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それは、毎日の日課の散歩をさせるために使い魔の犬を外に出した時の事だったわね
いつも通り犬はリードを嫌がって1人で…いや、犬だから1匹ね
とにかく何処かへと走っていっちゃったのよ
もちろん私は追いかけたわ
でも、追いついた時には手遅れだったの
元スレ
サターニャ「使い魔の犬が死んだわ」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1492235563/
犬は…車に轢かれて無残な姿へと変えていたわ
それを最初に見た時、私はこう思ったの
『リードをつけなかったんだし、1人で飛び出したんだから当たり前よね』
ってね
あ、また間違えた…1匹だったわね
……………
………
…
私の使い魔が亡くなったことを知った時、みんなはとても悲しそうな顔をしていたわ
私はそれがおかしくって、でもみんなの悲しむ顔は見たくないから励ますことにしたわ
「なんでそんなしょぼくれてんのよ、元気だしなさいよあんた達!」
私が元気いっぱいにそう言った時、みんな驚いた顔をしていたわ
何か変なこと言ったかしら?
「サターニャさんは悲しくないんですか?辛く、ないんですか…?」
なんで私が悲しくなったり辛くなるのよ?よくわからないわね…
「当たり前じゃない、私は大悪魔よ?」
私ほどの大悪魔になると使い魔の死も想定内なの
え?大悪魔なら死なないようにしろ?
無理よ、だってあいつが私の命令に逆らったんですもの
「サターニャさんは、強いんですね……」
涙ぐんだ顔でラフィエルはそう言ったわ
何故私が強いかどうかの話になるのかはわからないけど、褒められるのは嫌な気分じゃないわね
それにしてもラフィエルったら…
犬がたかが1匹亡くなっただけで泣くなんて大袈裟ね………
それとも私の偉大さに感動しているのかしら?
…なんてね、大悪魔はジョークもS級なの
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私の使い魔の葬式をすることになったわ
私はそこまでする必要は無いと思うんだけど、ラフィエルがこういうのはちゃんとした方がいいっていうの
これには珍しくガヴリールも賛同していたわ、意外ね
まぁラフィエルがお金を出してくれるらしいし、私はなにも反対する理由はないんだけどね
それに、使い魔のためにここまでしてくれるなんて、主として誇らしいわ!
でも私の使い魔にここまでお金を出す余裕があるなら、私にメロンパンを買ってくれたっていいんじゃないかしら
そんなことを口に出した時
「サターニャさん…そういった冗談は控えてください」
なんて怒られちゃったわ
冗談で言ったつもりはなかったんだけど……
「まぁあんまり気にしないでやってくれ」
「あいつもあの犬とは親しかったからな、思うところがあるんだろ」
なるほど、そういうことだったのね
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やっと葬式が終わった、とても退屈な時間だったわ
ガヴリールとヴィネットは涙目だし、ラフィエルなんて泣いてるじゃない
何がそんなに悲しいのかしら?
それとも葬式に感動した?…ないわね
でもみんなのこういった顔を見る機会はなかなか無いかも
…あいつの泣いてる姿が見れただけでも葬式はしたかいがあったわね
「…やっぱり強いんですね、サターニャさんは」
さっきも言われたけどなんのことかしら
…わからないから聞いてみることにしたわ
「なにがよ」
「いえ、なんでもありません」
そう言ってラフィエルは微笑んだわ
「ちょっと、どういうことよ!」
「サターニャさんは大悪魔ってことですよ!」
わ、わけがわからない………!
ラフィエルの言いたいことがわからないからガヴリールに聞くことにしたわ
あいつは天使としてはダメダメなやつだけど、ライバルとしては認めているの
「ラフィエルは何を言いたかったのかしら?」
「うーん、わからなくていいんじゃないか?」
「知ってるなら教えなさいよ!」
「お前はずっとそのままでいいってことだよ」
更にわけがわからなくなったわ、聞くんじゃなかった
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ガヴリールとラフィエルが帰った後、私はヴィネットを引き止めたわ
最後にヴィネットに聞いてみることにしたってわけ
「ラフィエルが私のこと強いって言うんだけど、どういうことなのかしら?」
「うーん、多分だけど…」
「サターニャは犬を飼ってたわけだし、一番悲しい立場にいるわけじゃない?」
「そんなサターニャが悲しんだ素振りをみんなの前で見せなかったから、ラフィはサターニャのことを強いって言ったんじゃないかしら…?」
「そうなのね……」
あれ、でも私は『悲しい』だなんて少しも思ってないわよ?
でもみんなは悲しんでいたわ
それにヴィネットの言い方だと私が一番悲しくないとおかしいんじゃないかしら…
おかしい
お か し い
私が…おかしい………?
「…よく、わからないわ」
「…サターニャらしいわね」
「ねぇ、ヴィネット…私が悲しくないとおかしいのかしら………?」
「え? うーん、どうなのかしら……」
…あれ?
「ガヴリールとラフィエルはすごく悲しんでいたわ、でも私にはこれがよくわからないの」
「ヴィネットは、どう思う?」
「うーん、ガヴ達の反応が普通なんじゃないかしら…?」
なにか違和感があるわね…
「……質問を変えるわ、『ヴィネットはどう思った?』」
「うーん………」
「………笑わない?」
「笑わないわ、これは真剣な質問なの」
「そう、そうよね…じゃあ言うわ」
「正直、何も思わなかったの」
「…え?」
「で、でもほら!ガヴとラフィは凄く悲しんでいたでしょ?だから悲しむのが普通なのかなーって…」
「…ぷふっ」
「あー!笑わないって言ったのに!」
「ご、ごめんなさいヴィネット…でも、おかしくて………ぷくくっ」
私は吹き出してしまったわ
なんとも真面目なヴィネットらしいというかなんというか…
「もー!そういうサターニャはどうなのよ!」
「実は内心すごく悲しかったりするんじゃない?」
「そんなわけないじゃない、使い魔が1匹死んだどころでなんになるって言うのよ」
「それもそうよね…」
「全く…ヴィネットは周りに流されすぎよ……」
「あはは…涙ぐんで損しちゃった」
気楽な声でヴィネットはそう言ったわ
なーんだ…
私がおかしいわけじゃなかったのね
おわり
23 : 以下、\... - 2017/04/15 15:01:00.102 XC7JIzWv0 19/19即興で書いたのでおかしな点は見逃してくださいごめんなさい
悪魔だしどこかズレた部分があってもいいんじゃないかなって思ったの