1 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 21:47:36.87 AHe6uqS10 1/182

ご無沙汰していました。古畑任三郎です。

えー、突然ですが皆さん。自分の学生のころを思い出してみてください。

部活動に打ち込み、屋上で授業をさぼり、テスト前には慌てふためき…

そして…、恋愛に燃える。

だいたいそんな学生時代を送ってきたのではないでしょうか。

もちろん『そうではない』という人もいるでしょうが…んっふっふ。

それはともかく、学生時代には良くも悪くもたくさんの思い出が詰まっているものです。

私の学生時代はというと…んー…。


元スレ
古畑「放課後ティータイム…?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1347972456/

2 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 21:48:42.97 AHe6uqS10 2/182

スレ立ては初めてなので、いろいろと至らないことがあるかもしれません。
「今さらけいおん?」という声もあるかもしれませんが、わかるアニメがけいおんしかなかったのです。

時期的には17話「部室がない!」の直後から20話「またまた学園祭!」までの期間の出来事をベースにして書いているので、その辺りの話を一度見直してから読んだ方が楽しめるかもしれません。

では。

3 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 21:49:27.59 AHe6uqS10 3/182

~桜ヶ丘高校・音楽準備室(軽音楽部部室)~

「じゃあみんな、これが今んとこの大まかな計画ってことで。わかったか?」

「……」コクリ

「…唯?」

「えっとー…あはは、ごめんりっちゃーん、よくわかんなかったからもう一回言ってよぉ…」

「お、おいおい…」

「お姉ちゃんっ、帰ってから私が説明してあげるから…」

「ううう…ごめんね~憂ぃ~」

「あらあら」

「やれやれ…先が思いやられるな」

「とにかくだ…いいか、みんな。このことは絶対梓には漏らs」

ガチャッ

「こんにちはーっ」

「!!」

4 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 21:50:06.24 AHe6uqS10 4/182

「すみません、掃除当番で遅れちゃ…ってあれ?憂?」

「どうしてここにいるの…?」

「ああああのねあずにゃん、これは…」

「お、お姉ちゃんがピック忘れちゃって!それで届けに来たら、お茶に誘われちゃったんだ~」

「そ、そうそう!いつも迷惑かけてごめんね~憂~」

「そうなんだ…」

「でもわざわざ届けに来るぐらいなら、私に預けてくれればよかったのに」

「あーそれは…つい預けるの忘れちゃってて…あはは」

6 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 21:50:48.43 AHe6uqS10 5/182

「あっもうこんな時間、そろそろおいとましますね!紅茶ご馳走様でした!」

「気にしないで、いつでも飲みに来てね~」

「またな~」

「じゃあまた、憂ちゃん」

「はい!じゃあね、お姉ちゃん」

「ばいば~い憂~」

「梓ちゃんもまた明日」

「う、うん。また明日」

ガチャッバタン

8 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 21:51:16.73 AHe6uqS10 6/182

「……」テクテクテク…ギシッ

「…で、先輩方」

「いったい何の話をされてたんですか?」

「ギクッ」

「教えてください」

「あ…梓ちゃん、お茶いらない?」

「あ、いただきます。で、律先輩。いったい何の話をされてたんですか?」

「あーっと、それはぁ…」

「えーっとだな…」

「……」ジトッ

「…………」

9 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 21:51:52.30 AHe6uqS10 7/182

「……ぷぷっ」

「?どうしたの、唯ちゃん」

「…ぷくくくくっ」

「ゆ、唯?」

「あははははっ!ごめーん、わたしもう限界!」

「ど、どうして笑ってるんですか?」

「ねぇねぇりっちゃーん、もうネタばらししようよ~」

「おっ、おい唯!?」

「内緒話してるふりしてただけだってさぁ~」

「へっ?」

10 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 21:52:24.41 AHe6uqS10 8/182

「えっ?あ、あ~…ば、バレちゃったぁ?」

「…もう唯ちゃん、バラすの早すぎよぉ?」

「えへへ、ごめんごめん」

「はぁ…やっぱり唯にこういうのは無理だったな」

「なんだ…そうだったんですか…」

「ま、まあそんなことだろうと思ってましたけど」

「あれあれ~?の割にはちょっと不安そうな顔してたぞ~?」

「うっ…、き、気のせいです!」

11 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 21:52:53.15 AHe6uqS10 9/182

「あ、練習!練習しないと!学祭近いんじゃないですか!」

「え~、久しぶりの部室なんだよ、あずにゃん」

「せっかく工事が終わって部室に戻ってこれたんだしさ~、もうちょいゆっくりしようぜ~」

「だめですよ!部長が何言ってるんですか!」

「梓ちゃん…せっかくお茶淹れたのに、いらないの…?」

「あ…」

「い、いえ、そんなことは…」

「ケーキもあるのよ♪」カチャ…

「じゃあ、梓がお茶飲み終わってから、練習しようか」

「さんせ~い!」

「うう…」

12 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 21:53:28.06 AHe6uqS10 10/182

帰り道!

「じゃあみんな、また明日ね~」

「みなさん、お気をつけて」

「おう!じゃあな~」

「また明日」

「学校で会いましょう~」

スタスタ…

13 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 21:54:09.39 AHe6uqS10 11/182

「さて…」

「今日は唯の機転のおかげで助かったな~」

「ほんと、唯ちゃんのアドリブには驚いたわぁ」

「でも何度も通用する手じゃないだろ。今度からもっと気をつけないと」

「へいへい、わかってるって」

「それにしても、梓ちゃん…」

「私たちの前だと、全然いつも通りにしか見えないね…」

「そう振る舞ってるんだろ。私たちに心配かけないように…」

「早く、助けてやらないとな」

「ちきしょー…許せねぇよ」

14 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 21:54:48.96 AHe6uqS10 12/182

よくじつ!

「立花さん、秋山さん、松本さん、秋山さん、秋山さん…」

「というわけで、3年2組の学園祭の出し物、ロミオとジュリエットのロミオ役は、秋山澪さんに決定しました」

一同「キャーキャー」

「あわわ…」プシュー…

「よかったなぁ澪~」

「田井中さん、ジュリエット役、お願いね」

「い、異議あり~!」

「でも立候補も推薦もいなかったし、何よりみんなの投票で決まったでしょう?」

「あぅ…」

16 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 21:55:24.37 AHe6uqS10 13/182

「じゃ、特に異論もないということで、他の役割についても決めていきたいと思います」

「まず、衣装ですが…」

さわ子「はい!立候補します!」

「え?で、でも、先生にそんなこと…」

さわ子「大丈夫、悪いようにはしないから…」

18 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 21:58:39.24 AHe6uqS10 14/182

休み時間!

「どうする…?」

「うーん…バンドの練習に劇の練習も入ってくるとなると…動きにくくなるな」

「大丈夫よ。私がもう一度計画を練り直してくるわ」

「え、でもムギちゃん、劇の脚本も書いてるんじゃ…」

「いいのよ、脚本はほとんど出来上がってるし、何より…」

「何より?」

「私、一度こういう計画立ててみるのが夢だったの~♪」

「……」

「とにかく、放課後はあたしたち教室行くふりしてちょっと話し合うからさ」

「唯は部室で梓のこと見張っといて」

「了解ですりっちゃん隊員!」

19 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 21:59:12.77 AHe6uqS10 15/182

ほうかご!

~軽音楽部部室~

「へぇ、じゃあクラスで劇やるんですね」

「そうなの~」

「それで澪先輩はあんなに…」

「…私…トンちゃんになりたい…」

「……」

「それにしても、律先輩がジュリエットだなんて…」

「…ぷっ」

20 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 21:59:40.56 AHe6uqS10 16/182

「あ~笑ったな!?中野~っ!」

「ははっ、すみません、あはは…ぷっ」

「まだ笑うか~っ!」

「すみませ~ん!」

「あれ?じゃあ唯先輩は…」

「木!Gだよ!」

「A、B、C、D、E、F…木ってそんなに必要なんですか」

「むぅ…じっとしてないといけないなんて、なんて難しい役!」

「はは…」

21 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:00:08.65 AHe6uqS10 17/182

ガチャッ

「じゃあ私、セリフのチェックがあるから教室行ってるね」

「あぁ待って、ほーら澪、行くぞ~」

「うあぁ、やだ、やだ~!!」

ズルズル…バタン

「……」

「唯先輩は行かなくていいんですか」

「じっとしている練習してなさいって、和ちゃんが」

「はぁ…」

22 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:00:41.05 AHe6uqS10 18/182

~空き教室~

「お待たせしちゃってすみません。喫茶店の準備でなかなか抜けられなくて…」

「いや、気にしなくても大丈夫だよ」

「憂ちゃん、さっそくだけど、みんなの役割についてちょっと話し合っていたの」

「それでね、まだ大まかにしか決まっていないんだけど」

「憂ちゃんには唯ちゃんのふりをしてもらって、できるだけ人目に付くように梓ちゃんに話しかけてほしいの」

「その間にあたしらが…やるからさ」

「えっと…あの、お姉ちゃんと入れ替わるぐらいなら私が…」

23 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:01:10.54 AHe6uqS10 19/182

「いや、これはけいおん部の問題だ。憂ちゃんの気持ちもわかるけどさ、これは先輩の私たちで解決したいんだよ」

「それに…」

「?」

「万一の時は、唯より憂ちゃんの方が機転利きそうだしな」

「あ~…」

「とりあえず、あとのことは私が家で考えてくるね」

「ああ、頼む」

「悪いな、ムギ」

24 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:01:41.75 AHe6uqS10 20/182

~2週間後~

文化祭1日目

7時30分頃:3年2組教室

(時間になった…!まずはわたしが教室から音もなく出るっ)

ソロ~…トテテテ…

(…!唯が出て行ったな。いよいよか…)

「今日は劇の本番よ!気合い入れていきましょう!」

一同「おーっ!」

「ブツブツ…ブツブツ…」

「あら…?」

25 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:02:07.16 AHe6uqS10 21/182

「ブツブツ……」

「どうしたの?澪」

「…………」

「…澪?」

「あぁあああああ~!やっぱりダメだぁ~!」

一同「ざわざわ…」「どうしたんだろ秋山さん…」

「ちょっと澪、落ち着いて!」

「やっぱりダメだよ和~、私にロミオなんて無理だよ~」

「ちょっと、いまさら何言って…」

ガチャッ

26 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:02:35.98 AHe6uqS10 22/182

「おぉ~!」

「ロミオ、あなたはなぜロミオなのぉ?」

「律~」ヒシッ

「わっちょっ…と、なっなんだよ澪!」

「ちょうどよかったわ、律」

「実は、澪がまたロミオはできないって言い出して…」

「は?また?今日本番なのに?」

「りつぅ~りつぅ~…」

「ったくしょうがないな…。なぁ和、どっか空いてる教室ない?」

「今なら生徒会室が空いてると思うけど…何するつもり?」

27 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:03:02.90 AHe6uqS10 23/182

「ちょっと澪を説得してみるよ」

「でも、わざわざ移動しなくてもいいんじゃない?」

「そうかもしれないけど…」

「ここじゃ澪がみんなの目を気にしちゃうかもしれないからさ。人気のないとこがいいんだ」

「そう…じゃあ任せるわ」

「鍵空いてるかな?」

「鍵は職員室にあるわ。一般の生徒には貸してくれないと思うから、借りに言ってくるわね」

「悪いな和、生徒会室の前で待っとくよ」

28 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:03:31.55 AHe6uqS10 24/182

「ほら、秋山さーん、行きますよ~」

「ひっ、やだ、離せ、離せ~!」

ズルズル…

一同「……」

「ええと…あっ、エリちゃん」

エリ「ん?どうしたのムギ?」

「唯ちゃん知らない?」

エリ「あーそういえばさっき出ていくの見たなぁ。なんか用事?」

29 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:03:58.95 AHe6uqS10 25/182

「うん、木Gの配置のことで少し話があってね」

エリ「へぇ…そここだわるんだね…」

「うん、もちろん♪」

エリ(やっぱりムギって不思議な子だなぁ…)

「じゃあちょっと探してくるから、見かけたら私が探してたって伝えておいてね」

エリ「うん、オッケー」

「ありがとう、エリちゃん」

30 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:04:35.43 AHe6uqS10 26/182

7時30分:1階階段下の掃除用具入れ

ゴソゴソ…

「お茶はとりあえず掃除ロッカーの中に隠しておけばいいかな…」

「うぅ…ちょっと汚いけど仕方ないよね…」

「保冷剤も一緒に入れたし、領収書ももらっておいたし、これでよし、と」

31 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:05:07.30 AHe6uqS10 27/182

~2年1組教室~

「あれ、おっかしいなー…」

「どうしたの?」

「お茶がないんだ、梓と買いに行ったはずなのに…」

「忘れてたんじゃないの?」

「うーん、そんなはずないんだけどなぁ…」

「私買いに行こうか?」

「え?いやでもそんな…」

「だって、ないと困るでしょ?大丈夫だよ、すぐ戻ってくるね!」

「あっ憂!…行っちゃった…」

32 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:05:42.46 AHe6uqS10 28/182

