勇者「なかなか決着がつかないな……」
女魔王「うむ……」
勇者「お互い決め手に欠いている。勝負を終わらせる方法はないものか……」
女魔王「ならば、私が一瞬でこの勝負を終わらせてやろうか?」
勇者「え? どうやって?」
女魔王「お前に寄生してやる!」
勇者「や、やめろぉぉぉぉぉ!!!」
…………
……
元スレ
女魔王「お前に寄生してやる!」勇者「や、やめろぉぉぉぉぉ!!!」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1629969035/
勇者「ただいまー」
女魔王「お帰りー!」
勇者「……」
女魔王「なに?」
勇者「なんつーカッコしてんだ。タンクトップに短パンて……」
女魔王「だってー、暑いんだもん」ボリボリ
勇者「どこかいてんだ!」
女魔王「いいじゃない。誰も見てないし」
勇者「俺が見てるじゃねーか! 俺が!」
女魔王「にしても暑いー、なんか冷たいものない?」
勇者「アイス買ってきた」
女魔王「やるぅ、さっすが勇者! いただきマンモース!」
勇者「いただきマンモスて……」
女魔王「うん、おいしい。やっぱりアイスはバニラだね。分かってるじゃん、勇者」
勇者「おい」
女魔王「なに?」
勇者「棒アイスをそういう食い方するなよ」
女魔王「なんで?」
勇者「なんかほら……その……連想しちゃうだろ」
女魔王「アハハ、やーらしい! 勇者ってやっぱりムッツリ!」
勇者「うっせえ!」
勇者「ったく、決着をつける方法が“和解して俺の家に寄生する”だとは思わなかった」
女魔王「でもこれならもう私とお前で戦う必要ないわけじゃん?」
勇者「そうかもしれないけど……俺と一緒に暮らす必要なくね?」
女魔王「人と戦うのやめたら、魔王なんて仕事なくなっちゃうようなもんだし」
女魔王「そうなったら、誰かのお世話になるしかないんだよねー」
勇者「魔族の部下とかに頼ればいいだろ」
女魔王「それがさ、『個人的に魔王様のお世話をするのは勘弁して下さい』って奴ばっかで!」
勇者(まあ、主従関係抜きでこいつの世話するのは大変だし、嫌だろうな)
女魔王「アイス食べたら、ますますお腹すいちゃった」
女魔王「ご飯まーだー?」
勇者「今から作る。ちょっと待ってろ」
女魔王「はーい」
勇者「ったく、調子狂うな……」
勇者(野菜切って……)
トントントン… ザクザクザク…
女魔王「お~、さすが勇者。いい包丁さばきしてるね」
勇者「なんだよ。危ないから近寄るな」
女魔王「危ない? よくいえたもんだね」
勇者「どういう意味だよ」
女魔王「その刃物さばきで……私も斬られたんだよなぁ。こことか、あそことか……」
勇者「敵同士だったんだからしょうがないだろ!」
女魔王「痛かったなぁ……」
勇者「悪かった、悪かったよ!」
女魔王「アハハ、勇者ったら優しい!」
勇者「ほら、できたぞ」
女魔王「いただきまーす!」バクバク
女魔王「おかわり!」
勇者「はやっ!」
女魔王「おかわり!」
勇者「よく食うなー」
女魔王「おかわり!」
勇者「食いすぎだろ! 少しは遠慮しろよ!」
勇者「それとそろそろ働けよな。食材だってタダじゃないんだ」
女魔王「働いてたよーだ」
勇者「いつ?」
女魔王「魔王として数百年間」
勇者「人間に敵対してただけじゃねーか! ちゃんと人間界で働け!」
女魔王「ま、気が向いたらね」
勇者「ったく! とんだ同居人を持っちゃったよ……」ブツブツ…
女魔王「……」
……
勇者「じゃ、行ってくる」
女魔王「どこへ?」
勇者「剣術道場だよ。子供らに剣を教えるんだ」
女魔王「私も行く!」
勇者「なんで!?」
女魔王「たまには私も働かなきゃね。それに魔王が来る道場なんて評判になるでしょ?」
勇者「悪評になりそうな気もするが……あまりムチャすんなよ」
道場――
勇者「素振り、始めっ!」
少年A「えいっ! えいっ!」
勇者「もっと気合を入れて!」
少年A「はいっ!」
勇者「君はもっと丁寧に振って。気合が勝ってフォームが乱れてる」
少年B「分かりました!」
女魔王(ふうん、やるじゃん。ひとりひとり丁寧に教えてる)
女魔王(しかし見てるだけじゃ退屈だな……)
女魔王「おーい、そこの少年」
少年C「はいっ!」
女魔王「いい返事ね。君に魔法を教えてあげよっか?」
少年C「ま、魔法!? ホントですか!?」
女魔王「(食い付いた食い付いた)うん、私が教えれば君は今日にでも魔法を使える」
少年C「ぜひ教えて下さい!」
女魔王「オッケー。じゃ、手本見せるから、瓶をそこに置いてくれる?」
少年C「こうですか?」
女魔王「それでいい。よーく見ててよ」
女魔王「じゃ、最も基本的な魔力の放出を……」
女魔王「ハァッ!!!」
ドゴォォォォォンッ!!!
