勇者「はぁっ…はぁ…やだよ、お兄ちゃん助けて…」タッ タッ タッ
「オマエ ガ イナケレバ…」
勇者「嫌だよ…助けて、お兄ちゃん」タッ タッ タッ
「ニクイ…オマエ ノ ソノ チカラ ガ…」
勇者「知らない、僕知らないよ…力なんていらないよ・・・」タッ タッ ドテ
「オマエ ガ イナケレバ…ソノ チカラ ガ ナケレバ…」
勇者「いやー、お兄ちゃん、助けてぇ!!」
勇者「お兄ちゃんっ!!」ガバッ
魔法「……勇者?」
元スレ
女勇者「お兄ちゃん…どこ!?」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1251724347/
戦士「う、うーん…勇者ぁ…うるさいぞ…グゥ…」
僧侶「勇者さん、どうなさいました?」
勇者「あ…ごめん。ちょっと怖い夢てた」
僧侶「そうでしたか。大丈夫ですか?」
勇者「うん、へーき。ごめんね」
魔法「…一緒に寝る?」
勇者「えへへ、ありがとう、魔法使いちゃん。じゃあ一緒に寝ようか」
戦士「…グー…やった、今日はお肉だぁ…」
僧侶「クスクス、幸せそうな寝顔」
勇者「うん…僕達も寝直そうか」
僧侶「はい、おやすみなさい」
勇者「おやすみー」
魔法「…あったか」ギュゥ
勇者「(久しぶりに見たなぁ、あの夢…)」
勇者「(小さい頃、何かに追われてて…)」
勇者「(やな夢…すっごく怖くて…)」
勇者「(お兄ちゃんは全然助けに来てくれないし…)」
勇者「(お兄ちゃん…どこいっちゃったの…)」
勇者「(お兄ちゃん……)」
魔法「…クークー」
戦士「なんだ、昨日またその夢をみたのか?」
勇者「うんうん、なんだかもうイヤーな感じでウモーって感じ」
戦士「なんだよ、その『ウモーな感じ』って」
僧侶「でも驚きましたわ。勇者さんにお兄様がいらしてたなんて」
勇者「えへへ、すっごく優しくてかっこいいんだよ」
戦士「ああ、それに強かったな…こーんなガキの頃から剣を持たせたら大人でも敵わなかった」
魔法「…ウモー?」
僧侶「じゃあ、お兄様もやっぱり勇者に?」
戦士「いや、勇兄のほうは勇者の証でもある浄化の魔法が使えなくてさ」
勇者「うん…でもお兄ちゃんは勇者じゃなくても人々を救うことはできるはずって旅に出ちゃったんだ」
僧侶「そうだったんですか」
戦士「勇兄のほうがこんな馬鹿よりよっぽど勇者に向いてるのにな」
勇者「あー、ひっどーい!」
魔法「…つかれた」
勇者「そろそろ日も暮れるし、今日はここまでにしておこっか」
戦士「そうだな…次の街はあとどれくらいなんだ?」
僧侶「そうですねぇ…もうすぐ見えてくると思うんですが」
戦士「そっかぁ…明日こそは肉を食うぞー!!」
勇者「おまたせー。薬草スープできたよー」
戦士「こんな貧乏生活も明日でおさらばだぁ!」
魔法「…いただきます」
ワー ワー ワー
街女「我が街へ、ようこそ!!」
うぉーー!!勇者様いらっしゃいー!
勇者「うわっ、なんか凄い歓迎されてる」
街娘「はい、みんな勇者様のことをお待ちしていたんですよ」
祭りだー!!今日は、勇者様歓迎祭りだぞー!!