タタタ…

「あ、モブちゃん!」

モブ「ああ、憂ちゃん」

「梓ちゃん見てない?」

モブ「あー見てないなー。どうしたの?」

「ちょっと話があったんだけど…。見かけたら声かけておいてくれないかな?」

モブ「いいよ、わかった」

「ありがとね、モブちゃん」

33 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:06:10.47 AHe6uqS10 29/182

7時34分:生徒会室前

「お待たせ」

「おっ和」

「これ、鍵ね。終わったら私に返して」

「わかった、サンキュー和」

「ええ」

「さて…」

「ひっ」

「入るぞ、澪」

「いっ…ゃ……はい…」

「じゃ、またあとで」

「頼むわね、律」

34 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:06:40.96 AHe6uqS10 30/182

7時37分:2階トイレ

「えっと、制服のタイを青に変えて、髪留めをつけて、と…」

「じゃーん♪お姉ちゃんの完成!」

「あとは梓ちゃんに会って、3年生の教室に行って…」

35 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:07:16.62 AHe6uqS10 31/182

7時41分:生徒会室前

曜子「……」スタスタ…

『~~~~!』

『~~~~!』

曜子「あら…?」

『…だーから、一度約束したじゃないか!』

『な、なんのことかなー』

『とぼけるなっ!この前ロミオ役頑張ってみるって約束したばっかだろ!あの時の約束は、嘘だったのかぁ!』

『聞こえない聞こえない聞こえない…』

曜子「秋山さんかわいそう…だけどロ澪も見たい…」

~生徒会室内~

ラジカセ『大体お前は…ギャーギャー…』

36 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:07:54.95 AHe6uqS10 32/182

同時刻:音楽準備室

ガチャッ

「わりぃ、待った?」

「あ、りっちゃん澪ちゃん、急がないと!」

「人通りがなかなか途切れなくてさ…ごめんな」

「まあまあ、まだ余裕はあるから」

「じゃあ…みんな、準備はいいな」

「……」コクリ

「今から被服室に行く」

「さわ子先生自身が被服室に近づかないように言っていたから、あの辺りには誰もいないはずよ」

「ああ、そこは運が良かった」

37 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:08:28.19 AHe6uqS10 33/182

「でも油断しないようにな、あたしたちの姿は誰にも見られちゃいけない」

「ああ」

「うん」

「了解ですりっちゃん隊長!」

「共に作戦を成功させようではないか、唯隊員!」

「ふざけてる場合じゃないだろ!」

「わあってるって、ちょっと気合い入れただけ」

「あ、ロープは…」

「唯ちゃん、私が持ってるわ」

「おおっ」

「よし、じゃ…行くぞ」

カチャッ…

38 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:09:00.54 AHe6uqS10 34/182

7時43分:1階廊下

(あ、梓ちゃんだ…)

そろ~っ…

「あーずにゃん♪」ダキッ

「わっ、ゆ、唯先…輩?」

「ん?どうしたの?あずにゃん」

「い、いえ…」

「あ~ん、和服衣装のあずにゃんもかわいい~♪」スリスリ

「ちょっともう、やめてくださいよぉ…」

周りの生徒「……」ジロジロ

39 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:10:04.30 AHe6uqS10 35/182

(はっ…みんなに見られてる!)

「って、そういえば憂が私のこと探してたらしいんですけど…、見てませんか?」

「ほぇ、憂?うーん、見てないなぁ」

「そうですか…ところで、唯先輩はここでなにしてるんですか?」

「ぶらぶら!」ピース!

「そんな自信たっぷりに言わないでください」

「あずにゃんはなにしてるの?」

「わたしは、ちょっと…先輩の教室に行ったり…」

「え?なんで?」

40 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:10:41.09 AHe6uqS10 36/182

「いえ、ただ…憂を探すついでに、どんなことしてるのかなって…」

「先輩方がいなかったので、すぐ帰りましたけど」

「そっかぁ~。あ、忙しいのにごめんねあずにゃん」

「いえ、そんな。先輩も木の役頑張ってくださいね」

「あー、木Gだよあずにゃん!」

「あはは、すみません」

「じゃあね~!」

タタタ…

「ふう…うまくいった…かな?」

「あとはお姉ちゃんのクラスに行かなきゃ」

41 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:11:11.12 AHe6uqS10 37/182

7時46分:被服室前

「誰も見てないな…行くぞ」

ガラッ

さわ子「だれ!?」

「失礼しまーす」

「お邪魔しまーすさわちゃん」

さわ子「あ、あなたたち…」

「わーっ、かわいい衣装♪原始人みたーい」

「それかわいいっていうのか…?」

「なになに?『2年2組 衣装』…何か劇でもやるんだっけ?」

「あー、私外で見たよ。確か…」

さわ子「こら!…入ってきちゃダメって言ったでしょう?」

「えーなんで~?」

(澪…鍵)

(え?ああ…)

カチャッ…

42 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:11:48.00 AHe6uqS10 38/182

7時48分:3年2組教室

「やっほー」

エリ「あっ唯ー」

「なにエリちゃん?」

エリ「ムギがさっき唯のこと探してたけど…」

「あー今さっき会ったよ~、なんかねぇ、木の立ち位置のこととかいろいろ言われちゃった」

エリ「そっか、ならもういいんだね」

「うん、ありがとー…えっと…(ヤバい、名前がわからない…!)」

エリ「?」

三花「エリー、ちょっとこっち手伝ってー!」

エリ「あ、はーい!」

「……っ」ソーッ…

タタタッ…

43 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:12:22.31 AHe6uqS10 39/182

7時49分:被服室

さわ子「なんでって、唯ちゃん…劇のもライブのも、どんな衣装作ってるかは内緒なんだからね?」

「えーっ、ないしょって、それだけ?」

「へー…てっきり誰か生徒を連れ込んでるから入ってくるなって言ってるのかと思ったよ」

さわ子「え…?あなたたち、なに言って…」

「先生、私たち知ってるんです」

「先生が今まで、梓ちゃんに何をしてきたのかを」

さわ子「……っ!」

44 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:12:53.38 AHe6uqS10 40/182

「梓以外の生徒にも何かしたんじゃないんですか、先生」

さわ子「な、なにをふざけたことを…教室に戻りなさい!私は忙しいの!」

(背を向けた…ムギ)

(……)コクリ

バッ

さわ子「ぐあっ!あ、あなたたち…」

「押さえろ!」

ギリギリッ…

さわ子「かっ…はっ……」

ギリ…

さわ子「…かっ……」

さわ子「…………」

45 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:13:27.49 AHe6uqS10 41/182

「はぁ…はぁ…」

「ムギ…もういいよ」

「あ…うん」

ドサッ

「……」

「やっちゃったね、ついに…」

「…そうね」

「…ほら、ぼけっとしてる暇ないぞ、みんな急ご」

「あ…うん」

46 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:14:01.85 AHe6uqS10 42/182

「えっと…あの配管のとこに吊るすんだよね」

「そうよ。あ、りっちゃん、足持って。澪ちゃんは配管にロープを吊るして」

「わ、わかった…」

「澪ちゃん、ほい、椅子」

「ありがとう」

「よいしょ…っと、っとと…!うわぁ!」

ドテッ!

「な~にやってんだよ、澪!」

「ご、ごめん…」

47 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:14:29.47 AHe6uqS10 43/182

ガタッ…ギュッ

「ん、しょっと…、できたよ」

「じゃあ、私が死体を背負うわ」

「わたし、落とさないように支えるね」

「ロープ首にかけるよ。澪は椅子が動かないように抑えといて」

「うん」

ギシッ…ブラン

「できた…わね」

「さわちゃんオバケみたい…」

「オバケ…っていうかホトケになったんだけどな」

48 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:15:00.30 AHe6uqS10 44/182

「劇の衣装は…出来上がってるわね。これ私が持っていくね」

「おう、頼むムギ」

「…わたしたちのステージ衣装、まだ作ってなかったみたいだね。見当たらないよ」

「どうでもいいよ、どうせ着ないんだから」

「じゃ、早く戻ろっか。……ん?澪?」

「……」

「ボーっとすんな、行くぞ」

「えっ?あぁ…うん」

49 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:15:30.46 AHe6uqS10 45/182

7時53分:2年1組教室前

「ふう…」

「あ、梓ちゃん」

「憂…。おかえり、どこ行ってたの?」

「お茶がなくなってたらしいから、買いに行ってたんだ」

「そっか。あ、そういえばさっき、私に話があるって言ってたんでしょ?」

「え?」

「モブに聞いたんだけど…」

「えっと…あれ?ごめん、忘れちゃったや」

「ええ?」

「あはは…たぶん忘れてるぐらいだから大した話じゃなかったと思う」

「そっか…」

50 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:15:58.15 AHe6uqS10 46/182

「こら!いつまで油売ってんの?二人とも」

「あ、ごめん」

「そうだ、はいこれ。お茶と領収書」

「おっ、ご苦労さま」

「あれ…、憂、レシートは?」

「え?あ…あれ?どこだろう」

「ごめん…落としちゃったみたい…」

「ええっ?も~しょうがないなぁ…」

「ごめんね」

「なくしちゃったものは仕方ないよ。じゃ、憂は厨房の方お願い」

「わかった」

「梓は、こっちよろしく」

「任せて」

51 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:16:26.24 AHe6uqS10 47/182

8時3分:3年2組教室

「みんな…、ちゃんとやれよ?」

「律こそ」

「……」スタスタスタ…

「よっ和」

「あっ、律!どうだった…?」

「へへへ…あーきやーまさーん?」

「……」ソロッ…

「…ロミオ役…やっぱりがんばるよ…」

「…そう!」

「和、わがまま言ってごめんな」

「みんなも迷惑かけてごめん!私…精いっぱい頑張るよ!」

一同「よかった…」「秋山さん頑張って!」

52 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:17:19.02 AHe6uqS10 48/182

「無事に解決してよかったねぇ~」ノホホン

「あら…唯?」

「ほぇ?」

「そういえばどこ行ってたの?さっき一度戻ってきてたようだけど…」

「ああごめんね和ちゃん、なんとなくさわちゃんとこ行ったんだけど追い返されちゃってさぁ、戻ろうと思ったんだけど今度はムギちゃんやあずにゃんに会っちゃってぇ」

(ちょっと…唯?)

「それでね、いったん教室に戻ってきたんだけど、今度はトイレ行きたくなっちゃったから行ってきてたんだぁ」

(不自然に説明的すぎだろ!)

「まったくあなたって人は…本当に自由ね」

「いやいやそれほどでも~」

「いや、褒められてねぇから」

53 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:17:55.32 AHe6uqS10 49/182

「ちょっとごめんね~」

「お…ムギ」

「うんしょっと」ドサッ

「これ…劇の衣装?」

「うん、さっき様子を見に行ったらさわ子先生が渡してくれたの」

一同「わーっすごーいっ」「山中先生やるぅ」「キャーキャー」

「えっと、ムギ…先生は?」

「あぁ、それがね、徹夜で疲れたから仮眠をとるって。昼ごろ教室に来るって言ってたわ」

「そう、わかった」

(わ~い、大成功じゃん♪)

(うまくいった…よな?)

