およそちかしとされしもの
高尚で可憐
見慣れた色恋沙汰とはまるで違うとおぼしきモノ
それら異形の一群を、ヒトは古くから畏れを含み、
いつしか総じて“百合”と呼んだ
元スレ
あかり「百合師だよぉ」二
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1397992360/
【関連】
あかり「百合師だよぉ」
https://ayamevip.com/archives/55818705.html
あかりが竹林で座っているとその女の子は現れた
櫻子「もし、旅の方かね」
あかり「そうだけど何か、だよぉ」
櫻子「ちょいと道に迷ってしまってね」
あかり「あかりに着いて歩きたいと?だよぉ」
櫻子「ああ、どうしても竹林から出られんのだ」
あかり「方向音痴さんだねぇ」
櫻子「元々この山のふもとに住んでいるんだがね」
あかり「地元の人か、だよぉ」
櫻子「ああ。三年も里に帰れてない」
あかり「三年!?」
櫻子「ああ。参ってるんだ」
百合師
添いの水
テクテク テクテク
あかり「んんっ?」
あかり「さっき見た場所だよぉ」
櫻子「・・・・・・・・・」
テクテク テクテク
あかり「あれ?」
櫻子「・・・・・・・・・」
テクテク テクテク
あかり「ハァハァハァ。ほえっ、また戻っちゃったよぉ?」
櫻子「あはは、あんたも捕まったんだな」
あかり「どういうことだ、だよぉ」
櫻子「私と同じさ、しっかりと方角を見定めて歩いているのに、何故か、ふもとに出ない」
櫻子「あんたもここで暮らすかい」
あかり「じ、冗談じゃないな、だよぉ」
向日葵「櫻子!」
櫻子「あっ!向日葵」
あかり「そちらは?」
櫻子「嫁の向日葵だ。ずっと二人でここで暮らしてる」
櫻子「向日葵、そちらは旅の方だ」
向日葵「どうも、こんにちは、ですわ」
あかり「あんたもふもとには戻れないのかい?だよぉ」
向日葵「ええ。ずっと降りておりませんわ・・・」
櫻子「私は向日葵と家に帰る。あんたはどうする?」
あかり「もう少し方法を試してみるよぉ」
櫻子「そうか、なら、気を付けて」
※
アッカリ アッカリ アッカリ アッカリ
あかり「あ、でられた」
村人「ん? おおい、あんた!」
あかり「?」
村人「あんた、竹林から出てきたのかい」
あかり「ええ、そうですが、なにか?だよぉ」
村人「途中、妙な女に出会わなかったかい」
あかり「ええ・・・・・・」
村人「そうか・・・あいつには関わらん方がええぞ。化物に魅せられとるんだ・・・」
あかり「・・・・・・・・・」
あかり「・・・・・・・・・化物・・・?」
※
あかり「こんちわ、だよぉ」
櫻子「ん?あれ?出られなかったのかい?」
あかり「いや、気になる事があって戻ってきたんだよぉ」
あかり「ちょいと村でいろいろ聞いてね」
櫻子「・・・・・・・・・」
あかり「もしかしたら、それについてあかりは詳しいかもしれない、よぉ」
櫻子「・・・・・・詳しい?」
あかり「申し遅れましたが、わたし、百合師のあかり、というものだよぉ」
あかり「だからあんたの知ってること、教えちゃくれないか、だよぉ」
櫻子「・・・・・・・・・」
櫻子「・・・・・・そうだな」
櫻子「ずっとこのままで、向日葵といれるならいいと思ってたんだ」
櫻子「あいつの胸がデカくて、たまに喧嘩もしてしまうけど、それなりに幸せだったしな」
櫻子「でも娘の楓が生まれて」
櫻子「外の世界をみせてやりたくなっちまった」
櫻子「ああ。・・・・・・うちにきてくれ」
※
向日葵「あら、先ほどの方ですわね」
あかり「どうも、お邪魔します、だよぉ」
櫻子「ああ。どうやら、里に出られない原因を知っているかもしれなというんだ」
向日葵「・・・・・・そうですの・・・」
あかり「それで、話しちゃくれませんか・・・特に・・・」
あかり「里で聞いた化物という話・・・・・・向日葵さんのことを」
向日葵「・・・・・・・・・」
櫻子「・・・・・・・・・」
※
櫻子「元々この竹林には向日葵だけが住んでいたんだ」
櫻子「向日葵の家族は先祖が悪い事をやらかしたとかで」
櫻子「里から忌み嫌われていて」
櫻子「ずっとここで暮らしていたんだ」
櫻子「私はそんな向日葵を哀れに思って」
櫻子「よく向日葵のところに遊びに来ていた」
櫻子「わたしも、うすうす向日葵が異質だと気付いていた」
櫻子「向日葵は牛の乳しか飲まなかったから」
向日葵「・・・・・・・・・」
櫻子「そしてある日、いつものように遊んでいると」
櫻子「帰り道、竹林から出られないことがあった」
