第一話『勇者の旅立ち』
―村―
村娘「ついに出発か……」
勇者「ああ、これも世界を救うためだ」
村娘「絶対、絶対死なないでくれ!」ギュッ
勇者「俺は死なない。お前を置いて死ぬもんか!」
村娘「うん……」グスッ
勇者「じゃ、行ってくる!」
元スレ
勇者「魔王を倒しに行ってくる!」村娘「絶対死なないでくれ!」
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―城―
大臣「次の者、入れ!」
勇者「失礼いたします!」
国王「よくぞ参られた。勇者よ」
勇者「光栄です、陛下!」
国王「このたびの戦いはかつてない作戦となる。くれぐれも覚悟してかかってくれ」
勇者「承知しております!」
国王「では旅立つ前にひとつ、腕前を見せてくれぬか?」
勇者「分かりました!」
勇者「では……」スゥ…
勇者「三連斬!」ビュバババッ
国王「ふむ、素晴らしい。疾風の如き技であった。見事だったぞ」
勇者「ありがとうございます!」
国王「では準備を整え、旅立つがよい」
勇者「はいっ!」
勇者(いよいよ俺の冒険が始まる……)
勇者(魔王め、必ずお前の元にたどり着いて、倒してやるからな!)
勇者(村娘……絶対生きて帰るからな!)
勇者(そしたら……)
―おわり―
第二話『武器作り』
―鍛冶屋―
職人「……」カンッカンッ
ギィィ…
勇者「入るぞ」
職人「あんたかい。待ってたよ、いらっしゃい」
勇者「さっそくだが、剣を一振り作ってもらいたい」
職人「世間話も無しかい。あんたらしいな」
職人「どんな剣だ?」
勇者「より細く、より鋭く、そして――より丈夫な剣だ」
職人「分かった、最高の一振りを仕上げてやるよ。しばらく町の酒場で遊んで行くといい」
勇者「頼む」パサッ
職人「金払いのいいことで」
勇者「それだけ信頼してるってことさ」
職人「ったく、職人魂を燃やすようなことをいいやがる」
―町の酒場―
勇者「……」グイッ
女「ふふっ……」
勇者「……」
女「はぁい、さっきから一人で飲んでるわね」
勇者「なんだ」
女「あなたいい男ねえ、アタシと一緒に遊ばない?」
勇者「悪いが、故郷に女を待たせてる。遊ぶつもりはない」
女「あっそ。つまんない男!」スタスタ
―鍛冶屋―
勇者「どうだ?」
職人「できたぞ。注文通りだ」
勇者「いい剣だ。ぜひ試しに何かを突き刺してみたいんだが」
職人「そういうと思って、あそこにある鉄板でどうぞ」
勇者「よし……」
勇者「はっ!」
グサッ!
職人「あっさりと貫いたな。職人冥利に尽きるよ」
勇者「ありがとう。この剣なら存分に実力を発揮できる!」
職人「あんたなら魔王を倒せる。頑張れよ」
―おわり―
第三話『勇者vs火炎竜』
―火山―
火炎竜「よしよし、棺が運ばれてきたか」
火炎竜「この中に入っている女が次の生贄……」
ザシッ!
火炎竜「ぐああっ!?」
勇者「女じゃなくて残念だったな」
火炎竜「き、貴様は……!?」
勇者「俺は勇者だ。お前の主である魔王を倒すため、旅をしてる」
勇者「長年女性をむさぼり食ってきた火炎竜め、今こそ退治してやる!」
火炎竜「主だと? いっておくが、俺は魔王に従ってるつもりはない!」
火炎竜「ただここを根城に自由気ままに生き、人間を食っていればそれでよかったのだ」
火炎竜「だが、こんな真似をした以上、貴様を殺した後はふもとの村も焼き尽くしてくれる!」
火炎竜「カアアッ!」
ボワァァァァァッ!
