友紀「冬は、あたしの季節だと思うんだよね」
P「ほう?」
友紀「だってさ、友紀だよ、ゆき。ほら、今年もいっぱい降ってるじゃん!」
P「……あぁ、雪のことね。発音はちょっと違うけど」
友紀「同じようなもんだよ! ゆーぅきやこんこっ、あーられーやこんこっ」
P「ユッキがたくさん降ったら、さぞやかましい冬になるんだろうな……」
友紀「いっぱい降って、賑やかにしてあげるからね♪」
P「1人で間に合ってるから結構ですぅー」
友紀「ちぇー」
元スレ
姫川友紀「あたしの季節」
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1536930770/
P「ていうか、お前降ってくるとかどういう状況だよ、それ」
友紀「そりゃあ……こう、ふわふわーって。飛行石的な」
P「随分神秘的な降り方するんだな」
友紀「親方! 空から担当アイドルがっ」
P「受け止めるの俺かい」
友紀「え。受け止めて、くれないの……?」
P「……いや、まぁ、受け止めてやらないこともない、けど」
友紀「よかったー。女房役なんだから、そこんとこよろしくね!」
P「はいはい…」
友紀「受け止めてよ? 約束だからね!?」
P「分かったって」
結城晴「なー、今オレのこと呼んだ?」にゅ
友紀「あ、晴ちゃん」
P「おん? いや、呼んだ覚えはないけど」
晴「あれ、っかしーな。気のせい?」ゴソゴソ
P「流れるように炬燵に入るんだな……」
晴「だって足寒いし。あったら入るだろ、コタツ」
P「わかる」
晴「てか、コタツでパソコン叩いてるやつに言われたくねーよ」
P「それもそうだな、ははは」
晴「はー、あったけー…」
友紀「晴ちゃんも降る?」
晴「は?」
P「話しの振り方が唐突すぎる」
友紀「お、雪だけに降り方って? うまい!」
P「そんなつもりじゃなかった」
晴「……何の話してんだよ」
友紀「空から降ってこようね、って話!」
晴「何の話だよマジで」
P「違うでしょ。冬の話だったでしょうが」
P「雪が降るんだから友紀の季節だって、自分で言ってただろう」
友紀「そうだったそうだった」
晴「……いや、友紀は降らないだろ。フツー」
P「うん。冷静なツッコミありがとう」
友紀「……それはどうかな?」
晴「え?」
友紀「あたしが降ってこないなんて、本当に言い切れる?」
P「一体何を言っているんだお前は」
友紀「最後まで何が起きるか分からないのが、野球。ならあたしにだって、最後まで何が起きるかは分からない……!」
晴「…っ! 確かに。サッカーだって、ロスタイムの最後の瞬間まで勝ち負けはわからねえもんな!」
友紀「そういうこと!」
P「落ち着け晴。ノせられるんじゃない」
友紀「それにさ。余所から見ても、冬が似合うって言われてるんじゃないかと思うんだよね、あたし」
晴「へー?」
友紀「ほら、前にやった雑誌の企画で、冬のカバーガールとかやらせてもらったでしょ?」
晴「ああ、アンケートのやつだっけ」
友紀「そうそう! ウィンタースポーツが似合うアイドルランキング、って」
P「んー……スポーティなイメージが功を成した、ってところかな」
友紀「雪山でスノボ、楽しかったなぁー!! また行きたい!」
晴「あ、いいなー! スノーボード、カッコいいじゃん! オレ、スケボならちょっとはできるんだけど……」
友紀「初めてだったからいっぱい転んじゃったけど、でも楽しいよ? 今度、晴ちゃんにも教えてあげる!」
晴「やりィ! 行こうな、山!!」
友紀「うん!」
P(……雪ある内に、どこかで日程空けられるよう調整してみようか)
友紀「サンタもやったね! しゃららんらー♪ って」
P「そうだそうだ。先月は、本当にお疲れ様」
晴「ん? なんかあったのか」
P「スケジュールぎゅうぎゅうでな。イベントに撮影に、オファーがたくさんあって」
友紀「ほんとだよ! 忙しくって、毎日サンタ服着てたような気がする…」
P「悪かったよ、ゴメン。でも、その分評判はすこぶる良かったし。内容も完璧だった」
晴「ふーん。良かったじゃん」
友紀「……それで?」
P「え」
友紀「サンタさんなあたしの印象、それだけだった?」
P「あ、あぁ。冬の女ってのも、あれを見れば確かに納得だな。良いサンタっぷりだったぞ? なぁ?」
晴「いやオレに訊かれても」
友紀「……まあいいか。うん、オッケーってことにしたげる」
P「?? お、おう」
友紀「ふふ。あそこの商店街にも、また行けるといいなぁ」
