「ただいまー」
妻「!」
妻「夫が帰ってきたわ!」
間男「ええっ! ボクはどうすれば……」
妻「いつものようにこの部屋に隠れてて。絶対大丈夫だから。声を出しちゃダメよ」
間男「うん、分かった」
妻「お帰りなさーい」
元スレ
妻「夫が帰ってきたからこの部屋に隠れてて!」間男「うん、分かった!」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1632042915/
妻「すぐご飯出すわね」
夫「うん」
夫「……」
夫「あのさ、君俺になんか隠し事してない?」
妻「えっ!?」ドキッ
妻「なにも隠してないわよ。私はあなたを愛してるもの」
夫「ならいいんだけど……」
妻「あ、そうだ! テレビつけましょ、あなたの好きなドラマ始まるから!」ピッ
夫「ああ、そうだな」
TV『俺は決して諦めない刑事(デカ)……今日も難事件が俺を呼ぶ』チャララー
夫「お、始まった始まった」
妻「ビール飲む?」
夫「いただくよ」
妻「今日も一日、お疲れ様」トクトク
夫「おっとと」シュワワ…
妻「……」ホッ
……
妻「今日も素敵よ……」
間男「んっ……」
夫「ただいまー」
妻「帰ってきた! 隠れて! 絶対バレないから!」
間男「うん、分かった!」
妻「お帰りなさい」
夫「なんかずいぶん汗かいてるな」
妻「え、あ……そう? ああさっきエアロビクスしたからかも」
夫「エアロビクス? どうして?」
妻「ほらやっぱり、私も女だもの。美しい体型は維持したいわ」
夫「そうか、感心だな」
妻「……」ホッ
妻「お風呂にする? ご飯にする?」
夫「先に風呂入るよ」
妻「じゃあご飯用意しておくわね」
夫「いただきます」
妻「たくさん食べてね!」
TV『今夜のテレビスペシャルは未解決事件特集! 昭和、平成の未解決事件を……』
妻「お食事時に辛気臭い番組ね。チャンネル変えましょ」ピッ
夫「……」パクパク
妻「どう? おいしい?」
夫「ああ……おいしいよ」
―会社―
同僚「飯食いに行かないか?」
夫「……」
同僚「おーい!」
夫「あ、悪い」
同僚「どうした? ボーっとして」
夫「妻が隠してることを……なんとか暴きたくてね。色々考えてたんだ」
同僚「奥さんが? おいおい、浮気でもしてるってのか?」
同僚「そういや俺の兄貴も浮気バレて、修羅場になったっけなぁ」
夫「お前の兄さんが?」
同僚「そう。お前は兄弟いたっけ?」
夫「弟がいたよ。で、なんでバレたんだ? ワイシャツに口紅がついてたとか?」
同僚「お前もベタなこというね。半信半疑だったけど、兄貴の嫁さんが一か八か乗り込んだらしい」
同僚「そしたら兄貴と浮気相手のベッドシーンに出くわして……って具合さ」
夫「……一か八か、か」
夫「ただいまー」
妻「!」
妻「帰ってきたわ! 隠れて隠れて!」
間男「うん、分かった」
妻「絶対出てきちゃダメよ。この部屋に隠れてれば見つからないんだから」
間男「はーい!」
妻「はい、ご飯よ」
夫「ありがとう」
夫「……」パクパク
妻「おかわりは?」
夫「お願いするよ」
夫(尻尾を出しそうで……全く出さない)
夫(こうなったら同僚の兄嫁の如く、一か八か乗り込むしかない!)
―会社―
夫(今日はすこぶる体調がいい)
夫(朝食もしっかり取って、“今日は遅くなる”と会話中にほのめかしておいた)
夫(だからこそ――)
夫「課長!」
課長「なんだね?」
夫「出勤したばかりですが早退します!」
課長「えええええ!?」
夫(俺が早退するとは、夢にも思ってないはず)
―自宅―
夫「……」ザッ
夫(俺は結婚してから今まで、早退したことは一度もなかった)
夫(それどころか、いつもだいたい同じぐらいの時間に帰っていた)
夫(なんとなく、それがいつか役に立つ日が来ると思っていたからだ。そしてそれは今!)
夫(しくじりは許されない!)
