女「ああ、ピッコロさんじゃないですか」
ピッコロ「貴様はいったい誰だ、なんで俺の名前を知っている? それにここはどこだ?」
女「質問ばっかりですね、ここは日本、あなたのいない世界」
ピッコロ「……どういう意味だ?」
女「また質問、それよりどうしてピッコロさんはここにいるんですか?」
ピッコロ「わけがわからん……」
元スレ
ピッコロ「おい、貴様……そこのピアノの前に立っている女」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1231675717/
女「ああ、わかった!」
女「きっと私がピッコロさんに会うことを願ったからここにあなたがいるんですよ」
ピッコロ「ドラゴンボールを使ったのか?」
女「いいえ、それはこの世界にはありません。あなたは私の妄想、幻覚なんです」
ピッコロ「俺が幻覚……? まさか!」
女「だからピッコロさんには触れないはず……えい」
ペチ
女「……」
ピッコロ「……」
ピッコロ「……触れたな」
女「……そうですね」
ピッコロ「……いい加減手を離せ」
女「……意外にすべすべ」
スリスリ
ピッコロ「……」
女「……」
スリスリ
ピッコロ「とりあえず貴様と話を聞いても埒があかん」
女「はあ」
ピッコロ「心を読ませてもらう」
女「……えっち」
ピッコロ「……殴ってもいいか?」
女「まあ、私はそういうのもありかと」
ピッコロ「くそっ……駄目だこいつ……」
ピッコロ「まあこの世界のことはなんとなくわかった」
女「わ、私は嫌って言ったのに……!」
ピッコロ「ようするに俺は実在しない人物ということなんだな」
女「ピッコロさんが無理矢理……強引に……」
ピッコロ「不思議なのはどうして俺がこの世界に来てしまったのかということだ」
女「責任……とって下さいね」
ピッコロ「チッ、貴様、話を聞け!」
女「ピッコロさんを人物と表現することには賛成しかねまーす」
ピッコロ「そこに食いつくな!」
ピッコロ「ところで貴様は何をしていたんだ」
女「見ていてわかりませんか」
ピッコロ「……わからん」
女「うら若き乙女が一人、ピアノの前」
ピッコロ「こんな夜中に懐中電灯一つで野外に棄てられたピアノの前にいる乙女なんてそういないだろう」
女「そんなシチュエーションですることといえば?」
ピッコロ「やめておけ」
女「勝手に心を読むのは禁止にしましょうよ」
女「本当は暖かいお部屋でX-MENの地上波初登場を見るつもりだったんですがね、よいしょ」
ピッコロ「おい、ピアノに昇るな」
女「私、マグニートが好きなんですよ……あ、ピッコロさんの次の次にですが」
ピッコロ「よくそんな所にロープを吊したな」
女「このロープは最初からここにあったんですよ」
ピッコロ「貴様! 辞めろ!」
女「ちょっと死んでみたくなって」
グイッ
ピッコロ「クソッ!」
ビッ
ドサッ
ピッコロ「貴様! なんて馬鹿な真似をするんだ!」
女「ピッコロさんにお姫様抱っこキャッチ! なんて夢ですかこれ」
ピッコロ「自殺しようとするのはいいが、このタイミングでするな」
女「そうすれば謎の女としてピッコロさんの記憶に深く刻まれるかと」
ピッコロ「むしろ今貴様を切り刻んでやりたい」
女「そ、それは……是非!」
ピッコロ「クソッ……どうしたものか……」
女「さあ! さあ!」
ピッコロ「おい、貴様の家は何処だ」
女「初対面のレディにいきなり家を聞くなんて……積極的」
ピッコロ「あっちだな」
女「あーまた勝手に……ひゃあ!」
ピッコロ「送っていこう」
ヒューン
女「出来れば背中に乗せて欲しいんですが」
ピッコロ「……落としてやろうか」
女「まあピッコロさんの腕の中というのも捨て難いですからこれでいいです」
ピッコロ「もう無視するぞ」
女「私がピッコロさん役もやるのでお構いなく」
ピッコロ「……疲れた」
女「とうちゃーく、お疲れ様です」
ピッコロ「ふん、死ぬなら俺がいなくなってからにしろ」
女「好きな人?の前で死ねるなんてロマンチックじゃないですか」
ピッコロ「『人』に『?』をつけるな」
女「好きな『?』の前で……」
ピッコロ「もうなんでもいい」
ピッコロ「もう俺は行くからな」
女「ああ、何処へ行ってしまうのピッコロさん」
ピッコロ「変なポーズをとるな、とりあえず人目のつかない山奥で元の世界へ戻る方法を考える」
女「そんなことしたら『恐怖!○○山で緑人間発見!!』なんてことになりますよ」
ピッコロ「うまく隠れる」
女「……」
カチカチ
チロリロリン
ピッコロ「……なにをした」
女「証拠写真です、待ち受けにしとこー」
ピッコロ「気が済んだか」
女「あ、待って下さいよ」
ピッコロ「まだ何か用か」
女「せっかくだから上がってお茶でも、もしくは水でも」
ピッコロ「いや、いらん」
女「じゃあ何も出さないから上がっていってくださいよ」
ピッコロ「結構だ」
女「じゃあ玄関先でなんですが、早く切り裂いて下さいよ」
ピッコロ「……どこまで本気なんだ」
女「どこまでも」
女「さあさあ、とりあえず上がって」
ピッコロ「チッ、仕方ない……」
女「水と水ではないものどちらがいいですかー?」
ピッコロ「水でいい」
女「つまらないですね」