友紀「ね? あたしってば、やっぱり冬の女じゃない?」
P「そうだなぁ……」
友紀「……ちょっと、テキトーに返さないでよー」ブー
P「あぁいや、何て言うか……こうして思考とか行動が停滞しがちな冬だからこそ、元気で活発な子がより映えるのかなぁ、なんて思ってさ」
友紀「なるほどっ。良い解説だったね」
晴「コタツでぬくぬくしてる今のどこが活発なんだ?」
友紀「今は良いんだよぉー。晴ちゃんだって、こたつ入ってるじゃーん♪」
晴「まあなー」
友紀「本業の野球はオフシーズンだけど……その分、野球以外のはつらつプレーで冬を楽しんで、乗り越えていくんだよ! それが、あたし流の冬っ!」
P「本業はアイドルの筈では……」
愛野渚「話は聞かせてもらったよッ!!」バーン
友紀「ひゃっ」
晴「うお?!」
渚「どーもッ!」
P「な、なんだ、渚か……どうした?」
渚「ふっふっふ……野球以外で溌剌プレー。私聞いた、聞いちゃったよ友紀さん」
友紀「へ?」
渚「ズバリ! 外で野球ができなくて、むずむずしていると見たッ!」
友紀「な、なにー! そうだったのかーー!!」
晴「他人事みたいに言うんだな……」
渚「この雪だもん。外に出たって雪合戦するくらいで、キャッチボールもやれてないんでしょ?」
友紀「そうだねぇ…」
渚「レッスン以外でも身体を動かしたくて仕方ないッ! そうでしょ、友紀さん!?」
友紀「ぐ……そこまでバレてるなんてっ」
渚「ここでクイズです。そんな友紀さんにオススメな、冬でもできる球技といえばー?」
友紀・渚「「バスケットボール」ッ!」
渚「正解!!」
晴「……なぁ、急に何なのこのノリ」
P「さあ? でも、大体いつもこんな感じだぞ」
晴「マジかよ」
P「体育会系の部活出身同士、通じるものがあるんじゃないかな」
晴「ふーん……室内だったら、フットサルだってあるのにな……」ボソ
渚「だったら、答えは1つッ!」
友紀「よしゃ! バスケしに行こっか、渚っち!」
渚「決まり! コートはもう、取ってあるんだ!」
P「すげえや、今の会話でそこまで意思疎通が成り立つのか」
晴「体育会系こえー…」
渚「ほら、晴ちゃんも! 部屋でこたつむりしてないで、バスケで汗かこーよッ! ね?」
晴「え、オレも? でもオレ、手ェ使う競技って苦手なんだよな……」
渚「じゃあ、ドリブルからだね。教えてあげるからさッ!」
友紀「大丈夫、あたしもあんまり上手じゃないし。それに、渚っちは教えるのも上手いから!」
晴「んー……よぉし。やってやろーじゃん」
渚「そう来なくっちゃ! プロデューサーは?」
P「見てお分かりの通り、俺まだ仕事中なので」
渚「まぁ、そうだよね。お疲れ様!」
P「あいよ。しばらくしたら様子見に行くから、それまでよろしくなユッキ」
友紀「はいはーい、任せて!」
晴「なーなー、行く前にコンビニ寄っていいか? オレ腹減ってさ」
渚「お、買い食い? あんま食べ過ぎると、晩ごはん入らなくなるぞ?」
晴「今から消費するから平気だし。成長期ナメんな?」
渚「あっはは! そうだったね、ゴメンゴメン!」
友紀「飲み物も買っていこっか。おねえさんが奢ったげるね♪」
晴「マジ!? サンキュー!」
渚「ゴチになりまーすッ!」
友紀「それじゃプロデューサー、行ってくる!」
P「はい行ってらっしゃい、寒いから準備運動しっかりな」
友紀「はーい♪」
ドタドタ……
P「……ふぅ。急に静かになっちゃったな」
prrrr♪
P「ぬ、ちひろさんだ。はいもしもし?」
P「……は? バラエティで、バンジージャンプ? この真冬に? 正気かよ」
P「いえなんでもないです 口が滑りました。や、でも、急にバンジーの企画だなんてそんな……」
P「……あー」
P「うん。そうだね」
P「ちひろさん。その仕事、ウチの部署に任せてもらえませんか?」
【このあとめちゃくちゃ友紀が降った】
―――
――
―
友紀「春は姫川っ」
P「清少納言かな」
友紀「ようよう強くなりゆく球際!」
P「『白くなりゆく山際』だよ なんで平安時代に守備練習やってるんだ」
友紀「え? 春になったら、球際に強くなるよねって話じゃないのコレ」
P「おいそれマジで言ってんのか? 下手すりゃ中学の国語の教科書だろ」
友紀「でも、けまりとかやってたんでしょ? ならボール使った練習もどこかでしてたんじゃないの」
P「……やってたかもしれないけど。少なくとも枕草子は、当時の練習の様子を綴る熱血スポ魂エッセイではなかった筈だ。絶対に」
