結衣「ハァハァ…これが京子のオリモノシート……」
結衣「これさえあれば、また京子に……」
結衣「ふふ」
結衣「はは、あーはははっ!」
結衣「あぁ、待っててね京子」
元スレ
結衣「ハァハァ.....これが京子のオリモノシート.......」
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あかり「うぅ……京子ちゃん」グスッ
ちなつ「なんで、なんで死んじゃったんですか」
結衣「…………泣いちゃだめだよ二人とも」
ちなつ「でも、そんなこと言われても」
あかり「京子ちゃんがいないと悲しくてしかたないよぉ」
ちなつ「結衣先輩は大丈夫なんですか? 泣いてもいいんですよ。私たちのために強がらなくていいんですよ」
あかり「そうだよぉ、結衣ちゃんが一番悲しいんじゃないの」
あかり「結衣ちゃんは京子ちゃんとずっと一緒だったから」
結衣「ふふふ、大丈夫だよ」
結衣「だって、京子にはもうすぐ会えるから」
あかり・ちなつ「……え?」
ちなつ「な、なに言ってるんですか。だって京子先輩の遺体はもう灰に」
あかり「結衣ちゃんそこまで追い詰められてたの」
結衣「ははは、私は正常だって」
あかり「なんで、常識的に考えてそんなことあるわけないよぉ」
結衣「……見つけたんだよ」
あかり「見つけた?」
結衣「京子の織物四糸を」
ちなつ「オリ、モノ……シート……?」
あかり「なにそれ?」
結衣「……そうだな、直接見てもらってほうが早い」
結衣「私の家にきて、そこにいるんだ」
結衣「京子が」
ちなつ「ね、ねぇあかりちゃんどういうことなの」ヒソヒソ
あかり「あかりが聞きたいくらいだよぉ」ヒソヒソ
ちなつ「やっぱり、結衣先輩おかしくなっちゃったんだよ」
ちなつ「京子先輩が生き返るだなんて」
あかり「でも、このままじゃ結衣ちゃんなにするかわかんないよぉ」
あかり「とりあえず家までついていってあげよう」
あかり「もし、本当にまいっちゃってるならあかり達がなんとかしないと」
ちなつ「あはは、分かりました行きましょう」
結衣「うん、きっと二人とも驚くよ」
あかり「……わぁい、楽しみだなぁ」
結衣「ふふふ」
結衣の家
あかり「ふぅ、やっとついたよぉ」
ちなつ「……今日、やけに寒いね。まだ10月なのに真冬みたいだったよ」
結衣「それなら家の中で温まろう。コタツでも出してさ」
ガチャ
結衣「ほら、入って」
ちなつ「おじゃましま~す」
あかり「失礼するよ」
結衣「いらっしゃい、早速京子とご対面といこうか」
結衣「奥の部屋で待ってるよ」
ちなつ「ほ、ほんとにいるんですか?」
あかり「とりあえず、行ってみようよ」
トトトトトト
ガチャ
結衣「さ、見てよ」
結衣に促され、あかりとちなつは部屋に踏み入る。一見、普段となんら変わりはない。
しかし、その中央に横たわるモノだけが生活感にあふれたこの場所で、ただ一つ異彩を放っていた。
ちなつ「……なに、これ」
あかり「これが、京子ちゃんなの……?」
結衣「すごいだろ、ここまで戻すのに随分苦労したんだよ」
ちなつ「どうなってんのよ……一体」
あかり「夢でもみてるのかな」
銀色の繭、最初はそうとしか思えなかった。
だが、しばらくするとそうでないことに気づく。
よく見ると、銀色の塊はいくつかのパーツに分かれている
頭、胴体、手、足。
大まかな形しか判別することはできない。特に、顔の部分は能面のように鼻や口がない・
けれども、ちなつとあかりは確信した。
人だ。
それは銀色の糸を織ってできた人の形をしていた。
あかり「これが京子ちゃん……?」
ちなつ「触っても、いいですか?」
結衣「そっとならいいよ。あんまり強くすると形が崩れちゃうから」
そっと、顔に触れる。
この世のものとは思えないような肌触りに、ちなつは恍惚とする。