僧侶「なんだか凄いことになってますね」
街娘「ふふふ、まずは街の代表に会いにいってくださいな。私達は歓迎の準備をしてきますので」
戦士「おお、肉っ!肉は食えるのかっ!」
街娘「もちろんです。たっぷりご馳走を用意いたしますね」
魔法「……ご馳走」
代表「いやいや、驚かれましたかな?」
勇者「あ、はい。ここまで歓迎されたことなんてなかったので…」
代表「いやー、我が街は祭り好きでしてな。何かにつけて祭りをしたがるんですよ」
戦士「なんて素晴らしい街だ、うん」
代表「ああ、そうそう、給付金でしたな。こちらをお持ちください」
勇者「ええ!こんなに良いんですか?」
代表「もちろんですよ。足りなければいつでも言ってください。用意しますので」
魔法「……お金持ち」
勇者「うわー凄い人だぁ。みんなとはぐれちゃったよ」
「勇者?勇者じゃないか!?」
勇者「え…!?お兄・・・ちゃん?」
勇兄「久しぶりだな、勇者。驚いたぞ、すっかり女の子っぽくなって」
勇者「おにーちゃーん」エグエグ
勇兄「ほらほら、そんなに泣くなって。お前はやっぱりまだまだ子供だな…」
勇者「うわーん…おにいちゃんのバカァ…ずっと会いたかったんだよ…」ギュゥ
勇兄「よしよし…良い子だ」ポンポン
魔法「……」トコトコ
戦士「うおーお肉だーーー!」
街人「さあ、さあ。遠慮せずにどんどん食べてください」
戦士「いっただっきまーす!おいしー、久しぶりのお肉、おいしーー!!」
街人「おお、すごい食欲ですな。おーいこっちに肉おかわりだー」
戦士「こ、これは!夢にまでに見たマンガ肉じゃないかっ!」
戦士「生きてて良かったよーこんな幸せがこの世にあるなんて…」ウルウル
魔法「…」トコトコ
僧侶「すごいですわねぇ…みんなはどこにいってしまったのでしょう」
おーい!新たな旅人がいらっしゃったぞー!!歓迎の準備だー
僧侶「ふふ、すごい賑わいですわ」
「僧侶さんっ!」
僧侶「し、神父様!?どうしてここに…」
神父「すみません…貴女のことを想って我慢できず追いかけてきてしまいました」
僧侶「え…?」
神父「ご迷惑でしたでしょうか?」
僧侶「いえ、そんなこと…とても嬉しいです///」
魔法「……」トコトコ
魔法「……」トコトコ
老婆「おやおや、お嬢ちゃん。どうしたね?祭りはつまらなかったかい?」
魔法「…」フルフル
老婆「そうかいそうかい。でもまだ満足はしてないみたいだねぇ」
魔法「……んー」
老婆「ひひひ、じゃあこの婆やが特別に望みを叶えてあげよう」
魔法「…望み?」
老婆「そうじゃよ…どれどれ…ムニャムニャ…ていっ!」ポンッ
魔法「……おぉ」
老婆「どうじゃ、背が伸びた感想は?ふむ…まだ満足してないとな?ムニャムニャ…ていっ!」ポンッ
魔法「……おぉ」ボインボイン
夢魔「ふっふっふ…さぁもっと幸せな夢をみなさい…そのまま永遠の眠りにつかせてあげるわ」
ズバッ!