友紀「細かいことは良いの! どんなスポーツでも、実戦練習は大事なんだよ、うんうん」
友紀「昔の人たちもきっと、雪で外に出られなくて練習できなかった分、春になったら気合入れて練習してたに違いない!」
P「……まぁ、確かに?」
友紀「そういえば、平安時代ってグローブとかあったのかな?」
P「だから野球の話じゃねっつーの」
大槻唯「ちーっす。2人で何の話してんの?」
P「お、唯」
唯「よっすー! プロデューサーちゃん、おっつっつー♪」
友紀「唯ちゃん唯ちゃん! 丁度よかった、1つ聞きたいことがあってさ!」
唯「ふぇ? ゆ、ゆっきー、いきなりどしたん?」
友紀「現役高校生の唯ちゃんにだから聞ける、重要なことがあるんだよ!」
唯「確かに、ゆいは現役JKだけどー。そこ、そんなに大事なの?」
友紀「とっても!」
唯「ふーん。……なになに? もしかして、コイバナ!? ゆっきーもコイバナしちゃう?!」キャー
友紀「平安時代に、野球ってあったと思う?」
唯「それJK関係なくない?」
P「気にしないでやってくれないか。春の陽気で頭もユルくなっちゃったんだろう。きっと」
唯「……せーしょーなごん?」
友紀「そうそう。学校でやったんじゃないかなと思って」
P「おい、唯は唯で大丈夫なのか? 漢字怪しい人のイントネーションじゃなかったか」
唯「むー。プロデューサーちゃん、ゆいのこと疑ってるのー?」
P「今の聞くまでは信用してたよ」
唯「んもー! まくらのそーしぐらい分かるって! 授業でちゃんと習ったもん!」
友紀「本当!?」
唯「ホントだってば! 良い? いくよ?」
唯「春はあげぽよ☆」
P「ダメだこりゃ」
唯「よーよー白くなりゆく……えと、なんだっけ。生え際?」
P「急に悲しいテーマになったな……」
唯「yo yo!」
P「ラップっぽく言ってもダメです」
友紀「あー…」
P「おいコラちょっと待て。あーじゃないんだよなんでそんな目でこっち見るんだ よく見ろまだ全然元気だっつーの」
唯「イエーイ! チェケラ♪」
友紀「野球部の話じゃなかったんだね」
P「当たり前だろう」
唯「アゲアゲな白髪おじさんのお話でもなかったのかー」
P「性別すら変わってるし……いやそれはそれでちょっと読んでみたいけど!」
友紀「あたしもそれにあやかって、ノックでも受けようかと思ったのになぁ」
P「残念でした」
唯「んん? ねぇねぇゆっきー、まくらのなごちゃんが、なんで野球の話になるワケ?」
P「おいおーい、ついに混じっちゃったよ。ウチの子たちがほんとすみません、清少納言さん……」
友紀「外でボール使った練習ができるようになるから、春になると球際に強くなるんだと思ってさ」
唯「タマギワ?」
友紀「えっとね、捕球の瞬間的な判断力っていうか。速いボールへの対応の上手さ、みたいな感じ」
唯「へー。むつかしい言葉があるんだねぇ…」
友紀「ボール使った練習じゃないと、こればっかりは鍛えられないから!」
友紀「冬の間は室内練習ばっかりだった球児たちが、雪が融けると一斉にグラウンドで練習を始めるじゃん? あたし、あのフレッシュな雰囲気好きなんだよねぇ……」
P「ああ、それは分かる気がする」
友紀「でしょ! なんかさ、こう……やる気に満ちてる! 待ってました! って感じ。たまんないよね!」
唯「ふーん。ゆいにはよくわかんないや」
友紀「せっかく春なんだもん。あたしも外に出て野球したい! ボール触りたい!」
唯「えー、まだ寒くない? もうちょっと中でのんびりしてようよー」
友紀「ちっちっち、甘いよ唯ちゃん」
唯「甘い?」
友紀「甘い甘い、その手に持ってるキャンディーより甘い!」
唯「マジ?! 激甘じゃん、やったねー☆」
P「喜ぶべきところではないと思う」
友紀「『春といえば野球、野球といえば春』……こんな言葉を知らないかい」
唯「知らなーい。プロデューサーちゃん、知ってる?」
P「初耳だな」
友紀「春のセンバツにオープン戦、プロ野球の開幕。新年度と一緒に、野球もまた新たなスタートを切るのが、何を隠そうこの季節! 今年のシーズンは、もうとっくに始まってるんだよ!」
唯「おぉー」
友紀「つまりだね? 春といえば野球。イコール、春といえばあたしの季節!」
唯「いよっ! 春ゆっきー!」
友紀「今年のキャッツも今までとは違う! 目指せ首位奪還!」
P「去年も同じようなこと言ってたような……」
友紀「そこ! 野暮なこと言わないの!」
P「へーい」
友紀「待ちに待った球春到来なんだよ……! 今野球をやらずに、いつやるんだ!」