もっと触れていたい。この糸に包まれて眠れば、きっと天にも昇る気持ちになれるだろう。
首、肩、胸。
手を下に移動させていくうちに、あることに気づく。
少し力を入れて糸を押してみる。
ほんの少し柔らかい感触ととに沈み込むが、すぐに硬いものに阻まれてしまう。
ちなつはすぐその違和感の正体に辿りつく。
骨だ。
なんと、この人型は皮膚と骨があるったのだ。
結衣「どう、すごいでしょう」
ちなつ「すごい、見た目は布にしか見えないのに」
あかり「結衣ちゃん、結局これはなんなの?」
結衣「そっか、二人は知らないんだね」
結衣「織物四糸の伝説を」
ちなつ「そうですよ。さっきも言ってましたよね、それ」
結衣「この七森の地には、ある伝説が伝わっているんだ」
結衣「いつの時代から始まったのかは分からないけど、江戸時代には織物四糸の噂があったことは確認されてる」
結衣「曰く、人の体━━━━━四体は銀の糸を織って作られたものだと」
結衣「そして肉体が死を迎えるとき、その糸は解けながらの世界に手繰り寄せられていく」
結衣「でも、その一部分はある時期までこの世界に残っているんだ」
結衣「その人が死んでから100日目までは」
結衣「もし、その日までに糸を見つけられたら死者を蘇らせることができる」
結衣「でも、それだけではダメだ。もう一つしないといけないことがある」
結衣「ここにいる京子みたいに糸を織って肉体を完成させなければならない」
結衣「一日も休まずに。糸を見つけた日から100日間ずっと」
結衣「さもなくば、二度と糸を見つけられなくなる」
結衣「永遠にお別れだ」
結衣「それを知ってからは、死に物狂いで探し回ったよ」
結衣「なんせ、どこにあるかのヒントなんてなかったからね」
結衣「三日三晩、寝ずに駆け回った」
結衣「そして夜明け前、ついに見つけたんだ」
結衣「空に浮かぶ、銀の糸を」
結衣「その日から100日、私は学校にいくとき以外はずっと糸を織り続けた」
結衣「そして昨日、京子の体は完成したんだ」
結衣「はは、ほんとに焦ったよ。途中で倒れちゃわないかって」
ちなつ「信じられないけど……でも、実際にここにある」
あかり「また、京子ちゃんに……会える」
ちなつ「結衣先輩、なら京子先輩はいつ蘇るんですか?」
結衣「残念なことに……これだけじゃ足りないみたいなんだ」
あかり「どうして、もう糸は織り終えたんでしょ?」
結衣「考えてみたんだ、織物四糸の意味を」
結衣「私はさっき人の体を『四体』って表現したよね。それが鍵になると思うんだ」
ちなつ「つまり、どういうことに?」
結衣「うん、四体っていうのは頭、胴、手、足を表すんだ」
結衣「ここにはないんだ、魂が」
結衣「おそらく、織物四糸の『四』は四体を指してる」
結衣「だから体を作り出しても、魂がないと動かない」
結衣「今のままじゃ、京子はただの人形にすぎないんだ」
あかり「魂なんて、織物四糸だけでも非現実的なのにそんなのどうすれば……」
ちなつ「結衣先輩がここまで頑張ったのに」
結衣「安心して二人とも。私にいい考えがあるんだ」
結衣「私の魂を京子に分け与えるんだ」
あかり「えぇ!」
ちなつ「だいたい、どうしたらそんなことが出来るんですか?」
結衣「二人は運命の赤い糸を知ってるよね」
あかり「確か、小指から出ててその糸で繋がってる二人は結婚するってやつだよね?」
ちなつ「あ、それなら漫画とかによくでてきますよね」
結衣「うん、それのことだよ」
結衣「私はそれを見たことがある、私と京子の間に繋がっているのを」
ちなつ「な、なんですって!」
ちなつ「そんな、嘘ですよね。赤い糸で結ばれてるのは私と結衣先輩のはずでは……」
結衣「あはは、ごめんね本当なんだ」
ちなつ「そ、そんなぁ。それじゃあ私は無駄なことをしてきたの」