櫻子「何度試しても里へ下りることが出来ない」
櫻子「私は次第に諦めて、向日葵の家に住まわせてもらう事にしたんだ」
櫻子「生活は、私を哀れに思った里の皆から施しを受けた」
櫻子「私は・・・・・・そして間接的に向日葵も」
櫻子「里のモノに育てられて様なものだ」
櫻子「やがて、向日葵は子を身ごもった」
櫻子「だが・・・生まれたのは・・・・」
櫻子「女の豊満な乳房だった」
櫻子「赤ん坊の泣き声がその中から聞こえ」
櫻子「乳房の中から人の子の赤ん坊が姿を現した」
櫻子「その時初めて、私は向日葵の素性を思い知った」
櫻子「その噂が里に知れ渡って以来、誰もここには寄りつかない」
あかり「なるほど」
あかり「・・・・・・・・・」
あかり「向日葵ちゃん、その、牛の乳を採取する場所を」
あかり「教えちゃくれませんかね」
向日葵「・・・・・・・・・」
向日葵「・・・・・・櫻子・・・」
櫻子「・・・・・・向日葵」
櫻子「・・・・・・教えてやってくれ・・・」
向日葵「・・・・・・・・・わかりましたわ」
あかり「・・・・・・・・・」
※
向日葵「ここの湧水ですわ」
あかり「こいつぁすごい、よぉ」
あかり「岩の裂け目から確かに牛の乳のようなものがわき出ている、よぉ」
あかり「その牛乳があんた方の命の水かい、だよぉ」
向日葵「ええ、そうですわ」
あかり「それは、櫻子にも?」
向日葵「・・・・・・子供の頃に一度だけ」
向日葵「しかし、それ以外では、決してよその者にあげてはならないと言われておりましたので・・・・・・」
あかり「・・・・・・・・・」
あかり「やっぱりあんたも里から忌み嫌われるのはつらいか、だよぉ」
向日葵「ええ・・・ですが・・・」
向日葵「里のモノに受け入れられなくても・・・」
向日葵「わたくしを必要としてくれる櫻子さえいれば」
向日葵「私は幸せですの・・・とてもとても」
向日葵「誰にも水を差されることなく、暮らしていけることが・・・」
向日葵「化け物と言われるわたくしと一緒にいてくれるだけで・・・」
あかり「・・・・・・・・・」
あかり「・・・・・・・・・」
あかり「そうですか・・・・・・」
あかり「よい伴侶をもちましたね」
あかり「私は別に調査に行くんで」
あかり「道案内、ありがとうございました」
向日葵「・・・・・・・・・」
※
向日葵「」テクテク
楓「わぁ!竹の葉が散っていくね!」
櫻子「ああ。こうやって竹の子供に養分をやってるんだ」
向日葵「!」
ササッ
楓「そうなんだ!養分いっぱいだぁ!」
櫻子「ああ、たくさんの竹からたくさんの養分をみんなにあげるんだ」
向日葵「・・・・・・・・・」(櫻子・・・)
楓「じゃあこの竹さんたちは皆家族なんだね!」
櫻子「そうだな・・・・・・」
櫻子「この季節になると里の事を思い出すよ」
向日葵「!!」
櫻子「お前にも見せてやりたいなぁ、里の風景」
櫻子「夕陽に染まる家屋や、黄金色になる田園とかなんかさ」
向日葵「・・・・・・・・・」
※
夕方
あかり「ちょいといいかね、だよぉ」
櫻子「!」
櫻子「調査は終わったのかい」
あかり「ああ。おおよそ見当がついた、だよぉ」
あかり「まずは櫻子ちゃんだけ」
あかり「話を聞いてくれ、だよぉ」
あかり「先に結論を述べると」
あかり「これは百合の仕業ですね」
あかり「あんたのとこの向日葵ちゃんは先祖代々から」
あかり「この土地に生きてきた」
あかり「そして、見つけちまったんだ」
あかり「これ」
あかり「添い水、という百合だ」
櫻子「これはいつも向日葵が飲んでいる牛の乳・・・!」
あかり「百合とは私たちの良く知る概念とは一線を画すものでね」
あかり「生命の根源、生命に一番近いモノ」
あかり「これは牛の乳のようで、しっかりと意識がある百合でね」
あかり「普段は牛の乳に擬態して何物かに飲まれるのを待っている」
あかり「そしてこの水を飲んだものは意中の相手を離れなくさせることできる」
あかり「そういう百合だ」
あかり「同じような意味にフェロモン、という外つ国の言葉がある」
櫻子「ふゑろもぬ・・・」
あかり「添い水はそうやって意中の相手を呼び寄せて」
あかり「そうして体を重ねる時に、その相手へと移る」
あかり「時が来ると子を残すために宿主の体内から排出される」
あかり「そうやって移動して、子孫を増やす百合なんだ」
櫻子「だから私は、向日葵の周りから出られないようになっているわけか・・・」
あかり「ああ、そうなんだが、事はそう単純じゃない」
櫻子「?」
あかり「普通、この添い水はそこまで強い力のある百合じゃない」