女魔王「!?」
女魔王(しまった、久しぶりだったから力加減が……)
勇者「な、なにやってんだ!」
女魔王「えーと、その、なんていうか、つい……」
勇者「つい、で道場の一角をふっ飛ばすな!」
女魔王「ご、ごめーん」
勇者「ごめんで済んだら勇者はいらねえ!」
少年A「ひえええ……壁が消えた……」
少年B「す、すごい……」
少年C「うぇぇぇぇん!」
勇者「みんな、大丈夫だから! ちょっと道場の風通しはよくなったけど……」
……
勇者「ったくー、壁の修理でまた出費が……」
女魔王「本当にごめん……」
勇者「もういいよ。魔法を教えようとしてやったってのは聞いたから」
勇者「とりあえずメシにしよう。ソテーでも作ってやるよ」
女魔王「……」
女魔王(勇者は……本当に優しい。私だって……私だってやらないと……)
女魔王「よし!」
道具屋――
主人「なるほど、うちのお店で働きたいと」
女魔王「はい!」
主人「ところで……前職は?」
女魔王「魔王を少々」
主人「ほう、魔王! これは頼もしい! ……え、魔王!?」
女魔王「これ以上ない経歴でしょ?」
主人「お祈り申し上げますぅ! 命ばかりはお助けをぉ!」
魔法学校――
教師「魔法教師を志望、と……」
女魔王「私ならどんな魔法だって教えられる!」
教師「ずいぶんと自信がおありのようだ。例えばどんな魔法です?」
女魔王「例えば……隕石を大量に降らす魔法!」
教師「え」
女魔王「魔神を召喚する魔法でしょ? 巨大な地割れを起こす魔法。敵を次元の彼方に葬り去る魔法……」
教師「お、お引き取り下さい!」
騎士団――
女魔王「魔王だった私が騎士団に入れば、もはや国王の身は盤石!」
女魔王「さあ、雇ってちょーだい!」
騎士団長「……」
女魔王「さっそく勤務条件の話を……」
騎士団長「ところで吾輩はかつて……貴公に半殺しにされた」
女魔王「え」
騎士団長「“アハハ、騎士団長ってのはこの程度?”と笑われ、呆れられ、見逃され……」
女魔王「アハハ……そんなことあったっけ……」
騎士団長「あの時の恐怖と屈辱……今でも忘れはせぬ」
女魔王「ま……まあまあ。あの頃の私は血の気が多くて。もう戦いは終わったし、水に流して……」
騎士団長「申し訳ないが帰って頂こう」
……
勇者「……」キョロキョロ
勇者「ったく、あいつどこ行ったんだ」
勇者「いつもメシ時になると帰ってくるのに……って猫かあいつは」
勇者「おーい!」
勇者「魔王ー! どこだーっ!?」
勇者「魔王ーっ! いるなら返事してくれーっ!」
勇者「! あれは――」
女魔王「……」キコキコ…
勇者「魔王っ!」
女魔王「勇者……」
勇者「夕方の公園で一人ブランコって……なにやってんだ! 哀愁漂いすぎだろ!」
女魔王「うっ……」
勇者「え」
女魔王「うわぁぁぁぁぁん!」
勇者「どうした!?」
勇者「そうか、就職活動が上手くいかなかったのか」
女魔王「うん……どこも雇ってくれなくて……」
女魔王「いつまでも今のままじゃいけないって思うのに……。私は誰にも必要とされてなくて……」
勇者「ま、そう焦るな」ポン
女魔王「え……でも色々と出費が……食費とか、道場の修理費とか……」
勇者「確かに色々脅したけどさ。俺は仮にも世界のために戦った勇者だぜ?」
勇者「魔王の一人や二人養えるくらいの金は貰ってる。だから心配すんな!」
女魔王「勇者……」
女魔王「じゃあ、勇者が困窮することはないんだね!」
勇者「ああ!」
女魔王「私はずっとニートしてていいんだね!」
勇者「ああ!」
女魔王「やったーっ!」
勇者「いや、よくねえよ! ちゃんと職探せ!」
女魔王「分かった分かった。ま、いずれね」
勇者「信じるぞ……」
勇者「あ、そういえば俺の故郷から手紙が来て」
女魔王「あら」
勇者「親父とお袋が“たまには顔出せ”ってうるさいから、今度出してくるわ」
女魔王「じゃあ私も行く!」
勇者「え、なんでだよ。いっとくけどマジでド田舎だぞ」
女魔王「そりゃあ……未来の嫁として……」
勇者「誰が魔王を嫁にするか!」
女魔王「えー、いいじゃん」
勇者「よくない!」
勇者「でもまあ……ついてくるのはいいか。魔王を連れていくなんていい話のタネになる」
女魔王「やった! 不束者ですがよろしくお願いしますしなきゃ!」
勇者「しなくていい!」
女魔王「それじゃ二人で……勇者の実家に帰省するぞーっ!」
おわり

