1 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 18:11:17.840 muJUHtQR0 1/24

女魔法使い「“今日こそ泣かせてやる!”なんて大口叩いてたわりに、全然大したことないじゃない」

剣士「く、くそぉ……! まだまだ……!」

女魔法使い「相変わらず体力だけは無駄にあるね。じゃあ、覚えたばかりの魔法を使ってみようかな」

剣士「……?」

女魔法使い「あんたの体力を奪う魔法。“ライフドレイン”!」

ズオオオオッ…

剣士「う、うおおおお……!(吸われる……!)」ガクッ

女魔法使い「ああ……力がみなぎってくる!」ツヤツヤ

剣士「く、くそ……」ガクッ

女魔法使い(だけどこれ威力高すぎるな。もう二度と使わない方がよさそう)

元スレ
女魔法使い「体力を奪う魔法を使ったら、お腹が膨らんできちゃった……」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1634029877/

2 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 18:15:06.188 muJUHtQR0 2/24

しばらくして――

<魔法使いの家>

女魔法使い「……オエッ」

女魔法使い(なんだろ、ここんとこ体調悪いな)

女魔法使い(それに心なしか、お腹が膨らんできてる気がするし……お医者さん行ってみようかな)

3 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 18:18:24.738 muJUHtQR0 3/24

<病院>

医者「妊娠してますね」

女魔法使い「へ?」

医者「妊娠……2~3ヶ月といったところでしょうか」

女魔法使い「え……え!?」

医者「これからは十分生活に気をつけて、栄養を取って……」

女魔法使い「ちょ、ちょっと待って! 妊娠って! 私、全然心当たりないんだけど!」

医者「なにをおっしゃる。子供が勝手に出来るなんてありえないでしょう」

女魔法使い「だって私……バーのジンだし!」

医者「大きな声でそんなこといわないで下さい」

5 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 18:21:52.235 muJUHtQR0 4/24

医者「きっとここ数ヶ月の間に、男性とそういう行為をしたはずですよ」

女魔法使い「だからしてないってば……!」

医者「シングルマザーは大変ですし、心当たりのある男性としっかり相談なさった方がいいですよ」

女魔法使い「だから本当に……!」

女魔法使い(ここ数ヶ月、男と絡んだことなんて……。せいぜい剣士と戦ったぐらいで……)

女魔法使い「――あ」

8 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 18:25:09.312 muJUHtQR0 5/24

<老師の家>

女魔法使い「お師匠様!」

老師「なんじゃい」

女魔法使い「私、何ヶ月か前、お師匠様の蔵に勝手に入って、禁術の書を見てしまったんですけど!」

老師「そんなことしてたんか!」

女魔法使い「もう一度入っていいですか!?」

老師「いいけど……どうしたんじゃいきなり?」

9 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 18:28:13.312 muJUHtQR0 6/24

老師「まーったく好奇心旺盛すぎる弟子にも困ったもんじゃわい」

女魔法使い「これだ……! 私が読んで、覚えた魔法!」


 ≪体力吸収魔法“ライフドレイン”≫

 これを使用すると、標的の体力を大幅に奪うことができる。

 追加効果として……


女魔法使い「あの時は気づかなかったけど、ここから先が破れちゃってる!」

老師「おお、もしかしたらこの切れ端じゃないか?」

女魔法使い「見せて下さい!」


 使用者が女で標的が男だった場合、使用者は標的の子を宿すことができる。


女魔法使い「あ……あああああああっ!!!」

13 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 18:31:30.144 muJUHtQR0 7/24

老師「お前……もしかしてこれ使ったんか? しかも男に?」

女魔法使い「……」コクッ

女魔法使い「なんで本のページが破れるような管理をしとくんですかぁ!」

老師「えええ、勝手に入っておいて逆ギレ!?」

女魔法使い「それになんのためにこんな効果が……!」

老師「これはたしか、元々は魔女が開発した魔法なんじゃ」

老師「目当ての優秀な男から体力を奪い、優秀な子供を授かるためにな。恐ろしい魔法じゃよ」

女魔法使い「解除する方法はないんですか!?」

老師「使ってすぐだったら出来たかもしれんが、さすがにもう無理じゃろう」

女魔法使い「ううう……」

15 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 18:35:15.264 muJUHtQR0 8/24