夢魔「ぎゃぁ!私の腕が…何者だ!?」
仮面の男「動くな!動けば殺す」スチャ
夢魔「ちぃ…貴様!……まあいい、次会った時は引き裂いてくれるわ」シュンッ
仮面「ふん…逃げたか」
勇者「……おにーちゃーん…」
戦士「……お肉ー…」
僧侶「……ああ神父様…」
魔法「……たゆんたゆん…」
仮面「おい!しっかりしろっ」ペシペシ
勇者「おにーちゃーん!!」ギュゥ
仮面「うわっ!こら、離れろ…い、いてててててっ痛い、痛いって!!」
勇者「…はれぇ…ここ、どこ…?」キョロキョロ
仮面「やれやれ、なんて馬鹿力だ……おい、起きろ」ペシペシ
僧侶「いけません、神父様。私は神に仕える身…このようなことは」ガバァ
剣士「ちょ、まてまてまて。ストップ、すとっーーーぷ!!」
僧侶「あら…これはどうしたことでしょう?」キョロキョロ
魔法「……ボインボイン…」
仮面「ぜぇ…ぜぇ……おーい、目をさませー」ペシペシ
戦士「私のお肉ー!!」ガブッ
仮面「ぎゃーーーーー!!」
戦士「うわ!なんだこれ、ぺっ、ぺっ」
仮面「まったく……あと一人か………」
魔法「……おっぱい…」
仮面「ぉーぃ…おきろー…」ペシペシ
魔法「……ん…?」ムク
仮面「…!!」ビクゥ
魔法「……ペタペタ…」
勇者「えー!!全部夢だったのーー!?」
仮面「ああ、夢魔といって夢を見させて取り殺す魔族がいるんだ」
僧侶「ああ…私としたことがなんて夢を…///」
勇者「そうなんだーじゃああなたが助けてくれたんだね、ありがとー」
仮面「ん?ああ…気にすることはない、ついでだ」
戦士「そんなぁ…夢だなんて…はぁ…」
魔法「……」シュン
勇者「あ、まだ名前もきいてなかったね。僕は勇者。で、戦士ちゃんに僧侶ちゃんに魔法使いちゃん」
仮面「オレは……剣士…そう、剣士だ」
僧侶「改めてお礼申し上げます、剣士さん。剣士さんも『勇者』なんですか?」
剣士「いや、オレは…その…違うんだ」
戦士「え?だけど『勇者』なしで旅をするのは犯罪じゃ…」
剣士「わかってる…だが勇者の力がなくても、やべきことが残っているから」
勇者「やるべきこと?」
剣士「ああ…だから見逃してはくれないか」
魔法「…剣士、悪い子?」
勇者「命の恩人に見逃すも見逃さないもないよー」
剣士「そうか…ありがとう」
戦士「こっちこそ助かったよ。なにせうちの勇者様は頼りにならないから」
勇者「あーひどいー」
剣士「ははは、仲が良さそうで羨ましいよ。じゃあオレはここで。君達も頑張ってな…」ポンポン
勇者「あ……うん(何だろ…なんだか懐かしい感じ)」
魔法「…ばいばい」
僧侶「いっちゃいましたね」
戦士「どうした、勇者?」
勇者「なんだかお兄ちゃんに似てるなーって…」
戦士「そうかぁ?勇兄はもっと、こう…」
勇者「うん…でもポンポンって頭をなでる感じがさ…なんとなく…」
戦士「気のせいだって。そろそろ行こーぜ」
勇者「あ、まってよー」
魔法「…あれが、次の街?」
勇者「よーし、とーっちゃーーく!…ってなんだか暗い街だね…」
僧侶「ええ、随分と寂れてしまってるようですね」
戦士「あんな夢を見た後だから余計にな…」
勇者「だねぇ…とりあえず代表さんのところにいこっか」
魔法「……どんより」
代表「ようこそおいでくださいました、勇者様」
勇者「街に活気がないですけど何かあったのかな?」
代表「申し訳ありません…実は10年ほど前に街の近くの塔に魔族が住み着いてしまって」
勇者「魔族…ですか?」
代表「ええ、それで時折魔物を従えて街を襲いにやってくるのです」
