妹「ダメだよ!これ以上やったら怪人さん死んじゃう!殺生ダメ、ゼッタイ」
兄「妹は優しいな、でも解ってくれ。お前に手を出そうとしたコイツは死ぬべきなんだよ」
妹の制止を振り切って、既に意識の無い怪人を蹴る!蹴る!!蹴る!!!
妹「もうやめてよぉ~!!」
しかし妹の懇願も、狂乱状態の兄には届かぬ様子だった
妹「はぁ・・・しょうがない・・・」
妹は少々後ろめたさを感じながら、兄の後頭部に鈍器のようなものを振り下ろした
元スレ
お兄ちゃん「どいて!そいつ殺せない!」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1237190172/
この妹、当然ながら尋常の少女ではない
謎の中年男性より譲り受けた魔法のステッキを武器に、悪の怪人共と戦う魔法少女であった
その名も「魔法少女フィジカル妹」
魔法、と云っても使えるのは身体能力の強化のみなので、戦法は肉弾戦による力押しである
魔法のステッキは、バット、特殊警棒、バールのようなもの、等々、様々な凶器に変わる優れ物だ
兄は兄で、また問題があった
悪の秘密組織「ソゥカー」によって体をアルバイトに改造されているのだ
働かなければ生きられない哀しき宿命を背負った戦士
人は彼を「仮面バイター2号」と呼ぶ
妹のピンチには、呼んでもいないのに奴が駈け付ける
怪人をどつき倒すのは、もっぱら兄の役目である
※この物語はフィクションです。実在の人物、団体名とは一切関係有りません。
この兄妹、特別に仲が良い訳ではない
妹は、歳の離れた兄を疎ましく思うことも多々あった
兄の妹への偏愛ぶりは大した物で、それはもうヤンデレとかストーカーという類の物だった
しかし、あまりそういう方向には考えたくないと妹は思っていた
この物語は、そんな兄妹の戦いの日々を淡々 と描く物です。過度な期待はしないでください
~街~
怪人「俺様はスパイダー男、今日も地球を侵略しに来た。ゆけい!戦闘員共!」
戦闘員「「「ニー!」」」
一般市民A・B「何だアレ?」 「あぁ、怪人だろ?早くヒーロー来ねーかな」
妹「そこまでよ!平和を乱す怪人たち!」
都合よく出先で怪人に出くわすのは良くあることだ
妹「この私が相手よ!フィジカルチェーンジ!」
変身の途中で一瞬裸になるのは仕様なので仕方が無い。が、それでも恥ずかしいと妹は思っていた
その刹那、ゾクッ、悪寒が走る。パシャッ、閃光が走る
どこから来たのか知らないが、現れるのはあの男
兄「妹、危ないから下がってなさい」
いそいそと手にした物をしまうと言い放った
兄「妹の平和は俺が守る!仮面バイター2号参上!」
全く関係ないが、兄のPCのマイピクチャ、新しいフォルダ3を開くのは止めた方が良い
怪人「出たな仮面バイター、今日こそ貴様を地獄に送ってやるわ!」
兄「“2号”を付けろ。そんな事より、お前妹に手を出したな?死んで償え・・・」
怪人「え・・・?ちょっ・・・まだ何もしてな・・・ぐぇっ!」
必殺技の「バイターキック(下段)」が炸裂する
兄「“まだ”って事は何かするつもりだったんだな?そうだな?」
ビシッビシッビシッ
怪人「痛っ!ちょっと待て待て!これ折れてる!マジ骨折れてるって!」
兄の執拗なローキック攻めに倒れる怪人。こうして平和は守られたのであった
兄「さあ、お仕置きの時間だ」
倒した怪人に過剰な暴行を加えるのは毎度のことだ
妹「やめなよお兄ちゃん、ホントに死んじゃうって!」
たとえ怪人といえど、命を奪うのは良くない事だと妹は思っていた
妹「ごめんね、お兄ちゃん」
妹の魔法は、主に兄を止めるために使われるのだった