あかり「その力は一時的で、相手が自分に全く興味のない時は」
あかり「効果がでないなんてこともある」
あかり「それが櫻子ちゃんをずっとここに引き留めるばかりか」
あかり「櫻子ちゃんの周囲の者までその影響は及んだ」
あかり「尋常な力じゃない」
櫻子「な、なにかまずいことでも起きてるっていうのか?」
あかり「向日葵ちゃんのご先祖は代々あの水を飲んでいたらしい」
あかり「向日葵ちゃんもその血を受け継いで、自身も十数年飲み続けた結果」
あかり「最早、向日葵ちゃん自身が」
あかり「添い水となってしまったんだ」
櫻子「・・・・・・そんな・・・・・・・・・・・・」
あかり「いや、正確に言うと、人と百合の間の子」
あかり「非常に珍しい、まざりもの、ということだ」
櫻子「・・・・・・・・・」
あかり「人間の体は60%以上が水分でできている」
あかり「おそらく、体がほぼ添い水で構成されている為に」
あかり「添い水なしでは生きられんのだろう」
あかり「だからここを離れる事も出来ないし」
あかり「離れる気もない・・・」
櫻子「・・・・・・・・・」
向日葵「・・・・・・・・・」ザッ
櫻子「向日葵!?」
あかり「・・・・・・全部聞いてたのか、だよぉ」
向日葵「そうですの・・・わたくしが望んだから・・・」
向日葵「櫻子は里に下りられないのですね・・・」
向日葵「櫻子は、こんな私を幸せにしてくれた。でも私は櫻子から里を奪った」
あかり「でも、櫻子ちゃんは不幸だったわけじゃない、よぉ」
櫻子「そ、そうだぞ、向日葵!これからも家族三人、ここで暮らしていこう!」
向日葵「この体・・・」
向日葵「・・・・・・」
向日葵「この体で生まれたからこそ」
向日葵「櫻子をずっと引き留めて私の傍にいれたのですね」
向日葵「ふふっ、ありがとう、わたくしの体」
向日葵「愛していますの、櫻子」
向日葵「里から見捨てられた私と幼い頃から遊んでくださいまして」
向日葵「わたくしを恐れることなく接してくれて」
向日葵「たまに喧嘩とかしてしまいますが」
向日葵「それでも、私は櫻子を愛しております」
櫻子「ああ、私も愛してるよ、向日葵、だから・・・」
向日葵「」ギラッ
櫻子「刃物!?」
あかり「!!」
あかり「よせっ」
ザクッ!!!!!
向日葵「・・・・・ああっ!!」
ドクドクドクドク
あかり「!!」
櫻子「向日葵っ!!!!」
あかり(血・・・?いや、動いて剥離していく・・・)
あかり(あれは添い水か・・・)
あかり(体を作ってた添い水が向日葵ちゃんの体から流れだしている)
櫻子「大丈夫か、向日葵!!向日葵!!向日葵!!!!」
あかり「・・・・・・くっ・・・」
―――――
―――
―
※
あの後、自分を傷つけた向日葵は大量の添い水を流して
枯れる様に朽ちていった
櫻子ちゃんはその場所にお墓を立ててやることしかできなかった
櫻子「私が向日葵をそうさせちゃったんだ・・・」
櫻子「私が里への思いを捨てきれなかったから・・・」
あかり「あまり思い悩みなさるな、だよぉ」
櫻子「迷惑かけたな、あかり」
あかり「いや・・・こっちこそ力になれんで無念だ、だよぉ」
櫻子「旅は続けるのかい」
あかり「ああ・・・・・・また、いつか寄らせてもらうよ」
あかり「お子さんの事もあるしな、だよぉ」
櫻子「残ったこの楓だけでも守り通す」
あかり「その子はまだ添い水を飲み続けて日が浅い。完全な添い水となっちゃいない」
あかり「前言ったように普通の水と添い水を飲ませ」
あかり「適宜添い水の割合を減らしてやってくれ、だよぉ」
櫻子「ああ。わかったよ」
あかり「それでは、だよぉ」
※
櫻子「・・・・・・ふぅ今日の仕事はこれまでにしよう」
オギャー オギャ ーオギャ ーオギャー
櫻子「・・・?」
櫻子「赤子の声?」
櫻子「向日葵の墓の方からだ・・・」
櫻子「乳房が・・・・・・」
添いの水
おわり
39 : 以下、\... - 2014/04/20 21:52:32.25 rhRaUadg0 35/37ありがとだよぉ
お昼に一個目書いて
「籠のなか」の話が好きだって人がいたんで書いたけどパクリに見えたらもうしわけないよぉ
40 : 以下、\... - 2014/04/20 21:54:06.42 roy1O4xE0 36/37パクリというかあまりにもそのまんまだからアレンジ入れた方がいいんじゃね
41 : 以下、\... - 2014/04/20 21:56:26.54 rhRaUadg0 37/37べーすに書いてくれって言われたから百合っぽい設定でアレンジしてみたけど難しいよぉ