戦士「10年前から!?誰も倒しにいかなかったのかい?」
代表「1年ほど前にも勇者様パーティーが向かってくれたのですが…その後何の音沙汰もなく」
魔法「……魔族…」
勇者「大丈夫!僕達がその魔族を倒してくるよ!!」
代表「おお、行ってくれますか」
勇者「任せて、魔族なんてイチコロなんだから」
代表「なにぶん街がこの状態でして少なくて申し訳ありませんが、これを。勇者給付金です…」
勇者「あ……そんな、貰えないですよ」
代表「いや、しかし…」
勇者「そのお金は街の人達の為に使ってあげてください。いいよね、みんな?」
僧侶「ええ、勇者さんの良いように」
戦士「はぁ…わかったよ。どうせそんなことだろうと思ってたし…」
魔法「……戦士…よしよし」
勇者「代表さんの厚意で宿だけは確保できたけど…塔に住む魔族って、やっぱり夢魔なのかな?」
僧侶「ふっ、そうかもっ、しれませんねっ」
戦士「夢魔ってやろう、ぬか喜びさせやがって…食べ物の恨み、思い知らせてやる!」
僧侶「ふっ、それはっ、頼もしいっ、ですねっ」
戦士「…僧侶さぁ、最近寝る前に腕立てするよな…ひょっとしてあの女賢者のこと気にしてるのか?」
勇者「あーそういえば腕立てするとおっぱい大きくなるって言うよねー」
僧侶「えっ!?そ、そんなことないですよ!私は、別に…その、鍛錬をと…」
戦士「ただえさえわたし達より大きいのに…生意気だぞ!うりうり」
僧侶「き、きゃあ、やめてください、戦士さん!あ…そこ、だめ…」
勇者「僧侶ちゃんはおっきくていいなー。僕も腕立てしてみようかな」
魔法「……わたしも…する」
勇者「(…何だか寝付けないなぁ……)」ゴロ
勇者「(…剣士、さんかぁ……似てたなぁ…)」ゴロ
勇者「(…明日は塔へ行って、魔族を倒して…)」ゴロ
勇者「(…頑張らなくっちゃ……)」
戦士「グーグー…」
僧侶「スースー…」
魔法「クークー…」
夢魔「ふふふ…お邪魔するわよ。今朝の夢の続きを見せてあげるわ…」
勇者「え、誰!?」ガバッ
夢魔「あら…まだ起きている子がいたのね。寝ていれば幸せに殺してあげたのに」
勇者「…お前が夢魔か!」チャキ
夢魔「そうよ…今朝は邪魔が入ったけ…」
キン!
夢魔「クスクス…人が話してる最中に斬りかかってくるなんて随分と卑怯じゃない」
勇者「黙れっ!街の人達を苦しめて…僕が退治してやる!」
魔法「……ん」ムク
勇者「あ、魔法使いちゃん!気をつけて。敵だよ!」
夢魔「ふふふ…そう、あなたの敵がいるわよ…」
魔法「…」
勇者「え!?魔法使いちゃん!そいつから離れて!!」
夢魔「無駄よ…この娘はもう私の支配下なんだから」
魔法「……て…き?」
勇者「そんな!魔法使いちゃん、目を覚まして!!」
夢魔「ふふふ…さあ、あなたに仲間が斬れるかしら?」
勇者「卑怯だぞ!!」
夢魔「なんとでもいいなさい。さあ…あなたの敵を倒しなさい…」
魔法「……ムニュムニュ…」
勇者「く…魔法使いちゃん!!」
魔法「……火炎魔法」
夢魔「ぎゃあぁぁっぁぁ!!」
魔法「……勇者は敵じゃない…あなた…誰」
勇者「魔法使いちゃん!!」
夢魔「ぐあぁぁぁ…馬鹿な!?私の夢の支配が効かないなんて…」
戦士「んー?なんだぁ…さっきから騒がし……な、なんだ!?」
僧侶「何事ですか、これは!?」
勇者「戦士ちゃん、僧侶ちゃん!気をつけて、今朝の夢魔だよ」
夢魔「お、おのれ…一度ならず二度までも…次は必ず殺してくれるわっ」シュン
魔法「…逃げた」
戦士「そうか、そんなことが…このままじゃヤバイな」
