパンナちゃん…!」
ロールパンナは優しい心を取り戻したようだった
だが…
「…私は…失敗作だ…カレー…パンマン…メロンパ…ンナ…アンパンマン…みんな…すまない…」
ロールパンナの瞳から光が消えてゆく
「…私なんか…生まれてこなければ…よか…った…」
そんな悲しいことを言わないでくれ
「ロールパンナ…」
ロールパンナは息をひきとった
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
カレーパンマン「なんのためにうまれて なにをして生きるのか 答えられないなんて そんなのはいやだ…」
俺は岩山に登って、ぼんやりとあいつの歌を口ずさんでいた
もうすぐ俺の命も尽きてしまうが
もういい
何もかもがなくなってしまったから
もういいんだ
涙も心もすでに枯れ果てた
あるのは思い出だけ
みんなが楽しく話をし、しょくぱんまんと喧嘩して仲直りして、みんなで美味しいものを食べたり、協力したり…
カレーパンマン「風が気持ちいい…」
俺は目を閉じた
目を覚ますと
俺は野原にいた
そうだ!今日はみんなとピクニックに行くんだっけ
早くいかないとしょくぱんまんにグチグチ言われるな!
その前にカレーを作ってもっていかなきゃな!
明るい空を見上げると
見慣れたシルエットが見える
あれは…!
俺はそいつに呼びかけた
「おーい、アンパンマン!」
終
読んでくださりありがとうございました