~悪の組織~
悪の幹部A「おのれ仮面バイター・・・またしても奴に邪魔されたか」
悪の組織の定例会議である
悪の幹部B「で、スパイダー男の容態は?」
悪の秘書「はい、重症です。完治まで二ヶ月はかかる見込みです」
悪の幹部C「やはり奴を始末しないと世界征服はおろか、通常業務にも支障をきたすな」
悪の幹部D「では、今日の議題は仮面バイター2号対策という事でよろしいですか?」
一同「異議なし」
~引き続き悪の会議~
幹部B「幹部Aの部隊は教育がなっておらんな。先月だけで四体も怪人を倒されているではないか」
幹部A「それを言うなら仮面バイターを作った技術開発部はどう責任を取るつもりなんだ!」
幹部D「2人とも落ち着きなさい。まぁ、何の作戦も立てずにやられた連中は愚かとしか言いようが無いですが」
幹部C「だから、その作戦を立てるための会議だろうが!」
幹部A「何か弱点でもあれば・・・」
幹部B「奴は我々の誇る技術の結晶だ、弱点など無い!」
幹部C「ふむ、弱点か、心当たりがなくもない」
幹部B「え・・・有るの!?」
~数日後、街~
妹「そこまでよ!覚悟しなさい!フィジカルチェーンジ!」
今日も平和を守るために戦う妹である
怪人「フン、君はいつも威勢が良いねぇ。しかぁし、実際に戦うのは君ではない、後ろの男だ」
言われて振り返ると、そこにはカメラを構えた盗撮魔・・・と呼ぶに相応しい兄の姿があった
妹「ちょっと///お兄ちゃん!?」
兄「・・・・・・」
怪人「その男はねぇ、君のあらゆる姿を隠し撮りしてきたのだよ。パソコンの中を調べてみると良い」
兄「何故それを・・・!?」
妹「本当なの?お兄・・・ちゃん・・・?」
「そんな変態に守られて、恥ずかしいとは思わないのかねぇ」
兄「・・・・・・・・・」
妹「ウソ・・・そんな・・・!」
今まで気が付かなかった。いや、気付こうとしなかったのだ
兄が自分の裸体を盗撮してる事など、自分に兄妹愛以外のものを向けていることなど
気付きたくはなかったのだ
妹「変態!変態!変態!お兄ちゃんの変態!気持ち悪い!」
兄「あぁ、その通りだ・・・。そんな事よりアイツをぶっ飛ばすから妹は離れてなさい」
開き直った変態ほどタチが悪いものはない。もはや何を言っても無意味だろう
妹「ゴメン・・・お兄ちゃん、殴らせて」
妹は兄を倒す決心をした。守られてばかりの自分を変えるために
そして何より、目の前の変態を成敗しなければ気が済まなかった
今、怪人そっちのけで兄妹喧嘩が幕を開けようとしていた
戦闘員「ニー(作戦は成功しそうですね)」
怪人「予定通りと言って良いだろう。今のところは・・・だがね」
戦闘員「ニー(幹部連中もたまには役に立ちますね)」
怪人「フフ、どうなるか見守ろうじゃあないか」
兄「本気か・・・?」
実際、妹にバレれば嫌悪の対象になるであろう事は兄にも判っていた。
だが自分を抑えることができなかったのだ。ただ、愛ゆえに
妹「私は本気。全身全霊、誠心誠意、全開の全力でお兄ちゃんを叩きのめす!」
妹は、かつてないほどの魔力が全身に漲ってくるのを感じた
兄「さあ来い妹!俺はお前の全てを受け止めてやる!」
妹「それが気持ち悪いって言ってんでしょぉお!!!」
魔法のステッキ(金属バットver)を振りかぶる
筋肉が滾る、骨格が軋む、風を裂き唸りを上げるバットを一閃
ゴシャ
妹「え・・・!?」
妹「何で・・・何で避けなかったの!?」
あの兄なら避けられるハズだった。だからこそのフルスイングだったのだ
兄「言った・・・だろう?お前の全てを受け止める・・・と」
妹「そんな・・・」