ピッコロ「もう俺の頭の血管が詰まりそうなんだが」
女「おー、うまいこといいますね」
バシッ
ピッコロ「なんだこれは」
女「座布団です」
バリッ
女「おー結構綿って入ってるものですね」
女「提案です」
ピッコロ「どうせろくなことではないんだろう」
女「ピッコロさんがうちに住むのです」
ピッコロ「嫌だ」
女「即答しなくてもいいじゃないですか」
ピッコロ「丁重にお断りする、貴様に借りを作るのは気が進まん」
女「ピッコロさんが元の世界に戻る方法がわかったら、私を引き裂いてから帰れば貸し借りゼロです」
ピッコロ「貴様の血で手を汚したくない」
女「じゃあ魔姦光殺法で撃ち抜いて下さい」
ピッコロ「字が違う」
女「撃ち抜いて下さい」
ベシッ
女「痛っ! 強烈なデコピン!」
女「とにかく貸し借りなんて気にせずにここにいていいんですよ」
ピッコロ「だが」
女「大丈夫ですよ、このアパート、ペットは禁止ですが……」
ピッコロ「……ペット?」
女「ピッコロさんは鳴き声も静かだし匂いだって……」
ピッコロ「貴様、俺をなんだと……」
女「……」
クンクン
ピッコロ「いい加減にしろ」
女「なんだか植物物語って感じですね」
ピッコロ「はあ……」
女「ピッコロさんはベッドを使って下さいね」
ピッコロ「貴様はどうするんだ」
女「私もベッドで寝ますけど」
ピッコロ「俺は床で十分だ」
女「私はピッコロさんに変なことされても構いませんけど」
ピッコロ「逆が心配なんだ」
女「しっつれいなー!ぷん!」
ピッコロ「変なポーズをとるな」
ピッコロ「そういえば貴様、名前はなんというんだ」
女「そうですね、プッコロとでも呼んで下さい」
ピッコロ「凄く嫌だ」
女「ではペッコロと」
ピッコロ「かわらん」
女「心を読めばいいじゃないですか、無理矢理」
ピッコロ「その言われようが気に食わんからわざわざ尋ねているんだろう」
女「私は無理矢理というのもなかなか……」
ピッコロ「そうか、別に名前など知らなくても構わん」
女「あー、もう! 女ですよ、女」
ピッコロ「最初から素直に名乗れ」
女「またの名をポッコロ」
ピッコロ「しつこい奴だ」
女「さあそろそろ寝ましょうか」
ピッコロ「ああ、寝ろ」
女「寝込みを襲うつもりですか」
ピッコロ「俺はここで寝るから貴様は寝室へ行け」
女「寝込みを襲うつもりですか」
ピッコロ「じゃあな、すまないが世話になるぞ」
ポイッ
ドサッ
女「寝込みをー……」
ピッコロ「寝ろ」
ガチャ
女「ああ、果報は寝て待てパターンですね」
ピッコロ「妙に疲れたな……」
ピッコロ「しかし変わった奴だな」
ピッコロ「この世界の奴らはみんなそうなのか?」
ピッコロ「今は確かめようがないが……」
ガチャ
ピッコロ「……どうした?」
女「果報がこないんです」
ピッコロ「意味がわからん、寝ろ」
ピッコロ「自殺をしようとしていたようだが、本気だったのか?」
ピッコロ「切り裂いてくれだの死にたいほど苦しんでいるようにも思えないんだが……」
ピッコロ「考えても仕方がない、とりあえず俺も寝るか」
ガチャ
女「私寝込み状態なんですが、そろそろ」
ピッコロ「起きてるようにしか見えないぞ」
女「夢遊病なんです」
ピッコロ「黙って寝ろ」
女「はーい」
朝
ピピピピ
女「……朝か」
ピピピピ
女「まだ眠い……会社行かなくちゃ……」
ピピピピ
女「ぐう……」
ピピピピ
女「ピピピピ……ピ…ピ?」
ピピピピ
女「ピッコロさん!」
ガバッ
女「ピッコロさーん、朝ですよー」
女「おーい」
女「いない」
女「夢だったのか……」
女「はあ……」
女「もしもーし、課長、今日会社休みます、心が折れそうなんで」
ツーツーツー
女「寝よう」
バタッ
女「すーすー」
ガチャ
ピッコロ「……なんだこいつは、何故ここに倒れているんだ?」
ピッコロ「少し外に出ていただけなのにいったい何があったんだ」
ピッコロ「……動かんな」
ピッコロ「遂に死んだか」
女「……」
ピッコロ「気が済んだか、そろそろ起きろ夢遊病女」
女「夢じゃなかったんですね、あはは」
ピッコロ「ああ、残念だがな」
女「じゃあ目覚めのキスなんかどうでしょうか」
ピッコロ「やっぱり起きるな、永遠に」
女「いったいどこにいってたんですか、トイレならそこですよ」
ピッコロ「違う、少し外の様子をだな」
女「照れなくなっていいんですよ」
ピッコロ「おい」
女「ピッコロさんだってそういうことくらい……」
ビシッ
女「痛いです」
ピッコロ「痛覚だけはまともなようだな」
女「勝手に外に出ないで下さいよ」
ピッコロ「俺に命令するのか」
女「そんな格好で外に出たら目立ってしまいます」
ピッコロ「うむ……」
女「そうしたらあっという間にテレビ局がうちに押し寄せて私たち有名人になっちゃうじゃないですか」
ピッコロ「……?」
女「番組への出演料を貰うよりも、ピッコロさんを独り占めするほうが大切です」
ピッコロ「何か納得できんぞ」
女「朝ご飯を食べたら買い物に行って来ます」
女「ピッコロさんはおとなしくお留守番ですよ」
ピッコロ「ふん、仕方がないな」
女「寂しくても騒いだりしないで下さいね、ペットを飼ってるってばれたらマズイので」
ピッコロ「もうペットでもなんとでも呼んでくれ……」
女「では恋人、と」