56 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:35:42.55 AHe6uqS10 50/182

9時半頃:桜ヶ丘高校門前

今泉「……う~ん…」ウロウロ

今泉「ねぇ」

巡査1「はい」

今泉「古畑さん、来た?」

巡査1「ええ、さっきお見えになりましたよ。そこに自転車が…」

今泉「あっほんとだ、いつの間に…。あ~どこ行っちゃったんだろうなぁ」

巡査1「現場にいらっしゃらないんですか?」

今泉「来てないから探してるんだよ!」

巡査2「古畑さん、そこのコンビニで何か買い物されてましたよ」

今泉「えぇ?コンビニ?」

57 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:36:18.65 AHe6uqS10 51/182

~桜高近くのコンビニ~

古畑「だぁから違うんだよこれは」

店長「どこが違うの」

古畑「いやどこって…あんなに説明したじゃないか」

店長「だってピクルス入れろって」

古畑「ピク…そっそれはいいんだよ」

今泉「あっいた!古畑さぁん!」

古畑「ちょっと待って。見てこれ見てこれ」

古畑「ピクルスこんな小っちゃいのが1枚しかないじゃないの」

古畑「ピクルスはね真ん中に1枚とそれを囲むように4枚計5枚花びらのように!どっから食べてもピクルスに当たるようにしてほしいんだよ」

古畑「これ当たらないよ、はい、作り直し」ポイッ

58 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:37:36.73 AHe6uqS10 52/182

店長「うまく裏に伝わってなかったみたいですね」

古畑「なに言って…あんたが作ってんじゃない」

店長「いや裏にもう一人いるんですよ」

古畑「どこにぃ」

店長「……」サササッ

古畑「いなっ……ほんとに調子いいオヤジだぁ…」

古畑「ん?」

今泉「……」ニヤニヤ

59 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:38:33.70 AHe6uqS10 53/182

古畑「うっとおしいなァ君は。どうしてこんなに近いんだい」

ペシッ

今泉「いたっ!いや、だって、久しぶりに古畑さんと仕事ができるんですよ?」

今泉「いやぁー、懐かしいなぁー」

古畑「きみ…アレ、なんだっけ…トーゴー…じゃない、ジリジリみたいな」

今泉「自律神経失調症ですかぁ」

古畑「そうそれ。もう治ったのアレ」

今泉「とっくに治りましたよぉ!リハビリ辛かったんだから…」ウッ…

古畑「あそぉ。それより朝飯まだたべてないのよ」

今泉「あ、僕もです。なんか買っちゃおうかなぁ」

古畑「じゃあピクルスバーガーおすすめだよ」

60 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:39:01.61 AHe6uqS10 54/182

古畑「ここのチェーン店はバーガー類けっこう行けんだよ、覚えといた方がいいよ」

今泉「そうなんですかぁ?いやでも、朝にバーガーはちょっと…あ、これにしようかな」

古畑「……」

古畑「いやぁそれにしても腹減った…あ、そういえばそっちの方どうなの」

今泉「はい…?」

古畑「現場の方」

今泉「あ、それが、えっと…」

古畑「なに」

今泉「外でウロウロしてたから、中の様子は、その…」デヘッ

古畑「わからないの」

今泉「はい」

ペチッ

今泉「いたっ!ちょっ、さっきからなんなんですかぁ!」

古畑「あ…、おじさ~ん、やっぱりあんたが作ってんじゃないかぁ」

今泉「……」

古畑「急いでよみんな待ってるんだから」

61 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:41:56.59 AHe6uqS10 55/182

ピッ…ピッ…

店長「…150円になります」ブスッ

古畑「どうも」ニッコリ

今泉「早く行きましょうよぉ」

古畑「まぁ待ちなさい」

古畑「あれ…、そういえばどうして君だけなんだ。西園寺君は?」

今泉「やっぱりアイツですか…」

古畑「なに、いないの?」

今泉「チビ太なら、現場の方にいますよ」

古畑「あ、そーなの。じゃあ案内してくれる」

62 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:42:57.07 AHe6uqS10 56/182

~桜高校舎内~

古畑「……」モグモグ

今泉「古畑さん、食べ歩きは行儀悪いですよぉ」

古畑「しかし外はえらく込み合ってたね。出店も出てたし今日何かあるの」モグモグ

今泉「この学校の学園祭だそうですよ。今日が1日目らしくて」

古畑「それはまた悪いタイミングで事件が起きたもんだね」

今泉「ほんとに、生徒がかわいそうですよぉ」

今泉「あ、そういえばさっき外で『マンモスの肉』っていう店が出てたんですよ。いやぁ、食べたかったなぁ」

今泉「すぐそこには『ヴァンパイア喫茶』って看板が出てたし、『峠の茶屋』っていうのもなかなか…」

63 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:43:22.75 AHe6uqS10 57/182

西園寺「あ、古畑さん。ご苦労様です」

古畑「本当にもう御苦労したよ…今日は普通なら休日なんだからさ」

古畑「えっと、椅子椅子…」

西園寺「椅子ならこちらに」

古畑「あぁありがとう」

西園寺「さっそく事件の説明を」

今泉「あー僕がやる僕がやる!」

西園寺「今泉さんが?大丈夫ですか?」

今泉「ねぇキミさぁ、馬鹿にしてるの?」

古畑「どっちでもいいから…早くはじめなさい」

64 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:44:08.70 AHe6uqS10 58/182

今泉「あ、はい、えぇと、亡くなったのは山中さわ子さん、この高校の音楽教師です」

今泉「ここの、被服室で首を吊っているところを発見されました。えっと、第一発見者は衣装を取りに来た2年生です。かわいそうですよねぇ」

今泉「あー、あそこのロープに配管を…じゃない、配管にロープをかけて、首を…。死因は窒息死だそうです」

古畑「続けて」

西園寺「同僚の教師の証言によると、山中さんは最近交際相手と別れたらしく、さらに初めて担任を受け持ったクラスが3年生ということで悩んでいたそうです」

西園寺「自殺の動機は十分ですね」

今泉「ねぇ、どうして僕の役割とってるの?」

65 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:47:40.15 AHe6uqS10 59/182

西園寺「古畑さん、いかがですか」

古畑「うーん…」

古畑「…自殺だねぇ間違いないねぇ…」

古畑「じゃあ今泉君、後は任せた」

今泉「ちょっ、なに言ってんですかぁ!」

古畑「金森先生の時みたいに君が指揮しなさい」

今泉「僕できませんよぉ!」

古畑「いいからほら、頑張りなさい。私はその辺でぶらぶらしてるから」

今泉「あ、ちょっと…」

今泉「…どうすればいいの」

西園寺「さぁ…」

66 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:49:20.64 AHe6uqS10 60/182

古畑「……」ウロウロ

古畑「西園寺君」

西園寺「はい」

古畑「この部屋奇抜な服や布切れがえらくたくさんあるけどさ」

古畑「メイド、原始人、ナース…、これは…?」

西園寺「バニーガールですね」

古畑「どうしてこんなものがたくさんあるの」

西園寺「山中さんの趣味だったようです」

67 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:50:29.08 AHe6uqS10 61/182

西園寺「山中さんはこういったものを作ることに意欲を燃やしていたそうで、よく作ってきた衣装を生徒に着せては楽しんでいたそうです」

西園寺「今回の学園祭で使われている衣装も、ほぼすべて山中さんの手作りだったとか」

古畑「え?ということはここにある衣装は全部一人で?へぇー」

西園寺「今日も昨夜からこもりっきりで、担任するクラスの劇衣装や他の学級の出店衣装を仕上げていたそうです」

西園寺「軽音楽部のライブ衣装以外はすべて仕上がっていたようですね」

古畑「軽音楽部?」

西園寺「山中さんが顧問を務めていた部活です」

西園寺「山中さんの奇抜な衣装を着せられるのは主にその部活だったとか」

古畑「ふーん…どうしてそこの衣装だけ作ってなかったんだろうね」

西園寺「さぁ…今日は時間がなかったのでは」

古畑「その部活の子達、まだいるの」

西園寺「全校生徒は校内に残ってもらってます。部員はたぶん部室か教室の方にいるんじゃないでしょうか」

古畑「じゃあとりあえず部室の場所を教えて」

68 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:50:55.54 AHe6uqS10 62/182

~軽音楽部部室~

(…なんか微妙な空気)

(本当はいろいろ相談したいんだけど…)

(梓がいるんだもんな)

(あずにゃんの前じゃ、なにも知らないふりしないといけないよね…)

「…なんだか実感がわかないな…」

「そうですね…」

「なんか、今にも『よっす』とか言って入ってきそうだよな」

「あはは、そうだね」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

(…会話が、続かない…)

69 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:54:32.46 AHe6uqS10 63/182

「…ねぇ、お茶にしない?」

「お茶にしよう、ね?」

「…そうだな、お茶にすっか(ナイスだ、ムギ!)」

「悪いな、ムギ(うう…助かった)」

「うん、今淹れるね」ガタッ

コポポポ…

「はい、どうぞ」

カチャ…

「ありがとう、ムギちゃん」

「あざっす」

「サンキュー」

71 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 22:55:46.79 AHe6uqS10 64/182

「……」

「…ねぇ、あずにゃん」

「は、はい」

「えっと、その…」

「元気、出してね」

「えっ?ぁ…はぁ…」

「そうだぞ、梓」

「落ち込むんじゃないぞ」

「ファイトよ、梓ちゃん。はい、お茶」

「あ、どうもです…。み、みなさん、いったいどうされたんですか?」

ガチャッ…キィィ…

「あら?」

「え?」

73 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:00:11.09 AHe6uqS10 65/182

古畑「あのぉー…軽音楽部の部室というのはこちらでよろしいんでしょうか」

「そうですけど…」

「おじさん、誰」

(真っ黒い人…)

古畑「あ、申し遅れました。わたくし古畑と申します。今回の事件を担当することになった刑事でして…」

「け、刑事さん!?」

古畑「はい」

(もう来ちゃったのか…予想よりずっと早い)

(みんな、大丈夫だよな…?)

74 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:00:39.80 AHe6uqS10 66/182

「…っ!」ワクワク

「おい…ムギ?」ボソッ

「なにりっちゃん?」

「…今ワクワクしてんだろ」

「うん♪だって二時間ドラマみたいに取り調べ受けるなんて考えたら、ワクワクしない?」

「あのなぁ…」

(一応あたしら本物の犯罪者なんだぞ…)

75 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:01:48.77 AHe6uqS10 67/182

古畑「あのぉ…よろしいですか」

「あっ!?すみません!」

「どうぞどうぞ」

スッ

古畑「あぁー、すみません」

ギシッ

(さわちゃんの席…)

「あの…刑事さん?」

古畑「あ、古畑で結構です」

「え…と、古畑さん、お茶、いりませんか?」

古畑「はい?いえいえいえそんなお構いなく」

「遠慮しなくていいんですよ」

「ここに来たらお茶飲んでかないといけないんだよ、古畑さん」

「いつ決まったんだそのルール」

古畑「そうなんですか?ならいただきましょうか」

「今淹れますね」

古畑「お願いします」

76 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:02:26.00 AHe6uqS10 68/182

古畑「あー…そういえば皆さんのお名前を伺ってもよろしいでしょうか」

「あ、はい、えっと、田井中律です。一応部長やってまぁす」

「次わたし!平沢唯で~す!」

「好きなものはギー太と憂とあずにゃんと甘いものでぇ、特技は…」

「おい唯、余計なことまで言うなって!あ…えと、秋山澪です…」

「えーと…中野梓といいます。みなさんの一年後輩になります」

「あだ名はあずにゃんだよぉ」

「ゆ、唯先輩!?変なことまで言わないでくださいっ!」

「……」コポポポ…

「おーい、ムギ」

「あ、ごめんなさい。琴吹紬です。お茶汲み係です」

「おい」

77 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:03:55.39 AHe6uqS10 69/182

古畑「しかしよくわからないのですが…みなさん軽音楽部でいらっしゃる」

「は、はい」

古畑「軽音楽とはいったいどのようなものなんですか?」

「ああ、それは…」

「軽い音楽だよ~」

古畑「は…?」

「そうそう、カスタネットとかで演奏するんだ」

「しょーもない嘘つくなっ」

ゴチン!

「なんであたしだけ…」

古畑「はっはっは…、で、実際はどうなんです」

「えっと、ギターやドラムを使って演奏するんです。あそこの…」

古畑「ああ、あれですか。へぇ~立派なものだ」

78 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:04:36.75 AHe6uqS10 70/182

古畑「つまりみなさん、バンドを組んでいらっしゃると」

「あ~、放課後ティータイムだよ!」

古畑「放課後ティータイム…?」

「私たちのバンド名なんです」

古畑「ああ、なるほど」

「で…あの、古畑さん。いったい何をしにここに?」

古畑「あ~忘れてましたぁ…」

「どうぞ~」カチャッ

古畑「あ、すみませんいただきます。実はですね…」ズズ…

古畑「へぇーおいしいお茶だぁ」

「古畑さん?」

古畑「あぁすみません。実はですね、亡くなられた山中先生のことでいくつか質問が」

79 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:05:19.42 AHe6uqS10 71/182

古畑「山中先生はこちらの部活の顧問をされていたそうですね」

「はい」

古畑「あなた方が入学する前からずっと?」

「いえ、私たちが無理言って顧問になってもらったんです」

「実は私たちが入学したとき、けいおん部は廃部寸前で…」

古畑「なるほど、顧問がいなかったわけですね。しかし山中先生はすでに吹奏楽部の顧問もされていたのでは…」

「先生はけいおん部のOBだったんだよ」

古畑「あぁそれで…」

80 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:06:03.97 AHe6uqS10 72/182

古畑「聞くところによると、山中先生は衣装づくりに大変熱心だったそうで、この部活のライブ衣装も毎回先生の手作りだったとか」

「うん、毎回作ってきてたよ~」

「ちょっと奇抜すぎて困ってたんですけど…」

古畑「私も見ました。あれは確かに…あー…んっふっふ…」

古畑「そういえば…えー、琴吹さんでしたか」

「はい」

古畑「今のところ集まっている証言を総合したところ、どうもあなたが最後に山中さんの姿を見たということになるんですが」

「そうなんですか?」

古畑「先生とはどんな会話を」

「確か…衣装を取りに行ったら、『徹夜で疲れたから、仮眠をとる』というようなことを言っていました」

81 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:09:23.16 AHe6uqS10 73/182