「お前のために受けるなら・・・千の苦痛も・・・愛おしいのさ・・・」
そして兄は静かに眼を閉じた
妹「お兄ちゃんのバカ・・・ヘンタイ・・・ぅわあ~ん!!」
後悔、怒り、悔しさ。言葉に出来ぬなら、込み上げるものは涙
怪人「上出来だよ、。君は実に良くやってくれた。奴さえ始末すれば後は小娘一人。やれェ!」
戦闘員「「「ニー」」」
妹「バカにしないで!今日の私は強いんだから!」
怪人「ほざけ小娘ぇ!」
妹「あなた達、絶対許さない!いくわよ!」
「待ちな!」
血溜まりの影が、揺らめきながら体を起こす
怪人「馬鹿な・・・生きていたのか!」
兄「当然だ。それより、よくも・・・俺の幸せのの時間を台無しにしてくれたな」
怪人「あ、相手は死に損ないだ!かかれぇい!」
兄「妹!」
妹「え?え?何?」
兄「お前の涙、美味かったぞ!」
妹「お兄ちゃんのバカ!ヘンタイ!」
怒りに燃える兄は強かった
普段は使わない「バイターキック(中段)」まで飛び出す怒り様だった
兄「さて、洒落にならん真似をしやがって・・・」
怪人共をのした後は、いつもの作業に移る
妹「お兄ちゃん、ゴメン」
今日は心持ち手心を加えつつ、兄の後頭部を殴打した
兄はスマキにして川へ投げ込んだ、後はパソコンのデータを消すだけである
~数日後、兄妹宅~
母「ねぇ妹、やっぱり警察に連絡した方が良いんじゃない?」
あの日から兄が帰って来ないのである
妹「お、お兄ちゃんは大丈夫だよ・・・多分・・・」
あの兄なら、あれ位平気だと高を括っていた
母「でもあの子、バイト先にも行ってないみたいなの」
流石に、これだけ休めばバイトもクビだろう。責任は自分にあるのだと妹は思っていた
妹「もうちょっと・・・もうちょっとだけ待ってみようよ」
心当たりが有るとすれば唯一つ、悪の秘密組織「ソゥカー」
妹は覚悟を決めた
※この物語はフィクションです。実在の人物、団体名とは一切関係有りません。
~悪の組織地下~
悪の幹部D「まさか、こんなに簡単に仮面バイター2号を捕らえる事が出来るとはな」
兄は秘密基地内の牢獄に繋がれているのだった
怪人「ええ、撤退の途中に川を流れてくるコイツを見付けましてねぇ」
悪の幹部D「んん・・・状況が掴めん。まあ良い、よくやった、ゆっくり休め。臨時ボーナスもあるぞ」
怪人「ありがとうございます。それでは失礼します」
悪の幹部D「ああ」
怪人が退室するのを見届けると、意識を取り戻した兄に語りかけた
悪の幹部D「随分と久しぶりだな」
兄「お・・・お前は・・・」
~街~
妹は焦っていた。時間的猶予はさほど無いだろう、だが、肝心の怪人が現れないのだ
妹「ダメ・・・このままじゃお兄ちゃんを助けられない」
しかし、迷っている余裕は無い
妹「私のせいでお兄ちゃんは・・・私がやらなきゃ!」
選べる選択肢は少なかった
妹「あいつには頼りたくなかったけど」
自分を魔法の世界に導いたあの男なら・・・
妹は意を決して交信を試みた
数年にわたる魔法の鍛錬は厳しいものだった
しかし妹は、それを辛いとは思わなかった
30年間純潔を貫いた男が手にした秘術、その世界に触れるのが楽しかったからだ
耐えられなかったのは師匠による度重なるセクハラだった
仮に兄が現場に居合せたら、間違いなく師匠を撲殺していたことだろう
そして、自分もそれを止めなかっただろうと妹は思っていた
それで教習所を飛び出した。妹の魔法が未熟なのはそのためだ
忌まわしい過去との対峙、それが妹の選んだ道である
~悪の組織~
悪の幹部A「幹部Dの奴、仮面バイターを何故さっさと始末しない!?」
悪の幹部B「まぁ、積もる話もあるだろうしな。ここは奴に任るとしよう」