勇者(火炎の吐息ッ!)サッ
火炎竜「フハハ、いつまでかわせるかな!?」
勇者(いやここは……あえて突っ込む!)ダッ
火炎竜「なに!?」
勇者(懐に飛び込んでしまえばこっちのもの――)
火炎竜「バカめ!」
バチィンッ!
勇者「ぐはっ……!」
火炎竜「俺には鋼鉄の尻尾もあるのよ! トドメだ、骨も残さん!」
ゴォワァァァァァッ!
勇者「うおおおおっ!」バッ
火炎竜「なっ、飛んだ!?」
勇者(今こそこの大刀の力を見せる時――)
勇者「でやぁっ!!!」
ザンッ!
勇者(やった! 首を切り落とした!)
火炎竜「ぐは……バカ、な……」
ズズン…
勇者「ふぅ……これでこの辺り一帯に平和が戻るな……」
―おわり―
第四話『歓迎会』
―酒場―
ワハハハハハ…
勇者「ウ~イ……」ヒック
勇者「どんどん酒持ってこ~い! あと食い物もな!」
勇者「おい、そこの女の子! チューしよ、チュー!」
赤毛娘「や、やめて下さい!」
勇者「おい、救世主にそんなこといっていいのか? 剣で切り刻むぞ」チャキ…
赤毛娘「します……キスします」
勇者「それでいいんだ」
青年「ったくあの野郎、今日も昼間から酔っ払ってやがる」
男「いったいいつまでいるつもりだ……。魔王退治に行く気配がまるでない」
男「それどころか、タダ飯タダ酒に女漁り……魔物よりタチが悪い」
青年「文句いってやろうか!」
男「やめとけ。彼女に手出されたことに抗議して、顎の骨割られたあいつみたいになるぞ」
男「なにしろ奴はドラゴンを倒してるんだ。実力は本物だ……」
青年「ちくしょう、まさか本性があんな奴だとは思わなかったぜ!」
町長「こうなっては仕方あるまいのう」
青年「町長!」
男「俺たち、どうすれば……」
町長「今まで以上に歓迎するんじゃ」
青年「歓迎を!?」
男「そんなことしたらますます調子に乗るんじゃ……」
町長「いいからやるのじゃ。それしかこの町を守る方法はない」
青年「ささ、どうぞ!」
男「飲んで下さい!」
勇者「お? 今日はサービスいいじゃねえか、てめえら」
……
勇者「ウ~イ……もう飲めねえ~……」
勇者「おい、トイレどこだァ!? さっさと案内しねえと斬るぞ!」
町長「こっちです。私が案内します」
勇者「お、助かる! あ、そうそう。今度あんたの娘一晩貸してくれよ」
町長「ええ、明日にでも貸しましょう」
勇者「サンキュー!」
町長「こっちです……こっちです……気をつけて下さいね」
勇者「あれ? トイレこんなに遠かったっけ?」
町長「あの草むらの奥にございます」
勇者「お、そうか」
ガサガサ…
勇者「トイレちゃ~ん、出ておいで~」
勇者「すぐにたーっぷりご馳走してあげるからねぇ~」
ズルッ
勇者「え!?」
勇者「崖!?」
勇者「うわああああああっ……!!!」
グシャッ!
―おわり―
第五話『勇者vs魔王』
―魔王城―
勇者「やっと会えたな……魔王!」
魔王「ふん、待ちくたびれたぞ勇者」
勇者「俺は冒険に出てから、数々の強敵を倒し、時には本当に死にかけたこともあった……」
勇者「今こそその集大成を見せる時だ!」
勇者「でやぁぁぁぁぁっ! 雷神剣!」
バリバリッ!
魔王「ぬうっ! その首切り落としてくれる!」
ザンッ!
勇者「が……は……」
勇者「なんの! 氷烈斬!」
パキィンッ!
魔王「そんなもので凍るか!」
ドグシャッ!
勇者「ぎゃっ……!」
勇者「ウインドカッターッ!」シュバァッ
勇者「大地槍!」ザクッ
魔王「ぬうう……こしゃくな!」
魔王「まとめて片付けてやるッ!」
ズガガガァァァァァンッ!!!