古畑「はい…その時何か変わった様子はありませんでしたか」

「うーん…言われてみると、疲れた顔をしていたかもしれません。いつもより元気がないかな、って。徹夜明けと言ってたのであまり気には留めなかったんですけど」

古畑「んー、そうですか」

古畑「…ひっかかるなぁ」

「え…?」

古畑「琴吹さん」

「は、はい」

古畑「山中先生は衣装を徹夜で仕上げていたとおっしゃったんですね」

「はい…そうです」

古畑「徹夜で」

「…はい」

古畑「そうですか…んー…」

82 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:14:03.90 AHe6uqS10 74/182

「あの…何が引っ掛かるんですか?」

古畑「いえ、たいしたことではないんですけどね」

古畑「山中先生はなぜあなた方のライブの衣装は仕上げていなかったんでしょうか」

「へっ?」

古畑「先ほどの話によれば、山中先生は軽音楽部のOBで、今の3年生が1年生の頃から顧問として面倒を見られていたそうですね。その分思い入れも強かったようで…」

古畑「自殺の直前にクラスの出し物の衣装をすべて作り上げるぐらいなら、なぜあなた方のライブの衣装まで作ってしまわなかったのでしょうか」

「…!」

「自殺する前で落ち込んでて、作る気力がなかった、とか…?」

古畑「徹夜で劇の衣装を仕上げる気力はあったのに、ですか?」

「じゃあ…実際そこまで思い入れがなかったんじゃないんですか」

古畑「それもどうでしょう、毎回ライブの衣装を自分で作ってくるほどの入れ込みようだったというのに」

古畑「更に山中先生は今回、他の学年の出店の衣装まで担当していたそうです、ずいぶん前から取り掛かって。こうなるとやはりあなた方の衣装だけ作っていなかったのは不自然でしょう」

「…っ」

83 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:16:08.24 AHe6uqS10 75/182

古畑「んー、まぁもちろんあなた方のおっしゃった理由で作らなかったのかもしれません、それか…」

「それか…?」

古畑「今夜作ろうと思って作れなかった、か…」

「!?」

「ま、待ってください!それじゃまさか…」

古畑「殺人…の可能性もあるということです」

「…そんな」

「はは…まさか」

古畑「んっふっふ…刑事というのは疑り深い生き物でして…、まぁあくまで自殺以外の可能性も視野に入れて捜査しなくてはならないということです」

「…………」

古畑「では貴重なお時間を邪魔してしまってすみません。あ、紅茶ご馳走様でした」

「いえ…またいらしてください」

古畑「ありがとうございます。では失礼します」

ガチャ…

古畑「あ、みなさん。お気を落とされないように…」

バタン


86 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:19:53.57 AHe6uqS10 76/182

古畑「えーと…職員室ってどこだったっけな、えぇと…、あ、平沢さーん」

「え?」

古畑「いやぁよかった、職員室の場所がわからなくて…」

「えっと…あの…」

古畑「アハハ、学校というのはどうも苦手でして…」

「すみません…どなたですか?」

古畑「えっ」

古畑「あっ…いや…ついさっきお会いしましたよね?」

「ええっ?」

87 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:20:26.52 AHe6uqS10 77/182

「あっ、憂~」

「お姉ちゃん」

古畑「お姉ちゃん?」

「古畑さんも。どうしたんですか?」

古畑「あ、いや、職員室の場所を訊こうと…、しかし、あの、お二人は、双子…?」

「違いますよぉ、憂は1つ下の妹です」

「ねぇお姉ちゃん、この人…」

「あ、紹介するね。この人古畑さんって言って、刑事さんなんだって」

古畑「古畑ですどうも。今回の事件を担当することになりまして…」

「ど…どうも、平沢憂です」

92 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:23:43.46 AHe6uqS10 78/182

「刑事さん…なんですか」

古畑「はい。いやぁしかし驚きましたぁ。二人ともそっくりなんですね」

「えへへ…よく言われるんですよぉ」

古畑「んっふっふ…あぁそうだ、職員室に行かないと。場所を伺ってもよろしいですか」

「あーえぇと、職員室はまずあそこを降りて、次に右に…いや左に曲がって…あれ?どっちだっけ…」

「お、お姉ちゃん!私が説明するから大丈夫だよ」

「ありがとう、憂~」

「まずそこの階段を降りて、廊下に出たら右に曲がるんです。しばらく歩いたら…」

94 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:26:56.91 AHe6uqS10 79/182

「というか…よかったら案内しましょうか?」

「あ!そうだね!その方が早いよ~」

古畑「え!いいんですか?」

「いいんですよぉ今日はもう何もないんだし」

「じゃあ行きましょう?」

テクテクテク…


95 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:27:41.98 AHe6uqS10 80/182

古畑「しかし、凝った外見のお店が多いですね、ここの学園祭は。校門から歩いてくるまでいろいろ拝見しましたが驚きました」

「あはは、そうですか?」

「いっぱいあるでしょ~?あ、古畑さんあれ見た? 2年生の『マンモスの肉』って出店!あそこの衣装ってかわいいんだよ~」

「え?あそこって衣装あるの?」

「憂見てないの?もったいないなぁ」

「うーん…ヴァンパイア喫茶の衣装なんかはかわいかったけど…」

古畑「んっふっふ…時間があればぜひ拝見したいものです」

96 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:28:41.34 AHe6uqS10 81/182

「ねぇ古畑さん、そういえば職員室に何しに行くの?」

古畑「えー、まぁいろいろと…」

「あの…やっぱり文化祭は、中止なんですか…?」

古畑「あー、ちょうどそのことも先生方に相談しようと思っていたんですが」

古畑「文化祭の方は一応、捜査に支障のない範囲で続けていただいても構わないと思っています」

「ほ、本当!?」

古畑「んーさすがに今日の分は後日に回してもらうことになりますが…」

「あ、ありがとう古畑さん!」

「やったねお姉ちゃん!」

97 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:30:18.81 AHe6uqS10 82/182

古畑「えー、平沢さんは明日何かあるんですか?」

「あ、唯でいいですよ~。憂も平沢だからわかりにくいだろうし」

「私も憂でいいです」

古畑「あーでは、唯さんは明日何か…」

「ふっふっふ、わたしたちはねぇ、明日ライブやるのです!」フンス!

古畑「へぇ、ライブを…憂さんも?」

「わ、私は見てるだけです」

古畑「そうですか…しかし顧問の先生がなくなったというのに大変ですね」

「うーん、そうなんだけど…」

「まぁ、追悼ライブって感じで」

古畑「んっふっふ…楽しみですね」

「えへへ、ぜひ見に来てね、古畑さん」

古畑「よろしいんですか?では、ぜひ…」

98 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:31:15.08 AHe6uqS10 83/182

「あ、ここです。着きましたよ」

古畑「ここですか。いやぁ助かりましたぁ」

古畑「では失礼します」

「またね~」

「お仕事、頑張ってください」

古畑「ありがとうございます。では…」

ガチャ

古畑「お仕事中すみません。今回の事件の捜査を担当する古畑というものですが…」

「…じゃ、わたしたちも戻ろっか」

「うん」

テクテクテク…

99 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:32:11.47 AHe6uqS10 84/182

「いい人そうな刑事さんだったね」

「うん、わたしもそう思うよ~。でもね…」

「どうも、さわちゃん先生が死んだのは自殺じゃないかもって、疑ってるみたいなんだ…」

「そ、そうなの?」

「うん。殺人の可能性もある、だって」

「そんな…」

「心配いらないよ。ムギちゃんの立てた計画は完ぺきだったし、アリバイもきちんとあるんだから」

「う、うん…」

「あ、そうだお姉ちゃん。梓ちゃんと会った時に話した内容を教えとくね」

「え?それって必要なの?」

「万が一の時、知らなかったら困るでしょ?」

「う~ん、それもそうだね~」

「じゃあ今から教えるから、覚えといてね?」

「了解です!」

100 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:32:38.00 AHe6uqS10 85/182

~軽音楽部部室~

「…それ、本当なのか?」

「うん、古畑さんがそう言ってたよ~」

「じゃあ…ライブ、できるんだな」

「劇が延期になっちゃったのが、心残りだけど…」

「みなさん、ずっと劇の練習してましたもんね…」

「でも…よかったです…先輩方とのライブがなくならなくて…」

「よ~っし!じゃあ今日は、明日のライブに向けて泊まり込みで練習だぁ!」

「学校って泊まって大丈夫なのか?」

「だ~いじょぶぅ♪」

「お泊りの準備持ってきてないんだけど、それでも?」

「ノープロブレム!」

「ご飯は何杯でもお替り!?」

「じゆー!…って、なんでやねん」

101 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:33:10.47 AHe6uqS10 86/182

「とにかく、そうと決まったら、寝袋を借りに行かないとな!」

「じゃあさっそく…」

「あれだね、りっちゃん!」

「ああ。ほら、みんなも準備しろ!」

「?」

「いくぞ?ジャ~ンケ~ン…」

102 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:33:54.66 AHe6uqS10 87/182

~生徒会室付近~

「うぅ…梓はともかくあの二人に負けるとは…」

「まぁまぁ。早く寝袋もらって帰ろう?」

「ああ。忘れないように宿泊届も出しとかないとな。ん?あれは…」

古畑「おや、秋山さんに、琴吹さん」

「古畑さん…でしたっけ」

古畑「はい」

「お仕事ご苦労様です」ペコリ

古畑「んっふっふ、ありがとうございます」

「捜査の方は…進んでるんですか?」

古畑「…んーそれがまだなんとも」

「…一般人にそうやすやすと情報を漏らせませんよね」

「ちょっと澪ちゃん、失礼よ…」

古畑「んっふっふ…申し訳ありません」

103 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:34:20.21 AHe6uqS10 88/182

古畑「しかし…みなさん、大変人気があるようで」

「え?」

古畑「誰に聞いてもあなた方の明日のライブを楽しみにしてらっしゃいます。えー実は、ついさっき生徒会室で去年のライブのDVDを拝見したんです」

「本当ですか?」

古畑「いいライブでしたぁ。特にいったん曲が終わってから、琴吹さんが再び演奏を始めるところとか。しまいにはうちの部下まで明日のライブを見に行きたいと言い出す始末で…」

「まぁまぁ。ぜひ観にいらしてください♪」

古畑「んっふっふ…、はい、ぜひ。ところで、あの曲は全てみなさんの自作なんですか?」

「はい。私が作曲して、澪ちゃんが作詞して…。あ、明日演奏する予定の曲は唯ちゃんの作詞なんですけど」

古畑「そうでしたか。いやー、『ふわふわ時間』でしたか?素晴らしい曲調でした」

「うふふ、嬉しいです♪」

古畑「歌詞の方も独特なセンスが感じられて実に…あー…個性的で」

「……///」

104 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:34:49.28 AHe6uqS10 89/182

「あの…古畑さん?」

古畑「はい」

「捜査って、いったいどんなことをするんですか?」

古畑「興味がおありなんですか?」

「はい、とっても♪」

古畑「えー…もしお暇なら見学されますか」

「ええ!?いいんですか!?」

(ちょっ!?ムギ!?)

古畑「んー遺体も運び終わっていますし、捜査に差しさわりのない程度でしたら…」

「ありがとうございます!わくわくするわぁ♪」

「お、おいムギ…」

「あ、ごめんね澪ちゃん。りっちゃんにはあとで戻るって伝えておいて」

古畑「では行きましょうか」

「はい♪」

「あっ、ちょっと…!」

「…行っちゃった…」

105 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:35:32.76 AHe6uqS10 90/182

~被服室~

「うわぁ…!」キラキラ

古畑「こういう現場を生で見るのは初めてでしょう」

「はい!」

「か、鑑識の人たちが動き回って…!」

「これは、指紋なんかを採って回ってるんですか?」

古畑「そんなところです。まぁ生徒の指紋が至る所に付いていてあまり意味がないんですが」

「へぇ~…」

106 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:37:29.76 AHe6uqS10 91/182

古畑「琴吹さん、こちら見ていただけますか?」

「?はい…」

「あら、これは…、袋に物がたくさん…」

古畑「これは現場で見つかった証拠品をですね…」

「あ、知ってます!こういうの、遺留品っていうんですよね?」

古畑「そうですそれです!いやーよく知ってらっしゃる」

「そうですか?うふふ」

「はさみに…針に…まぁ、ここにある衣装も全部?」

古畑「この部屋にあったものは全て遺留品なんです。触っちゃだめですよ」

「ええ、わかってます」

107 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:37:57.34 AHe6uqS10 92/182

古畑「えーそれで…これ、なんだかご存知ですか?」

「あ…これ、は…」

(澪ちゃんのリップクリーム…!)

(どうして…?)