唯「今でしょ☆」
友紀「よく言った! なら唯ちゃん! あたしと今から、一緒に公園行こうっ!!」
唯「え? 行かないよ?」
友紀「えっ」
唯「だってゆい、今日は春休みの宿題やりにきたんだもーん」
友紀「え、ぁ……えぇ…」
P「あー、まだ終わってなかったのか」
唯「そーなの! 先生ってば、酷いんだよ? 課題マジ多すぎ、やんなっちゃう!」
P「学生の宿命だよな……頑張れ頑張れ」
唯「プロデューサーちゃーん! ゆいの問題集、代わりにやってよぉー」
P「嫌でーす。自分でやりなさい」
唯「えー、けち!」ブー
P「ケチで結構。社会はそんなに甘くないのだ」
唯「じゃあさー……終わったら、何かご褒美ちょーだい!」
P「えぇ、なんで俺が……」
唯「いーじゃんいーじゃん! 社会がダメなら、プロデューサーちゃんが甘やかしてよぉ!」
P「代役としての荷が重すぎる」
唯「あーあ、宿題やりたくなーい。このままじゃ、宿題出せなくて学校にアイドル辞めさせられちゃうよー」
P「またそういうこと言う……」
唯「えーんえーん、どうしよう。ご褒美あれば、ゆいもやる気出るんだけどなー?」
P「……分かった分かった、考えておくよ」
唯「きゃっほー! 約束ね? とびっきりあまーいの、よろよろ~♪」
唯「それじゃゆい、おこたで宿題やってるから!」
P「あ ちょ、それそろそろ片付けようと思ってたんだけど……」
唯「ヤダー! あったかいから、まだ仕舞わないでー!」
P「……はいよ」
唯「ごめんねゆっきー。遊ぶのは、また今度☆」
友紀「……うん。宿題、頑張ってね」
唯「はーい! プロデューサーちゃん! 甘いの、絶対だかんね? 絶対!!」
P「はいはい」
唯「ごっほぉーび、ごっほぉーびー♪」
友紀「ぷ、ぷろでゅーさぁ…」
P「ユッキも、古典の勉強でもする?」
友紀「え、遠慮しておきます……」
―――
――
―
友紀「夏だーーー!!」
P「声でかっ」
友紀「いやぁ、夏だねえ! 太陽ギラッギラで、シーズン真っ盛りって感じだねっ!」
P「朝からうるさいよ……テンションたけえ……」
友紀「んんーー? なになに、プロデューサー元気ないね? 夏バテ? もうバテてる??」
P「いや、そんなことは無いけ
友紀「そっか! 昨日応援してるチームが負けちゃったんだね? なら仕方ないよねぇ、うんうん」
友紀「まあでもさ。シーズン143試合もあって、まだまだ先は長いんだから! 1つ落としたくらいで凹んでちゃダメだよ? あっははは!」
P「う、うざぁ…」
友紀「それに比べて、昨日のキャッツはすごかったねー! 見た? あの逆転劇! 7回の流れるような5連打がさぁ…」
P「分かった分かった、キャッツが勝ってゴキゲンなのは分かったから。もちょっとボリューム落としてくれ……」
友紀「継投もドンピシャでハマってね? もう、完璧な試合運びでさ!!」
P「話聞けよ!」
友紀「夏なんだよっ、プロデューサー!」
P「さっき聞いた」
友紀「今年は何処に行く? 海かな、山かな、どっちもかな! みんなでバーベキューとかも良いよねっ!」
P「うおぉ……このクソあちぃ時に、元気なことで」
友紀「なんだよー。冷房効いてるってのに、元気無いんだから全く」
P「これから外に出なきゃならんから参ってるんだよ……あーぁ」
友紀「ほらシャキっとする! 猫背直して!」
P「はいはい」
友紀「返事は一回っ!」
P「はーい…」
P「……ほんっと、今日は元気だな。暑くないの?」
友紀「……暑い! あたしだって、できればここから出たくないっ」
P「えぇ」
友紀「でもあたし、暑いの自体はそんなに苦手じゃないし。むしろ、暑い方が元気まである!」
P「はは、確かにそんな感じする。羨ましいよ」
友紀「灼熱の夏、宮崎で育ったあたしを舐めないでよ? これくらい、全然へっちゃらなんだからっ」
友紀「今この瞬間だって、プロ野球選手も全国の球児たちも、上を目指して頑張ってるんだ! だったら、あたしも負けてられないからね……!」
P「流石だ、熱量がもうすごい」
友紀「暑さになんか負けない! 夏はあたしの季節、あたしのものだ! どうだ! 参ったか!」
P「ははー、参りましたー」
友紀「わーい! じゃあ、ばしーっと気合入れて、今日も1日頑張ろうね!」
P「……よっしゃ、やるか!」
友紀「おー!」
P「それじゃ早速なんだけど。次の仕事のことでユッキに提案があって……」
タタタ……
友紀「ん? 何の音……」
バァン!!