悪の幹部A「そういえば幹部Cはどこだ?」
悪の幹部B「さっき急用とかで出かけたぞ」
悪の幹部A「いよいよ本格的に世界征服へ乗り出すという時に、アイツは何を遊んでおるのだ!」
悪の幹部B「奴は特殊な人間だからな。とはいえ、我々だけではアレは動かせんな」
悪の組織は慢性的な人手不足に悩まされているのだった
~悪の組織地下~
兄「何故・・・お前がそこに居る!?1号!」
悪の幹部D「その名は捨てたよ、今の俺は悪の幹部D」
そう、この幹部Dこそが兄のかつての同僚、仮面バイター1号であった
兄「お前は死んだはずじゃ・・・何で悪の組織なんかに!!」
悪の幹部D「就職したのさ。お前もいつまでもフリーターのつもりか?我々の仲間になる気はないか?」
兄「ふざけるな!誰がお前等なんかと!」
悪の幹部D「フン、良いさ、時間はたっぷりある。お前を捕らえた今、我々に障害は無い」
兄「まだ俺の妹が居る。アイツは必ず・・・お前等を叩き潰す!」
悪の幹部D「ハ、とるにたらん存在だ、さしたる脅威にはなり得んさ」
だけど、ちょっぴり妹の事が気になる幹部D27歳であった
~街~
師匠と会うのは、あっけない程簡単だった
「師匠 会いたいです 妹」 こんな拙い思念派にあっさり飛び付いてきた
妹「お待ちしていました。師匠、お願いがあるんです」
師匠「君ねぇ、困るよ。僕らの立場分かってるだろう?」
突き放した物言いとは裏腹に、表情からは下心が透けて見える
あの時と同じだ。だったらイケるぜ、と妹は思った
妹「師匠が組織の人間だって事は知っています、でも他に頼れる人が居ないんです」
悪の幹部C、それが師匠の肩書きである
師匠「大方、あの変態兄貴のことだろう?そればっかりは僕も協力できないね」
この男に変態呼ばわりされるのは釈然としない。が、それはそれ
妹「助けて欲しいとは言いません。組織の場所を教えてくれるだけで良いんです」
師匠「それも出来ない。君は我々の敵だからね」
妹「でも、あなたは別です、あなたは私の師匠じゃないですか!こうして会いに来てくれたじゃないですか!」
本当はこの男こそが真の敵だと妹は思っていた。が、それはそれ
師匠「君は“元”弟子だ。戻って来る気でもあるのかい?無いだろう」
妹「あなたの元に戻っても・・・良いですよ」
師匠「どういうつもりだ?」
妹「条件があります」
妹「師匠・・・私と勝負してもらえませんか?私が勝ったら、組織の場所を教えてください」
師匠「要求はそれだけかい?で、僕が勝ったら?帰って来るだけかい?」
妹は深く息を吸い、そして言い放った
妹「私を、あなたの好きにしてください」
師匠「その言葉が聞きたかった。了解だ、それじゃ始めよう」
妹「行きます、フィジカル・・・チェンジ!」
相手は魔導師、それでも勝つためには負けられないのだ
~悪の組織地下~
悪の秘書は扉を叩く
悪の幹部D「入れ」
悪の秘書「失礼します。幹部会よりお呼び出しです」
悪の幹部D「またか、待たせておけ。どうせ幹部Cも帰って来ていないのだろう?」
悪の秘書「はい、幹部C様は市街地で、魔法少女フィジカル妹と交戦中との事です」
悪の幹部D「ククク・・・聞いたか?2号よ。お前の妹はもう終わりだ。あの幹部Cが相手ではな!」
兄「妹は・・・勝つ・・・」
~街~
妹「これが師匠の本気・・・!」
地面は抉れ、樹木引き裂かれる。渦巻く魔力に接近もままならない
師匠「これでも手加減はしてるんだよ。可愛い君を傷付けないためにね」
跳ぶ、伏せる、走る。妹は、繰り出される攻撃をかわし続ける
頼れるのは反射神経と機動力のみだ
妹(ダメ、避けるだけで精一杯。でも、何とかスキをみて近付かなきゃ)