古畑「ご存じなんですか?」

「え、あぁ…」

(椅子からこけたとき、落としたのね…)

(どうこたえるべきかしら…)

「…見覚えがあるような、ないような…」

古畑「そうですか…」

108 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:39:11.64 AHe6uqS10 93/182

古畑「私はてっきり秋山さんのものだと思っていたんですが、違ったかな」

「え?どうしてですか?」

古畑「いやだってここに」

パッ

「…!」

(キャップの頭に…)

古畑「『MIO AKIYAMA』とあるものですから。てっきりお友達のあなたなら本人のものかどうかわかるとばかり」

(…この人…あえて最初に名前が見えないように…)

「あはは…同じもの使ってる人、けっこういますから」

古畑「そうなんですか。しかしどうしてこれがこんなところに落ちていたんでしょうね」

古畑「3年生は授業で被服室を使うことはないと聞きましたが」

109 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:39:48.79 AHe6uqS10 94/182

「それは…たしか、山中先生に没収されたんです」

古畑「そうなんですか?」

「はい。この前廊下でりっちゃん…じゃない、田井中さんに見せてる時にたまたま先生が通りかかって…」

古畑「没収されたと」

「はい。澪ちゃんがそう言って落ち込んでいました」

古畑「なるほど…そうなるとこれがここにあった理由も説明がつきますね」

古畑「いやぁのどのつっかえが取れました」

「お力になれてよかったです」ニッコリ

111 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:40:54.60 AHe6uqS10 95/182

「じゃあ、この辺で…」

古畑「もう見学されていかなくていいんですか?」

「ええ、そろそろ戻らないとみんなが心配しますから…」

「私が取り調べを受けてるんじゃないか、って」

古畑「あっはっは、そうですね」

「ふふ。じゃあ失礼します、お仕事がんばってくださいね」

古畑「はい、どうも…」

ガチャ…バタン

113 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:49:55.59 AHe6uqS10 96/182

「ごめんね、遅くなっちゃって」

「あ、ムギやっと帰ってきた」

「もう、大変だったんだぞ!寝袋5人分も持つの…」

「ごめんね、澪ちゃん。きっと埋め合わせはするから」

「あら…?梓ちゃんは?」

「梓なら、純ちゃんと一緒にどっか行ったぞー。明日の出店の準備だってさ」

「そう…それはちょうどよかったわ」

「なにかあったの?」

「うん、実はね…」

114 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:50:50.43 AHe6uqS10 97/182

「カクカクシカジカ…というわけなの」

「それは大変だったね…」

「本当に申し訳ない…」

「現場に証拠が落ちていた以上…澪が一人で自首するしかない、か…」

「ひっ!」

「ひどいよりっちゃん!」

「冗談だって。で、古畑もムギの説明で納得したんだろ?」

「うん、完全に疑いが晴れたかどうかはわからないけど…」

「なら大丈夫だろ。万が一訊かれたとしてもあたしらが口裏合わせればいいだけだし」

「なぁ澪?」

「タイホ…タイホ…タイホ…ハハハ」

「み、澪ちゃん!?」

「澪!?あたしが悪かった!戻ってきてくれ~!」

115 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:51:20.43 AHe6uqS10 98/182

「…ねぇ、みんな」

「みぉ…ん、どうしたムギ」

「今回のことはうまくごまかせたかもしれないけど、あの人が私たちを疑っているのは間違いないと思うの」

「だから、これからは少しの隙も見せちゃダメ。いい?」

「わかったよ、ムギちゃん」

「…おう」

「タイホ…タイホ…」

「ちょいといつまで固まってんだいこの子は~。あ…そうだ。憂にも気をつけてって言っとかないと」

ピポパ…

116 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:52:02.17 AHe6uqS10 99/182

~2年1組教室~

ヴィヴィヴィ…ヴィヴィヴィ…

「…あ、メール…」

「お姉ちゃんだ!どうしたんだろう…」

117 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:54:28.82 AHe6uqS10 100/182


from:お姉ちゃん
題名:きんきゅうのおしらせ~!
本文
――――――――――――――――――――――

うい!降旗山には絶対に気をつけるんだよ~!!

ぴーえす:今日はみんなで学校にお泊りするから
     晩ごはんいらないからね~

――――――――――――――――――――――


「…登山でもするの?」


118 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:54:56.41 AHe6uqS10 101/182

よる!

~軽音楽部部室~

「みなさん、夜食作ってきたんです。どうぞ食べてください」

「ありがとう、憂ちゃん」

「んん~うみゃい!」

「まだまだたくさんあるので、みなさんいっぱい食べてくださいね」

「おいひいよぉ~憂~」

「うふふっ」

「デザートは、私たちが用意したのがあるから、よかったら食べて行ってね?」

「わぁ、いいんですか?ありがとうございます!」

119 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:55:32.77 AHe6uqS10 102/182

「夜に甘いものは…」

ガシッ

「大丈夫だ。何時にケーキを食べようがへっちゃらだ。なぜなら今日は…」

「徹夜だからーっはっはー!」

「ええ!?寝ないんですか!?」

「あったりまえだぁ!学祭といえば徹夜で準備だからなっ♪」

「……」

ガシッ

「ん?」

「今夜は寝かさないぞ…子猫ちゃん!」

「一人でどうぞ」

「あ~ん、あずにゃんいけずぅ~」

コンコンコン

「おっ」

「ん?」

120 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:56:09.60 AHe6uqS10 103/182

カチャ…

古畑「んっふっふ…盛り上がってらっしゃるようで」

「古畑さん…」

古畑「おくつろぎのところすみません」

「どうしてここに?」

古畑「電気が点いているのが見えたものですから」

「…殿方がピチピチの女の園に何の用かしらん?」

古畑「んー…実は、みなさんのアリバイを確認しておきたいと思いまして」

「あ、あ、あ…アリバイ!?」

「それじゃまるで、私たちが犯人みたいじゃないですか…」

古畑「あくまで形式的なものですので」

古畑「自殺と断定できない以上は、関係者全員のアリバイを調べておく必要があるんです」

古畑「ちなみに他の生徒への聞き取りもほぼ済んでいます」

「そうなんですか…」

121 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:57:07.85 AHe6uqS10 104/182

古畑「えー…と、ではまず唯さんから伺ってもよろしいでしょうか」

「あ、わたしはねぇ~」

「!」

「ふ、古畑さん!」

古畑「はい?」

「何時から何時までのアリバイを調べてるんですか?」

古畑「あぁ失礼しました。とりあえず登校してから、遺体が発見された8時半ごろまでのアリバイです」

(いきなり7時半からのアリバイを答えちゃったら、用意しておいたアリバイってことが見え見えだわ…)

(危ない危ない…ありがとうムギちゃんっ)

122 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:57:43.45 AHe6uqS10 105/182

古畑「唯さん、いかがですか?」

「あー…わたしはぁ、えっと…7時ぐらいに登校して、しばらく準備を手伝ってたけど、7時半ぐらいかな?被服室に行きました」

古畑「行ったんですか被服室に?」

「はい、さわちゃんどうしてるかなーって。でも追い返されちゃってぇ…」

「それからすぐムギちゃんと会って劇のことでお話しして、次にあずにゃんに会ったんだよね?」

「あっ…そうでしたね。いきなり抱きつかれて驚きましたよ」

「それで教室に戻ったけどすぐトイレに行って、帰りに澪ちゃんとりっちゃんに会って一緒に教室に帰ってきました!」

古畑「ん~…要するにあちこち歩き回ってらっしゃったんですね?」

「でへへ…」

古畑「その後は」

「あとはずっと教室にいましたよ~」

123 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:58:36.75 AHe6uqS10 106/182

古畑「なるほど…次、田井中さんは」

「あーっと、あたしは7時前ぐらいに澪と登校して、教室でセリフ覚えてました。それからちょっと教室の外に出て、戻ってきたら澪が『私にロミオの役はできない』って言ってて…」

古畑「失礼、ロミオ役というのは…」

「あ、うちのクラスはロミオとジュリエットの劇をやる予定で、澪はそのロミオをやることになってたんです」

「ちなみにりっちゃんがジュリエット役だよ~」

「余計なこと言うなっ」

古畑「んっふっふ…それで、どうされたんですか?」

「あぁ、それで生徒会室で澪を説得してたんです」

古畑「二人きりですか」

「はい。最後には澪も納得してくれて。で、戻るときに唯と会って3人で教室に帰りました。8時くらいだったかな」

古畑「以降は教室に」

「はい」

古畑「えー…では秋山さんは今日はほとんど田井中さんと行動を共にしていた、ということでよろしいですね?」

「は、はい」

124 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/18 23:59:06.67 AHe6uqS10 107/182

古畑「なるほど…。あ、みなさんお食事中だというのに。食べながらで結構ですよ」

「いやいや、刑事さんに質問されながら飯食べれるほどあたしら図太く…」

「もぐもぐ」

「――って食ってるし!」

「ほぇ?」

「古畑さんもよかったらおひとつどうぞ?」

古畑「いいんですか?では失礼して…」

ヒョイ

125 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:00:27.45 sZpH8Ko+0 108/182

古畑「では話を戻して…琴吹さんは」

「はい…私は、みんなより早く6時過ぎぐらいに登校しました」

「それで教室で台本の最後のチェックをしていたんですけど、唯ちゃんの役のことで気になることがあって」

「近くにいなかったから、探しに行ったんです」

古畑「ちょうど唯さんが教室を空けていたときでしょうか」

「はい、唯ちゃんが出て行ってすぐくらいかもしれません。それで唯ちゃんはすぐ見つかって、別れた後は私も被服室に向かったんです」

古畑「そこは聞いた通りですね」

「あとは衣装を受け取って、8時ごろ教室に戻りました。それからは教室から出ていません」

126 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:01:05.03 sZpH8Ko+0 109/182

古畑「うーん…中野さんは」

「はっ、はい!私は…えっと…あまり詳しくは覚えていないんですけど…」

「とりあえず、学校には6時ぐらいに登校して、それからは準備してて…。あ、しばらくして純とコンビニに買い物に行ったり……あと唯先輩に会ったりしました。でも…、具体的に何時にどこで何をしてたのか、とかはちょっと…」

「あずにゃん、確かわたしたちの教室に来たって言ってたんだよね?」

「え?」

「わたしと会ったときにさ」

「あーそういえば…確かに先輩方の教室にもいきました。でもけいおん部の先輩は誰もいなくて…」

古畑「…唯さん、それは誰からお聞きになったんですか?」

「へ?あずにゃんからだよ~」

古畑「本人からですか?」

「?はい…」

古畑「そうですか…」

127 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:01:52.75 sZpH8Ko+0 110/182

「何か気になるんですか?言ってくださいよ」

古畑「いえ、たいしたことではないので…」

「私たちが気になります」

古畑「あー…唯さんが『わたしたちの教室に来たって言ってたんだよね?』とおっしゃったものですから」

「それが?」

古畑「『言ってたんだよね』…ですよ?まるで中野さんがそう言っていたと、別の誰かから聞いたみたいじゃないですか。実際には唯さん自身が中野さんから聞いていたというのに」

「…そんなのちょっとした言い間違いじゃないですか~。やだなぁ古畑さん」

古畑「んっふっふ…まぁそういうことにしておきましょう」

古畑「中野さん、その後はいかがですか?」

「あ、あぁその後は…何もなかったと思います。ずっと教室で準備してたり…」

128 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:03:16.22 sZpH8Ko+0 111/182

古畑「そうですか…最後に憂さん」

「私は、梓ちゃんが来る少し前に学校に来てました。一度、7時半ぐらいだったか、お茶を買いにコンビニに行ってたとき以外は、ずっと教室に…」

古畑「なるほど…」

古畑「こうなると、つまりみなさん全員にしっかりしたアリバイがあるということになりますね」

「あったりまえですよ~」

「当然だよっ、古畑さん」

古畑「んっふっふ…しかしみなさん、大変記憶力が良くて助かります」

「え?」

129 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:04:03.26 sZpH8Ko+0 112/182

古畑「普通は自分がいつどこで何をしていたかなんて、訊かれてもすぐには出てこないものです。それこそさっきの中野さんのように…」

古畑「それをみなさん、しっかりとおおよその時間まで記憶してらっしゃる」

「…!」

「いけないんですか?しっかり時間まで覚えてちゃ」

古畑「え?いえいえそんなことありません。むしろ調べる側としては手間が省けて助かります」

「……」

古畑「あー、では夜分遅くにどうもすみませんでした。明日に備えてゆっくり休んでください」

「…ばいばーい、古畑さん」

古畑「んっふっふ…おやすみなさい。あ、おにぎりご馳走様でした」

ガチャ…バタン

130 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:04:43.67 sZpH8Ko+0 113/182

よくじつ!