龍崎薫「なっつだーーーっ♪」ぴょーん
友紀「ぐへぁっ?!」ドスン
P「どわっ!」
友紀「ってて……び、ビックリした……薫ちゃん……?」
薫「友紀ちゃんおはよっ!」
友紀「あ、うん。おはよ……」
薫「せんせぇも、おっはようございまー!」
P「おはよう薫……。急にオレンジの物体が飛び込んで来たかと思ったら、薫だったのか……」
薫「えへへ! 友紀ちゃん、ないすきゃっちだったね!」
友紀「ま、任せといてよ……キャッチは得意、だか…ら……がくっ」
薫「あっ」
P「友紀ーーー!?」
相葉夕美「ちょ ちょっと、薫ちゃん!? 駄目だよっ、そんなに勢いよく飛び込んだら!」
友紀「あれ、夕美ちゃんも?」ムクリ
薫「起きた!」
P「なんだ生きてたか」
夕美「ほら、友紀ちゃん尻もち付いちゃってる! 大丈夫?」
友紀「うん、へーきへーき」
夕美「もうっ! 急に走り出したと思ったら……」
P「あんまりヤンチャすぎるのもいかんぞ、薫」
薫「ごめんなさい……」
友紀「あたしだから良かったけど……他の人には、あんまり飛びついちゃダメだからね?」
薫「はーい」
友紀「よろしい! よい、しょっと」
薫「ふぁ……っ、すごーい! 友紀ちゃん力もちー♪」
P「2人して一体どうしたのさ」
夕美「あ、うん。レッスンの前にちょっとだけ事務所に寄って行こうかと思ったら、薫ちゃんも来ててね? 2人で行こうか、ってなったんだけど……」
P「うん」
夕美「階段登ってたら、友紀ちゃんの声が聞こえてきて。『夏だー』とかだったかな」
P「マジか……下まで聞こえてたんか……」
夕美「そしたら、『友紀ちゃんの声だ!』って薫ちゃんが飛び出しちゃったの。追いかけるの、大変だったよ……」
P「犬みたいな子だな…」
夕美「もう、汗だくになっちゃった……素直にエレベーターで来ればよかった……」
P「お疲れ様……。ちょっと休んでいきなよ」
夕美「そうするね、ありがとうっ」
友紀「そーれ肩車だっ」
薫「わーー! たかーーい!」
P「ああしてると姉妹みたいだな」
夕美「ふふ、本当に!」
薫「あははっ! かおる、せんせぇよりおっきくなっちゃったー♪」
P「あーあ、背ぇ越されちゃったかー」
P「それで? なんで薫はあんなに勢いよく部屋に入って来たの」
薫「友紀ちゃんの声がきこえたから! なつだーーって!」
友紀「聞こえてたのかぁ」
薫「かおるも夏、好きだよ! だから走ってきちゃった」
P「マジで犬みたいな理由だった……」
薫「夏はね、花壇にひまわりがいっぱい咲くんだ! かおる、ひまわり好きなの!」
夕美「ヒマワリ! 夏のお花の代表、サンフラワー! 私も好きだよっ」
友紀「はいはーい、あたしも! お揃いだね」
夕美「あと、夏といえば……アサガオにスイレン、グラジオラス、それからそれから……」
友紀「おぉー! 流石、詳しい!」
薫「あさがおは、かおるも育ててるよ! 絵日記つけてるんだ!」
夕美「うふふ、そっか! 大切に育ててあげてね?」
薫「うん!」
友紀「薫ちゃんは、今年の夏休みは何したい?」
薫「えっとね、プール! かおる、プール行きたい!」
友紀「いいねぇ。学校の?」
薫「学校のも良いけど……事務所のみんなとも、いっしょに行きたいな!」
友紀「よし決まり! 今度、みんなで行こうか!」
薫「やったー!」
P「まだ先の話だろ? そんな即決しなくてもいいんじゃないか?」
友紀「そんなことないよ! 好球必打、チャンスは逃さないで狙っていかなきゃ!」
薫「いかなきゃー♪」
夕美「でも良いね、プールっ! みんなで行くなら、広いところが良いよ!」
友紀「せっかくなら、貸し切りとか?!」
薫「かしきりー!」
P「しまったパッションしかいない 話がズンズン進んでいく」
夕美「だって、私もプール行きたいからっ!」
友紀「あたしも!」
P「……ま、みんなが楽しめるなら、それで良いんだけど」
夕美「この間買いに行った新しい水着も早速着れるね、友紀ちゃん」
友紀「そうだね!」
薫「え! 友紀ちゃん、水着買ったの!? いいなー!」
P「へぇ。2人で?」
夕美「うん! 友紀ちゃんのも、私が一緒に選んだんだ!」