ピッコロ「調子にのるな」
女「行ってきまーす」
バタン
ピッコロ「ふう、静かになったな……」
ピッコロ「……」
ピッコロ「いったい俺は何をしているんだ……」
ピッコロ「そもそも何故こんな事に……」
ピンポーン
ピッコロ「帰ってきたのか? いや……違う」
ピンポーン
ピンポーン
ピッコロ「しつこい奴だな」
ピンポーン
不審な男「どうやら留守みたいだな……」
ガチャガチャ
不審な男「鍵はかかってる……ふふ、これくらい簡単だ」
カチャ
不審な男「よし、開いた」
ピッコロ「今の音は……」
ガチャ
ピッコロ「やはり女が帰ってきてたのか?」
ピッコロ「あいつなら無駄にベルを連打しても不思議ではないな……」
ピッコロ「おい、貴様……誰だ?」
不審な男「ビクッ!」
ピッコロ「泥棒か? 残念だが金目のものはないと思うぞ」
不審な男「う、うわ……化け物……!」
ピッコロ「おい、騒ぐな!」
不審な男「む、むぐ……」
ピッコロ「こういう時は確か警察に突き出すんだったな」
不審な男「ぷはっ! 警察!? なんで僕が!」
ピッコロ「貴様は泥棒なんだろう」
不審な男「失礼な、君こそ何者だ!」
ピッコロ「何者と言われてもだな……」
不審な男「どう見たって君の方が怪しいだろう、誰かー! むぐぐ……」
ピッコロ「……騒ぐなと言っただろう」
不審な男「うぐー」
ジタバタ
ピッコロ「どうしたものか……」
女「あら部屋のドアが開いている……」
女「ピッコロさーん?」
不審な男「うー!」
ジタバタ
ピッコロ「はあ、やっときたか……」
女「お、お邪魔しましたー」
バタン
ピッコロ「おい、女! なんのつもりだ!」
女「どうしよう、ピッコロさんが男の人と抱き合って……」
ピッコロ「こんな時にふざけるな!」
メキッ
不審な男「ぐわっ」
ピッコロ「あ」
女「死んじゃいましたか」
ピッコロ「気絶しただけだ」
女「どれだけきつく抱きしめたんですか、うらやましい」
ピッコロ「貴様が馬鹿なことをいうからだろう」
女「だってナメック星人には性別はない訳でー」
ピッコロ「だからといって見知らぬ男と抱き合う趣味はない」
女「じゃあもしこの人が悟飯さんだったらどうでした?」
ピッコロ「……この質問に何の意味がある」
女「ごまかされた、今日から私は小麦粉派になります」
ピッコロ「勝手にしろ」
ピッコロ「この男は知り合いか?」
女「いいえ、でも知っています」
ピッコロ「どういう意味だ」
女「よく帰り道をあるっていると後ろからついてきたりしています」
ピッコロ「危機感のないやつだ」
女「ええ、まさかうちにピッコロさんが待機しているなど思いもしなかったはずです」
ピッコロ「危機感のよりも大事な何かが欠けているようだな」
女「さて、邪魔物は警察にお引き取りしていただきましたよ」
ピッコロ「もう警官達はいなくなったか?」
女「ええ、でてきても大丈夫ですよ」
ピッコロ「しかし貴様はよく今まで無事に生きていたな」
女「非常に残念ですが、ピッコロさんに会うために生き延びたのだと思うことにします、それより!」
ピッコロ「どうした」
女「さあ、ピッコロさんの着替えを買ってきましたよ、早速着替えてください」
ピッコロ「……いらん」
女「さあ早く!」
ピッコロ「何故上下とも緑を買ってくるんだ」
女「遠くから見れば裸に見えるかと……うわっ!」
ピッコロ「しばらくそうしていろ」
女「ピッコロさん! ターバン重すぎです……ああでもピッコロさんのターバンが頭に……」
ピッコロ「……」
ゲシッ
女「あうっ」
ヒョイッ
女「おーピッコロさん似合うじゃないですか、緑のトレーナー」
ピッコロ「ふん、下ははかんぞ」
女「変態じゃないですか」
ピッコロ「胴着のままでいいということだ」
女「緑の帽子もありますから、出かける時はそれを被ってくださいね」
ピッコロ「被る意味はあるのか?」
女「お洒落とはそういうものです」
ピッコロ「緑一色を買ってくる奴に言われてもな」
女「麻雀なら役満です」
ピッコロ「だからなんだというんだ」
女「さあピッコロさん、これでどこから見ても一般人です!」
ピッコロ「こら、帽子を被せるな!」
女「早速仲良く手を繋いでお散歩で、も……」
ズルッ……
ピッコロ「遠慮しておく……こら女、寄り掛かるな」
ズルズルバタッ
ピッコロ「また死んだふりか、いい加減に……」
ペチペチ
ピッコロ「熱いな、おい、熱があるのか?」
女「き、きっと燃え上がる二人の愛の温度が高すぎて……うう……」
ピッコロ「ふざけてる場合か、しっかりしろ」
女「……」
女「うーん……私は……?」
女「ここはベッドの上、どうしてここに?」
女「記憶がない……」
ピッコロ「気がついたか」
女「記憶の欠落、そしてピッコロさん……! つまり私達はギャフッ!」
ピッコロ「病人が興奮するな、黙ってそれを食え」
女「じゃあ代わりにピッコロさんが興奮して下さいよ……って、これは」
ピッコロ「粥だ、食え」
女「わ、私は小麦粉派ですから!」
ピッコロ「早く食って薬を飲んで寝ろ」
女「なんで食事をとらないピッコロさんがお粥の作り方を知ってるんでしょうか」
ピッコロ「悟飯が風邪を引いた時に……」
女「やっぱりそうなんですね、こいつめ! こいつめ!」