魔王「どうだ、ひとたまりもあるまい!」
シュゥゥゥゥゥ…
勇者「ぐ……うう……」
勇者(村には……村娘が待ってるんだ……。絶対勝って……帰る!)ムクッ
勇者「だああああっ!」ダッ
魔王「な……なにっ!?」
勇者「三連斬ン!」
ズバババッ!
魔王「ちっ……! こんなチャチな技で――」
勇者「まだだ……鉄をも易々貫く、俺の突きを受けてみろ!」ギュルッ
ズドォッ!
魔王「ぐぐっ……!?」
魔王(いかん! 心臓に痛手を負った! なんという貫通力!)
勇者「トドメだッ!」
魔王「なんだ、この巨大な刀は……」
勇者(渾身の力を込めるッ!)
ズバァッ!
魔王「ぐおあっ……!」
魔王「このワシが……に、人間如きにィィィ……!」
グギャァァァァァ…
勇者「はぁ、はぁ、はぁ……勝った……!」
―おわり―
最終話『凱旋』
―城―
国王「勇者よ、入るがよい」
勇者「はい」
国王「よくぞ魔王を倒してくれた」
勇者「ありがとうございます」
国王「生き残った勇者のうち、凱旋に来られる者はおぬしのみか」
勇者「ええ、皆まだ病院におります」
国王「おぬしは確か……火炎竜を屠った勇者であったな」
勇者「その通りです」
国王「このたびの作戦、まさしく賭けであった」
国王「選りすぐって任命した100人の勇者を、世界各地に向かわせ……魔物や魔族の脅威を同時に絶つ」
国王「その後、生き残った勇者は全て、魔王城に向かうという……」
勇者「100人のうち、魔王城までたどり着けたのは74人」
勇者「そして最終的に生き残れたのは……わずか9人でした」
勇者「特に最後の戦いは熾烈で、雷神剣を操る勇者や氷烈斬を使う勇者といった主力勇者がいきなり殺され」
勇者「さらに魔王の一撃でもはや全滅かと思われた時、ある村出身の勇者が反撃の糸口を作ってくれ……」
勇者「刺突を得意とする勇者と私とで、どうにか魔王を打ち倒すことができました」
勇者「死んでいった勇者たちの犠牲がなければ、この勝利はなかったでしょう……」
国王「うむ……そうだな」
国王「100人の勇者のうち、中には町で豪遊し、泥酔した挙げ句事故死したという不届き者もおったというが」
国王「生き残った勇者はもちろん、この世を去った勇者に対しても多大な名誉と恩賞を与えると約束しよう」
勇者「陛下にそうおっしゃっていただければ、皆報われるでしょう」
国王「では改めて……このたびの戦い、本当によくやってくれた。ありがとう、勇者」
国王「いや……勇者達よ」
勇者「ありがたき幸せ……」
……
―村―
勇者「……ただいま」
村娘「お帰りっ!」タタタッ
ギュッ…
村娘「心配したよぉ! 生き残れた勇者は10人もいなかったって聞いたから……!」
勇者「ハハ、だからいったろ? お前を置いて死なないって」
勇者「俺の三連斬だって、ちょっとは役に立ったんだから!」
村娘「うん……うん、本当によかったよぉ……」
勇者「だけど……死んでいった勇者も大勢いる」
勇者「だから俺はその人たちの分まで精一杯生きようと思う」
村娘「そうだね……」
勇者「村娘……結婚しよう。俺はお前と二人で生きていきたい……」
村娘「……!」
村娘「うん……私もあんたと二人で生きていきたい!」
勇者「ありがとう……」
―おわり―
53 : 以下、5... - 2021/09/23(木) 19:41:53.672 M4Jc7oIAr 30/31乙
最初なんだこれと思ったが沢山いたんだな勇者
58 : 以下、5... - 2021/09/23(木) 20:22:40.308 EdLjYAtS0 31/31大刀と剣の違いは伏線だったのね
一本取られたわ