西園寺「軽音楽部の部員や平沢憂さんのアリバイの裏を取ってみましたが」

西園寺「中野さんと平沢唯さんが会話しているところは、多くの生徒に目撃されていました」

西園寺「また田井中さんと秋山さんについても、生徒会室の中で話している声が複数の生徒に聞かれています」

西園寺「琴吹さんについてははっきりと目撃したという証言はありませんでしたが、アリバイがはっきりしている平沢唯さんが二人で話していたと証言しています…」

131 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:06:00.37 sZpH8Ko+0 114/182

古畑「平沢憂さんの方はどう」

西園寺「彼女が買い物に行ったというコンビニにあたってみました」

西園寺「平沢憂さんの写真を見せて訊いてみたんですが、昨日は学園祭の準備の関係で女子高生の客の出入りが多く、どのような生徒が来たかは覚えていないそうです」

古畑「学園祭の買い物に行ったんならさ、領収書とかレシートとかとってあるんじゃないの」

西園寺「お茶を買った時のものと思われる領収書は確認できましたが、レシートは見つかりませんでした」

古畑「とってなかったの?」

西園寺「憂さんが落としてしまった、と言っていたそうです」

古畑「そう…ありがとう」

132 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:06:27.75 sZpH8Ko+0 115/182

今泉「古畑さぁん!」ドタドタ

古畑「騒がしいなァ。どうしたんだ」

今泉「これ見てください、これ!」

今泉「山中さんの自宅のパソコンから見つかったんですけど…」

古畑「…!」

古畑「…これはぁ…」

西園寺「…古畑さん」

今泉「ひどいですよね。最低だなぁあの山中って教師」

西園寺「どうしましょう」

古畑「…ちょっと出てくる」

133 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:06:56.46 sZpH8Ko+0 116/182

~2年1組教室 『峠の茶屋』~

ワイワイガヤガヤ…  イラッシャイマセー

古畑「中野さん」

「えっ?あぁ、古畑さん」

古畑「いやどうも…」

「どうされたんですか?まさか聞き込み…とか?」

古畑「いえいえただ寄ってみただけです。『峠の茶屋』…いい名前ですね」

「あはは…、ありがとうございます」

134 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:07:25.00 sZpH8Ko+0 117/182

「刑事さんって意外と暇してるんですね」

古畑「んっふっふ…そう言われると何とも」

「ふふっ、すみません。はいこれ、メニューです」

古畑「ああどうも、えっと…どれにしようかな」

古畑「これ、ほうじ茶っていうのいただけますか?」

「ほうじ茶ですね、少々お待ちください」ペコリ

「純~、ほうじ茶ひとつ~」

「ほ~い」

古畑「……」

135 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:08:03.57 sZpH8Ko+0 118/182

「お待たせしました、ほうじ茶です」

古畑「ありがとうございます」

古畑「いやしかし…中野さんもいい先輩方に恵まれましたね」ズズッ…

「え?…あぁ、けいおん部の先輩たちですか?」

古畑「みなさん個性豊かな方々で」

「はい、毎日部活が楽しいです」

古畑「んっふっふ、それはなにより」

「まぁ…先輩たちはみんな、今日で引退なんですけどね…」

古畑「寂しいですか、やはり」

「…寂しいに決まってるじゃないですか」

「でも、だからこそ…今日のライブはめいっぱい楽しんで、最高のライブにしたいんです」

古畑「……」

136 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:08:30.70 sZpH8Ko+0 119/182

古畑「あ、そういえば、中野さんにひとつ訊きたいことがございまして」

「私に?…ですか?」

古畑「ええ」

「…結局聞き込みに来たんじゃないですか」

古畑「んっふっふ…すみません」

古畑「ここではなんですから場所を移して…」

「はぁ…じゃ、ちょっと待ってください」

138 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:10:21.15 sZpH8Ko+0 120/182

「えっと…、あ、ちょうどよかった、憂!」

「なに、梓ちゃん?…と、あれ?古畑さん?」

古畑「どうも」

「なんかね、古畑さんが訊きたいことがあるんだって。少し抜けてもいいかな」

「たぶん…大丈夫だと思うよ」

「ありがとね」

(…大丈夫かな、梓ちゃん)

「……」

「じゅ、純ちゃん!」

「えぇ!?…なんだ、憂か」

「急にでかい声出されたらびっくりするじゃん。どしたの?」

「ごめん…ちょっとだけ抜けてもいいかなぁ?」

「えっ…なんで?」

「ごめんっ、すぐ戻るから!」

「あ、ちょっと!…って、梓もいないじゃん!」

140 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:11:44.99 sZpH8Ko+0 121/182

~空き教室~

「……」ソーッ…

「古畑さん、訊きたいことっていったい…」

古畑「えー、実は…」

古畑「あなたと山中先生との関係についてお訊きしたいのです」

「えっ…」

(っ!!)

古畑「あなた方の間には何かただならぬ関係があった…」

古畑「我々はそういう風に見ているのですが」

「………どうして、そんな…」

古畑「山中先生の自宅のパソコンから、いくつかの写真が見つかりました」

「……っ!」

古畑「どのような写真か、お判りですね」

「……はい…」

141 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:14:24.49 sZpH8Ko+0 122/182

古畑「もしよろしければ、お話いただけますか」

「……」

「…あんまり、こんなところで話したいことじゃないです。ごめんなさい」

「でも…おそらく、古畑さんの想像通りだと思います」

古畑「…お察しします」

「学祭が終わったら、お話ししますから」

古畑「ちなみに…このこと、誰かに相談は」

「してません。口止めされてましたし、それに…」

「誰かに言えば、けいおん部を潰すかもしれないって…。それに、先生は先輩方の担任だったから…!」

古畑「……」

古畑「…もう結構ですよ」

「…戻ってもいいんですか?」

古畑「はい」

「…失礼します」ペコリ

テクテク…

142 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:14:53.37 sZpH8Ko+0 123/182

古畑「中野さん」

「…?」

古畑「ライブ、頑張ってください。応援してますので」

「…はい。ありがとうございます」

(……マズい…)

(お姉ちゃんたちに知らせないと!)

ピポパ…ピッ

143 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:15:22.28 sZpH8Ko+0 124/182

~軽音楽部部室~

ピロリロリン♪ピロリロリン♪

「あれ、メール…誰からだろう」

「あ~、憂からだ~!」

「ふむふむ……な、なんですとー!」

「騒がしいな…」

「どうした?唯」

「あわ、あわ、あわ…、た、たいへんだよ~っ!」

「いったいどうしたの?」

「こ、これ…」ブルブル

「!?」

「梓のことが、バレたのか…」

144 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:16:22.00 sZpH8Ko+0 125/182

「ど、どうしよう!あずにゃんが疑われちゃうよぉ!」

「唯ちゃん、落ち着いて?」

「どっちみち、警察が調べたら遅かれ早かれわかることだったんだ」

「そのためにも憂ちゃんが唯のふりして会いに行ったり、きちんと梓のアリバイを作っといてあげたろ?」

「あぅ…そうだけど…」

「そうだけど…?」

「うん…わたし、不安なんだ」

「もっもちろん、ムギちゃんの立ててくれた計画は完ぺきだよっ?」

「でも…あの人…」

「古畑か…」

「うん…なんか、あの人にはぜんぶお見通しな気がして…」

「…確かに、明らかに私たちのこと疑ってる感じだもんな…」

「そうね…」

「……」

145 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:17:12.12 sZpH8Ko+0 126/182

「…まぁ、くよくよしたって仕方ないさっ」

「『真珠を造って天然の松』って言うだろ?」

「『人事を尽くして天命を待つ』だろ」

「そうだっけ?まぁとにかく、やることはやったんだから、あとはどーんと構えてればいいのさーっ」

「…あはは、りっちゃん、男前~!」

「やれやれ…ほんとに律は能天気だな」

「なにをーっ!?」

「ふふ…ポジティブなのはいいことじゃない」

「よーっし、梓が来るまでに軽く音合わせしとくか!」

「お~っ!」

「…おー」

146 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:17:40.20 sZpH8Ko+0 127/182

~ライブ3時間前~

「ふぅ…そろそろ楽器運ぶかー」

「そうね」

「ほーい」

ガタゴト…

「……」

(梓…演奏中もあんまり元気なかったな…)

「梓…」

「っ!はい!」

「えっと…その…」

「…?」

「…あ、あれだ!いいライブにしような!」

「…はい!」

147 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:18:13.93 sZpH8Ko+0 128/182

「あ~ずにゃん!一緒にアンプ運ぼ?」

「わわっ、ちょっ…唯先輩!危ないですよ!」

「……」

「なぁ澪」

「ん…どうした?」

「あたし、ちょっと用事思い出したからさ、先に楽器運んどいてよ」

「え?おい、こんな時に…」

「じゃ、任せたよ~ん」

「り、律!…ったくもう…」

148 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:19:32.64 sZpH8Ko+0 129/182

~被服室~

古畑「……」

「すみません」

古畑「はい?…田井中さんでしたか」

「……」

古畑「ライブの練習はいいんですか?あと2時間ほどでは」

「それより…梓と先生のこと、知れちゃったんですね」

古畑「…あー…はい」

「…確かに梓は…、先生に、その……」

古畑「わいせつな行為を受けていた…」

「…!」

149 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:19:58.42 sZpH8Ko+0 130/182

「…はい、そうです」

古畑「やはりご存じだったんですね」

「…最近梓の様子がおかしくて…。元気がないってわけではなかったんですけど、練習中も上の空って感じで…」

「それで放課後、澪たちと梓の後をこっそりつけてみたんです。そしたら…」

古畑「山中先生の自宅から、それらしい痕跡は見つかっています」

古畑「先生が中野さんに何らかの嫌がらせを行っていたのは間違いないでしょう」

「でも…でも梓は!絶対に殺しなんて…」

古畑「わかってます」

「え?」

150 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:20:40.70 sZpH8Ko+0 131/182

古畑「いくら山中先生も同じ女性とはいえ、小柄な中野さんが大の大人を絞殺して、まして上から吊るすなんてことができるはずがありません」

古畑「そもそも彼女の身長では、椅子に乗ったとしても配管にロープを吊るすことさえできるかどうか…」

(梓が聞いたら怒るな、絶対)

「じゃあ…梓を疑ってはいないんですね?」

古畑「もちろん。彼女はほとんど、どの時間帯においても人目に触れていますから」

古畑「ただし…中野さんは、ということですが」

「…どういうことですか」

古畑「中野さん以外の誰かが犯人である可能性は、依然なくなっていないということです。例えば…」

古畑「山中先生と中野さんの関係を知った誰かが、彼女を助けるために協力して先生を殺した、とか…」

151 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:21:49.25 sZpH8Ko+0 132/182

「なにが言いたいんですか」

古畑「あくまで可能性の話をしているだけです」

「あたしたちにはみんなにアリバイがある」

古畑「んー、どうでしょう。あなた方のアリバイはみなトリックでどうにでもなるものばかりです。平沢さん姉妹はまさに瓜二つなんですから、入れ替わったところで少し話したぐらいでは気づきません。あなた方の会話だって、ラジカセでもセットしておけばどうにでも…」

古畑「…あ、そんなことよりそろそろライブですよね。戻らないとみなさん心配するんじゃないんですか?」

「……そうですね。じゃ、失礼します」

スッ

古畑「頑張ってくださいね。ぜひ観に行き…」

ガチャッバタン

古畑「……」

152 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:22:16.31 sZpH8Ko+0 133/182

~被服室~

古畑「……」

今泉「買って来ちゃいましたよぉ、マンモスの肉!」

今泉「これ、古畑さんの分です。はい君の」

古畑「気が利くね」

西園寺「ありがとうございます」

今泉「いやぁ、おいしそうだなぁ」

153 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:24:55.91 sZpH8Ko+0 134/182

古畑「西園寺君」

西園寺「はい」

古畑「軽音楽部の部員たち、どう思う」

今泉「そりゃあ、かわいい子たちだと思いますよぉ」モグモグ

古畑「君は黙ってなさい」

西園寺「山中さんが、彼女らの後輩部員である中野さんへのわいせつ行為や嫌がらせを行っていたとすれば、動機は十分にあります」

西園寺「しかし部員全員にしっかりとしたアリバイがある…」

西園寺「秋山さんや田井中さんは複数の生徒に声を聞かれていますし、平沢唯さんに関しては姿までしっかり見られています」

古畑「そういうのはトリックでいくらでもどうにでもなるよ」

古畑「生徒会室の声はラジカセでもセットしておけば事足りるし、平沢姉妹はあれだけそっくりなんだよ。少々入れ替わったところでおいそれとわかるものじゃない。現に憂さんの方のアリバイはあやふやだし、あの二人が教室から姿を消した時間は重なっているんだしね」

古畑「軽音楽部の3年生と平沢憂、この5人が一斉に教室から姿を消したということは、絶対に何かあるよ…」

154 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:25:46.77 sZpH8Ko+0 135/182