ピッコロ「食欲はあるようだな」
ピッコロ「薬はどこにあるんだ」
女「胃腸薬と睡眠薬くらいなら戸棚にあります」
ピッコロ「風邪薬くらい常備しておけ」
女「風邪なんかじゃないですよ、昨日お風呂上がりにピアノにのったからちょっと体が冷えただけです」
ピッコロ「金をよこせ、薬を買ってくる」
女「きゃー強盗」
パシーン
女「あ、頭に響く……」
ピッコロ「やはり熱があるな」
女「出来ればおでことおでこを合わせるスタイルでお願いします」
ピッコロ「安心しろ、もう手遅れだ」
女「さ、寒い……」
ピッコロ「その熱だ、寒気だろう」
女「誰か優しいピッコロさんが添い寝してくれれば暖かいのに……」
ピッコロ「言うと思ったぜ」
女「ならば……!」
ピッコロ「入るわけないだろう、布団をめくるな」
女「ならば! 寒い……」
ピッコロ「服をめくっても駄目だ、阿保が」
女「すーすー」
ピッコロ「やっと寝たか」
ピッコロ「困った奴だ、子供の頃の悟飯の方がよっぽど扱い易かったぜ……」
ピッコロ「……」
ピッコロ「はあ、俺はいったい何をしているんだろう……」
ピッコロ「頭のおかしい女なんて放っておいて、早く元の世界に戻る方法を探すべきじゃないのか?」
ピッコロ「……」
女「うー……」
ピッコロ「おいどうした」
ピッコロ「さっきより熱が上がっているようだ」
ピッコロ「こいつは悟飯と違って普通の地球人だからな……」
ピッコロ「この熱のままは危ないだろう」
ピッコロ「……おい女、病院はどこにあるんだ?」
女「……」
ピッコロ「チッ、仕方のない奴だ……」
医者「これは完璧に風邪ですね、熱で朦朧としているようですが点滴が終わる頃には大分楽になっているはずですよ」
ピッコロ「そうか」
医者「失礼ですが、あなたもかなり顔色が悪い様ですね」
ピッコロ「気のせいだ」
医者「いやしかし……」
ピッコロ「用が済んだのなら失せろ」
ギロッ
医者「ひぃっ、は、はい!」
ピッコロ「おい、女」
女「……」
ピッコロ「まだ目が覚めんのか」
ピッコロ「どうにもここは落ち着かん、早く帰るぞ」
女「うー……ここは……病院?」
ピッコロ「起きたか」
女「いやピッコロさんが病院に私を連れてくるはずがない、夢だこれは夢」
ピッコロ「はあ、どうやら元気になったようだな……帰るぞ」
「お大事にー」
女「もうすっかり夜になってたんですね」
ピッコロ「そうだな」
スタスタ
女「……」
ピッコロ「どうした、置いていくぞ」
女「お姫様抱っこだなんて贅沢はいいませんからせめておんぶでも……」
ピッコロ「甘えるな」
女「ああ、ピッコロさんが優しかったのは私の意識がなかった間だけか……損した気分だ……」
テクテク
フラッ
女「ああっ」
チラッ
ピッコロ「……ふん」
女「ピピ、ピッコロさん……」
ピッコロ「どうした」
女「あのですね」
ピッコロ「おぶって欲しかったのだろう」
女「いやまさか本当におぶってもらえるだなんて、この不況にこんな贅沢いけませんよ!」
ピッコロ「ごちゃごちゃとうるさいやつだ」
女「ピッコロさん」
ピッコロ「なんだ、まだ何か用か」
女「月が綺麗ですよ」
ピッコロ「満月だからな」
女「破壊してください」
ピッコロ「なんでそうなるんだ」
女「顔が真っ赤になってるのを見られたくないからです」
ピッコロ「熱のせいだろう」
ベシッ
ピッコロ「……何故殴る」
女「秘密です」
女「さあマイスイートホームに到着です」
ピッコロ「貴様のせいで俺まで疲れただろう」
女「今日はゆっくり休んで下さい、ベッドで」
ピッコロ「まだいうか」
女「何もしないから一緒に寝ましょうよー!」
ピッコロ「いいからとっとと寝ろ」
ドサッ
女「うあっ」
グイッ
ピッコロ「こ、こら!」
バタッ
ピッコロ「す、すまん……」
女「お、も、いー」
ピッコロ「貴様が引っ張るからだ、馬鹿者」
ギュッ
ピッコロ「……おい、離せ」
女「嫌です」
ピッコロ「はあ……」
女「ピッコロさんのため息が顔に……!」
女「か、か、顔がこんな近くに……」
ピッコロ「一人でなにぶつぶつ言っている、目を閉じるな目を」
ピッコロ「いい加減に手を離せ、潰れたいのか」
女「ピッコロさんの圧力で死ねるなら本望です」
ピッコロ「潰す方の気持ちも考えろ」
女「確かに潰す方も捨て難いです!」
ピッコロ「はあ、わかった」
女「……え?」
ピッコロ「一緒に寝ればいいんだろう?」
女「そ、それはつまり……プロポーズですか?」
ピッコロ「全く違う」
女「そうか、これが初夜……」
バコッ
女「びょ、病人に酷いです……」
ピッコロ「一番病んでいるのは貴様の頭の中だ」
女「さあピッコロさん強く抱きしめて下さい」
ピッコロ「うるさい、寝ろ」
女「ピッコロさんの広い背中しか見えないんですが」
ピッコロ「黙って寝ろ」
女「あったかいです」
ピッコロ「引っ付くな!」
女「すーすー」
ピッコロ「そのまま寝るな!」
女「……ピッコロさーん」
女「寝たようですね」
女「こっち向いて下さいよー」
女「今日のところは背中で我慢しよう」
女「今日……明日は、明日?」
女「明日はピッコロさんはいるの?」
女「ううっ……」
女「グスッ……」
ギュウッ
ピッコロ「……」
ピピピピ
ピッコロ「……朝か、いつの間にか眠っていたようだな」