P「相葉セレクションか……ほうほう」
友紀「……ちょっと、なにニヤニヤしてんの」
P「いやいや。夕美先生チョイスの姫川水着は、どんなものかなーと思って」
夕美「花柄でかわいいの、選んじゃいましたっ」
P「ほほーん、なるほどなるほど……」
友紀「えっち」
P「えっちじゃないです。人聞きの悪いこと言うな」
友紀「人の水着姿想像するとか、えっちだよ! プロデューサーのえっち!」
P「目の前で会話されたら、そりゃ嫌でもしちゃうでしょうが」
友紀「嫌でもって何さ! ひどい!」
P「言葉の綾だろ……」
薫「せんせぇ、えっちなの?」
P「がハッ」
友紀「うわー! 吐血したー!?」
薫「ねえねえ夕美ちゃん、えっちってなぁに?」
夕美「な、何でもないよ、薫ちゃんは気にしなくていいから!」
薫「んー? そう?」
夕美「そうそう! 気にしない、気にしないっ」
友紀「純ってこわいね……」
P「危ない危ない……うっかり死んじゃうところだった……」
友紀「ゴメン……」
夕美「ゆ、友紀ちゃん、水着絶対似合ってるよね! もちろん、私のもっ」
P「そ、そっかそっか。その内、見れると良いね……ははは……」
薫「かおるも、かわいい水着ほしいなー」
P「……じゃあ、今度の仕事先で、いくつか紹介してもらえないかお願いしてみようか」
薫「ほんと!? やったー!」
夕美「仕事……。もしかして、水着で?」
P「あぁ、今度海辺でLIVEフェスやるんだと。ウチからも1人参加できないかって」
友紀「海かー! 夏だもんねっ」
P「水着の話も出たことだし、丁度良いか……。この話、友紀に振ろうかと思ってたんだ。出てみないか」
友紀「あたしが?!」
薫「おぉー!」
P「お前、今日これから時間あるでしょ?」
友紀「う、うん。空いてるけど」
P「どんなステージでやるか、とか。チーム内の方向性とか他の子とのバランスとか。今日も打ち合わせすることが色々あって、一緒に動いてくれる人だとスゲー助かるんだよね」
友紀「ふんふむ」
P「姫川友紀を、夏の女と見込んだ上でお願いしたい。どうかな」
友紀「……おっけ、分かった! あたしやる! やるよ!」
P「よし、決定」
薫「やったね友紀ちゃん!」
夕美「LIVE、頑張って!」
友紀「うんっ」
P「じゃあ、細かい話はまた後で。よろしくな」
友紀「はーい!」
友紀「……ところで。新しい水着とか、仕事用に準備したりするの?」
P「あぁ、してもらうことになると思うけど」
友紀「そっかそっか。それならそれで良いんだ、うん」
P「なんで?」
友紀「いやー。早くも、今年2着目の水着を見ることになるのかなって。去年のクリスマスみたいだよ」
P「……忙しい夏になるなぁ」
友紀「うん、頑張る! よろしくね!」
P「こちらこそ。お互いにね」
友紀「どんな水着かな……もしかして、プロデューサーが選んでくれるとか?」
P「んー……候補として考えてるのは、一応あるんだけど」
友紀「例えば?」
P「サメとか」
友紀「鮫?!」
―――
――
―
友紀「はぁ……」
P「……イスが消えたと思ったら、お前が持ってきてたのか」
友紀「あ、プロデューサー。おかえり」
P「ん、ただいま」
友紀「ごめんね、返すよ」
P「あぁいいよ座ってても。それより、窓際で黄昏てるとは珍しいな。何の影響?」
友紀「別に……」
P「なんかあったのか? 悩みなら聞くけど」
友紀「ううん、何でも」
P「なんでも無い人が溜め息なんかつかないでしょ」
友紀「……何ていうかさ、」
P「うん」
友紀「秋だなぁ、って」
P「……なんかあったのか?」
友紀「失礼じゃない?」
P「いやはや。ユッキにも、秋を憂う瞬間があったとはね」
友紀「むー。あたしだって、たまには色々考えますよーだ」
P「例えば?」
友紀「急に肌寒くなったなぁ、とかさ」
P「あー……。そうだな、いつの間にかみんな長袖だ」
友紀「朝晩寒いよねぇ……あんなに暑かったのに」
P「まさか、まだ腹出して寝てたりしないだろな」
友紀「してないし。信用ないなぁ」
P「一応だよ、一応。風邪ひかないようにするんだぞ?」
友紀「分かってるって、プロデューサーもね」
P「うむ」