夫「……」グッ…
夫(鍵がかかってる)
夫(ならインターフォンを――)ピンポーン
妻『はい?』
夫(うまくカメラから身をかわしつつ……)
夫「宅配便でーす」
妻『はーい!』
ガチャッ
妻「ご苦労さ……!」
夫「ただいま」
妻「あ、あなた!?」
夫「どけえっ!!!」ドンッ
妻「きゃっ!」
夫(もう後戻りは……できないッ!)ダッ
夫「おーい!」
夫「おーい!!」
夫「おーい!!!」
妻「なにするの、やめてよ!」
夫「家のどこかにいるんだろ! 隠れてないで出てこい!」
妻「やめてっ!」
夫「うるさい!」バシッ
夫「頼む、出てきてくれ!」
ゴソ…
妻「ダメ! 出てきちゃダメ!」
夫「やっぱり誰かいるのか! 出てきてくれ!」
間男「……」コソ…
夫「……!」
妻「ダメだったら! 何やってんのもう!」
間男「あなたは……?」
夫「夫です」
間男「あなたが……。初めまして」
夫「いや、俺と君が会うのは初めてじゃないんだ」
間男「え……?」
夫「俺だよ……兄ちゃんだよ……」
間男「兄ちゃん……?」
夫「覚えてないか? 俺とお前がまだ幼い時、俺たちは鬼ごっこをしていた」
間男「鬼ごっこ……」
夫「だが、その時……お前はある女に誘拐されたんだ」
夫「親も警察も必死で捜したが、見つからなかった」
夫「いつしかみんな諦めた……だが、俺だけは諦めなかった。大人になっても密かにお前を捜し続けた」
夫「そんなある日……俺は誘拐犯にそっくりな女を見つけた!」
夫「俺はその女に近づいてアプローチ……スムーズに結婚までこぎつけられた」
夫「俺も弟と似てるから、女の好みのタイプだったんだろうな」
夫「女ってのが誰だかはいうまでもないよな? そう、そこにいる妻だ」
妻「くっ!」
夫「結婚し、俺は妻のいる家に住むようになった」
夫「弟の生存を信じてた俺は、サラリーマンをする傍ら、なんとか妻の尻尾をつかもうと思った」
夫「だが……妻と弟のつながりはなかなか発見できなかった」
夫「下手に突っ込むと、弟を処分される恐れもあると思ったから、慎重にならざるを得なかった」
夫「だけど今日――やっと見つけることができた!」
夫「まさか、よりによって自宅に監禁してるとは思わなかったからな……。巧妙な隠し部屋があったんだろう」
夫「俺が家にいる時は妻として振る舞い、いない時は監禁してる弟と愛し合う」
夫「まったく情けない話だよ……」
夫「思い出してくれ! 俺が兄ちゃんだ!」
間男「あなたが……ボクの兄ちゃん……」
間男「うっ、頭が……!」
夫「しっかりしろ!」
間男「ボクはあの女の人にずっと閉じ込められてたけど……」
夫「……!」
間男「思い出した……あなたは兄ちゃん……大好きだった兄ちゃん……」
夫「おおっ! 思い出してくれたか!」
間男「兄ちゃん……!」
夫「弟!」
間男「全部思い出したよ! ボクたち鬼ごっこしてたよね!」
夫「ああ、そうだ!」
妻「感動の再会はそこまでよ!」
夫「!」
妻「せっかく誘拐して、長い時間かけて実の兄を忘れるほど調教してやったのに全てパー……」
妻「余計なことしやがってぇ! あんたとなんか結婚するんじゃなかったわ!」サッ
夫「包丁……!」
妻「悪いけど警察に捕まるなんてゴメンなの……二人とも刺し殺してやるわァ!」ダッ
夫「久々の再会ついでに……遊びを再開しようか」
間男「うん!」
夫「鬼ごっこだ!」
間男「もちろん鬼はあの人だね!」
夫「だああっ!」
間男「でやぁっ!」
バキィッ!
妻「ぶげあっ……!」
妻「うう……っ」ピクピク
夫「やったな、弟!」
間男「うん、兄ちゃん!」
夫「今のうちに通報しよう。平成の未解決事件を一つ解決することができた」
間男「……」
夫「暗い顔してどうした?」
間男「この人は捕まるけど……ボクは……これからどうすれば……」
夫「心配するな。これからは俺がお前を守ってやる」
間男「兄ちゃん……」
夫「お前が独り立ちできるよう支援するし、それができなくても一生面倒を見る」
夫「俺たちはずっと一緒だ!」
間男「ありがとう……兄ちゃん」
夫「……」
夫(最後まで諦めないでよかった。俺が好きなドラマの刑事のように……)
おわり