ピッコロ「……女は何処にいったんだ?」
ピッコロ「いつの間にベッドから出たのか、気がつかなかった……」
ピッコロ「おい、女どこだ」
ピッコロ「貴様」
女「ああ、ピッコロさん……」
ピッコロ「こんな寒いで風呂場にいるなんて、この馬鹿が」
女「あ、はは……ごめんなさい」
ピッコロ「……!貴様、何をしたんだ?」
女「なんでもないんです」
ピッコロ「これは……、貴様の血だろう?」
女「いいえ、トマトジュースです」
ピッコロ「頭は正気なようだな」
ピッコロ「なんて馬鹿なことを……」
女「……ごめんなさい」
ピッコロ「傷口を見せろ」
女「嫌です」
ピッコロ「見せろ」
女「駄目、ピッコロさんのえっち」
ピッコロ「ふざけるな!」
女「ひっ!」
ピッコロ「死にたいのは貴様の勝手だが、俺がいなくなってからにしろ」
女「違う、違うの……ひっく……」
ピッコロ「何故泣くんだ、いったい俺にどうして欲しいんだ」
女「うう……」
ピッコロ「……とりあえず手当が先だな」
女「ごめんなさい、ごめんなさい……」
ピッコロ「謝るな、謝らなくていい」
ピッコロ「医者にもらった薬に抗生物質があったはずだ、それを飲んでおけば化膿は抑えられるだろう」
女「……はい」
ピッコロ「包帯はきつくないか?」
女「……はい」
ピッコロ「少し離れてもいいか?」
女「駄目です」
ピッコロ「はあ……わかった気が済むまでこうしていろ」
女「……ごめんなさい」
ギュウッ
女「ピッコロさんは、いつまでここにいてくれるんですか」
ピッコロ「……さあな」
女「ずっとここにはいてくれないんですか」
ピッコロ「……」
女「ごめんなさい、困らせるようなことばっかりで……私……」
ピッコロ「黙ってろ」
女「ごめんなさい」
ピッコロ「謝るんじゃない、今は何も考えるな」
女「……」
ピッコロ「……」
女「……ピ、ピッコロさん」
ピッコロ「なんだ」
女「私、もう大丈夫ですから……その……」
ピッコロ「駄目だ、貴様は信用ならん」
女「でも……」
グウー
ピッコロ「……」
女「あ、はは……」
ピッコロ「腹が減ったのか、ククッ」
女「わ、笑わないで下さいよ!」
ピッコロ「待ってろ、妙なことはするなよ」
女「大丈夫です、空腹やらなにやらでまったく動く気力がないです」
ピッコロ「そのベッドから降りたら殺す」
女「それはそれで……」
ピッコロ「そうだったな……じゃあ俺が死のう」
女「そ、それは駄目です……!」
ピッコロ「ほら飯だぞ、起き上がれるか?」
女「はい、なんとか」
ピッコロ「さあ食え」
女「ふーふーあーんは?」
ピッコロ「調子に乗るな」
女「チェッ、ふーふー」
ドカーン!
女「ぶばっ!」
ピッコロ「……何の音だ?」
女「あ、熱い!」
ピッコロ「少し見てくる」
女「だ、駄目です!」
女「もしも危険な宇宙人や何かだったら……」
ピッコロ「大丈夫だ、必ず戻ってくる」
女「で、も」
ピッコロ「あーわかった! お前も一緒に連れていけばいいんだろう。それならいいか?」
女「うぅ……」
ピッコロ「ほら、乗れ」
ピッコロ「確かこっちの方角から聞こえたようだったな……」
女「事故か何かだったんですかね」
ピッコロ「それにしては何もみあたらんな……」
女「空耳だったんじゃないでしょうか」
ピッコロ「……!」
女「どうしたんですピッコロさん、耳がピーンとなってますよ」
ピッコロ「あっちだ……こら、耳を引っ張るな」
女「ねえピッコロさん、本当に見に行くんですか」
ピッコロ「ああ」
女「寒いからやめましょうよ」
ピッコロ「貴様だけ家に置いて来てもいいんだぞ」
女「それは駄目です」
ピッコロ「それならこのまま行くしかないな、そろそろ俺の耳を離せ」
女「嫌です、死んでも離しません」
ピッコロ「この方角は……」
女「ピアノの方ですね」
ピッコロ「やはりそうか」
女「あ、何か見えますよ」
ピッコロ「あれは……」
?「おーい、ピッコロー!」
ピッコロ「貴様は……」
ブルマ「よかったー簡単に見つかって」
ピッコロ「おい、これは一体どういうことなんだ」
ブルマ「これは平行世界転送マシーン、私の発明品よ」
ピッコロ「この世界に来てしまったのは貴様のしわざか?」
ブルマ「それについてもとりあえずカプセルコーポレーションに戻ってから説明するわ……さあ、この機械に乗って」
女「だそうですよ、さあ気が済みましたかピッコロさん、我が家に帰りましょう」
ピッコロ「女……」
ブルマ「あら、その子は……?」
ブルマ「……ええと、つまりはピッコロがこっちの世界にいる間お世話になっているということね」
ピッコロ「世話をしてやったのはどっちだ」
女「そして二人の間には深い愛情が芽生え、ピッコロさんはこっちの世界に居たい、と言っているんです」
ブルマ「そうなの……困ったわね」
ピッコロ「いや、大丈夫俺は帰痛たた!」
ギュー
ピッコロ「こら、耳を引っ張るな!」
ブルマ「それでどーするのよピッコロ、私はあんたが帰りたくないっていうなら無理強いはしないけど」
ピッコロ「俺は……」
女「……」
ピッコロ「……少し、時間をくれないか」
ブルマ「わかったわ、でも明後日の夜にもう一度迎えを寄越すわ」
ブルマ「なんどか実験した結果、別の平行世界に居られる時間には期限があるみたいなの」