師匠「しぶといな・・・なら、これはどうだ!」
妹「!」
風の壁が妹を囲み、次第に範囲を狭めてゆく
師匠「逃げ場は無いよ。降参しなさい」
妹「おことわりします」
師匠「強情だね・・・これを喰らっても同じ事が言えるかな?」
師匠の指が閃き、炎の矢が放たれた
~悪の組織~
悪の幹部A「幹部Cはいつまで遊んでいる!」
悪の幹部B「じきに仕留めるさ。見ろ、追い詰めた。これで決まりだな」
悪の幹部B「もう良い、モニターを切れ!そして幹部Dは何故来ない!」
悪の秘書「は、「只今お呼びいたします」
秘書は地下の牢獄へ。いったい何度目のことだろう
悪の秘書「内線・・・付ければいいのに・・・」
深いため息をつくと、足音と共に闇の中へと降りていった
~悪の組織地下~
悪の秘書「幹部D様」
悪の幹部D「入れ。何だ?また呼び出しか?」
悪の秘書「はい、幹部C様も魔法少女フィジカル妹を始末し、間もなく帰還される模様です」
兄「妹が・・・負けた・・・?」
悪の幹部D「2号、聞いての通りだ。愛する妹はもう居ない。お前もその気が無いなら、仕方ないな」
兄「冗談じゃない・・・!妹が・・・あんなに頑張ってるアイツが・・・負けて良い訳がないだろうが!」
兄は繋がれたまま必死にもがく。兄を突き動かすのは愛情、激情、そして欲情
悪の幹部D「無駄だ。その枷はションボリウム合金製、お前の力でもどうにもならんよ」
兄「うぐぉあああああ!」
拘束に抗い、暴れる兄
悪の幹部D「あまり熱くなるな。お前も妹と同じ様に・・・」
兄「妹・・・妹分が足りねぇええええ!!!!」
悪の幹部D「はぁ?何を言っている?」
兄はこの数日間、妹の顔を見ていない。妹切れの禁断症状を起しているのである
兄「イモォ・・・トオオオオ!!」
ビキ、ミシ・・・ミシ
悪の幹部D「そんな・・・ションボリウム合金の鎖が・・・!」
鎖を引き千切り、格子をへし折り、兄・復活
~街~
猛る炎が妹を襲う
妹「避けられない・・・」
せめて直撃は防ごうと、とっさにステッキで体を庇う
その瞬間・・・
妹「!!?」
魔法のステッキが、今まで見たことも無い形態に姿を変え、炎を退ける
師匠「なん・・・だと・・・?」
それはバールのようなものというには、あまりにも大きすぎた
大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把過ぎた
それはまさに鉄塊だった
妹「これが・・・私の新しい力・・・!?」
~悪の組織地下~
兄「邪魔だ、そこをどけ。早く妹に会いに行かねば」
悪の幹部D「あの世で、か?お前の妹は死んだと言った筈だ」
兄「いや、俺の妹センサーが告げている。妹はまだ戦っていると!」
悪の幹部D「フン、だがお前が妹と会うことは出来ん。お前はここで・・・ごぶぁ!」
必殺技「バイターキック(上段)」が炸裂。生身で喰らうのはお勧め出来ない
兄「妹が俺を呼ぶ限り、俺は無敵だ」
ちなみに、妹が兄を呼んだという事実は無い
~街~
妹「チャンスは今!」
妹はバールのようなものを担いだ―――妹の必勝形である
妹「えぇえええいっ!」
渾身の力を込めて投げつける
強靭なる膂力と魔力がなければ、武器はあらぬ方向へ飛んで行った事だろう
師匠「く・・・マズい!」
障壁を張り、バールのようなものの圧倒的な質量を受け止める
師匠「ふぅ、今のは少しヒヤリとしたよ・・・妹はどこに!?」
妹「この距離は、私の間合い!」
いかな魔導師といえど、懐に入られれば脆いのだ
妹の拳が唸る
右ストレートは、右拳に全体重をのせ、まっすぐ目標をぶちぬくように打つべし!