友紀「なんか……甲子園が終わった辺りから、急に夏も終わっちゃったみたいで」
P「あ、それは分かる」
友紀「ねー。いやぁ……今年も熱い夏だったよ」
P「フィーバーしたっけな。将来が楽しみな選手がたくさんだった……」
友紀「ペナントレースも、そろそろ終了って感じだし」
P「いやいや、キャッツはまだ終戦してないだろ」
友紀「良くてCSでしょー。今年も優勝はできなかったなぁ……」
P「……なんか去年もそれ聞いた気がする」
友紀「あはは。あたしも言った覚えあるや」
P「また来年、ってところ?」
友紀「んー……優勝消えても、応援するのはやめないけどねー」
P「はは、それも去年も言ってたっけ」
友紀「……来年かぁ」
P「?」
友紀「来年はもう、いない選手もいるんだよなぁ」
P「引退の話か」
友紀「うん。あっちも引退、こっちも引退。やんなっちゃうね、毎年」
P「まぁ……ベテラン組の引退発表が増えるのは、時期的にしょうがない」
友紀「戦力外とかもね。何かと寂しい時期だよ、ほんと」
P「子供の頃のヒーローも、年や故障には勝てずに現役を去っていく。栄枯盛衰、盛者必衰ってやつだな……」
友紀「推し球団とか関係なく、クるものがあるよねぇ……」
友紀「……秋だなぁ」
P「秋かぁ……」
P「……ふふ」
友紀「なに? あたしが黄昏てるの、そんなに変?」
P「いや、スマン。お前と居てこんな静かなのも、あんまり無いなと思ってさ」
友紀「……ふーん」
P「友紀も年がら年中元気な訳じゃないんだなぁ」
友紀「ふんっ。どうせうるさい女ですよーだ」
P「誰もそこまで言ってないでしょ……大人しい姫川友紀も、たまには良いよなってだけで」
友紀「へぇっ?!」
P「全然変なんかじゃないぞ? 物静かなお澄ましユッキも良いもんだ」
友紀「な、何を……」
P「まぁ、今ぐらいはしんみりするのも悪くないんじゃないの」
友紀「そ、そう?」
P「うむ。秋ってそういう季節だし。物憂げで、儚くて……色んなものが朽ちていく季節で」
友紀「…」
P「だからこそ、終わりを迎えるものに想いを馳せる時期は、秋がうってつけなんだ。……って、これは俺が勝手に思ってるだけなんだけど」
P「そういう感覚、俺は大事にしていきたいなと思ってるし。大事にできる子は素敵だなって思う。今の友紀みたいにね」
友紀「…そうかな」
P「だから、たまにはこんな日があっても良いんだよ、きっと」
友紀「……ん! そっか」
P「それにさ。秋って、ただ寂しいだけの季節じゃないでしょ」
友紀「え?」
P「果物とか美味しいし。俺は葡萄が好きかな」
友紀「おー…」
P「友紀は何が好き? 秋の食べ物、はいどうぞ」
友紀「んー……サンマ!」
P「お、いいねー。やっぱ王道の塩焼きかな」
友紀「うん。大根おろしと、あの緑のレモンみたいなやつでキュっと」
P「それ多分"すだち"な」
友紀「それだ! ビールがまた合うんだよなぁ……」
P「ビールといえば、この時期は茸もアリだね」
友紀「あ! 焼きキノコ、好き!」
P「なんか、話してたら食べたくなってきたな……机の下から取って来ようか」
友紀「う、うーん……勝手に取ったら、輝子ちゃん怒るでしょ」
P「だろうなぁ。じゃ、後で飯にでも行くか」
友紀「わーい!」
P「紅葉にはまだちょっと早いけど、山のモミジなんかも見に行ける時期だし」
友紀「また山にハイキング行くのも良いねっ」
P「あぁ。あの時は撮影だったな、懐かしい」
友紀「山歩き、結構良い運動になるんだよなぁ……」
P「運動か……涼しくなったからこそ、外で身体動かしやすくなるって考え方もできる」
友紀「雪が降る前に、キャッチボールしておかなきゃね」
P「そうだな」
友紀「あ! あたし、1回焼き芋やってみたいなぁ」
P「おぉ良いじゃん、今度みんなでやってみようか。落ち葉集めてさ」
友紀「やたっ♪」
P「他にも探せば、まだまだたくさんあるんじゃないかな。秋だからこそやれることとか、秋の美味しいものとか」
友紀「おぉー…。なんだか、わくわくしてきた」
P「ほら、さみしいばっかりじゃないだろ?」
友紀「うんっ」
友紀「なんか……いいヤツだね、秋」
P「な?」
