幼女「ふえぇぇん……」
オーガ「どうした。どこかいたいか」
幼女「ふえぇぇん……」
オーガ「はらがへったのか」
幼女「ふえぇぇん……」
オーガ「なかま、はぐれたか」
幼女「パパぁ……ママぁ……」
オーガ「かぞく、はぐれたか」
幼女「グスン……グスン……」
オーガ「よし、おれ、おまえ、かぞく、ところ、つれてく」
幼女「おじちゃん、だあれ?」
オーガ「おれ、オーガ」
元スレ
幼女「ふええぇぇぇん……」 オーガ「……」
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オーガ「まず、どうする」
オーガ「このちかく、オーク、住んでる。オーク、どうするか、きく」
オーガ「おまえ、おれ、ついてくる」
幼女「……うん」
……
オーガ「オーク!」
オーク「なんだ、騒がしい」
オーガ「ここだ」
オーク「オーガか。ちょっと待ってくれ。俺はお前と違って夜目が効かないんだよ……」
オーガ「オーク。おれ、こいつ、みつけた」
オーク「だから暗くて見えないと言ってるだろう。どれどれ……」
幼女「あの……」
オーク「おいオーガ、どうしたんだこの女の子は。まさかさらって来たんじゃないだろうな?」
オーガ「こいつ、かぞく、はぐれた」
オーク「……そういうことか。それにしても驚いたな。人間の子供がこんなところまで来るとは」
オーガ「?」
オーク「この辺りは、人間はまず足を踏み入れないようなところだ。そんなところに来るのは珍しいと言っているんだ」
オーガ「オーク、ものしり、オークのくせに」
オーク「減らず口は意外に気の利いたことを言えるんだなお前は。とにかくお嬢ちゃん、君は何処から来たんだい?」
幼女「おひさまがのぼってくる方にある、おおきな木のある村からきたの」
オーク「東の……ああ、確かこの谷を抜けて、川を越えた先に村があったな。木はどうか知らないが」
オーク「とにかく、東の……向こうの方に行けばいい。谷を抜けてしばらくは、月の出ている方に真っ直ぐ行けばいい。そうしたら川があるから、そこを渡れば村はすぐだ」
オーガ「オーク、ありがとう」
オーク「お前だけで大丈夫か?俺も一緒に行こうか?」
オーガ「オーク、狩り、する。いそがしい。たすけ、いらない」
オーク「そうか。じゃあ気をつけて行くんだぞ。お嬢ちゃん、こいつが方向を間違えそうになったら注意してやってくれ」
幼女「うん」
オーガ「オジョウチャン、行く。手、つかまれ」
幼女「うん」
オーガ「オジョウチャン、みち、くらい。おれ、オジョウチャン、おぶる」
幼女「……いいの?」
オーガ「おれ、おおきい。オジョウチャンちいさい。だから、へいき」
幼女「……うん!」ピョコン
オーガ「もうすぐ、谷、抜ける」
幼女「うん」
オーガ「オジョウチャン、かぞく、いいひとか?」
幼女「パパとママのこと?とっても優しいよ」
オーガ「やさしい、とても、いいこと」
幼女「おじちゃんもやさしいね!」
オーガ「おれ、やさしい?」
幼女「そうだよ」
オーガ「うれしい。オジョウチャンも、やさしい。おれのこと、やさしい、いった」
……
オーガ「谷、ぬけた。ここから、どっち、いく、だったか」
幼女「おつきさまのある方だって、オークのおじちゃんが言ってたよ」
オーガ「つきのひかりで、まわり、あかるくなった」
幼女「さっきまで暗くてみえなかったけど、おじちゃんっておっきいんだね」
オーガ「おれ、おおきい」
オーガ「川、ついた」
幼女「すごいいきおいで流れてるね……」
オーガ「おれでも、ながされそう」
幼女「わたるのは、無理そうだね……」
オーガ「なにか、方法、ある」
ゴブリン「あれ、オーガじゃん。こんなとこでなにしてんの?」
オーガ「オジョウチャン、家まで、とどける」
ゴブリン「この子を?東の村まで?ははぁ、それでこの川を渡ろうとしてるってわけか。じゃあボクに任せて!」
幼女「どうするの?」
ゴブリン「ボクはシャーマンだから、キミたちが水の上を歩けるようにしてあげる」
ゴブリン「はい、これで二人とも水の上を歩けるようになったよ」
オーガ「はい、いわれても……」
ゴブリン「ボクのことが信用できないの?ほら、このとおり大丈夫だって」ヒョイヒョイ
オーガ「ほんとうだ」
幼女「すごい!」
オーガ「ありがとう」
幼女「ありがとー」
ゴブリン「お安い御用さ、気をつけてね」
……
幼女「みんなやさしいね」
オーガ「オークも、ゴブリンも、みんな、やさしい」
幼女「そうだね!」
オーガ「もうすぐ、オジョウチャンの、いえ、つく」
幼女「おじちゃん、ありがとう。たすけてくれて」
オーガ「こまってるやつ、いたら、たすける、あたりまえ」
幼女「やっぱりおじちゃんはやさしいんだね!」
オーガ「村、ついた、けど、門、しまってる」
幼女「呼べばいいんだよ。パパー!ママー!」
守衛「ん?幼女ちゃん!?」
幼女「そうだよー!」
守衛「おーいみんなー!幼女ちゃんが帰って来たぞー!」
ワイワイガヤガヤ
守衛「ん?幼女ちゃんを誰かが連れて来てくれたのか……?……!!」
守衛「オーガだ!オーガが出たぞおぉぉ!!」
ワーキャー!