古畑「しかし、決め手がね…」

今泉「考えすぎだと思うけどなぁ。彼女たちまだ高校生で、未成年なんですよ」

今泉「でも楽しみだなぁ、彼女たちのライブ」

古畑「何時からあるんだっけ」

今泉「3時半ですって。あと1時間かぁ。いい席取らないとなぁ」

古畑「ふーん…」

西園寺「へぇ、これおいしいですね、マンモスの肉」モグモグ

今泉「だろ?あ、でも、2年2組の子達、かわいそうだったなぁ」

西園寺「何かあったんですか?」

155 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:26:45.33 sZpH8Ko+0 136/182

今泉「うん、それが、張り切って出店のセット作ってさ、衣装も山中先生に凝ったの作ってもらってたらしいんだ。でも衣装受け取る前に事件が起きちゃったもんだから、結局衣装が使えずに制服のままやってるんだよ」

古畑「……」

西園寺「それは気の毒ですね…」

今泉「だろう?遺留品なんだから仕方ないんだけどさ、あの毛皮みたいな衣装着た子たちも見てみたかったなぁ…」

古畑「…今泉君」

今泉「はい?」

古畑「お手柄だよ」

今泉「へ?」

156 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:27:12.60 sZpH8Ko+0 137/182

古畑「西園寺君」

西園寺「はい」

古畑「今からいうものを準備して、講堂のステージ裏に持ってきといて」

古畑「これと、あれと…」

西園寺「わかりました」

今泉「ぼ、ぼくはぁ」

古畑「君はね…」

古畑「ライブ楽しんでらっしゃい」

今泉「わかりましたぁ!」

ドタドタ…

157 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 00:28:02.48 sZpH8Ko+0 138/182

~スポットライト~

古畑「えー、犯人は間違いなくあの5人です」

古畑「おそらく大事な後輩を、そして大切な友人を救うための犯行でしょう」

古畑「同情できる点もありますが、それでも殺人はいけません」

古畑「えー、今回のポイントは、私がどこで彼女たちを犯人だと確信したか…」

古畑「ヒントはこれ…マンモスの肉」

古畑「んっふっふ…少し考えてみてください」

古畑「解決編はこの後。古畑任三郎でした」

161 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:03:47.76 sZpH8Ko+0 139/182

~体育館女子トイレ~

ジャー…パシャパシャ…

「……」

ガチャッ

「!?」

「憂…」

「梓ちゃん…」

「いよいよだね、ライブ」

キュッキュッ

「うん」

ジャー…パシャパシャ…

「楽しみだなあ。お姉ちゃんね、この日のために家でもずっとギー太と寝てたんだよ」

「あはは、そうなんだ」

キュッ

162 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:04:30.97 sZpH8Ko+0 140/182

「……」

ポタッ…

「ねぇ憂」

「なに?」

「実は…思い出したことがあってね」

「?」

「昨日の午前中に、私が2階の廊下で唯先輩に会ったっていうのは知ってるよね」

「うん…昨日古畑さんに言ってたね」

「そのときになんか違和感があってさ」

「ちょっと気になってたんだけど、わかったんだ」

ポタッ…

163 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:04:59.08 sZpH8Ko+0 141/182

「…なんだったの?」

「うん。抱きつかれたときにね、いつもと感触が違ったんだ」

「正確に言えば、圧迫感っていうか…少し、胸がおっきかった」

ポタッ…

「……」

「ねぇ、もしかしてあの唯先輩は、憂だったんじゃないの?」

「憂は本当に唯先輩にそっくりだよ。見た目だけじゃわかんないくらい。でも、抱きついた時の感触だけは真似しようがないよね?」

「梓ちゃん…」

164 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:05:30.45 sZpH8Ko+0 142/182

「どうしてあんなことしたの?もしかして…」

「ごめん…梓ちゃん」

「梓ちゃんは知らない方がいいよ。いや違う、知っちゃいけないの」

「どうして?なんで憂…」

「ごめん」

ガチャッバタン

「……」

「どうして…」

ポタッ…

165 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:06:01.86 sZpH8Ko+0 143/182

~講堂ステージ裏~

「え?古畑さんが?」

「そう、ライブが終わってからみんなに話があるって…」

「……」

「終わってから講堂の裏で待っていますって言ってたわ」

「い、いったいなんなんですかあの人!」

「梓ちゃん…」

「いっつも先輩方に付きまとって!まるでみなさんが事件にかかわってるって言いたいみたいに…」

「あんな人、無視しとけばいいんです!」

「梓…」

166 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:07:07.52 sZpH8Ko+0 144/182

「いいじゃん、今から話聞こうよ」

「!?」

「ゆ、唯ちゃん?」

「唯先輩!?」

「いやーだってさぁ、もやもやしたまんま演奏するのって、なんかいやじゃん」

「わたしたちは無実だーっ!ってきちんと証明してから演奏しようよ」

「…あたしも唯に賛成だ」

「り、律先輩まで?」

「疑われてるって気にしながら演奏したって、いいライブは出来っこないだろ?」

「そりゃそうだけど…」

「だ~いじょうぶだって、あたしらな~んも悪いことしてないんだからさっ」

「さっさと無実だって古畑にわからせてから演奏しようぜ」

「じゃあ…今から呼んできていいのね?」

「うん、悪い和、頼むわ」

167 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:07:55.20 sZpH8Ko+0 145/182

~ライブ20分前~

古畑「いやーライブの直前に申し訳ありません。よろしかったんですか?」

「……」

「いいから始めてくださいよ古畑さん。いったいなんなんですか?」

古畑「すみません。これが本当に最後ですので」

「……」

「律…ライブ開始まであと20分よ?」

「あー…ごめん和、ちょこーっとだけ時間遅らせるわけには」

「」

「いかないよねー…ははー…」

「…てことで古畑さん。すぐに終わらせてくださいね」

古畑「わかりました。…と、その前に、まだかな」

168 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:08:24.97 sZpH8Ko+0 146/182

ガチャッ

西園寺「お連れしました」

「……」

「憂!?」

「お姉ちゃん…みなさん…」

古畑「えー、これでやっと全員揃いましたね。では始めましょう、手短に…」

169 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:10:04.15 sZpH8Ko+0 147/182

古畑「えー、まず始めにはっきりさせておかなければいけないことは、今回の山中先生の死は、単なる自殺ではなく、綿密に計画された殺人であるということです」

「そ、そんな…」

「…もちろん確証があるから言ってるんですよね?」

古畑「あてずっぽうでこんなことは言いません」

「へっ…じゃあ見せてくださいよ。殺人の証拠とやらを」

古畑「まぁ落ち着いてください。順を追って説明しましょう」

170 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:10:40.51 sZpH8Ko+0 148/182

古畑「まず先生が自殺だったとする場合、おかしいのはあなた方のライブ衣装を作っていなかったことです」

古畑「毎年のように新歓、学祭とあなた方のライブ衣装を作っていた先生がなぜ今回は衣装を作っていなかったのか。他の衣装は全て仕上げていたんです。おかしいとおもいませんか」

「別に。案外手ぇ広げすぎてめんどくさくなったとか、そんなとこじゃないの?」

「あはは、さわちゃんらしいね」

古畑「んっふっふ…しかし山中先生は、やはり衣装を作るつもりだったんです」

古畑「そして衣装を作るための材料も見つかりました」

古畑「その材料というのは…西園寺君」

西園寺「はい」

ガラガラ…

171 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:12:44.07 sZpH8Ko+0 149/182

古畑「これです。同じ無地のTシャツが大量に。数えてみると全部で400枚もありました」

古畑「調べてみると、これらは全て山中先生が業者に発注して昨日届いたものだそうです」

古畑「さらにこれ。なんだかおわかりですか?」

「それは…」

「HTTって…わたしたちのトレードマーク…」

古畑「そうです。これはアイロンでTシャツに貼り付けるものです。これで手軽に手作りTシャツが作れるとかで」

古畑「こういうものが用意されていた…。ということは、ですよ。やはり山中先生はあなた方の衣装を作るつもりだったんです」

172 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:13:17.96 sZpH8Ko+0 150/182

古畑「ですよね真鍋さん?」

「!」

「の、和ちゃん!?」

「…その通りです。先生は今回のライブ衣装と同じものを大量に作って、ライブを見に来た人全員に配るつもりだったんです」

「私が聞かされたのは一昨日だったんですけど。前日から徹夜で一気に仕上げると言っていました」

古畑「はい…ありがとうございます」

古畑「自殺するつもりの人が果たしてここまでのことをするでしょうか?」

古畑「これを放っておいて自殺するにしてもです、せめてあなた方の分の衣装だけでも仕上げておくのではないでしょうか。衣装自体はTシャツに柄をプリントするだけの簡単なものなのですから」

「…………」

173 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:13:45.19 sZpH8Ko+0 151/182

古畑「そして…ここからが重要なんですが」

古畑「犯人の正体に関わることです」

「え!?」

「……」

古畑「実は…被服室にあった衣装のうち一つに、あなた方の中の一人の指紋が残っていたんです」

「なっ…」

「まさか…」

古畑「えー…誰の指紋か、触った記憶のある人にはわかるはずです」

(わ、わたし触っちゃったかな…)アセアセ

「……」

古畑「その衣装をお見せしましょう。西園寺君」

西園寺「はい」

バッ

174 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:14:34.18 sZpH8Ko+0 152/182

古畑「こちらです。2年2組の『マンモスの肉』の出店衣装です」

「…!」

「え……」

古畑「この長袖で、しかも全身を覆う毛皮なんて、この時期にはまだ暑そうですが。猿人を意識したんでしょうか」

「…………」

古畑「いかがですか」

175 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:15:35.72 sZpH8Ko+0 153/182

「…ふふ……」

「…律?」

「…ははははは!古畑さん、なーにでたらめ言ってんだよ!」

古畑「はい?何のことでしょう」

「いやいや…とぼけなくてもいいって。こんな生地に指紋が残るわけないってのぐらい、あたしでもわかるよ」

古畑「ええ?いやでも確かに…」

「…っ!」イラッ

176 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:16:23.16 sZpH8Ko+0 154/182

「ふざけんなよ!そもそも馬鹿げたこの衣装なんだよ!どこから引っ張り出してきたんだ!?」

「ちょっと、りっちゃん…」

古畑「え?いやこれは2年2組の…」

「『マンモスの肉』の出店の衣装はこんなんじゃないって!」

古畑「え?これではないと」

「違うよ」

古畑「ではどんな」

「…!」

「どんなって…もっと薄手で袖がなくて、斑点があって…。とにかくこんなカッコ悪くて暑苦しいやつじゃ」

「律さん!」

「っ!…な、なに?」

「憂…?」

「あぁ…」

177 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:16:52.37 sZpH8Ko+0 155/182

古畑「んっふっふ…」

古畑「今…なんとおっしゃいました?」

「え…あぁ、え?」

古畑「…今なんと」

「だ、だから薄手で袖がなくて、斑て…」

古畑「西園寺君」

西園寺「…最後のアレを」

西園寺「はい」

バッ

178 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:17:53.93 sZpH8Ko+0 156/182

「これは…」

古畑「はい。これが本当に2年2組の出店で使うために作られた衣装です」

古畑「最初のこれは演劇部から借りてきた雪男の衣装でして…」

古畑「田井中さんのおっしゃった通り。確かにこちらの衣装は偽物でした」

古畑「しかし…なぜこの衣装が偽物だと見抜いたんですか?」

「それは…2年生の子たちが今日それを着てるのを見たから…」

古畑「いいえ。そんなはずはありません」

古畑「あなたがこれを着た生徒を目にするはずがない!」

「…っ!どうして!」

古畑「だって誰もこの衣装を着ていないんですから!この学校の生徒は誰も」

「…え?」

179 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:19:29.99 sZpH8Ko+0 157/182

「で、でもおかしいわ古畑さん!完成していない衣装は私たちのライブ衣装だけだったはずでしょう?」

古畑「はい確かに、完成はしていました。必要な数は全部」

古畑「しかし…実はこの衣装、被服室に置いたままになっていました」

古畑「そしてなかなか衣装が届かなかった2年2組の生徒が被服室に衣装を取りに行って、遺体を発見したんです」

古畑「衣装は遺留品ということで使うことができず、かわいそうに2年2組の生徒は制服のままで出店を営業していたそうで…」

古畑「もっとも昨日から部室にこもって練習していたあなた方にはわからなかったでしょう」

古畑「憂さんはこの衣装が使われていないことを知っていたようですが…。少し気づくのが遅かったですね。残念でした」

「……」

180 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:20:12.13 sZpH8Ko+0 158/182

古畑「つまり!よろしいですか、あなた方は4人は犯行現場でこの衣装を見ていた! それ以外の方法でこの衣装を偽物だと断定することはできないんです、絶対に!」

「…………」

古畑「そして…憂さん。あなたもこの犯行に加担していたと、私は確信しています」

「……」

古畑「…以上です」

181 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:20:38.86 sZpH8Ko+0 159/182

