黒猫「なにしてんの?」
白猫「は?」
黒猫「だからなにしてんのって」
白猫「見たらわかるだろう?」
黒猫「あぁ、悪い。覗き見の最中だったか」
白猫「猫聞きの悪いことを言うな。僕は人間のメスには興味ない」
黒猫「その横のメス猫には興味あるんだな」
白猫「その通り!」
元スレ
黒猫「なにしてんの?」
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黒猫「あのメス猫が好きなのか?それともメス猫なら誰でもいいのか」
白猫「いやいや、さっきのは冗談。覗きとかしてないから」
黒猫「じゃあその細めた目は何なんだ」
白猫「これはほら、遠くを見る時ってよく目を細めちゃうだろ?」
黒猫「あぁ、遠くに居るメス猫を見る時とかね」
白猫「その通り!」
白猫「君こそ何故こんな木の上まで登ってきたんだい?…ハッ!まさかこの僕の美しさに見とれて…」
黒猫「違うわい」
白猫「照れなくてもいいんですよ。まぁ申し訳ないが返事はノーだけどね」
黒猫「照れてない。って言うか何の返事なんだ」
白猫「言わせんな恥ずかしい」
黒猫「お前は一体何の話をしてるんだ」
黒猫「お前、体中傷だらけだな。喧嘩でもしたのか?」
白猫「まさか。僕はいつだって紳士な猫だからね。喧嘩なんてしないよ」
黒猫「人間にやられたのか?」
白猫「違うわい」
黒猫「おい真似すんな。人間にやられたんだろう?」
白猫「違うわい」
黒猫「………」
白猫「…違うわい」
黒猫「一緒に仕返しに行ってやろうか?」
白猫「へぇ?どんなことをするんだい?」
黒猫「そうだなぁ…喧嘩初心者は猫パンチってやつが多いんだけど、俺レベルのなると光速引っ掻きだな」
白猫「それって猫パンチのほうがすごいんじゃ…」
黒猫「いーや、お前はわかってないね。マジやべぇから。俺の光速引っ掻き」
白猫「そうか…そんなにすごいのか……へぇ…」
黒猫「どうせすごいなんで思ってないんだろ」
白猫「その通り!」
黒猫「………」
白猫「でもいいね。僕にもそんな技が使えたらよかったのかもしれないなぁ」
黒猫「じゃあ今から行こうぜ」
白猫「いや、気持ちだけ貰っておくよ」
黒猫「なんで」
白猫「だってそんなの人数だって覚えてないし。もちろん顔も」
黒猫「そんなにやられたのか?」
白猫「僕は元々体が弱くてね。威嚇すらまともに出来ないから格好の餌食だったんだろう」
黒猫「人間なんてクソくらえだな」
白猫「その通り」
白猫「飼い猫なら、と考えていたんだよ」
黒猫「さっきの覗き見か?」
白猫「だから……まぁいい。でも、考えたことはないか?」
黒猫「どうだろう。いつもその日の飯の確保で頭がいっぱいだからな」
白猫「同じく」
黒猫「まぁ俺ら野良猫だからな」
白猫「飼われていた過去が無いだけ、まだいいのかもしれませんね」
黒猫「そうだな」
白猫「でも僕は最近、もし自分が飼い猫あったらって思うんです」
白猫「温かい部屋とおいしいご飯と優しいご主人様」
黒猫「フン。人間に媚売るなんて俺は嫌だね」
白猫「僕も人間は苦手だよ。でも撫でられるのは嫌いじゃないだろ?」
黒猫「まぁ…嫌いではない」
白猫「雨や嵐の日に震えて眠ることも、熱いアスファルトの上を歩くこともない」
黒猫「俺らからすりゃ夢のような話だな」
白猫「その通り!」
白猫「同じ猫なのに、どうしてこんなに違うのだろう?」
白猫「あの柔らかそうなベッドの上に寝そべる猫と僕と、どう違うのだろう?」
白猫「顔?毛並み?瞳の色?鳴き声?」
白猫「僕もあの猫のような姿なら、人間に愛されたのだろうか?」
白猫「叩かれるばかりじゃなくて、撫でてもらえたのだろうか?」
白猫「そんなことばかり考えてしまうんだよ」
黒猫「…くだらんな」
白猫「その通り!」
黒猫「ん?向こうの木の上に灰色の猫が居るぞ」
白猫「あぁ、あの猫は神様とやらの使いだそうだ」
黒猫「なんだそれ」
白猫「僕を迎えにきたんだよ」
黒猫「なんだと?お前死んでるのか?」
白猫「らしいよ。昨日歩道橋の下で涼んでいたんだけど、いつの間にかね」
黒猫「あの猫はお前を連れて行くのか?」
白猫「天国へ連れて行ってくれるらしい。で、次に生まれ変わるなら何になりたいか決めろって」
黒猫「そうか。もう決めたのか?」
白猫「うん。さっきまで悩んでいたんだけどね。決めたよ」
黒猫「さっき?あの家を見てたのはそのせいか」
白猫「その通り!」
白猫「人間は嫌いだよ。逃げる力がない僕を殴ったり、叩いたりするし、変なもの食べさせられたりもした」
白猫「怖かった。すごく怖かった。鳴いたって誰も助けてくれなかった」
白猫「ずっとずっと孤独だった」
白猫「でも、少しだけど、優しい人間も居た」
白猫「ごめんね、ウチじゃ飼えないんだけどって、一度だけ優しく撫でてくれた」
白猫「僕は人間が憎くて憎くてたまらない。だけど、あの一度がどうしても忘れられないんだ」
黒猫「まさか」
白猫「その通り!」
白猫「僕は生まれ変わったら人間になろうと思う」
黒猫「全く理解できないな。せめて飼い猫になりたいとかにしろよ」
白猫「あはは。まぁまぁ。でもいいだろ?」
白猫「僕のような猫にも優しくしてくれるような人間が、一人ぐらい増えたって」
黒猫「……」
白猫「じゃあそろそろ行くよ」
黒猫「ちょっと待て!やっぱり俺には理解できない!」
黒猫「何で人間なんかになりたがるんだ!人間なんか大嫌いだ!」
黒猫「人間なんて意地悪してくる奴ばっかだ!俺の事を汚いって、あっち行けって!」
黒猫「優しい奴なんか信用できない!俺は一人でも平気だ!」
黒猫「飼い猫を羨ましがったりもしない!」
黒猫「喚いたって嘆いたって、俺は俺でしかないのだから!」
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男「何だ?歩道橋の下に黒い物体が……猫か?」
男「おい、お前どうしたんだよ。暑さにやられたのか?つか、生きてる?」
男「…いたっ!おい!引っ掻くなよ!わかった、わかったから!」
男「真っ黒だから余計に暑かったろうな…でも生きててよかった」
男「ん?お前肉球も切れてんじゃん。とにかく病院だな」
男「それにしても何で花なんか咥えてたんだよ。食ったって上手くねぇだろ?」
男「まぁでもあの白い花キレイだったし、元気になったらまた見つけに行こうな」
男「きっと黒いお前によく似合うよ」
(その通り!)