<剣士の家>

剣士「せやっ! とうっ!」

女魔法使い「こんにちは……」

剣士「! お前から訪ねてくるなんてな……どうした?」

女魔法使い「実は……」

剣士「?」

女魔法使い「赤ちゃん……できちゃったの」

剣士「! そ、そうか……よかったな、おめでとう。で、相手は?」

女魔法使い「あんたなの」

剣士「は?」

17 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 18:39:00.253 muJUHtQR0 9/24

剣士「ちょっと待て! なにいってんだ! 俺の子なわけないだろ!」

女魔法使い「それがね、説明すると……」

……

剣士「あの時の戦いで、お前のお腹に俺の子が出来ちゃった、と」

女魔法使い「そうなの……だから……」

剣士「俺にパパになってくれ、と?」

女魔法使い「まあ、そうなる、かな……」

剣士「ふざけんな! んなことできるわけねーだろ! 本当に俺の子かも怪しいのに!」

女魔法使い「いや、それは本当だから! 命をかけたっていい!」

剣士「かけられてもさぁ……」

18 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 18:41:15.636 muJUHtQR0 10/24

剣士「無理だよ……いきなりそんなこと言われたって」

女魔法使い「そうだよね……」

女魔法使い「私だって、あんたの立場だったらそういうもん、絶対……」

剣士「……」

女魔法使い「本当にごめんね。それじゃあね……」

剣士「……」

20 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 18:44:15.581 muJUHtQR0 11/24

<魔法使いの家>

女魔法使い「私……お母さんになっちゃった……」

女魔法使い「どうしよ、本当にこの子育てられるのかな……」

女魔法使い「そもそも無事出産できるのかな……」

女魔法使い「今更、この子の命を絶つなんて、絶対許されないよね……」

女魔法使い「魔法の天才だとかいわれて、調子に乗ったからこうなっちゃったんだ……」

女魔法使い「怖い……怖いよぉ……」

グスッ… シクシク…

21 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 18:47:15.139 muJUHtQR0 12/24

一方――

剣士(あいつの家の近くまで来たけど、どうしていいのか分かんねえ……)

剣士(そもそも俺の気持ちも整理できてないし……)

剣士「……あの」

通行人「なんです?」

剣士「あそこの女魔法使い、最近どうしてます?」

通行人「そういえば、最近元気ないねえ。家からあまり出てこないし」

通行人「なんか病気でもしてなきゃいいけど……」

剣士「……」

22 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 18:51:03.718 muJUHtQR0 13/24

剣士(俺は……どうしたいんだ? 俺は……)

チャラ剣士「でさあ、アイツがいうんだよ。赤ちゃんできたって!」

「マジかよ、どうすんだよ!」

チャラ剣士「そりゃもちろん、知らねえよって突っぱねたよ! 責任取るなんてまっぴらさ!」

「ハハ、わりー奴!」

剣士「……」ズイッ

チャラ剣士「あ? なんだよあんた――」

バキィッ!

チャラ剣士「ぶっ!?」

剣士「俺は……お前とは違う」

23 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 18:53:30.164 muJUHtQR0 14/24

<魔法使いの家>

女魔法使い「どうしよ、ここんとこ何も食べてない……なにか食べなきゃ」

コンコン…

女魔法使い「ん、誰だろ……」

剣士「よう」

女魔法使い「あ、あんた……どうしたの?」

剣士「あれから一週間色々考えて……やっと決心ついたわ」

女魔法使い「決心? なんの?」

24 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 18:56:23.583 muJUHtQR0 15/24

剣士「決まってんだろ」バサッ

女魔法使い「なにこれ……本?」

『やさしいパパになるための本』 『出産は怖くない!』 『妊婦によい食事』

女魔法使い「え、これって……」

剣士「ちょっと気が早いが、ガラガラや哺乳瓶も買ってきた」

女魔法使い「もしかして……」

剣士「決めたよ。俺がその子のパパになる」

女魔法使い「……!」

25 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 18:59:27.884 muJUHtQR0 16/24