友紀「楽しいことも憂鬱なことも全部まとめて受け止めてくれる、こんなに懐の大きいヤツだったのか」
P「ははは、面白い例え」
友紀「うん、言われて気付いた。秋も悪くないね」
P「そりゃ良かった」
友紀「他には何があるかな。紅葉狩りはさっき言ったし……お月見?」
P「ハロウィンも秋だな」
友紀「学生のみんなは、球技大会に体育祭の季節か。何でもあるね」
P「後は、お前の誕生日とか」
友紀「そうそう、たんじょう……」
友紀「……ほぁ? 誕生日?」
P「え、違うの」
友紀「ぁ いや、違くないけど。それ、秋のイベントに加えちゃっていいの?」
P「良いでしょ」
友紀「良いんだ…」
P「秋の懐が大きいって言ったの自分だろ? 折角なんだから、楽しいことはとりあえずカウントしとけ」
友紀「……わかった、そうする!」
P「よろしい」
P「でもそう考えたら、友紀もすっかり秋の人になっちゃうな」
友紀「うーん……あんまりピンと来ないけどなぁ」
P「そう? むしろ決定的になったと思ったんだが」
友紀「そ、そんなに秋のイメージある?」
P「あるある、山で撮った時なんかすげー良かったじゃん。ああいうのも、良いもんだ」
友紀「……プロデューサーがそう言うんなら、そういうことにしておこっか」
P「おう。秋っぽい仕事、また何か持ってきてやれると良いな」
友紀「ふふ、秋ゆっきーの売り込みも、よろしくね♪」
P「はいよ」
友紀「……うん、なんかいける気がしてきた。9月生まれの、秋色なあたし。秋は、あたしの季節!」
P「そっか、良かった」
友紀「プロデューサーと一緒なら、それだけで何でもできるし、どんなマウンドにでも立てる気がしてくるね」
P「そ、それは言い過ぎだろ…」
友紀「そんなことない! 本当だよ?」
友紀「プロデューサーと組むバッテリーだから、どんなあたしでだって勝負できる。どんどん飛び込んでいけるんだ」
友紀「絶対受け止めてくれるって分かってるから。そう言ってくれたでしょ?」
P「受け止めて…」
P「……あぁ、そうだ。あの時」
友紀「ま、まさか、忘れちゃったの……?」
P「いや、覚えてるよ。忘れるもんか」
友紀「よかった! 覚えてなかったら、どうしようかと思ったよ」
P「大丈夫、分かってる。約束したもんな」
友紀「うん!」
友紀「いつでもあたしらしく居られるのも、プロデューサーが居てくれるからだもん。ホント感謝してる」
友紀「今もこうして励ましてくれたし。ありがとね」
P「買い被りすぎだよ……俺はただ話してただけ」
友紀「それでも良いのっ! 元気出たから!」
P「……それを言ったら、お互い様だ。元気貰ってるよ、いっつも」
友紀「へへ、同じだね」
P「そういうこと。ありがとな」
友紀「……これからもあたしのこと、受け止めてくれる?」
P「当然。ドンと来いだ」
友紀「ふふふ。頼りにしてるね!」
P「こちらこそ。頼りにするから、よろしくな」
友紀「任せて!」
友紀「よぉし! そうと決まったら、秋ゆっきーの研究、早速2人で進めてみようか」
P「いや研究って。気が早いな……」
友紀「試合に勝つためには、対戦相手の研究が大事なんだよ? 現代野球の基本でしょ」
P「具体的には?」
友紀「秋の女になるには、もっと秋を知らないといけない。ズバリ、秋を探しに行くんだよ!」
P「おーおー、すっかり元気になっちゃって」
友紀「まずはさっき話した食べ物からかなっ! 食欲の秋とも言うし……秋の美味しいもの食べに行こうよ、プロデューサー!」
P「……」
友紀「ん? どしたの、変な顔して」
P「……さっきまではスゲーそれっぽかったのに。アンニュイな秋の姫川は、もうちょっと先かなこりゃ」ボソ
友紀「え、なに? 聞こえないよ?」
P「何でもない。腹が減っては何とやらとも言うし?」
友紀「はーやーくー! お腹空いたー!」
P「分かったって……」
P「……また1年、賑やかな時間になりそうだな」
おわり
51 : 名無しさ... - 18/09/15(土) 10:26:30 BCQ 50/50
おしまいです
日跨ぎする羽目になってしまいましたが、折角なので最後まで投稿することにしました
ユッキ誕生日おめでと!