勇者「トドメだッ!」ダッ
魔王「……≪魔呪印≫!」
勇者「うわっ!?」
勇者「俺の胸に……模様が浮かび上がった……!?」
魔王「ククク……かかったな。それが浮かび上がったが最後、貴様が次の魔王となるのだ!」
勇者「じゃあちゃんと引き継ぎしてくれ」
魔王「え? 引き継ぎ?」
勇者「当たり前だろ。いきなり次の魔王なんて言われても出来るわけないんだからさ」
魔王「わ、分かった……」
元スレ
魔王「貴様が次の魔王となるのだ!」勇者「じゃあちゃんと引き継ぎしてくれ」
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バタン
魔王「ここが自宅だ」
勇者「あれ? 魔王城に住んでるんじゃないの?」
魔王「あそこはオフィスみたいなもんだ」
勇者「この部屋狭いし、隣の音とかも結構響いてくるな」
魔王「文句ばかりいうな。引き継ぎが終わったら、貴様はここに住むんだぞ」
勇者「だったらせめてちょっと掃除するぞ……。俺は綺麗好きなんだ」サッサッ
魔王「お、悪いな」
翌朝――
魔王「城には8時に出勤だ」
勇者「ちょっと早くね? まだ誰も来てないじゃん」
魔王「上司というのはこういうものだ。やってみせねば部下は動かん」
勇者「管理職も大変だぁ……」
ゾロゾロ…
勇者「お、部下が来た」
魔王「朝礼を行う」
魔王「魔王軍三ヶ条唱和!」
魔族達「唱和!」
魔王「勇者を倒せ!」
魔族達「勇者を倒せ!」
魔王「人間を殺せ!」
魔族達「人間を殺せ!」
魔王「世界を我が手に!」
魔族達「世界を我が手に!」
勇者「わぁ~お、唱和とかブラックぅ~!」
魔王「うるさい! 貴様もいずれやるんだからな!」
勇者「俺が魔王になったらこれは廃止しようかな。意味ないじゃん」
魔王「なんだと!?」
勇者「なにやってんだ?」
魔王「手紙チェックだ」
勇者「手紙チェック?」
魔王「魔王ともなると、あちこちから手紙が来るものでな」
勇者「へぇ、部下からの報告とかか」
魔王「お、バーのママからだ。やべっ、ツケ払ってなかったな……」
勇者「私用じゃねえか」
キーンコーン…
勇者「このチャイムは?」
魔王「昼休みだ」
勇者「ってことは、昼飯か!」
魔王「うむ、貴様にもワシがいつも食べてるメニューを食べさせてやろう。ついてくるがいい」
勇者「おほっ!」
勇者(なんたって魔族の王だ。いいもん食ってるんだろうな~)ウキウキ
ガヤガヤ…
勇者「ここは……?」
魔王「魔王城の食堂だ」
勇者「食堂ォ? 魔王なのに部下たちと一緒のスペースでメシ食うのかよ」
魔王「分かっておらんな。魔王だからこそ一緒に食うのだ」
勇者「そういうもんなのか」
魔王「今日は……この日替わり定食にするか」
勇者「マジで食堂じゃん……」
魔王「さ、食うぞ」
勇者「……」
魔王「どうした? 浮かぬ顔をして」
勇者「そりゃ浮かばないよ。昼食が定食なんて冴えないな~って」
魔王「まだいっておるのか。この食堂の飯を舐めるでないぞ」
勇者「はいはい」
勇者「いただきます……」パクッ
勇者「うまぁい!」
魔王「……」ニヤッ
勇者「うまい! なにこれメチャクチャうまぁい!」
魔王「安くてうまい。それが魔王城食堂の特徴なのだ。パートの魔族が皆ベテランだしな」
勇者「こんなんだったら毎食食べてもいいわ!」ガツガツ
魔王「喜んでくれてワシも嬉しい」
魔王「さて、午後の会議を始める」
「はいっ!」
「はいっ!」
「はいっ!」
勇者「あのー、俺も参加していいのか?」
魔王「魔王を引き継ぐなら参加せねばまずいだろう」
勇者「そういやそうか」
魔王「今日の議題は人間どもの守りの要、シューゴ砦の攻略についてだ」
「あそこは難攻不落で……」
「かなり手こずっております……」
勇者「はい」サッ
魔王「どうした、勇者」
勇者「あそこを落とすのなら簡単ですよ」
勇者「砦は東西南北に部隊が分かれてるんですが、西側の指揮官は金で成り上がった男で」
勇者「脅すなり金品を送るなりすれば、すぐにこちらにつくでしょう」
魔王「そんな情報を漏らしてしまってよいのか?」
勇者「魔王を引き継ぐなら手柄の一つも立てないとまずいだろ」
魔王「それもそうか」