僧侶「そうですねぇ…これからは寝る時は見張りを立てないと…」
勇者「そだねぇ…とりあえず今日のところは僕が見張るからみんなは寝てて良いよ」
戦士「お前はまだ全然寝ていないだろ。わたしがするから寝とけよ」
勇者「え…でも…」
魔法「……いい…わたしが、する」
勇者「…んんっ…おはよー」
魔法「…おはよ」
勇者「ありがとうね、魔法使いちゃん。あれから特に変わった事はなかった?」
魔法「…大丈夫」
勇者「そっか。まだ夜明け前だし僕起きてるから寝ちゃってもいいよ」
魔法「…平気」
戦士「ふぁぁ…なんだ勇者、もう起きてたのか」
勇者「あ、戦士ちゃん、おはよー」
僧侶「あらあら、皆さんはやいですわね」
勇者「僧侶ちゃんも。おはよ」
僧侶「さて、みんな起きたことですし魔法使いさんは夜明けまで眠ってくださいな」
魔法「……でも…」
戦士「いいから、寝ろ!!」
魔法「……ん…ありが…と」
勇者「ここが夢魔のいる塔…」
僧侶「結構高い塔ですね」
戦士「食べ物の恨みと安眠の恨み、きっちり果たさせてもらうぜ」
勇者「でも夢魔って奴かなり強い感じだったし、魔物も多そうだから気をつけよう!」
魔法「…首、痛い」
戦士「……魔物いないぞ…?」
勇者「うん…なんだか拍子抜けだね」
僧侶「でも只ならぬ気配は感じます…どこか見つめられているような…」
戦士「まあ、あまり気にしてもしょうがない。どんどん進もうぜ」カチッ
勇者「戦士ちゃん、危ない!!」ドン
戦士「うわ!勇者、何を…」ヒュン!スタタタタ
勇者「これは、弓の罠だよ。気をつけないと」
魔法「…あぶない」
戦士「こわー…勇者、助かったよ」
勇者「感謝しなよー僕がいなかったら今頃串刺しだよ」
僧侶「どうやらここは、罠が張り巡らされているようですね」
戦士「みたいだな…ここは慎重に進むしかないか…」
勇者「戦士ちゃんストップ!!」
戦士「うお!な、何だ!?」
勇者「ほらここ…あからさまに怪しい床が…」
魔法「…どこ?」
戦士「勇者、罠がわかるのか?」
勇者「えーここだけ全然違うじゃん。みんなわからないの?」
僧侶「ええ…特に変わりないように見えますが」
戦士「まあ勇者は方向音痴だけど、こう言う事には勘が働くからな。先頭いけるか?」
勇者「うん!じゃあみんなは僕の後をついてきて」
魔法「…頼もしい」
勇者「ここにも罠の床が…みんな気をつけて」
僧侶「さすがですね。とても頼もしいです」
勇者「えへへー少しは見直した?この床は踏まないようにそーっと…あっ」ドテッ カチ
戦士「な…な…な…何してんだー!!」
パカッ!
僧侶「きゃっ、落としあ…」
戦士「勇者の大馬鹿ーーー!!」
魔法「……前言撤回」
勇者「あいたたた…みんな大丈夫」
戦士「つぅー…このお馬鹿!なぜあんなところでコケるのよ!!」
勇者「うぅ…ごめん」
僧侶「みなさんお怪我はありませんか?」
魔法「……お尻痛い」
剣士「なんだ…?誰か落ちてきたかと思ったら君達か」
勇者「あ、昨日の!?」
僧侶「あら、剣士さんではありませんか」
剣士「しかし罠の落とし穴にはまるなんて、君達も案外間抜けだな」
戦士「勇者が間抜けなだけだっ!それに自分だって同じじゃないのか」
剣士「い、いや、ははは…細かいことは気にするな」
魔法「…同類」
僧侶「ところでここはどこなんでしょう?」
剣士「塔の地下だ。魔の瘴気が強い。いつまでもここにいるわけにはいかんな」
勇者「上に戻ることはできないの?」
剣士「この先にある広間の先に上への階段があるんだが…魔物が多すぎて立ち往生してたところさ」