ピッコロ「……それを過ぎるとどうなる」
ブルマ「体を形成する物質がその世界に落ち着いてしまって元の世界に戻れなくなるわ」
ピッコロ「……絶対に、か?」
ブルマ「ええ、今の私の技術ではね、それに生物の平行世界間の移動は一往復が限界のようだわ」
ピッコロ「つまり二度同じ世界には来られないのか」
ブルマ「そうね、私もあんたも二度とワープは出来ない」
ブルマ「ちなみにヤムチャは期限切れでドラゴンボールによる救助待ちだけど、平行世界に効力があるのかはわからないわ」
ブルマ「じゃ、明後日の夜また迎えを寄越すわね」
ピッコロ「……すまんな」
ブルマ「いーのよ、あんたは本来実験に巻き込むつもりじゃなかったんだから、じゃーね!」
ドカーン
ピッコロ「消えた……」
ピッコロ「おい、貴様」
女「……」
ピッコロ「寝たふりをしても無駄だ」
女「……なんで、帰らなかったんですか」
ピッコロ「……」
女「……」
ピッコロ「貴様が泣いていたからだろう」
女「……ごめんなさい」
ピッコロ「とりあえず帰るぞ、背中が冷たくて敵わん」
ピッコロ「……」
女「……ピッコロさん」
ピッコロ「なんだ」
女「よかったですね、元の世界に戻れるってわかって」
ピッコロ「……ああ」
女「私はピッコロさんが大好きですけど、やっぱり独り占めは良くないです」
ピッコロ「……」
女「ピッコロさん萌えだけではなく様々なカップリングにも対応できますので大丈夫です!」
ピッコロ「着いたぞ」
ガチャ
女「だから私にお構いなく元の世界へ……ってどこに行くんですか」
ピッコロ「少し一人にしてくれ、鍵を締めて寝てろ」
スタスタスタ
女「……はーい」
ガチャカチ
女「明日の夜がピッコロさんと過ごせる最後の夜というわけで」
女「つまりは勝負下着なんかを身につけて置いた方がいいですね」
女「明日は一日デートをして、夜はロマンチックなホテルにでも一泊……」
女「それにはこの風邪を早く治さなくてはないですね」
女「寝よう」
女「すーすー」
不審な男「よし……あの緑野郎は出掛けたようだな」
不審な男「あいつのせいで警察のお世話になってしまったじゃないか……」
不審な男「あいつは一体女さんのなんなんだ?」
不審な男「考えている場合じゃないな、今のうちに……」
カチカチ……カチャ
不審な男「まったく女さんはこんな甘い鍵のアパートに住むなんて無用心だな」
不審な男「でもこれからはもう大丈夫、僕がずっと守ってあげるからね」
不審な男「寝てる……」
不審な男「……」
不審な男「いや、とりあえず車に運ぼう」
ピッコロ「元の世界に戻ったとして……そこで俺に何が出来る?」
ピッコロ「魔人ブウは倒され、平和な世界になった」
ピッコロ「例え新たな危機が訪れても悟空たちがいる……」
ピッコロ「悟飯ももう大人だ、俺に出来ることは……」
子供「ママーあの人全身緑だよー」
母親「しー! 指を指さないの」
子供「はーい」
ピッコロ「おい、女帰ったぞ」
ドンドン
ピッコロ「寝ているのか……?」
カチャ
ピッコロ「開いた……」
ピッコロ「おい貴様鍵を閉めろといっただろう」
ピッコロ「いない……?」
ピッコロ「何処にいったんだ」
ピッコロ「気を探ろうにも奴の気は小さすぎる……」
ピッコロ「クソッ、面倒な奴だぜ」
ピッコロ「闇雲に探しても見つかりはしないだろう」
ピッコロ「このまま待った方がいいのか……?」
ピッコロ「チッ、あいつは一体何様のつもりなんだ」
ピッコロ「どうやら人を困らせるのがよほど好きなようだな……」
女「うーん……」
不審な男「目が覚めたようだね」
女「いつの間に帰ってたんですか、ピッコロさん……」
不審な男「ピッコロさん……それがあいつの名前かい?」
女「……あ、この前の不審者!」
不審な男「不審者……」
女「不審者と黒いワンボックスカーに若い女性……つまりこれは誘拐というわけですね」
不審な男「誘拐だなんて人聞きが悪い」
女「もしもーし、ピッコロさん私はどうやら拉致されているようです!」
不審な男「しまった!電話を持っていたなんて」
キキーッ
女「キャー!」
女「ちょっと、急ブレーキのせいで頭をぶつけて……ちょっと!帰してよ私の携帯!」
パッ
不審な男「ちょっと預かるだけだよ」
女「返してってば……あ……」
不審な男「本当はこんな物使いたくなんかなかったんだけど」
女「……」
不審な男「少し眠っていてもらうよ」
不審な男「もうすぐで到着だからね」
ピロピロピロ
ピッコロ「! 電話とかいう奴だな……女か?」
カチャ
ピッコロ「……」
女『もしもーし、ピッコロさん私はどうやら拉致されているようです!』
ピッコロ「は? 女、意味がわからん……」
女『キャー!』
ピッコロ「おい、どうした!?」
ツーツーツー
ピッコロ「女! 貴様一体何処にいるんだ!」
ピッコロ「……拉致だって? まさかあの男か……?」
ピッコロ「今の会話だけではどうしようもないじゃねえか……」
ピッコロ「待てよ、電話というものは仕組みはわからんが声を電気を使って届ける物だ」
ピッコロ「そこから女の居場所を探れないだろうか」
ピッコロ「そのためにはもう一度女の電話機に通信しなくては……」
ピッコロ「ちっ、一体どうやるんだ……?」