魔王「魔王を引き継ぐのなら、笑い方も教えねばならんな」
勇者「笑い方?」
魔王「魔王らしい笑い方を身につけねば威厳が出ないからな」
勇者「なるほど」
魔王「ではゆくぞ。ワァッハッハッハッハ……」
勇者「ワッハッハッハッハ……」
魔王「違う! もっと粘っこく、腹から声を出すのだ! ワァッハッハッハ……」
勇者「ワァッハッハッハ……」
魔王「魔王の業務は色々あるが……結局のところずっと座ってることが多いな」
勇者「勇者やってると足が痛くなったけど、魔王はケツが痛くなるな。痔にならないのか?」
魔王「とっくになってる」
勇者「マジかよ」
魔王「痔は魔王の職業病だからな。この薬をお尻に塗るとよく効くから、常に懐に入れておる」
勇者「玉座にクッションでも敷いたらどう? ドーナツ状になってるやつとか」
魔王「玉座にクッション敷く魔王など、威厳もへったくれもなかろう!」
勇者「魔王って大変だな……」
魔王「さて、技も伝授せねばならんな」
勇者「技?」
魔王「魔王が勇者の技を使っていては、恰好がつくまい。ワシの固有技を教えてやる」
勇者「よろしく頼む」
魔王「デモンズフレイム!」ボワァッ
勇者「デモンズフレイム!」ボシュッ
勇者「くそっ、上手くいかない……」
魔王「いきなり出来るわけがない。じっくりと会得していくのだ」
連日、引き継ぎ業務は続き――
魔王「魔王軍三ヶ条唱和! 勇者を倒せ!」
勇者「勇者を倒せ」
魔王「お、とうとう唱和してくれるようになったか」
勇者「ま、伝統は引き継いだ方がいいからな」
勇者「いただきまーす!」ガツガツ
魔王「すっかりこの食堂のファンだな」
勇者「ああ、ここの存在知れただけでも魔王の後継者になった甲斐があったってもんだ!」
魔王「さあ、今日も会議だ」
勇者「的確なアドバイスができるよう頑張るよ」
勇者「デモンズフレイム!」ボワァッ
魔王「おおっ、いいぞ! 闇の魔力を操れるようになってきたな!」
勇者「へへ……」
勇者「……血が出た」
魔王「ほら、薬塗っとけ」
一ヶ月後――
勇者「では本日の業務は終了! 解散ッ!」
「お疲れ様でしたー!」
勇者「……どうだった?」
魔王「見事だ! 今日は一日貴様に業務をやらせたが、完璧にこなしてみせたな」
勇者「ありがとう」
魔王「これで研修は終了だ。貴様なら立派な魔王になれる!」
勇者「そういってもらえると自信つくよ」
魔王「それではこれを授ける」
勇者「これは……!?」
魔王「魔王に代々伝わる黒マントだ。高い防御力を誇り、魔力を底上げしてくれる」バサッ
勇者「いいのか? こんな大事なものを……」
魔王「今の貴様にならかまわぬ。それに、ワシの命もどうやらここまでのようだからな……」
勇者「!?」
魔王「うぐっ……!」ドサッ
勇者「ま、魔王ッ!?」
勇者「どうした、しっかりしろ!」
魔王「ワシは貴様に敗れた身……しかし、引き継ぎをせねばという使命感が……命を永らえさせた……」
魔王「この一ヶ月、楽しかった……」
魔王「どうか、ワシの遺志を継ぎ……立派な……魔王に……なってくれ……」ガクッ
勇者「魔王ッ!」
勇者「魔王ぉぉぉぉぉっ……!」
勇者「分かったよ……。俺、立派な魔王になるよ……。必ず……!」
…………
……
新魔王(新しく魔王になってから数ヶ月……)
新魔王「魔王軍三ヶ条唱和!」
魔族達「唱和!」
新魔王「勇者を倒せ!」
魔族達「勇者を倒せ!」
新魔王「人間を殺せ!」
魔族達「人間を殺せ!」
新魔王「世界を我が手に!」
魔族達「世界を我が手に!」
新魔王「うむ、よろしい! ワァッハッハッハ……!」
新魔王(俺はすっかり魔王として板についてきた。業務も順調にこなしてる)
新魔王(しかし、なーんか忘れてるような……)
新勇者「えーと、金目の物は……」ガサゴソ
住民「コラッ、なにやってんだ!」
新勇者「あちこち調べて軍資金やアイテムを手に入れようと……」
住民「無許可でそんなことしたらダメだろう! ったく、前の勇者様はこんなことなかったんだけどねえ……」
新勇者「す、すみません!」
新勇者「……はぁ。くそっ、先代勇者め! ろくに引き継ぎもしないまま魔王堕ちしやがって!」
新勇者「絶対ブッ倒してやるからな!」
END