「せ…、先輩…憂…」

「本当、なんですか…?」

「う…いや…」

「…教えてくださいっ!」

「…っ!」

「りっちゃん、もういいよ」

「え…」

「もう…ネタばらししようよ」

「唯…」

「あずにゃん、ごめんね」

「わたしたち…ほんとは内緒話してたんだ…」

「…唯先輩…」

182 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:21:27.48 sZpH8Ko+0 160/182

「……」

クルッ

「…古畑さん、さわちゃんは、わたしたちが殺しました。わたしたち4人で」

「……」

「…くっ…!」

「憂は…殺しには関係ないです。ただ、わたしたちのアリバイ作りに協力してくれただけで」

古畑「……」

「あの…古畑さん」

「どこで…私たちが犯人だと思ったんですか?」

古畑「えー…決定的だったのは、唯さんの発言です」

「ふぇ?わたし?」

古畑「あなたと憂さんに職員室に案内してもらった時のこと、覚えていますか」

「職員室に…?そういえばそんなことあったような…」

183 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:22:12.20 sZpH8Ko+0 161/182

古畑「あの時あなた、『マンモスの肉』の衣装がかわいいと言っていました。さも見てきたかのように。まぁその時は私もそれに気づかなかったんですが…結果それが失言になってしまったわけです」

古畑「…残念でした」

「…そっかぁ…」

「あはは…やっぱりわたし、おっちょこちょいだなぁ」

「みんな…ほんとにごめんね!」

「お姉ちゃん…」

「ははっ…せっかくさっきはカッコよかったのにな」

「ううん…唯ちゃんが謝ることないわ」

「私だって、被服室にリップクリーム落としてたし…」

「まっ、あたしたちに完全犯罪なんて無理だったってこったな」

184 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:22:39.61 sZpH8Ko+0 162/182

「先輩方…みんな…大バカです!」

「!?」

「こんなことされて私が喜ぶと思ってたんですか!?」

「梓ちゃん…」

「梓…」

「私のせいで、先輩方や憂が犯罪者になって…、私はひとりぼっちになって…」

「みんなで…最高のライブしようって、言ったのにっ……うっ…」

「あずにゃん…」

185 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:23:08.06 sZpH8Ko+0 163/182

ダキッ

「!」

「ごめんね、あずにゃん」

「…!……うっ……うっ…」

「わたしたちは、一足早くいなくなっちゃうけど…」

「ひっぐ…っ……えぐっ…!」

「わたしたちは、いつまでも、いつまでも…!」

「放課後だから!」

「…へっ?」

「…はい?」

「だから…だからね。心配いらないよ、あずにゃん」

「えっ…あ、はい…」

(ちょっと、意味が…)

(お姉ちゃん…!)

(…唯らしいな)クスッ

186 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:23:36.48 sZpH8Ko+0 164/182

古畑「……」チラッ

古畑「時間だ…そろそろライブが始まる」

古畑「我々は客席で拝見しています。最後のライブ、頑張ってください」

「…………」

「いや…もういいですよ、古畑さん」

古畑「はい?」

「今のあたしたちじゃ、とてもみんなに顔向けできないし…」

「それに…」

「澪ちゃん…?」

「人を殺した手で、楽器を演奏しちゃいけないと思いますから」

「…だな」

「澪さん…」

「…そうね」

187 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:24:20.24 sZpH8Ko+0 165/182

「と~か言っちゃってぇ、本当はファンクラブのみんなの前に立つのが恥ずかしいだけだったり?」

「んなっ、バカ…そんなわけないだろ!」

「……ははは、冗談だよ」

「…りっちゃん…、あはは、意地悪はやめてあげなよ」

「…ふん、バカ律…」

「…あら、あら」

「……」

「梓…ごめんな」

「いえ…、先輩方の決めたことですから。従います」

188 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:24:48.79 sZpH8Ko+0 166/182

古畑「…非常に残念です。一度、あなた方の生の演奏を聴いておきたかった」

「…えへへ…」

「その言葉だけで…うれしいです、古畑さん」

古畑「…お連れして」

西園寺「わかりました」

西園寺「こちらへ…」

ゾロゾロ…

189 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:25:14.42 sZpH8Ko+0 167/182

「…先輩!」

「あずにゃん…?」

「どした?」

「いつか…また…」

「武道館じゃなくても…小さいライブハウスでも」

「近所の公園でも、道端でも、どこでもいいですから…!」

「きっと…きっとまた、一緒に演奏しましょう!」

「あずにゃん…」

「…へへ」

「私…、それまでみなさんのこと、ずっとずっと待ってますから!」

「…うん!」

「ありがとう、梓ちゃん」

「約束だ、梓」

190 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:25:42.63 sZpH8Ko+0 168/182

「それから…、憂」

「え…?」

「今度…おいしいお菓子の作り方、教えてよ」

「…うん、わかった!」

「よーっし、こうなったら早く梓との約束を果たすためにも…」

「次は『だつごく!』だね!」

「おう!そうだな!」

「お前ら反省しろっ!」

ガツンッ!

「あいたっ!だからなんであたしばっかり…」

「あらあら」

191 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:26:18.54 sZpH8Ko+0 169/182

「…唯、あなたもよ」

「あ、和ちゃん…」

「憂も。しっかり反省して出てくるのよ」

「…はい」

「…ごめんね、和ちゃん」

「バカね、唯ったら…。みんな大バカよ」

「……」

「さよならは言わないわ」

「…またね、和ちゃん」

「落ち着いたら…面会に行くから」

ゾロゾロ…ガチャ…バタン

192 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:27:06.31 sZpH8Ko+0 170/182

「……」

「……」

古畑「…お二人はどうされますか?」

「私は…仕事が残ってます。生徒会長として、きっちりみんなに説明しないと」

古畑「そうですか…」

古畑「中野さんは」

「え…」

「一緒に…行く?」

「…私は……」

「私は…いいです」

「いつかまた先輩方と、放課後ティータイムとしてみんなの前に出たいですから」

「それまでステージには立ちません」

193 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:28:06.53 sZpH8Ko+0 171/182

ザワ…ザワ…

今泉「幕開くの遅いなぁ。もう予定の時間5分は過ぎてるのに!」

今泉「あ…あ!開いた!やっと開い…あれ?」

今泉「だ、だれあれ…。あ、生徒会長の子だっけ」

今泉「いやあの子もかわいいけど…放課後ティータイムは?」

今泉「え?え?」






198 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:33:49.93 sZpH8Ko+0 172/182

巡査・今泉慎太郎

~澪たんは俺の嫁!の巻~

199 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:34:26.34 sZpH8Ko+0 173/182

えーみなさんどうも、今泉慎太郎です。

さっそくですが、自分の学生時代を思い出してください。

部活動は帰宅部、授業中は廊下に立たされ、テスト中にはカンニングがバレて…。

…好きな人にはフラれる。

そんな学生時代を送ってきたのではないでしょうか。

…もちろんそんなことはないというイヤミなやつもいるでしょうが…。

それはともかく、学生時代には良くも悪くもたくさんの思い出が詰まっているものです。

えー、私の学生時代といえば……っ…うっ…ぐすっ…。

200 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:36:31.16 sZpH8Ko+0 174/182

~鑑識課研究室~

桑原「そういえば聞いたよ~、今泉さん!」

今泉「なにが」

桑原「今回の犯人、現役の女子高生たちだったんだって?」

今泉「それが」

桑原「いやーすごいよなぁ。友達や後輩を悪徳教師から守るための犯行だってね」

桑原「僕が高校生の頃なんて、近所の小学校のプールに裸で飛び込むとかさぁ、やんちゃばっかりしたもんだよ…」

桑原「それと比べたら…、不謹慎だけど立派な子たちだよねぇ」

今泉「……」ムスッ

202 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:37:10.62 sZpH8Ko+0 175/182

桑原「…どうしたのさ今泉さん。機嫌悪いの?」

今泉「どうもこうもないよぉ!古畑のヤツ!」

桑原「ちょっとちょっと、どうしたのよ」

今泉「あいつがライブ楽しんで来いって言ったから放課後ティータイムのライブ観にいったのに、あの野郎ライブの直前にあの子たち逮捕しちゃったんだよ!?」

今泉「狙ってるとしか思えないよぉ!」

桑原「まぁまぁ、落ち着いて…。古畑さんもそこは仕事なんだからさぁ」

今泉「それにしてもだよぉ!」

桑原「落ち着きなさいってあんた…、それよりなによ、その放課後ティータイムって」

今泉「逮捕された子たちが組んでたバンドの名前だよ。生徒会が保管してたDVD見せてもらったんだけど、いやぁ、かわいかったなぁ!」

桑原「へぇ、そうなの」

204 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:41:28.08 sZpH8Ko+0 176/182

今泉「実は…」

桑原「なに」

今泉「…………」ニタニタ

桑原「なによ」

今泉「持ってきちゃった」

桑原「…なにを?」

今泉「ライブのDVD」

桑原「ちょっ…何やってんの!?おたく一応警察官でしょ!?」

今泉「いいんだよ捜査資料ってことで。バレないようにこっそり持ってきたし」

桑原「こっそり持ってきちゃダメでしょ!きちんと許可得ないと」

桑原「悪いこと言わないから返してきなさいって」

今泉「ダビングしてから返すよ」

205 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:43:01.10 sZpH8Ko+0 177/182

今泉「…てかさ、観たい?観たい?」

桑原「いやいいよ別に」

今泉「観たいでしょ」

桑原「いいってば」

今泉「というかうちのDVDプレーヤー壊れちゃってるからさ、ここで見せてよ」

桑原「結局あんたが観たいんじゃないか」

今泉「じゃあ観るよ」

桑原「どうなっても知らないからね?」

今泉「これはまだ観てないんだよなぁ」

206 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:43:35.38 sZpH8Ko+0 178/182

カシャ…ウィーン

今泉「おっ、映った!映った!」

桑原「……」

今泉「うひゃあ、かわいいなぁ」

ワン、ツー、スリー、フォー、ワン、ツー、スリー!

ジャカジャカジャンジャンジャカジャンジャカジャン…

桑原「……」

キミヲミテルト イツモハートドキドキ…

今泉「澪ちゅわあああああん!」

桑原「おたく傍から見てたらけっこう気持ち悪いよ?」

207 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:44:50.57 sZpH8Ko+0 179/182

イーツモガンーバール キーミノヨコーガオ…

桑原「……」チラ

ユーメノナカーナーラ フータリノキョーリー…

桑原「…ちょっと…かわいいねぇ」

今泉「だろぉ!?こっち来て観なよ」

桑原「……」ススス…

アーアーカーミサーマオネーガイー フタリーダーケーノ…

今泉「うわああああああ!澪ちゃあああああん!」

桑原「ちょっと今泉さん、聞こえないってば!」

今泉「いいんだよ!ライブなんだからこれぐらい盛り上がっても!」

桑原「外にまで聞こえちゃうから、ほら…」

208 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:45:23.45 sZpH8Ko+0 180/182

フワフワターイム、フワフワターイム…

今泉「ふわふわターイム!ふわふわターイム!」

桑原「……」

ジャーン…!

ワアアアアアア…

パチパチパチパチパチパチパチパチ…

『…みんな、ありがとー!』

今泉「こっちこそ生まれてきてくれてありがとー!!」

桑原「いやーでも、これはいいもの観…」

『きゃっ』

ガシャァンッ!

今泉桑原「!!!」

209 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:46:16.51 sZpH8Ko+0 181/182

桑原「こ、これは…」

イ、イヤアァァァァァァァァ…

今泉「み、澪たんのパンチラだあああああ!」

今泉「巻き戻し巻き戻し!」

桑原「ちょっと今泉さん!今のはさすがにマズイよ!」ガバッ

今泉「いいじゃん、ちょっとぐらい!」

桑原「限度があるでしょうが限度が…!」

グググッ…

ポトッ

桑原「…ん?今泉さんなんか落としたよ」

今泉「え?…あっ!それはァ!」バッ

桑原「おっと、危ない」ヒラッ

桑原「えーっと、なになに、『秋山澪ファンクラブ』…?」

今泉「……」

桑原「……」

211 : ◆rj8f62QL3ukR - 2012/09/19 01:47:39.00 sZpH8Ko+0 182/182

今泉「……」

桑原「……」

桑原「今泉さん…、これ、なに?」

今泉「なにって…会員証」

桑原「どうしたのこれ」

今泉「生徒会室にあったから…。DVDと一緒に持ってきちゃった」

桑原「持ってきちゃったじゃないでしょ」

桑原「…あのさ、今泉さん。この子、逮捕されたとはいえ未成年の高校生なんだよ?」

今泉「あなた警察官なんだからさ、その辺の良識はわきまえようよ」

今泉「……」

今泉「……っ…」

今泉「…………はぅっ!」ガシッ!

桑原「ああよしよし、諦めようね」

アーヨシヨシ… ガチャ…バタン





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