不審な男「さあ、着いたよ」
ザパーン
不審な男「いい感じに波が出ている」
不審な男「きっとここから飛び降りれば一たまりもない」
不審な男「僕も君も現世での苦しみから解き放たれるんだ」
女「……はくしゅん! さ、む……あ……ここは?」
不審な男「目が覚めたんだね、さあ、逝こうか」
女「逝こうの漢字が間違っているようですが……」
不審な男「いや、いいんだよ」
女「い、いや……」
ピピピピ
女「あ、電話……!」
ピッコロ「確か電話というのは番号とやらがわからなければいけないんだったな」
ピッコロ「いや確か直前に通話した相手にかけ直す昨日があったはずだ」
ピッコロ「クソッ、こんなことなら使い方を学んで置くべきだった……!」
ピッコロ「これか? これか?」
ピッピッ
トゥルルル
ピッコロ「か、かかった……のか?」
ピッコロ「おい! 女か!?」
不審な男「どうせ最後だ、お別れの言葉でも言えばいいさ」
ピッコロ『女か!?』
女「ピッコロさん、助け」
プチッ
ツーツーツー
女「あ、あ……」
不審な男「おしまいだ」
不審な男「君だって死にたかったんだろう、いつも見ていたからわかるんだよ」
女「こ、このストーカー!」
不審な男「なんとでも言えばいいさ、僕らはもうここで死ぬんだ」
不審な男「この断崖絶壁から落ちれば一瞬で海の藻屑さ」
女「誰があんたなんかと……!」
ピッコロ「チッ、切れたか……」
ピッコロ「だが今の数秒でだいたいの位置は掴めた!」
ピッコロ「間に合うか……!?」
ヒューン
子供「ママー緑の人が飛んでったー!」
母親「変なこといわないの!」
子供「だ、だって本当だよー」
不審な男「さあ、これで手を繋いで……」
カチャリ
女「や、やめて!」
不審な男「この二十年いいことなんてひとっつもなかった、いきなりこんなことになって……ブツブツ……」
女「いいこと、きっとありますよ、だから……」
不審な男「そうだね、最期に君に出会えたことかな」
スタスタ
女「だ、駄目……!」
ズリズリ
女「落ち……っ」
ヒューン
女「いやあああ!!」
ピッコロ「何処だ? チッ、見つからん……」
ピッコロ「方向が間違っていたのか?」
女「ぃゃぁぁぁぁ」
ピッコロ「今のは女の声!」
ピッコロ「あそこか!」
ヒューン
ピッコロ「間に合え……!」
女「ああああ……」
カクッ
ピッコロ「」
女「」
不審な男「」
………
女「いやあああ!!!」
バッ
女「あ、あ、あ……れ……?」
女「うちのベッド」
女「ということは私は生きてる?」
女「薄暗い……夕方かな……」
女「今何時だろう……○日の○時……」
女「ということは……丸一日以上寝てたんだ、はは……」
女「……ピッコロさんは!?」
フラフラ
バタッ
女「い、たい……」
女「もう時間だったのかな」
女「最後に挨拶くらいしていってくれても……」
女「うう……」
ピッコロ「おい」
女「ああ、幻聴が聞こえる」
ピッコロ「貴様、一体どんな寝相をしているんだ」
女「私が目を開けるとそこには愛しい人が……!」
ピッコロ「変なポーズをとるな」
女「ピッコロさーん!」
ピッコロ「泣きながら足にしがみつくな!汚い!」
女「だって……」
ピッコロ「貴様、死にたいんじゃなかったのか」
女「あんな小汚いオッサンと死ぬなんて嫌です」
ピッコロ「わがままな奴だ」
女「ピッコロさんに殺されるのならどんな場所でも大丈夫なのに」
ピッコロ「まだそんなことをいうか」
ベシッ
女「うっ……」
ピンポーン
女「誰かきましたね」
ピッコロ「そのようだな」
女「またあの不審者じゃ……」
ピッコロ「あいつは気絶していたからあのまま放置してきたんだが……」
ピッコロ「一応お前は隠れていろ、俺が出る」
女「は、はい……」
ガチャ
ピッコロ「誰だ……お、お前は」
悟飯「ピッコロさん、迎えに来ましたよ!」
ピッコロ「……夜に来ると聞いたはずだが……まだ夕方だ」
悟飯「ワープに使うエネルギーが予定より早くチャージ出来たんですよ」
悟飯「あの装置は僕らが戦闘に使うエネルギーを蓄えて動くんですが、ピッコロさんに会えると思ったら張り切っちゃって、はははは」
ピッコロ「……」
悟飯「どうしたんですか、ピッコロさん? 暗い顔して」
ピッコロ「いや……」
悟飯「さあ、早く帰りましょうよ!」
ピッコロ「あ、ああ悟飯……少しだけ時間をくれないか……?」
悟飯「ええ、構いませんが……それはピッコロさんの後ろの方で変なポーズをしている方のことと関係ありますか?」
ピッコロ「……」
クルリ
女「……」
ピッコロ「貴様、何をしている」
女「なかなか戻ってこないから心配して……」
ピッコロ「不用意に出て来るな、馬鹿者が!!」
ベシッ
女「だ、だって!」
悟飯「……」
ピッコロ「悟飯、すまないがこいつと少し話がしたい」
悟飯「ええどうぞ」
ピッコロ「……」
悟飯「……」
ピッコロ「お前もここにいるのか?」
悟飯「少しなんですよね、何か問題でも?」
ピッコロ「い、いや……」
ピッコロ「おい、女」
女「……」
悟飯「……」
女「……」
悟飯「……」
ピッコロ「おい、女、変なポーズは止めろ」
女「はーい」
ピッコロ「悟飯、貴様もだ」
悟飯「はーい」