戦士「へっ!だったら、わたし達が蹴散らしてやるよ」
魔法「…任せて」
剣士「そいつはありがたいな…だが問題もある」
勇者「問題?」
剣士「さっきも言ったがここは魔の瘴気が強くてな。倒しても少ししたらすぐゾンビ化して復活するんだ」
僧侶「それはちょっと困りましたねぇ」
剣士「だからある程度倒したら勇者、君の浄化魔法で数を減らしていくしかない」
勇者「うん、わかった。じゃあみんな準備はいい?」
僧侶「はい」
戦士「OK、いつでもいいぜ」
魔法「…いいよ」
剣士「よし、いくぞ!!」
戦士「うおりゃぁぁぁ!!」
僧侶「…魔に対する者達に神の力、貸し与えたまえ…加速魔法」
勇者「ていっ!」
剣士「ていっ!」
勇者「はっ!」
剣士「はっ!」
勇者「たぁっ!」
剣士「たぁっ!」
戦士「ひゅ~♪息ぴったりじゃないか」
魔法「……見えざる古の巨人達よ…わが敵を打ち砕け…粉砕魔法」
剣士「そろそろ、浄化魔法を!!」
勇者「うん!!…ワルイキ キエキエー ワルイキ キエキエー 闇を光にー 浄化魔法!!」
戦士「相変わらず緊張感のない…おっと!」
剣士「油断するな!まだ半分も終わってないぞ」
戦士「わかってるよ!そりゃぁぁ」
魔法「…我に使いし火の精霊達よ、我に仇なす敵を焼き尽くせ…火炎魔法」
勇者「はぁ…はぁ…これで全部終わったかな」
戦士「ぜぇ…ぜぇ…さすがに疲れた…」
僧侶「みなさん怪我はありませんか?」
剣士「ああ…しかし君達がここまで出来るとは思わなかったよ」
勇者「えへへー何といっても僕たちは勇者だからねー」
剣士「そうだな…改めて勇者の力が重要だと思い知らされたよ…」
魔法「…疲れた」
剣士「ところで…すごく今更だがなぜこの塔に?」
勇者「え?だって街の人達がここの魔族せいで苦しめられてるから…」
剣士「そうかあの街か…なら当然、引き返せと言っても聞かないよな」
勇者「当たり前だよ。僕は勇者なんだから…でもなんでそんなことを?」
剣士「いや…ならば一緒に行こうか。こっちが上り階段だ」
魔法「……階段長い」
勇者「あの…聞いてもいいかな?」
剣士「うん?なんだ?」
勇者「えーと…そ、その仮面ってずっと着けてるけどなんでかなぁって…」
剣士「ああ、これか…これは以前戦いで酷い傷を負ってな。あまり人前に出せる顔じゃないんだよ」
勇者「あ、そうなんだ…変なこと聞いてごめん…」
剣士「いや…いいんだ…」
戦士「勇者の奴、まだ勇兄のこと気にしてるのかな?」コソコソ
僧侶「さあ…どうなんでしょう」コソコソ
魔法「…?」
剣士「よし、こっちだ。行こう」
戦士「なあ、さっきから道案内してくれるのはいいんだけど、なんでわかるんだ?」
剣士「以前にもこの塔を昇ったことがあるからな…」
僧侶「そうだったんですか。その時もお一人で?」
剣士「……いや…仲間、大切な仲間と共に。そして俺だけが生き残った」
勇者「えぇ!?そんな…」
剣士「俺たちも1年前、勇者パーティーとしてこの塔に乗り込んだんだが…このザマさ」
戦士「じゃあ、この塔にきたのは敵討ちのため?」
剣士「…まあ、そんなところだ」
魔法「……大切な…仲間…」
剣士「さて…ここだ。この先にいるはずだ」
勇者「……ゴクッ」
戦士「いつでもいいぜ」
僧侶「みなさん、お気をつけて」
魔法「…」
剣士「いくぞ!」
バンッ!!
夢魔「ふふふ、ようこそ…わざわざ来てくれなくても殺しに行ってあげたのに」クスクス
魔法「…火炎魔法」
戦士「きえたっ!?」
剣士「来るぞ!!」
キンッ!