あかり「ちなつちゃん落ち込まないで」
ちなつ「……はぁ、とりあえず今は京子先輩の復活を優先しましょう」
結衣「やっぱりちなつちゃんは凄いや」
あかり「でも、不思議だね本当に赤い糸が見えるなんて」
結衣「うん。でも、だからこそ私には京子の織物四糸がみえたんだと思う」
ちなつ「……待ってください、魂を半分あたえるなんて。そんなことして大丈夫なんですか?」
結衣「おそらく、寿命の半分を失う事になると思う」
結衣「でも、それでもいい。また京子と━━━━━運命の人といられるんだ」
あかり「結衣ちゃんそこまで京子ちゃんのことを」
あかり「……ねぇ、ちなつちゃん?」チラ
ちなつ「……うん、私もそう思ってた」
あかり・ちなつ「それなら、あかり(私)にも協力させて(ください)」
結衣「二人とも……」ジーン
結衣「気持ちはありがたいけど……ごめん、それは出来ないと思う」
結衣「きっと、魂を分け与えるのは、赤い糸で繋がっていた私にしかできない」
結衣「だから、私にまかせておいてよ」
結衣「それにさ、素敵じゃない?」
結衣「魂を分けた間柄なんてさ」
ちなつ(……嫉妬しちゃうな、ここまで愛されてる京子先輩に)
ちなつ(でも、このくらいハッキリ言われたほうが吹っ切れるかな)
結衣「それじゃあ、そろそろ始めようかな」
結衣「二人にも見ててほしいんだ」
あかり「もちろんだよぉ、断る理由なんてないって」
ちなつ「そうです、起きたら京子先輩に文句いってあげないといけませんから」
結衣「ふふ、二人がいると緊張が和らぐよ」
結衣「……よし、今京子の小指の糸を私の小指にっと」
結衣「…………できた」
ちなつ「……ゴクリ」
あかり「どう、結衣ちゃん?」
結衣「分からない、でも……感じる」
結衣「流れていってる、私の魂が」
結衣「━━━━━あぁ、おかえり京子」
パァ
ちなつ「……っ! 京子先輩の体が!?」
あかり「光ってる!」
スゥゥゥゥゥ
京子の体光を放つ。純粋までな銀色の光を。
あまりのまぶしさに三人は腕で光を遮う。そうしている間にも光は眩しくなっていき、部屋一杯を満たす。
宇宙の誕生を思わせるよなその眩しさは、奇跡の到来を確信させた。
光が収束する。
目を開いた。
「……ただいま、結衣」
声が、聞こえる。
懐かしい声が。
結衣「あぁ……グスッ。おかえり」
京子が帰ってきた。
数日後
結衣(私の予想どおりに、京子は蘇った)
結衣(でも、変化はそれだけではなかった)
結衣(なんと、京子が死んだことすら、なかってことになっていた)
結衣(死んでいた間の出席だって取られていたし、宿題も提出されていた)
結衣(京子はずっと生きていたというふうに、現実が改変されていた)
結衣(覚えているのは、京子を含めた娯楽部の4人だけ)
結衣(いったい、織物四糸がなんだったのかは分からない)
結衣(でも、そんなことは大した問題じゃない)
結衣(私の隣には京子がいる。ただ、それだけで十分だ)
結衣「おい、京子。また宿題やってないのか」
京子「しかたないだろ~、死んでる間に範囲が進んでるんだからさ~」
結衣「……いつもやってなかってくせに、どの口がそれを言う」ペシ
京子「おぅ! ひさびさの結衣のツッコミ」
結衣「はぁ、私も手伝ってやるから終わらせるぞ」
京子「さっすが結衣。たよりにしてるよ」
結衣「おいおい、自分でもやるんだぞ」
京子「わかってるって」
結衣「はぁ、どうだか……ねえ、京子」
京子「ん?」
結衣「これからも、ずっと一緒だよ」
京子「……結衣」
結衣「ふふ、絶対どこにもいかせないぞ」
結衣「なんたって私たちは運命の赤い糸で結ばれてるんだからな」
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とりあえず終わり