ピッコロ「女、というわけで迎えが来てしまった、だが……」
女「ずるいですよ、悟飯さんにこられたら私に勝ち目ないじゃないですか」
ピッコロ「何の話だ」
女「力でも絆でも勝てないです」
ピッコロ「頭でもな、クックックッ」
女「何笑ってるんですか、もー!」
悟飯「僕の勝ちということならピッコロさんは連れて帰りますよ」
グイッ
ピッコロ「おいっ!悟飯、勝ちとか負けとかいったいなんなんだ!」
ズリズリ
女「ちょ、ちょっと待って下さいよ」
ガシッ
悟飯「女さん、離して下さい、ピッコロさんが引きちぎれたらどうするんですか」
女「そんなピッコロさんだって愛する自信があります!」
悟飯「ふっ、馬鹿だなぁ、ちぎれる前に腕が伸びるにきまってるじゃないか」
女「……!!」
女「ピッコロさん!いったいピッコロさんはどっちを選ぶんですか?」
悟飯「そうですよ、はっきり聞かせて下さい!」
ピッコロ「……お、俺は」
女「……」
悟飯「……」
ピッコロ「……」
ピッコロ「悟飯と一緒に戻る」
女「……!!」
女「あ、ああ……そうですかそうですかわかりました」
ピッコロ「すまんな、世話になったぞ」
女「わ、私もこれ以上ピッコロさんを飼うのは無理かと思っていたんですよ、奇遇ですね」
ピッコロ「おい、女……」
女「なんですか、早く帰ればいいじゃないですか」
ピッコロ「……わかった、達者でな」
悟飯「お邪魔しましたー」
ピッコロ「装置はどこにあるんだ?」
悟飯「ああ、ピアノのあったゴミ置場の近くに」
女「ふん!」
バタン
女「う、うっ……うわぁああ」
悟飯「やけにあっさり帰ってくれるんですね」
ピッコロ「俺が残るといったらお前は女を殺していただろう」
悟飯「……懸命な判断です、さすがピッコロさん」
ピッコロ「それに元々俺はこの世界に存在しないんだ、残っていても女の人生を狂わせてしまう……」
悟飯「ブルマさんの所に記憶削除装置があったはずです、戻ったら女さんの記憶を消して貰いましょう」
ピッコロ「ああ、それもいいかも知れないな……」
悟飯「だからそんな辛そうな顔しないで下さいよ」
ピッコロ「ああ」
女「ああ、振り返す熱と悪寒」
女「うー苦しいよー寒いよー」
女「……」
女「一人暮らしの淋しさがここにある……」
女「うえーん!」
女「ピッコロさんも最後くらい抱きしめてチューくらいしてけよ馬鹿ー!」
女「……まだ間に合うかな」
タッタッタッ
女「はあ、はあ……」
女「つ、つらすぎる……」
女「病み上がりには……むしろまだ上がってないから……」
女「もうちょっ……あ!」
ピッコロ「転送装置と言っても乗り込んだりするような大掛かりなものではないんだな」
悟飯「ええ、この装置の側にさえいれば」
悟飯「だからピッコロさんも装置の誤作動でこの世界に飛ばされちゃったんですよ」
ピッコロ「ブルマがきたときには随分激しい音が出たようだが」
悟飯「ああ、それはこのピアノに近づき過ぎたせいみたいですよ」
ピッコロ「ピアノ……そういえば壊れているな」
女「ちょっと待ったー!!」
ピッコロ「お、女!!?」
悟飯「て、転送開始!」
ポチッ
女「ずさぁああ!!」
ピッコロ「き、貴様!なんてことを!」
女「ピッコロさんにお別れのチューを求めに」
シュイーン
ピッコロ「お別れなどと言っている場合では……おい悟飯、もう装置はとまらんのか!?」
悟飯「それどころか……」
ブルマ「あら、あんたたち早かったのね……って女ちゃんまで?」
女「こ、ここは……」
ブルマ「ははーん、ピッコロあんたもなかなか隅に置けないわねぇ」
ピッコロ「き、貴様!何を勝手な!」
女「照れなくてもいいんですよピッコロさん!」
ピッコロ「貴様は黙っておけ!」
パコーン
悟飯「……!」
ブルマ「そういえば女ちゃんの世界にヤムチャも飛ばされていたはずなんだけど」
ピッコロ「そうなのか?微かな気も感じなかったが……」
ブルマ「まあ時間にして二十年ほどずれていたからね、ヤムチャもただのおっさんになっていたんじゃない」
女「さあピッコロさん新しい私達の愛の巣へ」
ピッコロ「そんなものはない」
悟飯「ブルマさん、装置のエネルギーはどのくらいで溜まるでしょうか」
ブルマ「そうねえ、悟飯くん一人じゃ二、三日はかかるわよ」
悟飯「……ギリギリか……はぁー!!」シュインシュイン
女「さあピッコロさん、ありきたりですがドラゴンボールでも探しにいきましょうか」
ブルマ「あら、じゃあボール探しは二人に任せたわよ」
女「これが二人の冒険の幕開けとなったのです」
ピッコロ「なるか!新しいポーズを作るな!」
ベシッ
女「ぎゃっ」
おわる
276 : 源泉徴収票 ◆IM.RhdmmmE - 2009/01/12(月) 15:00:33.45 10ObZ1FHO 114/114
沢山お見苦しい点はあったと思いますが、ピッコロ「ピアノー」記念を無事に終えられてよかったです。
納得の行かない部分に関しては脳内補完していただけますようお願い致します。
腐女子うんぬんに関しては同性愛というか異形萌えの僕にはよくわかんないです。
きちんと構想練ってからにすれば寝落ちせずにもっと早めに終わったと思いますが、皆様お付き合いありがとうございました。
携帯が熱くてしかたないです、またいつか。