勇者「させないっ!」
夢魔「あら、生意気な魔法を使う小娘にお仕置きしようとしたのに…やるじゃない」
僧侶「勇者さん!!」
勇者「みんなは僕が守るっ!」
魔法「…わたしも…守る」
夢魔「ふふ…どの道あなた達は今日ここで死ぬのよ…おっと」スッ
剣士「ち、避けたか!」
夢魔「昨日はとっても痛かったわ…どう殺してあげましょうか?…っ!!」
剣士「黙れ!!貴様の戯言に付き合うつもりはない。奴は、奴はどこだ!?」
夢魔「ふ…ふふふ…いいわ、特別に教えてあげる…」
勇者「え!!」
戦士「危ない!!」
僧侶「剣士さん!!」
夢魔「あなたの、う・し・ろ・よ」
魔法「…あ……」
剣士「ぐはぁ!」グサッ
男「よぅ…久しぶりじゃないか。元 勇者 さ ま…ククク」
剣士「き…貴様!」ガクッ
勇者「そ、そんな…!?」
僧侶「いけない!!回復魔法を…」
夢魔「おっと、通さないわよ。友達の再会の邪魔なんて野暮なことはさせないわ」
戦士「ちょ…ちょっと待てよ…なんで…どう言う事だよ!」
勇者「どうして…どうしてなの、お兄ちゃん!!」
魔法「…お兄、ちゃん?」
勇兄「ふんっ…勇者か…こんな所で会うとな」
勇者「なんで!?お兄ちゃんがどうして!わけがわからないよっ!!」
夢魔「お兄ちゃん?へぇ…そうなの…あなたあの人の妹なんだ」
剣士「ぐ…な、何故仲間を裏切り魔族の手下などに!…ぐあっ!」
勇兄「言葉に気をつけるんだな。俺は手下になったつもりなどない…お前達を仲間と思ったこともな」
剣士「お…俺はお前のことを…信、頼…」
勇兄「お前の勇者としての力が欲しかっただけだ。その力が手に入ればお前などに興味はない」
魔法「…どう…なってるの?」
剣士「そ…そんなこ…と…」
勇兄「前は途中で逃げられたからな…今度こそお前の勇者の力、最後まで吸わせてもらおう」ザクッ
剣士「み…んな…、す…ま……な………」
僧侶「剣士さん!!」
勇者「え…なに、これ…嘘…嘘だよぉ…」
戦士「お、おい!勇兄っ!!どういうことだよ!?」
夢魔「ふふ…あなたのお兄ちゃんはねぇ、もう人間じゃないの…魔人なのよ」
魔法「…魔人」
勇者「そんなことない!!だって…だってお兄ちゃんは!!」
夢魔「聞き分けの悪い子ねぇ…そんな悪い子は殺してあげるわ!」
戦士「勇者!!危ない!」
夢魔「死になさい!!」
ザクッ!
夢魔「ぎゃあぁぁぁ!!な、なんで…」
勇兄「お前には感謝しているよ。この魔人の力をくれたことにはな」
夢魔「い、いや!?吸われるっ!た、助けて!死にたくない!!」
勇兄「だがお前はもう用済みだ」
夢魔「ぐが…ぐぁぁぁ…」
魔法「…干からびた」
勇者「お、お兄ちゃん…」
勇兄「勇者…そして戦士か。久しいな」
戦士「勇兄ぃ!どういうことだよ!!」
勇兄「見ての通りだ。俺は魔人となり力を得たのさ。勇者の力も魔の力も俺の物だ」
勇者「嘘…嘘だよぉ…だってお兄ちゃんはもっと優しくていつもかっこよくて…」
勇兄「ふん…まだそんなことを言っているのか。だから俺はお前が大嫌いだったんだ!!」
勇者「え…」
勇兄「いつもお前が憎かった。剣も魔法も俺のほうが上なのになぜお前だけが勇者の力を!!」
勇者「そ、そんなこと…」
勇兄「お前に俺の気持ちがわかるか!?なぜ俺じゃなかったんだ。なぜお前なんだ!!」
魔法「……勇者…」
勇兄「く、くくく…だが、まあいい。俺は力を手に入れたのだからな。誰にも逆らえない力を」