妹の一撃は肉を潰し、骨を砕いた。一目で判る重症である
師匠「何故、半人前の君にこれ程の力が・・・?」
妹「魔力は、体力に比例する。あなたが教えてくれたんですよ」
師匠「そうだったな・・・まだ修行は続けてるのか?」
妹「毎日の筋トレも、走りこみも、欠かしたことはありませんでした」
師匠「強く・・・なったな。僕には・・・」
妹「そんな事より、約束ですよ。早く場所を教えてください」
師匠「・・・分かりました」
~悪の組織~
悪の秘書が扉を叩く
悪の幹部A「何事だ!」
悪の秘書「大変です!仮面バイターが脱走しました!幹部D様もその際に・・・」
悪の幹部B「何ィ!?」
悪の幹部A「怪人を総動員で奴を始末しろ!絶対に逃がすな!」
悪の秘書「それが・・・全滅です。怪人、戦闘員、全て倒されました・・・」
それだけ言うと、秘書は力尽き、倒れた
悪の幹部A「残ったのは・・・我々だけか・・・」
悪の幹部B「さすがだな、我が技術部が総力を挙げて造っただけの事はある」
悪の幹部A「まだアレがあるだろう?悪の巨大ロボットが。アレなら奴にも・・・」
悪の幹部B「悪いな幹部A、あのロボットは三人用なんだ・・・」
悪の幹部A「何故そんな仕様に!?」
悪の幹部B「そんな事はどうでも良い。早く何とかしないと奴が来るぞ」
その時、異形の気配と共に幹部室の扉が開かれた
妹は走った。組織は意外と近所に在ったのだ
妹「私が行って・・・何が出来るんだろう・・・」
不安は消えない。だが、止まるわけにはいかない。迷いを捨てて走るのだ
妹「悪の組織・・・あれだ!・・・ん?」
目的の所在を確認すると同時に、尋常ならざる勢いでこちらへ駆け寄ってくる人影に妹は気付いた
兄「妹おぉおおおおお!!!」
妹「あれは・・・お兄ちゃん!」
奇声を発しながら走ってくる男は、まさしく兄である
しかし、その事実が何を意味するのか、妹には理解できなかった
妹「お兄ちゃんゴメン。私、急いでるから!」
猛進する兄の抱擁をいなすと、その勢いのまま組織建物に飛び込む妹
妹「待っててねお兄ちゃ・・・あれ?」
~帰路~
妹「ごめんなさい、お兄ちゃん。私のせいでこんな・・・」
悪の組織を丸々相手にしては、流石の兄もただでは済まなかったのだ
兄「謝る必要なんかない。前にも言ったろう?」
妹「え?」
兄「お前のために受けるなら、苦痛さえも愛おしい、と」
妹「お兄ちゃんのバカ///ヘンタイ///」
兄の変態は筋金入りだ。しかし、それすらも打ち倒してみせると妹は誓っていた
そんな妹を、兄はやrさしく見守るのだった
終わり
今いないだろw