オーガ「どうした、みんな」
守衛「そこのオーガ!その子をこちらへ渡せ!」
オーガ「?オジョウチャンをそっちにいかせれば、いいか?」
守衛「そうだ!おとなしく渡せ!」
オーガ「オジョウチャン、おれ、ムラのなか、はいれない。だから、ここで、おわかれ」
幼女「ありがとう!やさしいおじちゃん!」
オーガ「また、あそびにくる、いい」
幼女「うん!やくそくする!」
幼女「おじちゃん、バイバイ!」
オーガ「オジョウチャン、ばいばい」
幼女「パパー!ママー!」
父&母「幼女!!!」
幼女「パパ、ママ、しんぱいさせて、ごめんなさい。でも、やさしいおじちゃんがたすけて……」
守衛「今だ!矢を放てえぇぇ!!」
幼女「……え?」
……
オーク「……矢ガモみたいになって帰って来たと思ったら、そういうことだったのか」
オーガ「いたい」
オーク「我慢しろ。回復力は異常なほど高いんだから、すぐ良くなるさ」
オーガ「よくなったら、オジョウチャン、あいにいきたい」
オーク「諦めろ。向こうからここにやって来なければダメだ。お前が向こうに行けば、また針山みたいになるぞ」
オーガ「おれ、まつ。オジョウチャンのこと、まつ」
オーク「まぁ向こうからやってくる保証は無いがな」
……
オーガ「オーク」
オーク「なんだ」
オーガ「おれ、オジョウチャン、ずっとまってる、けど、来ない」
オーク「ああ、そういえばいたな、お前が助けた人間の女の子が」
オーガ「来ない」
オーク「もう十年も経ってるんだぞ。お前が覚えていたって、向こうが忘れてるかもしれんぞ」
オーガ「でも、おれ、まつ」
ゴブリン「やあ」
オーク「ゴブリンじゃないか、珍しいな」
ゴブリン「オーガはいるかい?」
オーク「ここはあいつの家じゃなくて俺の家なんだぞ。まぁ確かに遊びに来ているよ」
ゴブリン「呼んできてくれる?」
オーク「いいとも、おい、オーガ!」
オーガ「ゴブリン、ひさしぶり」
ゴブリン「やあオーガ。お届け物……というか、お届け人だよ」
?「ゴブリンさん、ありがとう!」
ゴブリン「いやいやお安い御用さ」
オーガ「?」
少女「おじさん!」
オーガ「?……オジョウチャン、か?」
少女「うん!」
オーガ「おれ、オジョウチャン、まってた」
少女「おじさん、あの時は親切にしてくれたのに、村の皆が酷いことをして、本当にごめんなさい!」
オーガ「おれ、あのくらい、へいき。だいじょうぶ」
少女「それでね、今日、私がおじさんを連れて無事に帰って来たら、村の皆にはおじさんに謝ってもらうって約束して来たの。だからおじさん、もう一度、私を村まで連れて行ってよ!」
オーガ「わかった。おれ、オジョウチャン、つれてく」
少女「オークさんやゴブリンさんも、一緒に来てよ!歓迎するよ」
オーク「そうか、じゃあ俺も着いて行こうかな」
ゴブリン「ボクも行く!」
少女「そうと決まったら、早速出発しようよ!おじちゃん、こっちこっち!」
オーガ「よし、いこう」
その夜、三匹の怪物たちは、村人から厚い歓迎を受け、大層楽しんで帰って行ったそうです。
その後、村は心優しいオーガやオーク、ゴブリンが遊びにやって来る村として、人々に知られるようになりました。
-おしまい-