戦士「…勇者、立て!こいつはもう勇兄じゃない!!」
僧侶「そうです、この人はもう身も心も人に仇なす倒すべき魔人です」
勇兄「そうだとも。さあ掛かってくるがいい。お前たちの力も吸い尽くしてやろう!」
勇者「だ、駄目だよ…だって、お兄ちゃんだもん…やっと、やっと会えたのに…できないよ!」
戦士「何言ってるんだ!ここで死ぬつもりか!?」
僧侶「勇者さんしっかりしてください!」
魔法「……勇者、立って」
勇者「駄目だよ…出来ないよ……」
勇兄「ふん…つまらんな…興がそがれた」
戦士「くそぉ!てやぁ!!」
勇兄「くだらん…」パシ
戦士「何っ!?ぐあっ!」
僧侶「戦士さん!…回復魔法!」
魔法「…火炎魔法」
勇兄「こんなものでは子供の火遊びにもならんな」
僧侶「そんな!?魔法レジスト…」
勇者「みんな…駄目だよ……勝てないよ…」
勇兄「もういい。勇者、戦えないなら故郷に帰れ。戦わぬ勇者などに用はない」
戦士「ま、まて!」
勇兄「もうここにも用はないな…俺は俺の道を行く。もう会うことはないだろう」
魔法「……消えた…」
勇者「みんな…ごめん…ごめんね…」
戦士「おい、しっかりしろよ、お前は勇者なんだぞ!」
勇者「だって…だって僕、もう…」
僧侶「勇者さん!!」パシッ
勇者「僧侶…ちゃん」
僧侶「勇者さんが…勇者さんがしっかりしなければどうするんですか」ポロポロ
戦士「お、おい。僧侶も落ち着けって…ほら泣くなよ」
僧侶「だって…だって…」ポロポロ
魔法「…勇者」ギュゥ
勇者「そうだよね…僕は勇者なんだよね…」
戦士「勇者…」
勇者「みんな、ゴメン。僕どうかしてたよね」
僧侶「勇者さん…」
勇者「守らなくちゃ…色々な人達を、みんなを。その為の勇者の力なんだから!」
魔法「…勇者」
勇者「…じゃあここに仮面を埋めるね」
僧侶「そうですね…結局、剣士さんの体は消えてしまいましたから」
戦士「…簡単な墓だけど安らかに眠ってくれ……」
勇者「(ごめんなさい…お兄ちゃんのせいでこんなことに…)」
勇者「(でも僕が必ずお兄ちゃんを止めてみせるから…)」
勇者「(だから、それまで…僕たちのこと見守ってください…)」
僧侶「……」
戦士「……」
魔法「……」
代表「おぉ、勇者様。ここにいらっしゃいましたか」
勇者「代表さん、どうかしたんですか?」
代表「いえ、勇者様達へのお礼にと街の者達でこれから祭りをと思いまして」
勇者「えー、そんな…悪いですよ」
代表「いやいや、それでは我々の気持ちが収まりません」
僧侶「ふふふ、それでご厚意に甘えてしまいましょうか」
代表「ささ、どうぞ。街の名物料理も沢山用意してありますぞ」
戦士「おぉ、本当!?肉は、肉はあるのかっ!?」
代表「…肉、ですか…申し訳ない。我が街は肉は食さない菜食主義の街でして…」
戦士「そ、そんなーーー!!お肉食べたいよーーーー!!」
魔法「……おしまい」
男勇者「ちょ、ちょっと待てぇーー!!俺たちの出番はぁーー!?」
女賢者「ずっと準備して出番待ってたのにぃーー!どういうことよっ!」
魔法「……また今度」
90 : 1 - 2009/09/01(火) 00:18:24.76 qUwIX2VF0 64/64そんなわけで終わりです
見てくださってありがとうでした
続きはまだ何にも考えてないですが何か思いついたら書くかも
そのときはまたよろしくです