女魔法使い「……いいの?」

剣士「元はといえば、何度もしつこくお前に挑んだ俺にだって責任はあるしな」

剣士「俺は自分の責任も取れないそこらの男とは違う。それに……」

女魔法使い「それに?」

剣士「俺もお前に惹かれてた。だから勝って認めさせたくて挑んでた部分もあった」

剣士「なら利害が一致するってわけだ」

女魔法使い「あ、ありがとう!」

女魔法使い「私、私、不安で……」

剣士「お、おい……」

剣士(まさかこんな形で“泣かせる”を達成しちゃうなんて……)

26 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 19:02:20.228 muJUHtQR0 17/24

それから――

剣士「ただいまー」

女魔法使い「お帰り!」

剣士「さっそく夕食にするよ」

女魔法使い「いつもごめんね。仕事で疲れてるだろうに」

剣士「なあに、お腹も大きくなってきたし、体を休めてくれ。動かないことこそが仕事だ」

27 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 19:05:40.417 muJUHtQR0 18/24

女魔法使い「ギターなんて持ち出してどうしたの?」

剣士「曲を聴かせるのも赤ちゃんにいい影響を与えるそうだ。胎教っていうらしい」

女魔法使い「じゃ、弾いてみて」

剣士「ああ」

ポロロン… ジャカジャカ…

女魔法使い「……いい曲。どうしてギター弾けるの?」

剣士「一時期、“歌える剣士”を目指してたからな。すぐやめたけど」

女魔法使い「アハハ、なにそれ!」

30 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 19:08:11.122 muJUHtQR0 19/24

チンピラ「お腹でっけえ! ちょっと蹴ってもいいすかぁ?」

女魔法使い「や、やめて……」

剣士「……」ヒュバッ

チンピラ「ひっ……俺の服だけ……」ハラ…

剣士「次は体にするぞ。とっとと消えろ」

チンピラ「す、すんませんっ!」ダッ

女魔法使い「あんた、こんなに強かったんだね」

剣士「一応これでも、お前と出会うまでは無敗だったんだぞ」

31 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 19:11:11.750 muJUHtQR0 20/24

女魔法使い「ううっ! お、お腹が……」

剣士「そろそろ予定日だったからな。すぐ馬車を手配してくる」

女魔法使い「あ、ありがと……」

女魔法使い(剣士がいてくれて本当によかった……なにもかもテキパキやってくれて……)

ヒヒーン…

剣士「馬車が来た。さ、運ぶぞ」ヒョイッ

女魔法使い「うん!」

32 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 19:14:12.179 muJUHtQR0 21/24

<病院>

赤子「おぎゃあ、おぎゃあ……!」

女魔法使い「……よかった」

剣士「よくやった!」

医者「可愛い女の子です。いやあ、ここまで的確に動いてくれる旦那さんもいないですよ」

剣士「勉強しましたから」

女魔法使い「本当に……ありがとう」

33 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 19:17:15.898 muJUHtQR0 22/24

女魔法使い「……抱っこしてあげて」

剣士「ああ……」

赤子「だあ、だあ」

剣士「ん~、可愛い! ベロベロベロバー!」

赤子「きゃっきゃっ!」

女魔法使い「……この子を愛してくれる?」

剣士「当たり前だろ。たとえ今、やっぱり別の男に心当たりがあったっていわれても、絶対俺が親になる」

女魔法使い「ふふっ……」

35 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 19:21:53.688 muJUHtQR0 23/24

数年後――

「パーパ、マーマ」キャッキャッ

女魔法使い「この子もだいぶ大きくなってきたね」

剣士「ああ、すくすく育ってくれてなによりだ」

女魔法使い「……そろそろ、二人目もいいと思わない?」チラッ

剣士「二人目? いいかもな、俺も剣士として軌道に乗ってきたし」

女魔法使い「だから……今晩いいでしょ?」ドキドキ

剣士「今晩? 別に今すぐでもいいけど」

女魔法使い「えっ、今!? 私はかまわないけどさ……」ドキドキドキ

36 : 以下、5... - 2021/10/12(火) 19:23:25.740 muJUHtQR0 24/24

剣士「じゃあ、あれやってくれ。俺の体力を奪う魔法」

女魔法使い「なんでそうなるの!?」








― 終 ―

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